「weeksdays」オリジナルのチョコプレッツェル、
新作ができあがったタイミングで
「あの人に食べてほしい!」と、名前があがったのが
「ぼる塾」の田辺さんでした。
伊藤さんは、田辺さんがTVでスイーツの話をするたび、
その知識の深さと、おいしいものを見極める目のするどさ、
味を判断する的確さにびっくりしていたんだそう。
「ほぼ日」のある神田錦町は、田辺さんが出演している
「神保町よしもと漫才劇場」からすぐ。
ふたりの話は、この界隈のことから、
東京、日本のあちこち、
さらにはイタリアやフランスまで
おいしいものの話がひろがりました。
全6回で、おとどけします。
写真=馬場わかな
ヘアメイク(伊藤まさこ)=草場妙子
*この対談収録は、2021年12月6日におこないました。
ぼる塾 田辺さんのプロフィール
田辺智加
1983年千葉県生まれ。
短大卒業後、テーマパークに勤務、
29歳で東京NSC(吉本総合芸能学院)に入り、
18期生に。酒寄希望と2012年「猫塾」結成。
2019年、あんりときりやはるかのユニット
「しんぼる」と合併し、4人組の「ぼる塾」を結成。
スイーツ好きがこうじて、2021年10月初の著書を出版。
その2知らないものがいっぱい。
- 伊藤
- その「ちょっと逸れちゃった」8歳の時、
そういう田辺さんを、お母さんは、
どう思っていらしたんでしょう。
- 田辺
- ちょっと怒ってたかもしれないです。
- 伊藤
- 見て見ぬふり、は、してくれてた?
- 田辺
- してくれてはいたんですけど、
「いいもの食べさせてんのになぁ」
と、もしかしたら思ってたかもしれないですね。
- 伊藤
- 高校は東京にとおっしゃったということは、
ご出身は‥‥。
- 田辺
- 千葉だったんですけど、
私の住んでた場所は、そんなにおいしいものが
ありふれてなかったんです。
小学生ぐらいのときは母と祖母と私で
都内のデパートに行って、
食堂でババロアを食べるのが楽しみで。
- 伊藤
- そうそう、ババロアがお好きなんですよね!
- 田辺
- そうなんですよ、ババロアが!
- 伊藤
- わたし、田辺さんのおかげで
ババロアというものを思い出して。
このごろあんまり見ないですよね?
- 田辺
- そうなんですよ。ないんです。
ところが、神保町には2店舗、
おいしいババロアの店があるんです。
- 伊藤
- この前、テレビで紹介なさっているのを見ました!
- 田辺
- 「ラヴィット」で。
- 伊藤
- テレビのこちら側で
「田辺さんが出てます!
しかも神保町のスイーツ特集で!」
って、「weeksdays」のグループLINEが
もりあがりました。
そしたら「御菓子処 さゝま(ささま)」に
行かれていて。
- 田辺
- あ、「さゝま」大好きなんです!
今回、神保町でロケをするならば、
「さゝま」だけは入れてくれ、って言いました。
- 伊藤
- わたし、毎週の「weeksdays」の
打ち合わせのとき、必ず「さゝま」に寄るんです。
季節の和菓子と最中をチェックして。
- 田辺
- 最中の皮の、あの香ばしさ! 衝撃的でした。
私は最中イコール「空也(くうや)」で。
- 伊藤
- 本にも載ってましたよね。
- 田辺
- はい、「空也」の最中で育ってきたんです。
「空也」の最中か、「たねや」の最中、
どっちかですね。
- 伊藤
- 「育ってきた」! いいですね!
- 田辺
- だいぶ、贅沢に育ってきてます、本当に。
- 伊藤
- それって、絶対、いいと思う。
いいものをちゃんと知ってるからこその、
他との違いもわかるわけですしね。
- 田辺
- はい。そんな私が「さゝま」さんに出会って。
- 伊藤
- 劇場からすぐそばですものね。
- 田辺
- 劇場から、もう「秒」です。
でも見て見ぬふりをしてたんですよ、
見た目も高級そうで、上品ですし、
なんだか門構えが‥‥。
- 伊藤
- そうそうそう! ちょっと怖いという気持ちね。
結界を超えるみたいな。
- 田辺
- そう、怖いんですよ。
だから私が入っちゃ駄目だろうなって思っていたんです。
それから、たまに、門構えだけのお店も
あるじゃないですか、見た目はいいけど味は、って。
そんなふうだったらどうしようと勝手にイメージして、
もう見て見ぬふりを‥‥7年ぐらい、していたんです。
- 伊藤
- そんな期間があったんですね。
- 田辺
- そうです、そうです。
本当につい最近、あんり(ぼる塾)と
「ちょっとうどん食べに行こう」って、
劇場から出たついでに、
「怖いからついてきて」って。
- 伊藤
- 1回、あの結界を超えると、
じつは、全然大丈夫なんですよね。
- 田辺
- そうなんですよ! 全然怖くなかったです。
もっと早くに食べるべきだったなって思いました。
- 伊藤
- 7年も!
- 田辺
- はい、7年も見て見ぬふりして。
他にも神保町界隈には和菓子屋が3店舗ぐらいあるのは、
制覇していたんですけれど。
- 伊藤
- テレビでは、そのあとに
神保町界隈のババロアをご紹介なさっていたんですよね。
紅茶専門店の「Tea House TAKANO」と、
「山の上ホテル」の「コーヒーパーラーヒルトップ」。
山の上ホテルにもババロアがあるなんて、
知りませんでした。
- 田辺
- あのババロア、美味しいんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ。こんど食べに行ってみます。
さて、それじゃ、次のおやつを食べましょうか。
- 田辺
- あっ、これは‥‥!
「巴裡 小川軒(ぱり おがわけん)」って言ったら、
私の中ではもう元祖 レイズン・ウィッチなんですけれど、
それとはちがうんですね。
- 伊藤
- あえて‥‥、
フフフ。
じゃーん。
- 田辺
- え! えっ! これは?!
知らなかった!
あらー! 何これー!
- 伊藤
- うちでは「空気」って呼んでいる、
「ショコラスフレ」です。
- 田辺
- 「空気」! わぁ、楽しみ。
- 伊藤
- 元祖 レイズン・ウィッチもおいしいですよね。
- 田辺
- はい。いろんなレーズンウィッチがありますが、
私、ここのが一番おいしいと思います。
クッキーが厚くてサクサクで。
でもショコラスフレは知りませんでした。
- 伊藤
- よかった。田辺さん、もう何でも知ってるから、
すごく悩んで。
- 田辺
- いや、私、そんな知らないんですよ。
- 伊藤
- いやいや!
- 田辺
- 本当に知らないところのほうがいっぱいあって、
それがまた悔しいんですよ。
- 伊藤
- 分かります! 悔しい~。
- 田辺
- そうですよね! 本当に悔しくて。
- 伊藤
- 人が自分の知らないおいしいものを食べているとね。
- 田辺
- そうなんですよ、うわーってなって。
- 伊藤
- 「なんで知らないの、わたし?!」みたいな。
- 田辺
- そうなんですよ! それ、本当に分かります。
本当に悔しいですよね。
その人に対してというよりは、
知らない自分が悔しいんですよ。
- 伊藤
- なんなの、何をしてきたの、なんで知らないのって。
- 田辺
- そうなんですよ。
この生きてきた分、食べてない分、
私って損してるなってなるんですよね。
- 伊藤
- よかった、おんなじ。
でも田辺さんって、コスメとかもお好きじゃないですか。
思考の何パーセントぐらいが
食べることで占められてますか?
- 田辺
- 98パーセントぐらいかもしれない。
- 伊藤
- わたしも、わたしも!!!
- 田辺
- ハハハ!
- 伊藤
- よかったー。
- 田辺
- 私だけじゃなく、多分、ぼる塾4人、
みんなそうなんですよ。
- 伊藤
- そうなんだ。
聞く所によると、あんりさんはお酒をあんまり飲まなくて、
はるちゃんは飲むんだそうですね。
- 田辺
- めちゃくちゃ飲みます。
酒寄(さかより)さんは、量に関しては
人並みしか食べられないんですけど、
食べ物に対する知識がすごくて。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 田辺
- 酒寄さんも多分英才教育系ですね。
お母さまが詳しくって、そこから受け継いで。
その酒寄さんのお母さんの情報を、
私も引き継いでる感じです。
- 伊藤
- すごい。でも、食べ物のことが
思考の98パーセントを占めている、
とか言うと、ひかれません?
- 田辺
- 本当にそうです。
じゃああなたの好きな亀梨くんはどうなの、
とかいろいろ言われるんですけど、
亀梨くんも、その2パーセントのなかで、
だいぶすごいっていうことなんですよ。
- 伊藤
- じゃあコスメは‥‥?
- 田辺
- 100パーセントの中に全部入れるのは、難しいですよね。
- 伊藤
- わかる。そうですよね、
全部足すと、100じゃおさまらない。
でもスイーツに対する気持ちは98って言いたい。
- 田辺
- はい、気持ちは98です。
でも「コスメは?」と聞かれたら、
50を軽く超えちゃう。
パーセンテージがおかしくなっちゃうんですよ。
- ──
- ショコラスフレ、切れました。どうぞ!
- 田辺
- すいません。わー。あららら。あー!
(つづきます)
2022-01-29-SAT