REPORT

戸隠のかご

今週の「weeksdays」は、日本のかごの抽選販売。
伊藤まさこさんが足を運んで選んだ、
長野と大分のかごを紹介します。
きょうのレポートは、長野の戸隠のおはなしです。

(写真=沖田悟)

慶長7年、戸隠村の徳武利左衛門という人が、
根曲がり竹の伐採を許可され武細工を始めた‥‥
そんな言い伝えが残る、戸隠の竹細工。
400年以上も前から作られ続ける、
戸隠を代表する工芸品です。

寒さの厳しい戸隠の山奥に自生する根曲がり竹は、
繊維が緻密で曲げに強く、かごなどを編むのに適した素材。
さらに、水に強く水切れもよいことから、
土地の名産品でもある戸隠そばを盛る蕎麦ざるが
多く編まれてきたのだとか。

私がはじめて戸隠をおとずれたのは、10年以上も前の夏。
野尻湖に遊びに行った帰り道、
「ちょっと寄ってみようか」ということになったのでした。

戸隠神社を背に、坂を下って行くと
そう広くはない道の両側に、
かごを売る店が立ち並んでいます。
蕎麦ざるはもちろん、
信州の郷土料理の「とうじそば」に使う
とうじかごと呼ばれる持ち手のついた小さなかごや、
茶碗かご、手さげかごなど、
根曲竹を使った竹細工がたくさん。
かご好きの血が騒いだのは、
言うまでもありません。

▲我が家のざる。丈夫で長持ち。10年ほど使っていますがへこたれません。

道をはさんで、
あっちへうろうろ、こっちへうろうろするうちに、
見つけたのが、手力屋という店。

そこで長年にわたって竹細工を編んでいるのが、
中川綱昌さんです。

中川さんの編むものは、
どれもかぎりなくシンプルで、
使い勝手がよく、
今の私たちの暮らしにちょうどよい。
なんだかいいなぁ。
そう思ったのがきっかけで、
まずはざる、次はかご‥‥
という具合に増えていったのでした。

今回weeksdaysで売る手つきのかごもそのうちのひとつ。
細長いめずらしい形ですが、
書類を入れたり、パソコンを入れたり、
新聞を入れたりと、なかなかに使い勝手がいい。

じつは同じ形のかごを持っている知人がいるのですが、
(なんと今から50年も前、
中川さんのお父様が編まれたかごらしい)
今でも現役とか。
その話をすると中川さん、
「根曲竹はとても丈夫なので、
大事に使えば長持ちしますよ」
とにっこり。

使えば使うほど、味わいが出る。
育てがいのあるかごなのです。

(伊藤まさこ)

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[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『信州ハンドクラフト手帖』(信濃毎日新聞社)
『松本十二か月』(文化出版局)2冊の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
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2019-06-30-SUN