アコーディオンアルバム、
わたしの使い方
伊藤まさこ
美篶堂がつくる手製本のアコーディオンアルバム、
今シーズンは、表紙も台紙も、
あたらしい色になって登場です。
いま、伊藤まさこさんは
どんなふうに使うでしょうか。
綴っていただきました。
(文=伊藤まさこ 写真=有賀傑)
黒のフォトコーナーに合わせて、
黒い台紙にした今回のアコーディオンアルバム。
じつは、そのもととなったのは、
わたしが30年前に作ったアルバムでした。
一眼レフを持ちながら、
およそ1ヶ月のパリ一人旅。
その時は、時間があったのでしょうね、
ものすごくたくさんの写真を撮って帰ってきたのですが、
困ったのはその綴じ方。
見ると、どれも「いい!」と思った
瞬間なのでしょうけれど、
どうにも写真が拙くて。
なんとか上手く、
そして思い出の写真を美しく見せたいと思い、
試行錯誤した結果、黒い台紙に行き着いたというわけ。
今回は、そのたくさんの写真の中から、
さらにえらんで、飾って見せたいものを、
アコーディオンアルバムに貼ってみました。
まず最初は、カフェの写真。
20代の一人旅。
地下鉄に乗ることももちろんあるけれど、
なんと言っても、どこを歩いても美しいパリですから、
おのずと移動は徒歩になる。
途中途中で、佇まいのよさげなカフェを見つけると、
道に面した席に座ります。
必ず頼むのはカフェクレーム。
「マドモワゼル、お待たせ~」なんて言われながら、
カフェの給仕のおじさんが、
カップの横に添えてくれるのは、紙に包まれた角砂糖。
当時、そんな包み紙にいちいち感動し、
大切に持って帰ったわたし。
ハッと気づけばけっこうな量のその包紙を、
写真の横にテープで貼って保存していたのですが、
なんせ30年前のもの。
テープが劣化して、
茶色くなっているのが気になっていたのでした。
今回、そのテープをそっとはがし、
アコーディオンアルバムに。
フォトコーナーは、角さえあれば、
こんな変則的な形も留めることができるんです。
そしてできたのが、この見開きふたつ分。
なかなか行けないパリ。
しばらくリビングに飾って、
懐かしい思い出を振り返ろうかなと思っています。
この見開きは、
石と黒。
貼るものは自由ですが、
なんとなくテーマを決めると収まりがいいみたい。
今ではすっかり写真はパソコンの中に保存していますが、
紙焼きされたものっていいなぁ。
今回あらためて、そんなことを思いました。