weeksdaysには2度目の登場となる、
L’UNE(リュンヌ)のディレクター兼デザイナー
前沢祐子さん。
伊藤まさこさんがアトリエへお邪魔して、
2つのトップスについてお話を聞きました。
じつは、前沢さんが何度も試作を繰り返して
やっと完成した2WAYブロッキングトップスは、
この数年、伊藤さんのワードローブで活躍していたもの。
そしてサテンボーダートップスは、
伊藤さんがL’UNEへオーダーして、
前沢さんと相談しながら形にしていった新作です。
ふたりの積もる話、原宿のアトリエから、
2回に分けてお届けします。
どちらも、大人の女性がうれしく着られるような要素が
たくさんたくさん、詰まっているんですよ。

前沢祐子さんのプロフィール

前沢祐子 まえざわ・ゆうこ

服飾デザイナー。
26歳の時に単身パリに渡り、
フランス語やオートクチュールについて学ぶ。
2000年フランスから帰国、
デザインオフィスを立ち上げ、
フリーのデザイナーとして
数々の国内有名ブランドと企画契約をする。
2015年、
「Ageless・Genderless・Timeless」をテーマに
L’UNE(リュンヌ)を立ち上げる。
既製服のほか、
アトリエでのオーダーメイドも好評。
weeksdaysでは2023年に登場

●L’UNEのウェブサイト
●Instagram

01
1着で2度おいしい、名脇役

伊藤
前沢さん、お久しぶりです。
今日はよろしくおねがいいたします。
前沢
こちらこそ。
お越しくださってありがとうございます。
伊藤
わたしが以前から気に入って着ている、
2WAYブロッキングトップスと、
今回、新しくつくっていただいた
サテンボーダートップスについて
お話を伺えたらと思って伺いました。

まず2WAYトップスのほうですが、
最初はいつ頃作られたんですか?
前沢
あれは──、2022年ですね。
伊藤さんが買ってくださったのもそのときでした。
伊藤
そうでした。
それからもう、すごく重宝しています。
涼しくてシワもできないですし、
ちゃんとしたところへも着て行ける。
夏だけでなくて、実は冬にも着てるんですよ。
前沢
そうなんですか!
伊藤
わたし、暑がりなので、
冬にタートルネックのセーターなんか着ていると、
外にいるときはよくても、
お店の中に入ると暑くなるんです。
たとえば長い時間を過ごすレストランの席では、
あまりモコモコ厚着しすぎないほうが好きなので、
これを着ると、すごくいいんですよ。
上にジャケットを羽織れば、ちょうどよくて。
前沢
夏も冬も着ていただいてるなんて、
すごくうれしいです。
伊藤
しかも、前後2WAYで着られるのは、
ほんとうにすごいです! 
デザインは、どうやって思いつかれたんですか?
前沢
一番最初に作ったのは5年以上前で、
そのときは素材も今のものではないし、
袖がもっと長くて、
2WAYではなかったんです。
そこから、まさしく
「ディナーにも着ていけるような
きれいなトップスにしよう」という
コンセプトを思いついて、
L’UNEらしい形を探っていきました。
パターン(型紙)を変えたり、
バランスを整えたりというのを繰り返して、
今の形にたどり着いたという感じです。
伊藤
そんなに。
時間と手間がかかっているんですね。
前沢
前と後ろの丈を変えて、
2WAYで着られるようにしたり、
裾も、シャツのようにカーブをつけたら
もっと素敵になるんじゃないかとか。
あと、あまり見えないところですけれど、
縫製もきれいに仕上がるようにと、
細かい改善もしたんです。
袖はラグランスリーブ(首周りから袖下へ
斜めに切り替え線を入れ、肩から袖をひと続きに
付けられた袖)で構成してるんですけど、
この生地で実現するのは、
実はすごく‥‥。
伊藤
縫うのが難しいですよね?
前沢
そうなんです。
ふつうに縫製すると、すごく伸びてしまう。
そこを、工場の方と相談をして、
縫い代の中にテープを貼って
伸びないように仕上げることができました。
この工夫で、腕を入れたときのドレープ感が
すごくきれいに出るんです。
伊藤
柔らかいシルエットになるんですね。
前沢
ええ。
ラグラン切り替え位置はバイアスになるので、
伸びやすくもあるんですが、
糸が細くてドレープがきれいに出るので、
生地は絶対に変えたくないと思ったんです。
縫製で伸びないように工夫しようと。
伊藤
なるほど。
前と後ろで、素材が違うんですよね?
前沢
Vの方がポリエステルで、
クルーネック側は
トリアセテートとポリエステル混紡の
スムースというカットソー素材です。
トリアセテートはシルクのような美しい糸で、
接触冷感もあるので、
夏は涼しく着られるんです。
伊藤
だから着心地がいいんですね!
前と後ろで素材を変えようと思われたのは、
どうしてでしょう?
前沢
着た時の表情が変わるのが、
たのしいかなと思って。
A面、B面みたいに(笑)。
伊藤
ほんとうにたのしいですよ~。
ちなみに前沢さんのA面は?
前沢
こっち!
伊藤
やっぱり。
じゃあわたしもこっちをA面と思うようにします。
B面が好きな方も、
もちろんいらっしゃるでしょうね。
前沢
ええ。
クルーネックとVネックって、
かなり印象が変わりますものね。
コーディネートによって変えられたら、
「1着で2度おいしい」かなって。
シンプルなデザインですけど、
そんなちょっと欲張りなところが気に入っています。
伊藤
わたしもです。
それに、
たたむとすごくコンパクトになるし軽いので、
旅にも持って行きますよ。
前沢
そうそう、ホテルで手洗いしても、
タオルドライして干しておけば、
次の日には乾いていますよね。
伊藤
幾度となく着て、お洗濯をして、と繰り返しても、
くたくたにならないところも魅力的です。
前沢さんは、どんなものと合わせられますか?
前沢
私はパンツが多いかな。
裾を出すときもあるし、
ゴワゴワしないのでインしたり。
前だけ少しインすると、
すごくきれいなドレープができるので、
そんな楽しみ方もできますよ。
伊藤
なるほど。
素材感がきれいだから、
ブラウスとしても、
ジャケットの下のカットソーとしても、
ちょっと高級なTシャツ、
みたいな感覚でも着られますもの。
前沢
ふふふ。
コーディネートの幅がすごく広いですし、
けっして主張しすぎないんだけれども、
付けているアクセサリーなんかも引き立ててくれる。
“名脇役” みたいなトップスです。
伊藤
ほんとうに。
着ている本人も、
着心地がいいから疲れないんですよね。
前沢
前がラグランスリーブで、
後ろはドルマンスリーブ(袖ぐりが広く、
身頃と一体になったような袖)なので、
とても動きやすいですしね。
伊藤
もしかしてこの袖のつくりだと、
「肩が合わない」ということが
あまりないんじゃないですか?
前沢
そうなんです。
ラグランスリーブは肩の位置が問われないので、
幅広いサイズの方に着ていただけると思いますよ。
伊藤
試行錯誤のたまものですね。
(つづきます)
2024-07-15-MON