岡山・倉敷のデニム縫製工場から生まれた
老舗のデニム&服飾のブランド、
JOHNBULL(ジョンブル)。
「weeksdays」に初登場となるこのブランドについて、
プレス担当のサリュコワ・マリアさんと、
営業担当の林聡さんにお話を聞きました。
会社とブランドの歴史、
たくさんあるサブブランドのこと、
岡山の工場を拠点に
地元のネットワークをいかしたものづくりのこと、
古着のこと、デニムのこと、
そして今回取り扱うサロペットとコートのこと。
13歳から日本に暮らしているマリアさんのことも、
伊藤まさこさんがたっぷりお話を聞きましたよ。
サリュコワ・マリアさんのプロフィール
Salyukova Maria
ロシアで生まれ、13歳から日本在住。
岡山県倉敷市を拠点とするデニムプランド
「JOHNBULL(ジョンブル)」のプレスのほか、
コンセプトストア『モーイストア』 の
ディレクターも務める。
ファッションとインテリアはヴィンテージが好き。
01岡山のデニム工場から
- 伊藤
- マリアさん、林さん、
今日はどうぞよろしくお願いします。
- マリア
- こちらこそよろしくお願いします。
- 林
- どうぞよろしくお願いします。

- 伊藤
- さきほどお聞きしたら、
マリアさんは13歳のときに
ロシアから日本にいらして、
5年間ほどは日本語に苦戦したそうですね。
今はもうすっかり日本語に堪能で、
JOHNBULLではプレスのお仕事をなさっていて、
きっと文章などの校正もあると思うんですが、
それも全部ご自分でなさっているとか。
- マリア
- はい、JOHNBULLから出る文字情報は、
ぜんぶ私が目を通しています。
10代のときに日本語を吸収したのが
よかったんでしょうね、
漢字の読み書きも大丈夫ですよ。
両親も同じぐらい日本にいるんですけど、
25年ぐらい経っても、
言葉は全然覚えられないって言ってます。
- 伊藤
- ご家族で日本にいらしたのは、
どういう経緯だったんですか。
- マリア
- 当時は、ロシアがペレストロイカという
改革の後のタイミングでした。
日本の企業がロシアに重機を買い付け、
それを操作したり直したりする
スペシャリストだったのが、
エンジニアである私の父。
その父といっしょに、家族みんなで、
日本に移り住むことになったんです。
- 伊藤
- お父さまは、今もそういうお仕事を?
- マリア
- はい、父は今もエンジニアです。
今はロシアの会社ではなく、
日本の会社で仕事をしているんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
今日は、「weeksdays」で初めてご紹介する
JOHNBULLについて
いろいろお話しいただけたらと思っています。
JOHNBULLは、林さんにお招きいただき
展示会にお邪魔したのが最初でした。
そうしたら、かわいい服との出会いがあって。

- 林
- ありがとうございます。
- 伊藤
- その話の前に、
よかったら、ブランドの歴史から
お話しいただいてもいいでしょうか。
- マリア
- はい。もともとは学生服をつくっていた会社でした。
本社が岡山県倉敷市の児島にあるんですが、
当時、あたりには学生服を縫う工場が多く、
私たちの会社も自社工場を持っていたんです。
- 林
- それが、1960年代、
学生服の需要が減っていき、
児島の生地や縫製の工場は、
どんどんデニムをつくりはじめました。
うちも、そんな工場のひとつだったんですよ。
- マリア
- 創業は1952年という、
もう70年以上になる古いメーカーなんですよ。
そこがJOHNBULLという名前で
デニムブランドを立ち上げました。
そして1963年、個人商店から
「株式会社ジョンブル」が生まれたんです。
こういう業態で、日本でそれぐらいの老舗は、
たぶん他にあまりないと思うんです。
- 林
- 新宿に「ジョンブル」というお店ができたのは
株式会社になって10年後、1973年のことでした。
そこから徐々に広く知られるようになり、
やがて、サブブランドが増えていって。
- 伊藤
- 国産デニムメーカーとして、
とても早いスタートだったんですね。
そんな背景を知らないままでした。
展示会ではJOHNBULL以外にも
サブブランドの製品がいろいろありましたね。
いくつくらい、あるんでしょう。
- マリア
- JOHNBULL以外に11のブランドがあります。
ここまで多く枝分かれしているのは、
今がいちばんかもしれません。
- 伊藤
- その枝分かれしているブランドは、
どういう違いがあるんですか?
- マリア
- コンセプトが違うんです。
それぞれで、デニムを展開しているんですけれど、
たとえば「DENIM DELIGHT DAYS
(デニムデライトデイズ)」っていうブランドは、
そのときどきの自由なデニムを表現しています。
その時代の気分に合わせて、
加工やシルエットを決めます。
今だったら、けっこう、脱色であるとか。

- 伊藤
- ウォッシュ加工をしたり?
- マリア
- はい、それからフェードがかかったデニムだったり、
ちょっとワイドめのダボッとしたものも。
- 伊藤
- なるほど。それでは逆に
スタンダードなのもあるっていうことですよね。
- マリア
- はい、スタンダードも押さえつつ、
トレンドっぽいデニムだったり、
よりちょっとオーセンティックなもの、
ヴィンテージが好きなかた向けのものなど、
いろいろなサブブランドがあります。
だからデニムの型数を合計すると、もうほんとうに、
とにかく、すごく、たくさんあるんです。
- 伊藤
- それなのに、今回、わたしが選んだのは、
デニムではないんですよね。
せっかくJOHNBULLを紹介するのだから、
このサロペットも、
デニムでつくったほうがいいのかなぁ、
‥‥と思ったんですけれど、
この、コットンリネンがとても素敵で。
林さんも「コットンリネン、いいですよね」って
おっしゃってくださって。
- 林
- そうでしたね。
春夏にはコットンリネンが
すごく軽くて着やすいので、
いいんじゃないかなと思ったんです。
- マリア
- 私は、伊藤さん、さすがだなぁ、と思いましたよ。
サロペットやオーバーオールは、
JOHNBULLが大得意としているアイテムなんです。
もうずっとつくり続けているので、
しっかりノウハウもありますし、着心地がいい。
もちろん見た目のよさもポイントなんですけど、
ちょっとしたこと、たとえば肩紐の太さだったりで、
着たときにストレスにならないんです。
よく撮影でご一緒する
カメラマンさんやヘアメイクさんからも、
JOHNBULLのサロペットはとにかく着やすい、
仕事ですごく使いやすいと、好評をいただいています。

- 伊藤
- 撮影の時って、しゃがんだりとか、
けっこう身体を動かすから、
サロペットって便利なんですよね。
- マリア
- そうなんですよね。
JOHNBULLのサロペットは、
ちょっとしたところのサイジングだったり
ポケットの位置なども工夫をしているんです。
ポケットってちょっと下すぎると
ストレスだったりしますから。
あと見た目で言うと、切り替えの位置で
スタイルよく見えるかどうかが決まるんですが、
そのバランスがとてもいいんです。
- 伊藤
- やっぱり長年たくさんつくって来られたから。
- マリア
- はい。毎シーズン、それぞれのブランドで、
新しい型が必ず出ているんですよ。
- 伊藤
- それも、何型も!
- マリア
- ちょっと数えきれないくらいです。
- 伊藤
- 特にサロペットの型数が多いのには、
何か理由があるんですか。
- マリア
- つくるのが得意で、それがご好評を頂いているので、
バリエーションをつくっている、ということですね。

- 林
- ルーツはアメリカのオーバーオールなんですけれど、
そこからいろんなスタイルに派生していって、
今はウィメンズのサロペットで
好評をいただいています。
- マリア
- JOHNBULLについてよく言われるのは、
“クオリティのわりにはお値段がお手頃”
ということなんです。
- 伊藤
- たしかに。
なぜ“お手頃”にできるんですか?
自社工場を持っているから、でしょうか。
- 林
- そうですね。1963年に自社の縫製工場を建設し、
ずっと自社でやっているので、
リーズナブルな価格で出せているのだと思いますね。
- マリア
- そして、倉敷、岡山の中でのお付き合いも長年あるので、
縫製以外の工程も、つくるフローがスムーズなんです。
直接の取引なので、
間にほかの会社が入ることもありませんし。
- 林
- “長年のお付き合い”があってのことです。
地場産業ですから、人付き合いが重要なんです。
- 伊藤
- なるほど、それなら「急に値段が上がっちゃったから、
工場を変えなきゃ」ということもなさそうですね。
- マリア
- そうですね。
- 伊藤
- 本社と工場は倉敷で、支社が東京に?
- マリア
- はい、2拠点ですね。
パタンナーさんは倉敷にも、
東京の南青山事務所にもいて、
企画担当者が行ったり来たりしています。
工場に伝えたほうが早い、ということがあったら、
企画者が東京から倉敷に行って打ち合わせをします。
そういうことは、よくやっているんですよ。
- 伊藤
- デザイナーさんは何人ぐらいいるんですか?
- マリア
- ‥‥(頭の中で数える)いっぱいいますね。
10人ぐらいかな?
- 林
- 兼務をしている人もいますよね。
- 伊藤
- あの膨大なアイテム数をシーズンごとに出すには、
そのくらいの人数は必要ですよね。
(つづきます)
2025-03-10-MON