「ちょうどいいクッションがほしいな」
と考えていた伊藤まさこさんの目にとまった、
「北の住まい設計社」のクッション。
北海道産の無垢材を使った家具で知られるチームが、
自社のソファにあわせる目的でつくったこのクッション、
マチのある四角いかたちで、かたさがほどよく、
使っているリネンもうんと上等のものなんです。
20年ほど前(!)にこのクッションをつくりはじめた
渡邊雅美さんと、伊藤さんがオンラインで話しました。
このクッションができたときのこと、
カバーにつかったLIBECOのこと、
そして使い方のヒントなど、
3回にわけてお届けします。
北の住まい設計社
1985年、渡邊恭延さん・雅美さん夫妻が立ち上げた
家具と建築の工房。
作業場は、旭川の郊外・東川町の山奥にあり、
1928年に建てられた小学校の建物を使っている。
自然に優しい天然の素材で作ること、
素材が生き続けられるやさしい作り方であること、
デザインはシンプルに、修理も可能な
しっかりとした手仕事であることをテーマに、
北海道産の無垢材で家具をつくる。
ショールームとショップ、カフェ&ベーカリーを併設、
休日を過ごしに訪れる人も多い。
2000年、住宅部門として
「北の住まい建築研究社」をつくり、
何世代にも渡って使い続けられる家づくりを目標に、
天然素材を使った家づくりを提案している。
LIBECO
何百年ものあいだリネン産業の中心地だった
ベルギー西部のフランドル(フランダース)地方
メルベケ(Meulebeke)にあるリネンのブランド。
160年あまりの歴史をもち、
家庭用品からインテリア、アパレルなど、
いろいろな目的に応じたリネン生地をうんでいる。
01存在感は家具といっしょ
- 伊藤
- 渡邊さん、こんにちは!
クッション、ありがとうございました。
とってもすてきなものができて、
うれしいです。
- 渡邊
- こんにちは、
よろしくお願いします。
このクッション、生地が入手できずに、
生産を諦めていたものだったんですよ。
- 伊藤
- 最初、時間のある時に
「また一緒にできるものはないかな」って思いながら、
北の住まい設計社のウェブサイトを見ていたんです。
そうしたら、ちょうど欲しかったクッション、
まさしく、このかたち! というものがあって、
それで「こういうものが欲しいです」
と雅美さんに連絡をしたら、
「今、リベコ(LIBECO)のこの生地が入手できないので、
生産ができないんです」
というお返事だったんですよね。
- 渡邊
- そうなんですよ、
以前、展開していた生地の
カラーバリエーションがなくなって、
もう廃番かなと思っていたんです。
そうしたら生地をまさこさんが見つけてくださって。
- 伊藤
- 以前、渡邊さんたちは、
生地を直接ベルギーから輸入なさっていたんそうですね。
わたしはたまたま、
生地を日本に輸入しているかたを存じ上げていたので、
「そうだ、そのかたに聞いてみよう」と訊ねてみたら、
別の生地でしたが、
ぴったりのサンプルを送ってくださって。
- 渡邊
- 以前、私たちが使っていたものとは違うんですけれど、
ちょうどよかったんですよね。
- 伊藤
- そうなんです。
最初のクッションは、
何年位前からつくられていたんですか?
- 渡邊
- ずいぶん‥‥もう20年近くなるのかな。
つくったきっかけは、大きなソファをつくった時に、
マチのある、ちゃんと支えてくれるような
クッションが欲しいなと考えたことです。
ウレタンの普通のクッションだと、
長く使ううちに、存在感がなくなってくる。
背に当てると沈んでいっちゃうんですよね。
クッションって、中身は羽毛がいいと思っているので。
- 伊藤
- じゃあこの形は、ずっと変わっていない?
- 渡邊
- 変えてないですね。
- 伊藤
- すごい!
- 渡邊
- そもそもそんなに大量につくろうとは
思っていなかったものなんですよ。
どちらかというと、
ソファに合わせてつくっていたので。
言ってみれば、これって、
家具の意識でつくったクッションなんです。
- 伊藤
- じゃあ、ソファと一緒にご注文くださる
お客さまがほとんどだった?
- 渡邊
- そうですね。
あるいは、家具に関心のある方が、
このクッションを単品で
選んでくださってましたね。
雑貨を見にいらした方じゃなくて。
‥‥想い出してきました、
私、この形にしようと考えたきっかけは、
どこか海外の雑誌で見たんだと思います。
「あ、この形なら沈まなくていいかも」と。
- 伊藤
- このマチがいいんですよね。
我が家のリビングのソファは、
デンマークのデザイナーのものですが、
エリザベス女王がデンマークを訪れた時に、
気に入ったことがきっかけで、
エリザベスチェアっていう
名前がついたらしいんです。
すごくすてきなんですけど、
さすが女王陛下が座るだけあって、
背筋をのばしてきちんと、
という印象の座り心地なんですよ。
- 渡邊
- ちょっとそういうふうに見えますね。
- 伊藤
- はい、きちんと座るのにはいいんですが、
のんびりするのには向いていなくて。
なので、クッションがあったらいいのにな、
と考えていたんです。
- 渡邊
- そういうときにピッタリですよ、
このクッション。
- 伊藤
- そうなんです!
そして、使ってみて思ったんですが、
すごくしっかりしてるから、
インテリアの小物、雑貨を買うっていうよりは、
家具を一つ買うぐらいの存在感がありました。
- 渡邊
- わあ、うれしい表現です。
- 伊藤
- ほんとそう思ったんですよ。
それでこんな写真を撮ってみました。
大小、組み合わせてみたんですけど。
こういう使い方もできるなと思って。
- 渡邊
- かわいい!
ほんとですね、
もう、家具ですね。