この春夏の「weeksdays」では
「ワンピースとかごバッグ」を特集します。
3回にわたってふたつずつ、
計6つのブランドの製品をご紹介。
その第一弾となるのが、fog linen workでおなじみの
関根由美子さんの「miiThaaii」(ミーターイー)の
シルクコットンのワンピースと、
「weeksdays」でもおなじみの帽子ブランド、
苣木紀子さんの「chisaki」のかごバッグです。

関根さんにとって新しい素材である
インドのシルクコットン。
帽子づくりをしてきた苣木さんのはじめてのバッグ
(なんと、帽子をさかさまにしたかたち!)、
いずれも「なるほど!」の完成度ですよ。

できあがった製品を確認しつつ、
伊藤まさこさんをまじえての鼎談、
どうぞおたのしみください。

関根由美子さんのプロフィール

関根由美子 せきね・ゆみこ

ふだん使いをテーマに、リトアニア産の麻素材で。
シンプルなデザインのキッチンリネンやベッドリネン、
ウエアなど、日々の暮らしに寄り添う布製品と
雑貨を展開する、下北沢「fog linen work」のオーナー。
すべてのアイテムがオリジナル、
関根さんはそのデザインと企画を行なっている。
また、南インドの人たちの日常着「ルンギ」の生地を使って
いろいろな商品を作るべく、あたらしいブランド
「miiThaaii」(ミーターイー)を立ち上げ、
自らが現地への仕入れに赴いている。
下北沢のショップでは
fog linen workとmiiThaaiiのオリジナル製品のほか、
インドのワイヤーバスケットや雑貨類、
世界各国のアクセサリーやインテリア雑貨を販売。

■fog linen workのウェブサイト

■miiThaaiiのウェブサイト

■fog linen workのインスタグラム

■miiThaaiiのインスタグラム

●関根さんと伊藤さんの対談
「さがす、えらぶ、つくる。」

苣木紀子さんのプロフィール

苣木紀子 ちさき・のりこ

偶然教わったベレー帽作りから、
繊細なその世界に惹かれ独学で帽子作りを始める。
企業にて帽子デザイナーとして12年従事した後、独立。
日本の職人の技術、志の高さ、心遣いなどに共感し、
日本製に重きを置き、2016SSコレクションより
「chisaki」の名でブランドをスタート。
その時々に出会ったさまざまな国の材料やパーツを使用し、
製作をつづけている。
趣味は登山とロッククライミング。
東京のアトリエと夫の住む北海道の自宅を往復する日々。

■chisakiのウェブサイト

●苣木さんと伊藤さんの対談
「自由でしなやかな帽子作り。」

その1
さかさま? 
いいえ、これが正位置です。

伊藤
関根さん、苣木さん、
今日はこうして久しぶりに
お目にかかれてうれしいです。
「ワンピースといっしょに、かごバッグを持ちたい」
と思ったところから今回の特集がうまれたんですけれど、
思った通り、関根さんのつくられるものと、
苣木さんのつくられるものがぴったりで、
コラボをしていただいてよかったなって思っています。
ありがとうございます。
関根
こちらこそありがとうございます。
苣木
思い出します、まさこさんからある日、
1枚の写真が送られてきたのを。
それが、どう見ても
「帽子がさかさまに置いてある」様子なんですよ。
これはなんだろうと思ったら‥‥。
伊藤
急に、ごめんなさい、ほんとうに。
苣木
「あれ? うちの帽子‥‥だよね?」って。
それがさかさまに置いてあって、
「この感じ、かわいいですね」ってメッセージが。
伊藤
そうなんです。
「これでバッグが欲しいんですけど」って。
──
苣木さん、さぞびっくりなさったでしょう。
そもそもバッグ屋さんじゃないのに、
伊藤さんはどうして
それを思いついたんですか。
伊藤
ある日、ベッドに横になって、
椅子の上にたまたまchisakiの帽子を
さかさまに置いていたのが
ちょうど目線の高さで見えたんですよ。
それでハッ! と。
かねてから、ちょっと柔らかい帽子を見ると、
「帽子を逆さまにしたかたちのバッグがあったら、
きっとかわいいのにな」って考えていたんだっけ、って。
それで「このかたちのバッグがあったらいいのに!」って、
苣木さんに連絡をしました。
そうしたら、すぐに、面白がってくださって。
苣木
ええ、そりゃ、もう。
関根
確かに! 素材は、帽子に使うのも、
バスケットに使うのも、同じですものね。
苣木
そうですよね、帽子屋である私にとって、
素材は馴染みがあるものでした。
ところが、バッグをつくったことがないものですから、
「大きさ」がわからなくって。
私に固定概念があったんでしょうね、
バッグにするなら、A4サイズくらいの書類も
すっぽり入るくらいの大きさがほしい、と。
──
「千と千尋の神隠し」の
湯婆婆(ゆばーば)がかぶれるくらいの‥‥。
苣木
(笑)そう! 巨大になってしまって。
ところがまさこさんに相談したら、
「別にそんな大きな荷物が入らなくてもいいんですよ」。
‥‥びっくりしました。
──
ひょっとして、苣木さん、
ふだん持っているバッグは大きい派ですか。
苣木
そうです。私、荷物が多いんですよ!
伊藤
たくさん持ち歩く派なんですね。
苣木
はい。伊藤さんはうんと小さい派なんですよね。
伊藤
はい。スタイリストという仕事柄、
撮影のときは大量の荷物を運びますから、
その反動なのか、ふだん出歩くときのバッグは、
うんと、小さいんです。
打ち合わせでも、メモや写真はスマホを使い、
バッグにはお財布と鍵とハンカチが入れば大丈夫。
それに、昔から小さいバッグが好きだったんですよね。
苣木
確かに、伊藤さん、仕事の打ち合わせで
私のアトリエに来てくださるときも、
小さいポシェット一つ、だったりしますよね。
伊藤
そうなんです。
だから、苣木さんにつくっていただく
「帽子を逆さまにしたバッグ」も、
アクセサリーの感覚で持てる、
というくらいでいいんじゃないかな? って。
──
たしかに、それが大きなものだったら、
ふつうの帽子のサイズじゃなくなって、
やけに大きな帽子を持って歩いている人だな、
って、なっちゃいますものね。
苣木
結局、まさこさんにアトリエに来ていただいて、
私がつくっている帽子のなかから
「これ!」というものを選んでいただき、
それを今回のかごバッグの原型にしたんです。
何種類か並べた帽子から、
「これがかわいい!」と麦わらのカンカン帽を選ばれた。
即決でしたね。
伊藤
そうでしたね(笑)。
ちなみに関根さんは出かける時、
荷物が多い派ですか、少ない派ですか。
関根
私、少なめです。
伊藤
そういえば、先日、おうちにお伺いしたら、
とってもスッキリなさっていましたね。
必要なものがきちんとそこにある、というような。
おうちもそうだし、持ち物もそうなんですね。
苣木
おうち、写真で拝見したことあります。
伊藤
苣木さんは?
苣木
私は真逆で、持ち歩くものが多いです。
そもそもものが多くて、
アトリエも自宅も「そのあたり」に、
ちょこちょこモノを飾っちゃいます。
──
荷物の多い派の苣木さんは、
この小っちゃいサイズ、大丈夫でした? 
苣木
じつは、大きいサイズも試作したんですよ。
伊藤
そうでしたね! 
でも、大きいといっても、
湯婆婆サイズじゃなくって(笑)、
ひとまわり大きめ、という感じでしたね。
さあどうしよう? と迷い、
大小の2色、つまり4パターンつくることを
検討したんですが、
いや、これじゃ、お客さまが迷われる、
もうここは「持っているだけで嬉しい」ということを
大事にしていいんじゃないかな、って判断をしたんです。
苣木
それで小さいほうだけにしましょう、と。
小さいと、シルエットがちょっと丸くて、
麦わらで作った形のよさが出るんですよ。
──
苣木さん、バッグづくりは初めてだったと
おっしゃっていますけれど、
じっさいにはどうやって作られたんですか。
苣木
まず、実際かぶれる帽子をつくりました。
極端に言えば、それを逆さまにしただけなんですよ。
原型は平たいカンカン帽で、
ちょこんと頭にのせるものなんですが、
伊藤さんが「そのバランスがすごく好きです」と
おっしゃってくださったので、
そのまま折り曲げて、リボンを巻いてみたところ、
「これがいい!」となって。
伊藤
そうでしたね!
苣木
バッグにするための工夫としては、まず、
ボディの切り込みを入れたところから、
リボンをぐるっと下を通したことですね。
そのことでバッグとしての丈夫さも出ました。
──
なるほど、リボンはじっさいの帽子でも、
こんなふうにあごで結ぶタイプがありますから、
とても自然に見えますね。
さらに、帽子の内側に、
巾着のようなふくろ状の布をつけて? 
苣木
はい。最初、それがない状態で作ったところ、
浅いので中に入れておいたものを
落としがちだと気づいたんですね。
実際に自分で試してみたら、スマホが落ちちゃったり。
ですからこんなふうに巾着タイプの袋を入れました。
端を風呂敷のように結ぶことができるので、
中に入れたものを落としにくいですし、
バッグというものとして、
「結ぶ」という所作が一つあるのもいいな、と。
──
帽子のつばの端にホックがついていて、
かたちがホールドできるようになっているんですね。
苣木
そうです、上が外れるようになっています。
──
そして、リボンは、結び方が自由。
苣木
最初、きれいな結び目の状態のままに
したほうがいいならば、
片蝶結びにして糸で縫い付けようか、
という案もあったんです。
でも、やっぱり、
開ける、閉じるの動作ができたほうがよいかと、
ご自身で結んでいただくかたちにしました。
お客さまの好きなように、どんなふうに結んでもいいし、
結ばずに、リボンを垂らしていただいてもいいですよ。
関根
それもかわいいですね。
(つづきます)
2022-04-03-SUN