モロッコの革製ルームシューズ「バブーシュ」を、
伊藤まさこさんが使い始めた20年前、
それはまだまだ「知るひとぞ知る」アイテムだったそう。
このバブーシュを、日本にいちはやく紹介した
モロッコ雑貨店「Fatima Morocco」
(ファティマ モロッコ)の大原真樹さんに
お話をききました。
現地に工房を構え、
いまもモロッコと日本を往復する大原さんに、
モロッコ雑貨に興味をもったきっかけ、
現地で仕事を始めた頃のこと、
そこから20年の歳月のことなど、
たくさんおききしましたよ。
3回にわけてお届けします。

大原真樹さんのプロフィール

大原真樹 おおはら・まき

モロッコ雑貨店「Fatima Morocco」
(ファティマ モロッコ)ディレクター。
バイヤー、スタイリストとして世界中を飛び回り、
様々な国と出会うなか、モロッコに魅了され、
2006年に独立、店舗経営をはじめる。
今も年間100日以上をモロッコで過ごす。
著書に『女は好きなことを仕事にする』
(大和書房)がある。
「weeksdays」には
「miiThaaiiのバッグとHonneteのストール、
あのひとの使いかた」
に登場。

■Instagram
■website

03
20年のあいだに

伊藤
今も、「Fatima Morocco」の工房には
同じ職人さんがいらっしゃるんですか。
大原
変わってないです。
当時15歳だった子が、もう35歳になりました。
▲こちらがその職人さん。名前を「ミロドさん」といいます。
伊藤
ずうっと付き合いがあるんですね。
20年経って、さらに腕が良くなったことでしょうね。
大原
はい、生産のスピードも上がりましたよ。
伊藤
いい関係ができてるんですね。
大原
そうですね、お互いに年を取りましたけど!
伊藤
バブーシュを作る職人さんと
カゴを作る職人さんは、
違う方なんですか。
大原
まったく別の方なんです。
カゴはカゴで、バブーシュはバブーシュ、
それぞれ、家業なんですよ。
若い職人さんは、
お父さんの仕事を手伝って、一人前になるんです。
最初は型紙しか取らせてもらえなかった15歳の彼も、
今やほんとうに立派な職人になりました。
伊藤
20年ってそういう歳月ですものね。
その20年の間に、ちょっとずつ
アイテムを増やしたりも?
大原
そうですね。バブーシュもデザインを増やしたり、
カゴは、その年の流行を取り入れたりしています。
絨毯や食器は、
ずっと同じようなものを買い付けていますけれど、
バブーシュとカゴは変化がありますね。
伊藤
コロナ禍で、需要は変わりました?
大原
大きく変わりました。
それまでのトップセールスはカゴだったんですが、
コロナ禍になって、バブーシュが逆転しました。
外に行かないからでしょうね、カゴ需要が減り、
リモートワークでおうち時間が増えたことで、
バブーシュの人気が高くなりました。
いまはまた、カゴを求める方も
増えてきましたけれど。
伊藤
そういえばパリの荒物屋で売られている
マルシェカゴはモロッコ製ですよね。
パリでは日常的に
ふつうのおじさんが持ってたりして、
可愛いなあと思うんです。
大原
はい、全部、モロッコ製ですよ。
可愛いですよね、パリのおじさんたち!
伊藤
みんな、無造作に、床や地面に置いたりして。
大原
現地でもそんな使い方をしてるんですよ。
ロバに乗っけて荷物を運んだりとか、
八百屋さんが野菜を売るとき、
ニンジンやタマネギを入れたり。
もう生活の必需品なんです。
伊藤
高温多湿のベトナムだと、湿気でカビちゃうから、
プラスチックテープのカゴが普及したといいますが、
モロッコは乾燥しているから
天然の素材が使えるんですね。
大原
そうです。もう、本当に乾燥しています。
湿度が10%以下なんです。
そうだ、それでお伝えしなくちゃいけないんですが、
バブーシュに使っている羊の革、
モロッコは古いなめし方なので、
においがちょっと残るんです。
それでも、羊なので、山羊よりはずっと軽く、
そもそも乾燥したモロッコではいっさいにおわないんです。
ただ、日本の梅雨時など湿気が多い時に、
ちょっとだけ気になる場合があります。
その時は、必ず陰干しをしてくださいと伝えています。
そうすればにおいはなくなっていきますから。
伊藤
そうなんですね。
バブーシュのお手入れですが、
拭いたりしてもいいんでしょうか。
大原
汚れたら、から拭きでお願いします。
洗ったり濡れぶきんで拭いたりなど、
水に濡らすことはしないでくださいね。
白は汚れやすいという印象があるかもしれませんが、
じつは、そんなに汚れないんですよ。
伊藤
そうですよね、わたしも経験的に
汚れにくい素材だなと思っています。
このバブーシュ、初めてという方にも
ぜひ使っていただきたいですね。
大原
はい、ぜひ。
バブーシュを1回履くと、
普通のスリッパには戻れないって、
皆さん、おっしゃいます。
伊藤
そうかもしれないです。
大原さん、今日はありがとうございました。
大原
こちらこそありがとうございました。
(おわります)
2025-02-05-WED