キューブスツール、
あのひとの使いかた
5・鶴見昂さん
福岡の木工家具メーカーである「杉工場」と
「weeksdays」がいっしょにつくった家具、
「キューブスツール」。
スツールですから椅子の仲間、なのですけれど、
ましかくで、立方体の一面だけをすぽんと抜いたような、
ふしぎなかたちをしたこの木製家具は、
いろんな使い方ができるんです。
今回は、パティシエの鶴見昂さんに
お使いになっているようすをおききしました。
ご本人のエッセイと写真で、お届けします。
(文・写真=鶴見昂)
「キューブスツール、あのひとの使いかた」
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鶴見 昂さんのプロフィール
つるみ・たかし
1986年神奈川県生まれ。パティシエ。
石川県〈TEATON〉、駒澤大学〈POPPY〉などの
メニューを監修。
2022年より菓子教室「ツルミ製菓」を主宰。
著作に『Café Lisetteのお菓子』
(エンターブレイン)がある。
「weeksdays」ではエッセイ
「あなたには赤が似合わない。」
「神棚とケーキ」を寄稿。
ある日わが家に
weeksdaysのキューブスツールがやってきた。
わくわくして早速段ボールを開け、
立方体の木の箱を触ってみるとスベスベ~!
赤ちゃんの肌みたいだ!
真っ新(まっさら)な無垢の木に触れたら
なんとなく神聖な気持ちになって、
思わずそっと頬擦りしてしまった。
さて、どうやって使おうかな。
まずはリビングの窓際に運んで、
キューブスツールの開口部を手前にして置いてみた。
無垢材の色調もパーケットフローリングと
ぴったりマッチしていい感じ。
よく手にとるお菓子の本を詰め込んで、
花瓶を重ねて、好きなものを適当に並べて
暫く眺めてみると、余計なものに邪魔されず、
美しくデザインされた本の装丁や
色とりどりの花がパッと目に入ってくる。
一見そっけないようなデザインも
かえってちょうどいいみたい。
どんな奇抜な花も花瓶も受け入れてくれる懐の深い箱。
日々そうやって使っていると、
キューブスツールから本を取り出すたび
手に触れる木肌の滑らかな感触にいちいち癒されて、
私はすっかりこの触り心地の虜になってしまった。
しばらくリビングに置いていたら、
昔からそこにあったみたいに
すっかりわが家に馴染んで
そのまま何日も過ぎてしまったけれど、
折角なら色々な場所に置いてみようと思い立ち、
こんどはスツールとして使うために
キッチンへ移動してみた。
一人暮らしの小さなキッチンには少し大きいかな?
と懸念したものの、そんな心配はなんのその。
買い物をしてきた野菜を一旦置いたり、
調理台がいっぱいになった時に
ボウルを避難させるスペースに使ったりと大活躍。
レシピブックを読みながら何を作ろうかな~と悩むときも、
鍋を火にかけてフゥと休憩する時にも、
気づいたらキッチンの角に置いた
キューブスツールの上が私の定位置になっていた。
その後も大人数の来客で椅子が足りないときに使ったり、
高さがあるから逆さまにして
ヨガマットやストレッチポールを収納したりと、
家の中のあらゆる場所に移動させて愛用した。
気軽に移動して家の景色を変えられるところも
気に入っている。
このすべすべの無垢材を
キレイなままに大事に使いたいけれど、
何年も使っていくうちにキズがついたり、
乱雑に置いた熱いヤカンの跡がついたりして
風合いが変わっていく姿も素敵なんだろうな。
私はカバンをボロボロにしてしまうから
きっといつかそうなる。
これから何十年も一緒に過ごしていくであろう
運命の人に出会った時みたいに、
皺くちゃになった自分が
傷だらけのキューブスツールに腰掛けて
共に過ごす姿が頭をよぎった。
これからもよろしくね。