雪がひらひらと降りてきて
3人のクリエイターのかたがたに
「冬の白」をテーマにエッセイを書いていただきました。
まずは、ファッションブランド「nooy」を主宰する
若山夏子さんです。
わかやま・なつこ
デザイナー・パタンナー
文化服装学院メンズデザインコース卒業。
雑誌『装苑』の連載を経て、
洋服や小物づくりの本を出版。
ニューヨークに留学しパタンナーとして活動。
現地で、旧知の中だった
平山良佳さんとの再会をきっかけに、
ともに持っていた服づくりへの情熱をひとつにして、
2001年春ニューヨークにて、スカートの製作から
ブランド「nooy」(ヌーイ)をスタート。
2003年より拠点を東京にうつし、再始動。
ファッションを楽しむ全ての女性に向け、
クラシックなラインをベースに
独自の遊び心と時代のスパイスを加え、
自由なスタイルを提案している。
nooyと並行し、ユニフォームラインである
nooy kitchenも展開し、
カフェ等のユニフォームデザインを手がける。
■nooy公式サイト
■weeksdaysでの「nooy」のコンテンツ
鼻の奥にピリリと冷たい空気を感じる季節が来ると、
待ってました!
と言わんばかりにはりきって
身に付けるものたちを並べる。
季節の変わり目の時にそっとあたためておいた
白い靴、白いストール、白いバッグ!
幼い頃は山と川に囲まれた田舎に育ったせいか、
体力の限界まで野山をかけめぐっていた毎日で
洋服にはかなり無頓着だった。
ただとっておきの時はのぞいて‥‥。
子供の頃、父の仕事の関係で年に一度
大勢の大人が集まるクリスマスパーティー
というものがあった。
来ている人たちは今思うと年配のおじさまおじさま、
またおじさま。
そんなおじさまたちに混じってお洒落をしていくのが
とっても楽しみだった。
スタイルは黒いワンピースに
真っ白な小さなファーのケープ。
ボタンはなくて、内側にピンクの布で包まれた
ホックがついていた。
肩にちょこんと乗ったシンプルなケープが可愛く、
そして誇らしくて
コートもなしで出かけて行った。
雪がひらひらと降りてきて、
ファーの上に優しく落ちた結晶をずっと眺めては
夜空の中歩き回っていた。
翌年もまた翌年も
真っ白いケープがきゅうくつになるまで、
毎年それぞれのコーディネートを楽しんでいた。
幼い頃に形成された好みというのは
面白いことになかなか変わらないもので、
買い物に出掛けた時に
「これってどの色を合わせたら良いと思う?」
という質問に
「白じゃない?」
冬に白? 今冬だよ?
と毎回驚かれるが、冬の白もコーディネートを
考えるととてもハンサムになるので
ついつい力説してすすめてしまう。
白は白でも冬の光にあう白は、素材が大事。
夏のナチュラルコットンやリネンは夏の太陽におまかせして
冬はとびきりフワフワしっとりしたようなカシミア、
反射するようなエナメル、
青みがかかったくらいのいさぎよい白い革を選びたい。
ふと今日着ている服をみると、
冬のロングコートに白いストール、
ぐるりと白いラインの入ったショートブーツ
そして白いバッグ、
うん、間違いない。