fog linen workオーナーの関根由美子さんのお宅を、
伊藤まさこさんが訪ねました。
シンプルで気取らない、すっきりした空間は、
まさしく関根さんそのもの。
家のこと、とりわけバスルームのこと、
関根さんのルーツのこと、
そして、ふたりのものえらび、ものづくりについて、
たくさんおしゃべりをしましたよ。
3回にわけて、連載します。
その3気持ちのいい場所へ。
- 伊藤
- 関根さんはリネンがお仕事の中心だと思いますが、
お店に伺うと、布だけじゃなくて
いろいろな雑貨が置かれていますね。
- 関根
- はい。わたし、リネンの人間といわれますが、
どっちかっていうと雑貨屋だと自分で思っているんです。
- 伊藤
- そういえばこのごろは
インドのものも増えてきましたね。
- 関根
- そうなんです。金物をつくっています。
そもそもは、ワイヤーのカゴをずっと、
サンフランシスコのかたを通じて、
メキシコから仕入れていたんです。
ところが20年ぐらい経って、オーナーさんが亡くなり、
もうこれ以上カゴを供給できないと言われ、
メキシコに行ってほかのカゴを探そうかと
思ったんですけれども。
メキシコに行った人が、危ないよと。
それだったら、インドのほうが、
ほかにも何かいろいろあるかも? と探して、
カゴをつくってくれるところを見つけました。
- 伊藤
- どうやって探したんですか?
- 関根
- インターネットで探しました。
- 伊藤
- !!!
- 関根
- オーナーさんの写真は、
サングラスしていてコワモテだったんですが、
やり取りをしていると感じはいいし、
サンプルづくりもスムーズだったので、
1回訪ねてみたんです。
- 伊藤
- ひとりで?
- 関根
- ひとりですね。
なんとかなります。
そのバスケットをつくっているところは、
町中が金物をつくってる土地で、
どこでもトンテンカンってして溶接して、
金物をつくっているところでした。
バスケットはその町の中心部から車で30分ぐらいの
小さな農村で、農閑期にそれぞれのお庭で
みんなが編んでつくってくれているんです。
つくるものは、絵で説明をするんですって。
そして、日本に輸出するということは、
長く船に積まれることであるとか、
日本の気候のなかでどう使われるのかなどが
最初は抜け落ちていたので、
届いたら全部錆びていたりして、
大変だったんです。
今度はちゃんとしているかなって思ったら、
設計図とまるでちがう! ということも。
それで何回もやり取りがあって、
どうにかできるようになりました。
とはいえ、量をつくってもらうと、
直角にしてほしいところの角度がちがったり、
ちょっと気を抜くと、3歩進んだつもりだったのが、
また2歩下がるみたいなことが続いています。
それでも、インドに行くと
「もう家族だよ」って言われて、
社長の親戚の家でご飯食べたりもして。
インドの人とのやりとりは、
いろいろ失敗はあるんですけど、
本当に家族っていう感じになっているんです。
- 伊藤
- 関根さん、それをやり取りできるのがすごいと思います。
その動じなさも、おばあさまから受け継いだものなのかも。
これから、つくりたいもの、したいことも
たくさんあるんじゃないかしら。
- 関根
- いまやってることを、
なんとかするのでせいいっぱいです(笑)。
南インドでの布製品づくりもはじめたんですが、
秋物を頼んだつもりだったのに、
まだ、できてなくて、
1年先になるかもしれません。
- 伊藤
- fogの商品は、買いやすい価格で、
そのことにいつも驚くんです。
すごいことですよね。
- 関根
- 説明するのが苦手なので、
置いてさえおけば「いいものだ」って
わかってもらえるようなものをつくり、
納得いただける価格にしようと思っているんです。
- ──
- 今回、ローブとバスマット、サロペットなど
いくつか、一緒につくらせていただいたんですけれど、
バスマットの大きさに目から鱗で。
バスマットって、お風呂のドアのそばに置いたときに
ちょうどいいサイズにできていますよね。
そうするとじつはちょっと面積が足りない。
でも、まあ、そういうものしかないよな、
と思いながら使っているわけです。
ところが伊藤さんは、
大きな麻袋を使ってるっておっしゃって。
- 伊藤
- イギリスで買ったんですけど、
穀物入れみたいな袋なんです。
わたしも常々、思いっ切り拭きたいのに、
自分がバスマットに合わせることないんじゃない? って。
こんなものかな、この大きさなんだな、
って使ってるものでも、
そうじゃなくていいんじゃない?
って思うものが多いんです。
- ──
- それで、fogのリネンのバスタオルを
半分に折ると正方形になって、使ってみたら快適で、
「それでいいんじゃないかな?」って。
- 伊藤
- リネンは、本当にすぐ乾きますしね。
毎日乾きたてで、気持ちよく使えるんです。
その流れで、「weeksdays」で
家で着るバスローブがほしい、という話になったんです。
そうして関根さんとものづくりがはじまりましたね。
そしていざサンプルができあがってきたら、
チームのみんなが「外へも着ていける!」って、
うれしそうにしているんです。
海に行ったときや、
ちょっとした夏の羽織ものみたいに着られると。
わたしはバスローブ、単機能を考えていたので、
なるほど! と思って、
それはわたしがみんなから教えてもらいました。
だからアイテムの名前からは「バス」の言葉を外しました。
バスローブとしても使える、ローブ。
そして、その下にも着るものもほしいねって、
どんどん夢が膨らんで。
- ──
- バスローブ専用、となると、
ちょっとハードルが高い気がしたんです。
とてもべんりなものだということはわかるので、
「weeksdays」を通して
そのよさを広めたいなっていう気持ちは
伊藤さんにも、わたしたちにもあって。
ただ、使い慣れてない人は、
生活習慣からかえないといけない。
- 伊藤
- 関根さんはローブやガウンは
おうちで着られますか。
- 関根
- わたしは、小さいときから、わりとガウン生活でした。
家族でみんなガウンを着ていたんです。
ローブっていうよりガウンですね。
パジャマの上に着ていたから。
盛岡で、寒かったせいもあって、
みんなそれぞれのガウンを持っていました。
weeksdaysは、これからバスグッズが広がるんですか?
- 伊藤
- ずっと続けていくつもりなので、
「これがほしい!」って思いついたら、ぜひにと思います。
でもなにしろわたしがあつがりなもので、
バスルームの滞在時間が短いから、
長風呂系はないかもしれないですね。
それに、わたし、バスルームにものが少ない。
からだも手で洗うんですよ。
皮膚科の先生のおっしゃるとおりにしていて、
ゴシゴシするものを持っていないんです。
でもわたしがなるべくものを置かないのは、
汚れやカビの可能性が増えて、
その分掃除の手間が増えるからなんです。
関根さんには「理想のバスルーム」がありますか?
- 関根
- うーん、どうだろう?
わりとわたし、いまの暮らしが気に入っていて、
トイレとお風呂が一緒なのも、使いやすいんです。
ただユニットバスがちょっと、って思ってるぐらいで。
でも‥‥もうちょっと洒落た感じになればいいかな。
伊藤さんは?
- 伊藤
- すぐ乾くバスルームだといいな。
あと、白いこと、自然光が入ること。
実家のバスルームは広くて、出窓があるんですね。
だから昼間にお風呂に入りたくなる。
でもいまのような賃貸の集合住宅では
お風呂っていちばん選べないところで、
でも毎日使うから、入るたびに、
ちょっと嫌だなぁと思ったりもします。
- 関根
- そういうこと、ありますよね。
- 伊藤
- なかなか難問ですよね。
前に住んでたところは、
取り壊しになっちゃったんですけれど、
築50年ぐらいで、バスルームは本当に外国みたいでした。
洗い場がなく、バスタブのなかでシャワーを浴びる、
まあまあ不便なんだけど、すごくかわいいなって、
いつも思っていました。
わたし、便利より、かわいいほうがいいんだと思います。
- 関根
- わたしも結構そうかも!
- 伊藤
- 便利、便利でいくと、
素っ気なくなっちゃいそうな気がするけれど、
きもちよくシンプルにしていくのはいいと思うんです。
シャンプーとか置く用の台なのか、
プラスチックの棚はいらないのになと思ったり。
置きっ放しにせず、
毎回シャンプーを持って行けばいいんだから。
- 関根
- わたしも、お風呂の蓋さえ
いらないと思っていたんですけど、
絶対いるって言われました。
- 伊藤
- ええっ、いります?
- 関根
- 冷めるから、あったほうがいいって。
- 伊藤
- 沸かし直すために。
でも、それでは乾くヒマがないというか、
カビの温床になりそうな気がして、
わたしは好きじゃないな。
- 関根
- 素敵なお風呂って難しいですね。
- 伊藤
- 「わたしが快適かどうか」は大事だと思うんです。
とあるかたの別荘に遊びに行った時、
そのかたもシャワー派だとおっしゃっていて、
湯船がありませんでした。
ベッドルームの脇にちっちゃいシャワールームがあって、
それだけ。
そっか、親しい人以外は家に入れないだろうし、
こんなふうに親密な感じでもいいんだ、と思いました。
ほしいものはほしいけれど、
いらないものはいらない。
「weeksdays」が提案しても、
「わたしはちがうな」ということがあれば、
それでいいと、わたしは思うんです。
- 関根
- ほんとうにそうですよね。
- 伊藤
- 関根さん、いろいろお話がうかがえてたのしかったです。
今後のfogが、ますますたのしみです。
- 関根
- こちらこそありがとうございました。
またぜひいらっしゃってくださいね。
(おわります)
2019-04-24-WED