ロンドンに暮らすNoriko.Iさんがつくる
アパレルブランド、
COGTHEBIGSMOKE(コグ ザ ビッグスモーク)。
weeksdaysでは、
2021年にロンドンと東京をオンラインで結んでの
Noriko.Iさんと伊藤さんの対談を掲載しましたが、
今回、Noriko.Iさんが東京で展示会を開くと聞き、
実際にお会いしてお話をすることができました。
ワンサイズでしか展開しないCOGの服が、
どうして誰でも着られるのか。
その理由を探る中で、Noriko.Iさんの
「服は、誰のために着るものか」
という問いと、答えが見えてきましたよ。

Noriko.Iさんのプロフィール

ブランドのデザイナー、
セレクトショップのバイヤーを経て、
2010年に英国・ロンドンに移住。
英国ブランドのディレクターを経て、
自身のブランド「COGTHEBIGSMOKE」を立ち上げる。
COGはNoriko.Iさんが愛するクマのぬいぐるみの名前、
“THE BIG SMOKE”はロンドンをあらわすスラング。
ロンドンの自宅をはじめ世界各地でおこなったデザインを、
生産チームのいる日本とオンラインでやりとりしながら
制作を続けている。
COGTHEBIGSMOKEのキーワードは、
シーズンレス、エイジレス、サイズレス、トレンドレス、
シーンレス、エフォートレス。
サイズはひとつだけ、素材はジャージーのみ。

●website
●前回の対談

01
女性たちが考えるただ一つのことは

伊藤
Norikoさん、
日本での展示会の合間でお忙しいなか、
お時間をとっていただいてありがとうございます。
今日はどうぞよろしくお願いいたします。
Noriko.I
こちらこそ、よろしくお願いします。
伊藤
今回の展示会もそうですけれど、
Norikoさんのつくる服、
見るたびにすごいなぁと思っているんですよ。
Noriko.I
ほんとうですか? 
私自身は、ちょっと罪悪感を感じるくらい、
好きにつくらせてもらっている感覚なのですけれど。
伊藤
そこがすごいんです。
前回の対談でデザインの仕方について伺ったとき、
Norikoさんの言葉で心に残っているのが、
「盆栽裁断」でした。
Noriko.I
あはは、そうでしたね。
伊藤
トルソーにかけた生地を
盆栽を剪定するみたいに裁断して、
自分で着てみて、
「ここをちょっと
つまんですっきり見えるようにしよう」
なんてカットすると聞きました。
そのつくりかたが、もう衝撃的で。
Noriko.I
私、組織に属していたとき、ボスから
「好きなことだけしていたらいけない」
「あなたのつくる服って、
あなたは似合うかもしれないけど、
一般の方には難しいんじゃない?」
なんて言われたことがあったんです。
今は、その反動かな? 
自分の好きな形をめざして、
チョキチョキって、
自由に切らせてもらっています。
伊藤
そのボスの考えは、
多くの人に似合う服を、ということだったのかな。
でもこうやって、ブランドが続いているということは、
みんなに似合う服を
Norikoさんはつくっているということだから、
間違いではなかった。
Noriko.I
はい、そう思っているんですよ。
もちろん私がつくる服は
私の顔や体形に合っているんですが、
「私だから似合う」わけじゃなく、
「違う人には違う似合い方があるはず」
ということだと思っているんです。
でも、上司は男性でしたから、
私のつくる服を着ることはない。
その感覚が伝わらなかったのかもしれませんね。
伊藤
なるほど。
たしかに、男性と女性とでは、
体型に差がありますものね。
歳を重ねるごとに変わる、
腰回りや二の腕の肉のつきかたとかも。
Noriko.I
マーケットデータなんかを見て、
「今どこどこのブランドの
こういうのが売れてるらしいよ」とか、
「OLはこういうのが好きらしいね」
なんて言われたんです。
私、「ひとくくりにするな!」
「みんなそれぞれにおしゃれなんだぞ!」
って、憤ってました。ふふふ。
伊藤
ほんと、ほんと(笑)。
Noriko.I
OLかどうかなんて関係なく、
服を着るときに考えることって、
女性ってただ一つだと思うんです。
それは「きれいに見えたい」ということ。
そしてそこに含まれるのが、
「スタイルよく見えたい」。
伊藤
まったくそのとおりだと思います。
Noriko.I
私はそういう服をつくりたいと思いました。
OLでもおばあさんでも、中学生でも、
どなたでも自由に着られる服をつくりたいと。
あとはテイストが好きかどうかの問題ですけれど。
伊藤
そう言われてみれば、
COGの服って、年齢を問わず、という感じがします。
Noriko.I
ありがとうございます。
着た人が、「あ、私がいつも
ちょっといやだなあって思うなところが、
気にならない」とか、
「なんだかいつもよりおしゃれに見える」
と思ってくださったらいいなと。
そんな、とても重要でシンプルなことが、
当時は軽視されていたように感じます。
伊藤
「女性はこうあるべき」みたいなことが
ずっとあったように思います。
Noriko.I
そうなんです。
「テーマがこうだからそれに従って」とか、
「シーズンが変わったら前のデザインとは
違うものでなければならない」とかね。
でも、着る人にそういうことは関係ないし、
「大きなお世話だわ」と思って。
伊藤
ふふふ、ほんと、大きなお世話ですよね。
そんなに毎年、自分って変わらないですもの。
Noriko.I
ね! 
変わらないですよ。
(つづきます)
2024-09-30-MON