パリ在住30年の“チャコさん”こと鈴木ひろこさんが
「weeksdays」に登場してくださったのは、
コロナ禍のなかでのオンライン対談
「いま、どんな風に過ごしてますか?」
でのこと。そのあと、コラム「おとなの水着事情。」や
「saquiはクチュール。」などを通じて、
ヨーロッパのおとなの女性たちのおしゃれについて
たくさん教えてくださいました。
そのチャコさんが、今回、一時帰国。
ムートンバッグでの私服コーディネートをお願いした
撮影のあと、伊藤さんとおしゃべりした
「おしゃれ談義」をおとどけします。
年齢をかさねるごとに、
深く、かろやかに、たのしくなるのが「おしゃれ」。
とっても元気のでるお話ですよ!
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/11/0S8A5904.jpg)
鈴木ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』(グラフィック社)
などがある。
「weeksdays」では、オンライン対談
「いま、どんな風に過ごしてますか?」に登場、
その1年後のようすをエッセイで寄稿。
さらに「saquiはクチュール。」でもコラムを執筆。
その2自分ヴィンテージ。
- 鈴木
- フランスの人は、ちょっと見栄っ張りだから、
裏では、ラフに見せたがったりもしますね。
実はすごい努力や計算をしてるのに。
- 伊藤
- チャコさんに書いていただいた
「おとなの水着事情。」に
そんなエピソードがありましたね!
もう全然いつでも食べてるのよ、みたいな感じで、
実は、すごく糖質制限をしているとか。
- 鈴木
- そう、ウィークデイはアルコールを抜くとか。
- 伊藤
- それを聞いて、すごくホッとしたんです。
フランスの女性たち、
あんなにおいしそうなものを食べていて、
なんで太らないの? って思っていたから。
何もしないのにキレイが保てるなんて‥‥って、
ちょっとやきもち(笑)。
でも努力をしているんですね。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/11/weeksdays_0S8A6044-800x800.jpg)
- 鈴木
- そういう魔法はないってことですよ。
- 伊藤
- マダムになればなるほど
代謝も悪くなってくるはずだもの。
- 鈴木
- そうですよね。
でも、私の大好きな、
ソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)っていう
ジャーナリストの方がいて、
その人もフォロワーがすごいんだけれど。
- 伊藤
- へえ。
- 鈴木
- 彼女は50代後半かな、
つい最近の『ELLE』の表紙を
ヌードで飾ったんです。
胸をロゴで隠したりして、
見えないようにはしているけれど。
- 伊藤
- へえーっ。
- 鈴木
- 彼女は言うんです、
「年齢を重ねていって、古びていく肌の方が
あたたかくて優しくなるから素敵だ」って。
本当にそうだなと思って。
- 伊藤
- うんうん。
- 鈴木
- それでも、年を取ることは怖くないですよと。
フランスって、年齢を重ねるのに楽だな。
本当に生きていくのが楽(笑)。
- 伊藤
- それにひきかえ、わたしたちのこの抗い!
もちろん自分を大切にしてあげるのはいいんだけど、
- 鈴木
- うんうん、うんうん。
- 伊藤
- 以前、ジュエリーを対面販売したことがあるんですが、
70近いおばさまがいらして、
大粒のルビーを「あ、いいわね」と指につけられたんです。
とうぜん、年を重ねた女性の手で、
しわもあるし、しみもある。
けれどもその手に、
大きめのルビーが、ピッタリ合って!
その後に、若い女の子が、キャッキャッと、
「かわいい」って言ってくれたんだけれど、
もちろん似合うけれど、
あなたたちは何も付けなくても大丈夫よ、と。
- 鈴木
- たしかに、たしかに。
大きなルビーは、しわがあって、しみも、
血管も出ているような手にこそ、合いますよね。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/11/weeksdays_0S8A5975-800x800.jpg)
- 伊藤
- うん、合う。
しみ取りをすることよりもね、
自分に似合う服を着ているとか、
そういうことで人は素敵に見えているんですよ。
おしゃれな人っていうのは、結局のところ、
どのブランドの何を着ている、じゃない。
サイズ感、自分の肌との相性、TPO、
それがわかっている人なんです。
スウェット一枚でも格好いい人はいるけれど、
それを自分がマネしてもダメ。
思い出しますよ、いまから17年前、
初めてチャコさんに会ったとき、
穿いていらしたあのスカート。
本当にかわいくて!
- 鈴木
- (笑)バレンシアガ(BALENCIAGA)のね。
- 伊藤
- そう! すっごいかわいいスカートで、
「え、なぁに、この人!」と思ったんです。
パリでロケの仕事だったんですけれど、
借りているバスの運転手さんへの接し方ひとつとっても、
本当にチャーミングで。
それで、この前、インスタで、
あのスカートを穿いていて!
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/11/IMG_1550-800x800.jpg)
- 鈴木
- そうそう(笑)。
ずっと大切にしてる「自分ヴィンテージ」です。
持っているうちにヴィンテージになっちゃった。
こういう、自分ヴィンテージなものって、
入れ替えはそんなにないんです。
- 伊藤
- でも、新しいものも買うでしょう?
お買い物、お好きですよね。
- 鈴木
- 好きですよ。この2年間、
お店が開いてなかったから、
いま、うれしくて。
私、ネットでポチッとお買い物するのが
あんまり得意ではなくって。
信頼していて、サイズ感がわかっていれば、
まだ、いいんですけれど、
やっぱり服は触れて、
着てみたいという気持ちも強くって。
だから2年間、服を全然買っていなかった。
そうこうしてるうちに、引っ越しもあるからと
断捨離していたら、
「あ、こんなのもあった、こんなのもあった」って。
- 伊藤
- それが「自分ヴィンテージ」の発見に?
それにしても、チャコさん、
どうやって整理してるんですか、
その膨大な服や靴やバッグを。
- 鈴木
- いやいや、もうね、整理できないから、あげたの。
お友達、若いお嬢さん、
たとえば私の同世代のお友達の娘さんに、
「好きなのあったら持ってって」って。
そう声をかけたら、22、3歳の
かわいいおしゃれな子たちが来てくれて、
「かわいい」って持って行ってくれました。
- 伊藤
- わぁ、みなさん、ラッキーですね!
- 鈴木
- 若くてかわいいお嬢さんが着たら、
服も喜ぶし、靴もうれしいし。
それでも残ってしまったものは、
「エマウス」(Emmaüs alternatives)っていう
慈善団体があるんですけど、そこに寄付しています。
エマウスはピエール神父(Abbé Pierre)っていう方が
始めた慈善事業で、
社会的に困難な状況にある人を雇い、
寄付された衣料や日用品を販売して、
その売上を全部、貧しい方の住まいや食べること、
暮らすことのために使われる、
っていうものなんです。
エマウスの支部はフランスにいっぱいあって、
わたしも寄付するものをせっせと蟻のように運びました。
「エマウス」の人から、
「あら、今日は何を持ってきてくれたの?」
みたいな感じで、この夏は日参して(笑)。
そんなふうに、5月、6月、7月は
ずっと家の片付けをしていました。
- 伊藤
- 「まだ着る・もう着ない」は、
どういう判断でするんですか。
「自分ヴィンテージ」になるものと、
ならないものがあるわけですよね。
- 鈴木
- 昔は、デザインされたものを
買っていたんですけれど、
そういうのがどんどんそぎ落とされていますね。
シャツにデニム、みたいな、
ベーシックなものが残ってる。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/11/IMG_1549-800x800.jpg)
- 伊藤
- でも、チャコさんが着ると、
普通にならないんですよ。なんでだろう‥‥。
足首の見せ方とかかなぁ。
あと、ちょっとしたこと、
たとえばリボンの使い方とか。
チャコさんは、これから出かけようという時、
いったん全部を着て、バランスを見ますか、
姿見とかで。
- 鈴木
- そうですね。それは見ます。
玄関に置いてあるので、
靴を履いてみて、全身を。
- 伊藤
- 「やっぱり違う」みたいなときもありますか?
- 鈴木
- あるある。そういう時、靴って大事ですよね。
- 伊藤
- そうですよ、靴、大事ですよ。
パリって、石畳だけど、
だからといって歩きやすいスニーカーばかりじゃなく、
みんな、結構ちゃんとしている、
というイメージがあります。
- 鈴木
- そうですね。
なんか自分が機嫌よくいなきゃだめじゃないですか。
おしゃれは誰のためでもなく、自分のためで、
誰かにどう思われるっていうより、
本当に、自分の気持ちがご機嫌でいられるように、
それが、私、一番大事です。