ベーシックだけど、ほかとはちょっと違う。
そんなアパレルブランド、Le pivot (ル・ピボット)。
つくり手の小林さん、そして相棒の金井さんに、
今季登場するデニムコートについて、
伊藤まさこさんがお話を聞きました。
小林さんが「パリの街角に似合うように」
と作ったこのコート、
同じ形の3色展開‥‥に見えて、
実はそれぞれ生地の作りが違うんです。
デニムだけどカジュアル過ぎず、
街にも着ていけるのは、
いろんな仕掛けや工夫が詰まっているからなのでした。
伊藤さん、そして小林さんによる
金井さんのコーディネートとともに、お読みください。
小林一美さんのプロフィール
小林一美
Le pivot デザイナー。
企画・物作りに関することすべて、
発信することやイメージに関連することを担当。
バイヤー経験後、アパレル会社で企画・生産・
プロジェクトの立上げなどを手がけ、
20年勤務した後に独立、金井さんとともに
Le pivotを立ち上げ、現在に至る。
好きなものは美味しいもの、花、映画、
ミュージカル、時代小説、そして万年筆。
金井美幸さんのプロフィール
金井美幸
Le pivot 営業・プレス・店頭販売担当。
服飾学校卒業後、アパレル勤務、
小林さんと同時期に独立し、
Le pivotの立ち上げに参加、現在に至る。
好きなことは食べること、
ミュージカル、バレエなどの観劇。
02カジュアルときれいのさじ加減
- 伊藤
- 今回は、小林さんがコーディネートも
考えてきてくださったんですよね。
- 小林
- ええ、金井さんに着てもらいました。
金井さんは身長が168cmあって、
首も細くて長いので、
「スミクロ」のコートには
パーカーとネックウォーマー、
それからモールのアームウォーマーも
合わせてもらったんです。
私は身長が148cmと低めで、
このコーディネートは似合わないので、
「もし背が高かったら着たいな」
という組み合わせです(笑)。
- 伊藤
- あえての重ね着スタイルですね。
わたしも156cmとそう高くはないので、
このコーディネートは憧れます。
- 金井
- このコートがきれいめの大人っぽいコートだから、
パーカーでちょっと崩して着ても
ちょうどいい感じですね。
- 小林
- パーカーを合わせたぶん、
ボトムはきれいめのパンツ
にしたんです。
- 伊藤
- 素敵です。
「アイボリー」のスタイリングには、
ちらっとのぞくロイヤルブルーが効いてました。
- 小林
- ブルーのサテンブラウスですね。
こちらはちょっときれいめのアイテムを持ってきて、
カジュアルに見えすぎないようにしました。
この、カジュアルと “きれい” のさじ加減は、
自分の中でもすごく気をつけているポイントなんですけど、
このコートは、
単体でもそれが成立させられたかなと思っています。
- 金井
- そのバランスのために、
それぞれの生地に加工も加えているんですよね。
- 伊藤
- それはどんな加工なんでしょう。
- 小林
- たとえばバイオ加工と言って、
ウォッシュ加工の一つなんですけれど、
酵素を入れて洗って、
ちょっとアタリ(白く色落ちする部分)を出したんです。
「スミクロ」は生地の厚みがあって
色も重めだったので、
ソーイングポイントに少しだけ出るようにしました。
- 伊藤
- たしかによく見ると、
縫ってあるところにニュアンスが出てます。
ということは、
3色とも織りや加工を変えて作られてるんですね。
- 金井
- そうなんです。
同じに見えて、違うんです。
- 伊藤
- デニムだけどデニムじゃないというか、
街に着て行ける感覚が不思議ですね。
- 小林
- 街と言うと、
実は今回のテーマが「モノクローム」だったので、
アイデアを考えているときに、
白黒の写真集とか、無声映画をずっと見ていたんですよ。
私はとくにパリの街が好きなので、
フランス映画の中の、
パリの街角にも似合うようなアイテムを、
と思って作ったんです。
だからそう感じてくださってうれしいです!
- 伊藤
- 言われてみればそのニュアンス、
ところどころに感じられます。
ポケットの位置とか。
- 金井
- まさこさんが着てくださった感じ、
パリっぽかったです(笑)。
- 伊藤
- ほんとですか? うれしいです。
でもこの3色は、
どれにしようか悩んでしまいます。
とくに、濃いめの「スミクロ」と、
薄めの「インディゴ」‥‥。
- 小林
- 私は「インディゴ」の、緯糸の白も結構好きですよ。
よーく見ると、ムラ糸(太い部分と細い部分がある糸)
が入っているので、
糸自体にちょっとずつ表情があって、
織り上がった全体の雰囲気が素敵なんですよね。
- 伊藤
- ほんとうですね。
たしかに凹凸があるみたい。
- 小林
- 同じ色の中にも変化があって、表情も違うので、
中に合わせる色選びもきっとたのしいですよ。
私なら、「インディゴ」にはピンクのトップスとか。
- 伊藤
- ピンク!
かわいいですね。
でも、何色でも合う気がします。
- 小林
- うんうん、
デニムは何色でも合うのがいいところですよね。
ボトムにはカーキをもってきてもいいですし。
- 伊藤
- あ、以前作っていただいたパンツとか。
- 小林
- そう、かわいいと思います。
丈も、このコートは長めに作っているので、
私の場合は少し詰めようかなとも思ってたんですけど、
意外と靴によっては大丈夫だったりします。
- 金井
- でも、肩がコンパクトだから、
丈が長めでも、
「着せられてる感」は全然ないですよね。
- 伊藤
- たしかに。
「小さい人が大きいサイズを着ちゃった」
みたいな感じにはならないですものね。
- 小林
- 肩幅が狭い人でも、
アクションプリーツの部分で自然に調整されますから、
ちょっと余っても平気です。
- 伊藤
- アクションプリーツ、すごいですね。
展示会では、
みなさんの反応はどんな感じでしたか。
- 小林
- ありがたいことに好評で、
いろんな方に「新鮮」って言っていただきました。
私はそう思っていたんですけど、
みんなにも新鮮なんだ!
とわかってうれしかったです。
- 伊藤
- ええ、新鮮ですよ。
このコートなら、
もしかして秋冬だけじゃなくて、
春先も着られますか。
- 金井
- もちろんです。
Tシャツとかノースリーブの上にも羽織れますし、
ライナーコートを下に着れば、
真冬でも大丈夫だと思いますよ。
- 伊藤
- 長く着られてうれしいですね。
足元も、ヒールやブーツを合わせても素敵ですけれど、
スニーカーでも合いますし。
- 小林
- ね、いろいろ履けちゃいますよ。
お好きなコーディネート、
ぜひたのしんでくださいね。
- 伊藤
- たのしみます。
どうもありがとうございました。
(おわります)
2024-10-22-TUE