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バッグのこと、素材のこと、そしていろんなこと

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伊藤
あと、バッグのこともお聞きしたいな。
ひょっとして、下着とは、
つくってるところが別なんですか?
鈴木
いえ、おんなじ会社でやっていますよ。
なぜ下着のブランドなのに
バッグもやろうかと思ったかというと、
私、過剰梱包がほんとに嫌で、
そのためのかんたんなバッグをつくりたいというのが
最初にあったんです。
伊藤
ええ。
鈴木
日本では下着を買ったらシルクペーパーに包んで、
その後ボックスに入れて、最後紙袋に入れて、
「ありがとうございました」って、
してくださるでしょう? 
直接肌に⾝につけるものだし、
おもてなしも大事なことなんだけれど、
でもお家に帰ったら紙は取って捨てちゃうし、
箱だってちょっと取っておくかもしれないけれど、
あんまりちゃんと再活用はできていない。
そういう無駄なことがすごく嫌だったんです。
それで最初、シーチングで、
あの形の袋をつくったんですね。
伊藤さんが選んで下さった「ヌー」、
フランス語で「リボン」を意味しているバッグです。
でも結局、メーカーとの話し合いの中で、
これは商品にすべきという判断になって、
ベロアの生地でつくり、
いっしょに販売をすることになりました。
このバッグに関しては、ベロアで始めたけれど、
残布プロジェクトというか、
お洋服のブランドさんの残布は、
ストックする場所もたいへんで、
最後には破棄してしまうと聞くので、
それをなくすために、いろんなブランドとのコラボが、
エコロジカルな視点でできたらいいなと思っています。
ヨーロッパにいると、
そういうことを考える機会が多いですね。
もちろん、先々、ツイードだったり、
インテリアのファブリックだったり、
デニムだったり、
そういうふうにどんな生地を使っても
きっと合いそうだなということは、
頭の中にあるんですけど。
伊藤
なるほど! 今後もますます
たのしみになりますね。
チャコさん、ほかに、これだけは
伝えておきたいな、っていうことはありますか?
鈴木
やっぱり素材のことかな。
シレーヌのシリーズは、素材の95%が
セルロースを使っているんです。
これは、木材パルプとか、バンブーとか、
そういう樹木の皮をこそいで、
天然溶液を混ぜて繊維にするものです。
植物由来の素材で、シルクと似た特性があるから、
夏場はサラッと速乾性がある。
そして乾燥の激しい冬場は、
肌を保湿してくれる働きがあるっていわれています。
ごみとして処理するときは、自然分解で
土に還すことができるので、
再生素材とも言われています。
それが、すごくいいなぁと思って。
伊藤
なるほど。それは知りませんでした。
みんなからも、質問はありますか?
──
はい! 今回の下着が「シレーヌ・ブラ」と
「シレーヌ・スリップ」っていう名前なんですが、
どういう感じのフランス語なんでしょうか。
鈴木
「シレーヌ」はフランス語で
「人魚」のことです。マーメイド。
ブラの胸元が、きれいなマーメイドラインに
見えるようにつくっているところからつけました。
デコルテってね、自分がそうなんですけれど、
年齢とともに落ちてきちゃうんです。
でも寄せて上げてグッて胸の谷間をつくるのではなく、
落ちたデコルテでもきれいに見えることを、
すごく大事に思ってのデザインです。
そしてショーツのほうは
人魚とは関係ないんですけど(笑)、
シレーヌのブラと同じ素材ということですね。
──
ありがとうございます。
全然‥‥商品と関係ないんですけど、
「チャコさん」っていう呼び名は
どこから来てるか聞いてもいいですか(笑)?
伊藤
たしかに!
鈴木
そうですよね。
私の名前は「HIROKO」なんですが、
フランス人って「H」を発音しないんです。
さらに「R」も変な音になって、
「イーホーコ」みたいに、最初、呼ばれたんですね。
そんなふうに呼ばれるのもちょっと、と思っていて、
そんななかで、子供の頃からのニックネームが
「チャコ」だったのを思い出したんです。
妹のあだ名も「チャコ」で、
双子のようにおんなじような髪型で、
同じような服を着ていたものだから、
「どっちがチャコちゃん?」みたいになり、
そのうちご近所のおばさんとかから、
私も妹も、2人とも「チャコ」になったんですよ。
それで、「チャコ」だったら、
フランス人にも発音がしやすいし、
覚えてもらえそうかなと、
自分から名乗るようになりました。
──
伊藤さんとチャコさん、
2人の最初の出会いって、
どんな経緯だったんですか?
伊藤
わたしが『Lee』の取材でパリに行ったんです。
それをチャコさんがコーディネートをしてくださって、
チャコさんのこと、一気にファンになったんです。
心を掴まれました。
誰に対しても同じなの、チャコさんって。
鈴木
(笑)
伊藤
すっごくチャーミングで、お洋服もかわいいし。
全然変わらないですよね、
髪型とかも変わってない気がします(笑)。
鈴木
そうですね、『Lee』のお仕事で伊藤さんと、
パリでお会いしたのが最初で、
その後『ボンジュール! パリのまち』でしたね。
伊藤
はい、単行本をつくるのに、
コーディネートをしていただきました。
鈴木
そのときは撮影期間も結構長かったですよね。
1冊まるごとだったから、
すごく楽しかったです。
伊藤
楽しかったですね~! 
今は、あんなことができないなぁ。
それで、わたしのなかで、
パリといえば、という存在になり、
共通の友人も増えて‥‥、
という感じですよね。
saquiの岸山さんとか。
鈴木
そうです、そうです。
お仕事のリサーチで
パリのあちこちを回りたい、
というお友達をご紹介いただいたり。
──
ご本業がコーディネーター、
ということなんですか。
伊藤
元々はスタイリストですよね。
鈴木
はい、東京時代はスタイリストでした。
ミュージシャンの衣装とか。
TM NETWORKの衣装も、私の担当(笑)。
伊藤
えぇ?! 
すごい衝撃が!
鈴木
最初の頃ですよ。
音楽関係が多かったんです。レコードジャケットとか。
音楽系のカルチャー誌だった時代の
『宝島』の表紙とファッションページも
レギュラーで担当していたり。
伊藤
レディースばかりじゃなかったんですね。
なぜパリに行くことになったんでしたっけ?
鈴木
スタイリストが天職だと思っていたし、
楽しくお仕事もさせていただいていたんですが、
3年後、5年後、10年後の自分が
ちょっとだけ見えたっていうか、
1回、ニュートラルにしてみたいなぁって
思っちゃって。それが30ちょっと前でした。
で、3ヶ月かもしれないし、1年かもしれないけど、
少し外に行くのいいなぁと思って。
でもアメリカには全くご縁がなかったので、
ヨーロッパで、イギリスかイタリアかフランスかな? と。
イギリスは英語圏だし、いいかなと思ったけれど、
お天気がちょっと不安定なのと、
当時はお食事が美味しくなかった。
イタリアだと美味しいし、明るいしと思ったけど、
イタリア人は逆にすごく閉鎖的だと感じて。
伊藤
へぇー! そうなんですか。
鈴木
うん。本当に保守的な国民性なんです。
今は変わってきているかもしれないですが、
30年前はそうだった。
で、消去法でフランス。
ちょうどパリは村っぽいし、
ヨーロッパの中でもそこそこハブ的な位置でもあるし。
伊藤
それで、語学を習って?
鈴木
そう、なんにもできないで来ちゃったから、
まずスイスのローザンヌで、
若い子たちに混ざってフランス語を勉強しました。
──
語学留学で行かれて、そのまま住まれた。
鈴木
そのまま、そうです。
それはね、こちらで何か一旗あげたいっていう気合いが
なかったのがよかった気がします(笑)。
日本、大好きだし、ダメだったら日本にまた戻って、
スタイリストなのか、また別のことなのか、
なにかしよう、というくらいに思っていました。
そんなふうに肩に力が入りすぎてなかったのが
よかったかもしれないですね。
伊藤
何かを身につけなきゃっていうんじゃなくって。
そのときお仕事はどうしてたんですか?
鈴木
一応スタイリストのブックとかつくって
持って来てたんですけど、
最初は言葉ができないから何にもできなくて。
電話でアポも入れられないし(笑)。
そしたら日本時代のディレクターや知り合いが、
「パリにロケ行くから、暇だったら手伝ってよ」
と、コーディネーター的なことを
依頼されることが多くなっていった。
それで、段々、そっちにいった感じです。
伊藤
じゃ、わたしからも、全然関係ない質問を! 
この夏、Instagramで拝見していたら、
「この夏から解禁した」って、
ミニスカートを穿いていたじゃないですか、
チャコさん。
鈴木
そう(笑)!
伊藤
かわいい! と思って。
鈴木
え、ほんとに?!(笑)
伊藤
膝小僧とか出てましたよね? 
鈴木
出てました? 出てたね(笑)。
もともと、バカンス先の、
山の中やら、海の街やらだと、
開放的にしてたんですけど、
街の中では出さないようにしてたんですよ。
伊藤
そう、パリでは、わりと、パンツ派だった気が。
どういう心境の変化なのかなぁと思って。
鈴木
すご~く、暑かったからなの(笑)。
ほんとに暑かった。40度を超えたりして。
それでそのひと月ぐらい前かな、
南仏に撮影があって行ったんですけど、
とてもじゃないけど、南仏でなんて、
もうジーンズは間違いなく無理で! 
そっか、ジーンズって、こういう気候の中では
適してないんだっていうことが身にしみたんです。
で、南仏から帰ってきて、パリも暑くて、
でもドレスに素敵なのがあんまりない。
サラッと気持ちのいいワンピースみたいものは、
前年の引っ越し前の断捨離で、
皆に差し上げたりして持ってなくって、
それでミニスカートを穿いてみたら、
快適すぎて(笑)! 
‥‥っていうことだったんですよ。
伊藤
なるほど~。それが理由だったんですね。
黄色いミニスカートがとても素敵でしたよ。
鈴木
そう、黄色のサマーツイードのような素材のね。
あれは「rokh」(ロク)っていう、
韓国の男の子が立ち上げたブランドなんです。
数年前に、デザイナーにインタヴューする機会があって、
彼のデザインや考え方、
ファッションのあり方が素敵で、
いいなと思ったんです。
ちゃんと自分の中に軸がある人だった。
伊藤
ふむふむ。これからもチャコさんのインスタで
ファッションチェックをしていかなくちゃ。
鈴木
やだぁ(笑)!
伊藤
楽しみにしてます! 
ふふふ、いろんなお話が聞けて、
とっても楽しかったです。
ありがとうございました。
鈴木
こちらこそありがとうございました。

ものづくりの不安とよろこび

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伊藤
そうして「LERET.H」を発表なさったわけですが、
お客様の手応えはいかがでしたか。
まだ徐々に、っていう感じだと思いますが。
鈴木
ほんとにゆっくりゆっくりなんですけど、
都心でポップアップショップを開いたとき、
私が熱い思いを語りながら
前のめりに勧めて購入くださったお客さまが、
「すごく気持ちがよくって」とリピートしてくださった、
そういう声が直に入ってくると、
すっごく励みになります。
自分の独りよがりでこんなものつくって、とか、
世の中的にこんなものは、
今、イケてないのかもしれない、とか、
すごい不安になっていたんです。
つくってるときには、
「いいんじゃない?」
「素敵!」
「悪くないんじゃない」
って言ってくれる人がいたけれど、
いざ世の中に出すと、
ほんとにこれが売れるのかとか、
在庫を抱えてどうなんだろうとか、
明け方の4時ぐらいにフッと目が覚めて、
怖い! って思ったりしたこともありました。
伊藤
やっぱり「売れた」っていうときに、
ものづくりをしてよかったという
実感が一番湧くっていうか、
あぁやっぱり認められたんだっていうか。
鈴木
はい。独りよがりの
間違った方向ではなかったのかもって。
つくってるときは無我夢中だから、
とにかく妥協しないで、
すっごいわがままを言ってつくっていただいたのに、
でき上がりました、皆様にお披露目です、
っていうときは、ほんとに怖かったです。
商品数も少ないですしね。
というのは、ほんとはカラーバリエーションで
バーッて見せられたらいいに決まってるんですけど、
そんな余力がなくて、
じゃぁ2色に絞りましょうとか、
1型にしましょうとか、
ほんっとにソリッドにしたんです。
これで、皆様はいいと思うのかなぁと、
すっごく不安でした。
伊藤
リピートする人が多いのであれば、
次のシーズンは何色増やしてみよう、
みたいな感じでいくのもいいかもしれませんね。
鈴木
はい。ベーシックなかたちは変えずに、
シーズンごとにキャッチーな色が入れられたら、
一番ベストなんですけど。
ただキャッチーな色が
ベーシックな色と同等に売れるかっていうと、
なかなか難しいと思うんですよ。
ほんとは数量ももうちょっと少なめで展開したほうが
いいんでしょうけれど、
素材を反で買うから、
最少ロットが決まってしまうんですよね。
伊藤
そうですよね、
ものづくりの苦労、とっても共感します。
でもね、チャコさん、
ほんっとに気持ちがいいですよ!
鈴木
あぁ、よかったぁー!
伊藤
わたしもあんまりパッドは要らない派ですし、
つけ心地がいいからって、
だらしなく見えるわけじゃないですし。
鈴木
すっごく嬉しい! 
センスのいい方にそうやって言ってもらえるのが、
ほんっとに‥‥、ホッとしました。
伊藤
わたしのまわりでも、
ファッションのスタイリストさんとか、
女性誌の編集者の方とか、
ちょっと感度の高い人たちがつけていますよ。
鈴木
あぁ、嬉しい。
伊藤
あのチャコさんがつくるんだったら大丈夫、
っていう安心感もあるでしょうし。
鈴木
「こんなことやります」って
最初の展示会のご案内を出したときも、
もう何十年ぶりみたいな方も来て下さって。
ご縁ってありがたい、ほんっとに人に感謝だと、
改めて思いました。
伊藤
じゃぁ、チャコさん、
もうちょっと具体的なお話を
聞かせてくださいますか。
まず、ブランド名の由来から‥‥。
鈴木
「LERET(ルレ)」は、
私の結婚した名前(姓)です。
ひろこ・ルレなんですよ。
ブランド名をいろいろ考えていたとき、
何語か分からないよう、
ラテン語にしたかったんですけど、
でも案外、そんなアイデアは世界のどこかにあって。
いっそ「ルレ」だけにしようと思ったら、
イタリアの高級カシミヤブランドに
「ルレルレ」っていうのがあった。
そのとき知財事務所の方のアドバイスで、
「そこにひろこのHをつけたらどうですか?」。
伊藤
じゃぁほんとにお名前のまま!
鈴木
うん、そうなんです。
伊藤
やっぱりそういう登録って難しいみたいですね。
鈴木
大企業が、将来に向けて、
いろんな名前を登録済みだったりするんですよね。
伊藤
今は、次のシーズンに向けて、
あたらしいアイテムを計画してるときなんですか?
鈴木
そういうプランも自分の中にはあるんですが、
下着に関しては、まず膨大な数でつくった
最初のコレクションの在庫を、
ちゃんと販売していくのが先です。
新しいデザインもできていて、
たとえばキャミソールに合う下のショーツも、
もうデザインが決まっているし、
いろいろアイディアはあるんですけど、
今まだちょっとそこまでできていない。
伊藤
展示会は日本だけだったんですか? フランスでも?
鈴木
今パリでは、サロン的に、
お家に、お飲み物とかを用意して。
試着をしていただきました。
伊藤
パリの人たちの感想はどうですか?
鈴木
やっぱクオリティの良さ、
触ったときの肌触りとか、
そういうことに、皆さんびっくりしますね。
そんなの、ないから。
伊藤
フランスにはああいう質感のものってなさそうですものね。
日本でつくってよかったですね。
日本の技術的なこと、クオリティも含めて。
鈴木
そうですね。
日本のものを伝えられたのも、よかったと思います。
私、今日まで30年、パリに住んで、
日本が嫌いって人に会ったことがないんです。
日本のものだと言うと、
素晴らしいに違いないって
色眼鏡なしにおっしゃってくださる。
そして実際に触ってもらうと、
また「やっぱりいいですね」という感想が出てきます。
伊藤
それは嬉しいですね。
今は、卸し先も、徐々に?
鈴木
はい、大人向けのセレクトショップなどが、
買い付けてくださっています。
だんだん、ごらんいただけるお店も
増えていくと思います。
伊藤
「weeksdays」の立ち上げの頃のことを思い出します。
最初、てんやわんやすぎて、
ほんとうに時間がかかりました。
今5年目で、やっと心に余裕ができてきたかも。
今回、ブランドのルック
チャコさんがスタイリングされたんですよね。
鈴木
はい、そうです、そうです。ビジュアル全部です。
伊藤
素敵でした!
鈴木
あぁ、よかったー!! それほんとに嬉しいです。
仲良しのフランス人の女性カメラマンに依頼して。
彼女は、その昔、ニューヨークにずっといて、
『BRUTUS』など日本のお仕事もしていた人なんです。
今はパリベースでお仕事されていますが、
ロードムービー的な、
旅っぽい、風を感じる写真を撮るのが上手な人で。
とはいっても、「LERET.H」の写真は
全然ロードムービーっぽくないんですけど、
いつかこのブランドにもうちょっとゆとりが出たら、
彼女と一緒に旅をしながら、
風を感じる写真を撮りたいな。
サラッと乾いた土地で、
シャツの下にブラをつけてる、とかね、
そんなのができたらいいなっていうところから始まって、
最初はでも全然お金もないし、2人ですすめました。
モデルになってくれた子は15歳なんですよ。
伊藤
え?! なんと、そうだったんですか?!
鈴木
15歳でクラシックバレエの勉強してるお嬢さん。
でもこっちのお嬢さんだから、
ショートヘアで、目のところにキュッて、
黒い、わりと強いメイクをご自分でしてて、
こういうのもいいなって。
女おんなしちゃうと、ちょっとね。
伊藤
チャコさんのスタイリング、すご〜い!
と思って見ていました。
weeksdaysは、いくつものブランドを紹介するので、
全体のトーンを統一しているんです。
基本、白いスタジオで、
光のトーンも強弱をなるべく抑えて。
鈴木
うんうん。いつも素敵なヴィジュアルで、
毎回拝⾒するのが楽しみです。
伊藤
商品そのものを見て欲しいというのもあるので、
なるべくスタイリングは引き算を心がけているのですが、
だからこそ逆に、
各ブランドが毎シーズン打ち出す、
LOOKを見るのがとても楽しみ。
同じものでも「こうきたか!」という驚きがあるので。
なので「LERET.H」の雰囲気、
とってもすてきでした!パリの空気を感じました。
鈴木
ありがとうございます。
伊藤
こんな感じですよ。
わかりますか。
鈴木
あ、素敵! 
ありがとうございます、かわいい! 
さすがです。
サラッと清潔感があって、センスがよくて。
伊藤
そう言っていただけてホッとしました。
鈴木
最初、大人のための、ということを、
ブランドの説明の枕詞につけていたんです。
自分が大人だから、大人的にね。
でも、でき上がったものについて、
意見を聞きたかったから、
いろんな世代の人に着てもらったんですよ。
すると、20代でも30代でも、60代でも、
それぞれ皆きれいにおさまるものが
できたなって実感して。
伊藤さんの娘さんくらいの年代のお嬢さんや、
夫の姪、つまり私の義理の姪ですが、
彼⼥たちとか、友⼈のお嬢さんとか、
若い世代にも似合うことがわかった。
だから大人という言葉にしばられず、
ほんとに世代を超えて。
伊藤
お手入れもかんたんですよね。
鈴木
はい。下着って、押し洗いして、陰干しして、みたいな、
お手入れの大変さがついてまわりますが、
そうじゃない、Tシャツみたいにパッて脱いだら、
パッと洗濯機へっていう、タフな感じなものです。
伊藤
だから素材選びも気になさったとおっしゃってましたよね。
すぐクタッとしないようなものをと。
気持ちよくても、すぐに残念なことになる下着も、
ありますからね。
鈴木
そうなんですよ! 悲しくなっちゃう(笑)。
どんなにデザインが素敵でも、
ハイブランドの高級品でも、
2、3度お洗濯すると、肩紐や、
プチレースのところがのびてしまったり、
こんなはずじゃないのに! って。
私たち、いっぱい、
そういうものを見てきましたよね。
伊藤
そうなんですよね。
だから、ほんとに、助かります。
鈴木
ありがとうございます。

下着はわたしをご機嫌にする

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伊藤
チャコさん、
この「LERET.H」(ルレ・アッシュ)という
下着ブランドの立ち上げのために、
ずいぶん長い間、準備をしてらっしゃいましたよね。
鈴木
そうですね。
ほんとに大変な世界に
足を踏み入れちゃったなっていう感じですよ(笑)!
伊藤
準備期間は3年くらいでしたっけ。
鈴木
もっとですよ。元々のきっかけは。
2015年の11月にパリで起きた同時多発テロでした。
当時住んでいた11区のアパートのすぐ近所の
カンボジア料理屋さんやカフェで銃声が響き、
コンサート会場でも、結構な方が亡くなって。
それを機に、普通の日常がどれだけ大切か、
明日はそうじゃなくなっちゃうかもしれないんだ、
っていうことをすごく考えたんです。
そして、そのテロの影響で、
2016年と17年のほぼ2年間、
ゼロではなかったけれど、
日本からのお仕事がガクンと減ってしまって、
それまで依頼を受けてやってきた仕事を
見つめ直すきっかけになったんです。
受け身で、今までコンスタントに続いてきたのは、
決して当たり前じゃなくて奇跡だったんだなって、
改めて思いました。
ヨーロッパにいたらテロや人災が起こるかもしれないし、
日本の場合は大雨とかいろんな天災があるかもしれない。
それで何かできないかな? 
私から発信できるものはないかなあ? と。
その2年間、つまり暇だった時期に考えたのが
「下着」だったんですよ。
伊藤
なるほど~! 
鈴木
じゃあなぜ下着だったのかというと、
その当時、ちょうど、ヨガをやり始めたんです。
そしてね、私、体がほんっとにカチカチで、
みんなが簡単にできるポーズもつらいほどでした。
でもそのとき、自分のTシャツの下から
チラッと見える下着の色に、
ちょっと励まされたんです。
今日はこんな色のブラだったんだ、ということが、
ちょっと嬉しかったりして、
つらいけど、このポーズをもう5秒頑張ろうとか。
下着からもらえるパワーってあるんですよね。
伊藤
「自分だけの楽しみ」
っていう感じが、すごくします。
鈴木
そうなんです、そうなんです。
誰にも分かってもらえないかもしれないけれど、
目には見えない、自分の中のご機嫌をよくするのに、
下着が大事だなと、私はすごく思いました。
それで「下着をつくろう!」と思ったんだけれど、
なんのコネクションもなかったので、
下着会社さんを50社選んで、
その50社にお手紙を書いて、会いに行きました。
たしかにこの話、
伊藤さんにしていなかったね(笑)。
伊藤
初めてうかがいました! 
50社にお手紙を書くって‥‥日本のですか?
鈴木
日本のです。
フランスにいたから、
フランスのメーカーも調べたんですが、
生産の問題とか、納期の問題とか、
いろいろ不安があって。
ヨーロッパでつくるものって、
モロッコかポルトガルでの生産が多くなるんですけど、
ちっちゃい無名の個人で始めることだし、
さらにそれを日本で展開することを考えたら、
とても無理だなと思いました。
だから、メイドインジャパンにしようと。
クオリティがいいですしね。
それで、ネットで調べた50社に、
こんなことを考えてます、と手紙を送りました。
私は下着に関してはド素人だけど、
今ヨーロッパにいて、こうでこうで、
もうちょっと詳しい企画を
お話させていただけるんだったら、
帰国の際に会いに行きます、
という内容の手紙です。
そうしたら、38社からお返事をいただきました。
伊藤
え?! すご~い!
鈴木
38社の方が「会いたいです」って言ってくださった。
なので、帰国をして、
1人で、順番に、企画書を持って会いに行きました。
伊藤
38社に?!
鈴木
うん。38社に(笑)。
伊藤
すごいですね~。
‥‥そもそも、最初の50社を、
どうやって選んだんですか。
鈴木
今はほんとにネットでいろいろなことがわかりますよ。
下着だからというわけじゃないかもしれませんが、
ちょっと怪しい会社とかもあるんです。
全国にはもっとたくさんの下着メーカーがあるんですが、
私の日本での拠点は東京なので、
関東近郊に絞っての50社でした。
もし関東近郊でダメなら、
北海道や四国、九州のメーカーなど、
範囲を広げようと思ったんですけど。
伊藤
じっさい、お目にかかって、どうだったんでしょう、
その38社は‥‥。
鈴木
いろいろな反応がありましたよ。
「どんな人がこんな図々しいことを、
フランスから手紙をくれたか、
あなたの顔が見てみたかった」
って言われただけのところもありましたし(笑)、
「そんなに甘いものじゃない、
そんな素人が簡単にできるようなことじゃない、
まぁとにかく頑張ってくださいね」って、
ちょっと皮肉みたいなことを言われた会社もあったし、
「自分のところの商品をパリで売って欲しい。
そうしたらあなたのやりたいことにも
ちょっと協力しましょうか」
みたいなところもありました。
伊藤
そんな‥‥。
鈴木
ほんとにいろんな方がいらっしゃったんですけど、
でも皆さんに会ってお話を聞くのが、
私にとっていい経験だなと思って!
伊藤
すごいです。それで、1社を選ばれた?
鈴木
はい、そんななかから、2社まで絞り込みました。
そのうちの1社が、武漢の近所に自社工場を持っていて、
コロナでどうなるか分からないからと
立ち消えになりました。
そして今一緒につくって下さってる
「BLOOMLuXE」(ブルームリュクス)という会社と
組ませていただくことになったんです。
ここは補正下着をつくってる会社で、
体のラインを補正することに特化していました。
つまり私がやりたいことと真逆なんです。
けれども、そこの社長さんと、女性の営業の方が、
私の話をちゃんと、真摯に聞いて下さった。
コロナがあって、「BLOOMLuXE」もたいへんななかで、
「やりましょう。ここまで来たのだから」と
おっしゃってくださったんです。
結果、最初のその50社にお手紙書いたところから、
6年ぐらいかかっての立ち上げでしたね。
その間は、私も幾度か帰国して、
サンプルをチェックしつつの進行でした。
オンライン会議だけだと、
なかなか商品をつくるのが難しいですから。
伊藤
はい、その様子は、すこしうかがってました。
「補正下着と真逆」っておっしゃってましたけど、
チャコさんが最初につくりたい下着っていうのは、
どういうものだったんですか?
鈴木
私は、ほんとにもう、
寄せてとか上げてのような、
補正はしなくていいと思ってました。
伊藤
フランスの方の下着って、
補整系じゃないですものね。
鈴木
そうです。パッドもなくって、
ちょっと見えても気にしないみたいな。
私、雑誌などの撮影で、
ヨーロッパの普通のマダムや
パリジェンヌの取材をする機会が
いっぱいあったんですね。
皆すごいんですよ、
人前でバーンと脱いで、
「次、じゃぁ私何を着ればいいのかしら?」って。
ほんと皆さん、平気で脱ぐの(笑)!
伊藤
パリのブティックに行くと、試着室でも、
1人ずつ区切られてなかったりしますよね。
鈴木
そうなんですよね。皆さんおおっぴら。
だから、皆さんがどんな下着をお召しなのか、
知ることができるじゃないですか。
それで、妙齢のマダムでも、
こんなに素敵なのを着けてるんだ! というのは、
ずっと思っていたんです。
日本のマダムは年齢をどんどん重ねていくにつれ、
どんどん諦めて、自分を控えめにしちゃうけど、
ヨーロッパの女性たちのように、
表面はただのTシャツやシャツだけど、
脱いだらすごく素敵なものを身につけている、
っていうのが衝撃だったんです。
だから、大人が心地よく、身につけていて、
なんだか楽しい気分になるものをつくりたいと。
そのためにワイヤーとか、厚いパッドは不要、
というところから始めました。
伊藤
製品化までにはかなりの試作を繰り返して?
鈴木
はい。なにしろ補正下着の会社にお願いをしたわけなので、
あちらの標準でいくと、
ホックの金具ひとつにしても、
絶対取れないように、しっかりしているわけです。
それでは、私のつくりたいものにしてみたら、
色気がなさすぎる。
伊藤
そうなんです、チャコさんの「LERET.H」は、
ホックひとつが、かわいいんです。
鈴木
難しかったですよ。
表面にデザインは要らないけれど、
さりげなくゴールドでとか、
そういうふうにしたかった。
でも金具って、ミニマムロットが何千個とか、
そんな世界なんですね。
でも、ロボコップみたいな金具はいやだし、
かといって、何もつけないで脱ぎ着できるものは、
スポーツブラっぽくて、それもいやで。
見た目はシンプルなんだけれど、
ちょっと艶感が出したかったんですよ。
そういうところでずいぶん試行錯誤をしましたね。
伊藤
話をしていく中で、段々通じ合えてきたんですか? 
「チャコさんは、そういうことがしたいんだ」みたいに。
鈴木
はい。よかったのが、担当の方が女性で、
彼女はもう、商談っていうと
⿊いスーツをパリッと切るようなタイプの⽅なんですね。
つまり私たちの周りにはいない
タイプの方なんだけど、
その彼女がすごく賛同してくれたんです。
彼女は商品として、体を締め付けることだけを
営業してきたけれども、
こういう真逆のものがあることも、
女性にとってすごく大事だって、
彼女がまず賛同してくれた。
そしてパターンをつくってくれる企画の部長さんも女性で、
私を含めてこの3人が、
全くタイプは違うんですけど、すごく気が合ったんです。
伊藤
気持ちよかったり、
つけてて嬉しいっていうのが、
3人の共通の目標に? 
鈴木
そうです。まずやりたいっていうことを
受け止めて下さったのが、一番大きいと思います。
最初は「これってナイトブラですか?」と
おっしゃるんだけれど、
私は「ナイトブラって何ですか?」。
そういうものの存在を知らないの(笑)。
「じゃ、家に帰って着るものですか?」
「いや、外でも着ていただけるし、
家に帰って着ていただいてもいいし、
夜寝るとき着ていただいてもいいけど、
私は外にそのまま出て行きます」って、
それが、なかなか理解されなかったんです。
「パッドがなければ、胸のポチを、
日本の方は気にします」とか。
伊藤
なるほど。
逆に補正下着の会社だからこそ、
チャコさんが今回よかったなって
思えたことはありました?
鈴木
まず、下着をつくる技術がきちんとしていました。
自社工場が九州と千葉にあって、
ほんとに100パーセントジャパンメイドでつくられている。
しっかりとした土台がある会社ですね。
それと、親会社が素材を持っているところで、
「こんな素材があるといいな」って言ったとき、
すぐに「こういうのがあります」と
出てくるんですよね。それがすごくよかったです。
伊藤
チーム以外の、先方の会社のみなさんは
どういうふうに思っていたのかしら。
営業のおじさんとか‥‥。
鈴木
おじさんたちは、一切前に出てこなくて、
話してないんですけど、
そういえば年に1回の会議の席で、
親会社の社長さんから、営業の方が、
こんな風に言われたそうですよ。
「ルレアッシュみたいな新しい試みも、
やってみる価値があるんだね。
ちょっとずつ、ゆっくりだけど出せたらいいね」。
伊藤
わぁ! すごくいい会社ですね!
鈴木
ほんとに恵まれました、
「BLOOMLuXE」との出会いは。

LERET.Hの下着とバッグ

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秋に向けて

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下着が好きなものだから、
よさそうだな、と思うものを見つけると、
すぐに買って試してみる。

自分の体型との相性もあるけれど、
かわいい見かけでも、
どこかよそよそしいつけ心地だったり、
かといえば反対に、
つけ心地はいいけれど、
見た目にちょっと、というものだったり。

下着の道は長く、
果てしない。
でもその試行錯誤もまたたのしいのですけれどね。

この週末、
下着専用のチェストを整理しました。
いるものといらないものに分けて、
きちんとたたんできれいに見えるようにしまっていきます。

これから秋に向けて、
つける下着の気分も変わるはずだからというのが、
チェストの整理をした理由。
もうひとつの理由は、
新しい下着を迎え入れる準備なのでした。

今週のweeksdaysは、
LERET.H の下着を紹介します。

楽なのに、シック。
パリの香りをまとった大人のための下着。
秋のはじまりにいかがですか? 

昨日、何撮った?

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長野
この日めくりカレンダーの写真、365枚の並びは
どうやって決めたんですか。
伊藤
実物大に出力したものを、
おっきいカレンダーをつくって、
月ごとに貼っていったんです。
たとえば7月は夏っぽい感じに、とか、
大きな流れをつくることができるので。
長野
えぇ~! デジタルの作業じゃないんですね。
伊藤
その作業、すごく面白かった!
本でもそうですよ、
自分でそうやって確かめながら、
台割を決めるんです。
長野
楽しいですよね、あの作業。
伊藤
楽しいし、心の整理になる。
──
これだけの枚数の写真が手元にあるというのは、
iPhoneをはじめとする
スマートフォンの時代になったから、
っていうことですよね。
長野
そうですね。
撮りたいと思ったものをすぐ撮れるって、
なんて素晴らしいんだろうって思いますね。
昔だったら、フィルムの枚数は決まってるから、
残りの枚数を気にして撮るか撮らないか考えた。
そういうことはないですからね、今。
それってでかいなって思うんです。
スマホじゃなかったら撮られなかった写真って
たくさんあるなぁと思ってて。
フィルムの時代にはあった
「わざわざ写真に撮るまでもない」っていう感覚が、
今は、もうない。
──
伊藤さんの写真は、まさしくそうですね。
タワシが並んでいる様子を、
かわいいと思っても、
一般の人だったら
カメラを出してフィルムで撮る、
ということはなかったと思います。
長野
ね。
伊藤
お米を3合ずつビニール袋に入れて分けて、
並べたところがかわいいな、とか、
わざわざ撮らなかったですよね。
伊藤
見過ごしちゃうようなことでも、
素敵な瞬間っていうのが、暮らしにはある。
写真を見返すと、
「このときほんとにかわいいと思ったんだなぁ」
って思い出すんです。
でもね、「それを本にしませんか? 文章を添えて」
って言われても、絶対「嫌です」と言うと思う。
「日めくりカレンダー」っていう、
その日いち日で終わっていくことが、
この写真と、自分の性に合っていた。
ところで長野さんが
いちばん最近、iPhoneで撮ったものって何ですか?
長野
えーっと、ほんとに‥‥台所ですね(笑)。
これですね。(カメラに向かって)見えます?
伊藤
見える! 
また改装したのかな? 
長野
改装というほどでもなく、
レンジフードの調子がいまいちで、
交換してもらったんです。
これはその工事が終わってすぐ撮ったもの。
こんなのしかないなぁ。
まさこさんの直近のiPhoneの写真は?
伊藤
これです。
長野
何ですか、それ?
伊藤
カスタードクリームパイ。
長野
あぁ~! なるほど。
上手! 
伊藤
食べるものばっかりなんです。
あと、昨日お店で撮った、ドイツの染み取り。
中華屋さんで服に染みをつくったら、
お店の人がサッと持ってきてくれたんです。
それが気に入ったので「撮らせて!」。
──
伊藤さんは、メモ代わりかもしれないけれど、
写真としてきれいに撮りたいって気持ちも、
きっと、あるんですよね? 
伊藤
ううん、これはもう、全くのメモですよ。
仕事のメモもそうですけれど、
メモは、用事が済んだらすぐ削除するんです。
長野
ロールに残さないんだ。
厳しい! それ言われたら、
消したほうがいい写真ばっかりですよ、俺。
伊藤
でも楽しいかも、急に
「昨日何撮った?」みたいに聞くのって。
長野
でもね、ちゃんと食べ物とか撮ってるんですよ。
これわりと最近です。先週かな。
チャーハンです。
伊藤
Instagramに載せたりしているのかな?
長野
いや、これは上げてない。
最近Instagram全然やってなくて。
伊藤
やって下さい。見たいもの。
長野
大変じゃないですか、文章を書くのが。
伊藤
そう?
長野
情報として見ている人がいるなと思うと、
ちゃんと書かなきゃなと。
お店の情報とかね。
伊藤
いいですよ、気にしなくても。
「うまかった!」でいいじゃない。
長野
そうですか。じゃ、やろうかな
──
今回「日めくりカレンダー」をつくって、
紙になるっていいなあって感じたんです。
わたしたちも、デジタルで撮ったものを、
たまにはプリントするといいかもしれないですね。
長野
そうですね。僕も、気に入ってる写真は、
仕事場にあるプリンターで出力しますよ。
──
インクジェットのカラープリンターですね。
長野
ちょっとプロっぽいところ見せると、
A3のノビ(ひとまわり大きいサイズ)まで出せるんです。
気に入った写真があったらプリントアウトします。
額には入れずに貼ったりして。
ベタベタ貼る癖があるんですよ。
仕事部屋にもバーッて貼ったこともあるんですけど、
散らかっちゃうので、今は剥がしてます。
──
長野さん、ほぼ日の連載(*)も
紙焼きで入稿して下さってました。

(*)もっと撮りたい。もっと食べたい。福島
長野陽一の美味しいポートレイト

長野
あの時は、フィルムで撮ってた写真だったんです。
いつか写真展とか、写真集にしようと思うものは、
フィルムで撮っているんですよ。
今、印画紙とか現像液とかすごく高いんですけど、
なくなるまでやろうと、ずっと捨てないでいます。
長野
フィルムスキャンでデジタルデータにする手もありますが、
印画紙でプリントした写真と、
ネガスキャンしてプリンターで出力した写真とで、
全然、印象が違うんです。
──
そうなんですね!
長野
この仕事場は、暗室にもなる仕様で、
窓にも内側に木窓をつけて、
閉めると真っ暗になるようにしてます。
現像の機材も、絶対に捨てられません。
伊藤
すご~い!!
長野
だから好きな写真はプリントにして、
貼ったり、あげたり。
この前も、会社を辞めた友達に、
昔一緒に取材に行ったときの写真を
プリントアウトして渡しました。
伊藤
それは嬉しいでしょうね!
長野
やっぱりプリントは特別ですよね。
だから毎回毎回そうするわけじゃないけれど、
なにか特別なときに敢えてやってみるのは
いいと思うんです。
──
今、大手カメラ量販店に、
デジタルデータから簡単にプリントしてくれる
機械がおいてありますよね。
長野
コンビニのカラーコピーもいいですよ。
普通紙だから、色がちょっと派手に出たりとかして。
あんまりきれいに出ないタイプのプリンターで
プリントしてみるのも、面白いんです。
そういうほうがかっこよかったりする。
伊藤
そっか、そういうのも面白いですよね! 
やってみようかな? 
ああ、面白かったです、長野さん、
ありがとうございました。
長野
こんな話で大丈夫でしたか? 
伊藤
全然、大丈夫。
直接会えなかったのが残念ですけれど、
また近いうちにぜひ。
長野
はい! それじゃ、また。失礼します。

ものに対する愛

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伊藤
わたしのInstagramは、
食べたものとかの自分の記録なので、
それを皆さんに見せて申し訳ないと思ってるんだけど、
そういう意味でも、情報は少なくしてるんです。
長野
そうですよね(笑)。
──
伊藤さんのInstagramは、
情報がひとつなんだけれど、
それをよりかわいく撮りたいなっていう気持ちが
ちゃんとあると思います。
長野
うん、かわいい。
まさこさん、それはやっぱり愛ですよ。
目の前のものに対する愛があるから、
その丁寧さが伝わってくる。
‥‥「丁寧」っていう言い方は
あんまり合ってないかもしれないですけど、
ものに対しての愛情が1個1個にある。
伊藤
そのものが一番よく見える
角度があると思っているんです。
「ちょっと写真が下手で」
って悩んでる人って、
そういうことを考えずに、
とりあえず撮っているんじゃないかなあって思う。
わたしが上手というわけじゃなくって。
長野
そうですね。
急いでる人はそういう感じになっちゃいますね。
伊藤
うちの娘が言うんです、
「字はとにかく丁寧に書くことじゃない?」と。
彼女、なんでも丁寧なんですよ。
それと同じかなって。
長野
ゆっくりでいいと思うんですよ。
そりゃ、ラーメンの写真とか、
のびちゃうから急がないといけないですけどね、
ふだんは別にそんなんじゃないし。
伊藤
長野さんは『シマノホホエミ』『島々』で、
かわいい島の子たちを撮っていて、
でもあるときから料理を撮り始めたじゃないですか。
長野
はい。
伊藤
あるとき、被写体が全くガラリと変わったような。
長野
あれは、仕事の写真ですよ。
依頼された写真です。
自分でつくった料理とか、ないですから。
伊藤
依頼されたとき、
「なぜ俺に?」っていうのはありましたか? 
長野
どうだろう。
『クウネル』で岡戸絹枝編集長に
依頼をいただいたのが全てのきっかけでした。
でも自分では
料理写真だとは思ってなかったです。
その人の取材に行って、
その人の暮らしとか、部屋とか、
持ち物とかの中に料理があって、
それを撮っただけなんですよ。
もちろん料理の特集の号もありましたけど、
料理だけを撮って終わるページは1回もなかったと思う。
絶対に人とか、料理じゃないものが入ってると思います。
今はもう『クウネル』じゃないところで
料理が主役の写真を撮ってますけれど、
『クウネル』では
料理が主役だったことはあんまりなかったと思う。
料理特集でも、たとえば、ウー・ウェンさんを
2013年の「料理の風景」っていう特集で
撮っているんですけれど。これがトップなんです。
伊藤
素敵!
長野
料理じゃないでしょう?
お茶と、人です。
伊藤
ちゃんと風景になっていますね。
長野
そうなんです。
タイトルは「ウー・ウェンの家庭料理の風景」。
先をめくって、やっと初めて、
料理の写真が出てきます。
長野
ふつうは逆ですよね。
‥‥と、そういう感じで撮ってきたから、
自分が料理を撮ってるっていう感覚は、
あんまりなかったんです。
「料理カメラマン」だと思ってなかった。
なのにあるとき、別の出版社から、
僕が『クウネル』で撮ってる料理写真を
掲載させて下さいって話が来たんです。
で、「え?」ってなって、
「料理そんな撮ってないと思いますよ」って、
その場で断ろうとしたんですけど、
「いや、そんなことないです。
ものすごく、毎号毎号撮ってますから、見て下さい」。
改めて見返したら、当然撮ってるわけですよ。
で、料理写真だけを抜粋して、
初めて、料理だけを並べてみたんです。
それがその本(*)です。

(*)『長野陽一の美味しいポートレイト』

長野
まさこさんの家の冷蔵庫もクウネルで撮りましたね。
伊藤
おぉ、懐かしい~!
長野
これで初めて、
あぁそうか、俺ってこんなに
料理をたくさん撮ってたんだっていうふうに自覚して。
そのタイミングでちょうど、
僕が『シマノホホエミ』が出るきっかけになった、
ガーディアン・ガーデンっていう
リクルートがやってるギャラリーから、
展覧会(*)のオファーがあったんですよ。

(*)長野陽一 料理写真展
「大根は4センチくらいの厚さの輪切りにし、」

伊藤
行きました。
長野
来ていただきました、ありがとうございました。
それで『美味しいポートレイト』っていう本ができて。
これを出してから、僕は今、もうすっかり
料理カメラマンみたいになっちゃってます。
それまでは『dancyu』などの料理専門誌では
仕事をしたことなかったですし。
でもプロ向けの料理書をつくっている
柴田書店とは仕事をしたことないんです、未だに。
──
長野さんの料理写真は、
いわゆる料理写真じゃないところが、
いいんですね。
専門誌は、また別の技術の世界で、
それこそ大御所の料理写真家からの流れがあって。
伊藤
多分その、わたしが20代後半ぐらいから、
料理写真の流れが変わったんですよね。
「普通でいいじゃない?」みたいな。
長野
そう。まさこさんたちのお陰だと思いますよ。
まさこさん、堀井和子さんの料理の本
お好きだっておっしゃってましたね。
伊藤
堀井さんの本は、中学生のときに憧れて、
かわいい! と思って見てました。
たしか堀井さん、
写真も自分で撮られてたんですよね?
長野
うんうん。
伊藤
わたし、それに憧れて、
一眼レフを買ったんですよ。
でも、全然そういうふうに撮れなくて、
「できないことはやめよう」。
そういうことなんだって思いました。
長野
(笑)そこからiPhoneで撮るようになるまで、
長い時間がありましたね。
伊藤
そうですよね! 
それは、仕事で撮ってくれる人が
いっぱいいたからです。
長野
そっかそっか。
伊藤
あの頃、自分で一眼レフで料理を撮る料理家なんて、
堀井さんくらいしかいなかったんじゃないかなぁ。
でもそれを思うと、今、SNSで
いろんな人が撮った料理の写真が見られるのって、
すごく面白いですよね。
たとえばInstagramだと、
職業柄かな、あの四角の写真、
一枚一枚のバランスと、
ポストした写真がずらりと並ぶ、
そのバランスも考えたりして。
長野
そうですね。

もう撮れない写真がある

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長野
写真展とか、写真集で
写真を並べていく行為は、
小説家が物語を書いていくような作業ですよ。
1枚の写真だけで見るんじゃなくて、
何枚も何枚もある写真のつながりの中から、
その人のストーリーをつくっていく。
でもInstagramは
そういう作業ではないってことですよね。
Instagramでは一度に10枚しか上げられないし、
別にそこにつながりなんかなくても、
1枚1枚が映(ば)えてればいい、
バズればいいってことなんです。
伊藤
写真集を出すときに、並びを考えるでしょう。
この写真とこの写真の間に、
写っていない「行間」みたいなものがあるでしょう?
長野
そうですね。まさこさん、
すごくいいことを言いますね! 
伊藤
彼らは、そんな行間は、考えないってこと?
長野
はい、だから、それがあるよってことを、
僕が学校で教えてるんです、今。
伊藤
反応はありますか?
長野
面白がってくれますよ。
面白がってくれるけど、
卒業後の目的がそういう方向じゃない、
自分の作品がそういう方向じゃない学生は、
「そういうものなんですね~」ぐらいです。
でも、そういうふうに写真に携わっていきたいって
思って気づいた人は、面白がってくれてます。
伊藤
じゃ、そんな彼らに教えてて、触れ合って、
長野さん自身が「よっしゃ」みたいな
刺激をもらえることとかもある?
長野
あぁ、もちろん! 
「よっしゃ」というか、
もう自分には撮れなくなったものって、
たくさんあるので。
伊藤
え、何? 何? 
長野
たとえば『シマノホホエミ』なんて、
もう、今、撮れないんですよ、僕。
当時のようには。
伊藤
そうなの?
長野
だって当時、僕は20代後半で、
今53歳ですから。
53歳のおじさんが
10代の子に声を掛けて写真撮ってたら、
もうヤバイじゃないですか。
伊藤
そりゃ、ヤバイかもしれないけど(笑)。
でも、そのときの、ああいう新鮮な被写体に
向かい合う気持ちは変わらないんじゃない?
長野
うん、被写体に対してはそうですね。
その人たちを目の前にしたときは、
僕は20代のときと、気持ちの中では同じつもりです。
でもそれを写真にしたときに、
たとえば今息子が14歳だから、
あぁ同じ年ぐらいかぁと、
親の目線や気持ちが生まれちゃう。
昔は、年齢は違えど、対等だったんです。
1人の被写体がいて、僕はいち写真家で、
全く知らない人に声を掛けて、
写真を撮らせてもらうだけの関係で、
そこで作品づくりができていたんです。
たけど、今だったら、
親御さんにちゃんと知らせなきゃいけないなとか、
家がもし近所で、お母さんがいらっしゃるようでしたら、
ちょっと一言だけ挨拶したい、
名刺だけでも渡したいからみたいな、
そういうアプローチになっていくじゃないですか。
そうなってくると、撮ったときの感じが、
もう、変わってしまうんですよ。
「この人を撮りたいな」というだけで撮れなくなる。
伊藤
大人になってきたってこと‥‥。
長野
そう! 自分が大人になってるし、
責任が生まれちゃってる。
だって、僕は自分の作品として、
その人に何の利益もないのに
発表するわけじゃないですか、
‥‥とかそういういろんなことを
考えるようになっちゃった。
伊藤
逆に若いときは撮れなかったけど、
今はこれが撮れるっていうことはありますか?
長野
あぁ、いっぱいあるんじゃないかな、それは。
伊藤
たとえば、何ですか?
長野
若いときは、水平・垂直とか、
気にしてなかったですが、
風景や建築、そして料理もそうですね。
いまでは水平・垂直と光がどうあたっているかを
気にするようになりました。
伊藤
技術的なことですね。
長野
はい。つきつめることで発見することがあって、
そこから次の写真が生まれる。
でもね、水平垂直を悩んでる間に、
失ってくものっていっぱいあるんです。
撮りたいなって思ったとき、
ポジションを探る間に、
光が変わっちゃった、とか。
シャッターチャンス、ってそういうことですよね。
そうすると、やっぱり変わるんですよ、気持ちも。
ちゃんとしようとすると、その間に。
でも若いときって、
そのままワッと押しちゃったりとか、
ちょっと露出が暗くても、
ちょっとピントがズレてても、それがよかったり、
「だから撮れるもの」があるんですよ。
学生の写真は、
写真としては未熟なわけですよね、ある意味。
でもそこに、
すごく人の心を惹きつける力がある。
伊藤
歌や演技もそうかもしれないですね。
達者だからといって
魅力的な人っていうことでもないんですよね。
長野
そうです、そうです。
「自分の写真はこうだ!」っていうふうに
決めて撮影をしている人からしたら、
僕が今話したことは、
そんなに大事なことじゃないかもしれないですけど、
僕は10代が被写体だったので、
そこのキラッと光る感じとか、
未来をもってるとか、青春とか、
なんでもいいですけど、
未完成のよさみたいなものに、
未だに敏感なんです。
学生の作品には、結構、それが詰まってるんですよね。
昔俺もこんなふうに見てたなぁとか、
懐かしくなっちゃうというか。
あと知らない世界。
こんなところがあるんだとか、
全然自分が知らない世界があるんだということ。
その人の実家でもいいんですけど。
うちにはないわ、このマッサージ機とか、
すごく面白いですよ。
これどこで買って来るんだよ、この銅像、
みたいなものとか、
自分の知らないものが写ってるんです。
それは、精査されてないから。
伊藤
その「精査されてない」っていう意味だと、
わたしはもうほんとに余分なものを
精査しちゃう癖があって。
──
伊藤さん、撮影現場で、
「情報が多いから減らしましょう」って、
よく、おっしゃいますよね。
長野
(笑)
伊藤
その癖はなんだろう。
すっきりした写真が好きっていうのもあるんだろうな。
あとは、料理やもの、服など、
撮りたい対象物があるから、
それを主役にして、と考えると
情報を押さえたほうが、
主役が目立つというのもあります。
──
伊藤さんのスタイリングの仕事と
おんなじですね。
伊藤
これはわたしがスタイリストになる
少し前の話なんですが、
たとえばレストランのメインディッシュを撮るのに、
その手前に前菜があって、
後ろにデザートがあって、
バチバチに全部にピントが合っている、
そんな写真が雑誌では主流だったんです。
そこにワイングラスが横に倒れてて、
ワインの瓶もあって、
空いたところにバラの花があって、
っていう世界だったんですよ。
──
大御所の料理写真家たちがつくりあげた世界ですね。
料理写真はこうあるべきだっていうのが、
確立された時代がありました。
それが日本の婦人雑誌の料理ページの質を
高めていったんですよね。
伊藤
わたしがこの世界に入ったときも、
4×5(しのご)の大きなフィルムで、
大きなカメラで撮っていました。
でも、22歳ぐらいのわたしにとって、
それはちょっとだけ疑問だったんです。
長野
そうでしょうね(笑)。
伊藤
こんなテーブルは一般家庭にはあり得ないし、
一皿一皿食べるものなのに、
何でこんなにいっぺんに並ぶのかな? とか。
それは写真1枚で
すべてを表現しなきゃいけなかったからなんですけれど。
長野
うんうん。
伊藤
それでわたしは情報を精査する、
という方向のスタイリングを続けてきたんです。
でも最近、情報の少ないすっきりした写真を
撮る人が多くなったので、
逆に、こってりしたスタイリングにも
興味が出てきたんですよ(笑)。
長野
おぉ~! いいじゃないですか! 
やって下さいよ! 
伊藤
自分も変わるものなんだなぁと思ってます。
別にわたしが写真を撮るわけじゃないけれど、
写真の中におさめるものをつくってきて、
ちょっと飽きてきたのかもしれませんね。

アコーディオンアルバム、 わたしの使い方 伊藤まさこ

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黒のフォトコーナーに合わせて、
黒い台紙にした今回のアコーディオンアルバム。
じつは、そのもととなったのは、
わたしが30年前に作ったアルバムでした。

一眼レフを持ちながら、
およそ1ヶ月のパリ一人旅。
その時は、時間があったのでしょうね、
ものすごくたくさんの写真を撮って帰ってきたのですが、
困ったのはその綴じ方。

見ると、どれも「いい!」と思った
瞬間なのでしょうけれど、
どうにも写真が拙くて。
なんとか上手く、
そして思い出の写真を美しく見せたいと思い、
試行錯誤した結果、黒い台紙に行き着いたというわけ。

今回は、そのたくさんの写真の中から、
さらにえらんで、飾って見せたいものを、
アコーディオンアルバムに貼ってみました。

まず最初は、カフェの写真。
20代の一人旅。
地下鉄に乗ることももちろんあるけれど、
なんと言っても、どこを歩いても美しいパリですから、
おのずと移動は徒歩になる。
途中途中で、佇まいのよさげなカフェを見つけると、
道に面した席に座ります。

必ず頼むのはカフェクレーム。
「マドモワゼル、お待たせ~」なんて言われながら、
カフェの給仕のおじさんが、
カップの横に添えてくれるのは、紙に包まれた角砂糖。

当時、そんな包み紙にいちいち感動し、
大切に持って帰ったわたし。
ハッと気づけばけっこうな量のその包紙を、
写真の横にテープで貼って保存していたのですが、
なんせ30年前のもの。
テープが劣化して、
茶色くなっているのが気になっていたのでした。

今回、そのテープをそっとはがし、
アコーディオンアルバムに。

フォトコーナーは、角さえあれば、
こんな変則的な形も留めることができるんです。

そしてできたのが、この見開きふたつ分。
なかなか行けないパリ。
しばらくリビングに飾って、
懐かしい思い出を振り返ろうかなと思っています。

この見開きは、
石と黒。

貼るものは自由ですが、
なんとなくテーマを決めると収まりがいいみたい。
今ではすっかり写真はパソコンの中に保存していますが、
紙焼きされたものっていいなぁ。
今回あらためて、そんなことを思いました。

紙が好きという気持ち

未分類

伊藤
若い子って雑誌読まないって言いますよね。
長野
そうなんです!
伊藤
ちょっとうっすらと悲しみがあります。
雑誌文化で育ったから‥‥。
長野
これ、自分の息子には
全く理解してもらえない話なんですよ。
伊藤
この前、若い人にインタビューしたとき、
「買う洋服を、いいなと思うきっかけって何? 
たとえば雑誌とか?」
って訊いたら、
「ううん、全然、雑誌は読まない。
Instagramとか、
アイドルのあの子がテレビで着てるのが
いいなって思うとか‥‥」
という答えでした。
長野
そうなんです(笑)。
伊藤
それですぐ検索して、
オンラインで買い物、なんですって。
長野
そう、検索ですよね。
伊藤
はぁ‥‥、とため息。
長野
この話、僕らのような、
雑誌を見て育った人にしかない
感覚なのかもしれないですよ。
伊藤
そうなんだけれど、
この日めくりカレンダーなんて、
自分の毎日の始まりになるんだから、
やっぱり紙にしたかったんです。
デジタルじゃなくてね。
まぁデジタルで日めくりカレンダーは
見ないのかもしれないけど、
やっぱり何かを行動起こすみたいなときに、
紙にプリントされてるっていうのが
大事なことだったんだなって、
長野さんとこうしてお話しをしていて、
気づきました。
長野
なるほど。つくった後に思ったんだ?!(笑)。
伊藤
そう、つくった後に(笑)。
長野
結構、今、古い雑誌を買い直しているんですよ。
昔、欲しかった号とかを、
ヤフオクとかで探したりして。
伊藤
へぇ~!
長野
やっぱ紙の雑誌じゃないと伝わらないことって、
すごくあるなぁと思ってます。
伊藤
開いたときにワクワクする感じ。
長野
写真に関しては、雑誌のサイズ感も
大事だなと思ってます。
文字もそうですけど、
iPadで横位置にすると
写真もちっちゃくなるじゃないですか。
だから縦にして片ページずつ見るんですけど、
片ページだけ見てると、
雑誌を読んでいる感じじゃないんですよね。
デジタルならではの、縦横がクルッと回転したり、
必要なところが拡大できたりするのも、
なんだか違和感があって。
伊藤
わたしたち人間の、ほんとのベースっていうのは、
あんまり変わってないはずなのに、
わたしが仕事を始めた30年ぐらい前と、
今とでは、ほんとにいろんなことが変わっていて。
長野
そうですね。
やっぱりデジタルネイティヴかどうかっていうのは
大きいかもしれない。
伊藤
雑誌は紙だから楽しいっていうのも、
そういう楽しい時代を過ごしたわたしたちだからで、
うちの娘や長野さんの息子さんの世代だと、
また違うのかもしれませんね。
長野
本人たちからしてみればデジタルが自然なんでしょう。
情報の古い・新しいについてもね、
たとえば息子がローリングストーンズのTシャツを、
昨日買って来たんです。あの「ベロ」のね。
で、聞いたら全然知らないんですよ、
ストーンズの存在すら! 
伊藤
え!! そうなんだ~。
かっこいいから、みたいな感覚なんでしょうね。
長野
じゃあストーンズに興味を持ったのかなと思って、
「この曲がいいから聴きなよ」なんて言っても、
「そういうことはいいんだよ」っていうような感じで、
全然興味がない。
多分僕が持ってる過去のことは、
若い人たちからしてみたら、
「とりあえず今はいい」みたいな。
大人になって、ほんとに好きになったら、
掘り下げるんでしょうけどね。
伊藤
でもあるとき、つながるかもしれない。
あ、これ、あのときのあれだったんだ、みたいな。
長野
そこに自分で気づけばね。
僕ら、どうしても、昔のものと今のものを
比べるじゃないですか、
比べないと気が済まなくなっちゃってる。
それがないんですよ。
だから写真もおんなじような感じだと思います。
これからデジタルで写真を始めた人は、
僕のフィルム時代ならではの話は
多分理解できないと思う。
伊藤
現像が上がってくるまでのドキドキする感じとかも、
面倒臭いって思う人もいるのかもしれない。
長野
それがね、僕らのときのその感覚とはちょっと違ってて、
若い人たちのほうが、それを楽しんでるんです。
僕らのときはそれしかなかったから
面倒だなあなんて思っていたけれど、
今の人たちはデジタルがあってのフィルムでしょう、
だから現像の時間を待つことも含めて楽しみなんですよ。
伊藤
デジタルの配信で音楽を聴くと、
レコードに針を落として聴く違い、みたいな? 
長野
そうですね。
僕らはレコード側ですよ。
伊藤
そっかぁ。
長野
若い人たちも今レコードが好きだけど、
それは多分サブスクがあるなかで、
感度のいい人たちが気づいたんでしょうね。
伊藤
ちなみに息子さんは、iPhoneを使って
何を撮ってるの?
長野
友達とかじゃないかな。
伊藤
自撮り?
長野
そういうのとか、遊びに行って友達を撮ってたりとか。
今、僕、写真の学校で教えてるんですね。
学生は皆デジタルネイティヴだから、
僕らが共通で認識している写真家、
たとえば川内倫子さんとかの名前を出しても、
知らないできているんですよね。最初はね。
伊藤
えっ? 
長野
彼らにとっての憧れの写真家は、
Instagramでフォロワー数の多い人、
なんです。
伊藤
えっ?!?! 
長野
その人たちこそが写真家で、
土門拳だろうが木村伊兵衛だろうが(*)、
誰ですかそれ? って感じなんですよ。

(*)土門拳(どもん・けん)は1909年生まれ、
木村伊兵衛は1901年生まれ、ともに20世紀に活躍した写真家。

伊藤
えーっ??!! 
その彼らは‥‥何がしたいの?
長野
もちろん、写真が撮りたくて来てるんです。
伊藤
それを仕事にしたいのかな?
長野
そうですね。どこまでどんな仕事を
理想としているかは分からないですけど。
伊藤
そうなんだ! 
長野
そういう状態の学生に、
先生たちが、写真の歴史や、
現代写真ができ上がるまでの流れ、
そのときに出てきた機材の話、
こういう機材があったから、
こういう写真が撮れるようになった、
ということを教えて、
初めて、僕らが出してる「写真集」っていう
本の存在を知っていく。
伊藤
‥‥すごい。今、衝撃すぎて‥‥。
長野
衝撃でしょ? そりゃ、全員じゃないですよ。
でも大半がそう。半分ぐらいかな。
たとえば高校に写真部があって、
写真甲子園を意識して活動してました、という人たちは、
顧問の先生からそういうことを教えてもらって、
フィルムを現像してプリントする
暗室作業まで知ってるんですけど、
それでも、写真の文化をほとんどの人が知らないし、
興味がないとすら言ってもいいんじゃないかな。
今、SNSは、フォロワーというかたちで、
はっきりした数字が出るでしょう。
何がよくて何が悪いか、ではなく、
皆が敏感に見てるもの、
バズる写真とか映(ば)える写真が
「いい写真」っていう価値観が
確実に、明確にあるんです。
伊藤
ショックですね。
長野
はい、ショックです。
伊藤
そして、すごく面白いです、このお話。

スマホじゃないと撮れない写真

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長野
ポラロイドのサイズにしたのは
まさこさんのアイデアですか。
伊藤
はい。昔からあのサイズがすごく好きなんです。
フィルム時代、自分が撮った写真も、
そのサイズでアルバムに挟んでいたんですよ。
長野
あぁ。ポラロイドフィルムを切ってってことですね?
伊藤
ううん、ポラじゃなくて、
普通にプリントしたものがあるでしょう。
現像であがってくるのは
標準サイズ(89×127mm)なので、
その縦横を切って、
ポラロイドサイズ(77×79mm)にして。
長野
あぁ~! はいはい、わざわざ!
伊藤
いま見返すと、恥ずかしいんだけれど。
長野
え、見たい。ちょっとだけ見せてください。
伊藤
(オンラインですこしだけ見せて)
ほんとに20代のとき(笑)。
パリで撮った写真とか。
長野
あぁ、いい写真じゃないですか!
全部、手で切ってるんですもんね? ご自分で。
伊藤
はい。暇だったんです、昔は。
長野
マメ! ちゃんとしてる。わぁ!(笑)。
──
Instagramの前から
Instagramの感覚だったんですね。
長野
正にそうだと思いますね。
伊藤
それで、日めくりカレンダーも、
ポラロイドの体裁にしたいなぁと思う気持ちがあって。
ぱっと渡せる写真、というのも、
いいところですよね、ポラロイド。
‥‥って、その話はいいんです、
長野さんの写真の話に戻ってもいい?
長野
どうぞ(笑)。
伊藤
iPhoneで撮った写真について、
もう少し聞かせてほしいな。
普段のメモ代わりにも、たしかに使うけれど‥‥。
長野
はい。撮ったときは、そんな感覚ってことですね。
でも、後々、iPhoneで撮った写真を
写真集に使うか、というと、
ないとは言い切れないと思っているんです。
今のところはないですけど、
そういうときが来ると思うんですね。
なぜなら「それしかない写真」が、
多分あると思うんです。
iPhoneでしか撮れなかったっていう写真が。
伊藤
iPhoneでしか撮れない瞬間っていうのは、
たとえばどういうことかなぁ?
長野
たまたまカメラを持ってなかったとか。
伊藤
偶然集まった人たちを撮ったら、
すごくよかったとか?
長野
たまたま、そういうことってありますよ。
そういうときに、iPhoneだからダメだなんて、
僕は全然そういうふうに思ってないんです。
撮った写真は、写真だと思ってる。
全然抵抗はないですよ。
写真集に、iPhoneの写真が、他の写真と混ざっても。
ただ、ひとつだけ気にしてるのは、
iPhoneの写真って、液晶画面で見ることが多い。
これが、そこで見てるときはいいんだけど、
たとえばパソコンの画面で見ると、
よく見えなかったりすることもあるんです。
伊藤
うんうん、おっきくなるから。
長野
そう、多分サイズが結構大事。
最初は画角かなとかって思ってたんですけど、
今、Instagramも、
パソコンで見れるじゃないですか。
そうすると、iPhoneで見てるほど、
よくは見えないんですよ。
伊藤
そっかぁ。
長野
僕はサイズってすごい大事だと思っているんです。
iPadでも違うんですよ、大きく感じちゃう。
iPadにもカメラのレンズがついているじゃないですか? 
でもiPadでは、僕は写真が撮れないな。
なぜかはわからないけれど。
伊藤
機械そのものが、おっきいからじゃないかなあ?
長野
そう、カメラというには、抵抗があります。
だからiPadのカメラロールの中には、
それで撮った写真は1枚も入ってないんですよ。
転送された写真しか入ってないです。
──
観光地に行くと、高齢者のかたで、
iPadを持って歩いてるかた、多いんですよ。
たぶん地図などの情報が見やすいからだと思いますが、
みなさん、そのままiPadで写真を撮ってますね。
だから、慣れなのかな、とも。
長野
そうそう、慣れもあると思うんですよね。
いつも見てる環境と変わると
違和感があるっていうのは、
あるかもしれない。
ただ、まさこさん、今回みたいに、
紙に出力したとするじゃないですか。
伊藤
うんうん。
長野
それは多分また違う見え方をするんです。
伊藤
そうなんですよ!
長野
はい。なので多分、
iPhoneの画面で見る写真と、
こうして日めくりカレンダーという
「もの」になって見る写真とでは、
印象が違うと思うんです。
だから、これを買って見る人が、
ふだん、まさこさんのInstagramを見ていたとしても、
それとこれがすぐに結びつく人は、
あんまいないと思うんです。
「これはこれ」で見ると思う、多分。
伊藤
紙の魅力ってなんなんでしょう。
なぜ紙になると、もっと素敵になるんだろう?
長野
やっぱり「物質感」じゃないですか。
「慣れ」と言われるかもしれないですけど、
たとえば僕はiPadで雑誌が読めないんです。
伊藤
分かる! わたしも、
雑誌が読み放題のサブスクリプションに入ったけれど、
まったく読まないんです。それでやめちゃった。
長野
本屋さんとかで立ち読みしてると、
買っちゃったりするのに、
その魅力がデジタルではなくなっちゃう。
伊藤
いつでも見られるという
よさがあるはずなのにね。
──
雑誌は読めないのに、
漫画は読めるんですよね。
長野
あ、漫画は読めますね(笑)! たしかに。
伊藤
そうなんだ?!
──
あと、テキストだけの本も慣れちゃいました。
Kindleで小説を読んでます。
でも、「これは紙の本で買おう」という本もある。
そしてたしかに雑誌は読めないです。
長野
なるほど~。
それって、何故だと思います?
伊藤
なんでだろう?

長野さん、スマホで写真を撮りますか?

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伊藤
長野さん、こんにちは。
今日は、写真について
いろんなことがお話しできたらと思っています。
じつは「weeksdays」で
「日めくりカレンダー」をつくったんですよ。
長野
はい。まさこさんの写真で?
伊藤
そうなんです。
これまで、年にいちど、「暦帖」っていう、
B5版の月ごとのスケジュール帳を
つくっていたんですけれど、
コアな商品過ぎたのか、
あまり需要がなく、お休みをすることになって。
そのかわりということでもないんですが、
日めくりカレンダーがほしいという
チーム内の声があって、
「それだったら、できるかも?」と。
ただ、365日、全部新しい写真を撮るのは
すごくたいへん‥‥というか、
思いついたときには
新しく撮影するのは
もう間に合わないスケジュールだった。
それで、わたしの過去のカメラロールから、
5年分、365枚の写真をチョイスして、
編集をしたんです。
長野
そういういきさつだったんですね。
伊藤
中には長野さんと行った九州ロケの写真も
あるんですよ。
長野
ご一緒しましたね!
伊藤
コロナ前だったので、台湾のロケの写真とかも。
長野
へぇ~! もう写真集じゃないですか、
ほとんど、それ。
伊藤
とんでもない! 
そんなつもりはないんですよ。
iPhoneで撮っているものですし、
写真集だなんて思ったら、できなかったです。
日めくりだから、気が楽で、
楽しい作業だったんです。
長野
めくるだけですか。
1日ずつ破って剥がすタイプですか。
伊藤
1日ずつ、剥がして、
捨ててもらうタイプです。
長野
えぇっ、それ、捨てづらいなぁ(笑)。
伊藤
いやいや、わたしはもう、
どんどんなくなっていくのが
気持ちいいなぁと思って!
長野
そうなんですか。
伊藤
うんうん。
長野
写真と日付が入ってるだけですか。
伊藤
まさしく、そう。
長野
まさこさんの名言が書いてあるとか‥‥?
伊藤
じゃないです!(笑)
写真の説明として
短いキャプションがあったほうがいいのかな? 
ということも、ちょっと頭をよぎったんだけれど、
それも、うるさいかな、と。
長野
シンプルにしたんですね。
伊藤
今日、お話しを伺いたいなと思ったのは、
その「日めくりカレンダー」の製作で、
写真と向き合う日が続いて、
写真について考えることが多かったからなんです。
そういえば以前は写真を撮るのって、
カメラがなくちゃ、できなかったけれど、
最近はスマホがあるじゃないですか。
長野
そうですね。
伊藤
わたしがiPhoneを買った理由も、
10何年前かにパリに行くのに、
もうカメラはいらない、
と思ったのがきっかけでした。
それで一気に撮る枚数が増えたんですね。
そこから写真を撮ることが身近になりました。
みんなも、普段の自分の記憶を
残したいと思っている人が多いと思うのだけれど、
そんなことについて
語り合いたいなぁと思っています。
前置きが長くなっちゃった(笑)。
長野
(笑)分かりました。
伊藤
長野さんは、スマホで写真を撮りますか?
長野
もちろんです。
メモ代わりに撮ったりもしますし、
まさこさんと一緒で、
iPhoneで「写真を撮る」こともあります。
でも、カメラで写真を撮る感覚より、
もっとライトで、気軽なものだと思います。
伊藤
カメラを構えて撮るときと、
どういうふうな心持ちの違いがあるんですか。
長野
普通のカメラだと、
絞りとシャッタースピードっていうのがあって、
僕ら(写真家)は、いつも、
それを前提に、どういう画(え)にするかを
考えているんです。
iPhoneでもなんとなく選べるようにはなってますけど、
そこまでのこまかな操作はしません。
最近でこそ、後ろがぼかせたりとか、
できるようになったけれど、
ちょっと前までは、それすらもできなかった。
まずその違いが大きいんです。
だから、iPhoneのときは、
目の前のものをとりあえず記録しておく感覚ですね。
だから「じっくり」というよりは
「パッ」と撮っています。
仕事かどうかは関係なく、ですね。
伊藤
でもiPhoneで撮るときも、
長野さんはちゃんと「おさめてる」と思う。
長野
はい、それは職業病ですね。
水平・垂直をちゃんと保って撮ったりとか。
伊藤
分かります!
長野
斜めの写真は、ムズムズしちゃうんですよ。
ちょっと生理的にダメなんです。
だから「パッと押してる」って言ってるけど、
実際は、ゆっくり押しているのかもしれません。
でも、普段のカメラで撮るときよりも、
意識することが少ないから、
自分の感覚としては、
メモを取ることに近い感じなんです。
伊藤
わたしもフィルム時代から
雑誌や書籍の仕事をしてきて、
写真家のかたと組むことが多いんですが、
以前は、露出を調べるのに、
露出計というのかな、
カチカチッて測る小さな機器がありましたよね。
あれ、いまでも、使うんですか。
長野
僕は、もうやらないですね。
伊藤
そこもカメラの進歩で
簡単になっているんですね。
今は、Instagramなどで、
いろいろな人が撮った写真を
見る機会が多くなりましたが、
みなさん、すごく上手になっているって
思うんですよ。
長野
そうですよね。
──
お話の最中、すみません。
日めくりカレンダーのサンプルが
いま、届きました。
(オンラインで見せる)
長野
あぁ! すごい! かわいい~!!
ポラロイドのフィルムみたいですね。
──
そうです、まさしくポラロイドの
印画紙のサイズです。
長野
あぁ、いいじゃないですか! 
うん、いいです、いいです! 
これ、みんな嬉しいと思う。
伊藤
そうだといいな。
長野
素晴らしい! これ、切り取れないですよ~、
もったいなくて。
伊藤
いやいや、いいんです。
もうどんどん、昨日を捨ててもらって。
長野
もう(笑)。
でも、いいかも。たしかに気軽に切り取れそう。
紙の質感とかも、そういう感じなんですね。
薄めで、ちょっと透け感があって。
伊藤
紙が厚くなると、
束(つか=本の厚み)が出てしまうので、
この薄さが限度かなと思って。
長野
そうですよね。
365枚ってことは、
本にしたら730ページですからね。
伊藤
うん。そして、置いて使ってもいいけれど、
最後のページがボール紙で、
組み立てるとスタンドになり、
自立させることができる仕様なんです。
長野
すご~い!
あぁ! ほんとだ。すごい!!
しかも、かわいいですね。素晴らしい。
伊藤
ありがとうございます!

日めくりカレンダーとアコーディオンアルバム

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SCANDINAVIAN 365 CALENDAR 2023

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うれしいものを365日

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自分の人生って、
一日、一日の積み重ねでできている。

すごく当たり前のそんなことをつい忘れるのは、
目の前のことに追われていたり、
昨日し残したことを、
今日の自分が消化できていないから。

ようするに
「余裕がない」んだよなぁ。

‥‥なんてことに気づいてからは、
一日、一日を大切に、
そして充実したものにしようと思って、
過ごしてきたつもり。

自分の毎日が、
ちょっといい感じになってくると、
過去の思い出や、
これから先のことが愛おしくなってくる。
これってなんだかいい感じじゃないか! 

今週のweeksdaysは、
365日の日めくりカレンダー
(なんと2種類あるんです)と、
アコーディオンアルバム。

日めくりカレンダーは、
めくるたびに、
その日がうれしくなってしまうような、
おいしいもの、
かわいいもの、
気分のいいものを365日分。

アコーディオンアルバムは、
大切な思い出をとっておきたい
あなた(と私)のためのもの。

コンテンツは、
写真家の長野陽一さんと、
写真を撮ることについての対談。
そして、「ほぼ日」の中で連載してくださっていた、
「北欧365旅日記」のおさだゆかりさんと、
日めくりカレンダーについての対談を。

今週も盛りだくさんなweeksdays。
どうぞお楽しみに。

余白が多いページのように

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伊藤
pageaéréeができあがるまでは、
それこそいろいろ大変だったでしょうね。
大変でした!
伊藤
ですよね。
パターンとか。
2年半ぐらいかかりましたね。
失敗も、右往左往も、
遠回りもいろいろしました。
パターンを引いてもらってから
生地が決まったんですが、
この生地はこのパターンじゃダメだ、
みたいなことになって、やり直しとか、
あとは、いざっていうときに、
コロナがあって、
どうにも動けなくなりましたし。
伊藤
うーん。
展示会ができなかったりとか、
工場がストップしてしまったり、
生地を染めることができなくなったりとか。
伊藤
いまはどうですか?
コロナも、もう3年目で。
部屋着的なウェアに関しては、
コロナ前よりもみなさんが
お家にいる時間を大切にしたい、と思われているので、
以前よりはいいと思うんですけど、
でも逆に、経済的な面であったり、
材料の値段が上がってしまったりとか、
悪影響みたいな部分も
出てきているように思います。
伊藤
なるほど。
いいものは欲しいけれども、
材料が高くなったり‥‥。
お客さまも、部屋着やパジャマには
ここまでの予算はかけられないとか。
伊藤
洋服にはかけても‥‥。
パジャマまではちょっと、って。
伊藤
パジャマこそ、なんですよ! 
って思うところもありますよね。
そうなんですよね。
パジャマって家族には見せますけど、
他人に見せるものじゃない。
通常は家の中で着る自分だけのものですよね。
でも私は逆に、
人が見ないところで何を着るかっていうことが、
実はすごく大事だと思っているんです。
何を着るのか、自分はどう存在するか、
みたいなこと。
ちょっと生きかたにも関わってくるようなこと。
伊藤
たしかにそうですねぇ。
玄関を出たらピカピカだけど、
その前も整えておきたいっていう気持ちは、
やっぱり大人になるとありますよね。
そうですよね。
伊藤
実際、フランス人のお友達とかも
pageaéréeのパジャマを着ていますか。
はい、着ています。
みんなびっくりしてくれますよ。
こんな気持ちのいいものはない、
っていうぐらいびっくりしますよ。
伊藤
へぇーー。
そうか、
そうですよねぇ。
あとはバカンス中に
水着の上に着たいとか。
伊藤
へぇ! 
いいかもしれないですね。
本当にバカンスだったら、
一日中これ着ていられるわね、とか、
そういうふうに言うかたも。
伊藤
そうかもしれないですね。
フランスだと、
ガーゼ生地っていうのはめずらしいんですか?
あの感じはわりにめずらしいかもです。
一般的には麻になっちゃうかも。
伊藤
うんうんうん、なるほど。
weeksdaysチームのみんなから、
篠さんへの質問はありますか。
──
そもそも、
伊藤さんと篠さんの出会いは
いつごろだったんですか。
ファーストコレクションの展示会ですから、
2年半前ですよね。
伊藤
それでわたしが暑がりだから
「襟が‥‥」って。
伊藤
そう、襟って暑いなぁと思ってたんです。
その頃わたしはパジャマのズボンとキャミソールで
就寝していたんですが、
寒くなったら、pageaéréeのパジャマを
カーディガンみたいにして着るといいんです。
なんだ、わたし、襟があっても大丈夫だった! と思って。
パジャマは最初から上下で着るものって思ってたけど、
こうして自分で調整すればいいんだなぁと思いました。
それがあって、
ユニセックスのパジャマは上下セットなんですけれど、
それ以外は、バラ売りにしているものもあるんです。
パンツだけ欲しいっていうかたとか、
ワンピース型にはカットソーを合わせたい
っていうかたもいらっしゃるんですよ。
あと外に着ていらっしゃるかたもいます。
サロペットみたいに作業着として着たり、
パンツだけをロールアップして、
外で着ているかたも。
それがかわいかったので
びっくりしたんですけど。
ワンピース型も外に着てくださるかたも多いし。
パジャマ型のパンツとシャツも
ばらして着てらっしゃるかたもけっこういますね。
伊藤
そっか、
そういうふうに着ればいいんだ。
いろいろ幅が広がりました。
パンツはそのまま、上だけを取り替えて、
犬の散歩に行くっていうかたも
いらっしゃいました。
伊藤
そっかぁ、すごいなぁ。
みんな、かっこよさそうですね。
うれしいですよね。
──
刺繍はどんなふうに決めたデザインなんですか?
パリに住んでいて、蚤の市が好きなんです。
古いパジャマやシーツとか、
テーブルナプキンとかには
前に使っていたかたの刺繍が入ってることがあって、
それがいつもかわいいなってすごく思っていました。
それで、古いデザインの感じに、
友達のデザイナーに組んでもらいました。
伊藤
うんうんうん。
意外な場所に刺繍があって
びっくりしたりしますよね。
しません? 
背中や、首の下とか。
色も、きなり色のリネンに赤とか。
そうなんですよね。
伊藤
‥‥そういえば、ブランド名の由来は
どんなことなんですか。
「pageaérée(パージュアエレ)」って
ひと綴りにした造語なんですけど、
もともとは2語のレイアウト用語なんです。
page aéréeですね。
まず「アエレ」っていう単語は、
風通しがいいっていう意味なんですよ。
「パージュ」は英語でいう「ページ」で、
レイアウトで「パージュ・アエレ」っていうと、
余白が多いレイアウトのことなんです。
「余白が多いページ」って、
いろんな意味に取れるし、
風通しがいいっていうのもいい。
最初は、「アエレパリ」
っていうブランド名にしようと思っていたんですが、
1年もかかったのに商標登録が通らなかったんですよ。
伊藤
へぇー!
パリっていう名前を
日本産のブランドに付けるのが
一番ひっかかったみたいです。
でも「アエレ」は絶対に残したかった。
それで「pageaérée」という造語はどうかって
フランス人の友人たちにメールで聞いたら、
みんな「aérée(アエレ)」一文字よりぜんぜんいいって。
含みがあるし、ポエティックだと。
伊藤
聞き心地もいいですよね。
ほんとですか。
よかったです。
伊藤
そういうことだったんですね。
──
今はすっかり回復されてると思うんですけど、
どんなふうにパジャマ着てらっしゃいますか。
普通に夜寝るときですね。
あと、旅も多いので、
ワンピース型は便利ですよ。
仕事仲間と同室になったときとか、
ちょっと慌てて朝食にとかいうときでも、
そのまま行けたりするので便利です。
軽いのでそんなに負担になりませんし。
伊藤
たしかに軽い! 
だから疲れないっていうのも
あるんでしょうね。
羽織った瞬間にちょっとふわっとすると、
気持ちがちょっと柔らかくなりますよね。
伊藤
ほんとう。
ところで篠さんの今のお仕事は、
どんな感じですか。
今はこのpageaéréeとともに、
フォトグラファーとしての仕事も、
もちろん続けています。
日本の雑誌やフランスの書籍、
ポートレート、ブランドのルックブックなど、
いろいろ撮影させていただいています。
写真のお仕事で色々な方にお会いしたり、
旅をしたりすることが、pageaéréeのための
インスピレーションになっているように思います。
伊藤
いいですね。
ご自身のブランドのスタイリングと写真も、
もちろん篠さんですよね。
たった一人で全部は無理なので、
手伝っていただいたりしつつ‥‥。
撮影が自分でできるのはいいですけど、
何回も撮っていると
ほかのかたの撮ったのも見たいなって。
自分のだと予想が付くので。
伊藤
ありがとうございました。
篠さん、何か、ありますか。
そうですね、ほんとに‥‥
いまいろいろ世の中が大変なので、
やっぱり自分をいたわる時間を、多く、
みなさんに取っていただきたいなって思います。
そういうときに寄り添えるような製品が作れたらと
思っています。
伊藤
はい、ありがとうございます。
pageaéréeのパジャマで、
あまやかします、自分を。
はい、あまやかしてください!
伊藤
今日はありがとうございました。
ありがとうございました。

こういうパジャマを待っていた

未分類

伊藤
実際pageaéréeを立ち上げて、
着始めたかたの感想っていうのは、
みなさん、どんな感じでした?
Tシャツで寝ていた自分に戻れない、
っておっしゃってくださるかたがいらっしゃいました。
あと、ご病気のかたからも、
こういうのを待ってました、っていう感想を
SNSを通じてくださったかたがいらっしゃいましたね。
リピートしてくださるかたもいらっしゃるんです。
パジャマって、そんなに買い替えないんじゃないかな、
と思っていたんですが、わりと多くのみなさんが
「もう一枚欲しいと思ってたんです」と。
伊藤
実際、わたしも母にプレゼントしたいなと思いますし、
もし自分や友達が入院するときは、
すごくうれしい贈り物っていうか、
何にも代え難いものになるにちがいないと
着ていて分かりましたよ。
ありがとうございます。
それから、授乳ができるようになっているので、
産む前も、妊娠中も、
生まれた後に授乳するのにも、
すごく助かりましたっていう意見も。
伊藤
たしかにそうですね。
いろんな感想がとどきますよ。
pageaéréeではガウンも作ったんですが、
このパジャマに着替えて、
そのガウンを羽織ったとき、
一日の終わりにすごく贅沢で
極上な時間を過ごしてると思える、って。
伊藤
そうなんです! よくわかります。
pageaéréeのガウンは、長袖と、
チョッキみたいなタイプを持っているんですが、
寒いけど暑い、暑いけど寒いみたいな日に、
すごいちょうど良くて、助かりました。
6月ぐらいまで着ていましたよ。
ほんとですか!
伊藤
あれもいつか「weeksdays」で
扱わせていただけたら嬉しいです。
はい、ぜひ(笑)! 
そういえば、いいガウン、ないんですよね。
伊藤
ないですね。
どうしてだろう? 
入院中も便利ですよね。
そうなんです。
闘病中は、いいガウンがなかったので、
病院ではロングカーディガンを着てました。
でも軽くて気持ちのいい
ぱっと羽織るものがあったらいいなって、
入院してるときもずっと思っていたのが、
ガウンづくりにつながったんですよ。
伊藤
そういえばファッションのスタイリストさんで、
タレントさんや女優さんを担当なさっているかたが、
着替え前にメイクをするとき、
ちょっと羽織ってほしいようなガウンに
いいものがぜんぜんないと言ってました。
でも篠さんのはいいですよね。
はい、ぴったりですよ(笑)!
伊藤
すごいやさしくされてる感じがして、
うれしいんです。
ありがとうございます。
日本でガウンを探してデパートに行くと、
いまだに、パイプをくゆらすみたいなのが(笑)。
あれ、すごく重いんですよ。
石原裕次郎さんが着てらっしゃったみたいな。
伊藤
ブランデーを片手にね。
ところで、パリの人は
どういう寝姿なんですか、
パリの人は、
パジャマはやっぱり日本と同じで、
着てるかたと、ぜんぜん着てないかたがいます。
裸で寝るっていうかたも多いんですよ。
何も着ない。
伊藤
へぇー。
ガウンはどうですか?
ガウンはよく「キモノ」といって、
日本の古いものを羽織る人も見かけます。
でもいわゆるガウンは、パリでも意外にないんです。
昔の映画に出てきそうな、
髪の毛を巻いてる女優さんが着るような‥‥。
伊藤
ブリジット・バルドーみたいな?
そういうイメージのものをいまだに売ってたり、
すごく極端ですね。
中間がないっていうか。
男性ものでも
シャツスタイルでちょっと長いものとかを
売ってますけど、どれだけのかたが、
それを本当に着てるのかどうか、
ちょっと分からないですね‥‥。
伊藤
わりとごわごわとしたタオル地の、
ホテル仕様のガウンにも憧れるんですけど、
どうやって乾かせばいいかわからないし、
そもそも重いし。
首まわりがモコモコですよね。
そういえば、バスローブも、
次の夏は作りたいなと思ってるんです。
伊藤
ぜひぜひ! 
話をパジャマに戻しますが、
今回、「weeksdays」では
ワンピース型とユニセックスのいわゆるパジャマ型、
2つのパターンを取り扱うことになりましたね。
それぞれ、いいところがありますね。
どちらも、パジャマ1枚で歩いていても
きれいに見えるっていうことを大事にしています。
ワンピース型はとくにシルエットのうつくしさ。
そして、胸の開きがあるので授乳もできます。
もともと私の病気って、
2種類の癌だったんですけど、
最初の乳癌のときの経験で、
脱がなくても治療ができるような
長さにしているんです。
そしてユニセックスのパジャマに関しては、
ご家族でお揃いで着たいっていう要望を
いただいていたのがつくるきっかけです。
pageaéréeではサイズが
S、M、L、XLとありますが、
「weeksdays」では女性向けということで
パジャマ型はSとMの2サイズ、
ワンピース型はMとLの2サイズを
選んでいただきました。
伊藤
なるほど。
上下のパジャマは、
上の丈が長いほうがいいみたいな
シチュエーションが入院中にはある、
っていうお話もありましたね。
たとえば出産のときには、
ズボンを脱がなくちゃいけないような
シチュエーションもあって、
普通のパジャマだとちょっと、って。
そうですね。
なのでユニセックスのパジャマは
上着の丈を若干長めにしてあって、
お尻が隠れるようになっています。
あとはポケットが特徴かもしれませんね。
私、洋服でもポケットがないとイヤなので、
パジャマでも絶対ポケットをつけたかった。
なにも入れないにしても。
伊藤
こういう服のポケットって
普段そんなにありがたみが
あるわけじゃないんだけれど、
ないタイプを着たときに、
「あ、ない!」って思うんですよね。
そう。
あれ? ないの? って
ちょっと指を引っ掛けたりしたいんですよ。
伊藤
重要なものなんだなって、
ないと初めて気が付きます。
ユニセックスの方は、女性向けのサイズですが、
着たかたがいいと思ったら、
「あ、じゃあこれを夫にも」みたいな感じで
じわじわ拡がってくれるといいですよね。
そうなんです。
伊藤
素材に関しては?
これは三重県でつくっている
オーガニックの和晒(わざらし)の
二重ガーゼです。
伊藤
それはどうやって探したんですか?
これは、
パジャマをやりたいなと思ったとき、
お会いするかたみんなに
実はこんなことを考えていて、
みたいなことを話していたんですよ。
そのなかで、
スタイリスト時代に
お仕事をさせていただいてたかたの旦那さんがいらして、
アパレルの会社をなさっていたんです。
そのかたとご飯を食べたとき、わたしのアイデアを聞いて、
うちで応援するからやってみれば、
とおっしゃってくださり、
ご一緒させていただくことになりました。
この生地は、その会社で
ずっとオリジナルで作っている生地なんですよ。
伊藤
そんなご縁が!
そのかたは、10年以上前から
オーガニックコットンと、
再生できる生地を開発しているほどの
第一人者なんです。
ガーゼの生地ってほかにもあるんですけれど、
あの柔らかさのものは、
なかなか市販では見つけられなかった。
じつは2年以上の試行錯誤があって、
最後にあの生地と出会えて、
それまで暗礁に乗り上げてたことが、
すっと解消したんです。

闘病生活のなかで考えたこと

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伊藤
篠さん、こんにちは、
よろしくお願いします。
このたびはありがとうございます。
こちらこそ、ありがとうございます。
とってもうれしいです。
伊藤
以前、篠さんへのメールにも書いたんですけれど、
ちょっと体調を崩したとき、
pageaérée(パージュアエレ)のパジャマが
すごくありがたくて。
よかったです。
伊藤
今回、「weeksdays」で
初めて扱わせていただくブランドですから、
篠さんに、成り立ちからお訊ねしたくって。
パリにお住まいで、写真がご本業。
そうなんです。
伊藤
日本にいるときから、
フォトグラファーだったんですか?
日本にいたときは、
スタイリストだったんですよ。
パリに引っ越してから写真をはじめて、
カメラマンになれるかどうか分からない状態での
スタートだったんですけれど、
いろいろご縁がつながって、
写真を仕事として生きてくることができました。
ただ、2017年、2018年の2年間、
病気をしてしまい、日本に戻って闘病していたんです。
伊藤
そうだったんですね。
行ったり来たりではなく?
治療してる間はパリに帰れませんし、
治療が終わっても半年ぐらいは、
しょっちゅう病院に行かなければならなかった。
その半年の間は、行ったり来たりも
ちょっとだけしながら、
基本的には日本にいたんです。
伊藤
2年間は長いですね。
そうなんです。
最初の病気がわかって、
手術して、入院して、
3か月後に今度は別の病気が分かって、
そこからパリに戻れなくなっちゃった感じでした。
二度目の病気がちょっと重かったので、
それだけで1年間ぐらい治療が必要でした。
その間に、好きなパジャマがなかった、
というのがpageaéréeを立ち上げる
きっかけになりました。
入院するのに高価なものは買えないけれど、
「でも、こんなのがあったらいいな」っていうパジャマが、
まったく見つからなかったんです。
伊藤
東京でもパリでも見つからなかった?
パリにいたとき、病気になる前は、
パジャマのありがたみとか、
パジャマを絶対着なきゃならない、
っていうシチュエーションがなかったんです。
それこそロングTシャツとか、
スエットみたいなものを着て寝ていました。
パジャマも持っていたんですけど、
コットンの大きいもので、ごわっとして、
あんまり着心地が良くなかった。
でも病気になると、入院のときに、
絶対にパジャマを持っていかなきゃならない。
前開きだったりとか、
病院の出すいろんな条件があるんですよ。
伊藤
なるほど、前があかないと、
診察や治療のときに困るんでしょうね。
そうなんですよ。
だから入院するためにパジャマを買わなくちゃ、
と思って、お店に行ったら、
好きなものがまったくなくって、
「どうしよう?」と。
たとえ気に入ったものがあっても、すごく高くて。
日本のブランドでは
8万円なんていうパジャマもあるんですね。
伊藤
うーん! 
それはパジャマとしてはそうとう高価ですね。
あとは、イギリスのブランドで6万8000円とか‥‥。
いくら気に入っても、
いつ仕事に戻れるかもわからない状態で、
それを買うことはできなかった。
たくさん着替えなきゃいけないから、
枚数も要るんですよね。
結局、量産品のパジャマに落ち着きましたが、
体型がドーンと見えるのがすごくいやでした。
病院に入院してる間って、
忙しいですよね、わりあい。
伊藤
そうなんですよね。
寝てばっかりじゃなくて、
やれレントゲンを撮りに行ってくださいとか、
コンビニ行ってこれを買ってきてくださいとか、
病院の中を移動しなきゃならないですし、
お見舞いのかたがいらっしゃると、
個室じゃなかったから、
いわゆる談話室みたいな所に行かなくちゃならない。
みなさんはすごく素敵な、
いつもと変わらない服でいらっしゃってるのに、
自分はなんだかドーンとしたパジャマなのがイヤでした。
背が小さくて、ちょっと体型にコンプレックスもあるから、
直線のパターンの物を着ると、
なんだか丸太っぽい感じになるっていうか(笑)。
鏡に映った自分を見てイヤだなぁ、って。
伊藤
着心地はどうだったんですか。
やっぱり違和感が?
けっこうありましたね。
薬で肌が敏感になってしまって、
縫い目がちょっと当たっただけでも、
赤くミミズ腫れっぽくなってしまったり。
伊藤
うんうん。
そんななか、友人がお見舞いに
キャミソールを買って届けてくれたんですよ。
それも、スイスの、
とてもいい肌着ブランドのものを買ってきてくれて。
伊藤
はい。
それを着たときに、
あぁ、肌触りがいいって、
こんなに気持ちがいいものなんだ、と思って。
伊藤
自分がちょっと弱ってるときって、
すごく過敏になりますよね。
そうなんですよね。
それで、自分でパジャマをつくるなら、
肌触りが良いいものを、と。
伊藤
それで「よし、ブランドを立ち上げよう!」
っていうことが、すごいですよ。
そうなんですよね(笑)。
ただ、パジャマだけじゃなく、
薬の副作用があって、いろんな体の不調、
陶器のカップの持ち手が冷たくて手がしびれるんですよ。
木のものしか持てないんです。
金属のフォークにもガーゼを巻かないと持てないし、
コップすら唇に付けられなくて、常温のお水すら飲めない、
冷たくてしびれる、ビリビリってくる。
そういうときに、
あっ、木のスプーンがあれば、とか、
ヘアーバンドがあれば、とか、
手袋があれば、とか。
伊藤
いろいろほしいものが、そのときに。
そうなんです。
それでネットで探そうとするんですけれど、
そういう体力も気力もない。
ようやく探して買っても、
うわ、これはちょっと‥‥、
っていうものだったりするんですよね。
ですから最初は、
入院したときに購入できるおしゃれなアイテムが
一気に見られるようなサイトがあったらなぁ、
というのが発想のスタートだったんですよ。
ただ、実際にそれを集めてウェブショップをつくるのは、
私がパリに住んでいるということもあり、
一体誰がどうやって? って考えると無理がある。
じゃあ、作れるものから、っていうことで、
いちばん欲しかったパジャマをやってみようかな、って。
伊藤
なるほど。
闘病なさっていたことが、
ほんとうに大きなきっかけだったんですね。
長きにわたる闘病で、
副作用がひどかったというのもあって、
「今日をやり過ごすこと」で精一杯だったんですね。
だから将来的に写真に戻れるか、ということも、
まったく考えられなかった。
自分の未来が想像ができないんです。
そんな日々を過ごしていたなか、
あるとき、
「あ、元気になったらパジャマをつくりたいな」
って、ふと思った瞬間、
「あ! 初めて私、
未来のことを考えた!」と思ったんです。
伊藤
へぇーー!
これは絶対にやった方がいいんだ、
と思えたのが、実際の行動につながりました。
伊藤
なるほど、
そういうことだったんですね。
たしかに、縫い代の始末がすごい丁寧だったりする、
そこにはそういう理由があったんですね。
肌が弱っているときでも、
当たってかぶれないように、ですね。
タグを絶対外に付けているのも、そうです。
伊藤
そう! タグも気になりますよね。
切っても、その切ったところが
肌に当たるんですよね。

pageaéréeのパジャマ

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わたしにやさしい

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夏バテ知らず。
前に風邪ひいたのいつだっけ? 
というくらい、
いつも元気な私ですが、
冬から春に変わる数週間は、
ふだんより幾分、トーンダウン。

ことに今年の春先は、
堪えたなぁ。

でも、そんなことをもう何年も繰り返しているので、
対処法はわかっているんです。

まずはゆっくり休むこと。
よく寝て、
あまり食べすぎないように。
あとは、
体を温めて。

すると、だんだんふだん通りに戻っていく。
ああ、無理させてごめんね。
もう少しいたわるよ。
なんて、自分に声をかけたりして。

今年、とてもありがたかったのは、
ガーゼのパジャマ。

弱っている自分を、
ふんわり包み込んでくれるような安心感。
お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんて、
きっとこんな感じなのかな?
なんて思うほどの。

今週のweeksdaysは、
パリ生まれのパージュアエレのパジャマです。
体に馴染み、
私にやさしい。
一枚持っていると、とてもありがたい存在です。

スツール、ウッドバスケット、鋼正堂 わたしの使い方

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スツールは家のあちこちで

「家のあちこちに移動させている」
という、関根さんのスツールの使い方同様、
我が家もあっちに置いたり、こっちに置いたりしています。

ある時は、ドアの前に置いてストッパーのように。
またある時はベッドサイドに置いて、
サイドテーブル代わりに。
という具合。

軽いので、持ち運びがしやすく、
ポン、と置くだけで空間に変化が生まれる。
スツールって、
気軽に模様替えできるとても便利な家具なのです。

今日は、蘭の鉢植えを乗せて、
リビングのはじっこに。
豪華なイメージを纏う蘭ですが、
茎の支柱を取ると、
ちょっとドレスダウン。
あまり手をかけなくても花が長持ちするので、
時々、こんな小さな鉢植えを買って楽しんでいます。

実家から積んできたミントを
ガラスの片口にワサッといけたり、
沖縄から送られてきたシークワサーの枝を瓶に挿したり。
上に乗せる花やグリーンで、
イメージはずいぶん変わるもの。

「座る」以外に、楽しみ方はたくさんあるのです。


ウッドバスケットは、収納のひとつ

ウッドバスケットは、
ゴミを入れるだけではもったいない。
「バスケット」という名前の通り、
いろいろな使い方ができます。

最近は、掃除道具をかけた壁面の下に置いて、
中にウェスを入れています。
ドアはいつも開けっぱなしなので、
これらの道具はドアに隠れるのですが、
隠れているところこそ、
気に入ったものでまとめたい。
そんな風に思っています。

ウェスはバスケットの半分くらいが目安。
これはウーさんに影響されて。
こうすることで、真上から見ない限り、
中に入っているものが見えずに美しい。
掃除道具こそ、きれいにね。


スタイリングがたのしい鋼正堂

磁器のお皿と同じく、
ほぼ毎日使っているのが、
内田鋼一さんと作った鋼正堂の器

料理が映え、
かつ何を盛ってもおいしそう。
食洗機にもかけられ、
高台まで釉薬がかかっているから、
扱いが(裏を乾燥させたりなど)楽ちん。
重なった姿も美しく‥‥と
好きな理由を挙げるとキリがないくらい。

こちらはある日のお昼ごはん。
とうもろこしごはんと、タンドリーチキン、
焼いたズッキーニをプレートの大に盛りました。
ハッと気づくと、すべて黄色の食材。
このさいだからと、
黄色の肉切りナイフにしてみました。
スタイリングって楽しい! 
と思うのはこんな瞬間です。

またある日の友人が来た時の
お茶の時間。
私が作ったプリンに、
友人持参のベリー、
取り皿もすべて鋼正堂! 

何気なく撮った写真を見返すと、
こんな風に我が家に溶け込んでいるんだなぁ‥‥
と感慨深い。
我が家になくてはならない器です。

あのひとのウッドバスケットの使い方 ウー・ウェンさん

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ウー・ウェンさんのプロフィール

ウー・ウェン
北京生まれ。1990年に来日。
母親から受け継いだ小麦粉料理が評判となり、
料理研究家の道へ。
雑誌、新聞、テレビなど幅広く活躍中。
中国に伝わる家庭の味、
シンプルでからだにやさしい家庭料理を、
日本の素材で手軽に作れるようにと
工夫を凝らして紹介している。
1997年から、東京でクッキングサロンを開始。
小麦粉料理、中国家庭料理を中心に指導を行なっている。
家庭では、二人の子どもの母親でもある。

『料理の意味とその手立て』(タブレ)
『本当に大事なことはほんの少し~料理も人生も、
すべてシンプルに考える生活術』(大和書房)

『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)
など、多数の著作をもつ。
『ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』
『ウー・ウェンの炒めもの』
(ともに高橋書店)では、
伊藤まさこさんがスタイリングを手がけている。

●ウー・ウェン クッキングサロン
●Instagram


「『いらないものを入れる』
ゴミ箱えらびって、すごく難しいと思うんです」
とウーさん。

今まで、欲しいものがなかなか見つからず、
やむなく、
四角いプラスティック製の容器を、
ゴミ箱代わりにして、バスルームに置いていたとか。

「木製のものを使った時もあったけれど、
ナチュラルな雰囲気が強くて、
今の家に合わなくなってしまって」

ゴミ箱に関して、
つねにいいものがないか? と
頭を悩ませていたウーさんが、
「私の探していたの、これじゃない?」
とピンときたのが、
weeksdaysのグレーのウッドバスケットだったとか。

晴れてウー家にやってきたウッドバスケット、
まずひとつは玄関に。
コロナになってから、
お客様用のスリッパは使い切りのものにしているそう。
木箱に入れたスリッパの横が定位置です。

端に置かれたスツールと、靴べらはなんと透明。
たしかにここに木のゴミ箱だと、
少し重たい印象になってしまうかも。
ラグマットの色合いともぴったり。

ウッドバスケットは木製ですが、
グレーに色づけされているので、
見た目が軽やかなのです。

もうひとつは、バスルームに。
横にかかっているのは、
weeksdaysのグレーのタオル
そうそう、このタオルも、
「これ!」とピンときたというウーさん。
ハンド、フェイス、バスを
たくさん揃えてくださったのでした。

ウーさんのご自宅の扉は、
ウッドバスケットと同じグレー。
白×グレーがシックな印象。
そして何より潔い。
見ていてとっても気持ちいいのです。

家に置いているゴミ箱は、
キッチン以外にこの2つのみ。
広々としたこの家で、
ご家族に不都合はないですかと尋ねると、
「大丈夫。だって
家の社長は私ですから!」
ですって。

じつは我が家の方針も同じ。
家の中のことは、家の社長が決めるのです!

さて、ウーさん。
ゴミ箱に蓋がないといやだという人もいますが‥‥?

「私は逆に蓋があるといや。
キッチンに置くものと違って、
ゴミを見せないことに違和感があるんです」
と興味深いお言葉。

「だって、見えた方が、ゴミを増やさないでしょう?
ゴミの捨て方のセンスも必要だと思ってるんです。
性格的に隠すのもいやですしね」

ただただぽん、と入れるのではなく、
ゴミを美しく捨てる。

「ゴミに見えないように捨ててもらいたい。
だってその方が気持ちいいでしょう?」

というウーさんの言葉に一同、深いため息‥‥。
ゴミの捨て方にも美学があることに気付かされた、
衝撃の1日なのでした。

お客様の多いウーさんのお宅。
来客時には、ウッドバスケットを
リビングに置くこともあるとか。

「軽いから、移動が楽。
ある程度高さがあるから、
ゴミが見えにくいところもいいですよね。
形に緊張感があるので、
時々、ここに捨ててもいいですか? 
なんて聞くお客様もいるんですよ」

ゴミの量の目安は、
ウッドバスケットの容量の半分以下。
こうすることで、
「美しく捨てる」がかなうとか。
ゴミ捨ての美学、
私も今日から実践します!

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月18日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

鋼正堂 丸プレート(小)

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鋼正堂でまず一番初めに作りたかったのがこのプレート。
私が持っていた北欧の軍ものの
(と買った時にお店の方から説明を受けました)
プラスティックのプレートがベースになっています。
軍ものですから、軽く持ち運びしやすく、
余計なデザインがほどこされておらず‥‥。
お皿の一番プリミティブな形とも言えるのではと、
見るたびにほれぼれしていたものです。
陶芸家の内田鋼一さんに、こういう形で毎日使える
陶器のお皿が欲しいと伝えると、
一言「分かった」と。
すぐにろくろを回して、
原型となる型を作ってくれました。

できあがったプレートは、
一見とてもふつうなのですが、
使うごとに、よさがじわじわと伝わってくる。
料理の引き立て役になってくれるところがいい。
ほどよい重さがあり、手に馴染むところがいい。
こちらに気を使わせない、
繊細すぎないところがいいのです。

使い方は自由。「懐の深い器」ですから、
どんな料理にも合うんです。
(伊藤まさこさん)

鋼正堂 オーバル耐熱皿(大)

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もともと質実剛健な業務用の耐熱皿が好きで、
海外の蚤の市や、
料理のプロが通う道具街で買っては家で使っていました。
ちょっと重いけれど、逆にそれが安心感につながる。
ついた焦げ目をガシガシと洗っても、へこたれない。
しょっちゅう使うものだからこそ
できあがった器や道具には、
なぜその形になったのかの理由があるように思います。

今回ご紹介する、オーバルの耐熱皿2点は、
私が長年使っていたヴィンテージの耐熱皿が
ベースになっています。
どちらも使い込まれて器としての味わいが増し、
それと同時に愛着も増していっている。
鋼正堂のオーバル耐熱皿も、使ってくださるみなさんが
そんな気持ちになるといいなぁと思っています。

白と言ってもいろいろな色合いや質感がありますが、
内田さんが提案したのはおだやかで落ち着いた白。
さくらんぼのクラフティやプリンなどの
見た目も愛らしいデザートから、
ズッキーニやとうもろこしを
まるごと一本のオーブン焼きなんていうシンプルな料理、
またはローストビーフなどのちょっと豪快な肉料理など、
なんでも受け止めてくれるところが気に入っています。

また、耐熱皿としてだけでなく、
「オーバルの形をした器」として使うと
より器としての広がりを感じることができます。
大きな方にはいちごを山盛りにしたり、
葉野菜のサラダを盛ったり。
小さな方には、フムスなどのペーストや
にんじんサラダ、たことオリーブのマリネなど、
ワインに合う料理をちょこちょこ盛ると
楽しげな雰囲気になりますよ。

(伊藤まさこさん)

北の住まい設計社
weeksdays PAS Stool

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「座る」だけでなく、
部屋のすみっこに置いて、小さなサイドテーブル代わりにしたり、
花台として使ったり。
部屋にひとつあると、
とても重宝するスツールです。
今回、お願いしたのは、
東川で35年に渡って家具を作ってこられた、
北のすまい設計社。
従来のデザインにちょっと変化を持たせ、
weeksdays仕様
していただきました。

色はオーク×ナチュラルと、オーク×ブラック。
もふもふしたシートパッドとともにぜひどうぞ。
(伊藤まさこさん)

SAITO WOOD BASKET

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フローリングにも、またカーペットにも。
白い壁にも、
または我が家のような水色の壁にも
しっくりくる色合い。
控えめながらも、
部屋の片隅にあるとなんだかうれしい、
バスケットです。

このバスケットを使いはじめてから、
我が家はゴミのことを
今一度、考えるきっかけができて、
ゴミが減りました。
だって、せっかくの気に入り、
中に入れるものだって
「ぐちゃぐちゃ」はいやですもの。

さてこのバスケット、
その名の通り、中に入れるものはなんでもいいんです。
撥水加工もされているので
(とは言っても、水を直接入れることや、
湿ったものをずっと入れておくのはダメですが)、
お客様用の使い終わったタオルを入れたり、
子どものおもちゃを入れたり、
領収書の一時保管場所にしたりと、
用途はいろいろ。
詳しくは コンテンツをどうぞご覧くださいね。
(伊藤まさこさん)

あのひとのスツールの使い方 関根由美子さん

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関根由美子さんのプロフィール

せきね・ゆみこ
ふだん使いをテーマに、リトアニア産の麻素材で。
シンプルなデザインのキッチンリネンやベッドリネン、
ウエアなど、日々の暮らしに寄り添う布製品と
雑貨を展開する、下北沢「fog linen work」のオーナー。
すべてのアイテムがオリジナル、
関根さんはそのデザインと企画を行なっている。
また、南インドの人たちの日常着「ルンギ」の生地を使って
いろいろな商品を作るべく、あたらしいブランド
「miiThaaii」(ミーターイー)を立ち上げ、
自らが現地への仕入れに赴いている。
下北沢のショップでは
fog linen workとmiiThaaiiのオリジナル製品のほか、
インドのワイヤーバスケットや雑貨類、
世界各国のアクセサリーやインテリア雑貨を販売。

■fog linen workのウェブサイト
■miiThaaiiのウェブサイト
■fog linen workのインスタグラム
■miiThaaiiのインスタグラム
●関根さんと伊藤さんの対談「さがす、えらぶ、つくる。」


私の知り合いの中でも
一番といっていいほど、
ミニマムな暮らしをしている関根さん。

広ーいリビングダイニングには、
大きなダイニングテーブルと椅子が数脚、
隅っこにパソコンなどが置かれたテーブル
(かなりの大きさではあるけれど、
部屋が広々しているので、まったく圧迫感なし!)と、
ソファが点在しています。

「広い」にプラスされて
「天井が高い」というのも、
この空間の魅力。
まるで美術館にいるような、
潔い空気が漂っているのです。

あれ? 
でもついこの前うかがった時は、
たしかソファがなかったような‥‥。

「はい。最近、届いたんです。
前の家に住んでいる時から
ずっと欲しいなと思っていたんですけれど、
念願かなってようやく!」
と関根さん。

ソファの色合いが、
コンクリートの壁と、
関根さんがプロデュースする
miiThaaiiのワンピースに、
ぴったり合っている。
関根さんのことだもの、
吟味に吟味を重ねたんだろうなぁ。

ソファの横に置いたのは、
weeksdaysのスツール。
なんと関根さん、
「いつもスツールを探している」
というほどのスツール好きとか。

「それでも、なかなかいいのがなくって。
インテリアやヴィンテージ家具屋さんをしている、
友人知人に声をかけているのですが、
コロナもあって、あまり入荷してこないんですって」

そんな時に、目に留まったのが
weeksdaysのこのスツール。

「座ることはほとんどないのですが、
お花を置いたり、本を置いたり。
部屋のあちこちに移動して使っています」

仕事机の横に、
庭で剪定したグリーンを。

サイドテーブルを置くほどでもない、
ちょっとした空間作りに、スツールは大活躍。

「軽いから、移動が苦にならないところもいいですね」

そう、そうなんです!
作りはしっかりしているのに、
持った時、手にずしりとこないところが魅力。
「重い」って、時に億劫になってしまいますものね。

「もうひとつ欲しいくらいです!」

いろいろなものを見てきた関根さんに、
そういってもらえると、
なんだか太鼓判を押してもらったような気分。
うれしいなぁ。

ところで、取材中、
関根さんの家のあちこちで、
weeksdaysのものをたくさん発見。

キッチン脇には消火器が。

食器棚には、
オーバル皿が!

「じつは下着も買ってます」
と関根さん。

コンテンツもじっくり読み込んでくださっているよう。
そんなありがたい言葉を聞くと、
張り合いが出るというもの。
取材に伺ったのに、
こちらが元気になった1日でした。

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