「ほぼ日」の洗濯ブラザーズの連載を読みこんで、
リブレヨコハマのオリジナル洗剤を使いはじめた
伊藤まさこさんは、いろんなものを洗うなかで、
いつのまにか洗濯が「ほかの家事のあいまにする仕事」から
「その時間がたのしみな、いい時間」に
かわったといいます。
そこで「weeksdays」から、オリジナルの香りで、
おしゃれ着用の洗剤がつくれませんか、と相談をしたのが、
かれこれ1年前のこと。
時間をかけて、ほのかに香る、
シルク&ウール用洗濯洗剤が完成しました。
開発をしてくださった洗濯ブラザーズの次男こと
茂木康之さん(オンラインで)と、
こまかな業務を担当してくださった三男の
今井良さんをおむかえして、
洗濯にまつわる、いろんなお話をうかがいました。
茂木康之
洗濯ブラザーズ・次男。
1980年大阪府出身。
高校卒業後、アパレルのテキスタイル事業部に入社。
プレタポルテ、生地修整、検品、縫製指示、
インキング、加工技術、プレスを習得。
その後、クリーニング機器製造コンサルタント会社に転職、
クリーニング業界へアパレル仕上げの生産品質を提案。
2007年横浜市青葉区で、
宅配専門クリーニング店・リブレを起業。
2012年、ライブコンサート衣装の
クリーニングをスタートする。
2014年クレイジーケンバンドライブツアー衣装、
2015年劇団四季『ARADDIN』、
2016年cilque du soleil 『TOTEM』東京公演、
2018年cilque du soleil 『KURIOS』東京公演など、
現在も多くの舞台衣裳のクリーニングを担当している。
2016年に兄・貴史とともに株式会社バレルを設立、
洗濯洗剤ブランド「リブレヨコハマ」をスタート。
2018年、同ブランドでパリの展示会に出展、
ニューヨークのCorso Como NYCにセレクトされる。
現在では、ハイエンドファッションを扱うショップでも
販売されている。
2019年、アスコムより洗濯ブラザーズとして
『間違いだらけの洗濯術』を出版。
実際にエンドユーザーの方が持ちこんでくる
日々、変化するファッションの流行を追いながら、
衣類の生地に合わせて洗剤の開発を行ない、
いい服を長く着てもらうための
クリーニング業に勤しんでいる。
今井良
洗濯ブラザーズ・三男。
1974年神奈川県出身。
総合商社、外資製薬会社、IT企業を経て、
2018年2月に茂木貴史・康之兄弟と
「洗濯ブラザーズ」を結成。
一般目線で洗剤や洗濯をかみ砕いて
分かりやすく紹介する活動をしている。
ウェブショップ「enrich everyday」を主宰、
毎日が楽しくて気分が豊かになるモノ、
毎日に欠かせない大好きなモノを紹介している。
その3お洗濯ワークショップ。
- 伊藤
- アーティストの特別なステージ衣裳を洗うという
お仕事からはじまって、
一般の方も使えるような洗剤を開発なさった。
今、わたしのまわりのお洋服好きな友達も、
こぞってリブレヨコハマの洗濯洗剤を
使うようになっています。
そんなふうに新たな客層が増えたことで、
なにか変化はありましたか。
- 茂木
- 基本的に僕らのスタンスはブレていないんです。
僕らはアーティストの衣裳を
担当することが多いですけれど、
今回、三宿に出したお店は、どちらかというと、
自分たちのプロフェッショナルな仕事を、
みなさんとシェアしましょう、っていう店なんですよ。
だから、通常のクリーニング業務と洗剤の販売のほかに、
ワークショップ型のコーナーをつくりました。
- 伊藤
- ワークショップ?
- 茂木
- クリーニング屋なのにお客さんが洗うんです(笑)。
「自分が洗いたいものを持ってきてください」
ということで、
たて型とドラム式の洗濯機があって、
ガス衣類乾燥機も置いています。
そしてぼくらはお金をとらずにアドバイスをします。
こないだは、2時間かけて、
お客さんと一緒にニットを洗いました。
- 伊藤
- わぁ、楽しそう!
- 茂木
- そういうお店を三宿にオープンした理由としては、
実際、クリーニング屋さんに持っていったって、
受付で渡したあとは、
何をしているのかはお客さまは知らない。
また、僕らが、
家庭でこうやって洗ってくださいって言っても、
伊藤さんみたいにうまくいくケースはいいんですけど、
そうならないケースも、やっぱりあるんですよ。
でもプロの技って、
「このポイントが急所です」っていうものがある。
その急所を理解するには、実践がいちばんなんです。
だからワークショップがいいんですよね。
それをシェアするサービスをしよう、
と考えたのが、三宿のお店なんです。
- 伊藤
- いま茂木さんがおっしゃった、
直接だったら伝えられる
プロならではの洗濯のポイント、急所というのは、
たとえば、どんなことがあるんですか?
- 茂木
- そうですね、例えば、
脱水をした時の水の重みを理解すること。
- 伊藤
- えっ、えっ? 水の重み?
- 茂木
- これぐらいの脱水力でこのくらいの時間だと、
このくらいの水が抜けますよ、ということです。
脱水、みなさん、するじゃないですか。
手洗いをしても、洗濯機で脱水をしないと
水が切れないわけですから。
その、脱水した時のあんばいで、
縮むか縮まないかが決定するわけですから、
抜くべき水の重みを理解してもらいたいんです。
脱水し過ぎると縮みますよ。
- 伊藤
- なるほど。うちの洗濯機だと、
全自動で任せっきりが基本仕様で、
脱水は何分にするか、みたいな
細かな設定はないんです。
だからわたしは勝手に、
シルクのワンピースだから1分くらいかな、
と想像して、横で洗濯機の様子をみながら
「よし、今くらいかな?」と、
ピッと終了ボタンを押します。
その時考えているのは、
「あんまり脱水しすぎないこと」。
つまり、しわにならない程度の
水分が残っている状態で取り出そうということです。
‥‥って、かなり自己流が入りましたが、
そういういうことでいいんでしょうか。
- 茂木
- はい、素晴らしいです。それが一番いいです。
ようは水分を含ませながら
脱水をし終わらないといけない。
水分がなくなればなくなるほど、
衣類にシワが増えるんですよ。
そして、縮みにもつながっていく。
- 伊藤
- はい。
- 茂木
- 洗濯前の準備もそうです。
洗濯機に入れる前、たっぷりの水に洗剤を溶かして、
どれくらい泡立てたかは大事です。
でも、たとえば手洗い用の桶があるとして、
どれくらいの泡を立てて混ぜたらいいのか、
本を読んだだけではわからないですよね。
それもプロの急所ですが、
実際にお見せするとわかりやすい。
あるいは白Tをきれいにしたい時も、
急所を外すとそうならないんです。
先日も、あるお客様で、
1万円以上の白Tを買ったのだけれど、
それが黄ばんでしまったので、
うちの白Tが洗える洗剤を買って洗った、
でもきれいにならなかったとおっしゃる方がいました。
その白Tを拝見したら、
たしかに全然きれいに落とせていなかった。
- 伊藤
- それはなぜなんでしょう?
- 茂木
- 皮脂汚れって、酸化してしまうと
黄色っぽくなるじゃないですか。
それを落としたいという方には、
僕らのつくる粉洗剤をご案内してるんですけれど、
じつは前準備がすごく重要で、
「プレウォッシュ」という工程が必要ですよと
ご案内をしているんですが、
そのお客さまは、なさらなかったんですね。
- 伊藤
- プレウォッシュって、
洗剤をつけて、ブラシでトントンする?
- 茂木
- はい、そうです。生地に入り込んだ
汚れを浮かせる工程ですね。
面倒ゆえ、その手間を省きたいお気持ちはわかるんですが、
それをしないと、こびりついた黄ばみは、
洗濯槽のなかだけでは落としにくい。
で、僕らがそのTシャツをお預かりして、
いつものやり方で洗ったら、きれいに落ちたんですよ。
洗剤を変えたわけじゃないんです、
プロが作っている洗剤なので、自己流の前に、
プロ仕様の洗い方で使っていただきたいということです。
- 伊藤
- そうですよね。
- 茂木
- 洗剤を作ってるメーカーはいっぱいありますけど、
そういうハウツーを伝え歩いて、
しかもクリーニングを受け入れる会社って、
ほかにはないんですよね。うちしかやっていない。
- 伊藤
- うんうん。たしかに。
- 茂木
- 僕らはほんとに自信を持って商品を作っているので、
それをお客様と共有したいわけです。
クリーニングを母体に、
アーティストの衣装を洗うという
難しい仕事もしていますけれど、
一般のお客様に衣類のケアを伝えるのも大事です。
三宿のお店には、
プロの洋服のスタイリストの方もいらっしゃいますし、
一般の方も来られますよ。
- 伊藤
- 行きたいです。予約制なんですか。
- 今井
- いや、普通に来ていただければ、
誰かしら、対応のできるものがいます。
- 伊藤
- ちゃんとした洗濯の方法を知ると、
衣類を長持ちさせることができますよね。
逆に言うと、みなさんは
「衣類を長持ちさせるための洗剤」を
つくっているとも言えますね。
- 茂木
- はい。僕らはずっと、
そのことを考えています。