デザイナー・惠谷太香子さんにきく
「私が、シルクの下着を
すすめたい理由」
以前「cohan」の下着でご一緒した
デザイナーの惠谷太香子さん。
じつは、惠谷さんはもうひとつ、
シルク100%の下着のブランドを持っています。
それが今回ご紹介する「ma.to.wa」。
やわらかくて、よく伸びて、家庭でも洗え、
すぐに乾き、うーんと軽い。
ストレスフリーで着ることができるこの下着、
「weeksdays」では4つのアイテム、
2つのサイズ、3つの色を準備中。
惠谷さんに、シルクのこと、このとくべつな技術のこと、
たくさんお聞きしました。3回シリーズでお届けします。
その2 和の技術で、洋の仕立て。
このシルク素材が「ウォッシャブル」ということにも、
みなさん、とても驚いてくださいます。
この加工、じつはとてもたいへんで、
京都の小さな工房でやって頂いています。
どんなふうにすればそうなるのかは
企業秘密だということなんですけれど、
糸を「かせ」(枠に糸を巻いてとりはずし、
その糸を束ねたもの)の段階で入れて、
ウォッシャブルにしています。
洗いをかけて、温度管理と時間を
いちばんいい状態で加工をするんです。
この加工、歴史がとても古くて、
なさっているかたは「ほんの平安時代から」と仰います。
もともとは、京都御所の中に工房があったそうで、
やんごとなきかたがたの
お召物に使われていた技術だということです。
私個人では巡り合えなかったはずのご縁ですが、
ma.to.waとcohanの製造をしている
豊島通商さんが、
その工房とおつきあいがあったということで、
私にとって、それがとてもラッキーでした。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2018/12/MG_8625.jpg)
思い出すのですが、初めて見たとき、
ほんとうにびっくりしました。
ずっとやりたかったシルクの下着が、
この技術があればできるかもしれない! って。
今まで、自分のコレクションは、
ヨーロッパのハイブランドである
ランバンとかニナ・リッチの、
1960年代の生地のデッドストックを頂いて
つくっていたんです。
それはやはりウォッシャブルシルクで、
イタリアのコモという町でつくられているものでした。
エルメスのスカーフでも有名な産地です。
エルメスは、
いかにもウォッシャブルなものではありませんが、
特殊な工房で、コモでおつくりになっている。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2018/12/MG_8946.jpg)
そういえば、話が逸れますが、
3ヶ月ほど、コモの工房で、
シルクのプリント図案の修業をしたことがあったんですよ。
私がオペラ座の衣裳室にいたとき、
日本人がどういう図案を描いて、
どういう色使いをするかというのが知りたいと呼ばれて。
私、元々は着物の柄を描きたくて、
辻ケ花の勉強をしていたんです。
面白かったですよ、むこうでつくったものは、
「こんな柄? こういう色なの?」と
向こうの人にはあんまり評判はよくなかったんですが、
それでも気に入ってつくった色が、
日本に持ち帰ったら、まるで違って見えるんです。
光がまったく違うんですね。
‥‥とまあ、ヨーロッパのシルクしか知らなかった私が、
「シルクの仕事をしたい」と言っているのを、豊島さんが
「実は面白いシルクがあるんだけど、
どう扱っていいかわからない」と。
豊島さんの担当の方もずっと悩んでいたそうです。
何を作っていいかがわからないと。
それで私が「是非やらせて欲しい」と立ち上げたのが
ma.to.waなんですよ。
ずいぶん回り道をしましたが、願いが叶いました。
それがいまから3年半ほど前のことでした。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2018/12/MG_8949.jpg)
このウォッシャブルシルクは、
もともと和装のための技術ですから、
オペラ座で立体裁断を学んだ私にとって、
まったくの異世界でした。
それで洋装の下着をつくるというのは、
誰にとっても挑戦だったと思います。
ほんとは生地があってデザインを出す
という方が早いんですけど、
正直、その糸自体、リブ編みができるのか、
普通のマットなフライス編みしかできないのかもわからず、
開発がどこまでできるのかもわからないわけです。
ですからとにかく
「こんなものがやりたい」というデザインを出しました。
すると、それは糸番手は何番ですねとか、
匁(もんめ=重さ)を考えてもらい、
サンプルをつくり、そこから生地のバランスを見る。
そんなやりかたですすめていきました。
(つづきます)