ベーシックだけど、ほかとはちょっと違う。
そんなアパレルブランド、Le pivot (ル・ピボット)。
つくり手の小林一美さんに、
10年、つくりつづけているというタックパンツのこと、
そして前回大人気だったパーカーの
あたらしいバージョンについて、
「ちょっと違う」ところを伺いました。

この日は、Le pivotのアタッシェ・ドゥ・プレス
(広報担当)であり、
今回のパンツも愛用中だという
岡本敬子さんにも同席していただきました。
おすすめのコーディネートについても、
お聞きしましたよ!

小林一美さんのプロフィール

小林一美 こばやし・かずみ

Le pivot デザイナー。
企画・物作りに関することすべて、
発信することやイメージに関連することを担当。
バイヤー経験後、アパレル会社で企画・生産・
プロジェクトの立上げなどを手がけ、
20年勤務した後に独立、金井さんとともに
Le pivotを立ち上げ、現在に至る。
好きなものは美味しいもの、花、映画、
ミュージカル、時代小説、そして万年筆。

●Le pivot website
●Le pivot Instagram
●小林さんのInstagram

岡本敬子さんのプロフィール

岡本敬子 おかもと・けいこ

服飾ディレクター。
文化服装学院スタイリスト科卒業後、
スタイリストオフィスを経て、
大手アパレル会社のPR部門で
国内外のブランドのプレスを担当。
2008年に独立し、ファッションブランドの
ものづくりからPR、店舗の計画など、
「おしゃれ」に関する幅広い仕事に携わる。
2011年に立ち上げたブランド「KO」は、
流行は追わないけれどスタイリッシュでいたい、
人と同じものはつまらない、エイジレスでいたい、
というひとたちに向け“旅のMIXスタイル”をテーマに、
ジュエリー、皮小物、アイウェアなどを展開。
オーガニックコットンの
nanadecor(ナナデェコール)では、
KO by nanadecor という、岡本さんのラインをもち、
2017年からは東京・千駄ヶ谷の「Pili」というお店の
ディレクションも担当。

編集者の夫・岡本仁さんとの共著に、ブログを書籍化した
『今日の買い物。』
『続・今日の買い物。』が。
現在は発信のベースをインスタグラムにうつし、
おおぜいのフォロワーの支持を集める。
著書に『好きな服を自由に着る』
『好きな場所へ自由に行きたい』
(ともに光文社)などがある。

●岡本さんのインスタグラム
●Piliのウェブサイト

01
10年ものの形の秘密

伊藤
今回は秋・冬に活躍しそうなパンツとパーカーを
つくっていただきました。
パンツのほうはLe pivotの定番アイテムだそうですが、
どのくらい前からつくられているのでしょうか?
小林
かれこれ10年近くなりますね。
当時は、こういう太めのパンツって、
全く流行っていなかったんですよ。
でも、一度つくってみたら気に入って、
いまでも毎シーズンつくっています。
伊藤
当時流行っていたのって‥‥。
小林
ぴたっと細いスキニーデニムとか、
美脚に見えるフレアの(膝から裾にかけて広がる)
パンツでしたね。

▲手前が小林一美さん、奥に写っているのは、同席してくださったLe pivotの
営業・プレス・店頭販売担当である金井美幸さんです。

伊藤
そっか! ふふふ、時代を感じますね。
そんなときに、なぜあえてこの形を?
小林
古い映画を観て、思いついたんです。
もう作品のタイトルも忘れてしまったけれど、
水兵さんが身につけていた
斜めの巻きエプロンの形が妙にかわいくて、
こんな感じかしらと生地を探して、
ラップパンツをつくってみたんです。
それがこのパンツの原型になりました。
敬子さん、それも持ってらっしゃいましたよね?
岡本
持っていましたよ。
すごく好きでした。
小林
私も気に入って穿いていたんですが、
紐で巻くタイプだったから、
お手洗いの時とか面倒で(笑)。
それから紐をやめてホックに改良して、
シルエットもストレートにととのえて、
かっこいい感じに仕上げて、
このパンツができあがったんです。
伊藤
古い映画の水兵さんということは、男性ですよね。
そういえば小林さんがつくられるものって、
ちょっとメンズっぽいテイストが入っています。
この前つくっていただいたノースリーブロングシャツも、
メンズシャツの袖を切った形がヒントだったり。
小林
そうですね。
メンズのものづくりの要素は、
Le pivotの中には多いかもしれません。
昔、古着やミリタリー調のものを
好んで集めていた時の影響かな。
伊藤
このパンツは、かっこよさも感じるけれど、
足を閉じるとロングスカートにも見えますよね。
岡本
シルエットが、すごくきれい。
小林
そうなんです。
パンツだけど、裾幅をワイドにしてあるから、
ロングスカートの表情もあって、いいでしょう? 
時代によって、気になるところを
ほんの少し変えるだけで旬の顔になるので、
微調整しながらつくり続けてきました。
この形になってからは、もう5~6年変えていません。
(つづきます)
2023-11-19-SUN