バリ島に住む土屋由里さんと、
マラケシュに暮らす石田雅美さん、
ふたりが運営している
「warang wayan」というブランド。
「ほぼ日」では「生活のたのしみ展」でもおなじみです。

ブランド立ち上げの頃からの
「warang wayan」ファンだという
伊藤まさこさんですが、
一緒にものづくりをするのは今回がはじめてです。

今回、「warang wayan」がつくってくれたのは、
大人っぽく、かわいいかたちのかごバッグ。
その「できるまで」の物語もさることながら、
「warang wayanができるまで」のお話も、
とっても興味深いものでした。

日本・インドネシア・モロッコを繋いでの
オンラインでのインタビュー、どうぞおたのしみください。

warang wayanのプロフィール

バリ島に住む土屋由里さんと
マラケシュに暮らす石田雅美さんが
2000年に活動を開始した雑貨製作・販売のユニット。
ワランワヤンインドネシア、
ワランワヤンモロッコと、
2つの国・別々の会社をつくって運営をしつつ、
ひとつのブランドとしての活動をつづけている。
インドネシアではかご製品と木の道具、
モロッコではかご製品と革製品を中心に
オリジナルアイテムを制作・販売。

●ワランワヤンインドネシア

●ワランワヤンモロッコ

その3
今回のバッグは、インドネシア製。

──
さて、かごバッグの話に戻りたいんですが、
伊藤さんからエレガントでかわいい、
これからつくるバッグのヒントとなるような
写真が送られてきたと。
それでお2人はどうやって
このアイデアに至ったんですか?
石田
いただいたまさこさんの私物のバッグの写真は、
どれもすごくかわいかったんですよ。
大きいけど重いものは入らないバッグとか、
カゴと木の持ち手の組み合わせがすてきなバッグとか。
でも、かごって、自分でデザインするっていうよりも、
編む技術と素材がうまく合致するか、
それがけっこうわたしたちにとっての仕事なんです。
そのなかでまさこさんの求めるものをつくるのには
どうしたらいいのかなぁと、
ずっと悩み続けちゃって(笑)。
そうしたらまさこさんのほうから
「持ち手を革にしたら?」っていうアイデアを
いただいたんですよね。たしか。
伊藤
だんだん思い出してきました。
warang wayanさんのつくったかごバッグに、
持ち手が革のタイプがあったんですよ。
これとは、全然かたちは違うんですけれど。
土屋
はい。定番でつくっていましたね。
それは持ち手が2つでしたけれど。
伊藤
それで、いくつか候補が出てきたなかから
ひとつに絞るのに、革でリボンを、
というアイデアが出たんじゃなかったかな。
土屋
そうです、そうです。
まさこさんが、イラストを描いてくださって、
それが、リボンのアイデアだったんです。
その絵を見たときに
「これはすごくかわいい!」と思って。
伊藤
すみません、思いつきだけで。
そしたら、2人がすごく喜んでくださったのが、
持ち手が結べるということは、
外せる、つまり重ねることができる。
だったら国際貨物でコンパクトに送れる! と。
かごって、軽い割にかさばるので、
まるで空気を運んでいるみたいに容積が増えて、
貨物の送料がたいへんなことになるのを、
それでずいぶん節約できるって。
土屋
そうです、そうです。
伊藤
わたしは輸送の手段とか全く考えてなかったけれど、
そうだよね! と思って。結果的に、よかったです。
キュッて結ぶことで、
ワンハンドルよりちょっとかわいい感じにもなるし。
土屋
持ち手の長さ、太さとかもいろいろやってみて、
この太さがやっぱりいいなっていうのが
自分で決まったときに、
「やっぱり、すごくかわいいな!」と思いました。
石田
かわいいし、重なるし、機能的だし。
「これ一択でいきましょう!」
っていう感じでしたね(笑)。
伊藤
結べる柔らかい革があってよかった。
土屋
革は、初め、ヤギ革とかでもやってみたんですけど、
もうちょっと硬い感じになったんです。
やっぱり柔らかいほうが、持ってるときに感触がいい。
それでこの羊の革を使うことにしました。
伊藤
まさに、この感じをイメージしてました。
持ったときも気持ちいいですよね。
さらにそこから、内側の布をどうしようとか、
ディテールを考えて下さって。
土屋
はい、かごって中がグチャグチャしちゃうから、
ポケットがあったらいいなとか、
じゃあそのポケットの位置はどこがいいんだろうとか。
──
こういう製品づくりに、
モロッコとインドネシアでの
分担はあるんですか? 
石田
ないです。
土屋
これはすべてインドネシアで担当しました。
石田
すみません、モロッコ、当時、
まさこさんの要望に応えられる余力がなく、
インドネシアの姉さんに頼ってしまいました。
──
なるほど。
今回はワランワヤンインドネシアが主導。
伊藤
でもまた来年もあるかもしれませんし。
わたしの家にある、
ずっと使ってるバブーシュとそのかごは、
ワランワヤンモロッコですよ。
石田
でもこんなこと、言い訳なんですけれど、
今回インドネシアだけでよかったなぁ! 
って、実は思っていて。
戦争で、モロッコからの空輸が止まっちゃって、
ほぼ日の「生活のたのしみ展」の
準備もしてるんですけど、
今、とても大変で、どうしよう? って。
やっと別の経由便が始まったんですけど、
送料が3倍になってしまって‥‥。
そういう意味で、このかごバッグが
インドネシアでつくれたのは、
運がよかったなと思うんです。
日本に送るのに、そんなにストレスがない。
伊藤
なるほど! 
──
それでは、あらためて、
インドネシアの土屋さんに、
このかごバッグのつくりについて、
教えていただけたら。
土屋
はい。編み地(ラタン=籐)はバリ島ではなく、
カリマンタンっていう別の島のものなんです
(カリマンタン=インドネシアとマレーシア、
ブルネイにまたがる「ボルネオ島」の
インドネシアでの呼びかた。
西・中部・南・東・北の5州にわかれている)。
今度インドネシアが首都をカリマンタン東部に
移動するって言ってるんですけど、
そこにこのラタンがあるんです。
それこそカリマンタンの人は、
このかたちではないんですけど、
昔から畑や魚を獲りに行くときに
トラディショナルな形のかごを使いますし、
床材みたいなものをつくったりもしますね。
──
ほんとに生活に普通に使われているものなんですね。
土屋
そうですね。でもバリ島の人は
そんなに使っていないんです。
やっぱりその素材が採れるところで、
それを使っているという感じですよね。
──
柔らかいですよね。とっても。
土屋
そうなんですよ。
──
織った状態で来るんですか?
土屋
もうこのカゴの形状(円筒形)で織り上がって
バリ島に来るんです。
そして底に貼ってある革は、
私の家にある工房で、バリの職人さんがつけます。
革(羊革)などの材料は私が選んで買ってきます。
内側の黒い布も同じです。
──
おうちに、工房があるんですね。
土屋
はい。家の中でつくっています。
伊藤
元となるこの円筒形のかたちは土屋さんが?
土屋
元々この円筒形はあったので、
完全なオリジナルではなく、
サイズをお願いしたものになります。
でもなかなか、
手仕事なので誤差があって、
ちょっと細長いとか、ちょっと大きい、
というものが混じるんですけれど。
──
ディテールがかわいいですよね。
こういう、白黒の布を使うとか。
土屋
これはバリ島のヒンドゥーで使われるものなんですよ。
そういうものを取り入れています。
伊藤
なるほど! よくわかりました。
ほんとうに、素敵なものをつくって下さって、
ありがとうございました。
土屋
こちらこそありがとうございます。
石田
ありがとうございました。
──
最後に、お使いいただくかたへの注意点などあれば、
教えていただけますか。
土屋
編み地のラタンも布も、柔らかい素材なんですけれど、
わりと丈夫なので、ペットボトルを入れるとか、
そういう使い方も大丈夫ですよ。
あとは、若干、ラタンの採れる時期によって、
ちょっと白っぽかったり、茶色ぽかったたり、
そういうばらつきはあります。
それは自然のよさということでご了承ください。
伊藤
あと保管にはあんまり湿気の多いところは避けるとか。
かご全般、そうですけれど、革も使っていますしね。
土屋
そうですね、一般的な革製品と同じで、
湿気のあるところでの保管は
カビの原因になるのでご注意くださいね。
伊藤
よかったです、お2人とお話ができて!
今度は直接お目にかかれますように。
土屋
あっ、「生活のたのしみ展」行きますよ。
伊藤
え? いらっしゃるんですか?
土屋
はい、一応、その予定です。
伊藤
そうなんだ! 
それでは、東京で会いましょう! 
嬉しい! 
土屋
はい、東京でぜひ。
石田
マラケシュにもいらしてくださいね。
ピンクの町ですよ。大観光地です(笑)。
伊藤
すごく行きたいんです!
土屋
パリから近いよね? 3時間ぐらい?
石田
そう、パリから3時間。
一同
へぇ~!
伊藤
ふむふむ、パリと組み合わせて、行けますね‥‥。
石田
次は頑張ります!
土屋
(笑)
伊藤
それでは、失礼します。
土屋・石田
失礼しま~す。
伊藤
ありがとうございました!
(おわります)
2022-04-14-THU