「weeksdays」初登場となる
「zattu」(ザッツ)のリュック
伊藤さんも「weeksdays」スタッフも
その軽さと佇まいに一目惚れをしたものでしたが、
デザイナーの布袋真紀子さん、
赤澤幸子さんに話を伺って、ますます、ファンに。
このリュック、「デザイン」と「機能」そして「見え方」が
ほんとうに、とことん、考え抜かれたものだったんです。
布袋さんにきく「zattu」のスタートの話、
デザインについての思い、
そしてこのリュックについてのこまやかな気遣いのこと、
3回にわけておとどけします。

zattuのプロフィール

zattu ザッツ

zattu(ザッツ)は、
革以外の素材を指す“雑材”をメインにし、
気軽さと実用性、ファッション性を備え持った
大人のカジュアルスタンダードを追求するブランド。
2016SSよりコレクションを発表しています。
じつはzattuは、2011年に誕生したレザーブランド
ithelicy(イザリシー)から派生したブランド。
ithelicyでは、日常の中で記憶に残るもの、
スタンダードなアイテムのフォルムや
ディテールに装飾的な機能を加え、
今を意識したスタイルを提案しています。

2ブランドとも、デザイナーは、
布袋真紀子(ほてい・まきこ)さん、
赤澤幸子(あかざわ・さちこ)さんの二人。
ともに、バッグデザイナーを経て、
ブランドプロジェクトのコンセプトや立上げを手掛けたり、
アパレルブランドなどで
バッグデザインを担当してきた経歴をもっています。

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■Instagram

02
二人で考えて、三人で決める

伊藤
zattuのバッグは、シンプルに見えるんですけれど、
じつはとてもデザインされていますよね。
zattu
もともとブランドのコンセプトが
「シンプル」なんですけど、
実はよく見るとデコラティブなんですよ。
だけど、見た目にガッと派手にはしたくないので、
シンプルでもちょっとだけ
違和感があるデザインだということが、
使っていくうちにわかるような仕掛けになっています。
前と後ろのハンドルが微妙にサイズが違うとか。
伊藤
そうなんですよね。
持っているとわかる。
あと、畳めます。
zattu
それは、輸送費も考えたんですよ。
たとえば九州や北海道に送るときに、
畳んで運べると輸送コストが抑えられます。
この素材、畳んでもシワが復帰しますから、
Tシャツみたいに畳むことができるような
パターンになってるんですよ。
多少、残ったシワも、使ううちに戻ってきます。
ハイブランドのバッグを畳んで納品、なんて、
御法度なわけで。普通はあんこ(詰め物)を入れて
輸送コストをかけて、立ち姿のままで運ぶんですけれど。
伊藤
大きい立派な箱に入れて。
zattu
そうなんです。
そういうのもあって、
違うバッグをつくりたくて。
伊藤
zattuを立ち上げた当初の
評判はいかがでしたか。
zattu
それが、なかなか“売場”がなくて。
きちっと自立するバッグが好まれる中で
こんなブランドを立ち上げちゃったものだから、
最初は大変だったんですよ。
それもTシャツみたいに畳まれて納品するので、
最初、取引先の皆さんも
「え?」みたいな感じだったんです。
伊藤
そうなんですか。でも、それこそ、
「立派すぎる包装は無駄だなぁ」と、
今では思う人も多いと思いますから、
いろんな意味で、早かったのかもしれないですね。
zattu
ありがたいことに、
偶然にも時代の需要と一致する部分が
以前より増えたのかもしれません。
マイクロファイバースエードは
手洗いができるので、
コロナが蔓延した時には、
売場での「洗えますよ」という言葉が
購入のきっかけになったという声を
たくさん聞きました。
伊藤
なるほど。
zattu
アルコールスプレーや
除菌シートなど持ち物が多くなったから、
軽いバッグを求める方が増えたんです。
意図していなかったことですけれど、
偶然にもそれが追い風になりました。
伊藤
今回、「weeksdays」では
zattuのリュックを扱わせていただきます。
このリュックをつくったときの
お話を伺わせてください。
zattu
はい。リュックをつくったのは、
同じ食事ばかりだと
変えたくなるのと一緒で
「zattuのコレクションがトートバッグばかりでも」
と思った時に、
女性が日常で使えるリュックは?
ということを考えはじめました。
アウトドアや男性用のリュックだと‥‥。
伊藤
ごつい印象になりますよね。
zattu
そうなんです。
「でもリュックは欲しい」わけです。
それでzattuならリュックをどうデザインする? 
ということを考えました。
すぐに、何パターンかのサンプルをつくりました。
その中のひとつが、
ナイロンのリュックで、
持ち手にアクセントとなる
コードハンドルを用いたものです。
伊藤
そうだったんですね。
zattu
ハンドルは、伸びはあっても、
伸びすぎない程度の編み方はどうかとか、
カラーサンプルもいくつかつくって、
「かわいいんじゃない?」というふうに、
できあがっていきました。
結果、ちょっと「かっこいい」ものになったので、
最初、これはもしかしたら
スニーカーを愛用するような男性にも受けるかな? 
と思ったんですが、
ちゃんと、エレガントなものを好む
女性たちにも受け入れてもらって。
伊藤
そうですよ、
「このリュックなら持てる」と思いましたもの。
zattu
なんとなく、ですけれど、
女性たちが「かわいい」から「かっこいい」に
意識が変わった時期だったような気がします。
伊藤
それは世の中が、ということとともに、
お客さまの年代的なこともありますか。
zattu
たぶんそうだと思います。
30代よりは40代、というように、
前はかわいいものを着たいとか、
かわいい感じに見えたいと思っていた方も、
意識が変わってきますよね。
また、時代的にも、
例えば女性でも大きな車に乗ったり、
ワンピースにキャップをかぶったり。
私たちも、「なんとなく、今、
女性は『かわいい』より『かっこいい』を
目指している感じ、しない?」
なんて話していたんですよ。
「この方が、これを選ばれるんだ!」
という意外なこともあって。
私たちも嬉しかったですよ。
アウトドアっぽいものよりは
日常着寄りの
リュックをつくりたかったので、
おしゃれに見えてくれるといいな、と。
伊藤
布袋さんと赤澤さんはともにデザイナーですが、
ひとつのバッグが出来上がるまでの、
お二人の役割分担はどういう感じなんでしょうか。
「こうだよね!」と、息が合った感じで
ひとつのものが出来上がっていく?
zattu
はい、その通りです。
伊藤
新しいものを生み出すのは、
どんなタイミングなんでしょうか。
zattu
まずは、全力投球をした展示会が終わると、
疲れとともに、自分たちの中に反省が生まれますよね。
「ああだったかな、こうしたほうがよかったな」って。
そのタイミングって、少し言い方が変ですけど、
放牧されているみたいにちょっとフリーなんです。
伊藤
うん、うん。
zattu
どこか旅に出たり、休んだりすることもありますし、
仕事をしながらも、しばらく「だらける」時間があって。
仕事だけに集中するんじゃなくて、
ちょっと頭をだらけさせるというか、フリーにする。
そうするといろいろなものが目に入ってきます。
例えば新幹線に乗って、旅をしている人を見ると、
「やっぱりトートバッグは
こういうのがあった方がいいかも」とか、
人を見ても、「ああ、あの人のああいう格好が
かっこよかったなあ!」と思うわけです。
そして二人でそういう話をしたりするんですよ。
人に訊いてみることもありますよ、
例えば京都に行かれる方がいて、
「私は絶対キャスターは持たない」とおっしゃるんです。
「え、どうしてですか」と訊いたら、
「洋服に合わないから」。
2泊3日だったりすると荷物が大きくなるけれど、
あらかじめ送るなりして、
移動は絶対トートだけで行くんですって。
たしかに、国内旅行に行くときには、
大きなトートひとつ、という方がかっこいい。
海外はもちろんキャスター付きですけれどね。
そんな中から「いまどきのステキな格好をなさる方は、
どんなバッグを持つのがいいんだろう」
という話になって、だんだん、
「こういうのがあったらいいかも?」と、
次のバッグのアイデアにつながっていくんです。
伊藤
ご自身でも旅や普段の暮らしで、
チェックを怠らないというか。
zattu
そんなにチェックをしているつもりはないんですが、
目についちゃうんでしょうね。
それは二人とも同じです。
ふだんからジッと見ているわけじゃないんですよ、
でもやっぱりステキな人を見ると、
つい観察してしまいますね。
伊藤
バッグを持っていないという人、
ほとんどいないですものね。
zattu
そんな中、お洋服がかっこいい上に、
ステキなバッグを持つことで
更にセンスアップしてる方を見ちゃうと、
「おおー! こういうものを提供できたらいいな」
と思っちゃうわけです。
そして二人で共有して、
「この前、こういう人がいたんだけど、
いまどきの、袖の太めのものを着てらしたから、
バッグのハンドルも長い方がいいんじゃない?」
「でも短い方がかっこいいときもあるよ」とか、
そういう話をしてるんですよ。
そういうことをなんとなく頭の中に入れて、
最終的に「そろそろ次のシーズンのサンプルを
出さないとマズいよね」となったとき、
ルービックキューブの色を合わせるみたいに
デザインを構成していくんです。
最初はガチャガチャでも、だんだん面が合ってくる。
伊藤
そうやってピタッとはまったものが、
展示会に並ぶんですね。
zattu
最終的にはそうなんですが、
二人で一致して全部がピタッとはまったものが
毎回、できあがるわけではないんですよ。
もちろん「基本的によくない」というものは
製品化はしませんが、
ちょっとだけずれたまま、どうしよう? 
というものがある。
「最後の最後に、色で迷っている」とか
「ひとつだけ気になる部分がある」
なんていう場合ですね。
そんなときに頼りにしているのが、
プレスを担当している鳥海です。
やっぱり第三者の目が入ることは大事で。
伊藤
ずっとお二人が考えてきたものを、
鳥海さんが、製品化の最終段階で、
客観的に見てくださるんですね。
zattu
そうです、そうです。
第三の目が入るというのは、
平面が立体になるくらいのちがいなんです。
誰かが入ることによって、奥行きが出るんです。
だから信頼している鳥海に「どう思う?」って。
伊藤
鳥海さんからはどんな反応が返ってくるんですか。
正直に、厳しくても、思ったことを伝えてくださる?
zattu
そうですね。全部正直に言ってくれます。
もともとプレス以外のことでも
「あそこのお店に卸したらどうでしょう」とか、
いろいろな提案をしてくれる人なんですよ。
彼女は年下なんですけれど、最初に言ってくれたのは、
「やりたくないこととやりたいことを分けてください」。
つまり、私たち二人は、
やりたくないことはやらなくていいですよ、と。
伊藤
例えばやりたくないこととは?
zattu
今の段階では、ですけれど、
ポップアップ(ポップアップストア=
数日から数週間など短期間だけ出店すること)とか、
他ブランドとのコラボレーションですね。
基本的には自分たちの仕事に
集中することを大切にしています。
伊藤
逆に、やりたいことというのは。
zattu
極論を言うと、
「美術館などのミュージアムショップに置きたいなあ」。
そういうことを漠然と言います。
すると、彼女が探してくれるんです。
例えば最近ですと、
「センスのいいインテリアショップのお客様にも
zattuを知って欲しい」
と言いました。
そんな中でコンランショップでの取り扱いが始まりました。
伊藤
そんなふうに漠然とでも伝えてもらうと、
なんとなく「これとこれ」が結びついて、
形になる場合がありますものね。
たしかにミュージアムショップ、いいですね。
zattuにピッタリです。
zattu
ありがとうございます。
「ホテルのお土産屋さんがいいな」っていうと、
鳥海が探してくれて、
そういうところにちょっと置いてもらったりとか。
伊藤
たしかに、旅先のホテルに
これがあったらいいですね。
zattu
自分が旅に行ったときにも、
いわゆるお土産だけじゃなくて、自分が
「これがあったらいいな」と思うものを
置いて欲しいなと思うんですよ。
ミュージアムショップにしても旅にしても、
似ている感覚の人が集まる傾向がありますよね。
ファッションって「基本的にはかぶりたくない」けれど、
「同じものが好きな人とかぶるのはいい」。
たとえば「このデザイナーの椅子が好き」とか
「同じ建築家が好き」という人が
「このバッグ、ステキですよ」って勧めてくれたら、
きっと、気になると思うんですよね。
そういう意味で、zattuが置かれる場所は、
なるべく私たちが好きなところに、って思うんです。
さきほどポップアップストアはやらないと言いましたが、
私たちが「このカフェでならぜひ!」と思ったら、
やってもいいと思うんですよね。
伊藤
なるほど。それでzattuの取り扱い店舗が
あまり多くない理由がわかりました。
(つづきます)
2024-07-30-TUE