REPORT

ジェントルウーマン。

英国うまれのSUNSPEL(サンスペル)。
「weeksdays」では、その日本のチームといっしょに、
女性のための「ルームパンツ」をつくることになりました。
もともとメンズウェア、それも肌着に特化したメーカーが、
女性のアイテムも積極的につくる、総合アパレルに。
その「過渡期」は、どんなだったのだろう?
サンスペルを日本に紹介している、
アングローバルのみなさんに、取材しました。

サンスペル(SUNSPEL)は、
1860年に英国でうまれた肌着のメーカーです。
創業者はトーマス・ヒル。
産業革命の時代に生き、
家業はタイツや靴下をつくる工場でした。
トーマス・ヒルは自分の代になったとき、
ノッティンガムのニューディゲイトで、
高級な素材を使った「よりよい肌着」をつくりはじめます。
その後、大恐慌時代や第2次世界大戦を
生き延びたサンスペルは、幾度かの方向転換を経て、
1947年、アメリカ製のボクサーショーツ
(日本で現在言われているぴったりしたものではなく、
布帛をつかった、ゆったりしたパンツです)を
英国に紹介。デザインと素材の改良をおこない、
あたらしいパターンをつくり、世に出します。
これが現在もつづくロングセラーになっている、
“サンスペルといえば”という代名詞にもなっている
紳士用のボクサーショーツです。

その後、1985年、リーバイス501が、
“男性がコインランドリーでリーバイスを脱ぎ、
白いボクサーショーツ一枚になる”
というCMをつくり、たいへんな話題になります。
そのボクサーショーツがサンスペルのものだったことから、
その名前が、世界に広く知られるようになりました。

‥‥と、ここまでお読みのみなさん、
「あれれ? サンスペルって、もともと、
メンズウェアのメーカーだったの?」
と驚くかもしれません。
現在のサンスペルは男性の肌着やウェアはもちろん、
カットソー、シャツやワンピース、ニットなど、
高品質な素材をつかった快適なウィメンズウェアを
たくさんつくっていますから、
意外だと思うかたもいらっしゃることでしょう。
ですが、サンスペルはもともと
「サンスペルメンズウェア」
という会社名だったこともある紳士もののメーカー。
女性ものが広く知られるようになったのは、
わりと最近のことなのでした。

今回、サンスペルを日本で展開している
アパレルメーカー「アングローバル」の担当である
奥野真司さんと河合ゆきさんにお目にかかり、
私たちはまず訊いてみたいことがありました。
それは、「紳士肌着で有名だったメーカーが、
そのイメージを払拭し、
ウィメンズウェアも展開する総合ブランドとして
英国から世界で有名になった、
そのひみつは何だろう?」ということでした。
そういうことって、なかなか、すぐには、
受け入れられるものじゃないかもしれないって。
ことにヨーロッパの女性の肌着は、
「肌にまとう」という印象の、
薄い生地やレースを多用した、
ある意味セクシーなものが多い。
サンスペルのように、男性的ともとれる
肌着を着るということが、
すっと受け入れられたのは、なぜなんだろう?

「じつは、2008年、
卸しを中心に仕事をしてきたサンスペルが
ブランドとして立ち上がって、
ロンドンのショーディッチに最初のお店ができたとき、
並んでいたのはほぼメンズだったんです。」

そう奥野さんは言います。
ウィメンズウェアとして、Tシャツはありましたが、
それも、メンズのやり方でサイズを変えたりして
女性も着られるようにしたものだったそう。

「仕様とかカッティングも、ちょっとメンズっぽい。
タンクトップも女性らしい感じではなくて、
女性だとブラが見えちゃうかな? ぐらいな感じでした。
メンズウェアを基本にしたウィメンズウェア、
というところは、いまも続いている伝統なんです」

そこ、そこです。
「weeksdays」でもいろいろなブランドで、
「メンズウェアのサイズをちっちゃくして、
あるいは、大きいままで、
女性が着たら、かわいいし、かっこいい!」
という提案をしてきました。
今回のサンスペルのルームパンツの提案も、
男性のボクサーショーツをリメイクして
女性が着られる部屋着をつくったら、
どんなに快適だろう?
というところからの発想でした。

そんな話をしながら、
河合さんが1冊の雑誌を見せてくれました。
それは、

『the gentlewoman』

というタイトルでした。

ジェントルマンと、
ジェントルウーマン。

「そもそも、こういうライフスタイル雑誌があるくらい、
英国では、サンスペル的な肌着をよしとする
女性たちの厚い層があったんです。
たとえば日本でも人気の高いブランド、
マーガレット・ハウエルは、
まさしくジェントルウーマンなブランドだと思いますよ。
じっさい、マーガレット・ハウエルは、
サンスペルに別注をつづけています。
素材のよさ、着心地のよさは、
なにものにもかえがたいと」

ファッションページを見てみると、
マニッシュなファッションを含むけれど、
男装とは違い、むしろ、女性らしい印象。
華美になりすぎず、潔く、
高いクラス感と品のよさがあります。
ファッションページだけでなく、
読み物としても面白そうなテキストも
たくさん掲載されていました。

「とはいうものの、英国ではいまも
サンスペルはメンズウェアの比率が高いままです。
もっと女性たちに身に付けてほしい、
と考えた本社と、私たちの気持ちが合って、
日本でたくさんのウィメンズウェアを
展開しようということになったんです」

日本では英国ほどサンスペルの男性的な印象が
浸透していなかったこと、
また、素材や着心地のよさを評価する女性は、
ちゃんと大勢いて、
その人たちにはサンスペルのよさは
すぐにわかってもらえるはずだ、という思いを持っていた
奥野さんたちは、日本で展開をするにあたって、
ヨーロッパ的な体型ゆえのパターンから、
きちんと日本人向けにととのながら、
商品をふやしていったといいます。

「ところが、メンズのボクサーショーツを
大きめに部屋着にしたいからとお求めになる
女性のお客様も、すくなくなかったんです!
最初、伊藤まさこさんからも、
メンズウェアをそのまま紹介してもいいくらいなんですよ、
とおっしゃっていただきました。
でも私たち、レディスウェアとして、
前開きのない、男性よりもゆったりしたパターンの
商品を展開していましたから、
それを提案させていただいたんです。
アウターに関しては日本むけのパターンをひきますが、
これはかなりゆったりしているので、
英国のパターンをそのまま展開しています」

サンスペルの男性のボクサーパンツは、
日常の動きも考え、動きやすく、
フィット感のある立体裁断で、前開きもあります。
いっぽう今回の女性むけのルームパンツは、
前開きがなく、生地をたっぷり使うことで
ゆとりを出しているパターンを採用。
いっけん、同じように見えますが、
男性と女性のからだのつくりにあわせて、
まったくちがうつくりになっているんです。

サンスペルはアイテムを自社工場でつくっています。
今回のルームパンツは、ポルトガルの、
手のいい職人がいる工場でつくられました。

▲“A DAY IN THE LIFE OF A BRITISH CLOTHING FACTORY - ファクトリーの1日”、
サンスペルの工場のイメージビデオです。
英国のロング・イートンの工場で撮影されました。
監督・撮影・編集 ダニー・クック
微速度写真 アレックス・ソーントン
制作 ローラ・ホームズ プロダクション

「weeksdays」が
サンスペルといっしょにつくった
女性むけのルームパンツには、
そんな背景があったんです。
日本のジェントルウーマンたちに、
ぜひ着ていただきたいアイテム、
どうぞよろしくおねがいします。

2019-03-18-MON