「weeksdays」には何度か登場いただいている
「パリのチャコさん」こと、鈴木ひろこさん。
じつは6年ほどかけて、パリ発でメイドインジャパンの
下着づくりをしていたのです。
ブランドの名前は「LERET.H」(ルレ・アッシュ)。
その立ち上げの話を、オンラインで、
伊藤まさこさんがたっぷりききました。
鈴木ひろこさんのプロフィール
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/08/prof_suzuki_hiroko.jpeg)
鈴木ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』
(グラフィック社)などがある。
「weeksdays」では、オンライン対談
「パリのチャコさんと、おしゃれについて1時間。」
「いま、どんな風に過ごしてますか?」に登場、
その1年後のようすをエッセイで寄稿。
さらに「saquiはクチュール。」でもコラムを執筆。
などに登場。
03バッグのこと、素材のこと、
そしていろんなこと
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/09/MG_4713-1.jpg)
- 伊藤
- あと、バッグのこともお聞きしたいな。
ひょっとして、下着とは、
つくってるところが別なんですか?
- 鈴木
- いえ、おんなじ会社でやっていますよ。
なぜ下着のブランドなのに
バッグもやろうかと思ったかというと、
私、過剰梱包がほんとに嫌で、
そのためのかんたんなバッグをつくりたいというのが
最初にあったんです。
- 伊藤
- ええ。
- 鈴木
- 日本では下着を買ったらシルクペーパーに包んで、
その後ボックスに入れて、最後紙袋に入れて、
「ありがとうございました」って、
してくださるでしょう?
直接肌に⾝につけるものだし、
おもてなしも大事なことなんだけれど、
でもお家に帰ったら紙は取って捨てちゃうし、
箱だってちょっと取っておくかもしれないけれど、
あんまりちゃんと再活用はできていない。
そういう無駄なことがすごく嫌だったんです。
それで最初、シーチングで、
あの形の袋をつくったんですね。
伊藤さんが選んで下さった「ヌー」、
フランス語で「リボン」を意味しているバッグです。
でも結局、メーカーとの話し合いの中で、
これは商品にすべきという判断になって、
ベロアの生地でつくり、
いっしょに販売をすることになりました。
このバッグに関しては、ベロアで始めたけれど、
残布プロジェクトというか、
お洋服のブランドさんの残布は、
ストックする場所もたいへんで、
最後には破棄してしまうと聞くので、
それをなくすために、いろんなブランドとのコラボが、
エコロジカルな視点でできたらいいなと思っています。
ヨーロッパにいると、
そういうことを考える機会が多いですね。
もちろん、先々、ツイードだったり、
インテリアのファブリックだったり、
デニムだったり、
そういうふうにどんな生地を使っても
きっと合いそうだなということは、
頭の中にあるんですけど。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/09/MG_4750-1.jpg)
- 伊藤
- なるほど! 今後もますます
たのしみになりますね。
チャコさん、ほかに、これだけは
伝えておきたいな、っていうことはありますか?
- 鈴木
- やっぱり素材のことかな。
シレーヌのシリーズは、素材の95%が
セルロースを使っているんです。
これは、木材パルプとか、バンブーとか、
そういう樹木の皮をこそいで、
天然溶液を混ぜて繊維にするものです。
植物由来の素材で、シルクと似た特性があるから、
夏場はサラッと速乾性がある。
そして乾燥の激しい冬場は、
肌を保湿してくれる働きがあるっていわれています。
ごみとして処理するときは、自然分解で
土に還すことができるので、
再生素材とも言われています。
それが、すごくいいなぁと思って。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/09/MG_4461.jpg)
- 伊藤
- なるほど。それは知りませんでした。
みんなからも、質問はありますか?
- ──
- はい! 今回の下着が「シレーヌ・ブラ」と
「シレーヌ・スリップ」っていう名前なんですが、
どういう感じのフランス語なんでしょうか。
- 鈴木
- 「シレーヌ」はフランス語で
「人魚」のことです。マーメイド。
ブラの胸元が、きれいなマーメイドラインに
見えるようにつくっているところからつけました。
デコルテってね、自分がそうなんですけれど、
年齢とともに落ちてきちゃうんです。
でも寄せて上げてグッて胸の谷間をつくるのではなく、
落ちたデコルテでもきれいに見えることを、
すごく大事に思ってのデザインです。
そしてショーツのほうは
人魚とは関係ないんですけど(笑)、
シレーヌのブラと同じ素材ということですね。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/09/MG_4375.jpg)
- ──
- ありがとうございます。
全然‥‥商品と関係ないんですけど、
「チャコさん」っていう呼び名は
どこから来てるか聞いてもいいですか(笑)?
- 伊藤
- たしかに!
- 鈴木
- そうですよね。
私の名前は「HIROKO」なんですが、
フランス人って「H」を発音しないんです。
さらに「R」も変な音になって、
「イーホーコ」みたいに、最初、呼ばれたんですね。
そんなふうに呼ばれるのもちょっと、と思っていて、
そんななかで、子供の頃からのニックネームが
「チャコ」だったのを思い出したんです。
妹のあだ名も「チャコ」で、
双子のようにおんなじような髪型で、
同じような服を着ていたものだから、
「どっちがチャコちゃん?」みたいになり、
そのうちご近所のおばさんとかから、
私も妹も、2人とも「チャコ」になったんですよ。
それで、「チャコ」だったら、
フランス人にも発音がしやすいし、
覚えてもらえそうかなと、
自分から名乗るようになりました。
- ──
- 伊藤さんとチャコさん、
2人の最初の出会いって、
どんな経緯だったんですか?
- 伊藤
- わたしが『Lee』の取材でパリに行ったんです。
それをチャコさんがコーディネートをしてくださって、
チャコさんのこと、一気にファンになったんです。
心を掴まれました。
誰に対しても同じなの、チャコさんって。
- 鈴木
- (笑)
- 伊藤
- すっごくチャーミングで、お洋服もかわいいし。
全然変わらないですよね、
髪型とかも変わってない気がします(笑)。
- 鈴木
- そうですね、『Lee』のお仕事で伊藤さんと、
パリでお会いしたのが最初で、
その後『ボンジュール! パリのまち』でしたね。
- 伊藤
- はい、単行本をつくるのに、
コーディネートをしていただきました。
- 鈴木
- そのときは撮影期間も結構長かったですよね。
1冊まるごとだったから、
すごく楽しかったです。
- 伊藤
- 楽しかったですね~!
今は、あんなことができないなぁ。
それで、わたしのなかで、
パリといえば、という存在になり、
共通の友人も増えて‥‥、
という感じですよね。
saquiの岸山さんとか。
- 鈴木
- そうです、そうです。
お仕事のリサーチで
パリのあちこちを回りたい、
というお友達をご紹介いただいたり。
- ──
- ご本業がコーディネーター、
ということなんですか。
- 伊藤
- 元々はスタイリストですよね。
- 鈴木
- はい、東京時代はスタイリストでした。
ミュージシャンの衣装とか。
TM NETWORKの衣装も、私の担当(笑)。
- 伊藤
- えぇ?!
すごい衝撃が!
- 鈴木
- 最初の頃ですよ。
音楽関係が多かったんです。レコードジャケットとか。
音楽系のカルチャー誌だった時代の
『宝島』の表紙とファッションページも
レギュラーで担当していたり。
- 伊藤
- レディースばかりじゃなかったんですね。
なぜパリに行くことになったんでしたっけ?
- 鈴木
- スタイリストが天職だと思っていたし、
楽しくお仕事もさせていただいていたんですが、
3年後、5年後、10年後の自分が
ちょっとだけ見えたっていうか、
1回、ニュートラルにしてみたいなぁって
思っちゃって。それが30ちょっと前でした。
で、3ヶ月かもしれないし、1年かもしれないけど、
少し外に行くのいいなぁと思って。
でもアメリカには全くご縁がなかったので、
ヨーロッパで、イギリスかイタリアかフランスかな? と。
イギリスは英語圏だし、いいかなと思ったけれど、
お天気がちょっと不安定なのと、
当時はお食事が美味しくなかった。
イタリアだと美味しいし、明るいしと思ったけど、
イタリア人は逆にすごく閉鎖的だと感じて。
- 伊藤
- へぇー! そうなんですか。
- 鈴木
- うん。本当に保守的な国民性なんです。
今は変わってきているかもしれないですが、
30年前はそうだった。
で、消去法でフランス。
ちょうどパリは村っぽいし、
ヨーロッパの中でもそこそこハブ的な位置でもあるし。
- 伊藤
- それで、語学を習って?
- 鈴木
- そう、なんにもできないで来ちゃったから、
まずスイスのローザンヌで、
若い子たちに混ざってフランス語を勉強しました。
- ──
- 語学留学で行かれて、そのまま住まれた。
- 鈴木
- そのまま、そうです。
それはね、こちらで何か一旗あげたいっていう気合いが
なかったのがよかった気がします(笑)。
日本、大好きだし、ダメだったら日本にまた戻って、
スタイリストなのか、また別のことなのか、
なにかしよう、というくらいに思っていました。
そんなふうに肩に力が入りすぎてなかったのが
よかったかもしれないですね。
- 伊藤
- 何かを身につけなきゃっていうんじゃなくって。
そのときお仕事はどうしてたんですか?
- 鈴木
- 一応スタイリストのブックとかつくって
持って来てたんですけど、
最初は言葉ができないから何にもできなくて。
電話でアポも入れられないし(笑)。
そしたら日本時代のディレクターや知り合いが、
「パリにロケ行くから、暇だったら手伝ってよ」
と、コーディネーター的なことを
依頼されることが多くなっていった。
それで、段々、そっちにいった感じです。
- 伊藤
- じゃ、わたしからも、全然関係ない質問を!
この夏、Instagramで拝見していたら、
「この夏から解禁した」って、
ミニスカートを穿いていたじゃないですか、
チャコさん。
- 鈴木
- そう(笑)!
- 伊藤
- かわいい! と思って。
- 鈴木
- え、ほんとに?!(笑)
- 伊藤
- 膝小僧とか出てましたよね?
- 鈴木
- 出てました? 出てたね(笑)。
もともと、バカンス先の、
山の中やら、海の街やらだと、
開放的にしてたんですけど、
街の中では出さないようにしてたんですよ。
- 伊藤
- そう、パリでは、わりと、パンツ派だった気が。
どういう心境の変化なのかなぁと思って。
- 鈴木
- すご~く、暑かったからなの(笑)。
ほんとに暑かった。40度を超えたりして。
それでそのひと月ぐらい前かな、
南仏に撮影があって行ったんですけど、
とてもじゃないけど、南仏でなんて、
もうジーンズは間違いなく無理で!
そっか、ジーンズって、こういう気候の中では
適してないんだっていうことが身にしみたんです。
で、南仏から帰ってきて、パリも暑くて、
でもドレスに素敵なのがあんまりない。
サラッと気持ちのいいワンピースみたいものは、
前年の引っ越し前の断捨離で、
皆に差し上げたりして持ってなくって、
それでミニスカートを穿いてみたら、
快適すぎて(笑)!
‥‥っていうことだったんですよ。
- 伊藤
- なるほど~。それが理由だったんですね。
黄色いミニスカートがとても素敵でしたよ。
- 鈴木
- そう、黄色のサマーツイードのような素材のね。
あれは「rokh」(ロク)っていう、
韓国の男の子が立ち上げたブランドなんです。
数年前に、デザイナーにインタヴューする機会があって、
彼のデザインや考え方、
ファッションのあり方が素敵で、
いいなと思ったんです。
ちゃんと自分の中に軸がある人だった。
- 伊藤
- ふむふむ。これからもチャコさんのインスタで
ファッションチェックをしていかなくちゃ。
- 鈴木
- やだぁ(笑)!
- 伊藤
- 楽しみにしてます!
ふふふ、いろんなお話が聞けて、
とっても楽しかったです。
ありがとうございました。
- 鈴木
- こちらこそありがとうございました。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2022/09/MG_4336.jpg)
(おわります)
2022-09-07-WED