いつのまにか身の回りにシルク製品がふえている。
それは、歳を重ねたから(よさがわかるようになった)?
それともシルク製品が流行っているの(みんなも好き)?
それにこのごろのシルクって、なんだか昔とは
印象が変わってきたような‥‥???
ドレスハーセルフのシルク製品の発売を前に、
シルクについてのおしゃべりをしました。
(司会は「ほぼ日」です。)

深澤絵さんのプロフィール

深澤絵 ふかさわ・かい

株式会社Soldum代表。
1985年岩手県生まれ、上智大学卒業。
「日本人らしい創造的な仕事の真の価値や
魅力を発信すること」をコンセプトに、
セールスプロモーション/マネージメント/ブランディングを
展開する株式会社Soldumを立ち上げ、
アート/デザイン/工芸/食など多岐に渡る
プロジェクトに携わる。

●ドレスハーセルフのウェブサイト
●手から手へ。

平野さゆり

平野さゆり ひらの・さゆり

「ほぼ日」いちの「シルク好き」。
この日も、ほぼ全身をシルクでかためて参加。
所属している商品事業部では、
「O2」「つきのみせ」などアパレルの担当が多い。

倉持奈々

倉持奈々 くらもち・なな

「ほぼ日」で糸井重里のマネジメントを担当。
「weeksdays」と横浜ベイスターズの大ファン。
伊藤まさこさんとは同い年で、
「暑がり」という共通項も。

その2
シルクの印象が変わってきた。

伊藤
さゆりさんは、シルクは?
平野
シルクはもう、大好きで。一途です。
持ってきました、今日。
伊藤
わぁ、ぜひ見せてください。
平野
これはシルクコットンのストールなんですけど、
アトリエシムラのものです。
深澤
きれいですね。触ってもいいですか?
平野
はい、もちろんです。
深澤
‥‥うわぁ!
平野
そして、これは10年くらい前に買った、
インドのシルクのスカーフです。
ちょっと使い過ぎて、破れているんです(笑)。
伊藤
良さそう!
倉持
ほんと、気持ち良さそう。
さゆりさんは、スカーフ以外にも
シルクのものって、いろいろ持っているんじゃないですか。
平野
そうですね。もう、レギンス、タンクトップ、
ロンT、ワンピースと、シルクだらけです(笑)。
──
おおっ。
平野
今日のこのパンツもシルクですよ。
深澤
へぇぇ!
伊藤
そうなんだ!
平野
インドのものですね。
深澤
不思議ですよね、織り方とかで、
いわゆるシルクの印象とはちがう。
平野
生地は薄いんですけど、温かいんですよね。
いまは下にレギンスを穿いていますが、
真夏でもきっと気持ちいいんだろうなと思います。
倉持
(触って)ほんとだ、見た目よりも薄い!
平野
そうですよね。
深澤
ハリ感がすてきですよね。立体的で。
あ、刺し子なんですね!
──
自分の担当してるブランドでも、
シルクのものがありますよね。
平野
「つきのみせ」っていう、
サニタリーショーツだったりとか、
女性が生理期間に気持ちいいものを着たいよね、
っていうところから始まったコンテンツを
担当してるんですけど、そのなかで、
シルクの肌着のブランドを扱っています。
深澤
お客様としては、幅広いんですか? 年齢層とかは?
平野
20代から、60、70、80代までいらっしゃる。
伊藤
そうなんだ。すばらしいですね。
うちの母は、スマホやパソコンで買い物をしないけど、
できる人はできるんですよね。
そっか、さゆりさん、ほんとうにシルクが好きなんですね。
あらためてこのスカーフも素敵。
平野
薄くて、軽いのに、巻いてると、
それだけでなんだかほわっとするんですよね。
もちろんウールも温かいですし、
カシミヤも好きなんですけれど、
それとはまた違う「うれしさ」がありますよね。
カシミヤやウールはガチっと守ってくれているような感じ、
シルクはそこに空気があるみたいな感じがします。
柔らかい空気がずっとついてくるみたいな‥‥。
レギンスとかも、シルク製品を愛用してて、
パンツスタイルで動く時に、そのよさをとくに感じます。
伊藤
保温だけじゃなくて、快適なんですよね。
平野
そうですね。ちょっと汗ばんでも嫌じゃない。
いつも不思議だなって思ってます。
伊藤
わたし、今日、意識してないでつけてきたんですが、
最近、首まわりにシルクのスカーフを使うんです。
春になると、カシミヤじゃなくて、
こういうのを巻いたほうがあったかいし、気持ちいい。
倉持
見た目、パリッとしてるかなと思ったら、
触ると、すごくやわらかいんですね。
伊藤
ちょっと外してる時も、手に持っていると気持ちいい。
ちょっと安心するというか。
深澤
気持ちいいものを持つとか、身につけるって、
こころの安定にも、すごいいんだろうなって思いますよね。
伊藤
絶対、そうですよ。
それにしても、昔に比べて、
シルク製品が多くなってきたような
気がするんですけど、そんなことないのかな? 
わたしが気にするようになっただけなのかしら。
深澤
世の中の需要が高まっているのはほんとうですね。
──
昔って、シルクといったら、
極端に光沢のあるイメージでしたけれど‥‥。
伊藤
ちょっと熟女っぽいイメージ?
一同
(笑)
倉持
ちょっとわかります。
シルク、イコール、ゴージャス、
っていう印象がありましたよね。
若い頃、見ているだけの
高級下着もそういう感じでした。
生地が硬そうで、
そんなに心地いいのかな? って。
深澤
つっぱる感じのイメージでしたよね。
平野
最近、たしかに、「これ、シルクですか?」
という柔らかい印象の製品が、
すごく増えました。
伊藤
そうなんです。増えたように思うんです。
深澤
先ほどのシルクモダールの話もそうですけど、
織り方とか、ウォッシャブル加工であるとか、
そういったことで、光沢のある「THE・シルク」から、
「え? これ、コットンじゃなくてシルク?」
みたいなものまで、
ほんとに幅広い製品が生まれていますよね。
そもそも需要が増えたっていうことがありますが、
そのなかで着やすさに則したものが、
技術の向上によって生まれたんです。
それゆえにシルク製品の幅が
広がっているのかなって思います。
──
そうは言っても、原料は蚕(かいこ)ですから、
減っていくものかなっていう気もします。
国産では、平成20年から平成30年の10年間で
養蚕農家、繭の生産数が7割減ったと
農水省がレポートを出していますね。
深澤
そうですね。
伊藤
たしかにね。
深澤
国際的には、シルクは、
中国の生産力に頼っているのが現状ですが、
技術力、品質とともに価格も上がっていて、
また、よいものを作る工場が限られてきています。
ドレスハーセルフもそうですけれど、
20年くらいずっとお付き合いしている工場で、
家族のようなお付き合いのなかで仕事をしているので、
品質や価格が保証できているんですよね。
でも、ほんとうに競争が激しくて、
新規でシルクの生産を確保するのは、
メーカー、職人、いずれもタッグを組むことが
すごく難しくなってくると思います。
逆に需要はますます高まるばかりという感じなので、
いい方向、いい形で競争が激しくなるのは
必然かと思いますけれど‥‥。
──
世界的にも、シルクは愛されている素材なんですよね。
シルクロードの時代から‥‥。
深澤
はい、そのなかで、日本も、ここ5年くらいで、
爆発的にシルクの人気が高まっているように思います。
伊藤
やっぱり、そうなんですか。
深澤
はい、ほんとうに、この数年だと思います。
一気に、若い層に拡がったんですよね。
20代、30代前半の方も、着るものは天然素材で、
できればシルク、っていう気持ちがグッと進んだ。
それは「どう見えるか」よりも、
気持ち良さを大事にしたいとか、
どういう自分でありたいかっていうところに、
意識的に、グッと寄ったのではないかなと想像します。
しかも、このコロナ禍の状況では、
その気持ちが加速しているように思えます。
伊藤
若い層にも。
深澤
はい。
それは「天然でほっこり」というイメージではなくて、
たとえばSDGsへの認識が高まったことで、
化学繊維から天然繊維へと
意識が向いたところもありますよね。
ドレスハーセルフを立ち上げた2017年当初、
テーマがシルク、カシミヤというところを掲げた時、
「あ、そこを中心にしているブランドなんですね」と
注目度も高かったかなと思うんですけど、
今は当たり前に、いろんなブランドが
シルク、カシミヤを扱い始めていると感じます。

伊藤
わたしは就寝時に
シルクのスリップドレスを着ているんですが、
十年以上前に買ったもので、
ずっと大事にしてたんですけれど、
ちょっとよれっとしてきてしまって。
それで新しいものが欲しいなと思って、
今回、ドレスハーセルフのみなさんにお願いをしたんです。
倉持
私も、そういうものを着ていますよ。
伊藤
やっぱり?
倉持
さすがに、最低限は着ています(笑)。
シルクのシーツなら裸で眠りたいくらいですけれど。
伊藤
やっぱりそれはシルク?
倉持
それがわからないんです。
素材を意識して購入したわけではなくって、
「ツルツルしていて気持ちいい」というだけなので‥‥。
なんだかわからないままに、ずっと着ています。
伊藤
そうなんだ。たぶんそれはシルクだと思うな。
長く着ているということは、
買った当時は、素材がなんだろうかということを
そんなに気にする年齢じゃなかったのかも。
倉持
そうかもしれないですね。
あとは、ドレスハーセルフの
シルクモダールの上下もよく着ていますよ。
伊藤
ドレスハーセルフのことを知ったのは?
倉持
weeksdaysで、です。
それまで買ってた洋服のブランドで、
シルクっていうことを前面に出しているものって
あまり見かけたことがなかったんです。
伊藤
シルクに特化したブランドってそんなにないですよね。
倉持
そういえば、先日、美容院に行って話をしていたんですよ。
髪の毛を扱う人たちって、
すごく手が荒れるじゃないですか。
でも唯一シルクのものだけは
身につけてて大丈夫なんだとおっしゃっていて。
けれども「これだ!」っていうブランドが
見つけられないということだったので、
ドレスハーセルフがいいですよって
おすすめしたばっかりだったんですよ。
深澤
ありがとうございます。
倉持
もっと大勢のかたにお知らせしたいですよね、
おしゃれな感じでシルクを使えるブランドって、
多くの人が探してるんだなと改めて思いました。
伊藤
ドレスハーセルフは、リピーターの人がすごく多いとか?
深澤
そうなんです。リピーター率が5割ぐらいです。
それってかなりすごいことだと私自身も思うんです。
母体が、靴下の「山忠」ですから、
やっぱり靴下からとか、レギンスとか、
足首ウォーマーなど、温めるっていうところからの
入り口の方が多いんですけれど。
伊藤
そうなんですね。
深澤
山忠の製品は、温める部分、肌に触れる所をシルクで、
ということを大事にしていますから、使っていると、
「温めながら肌が健やかになっていくこの感覚、
いったいなんだろう?」って、
アパレル(ドレスハーセルフ)のほうにも
興味を持ってくださるんですよね。
伊藤
そうなんですよ、最初は小さな面積からなんですが、
どんどん、大きくなっていくんですよ、
シルクで身を包みたい、という気持ちが。
深澤
そうですよね。
今回使っていただいているシルクサテンって、
着た時は、少しヒヤっとするような
冷たい感じが特徴なんですよね。
夏は、それがとくに気持ちいいですけれど、
そのあとって、ほんとに自分の肌の温度で、
ふわっと温かくなっていく感覚があります。
冬は、最初はヒヤっとするんだけれども、
だんだん柔らかい温かさになっていく。
ひんやり感からのぬくぬく感っていう気持ち良さの特徴は、
シルクサテンが出やすいですね。
伊藤
ことしのお正月に更新した対談で、
深澤直人さんのアトリエにお邪魔したんですが、
目立たない空調が全館をめぐっていて、
一軒家、まるごと、温度と湿度が
ほんとうにちょうどいいんですよ。
寒くもないし暑くもなく、
足先だけが冷えるということもないんです。
それはもう、気づかないくらいの絶妙さで、
それって結局、ストレスがない、
ということにつながっているんだなって思いました。
シルクのものも同じですね。ストレスがない。
今回つくったドレスハーセルフのパンツを履いて、
その思いを強くしました。
平野
パンツも、やっぱり?
深澤
そうなんです。パンツね、いいんですよ。
倉持
とろみがすごい!
平野
ああ、これはよさそう。
伊藤
ワンピースの下に穿いたりしてもいいし。
倉持
もしかしたら、シルクを着てると、
静電気が起きにくくないですか?
冬場にパチパチしないなと感じます。
深澤
静電気、起きにくいですよね。
伊藤
そういえば、そうですね。
──
シルクの特性なんでしょうね。
ドレスハーセルフがいいなって思うのは、
着心地のよさ、デザイン性の高さ、品質、
いずれも保証されていることですよね。
深澤
そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
──
シルクも、ほんとうの意味での
市場における最高級を使うのではなく、
価格との間で、相当いいランクのギリギリを攻めていると、
山忠の方がおっしゃっていたと記憶しています。
価格が手頃っていうことが魅力だけれど、
そのための努力を、裏ではすごくなさっている。
「安かろう、じゃないです」と。
深澤
そうですね。やっぱり、
「いいものを適正価格で」っていうのが、
絶対的な山忠のポリシーなので。
伊藤
高ければいいものは、そりゃ、できるでしょうけれど、
それ、わたしたち、気軽に試しづらいし。
深澤
そうですね。
伊藤
同じ形で、前だったらリネンを選んでいたのが、
自分にだんだんと水分がなくなってくるから、
ちょっとツルンとした見た目のものを着たい。
そういう気分にもぴったりなんですよ。
深澤
シルクって、やっぱり光を集めるというか、
いやらしくなくキラッとする感じがありますよね。
でも、さきほどおっしゃったような、
昔のシルクのギラッとした感じではない。
この色味の出し方とかに、細かい差配があるんです。
平野
私、昔思ってたシルクの生地と印象が違いました。
マットな感じもありますよね。
艶とマットがちょうどいい感じ、っていうのかな。
深澤
まさこさんが、このシルクサテンシリーズを
気に入っていただいている理由は、
もちろん触り心地もあると思うんですけど、
この質感でしょうか、
一番、いいと思っていただいているポイントって。
伊藤
そうですね。あと軽さです。
深澤
ああ、たしかに、たしかに。
軽いですね。
伊藤
形もいいんです。
ゆったりしているのに、
だらしない感じにならないんですよね。
──
ウエストの感じは伊藤さんにご希望をいただいて、
weeksdaysだけのカスタムっていう形で
つくっていただきましたよね。
深澤
そうですね。
(つづきます)
2022-03-29-TUE