今回、「weeksdays」の
撮影モデルを引き受けてくださった坂井真紀さん。
2021年8月の対談以来、2年ぶりの登場となります。
坂井さんとはそれ以来のおつきあいという
伊藤まさこさんですが、
ふたりが会うのは、ちょっと久しぶりだそう。
ずっと忙しくしていたという坂井さんに、
伊藤さんが、仕事のこと、暮らしのこと、
おしゃれのこと、そして
年齢に向き合うということなどについて、
たくさんお聞きしました。
写真=有賀 傑
スタイリング(坂井真紀)=伊藤まさこ
ヘアメイク(坂井真紀)=石川奈緒記
ヘアメイク(伊藤まさこ)=草場妙子
01新人の頃のように
- 伊藤
- 真紀さん、今日は撮影モデルを
ありがとうございました。
デビュー31年の凄みを感じましたよ。
みんな鳥肌が立って!
- 坂井
- ふふふ、うれしいです、
こちらこそありがとうございました。
私がまさこさんの世界観が
好きだからだと思います。
- 伊藤
- わたしもとても嬉しいです。
今年は、お洋服、買いました?
- 坂井
- 今年‥‥うーん、私。
「ずっと働いてたよね」って、
マネージャーさんによく言うんです。
- 伊藤
- あら。
- 坂井
- 仕事ばかりで、買い物に行っていないんですよ。
サンダルを買ったくらいかもしれない。
- 伊藤
- そっか、そんなにたくさん
仕事をしていたんですね。
- 坂井
- 仕事をしてましたね。
まさこさんはお買い物は?
- 伊藤
- それがわたしも減ったんです。
半年ぐらい前から、
買う機会を少なくしようと決め、
すぐにとびつかずに、
なるべく手持ちのものでやりくりしよう、
っていうふうに考えるようにしよう、って。
- 坂井
- とはいうものの、お仕事上、
買うことは必要ですよね。
- 伊藤
- そうなんです、まさしく「仕事だから」を
言い訳に買い物をしていたんです。
だからそこから考えをあらためよう! って。
- 坂井
- ハハハ! どうですか、
実際にそうなさってみて。
- 伊藤
- それがまだ実感がないんです。というのも、
決意したのが、
秋冬ものが立ち上がった半年前、
いろいろとオーダーした直後で。
その服が今、届きはじめたので、
「買い物に行く」という行動は減ったものの、
家にはあたらしい服があるんですよ。
だからたぶん、来年の春夏シーズンくらいに、
なにも届かなくなって、
実感するんじゃないのかな。
真紀さんは、
スタイリストさんが集めてくださった服を
撮影や取材で着る機会があると思うんですが、
そういうものを買い取ったりも?
- 坂井
- あまり、していないですね、
買い物といえば、
まさこさんにおつきあいいただいて、
お正月に横浜の中華街に行きましたよね。
私、もう一回、
中華街に買い出しに行きたいです。
- 伊藤
- そろそろ、季節もいいし、ぜひ!
あの頃から今までお目にかかる機会が
ありませんでしたが、
お買い物をしなかった、というほかにも、
真紀さん自身の変化ってありましたか。
- 坂井
- 変化‥‥なんだろう?
まさこさんはありましたか?
- 伊藤
- 娘がだいぶ大きくなったなと感じていることが、
一番かもしれないです。
- 坂井
- その変化は私もわかります。
私の娘も6年生になったので、
随分と楽になりました。
そのおかげもあって、
仕事も忙しく過ごすことが出来たんですが、
だからこそ、改めて、よりこまやかに
仕事への努力をしなきゃいけないと思いました。
- 伊藤
- お仕事への姿勢、すごい!
忙しいと、ちょっと雑になったりしそうだけれど、
そんな時にこそ?
- 坂井
- はい。一個一個大変だからこそ、
一個一個丁寧にやろう、
忙しいからといって雑になっちゃいけないなって。
雑になりそうだったら、駄目だ、待て待てよって、
そう思いました。
それって生活でもなんでも同じですよね。
ちゃんと自分に積み重なっていく気がします。
だから、ずいぶん、歯を食いしばりましたね。
- 伊藤
- 歯を食いしばる! そんなに。
- 坂井
- まさこさんは、食いしばったこと、ありますか。
- 伊藤
- なんだろう、そうだなぁ‥‥どんなお仕事も、
わたしが雑になったら、いけないじゃないですか。
それではチームのみんなも困ってしまう。
だから「ここでわたしがちゃんとしないと!」
っていう意味では、わたしも、
ちょっと食いしばっているのかもしれないです。
- 坂井
- そう思いますよ。
でも、食いしばるっていう表現は、
あんまりよくないかな? (笑)
- 伊藤
- どっちかっていうと「踏ん張る」感じ?
- 坂井
- そうですね! 私も「踏ん張り」ました。
- 伊藤
- 具体的には、どんなふうに?
- 坂井
- もう寝たいな、と思っても、
もう一回ちゃんと
台本を整理してから寝たほうがいいな、とか。
- 伊藤
- 新人の時に戻ったような感じ?
- 坂井
- そうですね。
長く仕事をさせていただいてきた分、
“ちょうどいい抜き方”を覚えてきたんですけれど、
あえて、仕事については
新人の頃のように考えました。
そして家のこと、子どものことも、
しっかりやろうと。
お弁当をつくることもそうですし、
娘のおやつの準備や、
習い事の先生とのやり取りや、
夜にはまた次の日の段取りを考えて、
また仕事のことも考えて、と。
そんなとき、まさこさんの
『する、しない。』の本を読んだんですよ。
あの本で、私、すごく頭の整理ができたんです。
- 伊藤
- わぁ、ありがとうございます!
- 坂井
- 忙しいからこそ、することとしないことが
クリアになるんだって思いました。
それこそ、忙しいけれども、
玄関の掃除は「する」。
その方が気持ちいいですし。
- 伊藤
- じゃあ逆に「これはしない」っていうことも?
- 坂井
- ありました。本に書いてあったことですが、
子どもって、片付けてって言っても片づけないし、
どうしても、物が多くなるって。
それを読んで、まさこさんの家も
そうだったんだ、そうだよね! って
気持ちが楽になりました。
片づけても片づけても片づかないことが
ストレスになっていたのですが、
「今は仕方ない」って。
だからものを減らすことも、
そこに時間や手間を使うことも「今はしない」。
「今はこういう時期なんだもの、これで大丈夫!」
って思えるようになったんです。
- 伊藤
- どうにもならないことっていっぱいあって。
前だったら
「どうしてうまくいかないんだろう? もう!」
なんて思うこともあったけれど、
最近は「しょうがないよね、
なるようにしかならないし」
って思うようになってきたんです。
- 坂井
- さっき踏ん張るって言いましたけど、
それも自分に無理をするわけじゃないんですよね。
「こうじゃなきゃダメ」なんて。
- 伊藤
- ね。
それは50代に入ったゆえの図太さなのかな。
(つづきます)
2023-10-29-SUN