伊藤まさこさんといっしょに、
成型合板を使ったインテリア・家庭用品をつくる
サイトーウッドの静岡工場をたずねました。
成型合板とは、うんと薄くした木材を重ねて糊付けし、
縦目、横目の順に数枚重ねあわせ、
型にセットし、圧力と熱型に沿った形を作る木工技術。
そうすることで薄く軽量で強度のある、
美しい曲線の製品がうまれるんです。
サイトーウッドが得意としているのは、
「weeksdays」のバスケットのように
円筒形に成型する技術。
ちょうどその作業が行なわれているところを見ながら、
三代目となる社長の齊藤拓也さんに
お話をうかがいました。
ちなみにサイトーウッドについてくわしくは
前回のオンライン対談もごらんくださいね。
サイトーウッドのプロフィール
SAITO WOOD
1948年、創業者・齊藤勇氏が
静岡県榛原郡に「齊藤木工所」を設立。
1956年より円筒成型合板技術による小物づくりを始める。
1958年、静岡市に移転、
1959年現在まで続くバスケットが完成する。
1966年、国内販売向けの会社「サイトーウッド」設立。
現在は三代目となる、1977生まれの
齊藤拓也さんが代表をつとめている。
01工場見学スタート
- 伊藤
- 齊藤さん、この場所には、
プレスする前の木が保管されているんですか。
- 齊藤
- はい、そうです。
ここが材料置き場ですね。
- 伊藤
- 加工前の材木は、こんなに薄く、
削ぐように切られているんですね。
まるで経木(きょうぎ)のような薄さです。
- 齊藤
- 単板(タンパン)といいます。
厚さ、0.35ミリです。
いま、ごらんになっているのは、
アユースという南アフリカの木を、
人工的に白くしたもので、
成型合板の一番外側に使う
「突板(つきいた)」です。
天然木を薄くスライスすることを
「突く」というんですよ。
- 伊藤
- もうすこし、厚いものもありますね。
- 齊藤
- こちらは、内側に使うものです。
0.8ミリのものを3枚重ねて、
2.4ミリの厚さに加工したものです。
突板がかつお節を削るようなものだとすると、
こちらはバスケットの中に使っているシナ材で、
「ロータリー」という、
大根のかつら剥きみたいな方法でつくります。
これらを重ねて圧力をかけて、
「成型合板」をつくるんです。
- 伊藤
- こういった材料はすべて輸入なんですか。
- 齊藤
- はい、国産材はありません。
外側に使うために加工したものは中国、
ほかの材木は南アフリカのものが多いですね。
昔は外側には、チークやローズウッドなどを
使っていたんですけれど、
1990年代前半ぐらいからかな、高騰し、
やがて伐採が禁止されたり、
輸入が規制されて、手に入りにくくなりました。
- 伊藤
- なるほど、そんな背景が。
- 齊藤
- 今、天然木は、あっても高価ですし、
目が不揃いだったりするので、
ぼくらのように加工して
製品作りをするメーカーには使いづらいんです。
唯一、ウォルナットだけかな、
いまも天然木を使っているのは。
カナダに近い、
アメリカの北部から輸入しています。
- 伊藤
- そうなんですね。
‥‥この機械は?
とても古そうですね。
- 齊藤
- それは材料に穴を開けて、
大きな丸を取るための機械です。
うちは、どの機械も
みんな40年、50年、使ってますね。
木工の機械って基本的に
あまり変わらないんですよ。
だから技術革新も少ない。
全部自動という最新の機械も、
世の中にはもちろんあるんですけど、
うちの場合は、そんなに高度な機械を使わないので、
古くてもじゅうぶんなんですよ。
‥‥さて、それでは、
制作の現場をご案内します。
(別棟の工場へすすむ。)
- 伊藤
- うわぁ、とっても広い!
- 齊藤
- ここは材料をカットする場所です。
きょうは、カットするものがないんですけれど。
- 伊藤
- 「今日はカットの日」みたいになさっているんですか。
それとも、都度都度で?
- 齊藤
- なんとなく「カットする日」が決まっていますね。
- 伊藤
- 工場のみなさんには、担当があるんですか。
それとも、基本的に一連の作業が
すべてできるんでしょうか。
- 齊藤
- だいたい1人、2~3工程を担当します。
最初から最後まで1人で全部できる、
という人も、少ないけれど、いますよ。
忙しかった時代には、
材料を切るだけ、というふうに、
工程ごとに専任者がいて、
それで大量のものづくりをしていました。
いい時代でしたね(笑)。
- 伊藤
- 「weeksdays」で扱わせていただいている
バスケットの場合、
ひと月で、どのくらいの数を
生産することができるんですか。
- 齊藤
- 合板の作業のあとに
熱を加えて丸くする作業があり、
カットそして底板などの組み立てから、
塗装までを全部やって‥‥月産200個程度ですね。
いろんなアイテムがあるので、
なかなか効率よくはできないんです。
- 伊藤
- この、扇型に切り出された材木を丸めると、
バスケットの形になるんでしょうか。
- 齊藤
- そうです。
ここには901という番号が書いてあります。
「weeksdays」のものは903という、
もうひとまわり大きいサイズです。
- 伊藤
- こちらでは糊付けをなさっていますね。
- 齊藤
- そうです。成型合板をつくるため、
倉庫で見ていただいた薄い木材を
縦目、横目の順に重ねて、
外側に突板を合わせて糊付けをします。
- 伊藤
- それを、隣の工程で、プレスする?
- 齊藤
- そうです。
- 伊藤
- ‥‥なるほど、プレスというのは、
バスケット状の金型の枠に、
糊付けをして重ねた材料を丸めて入れ、
内側にきっちりと金属のブロックをはめて
固定させる、ということなんですね。
- 齊藤
- そうです。木づちで打ち込み、
しっかりと枠にはめます。
同じ型が6セットあって、
順番に熱い炉のなかに入れ、
20分ほどぐるりと回して成型・固定をするんです。
炉の中は、90度から100度ぐらいです。
バスケットのような製品には
この工程が必要ですが、
平面的な成型合板をつくるときは、
プレスして熱を架けて圧着させるので、
また機械が異なるんですよ。
‥‥さて、それでは工場の2階をご案内しますね。
(つづきます)
2024-01-15-MON