伊藤まさこさんが、
気持ちのいいパジャマをみつけました。
ブランド名はpageaérée(パージュアエレ)。
パリ在住のフォトグラファーである
篠あゆみさんが、
みずからの入院の経験をもとにつくった
「うんと快適な」パジャマと部屋着のブランドです。
パリと東京をむすんで、
このパジャマができるまでのことを中心に、
たくさんお話をうかがいました。
篠あゆみさんのプロフィール
篠あゆみ
多摩美術大学卒業後、スタイリストに。
1999年の渡仏をきっかけにフォトグラファーに転身。
2年半にわたった自身の闘病経験を生かして、
2021年春、着心地のよさを追求したパジャマのブランド
「pageaérée(パージュアエレ)」を発表。
03余白が多いページのように
- 伊藤
- pageaéréeができあがるまでは、
それこそいろいろ大変だったでしょうね。
- 篠
- 大変でした!
- 伊藤
- ですよね。
パターンとか。
- 篠
- 2年半ぐらいかかりましたね。
失敗も、右往左往も、
遠回りもいろいろしました。
パターンを引いてもらってから
生地が決まったんですが、
この生地はこのパターンじゃダメだ、
みたいなことになって、やり直しとか、
あとは、いざっていうときに、
コロナがあって、
どうにも動けなくなりましたし。
- 伊藤
- うーん。
- 篠
- 展示会ができなかったりとか、
工場がストップしてしまったり、
生地を染めることができなくなったりとか。
- 伊藤
- いまはどうですか?
コロナも、もう3年目で。
- 篠
- 部屋着的なウェアに関しては、
コロナ前よりもみなさんが
お家にいる時間を大切にしたい、と思われているので、
以前よりはいいと思うんですけど、
でも逆に、経済的な面であったり、
材料の値段が上がってしまったりとか、
悪影響みたいな部分も
出てきているように思います。
- 伊藤
- なるほど。
いいものは欲しいけれども、
材料が高くなったり‥‥。
- 篠
- お客さまも、部屋着やパジャマには
ここまでの予算はかけられないとか。
- 伊藤
- 洋服にはかけても‥‥。
- 篠
- パジャマまではちょっと、って。
- 伊藤
- パジャマこそ、なんですよ!
って思うところもありますよね。
- 篠
- そうなんですよね。
パジャマって家族には見せますけど、
他人に見せるものじゃない。
通常は家の中で着る自分だけのものですよね。
でも私は逆に、
人が見ないところで何を着るかっていうことが、
実はすごく大事だと思っているんです。
何を着るのか、自分はどう存在するか、
みたいなこと。
ちょっと生きかたにも関わってくるようなこと。
- 伊藤
- たしかにそうですねぇ。
玄関を出たらピカピカだけど、
その前も整えておきたいっていう気持ちは、
やっぱり大人になるとありますよね。
- 篠
- そうですよね。
- 伊藤
- 実際、フランス人のお友達とかも
pageaéréeのパジャマを着ていますか。
- 篠
- はい、着ています。
みんなびっくりしてくれますよ。
こんな気持ちのいいものはない、
っていうぐらいびっくりしますよ。
- 伊藤
- へぇーー。
そうか、
そうですよねぇ。
- 篠
- あとはバカンス中に
水着の上に着たいとか。
- 伊藤
- へぇ!
いいかもしれないですね。
- 篠
- 本当にバカンスだったら、
一日中これ着ていられるわね、とか、
そういうふうに言うかたも。
- 伊藤
- そうかもしれないですね。
フランスだと、
ガーゼ生地っていうのはめずらしいんですか?
- 篠
- あの感じはわりにめずらしいかもです。
一般的には麻になっちゃうかも。
- 伊藤
- うんうんうん、なるほど。
weeksdaysチームのみんなから、
篠さんへの質問はありますか。
- ──
- そもそも、
伊藤さんと篠さんの出会いは
いつごろだったんですか。
- 篠
- ファーストコレクションの展示会ですから、
2年半前ですよね。
- 伊藤
- それでわたしが暑がりだから
- 篠
- 「襟が‥‥」って。
- 伊藤
- そう、襟って暑いなぁと思ってたんです。
その頃わたしはパジャマのズボンとキャミソールで
就寝していたんですが、
寒くなったら、pageaéréeのパジャマを
カーディガンみたいにして着るといいんです。
なんだ、わたし、襟があっても大丈夫だった! と思って。
パジャマは最初から上下で着るものって思ってたけど、
こうして自分で調整すればいいんだなぁと思いました。
- 篠
- それがあって、
ユニセックスのパジャマは上下セットなんですけれど、
それ以外は、バラ売りにしているものもあるんです。
パンツだけ欲しいっていうかたとか、
ワンピース型にはカットソーを合わせたい
っていうかたもいらっしゃるんですよ。
あと外に着ていらっしゃるかたもいます。
サロペットみたいに作業着として着たり、
パンツだけをロールアップして、
外で着ているかたも。
それがかわいかったので
びっくりしたんですけど。
ワンピース型も外に着てくださるかたも多いし。
パジャマ型のパンツとシャツも
ばらして着てらっしゃるかたもけっこういますね。
- 伊藤
- そっか、
そういうふうに着ればいいんだ。
いろいろ幅が広がりました。
- 篠
- パンツはそのまま、上だけを取り替えて、
犬の散歩に行くっていうかたも
いらっしゃいました。
- 伊藤
- そっかぁ、すごいなぁ。
みんな、かっこよさそうですね。
- 篠
- うれしいですよね。
- ──
- 刺繍はどんなふうに決めたデザインなんですか?
- 篠
- パリに住んでいて、蚤の市が好きなんです。
古いパジャマやシーツとか、
テーブルナプキンとかには
前に使っていたかたの刺繍が入ってることがあって、
それがいつもかわいいなってすごく思っていました。
それで、古いデザインの感じに、
友達のデザイナーに組んでもらいました。
- 伊藤
- うんうんうん。
意外な場所に刺繍があって
びっくりしたりしますよね。
しません?
背中や、首の下とか。
色も、きなり色のリネンに赤とか。
- 篠
- そうなんですよね。
- 伊藤
- ‥‥そういえば、ブランド名の由来は
どんなことなんですか。
- 篠
- 「pageaérée(パージュアエレ)」って
ひと綴りにした造語なんですけど、
もともとは2語のレイアウト用語なんです。
page aéréeですね。
まず「アエレ」っていう単語は、
風通しがいいっていう意味なんですよ。
「パージュ」は英語でいう「ページ」で、
レイアウトで「パージュ・アエレ」っていうと、
余白が多いレイアウトのことなんです。
「余白が多いページ」って、
いろんな意味に取れるし、
風通しがいいっていうのもいい。
最初は、「アエレパリ」
っていうブランド名にしようと思っていたんですが、
1年もかかったのに商標登録が通らなかったんですよ。
- 伊藤
- へぇー!
- 篠
- パリっていう名前を
日本産のブランドに付けるのが
一番ひっかかったみたいです。
でも「アエレ」は絶対に残したかった。
それで「pageaérée」という造語はどうかって
フランス人の友人たちにメールで聞いたら、
みんな「aérée(アエレ)」一文字よりぜんぜんいいって。
含みがあるし、ポエティックだと。
- 伊藤
- 聞き心地もいいですよね。
- 篠
- ほんとですか。
よかったです。
- 伊藤
- そういうことだったんですね。
- ──
- 今はすっかり回復されてると思うんですけど、
どんなふうにパジャマ着てらっしゃいますか。
- 篠
- 普通に夜寝るときですね。
あと、旅も多いので、
ワンピース型は便利ですよ。
仕事仲間と同室になったときとか、
ちょっと慌てて朝食にとかいうときでも、
そのまま行けたりするので便利です。
軽いのでそんなに負担になりませんし。
- 伊藤
- たしかに軽い!
だから疲れないっていうのも
あるんでしょうね。
- 篠
- 羽織った瞬間にちょっとふわっとすると、
気持ちがちょっと柔らかくなりますよね。
- 伊藤
- ほんとう。
ところで篠さんの今のお仕事は、
どんな感じですか。
- 篠
- 今はこのpageaéréeとともに、
フォトグラファーとしての仕事も、
もちろん続けています。
日本の雑誌やフランスの書籍、
ポートレート、ブランドのルックブックなど、
いろいろ撮影させていただいています。
写真のお仕事で色々な方にお会いしたり、
旅をしたりすることが、pageaéréeのための
インスピレーションになっているように思います。
- 伊藤
- いいですね。
ご自身のブランドのスタイリングと写真も、
もちろん篠さんですよね。
- 篠
- たった一人で全部は無理なので、
手伝っていただいたりしつつ‥‥。
撮影が自分でできるのはいいですけど、
何回も撮っていると
ほかのかたの撮ったのも見たいなって。
自分のだと予想が付くので。
- 伊藤
- ありがとうございました。
篠さん、何か、ありますか。
- 篠
- そうですね、ほんとに‥‥
いまいろいろ世の中が大変なので、
やっぱり自分をいたわる時間を、多く、
みなさんに取っていただきたいなって思います。
そういうときに寄り添えるような製品が作れたらと
思っています。
- 伊藤
- はい、ありがとうございます。
pageaéréeのパジャマで、
あまやかします、自分を。
- 篠
- はい、あまやかしてください!
- 伊藤
- 今日はありがとうございました。
- 篠
- ありがとうございました。
(おわります)
2022-08-24-WED