COLUMN

端境期ってやつは。

馬場わかな

春めいた季節、まだまだ寒い日があったり、
と思ったら急にポカポカ陽気になったり。
そんな「端境期(はざかいき)」、
みんな、どうしているんだろう?
そんなテーマで、エッセイを書いていただきました。
写真家の馬場わかなさんからスタートです。

ばば・わかな

フォトグラファー
好きな被写体は人物と料理。
その名も『人と料理』(アノニマスタジオ刊)という
17組の人々のポートレートと
その人の作った料理を撮り、文章を綴った著書がある。
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好きな服はどんな服かというと、肌ざわりの良い服だ。

それに重い服は肩がこるから軽い服の方がいい。

華美でなくとも、形とか色とかディテールとか、
どこかしらに、ああ、美しいな、
と思うポイントがあるものが好きだけど、
おかしな絵がドーンとプリントされた
Tシャツなんかも好きだ。

年中シルエットは決まっていて、
上半身ゆったりで下半身ぴったりか、
上半身ぴったりで下半身ゆったりの、
どちらかのワンパターンというかツーパターン。

自分では気持ちいいバランスと思って着ているが、
「今日も肌着感ていうか部屋着感がすごいね!」
と言われたりもする。

フリーカメラマンという
日々違う現場に行く仕事なのをいいことに、
洗濯して乾いたのをそのまま着て、
週に三日位同じ服、
同じ上下の組み合わせで出かけたりする。
もしかして、毎日子を迎えに行く保育園の先生は
気づいているんだろうか?
いや、きっと保護者の服なんてそんなに見てないはずだ。

途中からどんどん雲行きが怪しくなってきて、
え‥‥ちょっと待って、
この人が「ファッションの端境期」を語るんかい?!
とお思いでしょうけれど、
ええ、きっとほら、
ファッショナボーな方もお書きになるでしょうから
箸休め的に、このまま書き進めさせていただこうかという‥‥。

そんなこんなで、端境期ってのは、
えーと、季節の変わり目の何着たらいいか
わからないあれでござんすよね??
と思いながらもなんとなく不安になり、一応検索してみる。
冬物から春物と、夏物から秋物の入れ替わりの時期ね‥‥。
オッケイ。

その時期は、だいたいなんだか
肌の調子がちょいと悪くなり、
変わり目だわあ‥‥と思いながら
ホットタオルを顔に押し当ててみたりする。

その時期は、十分持っているはずの洋服の中に、
新しい季節に向かう気分に合うものが
一枚もないような気がして、
なんか‥‥なんか買いたいのよ!! と
急に欲望に火がついたりする。
その時期は、寒いようなそうでもないような日に、
温度的にちょうどいいかと
コーデュロイのコートで出かけて、
現場の人々が揃って軽やかな春のコートなんかを着てきて、
さすがに、うん、そうね‥‥
焦げ茶色のコーデュロイは秋にはぴったりだけど、
冬の終わりに着るもんじゃないか‥‥と学んだりする。
そうそう、端境期は上着でどうにか
調節するしかないですよね。
あとストールとか。

そうこうするうちに端境期のモヤモヤを通り越し、
季節は変わりゆく。
温暖化でどうもおかしな天気も多いが、
季節が巡りゆくことには変わらず、
四季のある国でよかったよなあと思う。

移り変わる過程のモヤモヤがあるからこそ、
春夏秋冬、それぞれの季節らしい日が際立ち、
春、切なく美しい桜をまぶしく眺め、
新緑と青空の気持ち良さにクラクラし、
夏の暑さにやられながらも木陰で一息、
蝉の声と入道雲にノスタルジーを感じ、
秋の紅葉と落ち葉を愛でつつ、
今年は秋らしい気持ち良い日が少なかったなあとか
ぼやきながら冬を迎え、
キリッとした寒さを味わう。

というわけで春の始まりの日々、
何を羽織ったらいいかよくわからなくなりつつ、
鞄の奥に調整係のカーディガンやらストールやらを押し込んで、
元気に参りたいと思います。

2019-03-11-MON