別府のかご
大分県別府市は、真竹を加工してつくる
白竹細工で有名です。
竹好きが高じて教室に通ったこともあるという伊藤さんに
別府のかごの魅力を教えていただきました。
(写真=有賀傑)
繊維が緻密で曲げに強いとか、
水切れがよく弾力があるとか。
育った地域によって、竹の個性はいろいろ。
それぞれの素材の持ち味を生かした
ひごの取り方や編み方はそれこそ千差万別です。
作る人の工夫と知恵のかたまりのような竹細工は、
知れば知るほど奥が深いのです。
そんなに好きならばと、
いつだったか通い始めたのが竹細工教室。
好きが高じて‥‥とはよくも言ったものですが、
自分で編めば編むほど、
手強く、難しい。
職人さんがいかにすごいかを思い知った経験でもありました。
竹には根曲がり竹や篠竹
(こちらは寒さの厳しい土地で育ちます)、
真竹などいくつか種類がありますが、
私が通っていたのは、真竹を使って編む教室。
質実剛健なイメージの根曲がり竹とはちがい、
その姿はすらりと端正。
お茶の道具などはもちろんのこと、
ざるやかごなどの暮らしの道具までもが
すっきりきれいなのです。
さて、その「真竹」ですが、大分県別府市が
有名な産地のひとつです。
そもそもは日本書記の昔から伝えられ、室町時代に産業化、
江戸時代には別府温泉にやってくる湯治客の土産物として
広がったのだそう。
別府で作られる竹細工は、
国から伝統工芸品として指定を受けている
技術としても知られています。
街を歩いていると、
あ、あそこ、あれ? ここにも! といった具合に、
竹細工を並べるお店が見つかります。
日本では唯一の竹工芸の訓練支援センターがあり、
今ではずいぶん減ってしまったと言いますが、
真竹を細工するため、
白竹に加工する「製竹所」もある別府の街。
その製竹所の方に、
「竹ってどんな存在ですか?」とうかがった時、
「いつも身近にあるから空気みたいな存在だねぇ」
そうおっしゃっていたのがとても印象的でした。
今回ご紹介するのは、
熟練した職人さんの手によって作られた別府のかご5種類。
きちんと編まれた白竹細工は、
何十年も長持ちし、
使えば使うほど、
いっそうつややかに、
いい味わいに変化していくそうですよ。
(伊藤まさこ)
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[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『白いもの』(マガジンハウス)、
およびその前身である「ほぼ日」の連載
「白いもの」の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
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