COGTHEBIGSMOKEの新作を
「ぜひ着ていただきたい!」と
伊藤まさこさんが考えたのが、
アナウンサーの渡辺真理さんでした。
ワンサイズで展開するCOGの服って、
いろんな世代と体型のかたに通じる
よさがあるのですけれど、伊藤さんには
「同世代の女性たちにもぜひ!」
という思いもあったのだそうです。
そして、今回、ふだんの真理さんからは
ちょっと想像がつかないスタイリングとヘアメイクで、
のびのびとした撮影が実現。
撮影後のひととき、
洋服のことからお仕事のことまでひろがった
ふたりのおしゃべりを、
真理さんの写真といっしょに、お届けします。

撮影=有賀傑

渡辺真理さんのプロフィール

渡辺真理 わたなべ・まり

1967年、神奈川県横浜市出身。
横浜雙葉小中高、ICU国際基督教大学卒業。
1990年にTBS入社、アナウンサーに。
1998年、フリーとなり、現在に至る。
「ほぼ日」では創刊時から連載『マリーな部屋』で、
好きなお菓子にまつわるエッセイを執筆、
「ほぼ日の學校」では
「渡辺真理の見るラジオ。」をはじめたばかり。

●渡辺真理のウェブサイト

03
若さと成熟と

伊藤
真理さんは長く
TVでキャスターの仕事を務めてこられましたよね。
毎日生放送だったこともあり、
膨大な仕事量だったと思うんです。
若さもおありだったでしょうが、
あの時代はあの時代で過ごして、
すごく身になったこと、
あれはよかったっていうことが、
きっと、たくさんありますよね。
渡辺
はい。睡眠時間が少なかった分、
起きてた時間の思い出が
たくさんあるってことかも。
伊藤
そういう時期って必要なんですよね。
わたし、若いときにすっごい忙しくて、
「もう~!」て弱音をはいたら、
まわりの大人たちに
「君は、いま、そういう時期だから。
がむしゃらに仕事をする時期だから」
って言われました。
それがあって、いま、わりとのんびりしてる。
渡辺
えっ? まさこさん、のんびりしてないでしょ?
伊藤
いや、してます。してるんですよ~。
渡辺
だって、毎日更新って、忙しいと思うなぁ。
伊藤
いや、でも、ほんとうに忙しかった時は、
新聞もテレビも見られないし、
帰って寝るだけみたいな毎日でしたから。
渡辺
それは20代の頃ですか?
伊藤
はい、そうですね。でもいま考えてみると、
やっぱりあの頃があってよかったなあって。
真理さんもそうじゃないですか。
渡辺
はい。そうですね。
私、会社(TBS)では
ありがたいことに、素晴らしい番組を
いくつも担当させていただいたり、
いろんなジャンルの仕事を振っていただいたり、
寝る間のない時もあったけど、
そのときは若くて体力があったから、
ほんとうに楽しかったんですよね。
伊藤
乗り切れちゃったんですね。
渡辺
とにかく、楽しくて。
久米さんにも
「君は(TBSで)とても恵まれていた」と
言われるくらい、
私自身には、ストレスがなくて。
いや、「君の周りがストレスだったんだ(笑)」
って言われたこともあるから、ひどいですよね。
気づかないうちに
ずーっと走ってるような時期はありました。
まさこさんがおっしゃるキャスターの仕事で
どんな緊張する日々が続いたとしても、
それも日常になっていくんです。
それがいいか悪いかはわからないですけど‥‥。
伊藤
そうなんですね。
渡辺
そんな感覚です。
だから、そんなに何か得たかって言われたら‥‥。
伊藤
なぜそういうことを思ったかっていうと、
最近会った20代の子が、
わりとマイペースに仕事をしていて、
依頼された仕事を普通に断るんですよね。
その感覚、わたしの若かった時代にはなかった、と。
渡辺
ああ、なるほど。
伊藤
いまはわりと屈託なく断られることも多いみたい。
渡辺
それは世代かなあ。
伊藤
だからこういうことを声高に言って、
古いやつと思われるのも嫌だし、
すごくそれが難しくて、ね。
渡辺
難しいですね、たしかに。
私も断わらなかったなあ。
っていうか、断るっていう発想がなかったです。
楽しかったし、なんとか期待に応えたくて。
でも‥‥そう言われたら、局アナ時代、
ある番組に参加したとき、後輩から、
「なぜ、もうすぐ終わるとわかってる番組を
引き受けるんですか」って言われた記憶が。
伊藤
そうなんですね。
渡辺
その時は
「終わる? そうなのかもしれないけど‥‥」と思いつつ、
私としては、最後まで番組にいさせてもらえるのって、
ほんとうに、うれしかったんです。
もちろん番組が終わるのはすっごくさびしいし、
すっごく辛いんだけれど、
最後までその番組に付き合わせていただけるというか、
そこにいさせてもらえるって、
ほんとうにうれしかったし、光栄だった。
だから、私の中では満足で、
こんなにありがたいことはないと思っていました。
伊藤
ああ。なるほど。
後輩のかたは、きっと、
そんな真理さんの気持ちとは、
また別のお考えだったんでしょうね。
──
局アナであっても、いいほうのチャンスに乗るのが
上に行く階段だということが
当然としてあったんでしょうね。
だから「真理さん、どうして?」って、
本気で心配されたんだと思いますよ。
渡辺
そうなんです、心配してくれたんですよね。
そういう階段自体をわかってない危うさを指摘してくれた。
伊藤
じゃあ、TBSを退社なさって、
いまに至るまでも、
「私は絶対こうする」みたいなことは、
あまり、持たずに‥‥?
渡辺
あ、はい。会社を辞めたときは、期せずして、
辞めるというタイミングが来たんです。
それは、担当していた番組が、全部なくなったので。
伊藤
そんなことが!
渡辺
ある番組はリニューアルで、
ある番組は終了ということが、重なって。
はじめて「あ、私、更地に立つんだ」って。
それはさびしくないかっていったらさびしかったり、
焦りがないかっていわれたら焦るんですけど、
ただ、どこかで、
おもしろいというか、気持ちいいというか、
「あ、更地だ!」って思ったかな。
そのタイミングなら誰にも迷惑かけずに
動けるじゃないですか。
そんなにたいそうな役じゃなくても、
番組につかせていただいてると、自分が辞めたら
周りに必ず余分な負荷をかけちゃうけれど、
更地の今だったら、
「え? 身一つで動ける? 私」って思って。
伊藤
なるほど‥‥。
真理さんで興味深いなと思うのが、
すっごくおおらかなところと、
すっごく繊細なところ、
2つが同居しているところですよね。
渡辺
そうですか?
伊藤
このバランス、何? って。
そこがすごい魅力的だと思ったんです。
渡辺
大丈夫ですか、このおおざっぱな感じ。
緻密‥‥ですか、わからない。そうかなあ。
伊藤
おもしろい。
渡辺
自覚できてないです。
あ、でも、語尾のニュアンスとか、
そういうところには厳しいかもしれません。
私、ほんとに姑にならないほうがいいと思うもの。
伊藤
いやいや!(笑)
それでね、真理さん、
いま、ファッションで何か気になることとか、
ありますか。
渡辺
私、男性のスーツ姿が大好きなので、
肩幅が合ってない方を見ると気になります。
伊藤
なるほど。
わたしも、ひな壇の芸人さんのファッションで、
ちょっと気になる話をしてもいいですか。
渡辺
どうぞどうぞ。
伊藤
男性でちょっと靴下が見えるくらいの丈のパンツを
履かれるときがありますよね。
立ち姿はそれで決まっているんでしょうけれど、
ひな檀に座ると、パンツの裾が
ずいぶん上まで上がっちゃうの。
あれは、ぜひ、スタイリストさん、
どういう状態で映るか、気にしてあげてほしいなぁ。
渡辺
わかるなぁ。
スツールか椅子か、その高さの違いで、
足元がどの程度見えるかっていうことも
すごく大事ですよね。
伊藤
そう! すっごい大事です。
渡辺
シンポジウムなどで司会のご依頼をいただくと、
事前の資料で会場の写真も拝見したいけれど、
できれば、椅子の写真も送っていただけますか、
ご面倒をおかけしてすみません、なんてお願いします。
伊藤
そうですよね。
真理さん、一緒に並ぶかたの背がどれくらいかで、
ご自分の座面の高さを
微調整することもあるとおっしゃっていましたね。
渡辺
そうなんです。たとえばTVのスタジオで
メインの方が真ん中に座られて、
そのまわりにゲストの方が座られたとして、
アナウンサーはいちばん端っこにいるわけです。
もしゲストに華奢なアイドルがいらしたら、
カメラのアングルによっては私が隠しちゃうことに。
そもそも座高が高いので、邪魔にならないように
大道具さんにお詫びしつつ、
椅子で調整していただいてました。
伊藤
なるほど、スタイリストの目線では、
そういう撮影も興味深いです。
スタイリングも上半身がポイントになりますし。
──
やってみたいですか?
伊藤
うーん、それはどうかな。
わたしはたぶん、全体の空気感を作るのが好きなので、
じっさいの仕事としては難しいかもしれないですね。
全体の空気感が出るのであれば、
写真からモデルさんがフレームアウトして、
コートの端っこだけが写っているぐらいでもいいんですよ。
渡辺
あぁ、それ、かわいいでしょうね。
──
伊藤さんは料理を撮るときもそうですよね。
料理が主役じゃなくて、
料理のあるテーブルや人の気配、
その背景の光ごと、全部がスタイリング。
伊藤
そうですね。
それを写真の方がちゃんと形にしてくださる。
渡辺
チームでその言語が一致してるって、とても大事ですよね。
わからない場合は、どんなに仕事を重ねても、
わからない部分だと思うので。
伊藤
そうなんですよね。
渡辺
だから「weeksdays」のチームは
すごいんだろうな。
なんだろう、商品なんだけれど、
作品として伝わってくるところが気持ちよくて。
このくらい顔が隠れてるほうがいい、その塩梅とか。
伊藤
ありがとうございます! 
がんばります。
真理さん、きょうは、モデル撮影、
どうもありがとうございました。
渡辺
私のほうこそ、ありがとうございました。
私が足を引っ張りようがないぐらい、
素敵なお洋服とスタイリングでした!
伊藤
また、ぜひ!


[着用アイテム]
○1、5枚目
GIGI RAGLAN COAT(BLACK)/COGTHEBIGSMOKE
GLORIA PUFF SLV TOP(BLACK)/COGTHEBIGSMOKE
サイドゴアショートブーツ(ブラック・38)/VELOZ
パンツ ¥36,300/nooy

○2、3、6枚目
GLORIA PUFF SLV TOP(MILK)/COGTHEBIGSMOKE
サイドゴアショートブーツ(ブラック・38)/VELOZ
スカート FIA PENCIL SKIRT ¥27,500/COGTHEBIGSMOKE

○4枚目
ELIN COAT(JAQUARD)/COGTHEBIGSMOKE
GLORIA PUFF SLV TOP(MID GREY)/COGTHEBIGSMOKE
パンツ ¥25,300/RaPPELER(株式会社 金万)
その他 スタイリスト私物

[お問い合わせ先]
COGTHEBIGSMOKE https://cogthebigsmoke.com
株式会社 金万 TEL:03-5477-8031
nooy https://www.nooy.jp
(おわります)
2022-11-16-WED