金属を熱して打ちきたえる
「鍛造」(たんぞう)という技術で、
いろいろな器具をつくる「鍛冶」(かじ)。
ふるくは刃物や武具の製造技法として知られていますが、
その技術で、鉄を使った現代的なインテリアの小物をつくる
女性ふたり組のユニットが「Atelier五號」です。
東京の中心部から2時間ほどの場所にある
ふたりのアトリエを、伊藤まさこさんと訪ねました。
ふたりは、なぜ、鉄の世界に? 
どんなふうにつくっているの? 
興味いっぱいのインタビューを、
写真とともに、どうぞ。

Atelier 五號さんのプロフィール

Atelier 五號 あとりえ・ごごう

鍛冶である片岡香穂[かたおか・かほ]と
神宮寺未希[じんぐうじ・みき]によるユニット。
2018年設立、現在は埼玉県加須市にある、
さまざまな作家が共同で作業をする
「加須スタジオ」内に工房をもつ。
「鍛造という技法を使い、
鉄を赤めて叩くことでしか出せない質感や
鉄のやわらかさをいかしたものづくりをしています」
もっと身近に鉄を生活に取り入れてほしいという思いから、
小物や建築金物を中心に制作。
鉄を使ったインテリア、装飾金物、小物など、
オーダー制作をおこなっている。

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●Instagram

03
もっと暮らしに鉄を

伊藤
お皿について、
もうすこし聞かせていただけますか。
どうして鉄でお皿をつくろうと? 
神宮寺
鉄のお皿は絶対に割れないからなんです。
けっこう、わたしたち、陶磁器を割っちゃうので
「お皿で鉄があったらいいね」って。
あと鉄ならではの模様がカッコいいので
「これを見てもらいたい」っていう気持ちもありました。
伊藤
模様をそろえるのが大変だとか。
片岡
難しいんです。
焼き具合で全然違っちゃうんで。
伊藤
そうか、この焼き具合で。
片岡
そうなんです。
焼きがあまいと、
ツルツルが残っちゃったり。
伊藤
元になった原料を拝見してから、
できあがったお皿をながめると、
作品性の高さが理解できました。

▲完成品(左)と加工前の原料(右)

片岡
模様は、真っ赤になって、表面が酸化して
はがれるんですが、その具合です。
全然、模様が変わってくるんです。
火のあたり具合で変わるんですよ。
神宮寺
それも石炭だからこそ、出る模様なんです。
片岡
あったまり方が違うと、
はがれ方が全然また違うので。
伊藤
バーナーだと? 
片岡
バーナーだと出ないです。あの感じは。
伊藤
そっか。
どれくらいの時間で、
あの1枚ができるんですか?
神宮寺
うまくいけば、
小っちゃいのだったら、最初の形をつくるのは
5分くらいでしょうか。
脚をつけない状態で、ですけれど。
片岡
でもそこから平らな加減を直したりで、
時間をとっちゃうんですけど。
伊藤
へぇ。大きさですが、
大小がありますね。
神宮寺
いろんな大きさがあったほうが、
使い勝手がいいと思って、ですね。
伊藤
ふたりはどんなふうに使っていますか。
神宮寺
そのまま食材をのせたり。
片岡
クッキーを出したりするときにも。
伊藤
キャンドルとか? 
神宮寺
そう、小っちゃいのは
キャンドルを想像してつくりました。
あと、ピアスを置いたりするのにも。
片岡
玄関でカギを置いたりとか。
「ちょっと置く」ぐらいが、
すごくいいんですよ。
伊藤
テーブルに直接置くのではなく、
何かほしい、っていうときってありますよね。
片岡
そう、そうなんです。
伊藤
置き場があるとうれしい。
そっか、そうですよね。
片岡
それぐらい気軽に、
鉄を生活に取り入れてもらえたらいいな。
伊藤
鉄、使うと良さがわかりますよ。
ところで今回のお皿は
「蜜蝋仕上げ」にしていただきました。
神宮寺
はい。日常生活で
雑貨としてお使いいただくことを想定して、
錆の防止に塗っています。
伊藤
蜜蝋を塗るのはたいへんなんでしょうか。
片岡
いえ、蝋が溶けるのが60度ぐらいなので、
鉄がそれぐらいまで冷めてきたら蜜蝋を塗って、
ちょっと余分な分を拭きとるだけです。
伊藤
蜜蝋なので自然と薄くなったりしますよね。
もし部分的に、蜜蝋が取れて、
錆(さび)が出てきたら‥‥?
片岡
もし、部分的に錆びてきたら、
錆をこすって取ってください。
直火でちょっとあっためてから、
植物系のオイルを塗り込んでもらえればいいですよ。
あたためるときはガスコンロで。
直に持つと熱くなりますから、
トングで持って炙ってもらえば。
伊藤
蜜蝋仕上げだと、60度で溶けるから、
お皿といっても熱いものを置いたらだめですよね。
片岡
はい。
伊藤
水っぽいものは避けるとか?
神宮寺
水というより、酸系に弱いですね。
レモンとかは、けっこう酸が強いので
錆が進行しちゃうんです。
それでも、使ったら、すぐ拭きとれば大丈夫。
できればレモンを置きっ放しにしないでくださいね、
というくらいです。
伊藤
なるほど。
お手入れもさほど難しくないですね。
片岡さん、神宮寺さん、
今日はありがとうございました。
来てよかったです。
片岡
こちらこそ、ありがとうございます。
神宮寺
ありがとうございました!
(おわります)
2023-07-25-TUE