「わたしのおはし」のつくり手は、
京都市内から約100キロ、
すぐ北に日本海をのぞむ舞鶴市に工房をかまえる
木工家の吉岡民男さんです。
以前ご紹介した「黒檀(アフリカ黒檀)」のおはしに加え、
今回、とても珍しく、また硬い材木である
「青黒檀」でおはしをつくってくださった吉岡さんに、
青黒檀という材料について、いろいろとお話を伺いました。

吉岡民男さんのプロフィール

吉岡民男 よしおかたみお

全1回
やさしく、ていねいに

──
青黒檀という素材は、
原産国のタイでは1979年に伐採が禁止されたことで
流通量が非常に少ないと聞きました。
吉岡さんのところにある青黒檀というのは
どんな経緯であったんでしょう。
吉岡
多分もう14、5年前になると思いますが、
青黒檀をたまたま手に入れた国内の材料屋さんから
分けていただいたんです。
とても貴重なものですから、
すぐにその材料屋さんからも無くなってしまいましたが、
私のところでは、当時仕入れたものを、
少しずつ製品にしていきました。
今回、少しだけ残っていたその時の青黒檀を使って
おはしをつくった、ということなんです。
──
今回のぶんは、吉岡さんのところに残っていた
在庫だったんですね。貴重なものをありがとうございます。
黒檀の種類はとても加工が大変だとお聞きしました。
これは青黒檀でも同じようなことなんでしょうか。
吉岡
青黒檀と黒檀は、
材質自体の硬さは同じぐらいですが、
青黒檀のほうは、材料自体に
ひび割れがたくさん入っているんです。
それを選木しながら加工をしますので、
10あったら4とか3とかしか取れないんですね。
──
半分以下なんですね。
しかも硬いわけですよね、その他の木に比べても。
吉岡
縞黒檀‥‥普通の黒檀のことなんですが、
それよりもさらに硬いです。
「weeksdays」で扱っていただいている黒檀は
「アフリカ黒檀」というものなんですが、
それと青黒檀は、ともに硬い材料ですね。
そして硬い木にも「目」の通ってないところがありまして、
そういうところでおはしをつくっても、
強い木であっても折れてしまうんです。
ですからそういう選別を常にやりながら加工をしています。
おはしをつくるときは、どんな種類の材木でも
同じ苦労があるのですけれど、
青黒檀はとくにそれが顕著なんですよ。
──
青黒檀の「青」は、信号機とおなじで、
じっさいは緑がかかっているそうですね。
ただ、おはしになった状態で「色がちがう」とは
なかなかわかりづらいですね。
吉岡
そうですね、製作過程で
サンドペーパーで磨くときによく分かるんですが、
ペーパーに緑色の粉がつくんです。
木自体は黒なんですけれど、
緑が多く含まれているんですね。
それも、すごく深い深緑です。
──
その深い緑色というのは? 
吉岡
樹脂ですね。
ただ、おはしになった状態で
その「深緑」が目に見えるかというと、
そういうわけでもないんです。
ぼくらプロの目からすると、
アフリカ黒檀と青黒檀はとてもよく似ているのだけれど、
アフリカ黒檀の方が黒が強いという印象がありますが、
一般的には、見分けが難しいと思います。
──
布で磨いても緑は出ない、‥‥ですよね。
吉岡
はい。本当に固い布できつく磨くと、
表面が擦れたような形で色が移るとは思いますけれど、
普段づかいで磨く分には
はっきりわかるほどの色うつりはありません。
──
逆にいうと、アフリカ黒檀と見分けづらいので、
前回ご購入いただいて、とてもいいので買い足そう、
という人が今回青黒檀を選ばれたときに、
食器棚のなかでも食卓でもちぐはぐな感じにはならず、
食卓が統一感をもって揃えられると考えてもいいですね。
吉岡
そうですね。
違和感なくお使いいただけると思います。
──
吉岡さんのところでは、
今後の入荷が見込めない以上、
「weeksdays」での青黒檀のおはしは
今回限りの入荷となるとか‥‥。
吉岡
そうですね、在庫は、もう、ほとんどありません。
今後、もし入手ができたらとっておきますけれど。
──
分かりました。
日々、使うときのことをお聞きしたいんですが、
以前のアフリカ黒檀と同じで、
なるべく洗剤を使わずに
やわらかいスポンジなどで洗い、
すぐに乾いた布で拭いて乾燥させる、
ということで良いんでしょうか。
吉岡
そうですね、食洗機を使わず、
金属たわしでゴシゴシと磨かずに、
やさしく洗って拭いてください。
──
使っていくうちに、少し白くなってきたら、
布で磨いてあげると、
黒檀らしい黒さが戻りますね。
これも、黒檀と青黒檀の共通点でしょうか。
吉岡
はい、そうです。
そうは言ってもうんと硬い布で力任せに磨く、
というのはやめてくださいね。
削れや割れの原因になりますから。
うちの工房では、塗装をしていないおはしには、
かさかさしてきたら荏胡麻油を、
と言っているのですけれど、
青黒檀もアフリカ黒檀も木の特徴として粘りがあって
油分をふくんでいるゆえのつややかさがあるんです。
だから柔らかなティッシュペーパーで磨くだけでも
木の油分でつやが出せるんですよ。
その辺が他の木とは違う個性ですね。
──
わかりました。ありがとうございます、
青黒檀のことがよくわかりました。
吉岡さん、今後ともぜひよろしくおねがいします。
吉岡
ありがとうございました。
こちらこそよろしくお願いします。
(おわります)
2023-08-09-WED