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「よろずや」がやりたい。

未分類

菊池
ファッションでもシンプルでストイックなものは
崩したくなっちゃうんですが、
それもあまのじゃくな性格の
あらわれなのかなという気はします。
ベーシックなものがあったら、
そこから自分流に変えちゃおう、みたいな。
伊藤
さっきも撮影で、タートルを折ったら‥‥。
菊池
やっぱり伸ばします、みたいな。
自分の中のイエス、ノーはたぶん結構はっきりしてて、
どっち? って言われたら、絶対、こっち! って言う。
伊藤
帽子のかぶり方にしてもそう。
菊池
こぶし1個ぶんの膨らみをつくって浮かせたくなるとか。
そういうことって、
長年の自分と向き合ってきた結果なので、
みなさん、あると思うんですよ。
すべての人においての正解はたぶんなくて。
伊藤
そうだね!
菊池
自分の中の正解があればいい。
定期的に持ち物を見直したとき、
手放さず残っていく服は、
時間が経っても輝きを失わない服ですよ。
ただ、たとえばアランニットがいくら好きでも、
年齢ゆえ、あの羊毛のちくちくに
私の首が耐えられなくなってきたから、
素材のいい薄手のタートルを
下に仕込んでから着る、みたいなこともあって。
伊藤
知り合いに、コム デ ギャルソンが大好きだけれど、
時に自分には手強い、でも着たいデザインの
服が出ることがあるんですって。
そういうものを欲しくて買っちゃったときは、
一晩一緒に抱えて寝るそうです。
菊池
(笑)匂いをつけるみたいな。
伊藤
そういうのはある? 
自分にとってすぐには馴染まないんだけど、
憧れて、着たい、みたいな。
菊池
バレエシューズがそうかも。
足元が華奢な靴が似合わなくて。
きょうもごっついパラブーツ(Paraboot)です。
伊藤
でもそれがあっこちゃんのバランスとして
定着してるんだよね。
菊池
そうなんですよ。でも、レペット(repetto)の
エナメルシューズも持ってるんです、
ぺたんこのレザーとか。
ところが履かないんです。
1年に1、2回ぐらいトライしようかな、みたいな。
伊藤
その1年に1、2回はどんな日?
菊池
ピンときた日。
今日はいける! みたいな。
あとは、白シャツ。
ずっと憧れがあるけど、似合わないんです。
伊藤
そう言えば、襟がついたものを
あんまり着ていない気が。
菊池
そう。ノーカラーやスタンドカラーですね。
コンサバになっちゃうんですよ。
伊藤
そうかな。ボタンダウンとか似合いそうだけどな。
菊池
そう、好きなんです。
メンズっぽいボタンダウンのシンプルなシャツに
憧れがあるんですけど、
そこがいちばん難しいゾーンかもしれない。
マニッシュでスタンダードベーシックみたいな服。
フレッシュな20代のときはそういうシンプルシャツや
チノパンがいけたんですけど、
40手前になった今が、一番難しい。
でもまたたぶん、着る時がやってくる。
私の母親を見ていると、
そういう格好をよくしてるから。
伊藤
へえー。
菊池
60代になったら、
また似合うようになるかもなと思って、
取ってあるんです。
伊藤
なるほどね、そっか、そうか。
じゃあ、これから仕事で何がしたいかを訊いて、
終わりにしようかな。
やってみたいことは? 今。
菊池
やってみたいことですか。
お店をやりたくて。
伊藤
キラッ! お店、何屋さん?
菊池
商店みたいな(笑)。よろずや、兼、喫茶店。
そういう場所が作りたいという気持ちがあって。
洋服に限らず、まな板とか、
そんなに売上には貢献しないかもしれないけど、
予定調和な感じのものじゃなくて、
本当に欲しいものだけを置いて、
コーヒーも飲める、みたいなお店です。
昨年、「jicca」っていうものづくりの企画で、
バナナニット(胸に立体的なバナナの編み込みのある
ニット)を作ったんですけど、
それは娘がバナナばっかり食べていたのがヒントで。
子供服も作ったんですよ。
そういうものも置きたい。
ひとつのブランドをやり続けます、
商品を出し続けます、っていうのは
自分の中で違うんですよね。
そのときに欲しいものを必要なだけ作りたい。
伊藤
ふむふむ。
菊池
まさこさんが作るものは
いつも守備範囲が広いですね。
今回の「weeksdays」のサロペットは
そういう意味ですごいなと思いました。
すごく、多くの人が似合いそうです。
私はああいうふうに作れないなと思う。
私は自分基準で考えちゃうから、
自分に似合うものが多くの人に似合うとは限らないんです。
伊藤
そうですね、「weeksdays」は広い。
「weeksdays」が似合う人って、
すっごく、いると思うんです。
菊池
そろそろ、自分の持ってるものを愛していかないとなぁ。
私は手が筋張ってることが
ずっとコンプレックスだったんだけれど、
先日、舟越桂先生の作る彫刻に
その筋感が似てるって言われて、
そっか、じゃあ、この筋っぽさも愛していこうって思って。
伊藤
ヘアメイクの草場さんが、
あっこちゃんの手、指の長さを
すごく褒めてたよ、さっき。
菊池
そう。自分で見ると嫌になるんだけど、
そんなふうにどなたかのフィルターを通して見たり、
カメラとか通して見ると、
ここだけでドラマが作れるかも、みたいな。
手元で哀愁があるというか。
伊藤
哀愁‥‥はわからないけど、綺麗だよ。
菊池
いやあ、だからでもプクプクした手の子が好きで、
「すごい、ああ、もう触りたーい」
みたいな感じになりますよ。
伊藤
逆に、そっちの感じの子は、
あっこちゃんみたいなスッとしたい人に憧れるの。
でも自分って、ある程度体重のコントロールはできても、
基本、変えられないものよね。
菊池
そうですね。
伊藤
うまく好きになって折り合いをつけて、年を重ねたい。
菊池
昔、初めて作った本に、
「自分でいることが嬉しくなる」と書いたことを
最近思い出して、なんかほんとそれだなぁと思って。
その服を着たら、自分でいることが嬉しい、
みたいなふうに思える服というのは、
結構あると思いました。
帽子もそうですよね。
伊藤
あるね。わたしは、靴かな。
もうとにかく華奢な靴が大好きで、
歩けない靴ばっかり持ってる。
それを履くのは、
家の前でタクシーを拾って行ける場所だけ。
菊池
履くと痛いけれど、ファッションとしての靴、
それが歩けない靴ですね。
結局私はこの年まで、
歩けない靴で頑張る精神というのを
経験しないで生きてきちゃったけれど。
伊藤
歩かないのでかかとが全然減らない。
そういう靴がいっぱいになるのって、
どうだろうなって思いつつ。
菊池
4歳になる娘が、
ビニールでできたキラキラの靴が好きで、
その靴で毎日登園してるんです。
伊藤
かわいい。
菊池
それを素足で履きたいと言うんですよ。
シンデレラみたいに、って。
でも痛くなるの。
「だから言ったでしょ、痛いから、こっちに替えよう」
って言っても「痛くても我慢するの!」。
‥‥この年でそれを言うかと思って。
伊藤
面白い。どうなるんだろう。
菊池
どうなるんだろう? 
誕生日のリクエストは
キラキラの光る靴だそうです。
私の趣味じゃないんだけれど、
‥‥まさこさんだったら買いますか。
伊藤
買ってあげると思う。
うちの娘は欲しがらなかったけど。
‥‥あっ、我慢してたのかなぁ。
わたしが嫌がるのを察知して(笑)。
菊池
でもお母さんが嬉しそうだから、というのも、
別に悪いことじゃないですよ。
私もそうだったんです。
母がトラッドのものが好きで、
私がその服を着ると
「ああ、やっぱり素敵。まあ素敵」
って言ってくれることが嬉しかった。
それはお母さんにすり寄ってるわけではなくて、
お母さんが嬉しそうにしてるのが好きで、
だからその服も好きになる、
それはわりと自然なことだし、
それがその家で育っていくということだから。
とはいうものの、
やっぱり自分の美学は
ある程度貫かねば、とは思うんだけど。
「だがしかし、このキラキラ靴は」と。
伊藤
うん、うん。
菊池
これはどうかなみたいなジャッジを、
最初から親がしちゃうのもなぁと。
‥‥そうは言いながらも、
私も最近ピンクが好きになってきたし、
光るもののかわいさとか、わからなくはないんです。
同じ花柄でもこれはすごく素敵な花柄だとか。
伊藤
そうだよね。じゃあ買うこと、決定だね。
菊池
そうですね。ああ、なんかね!
伊藤
ふふふ、ありがとうございました。
ああ、楽しかった。
菊池
ありがとうございました。
こちらこそ、です。ほんとうに!

わたしのヲタ活。

未分類

伊藤
‥‥そうだ、「weeksdays」のチームに
あっこちゃんの大ファンがいるんですよ。ね。
──
はい。私は、高校2年生ぐらいのとき、
本屋で『マッシュ』(菊池さんが編集長をした雑誌)の
創刊号を見つけたんです。
そこで初めて菊池亜希子さんのことを知りました。
「しりとりコーデ」にびっくりして。
菊池
しりとり。うん、そうなんです。
──
コーデしたなかから1つだけアイテムをのこして、
次のコーデにいかすんです。
そうやってぜんぶを着回したらゴール。
その着こなしが素敵で、
それこそオーバーオールを合わせたり、
メンズライクもいけるし、
ちょっとガーリーなものもうまくご自身に合わせて。
とても真似できないと思いながら、
でも、ひたすら読み込んでいました。
伊藤
なかなかそっくりは真似できないよね。
──
できないです。
でも、すごく参考にしてました。
『マッシュ』は、
洋服を着ること自体がワクワクすることで、
こんなに楽しいんだ、と教えてくれた雑誌です。
菊池
へえー! 嬉しい! 
伊藤
いい話。
菊池
ありがとうございます。
高校生のときに『マッシュ』を読んだっていう人たちが、
立派に大人になられて、こうして各所で活躍されてて、
ほんと感慨深いです。
伊藤
本といえば、今は、
アイドルの写真集を作ってるんでしょ?
菊池
そう。作ってるんです。
蒼井優ちゃんとふたりで。
伊藤
そうなんだ。
なんていうアイドルなの?
菊池
「アンジュルム」っていうアイドルグループなんですが、
そもそも出る予定のなかった本なんですよ。
メンバーの笠原桃奈さんが卒業するって知って、
マネージャーさんに
「写真集は出る予定あるんですか」って訊いたら、
「ない」って言うから、私と優ちゃんで
「あり得ないよね、あの子が卒業するのに
写真集が出ないなんて!」と、
企画書を出したんです。
2人で直談判。
伊藤
ファンだったのね。
菊池
そうです。大ファン。
伊藤
そんな2人に言われたら、企画も通る。
菊池
といっても、
「予算をこれ以内で収められるのであれば‥‥
内容はお任せします」という感じでした。
それで「やらせてください!」って言って。
だからぜんぶ、やっているんです。
伊藤
ぜんぶ。
菊池
ぜんぶです。どんなふうに撮るか企画を立て、
アートディレクターを大島依提亜さん、
写真を高橋ヨーコさん、
ヘアメイクを茅根裕己さんにお願いして。
伊藤
洋服のスタイリングは?
菊池
スタイリストさんにお願いする予算はなかったから、
私と優ちゃんの私服をかき集めて
スタイリングを組みました。
伊藤
スタジオで?
菊池
いえ、ロケなんです。
主に鎌倉、葉山、逗子で撮影しました。
撮影をしたら、写真選びをして、
編集して、入稿して、校正して、
そして校了・発売がもうすぐです(*)。
苦手だけど、お金のやりくりも
頭ひねって考えています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(*)菊池亜希子さん、蒼井優さんがダブル編集長をつとめる「アンジュルム」の笠原桃奈さんのフォトブック『Dear sister』は、オデッセー出版より、笠原さんが卒業した11月15日に発売されました。
ちなみに菊池さん、蒼井さんは2019年に『アンジュルムック』(集英社)という本の編集も担当しています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

伊藤
すごい。
そういうあっこちゃんの活動は、
マネージャーさんとしては
どういうふうな位置づけなんですか。
──
完全に治外法権です。会社の中で。
伊藤
そうなんだ!
菊池
ほんとに。
私と優ちゃんがヲタ活で
大暴れしてるようなものです。
伊藤
大暴れ! もしかして‥‥ノーギャラ?
菊池
製作費の中にギャラも含まれているので、
やりたいことをやればやるほど、
ギャラは減っていく方式です(笑)。
でも、彼女の魅力が伝わるいい本が作りたい
という気持ちが第一だったので、
それは全く問題なかったです。
伊藤
本当に好きなものを形にするって、
わかる人にはちゃんとわかりますよ。
伝わってほしい人のところには、
本当のことが伝わると思う。
それが一番ですよ、
本当にやりたいことをやるに尽きる。
あっこちゃんは
いろいろな仕事をなさっていると思うけれど、
その仕事の選び方はどうですか? 
やりたい、やりたくないで決める?
菊池
そうです。
伊藤
じゃあマネージャーさん的には、
「これ断るの?」みたいなこともある? 
──
いえ、客観的な判断をしていると思います。
もちろん自分が好きということはあるでしょうけれど。
伊藤
そもそも「これは違う」という仕事は来なさそう。
菊池
それはそうですね。納得! みたいなところで
声をかけてくださいますね。
──
菊池のことが好きだという方が、
仕事の依頼をしてくださることが多いので、
すごく恵まれているのかもしれません。
相思相愛で仕事をしているイメージがありますね。
伊藤
なるほど。いいですね。
モデルの仕事と女優の仕事って、
自分のなかで住み分けはあるんですか。
私たちから見るとまったく違う種類の仕事のように
思えてしまうんですけれど。
菊池
いや、そんなに深いことを考えているわけではないです。
でも昔よりも、だんだんその住み分けは
なくなってきてるような気はします。
完全に裏方の仕事と、
お芝居の仕事とではラインがあるけれど、
表に出るときは、モデルとしてでも、
役者としてでも、そんなに意識は変わりません。
ディレクションをする人がいて、
その人に呼ばれて出るときに、
何で呼んでもらったのか、
こっちかな、こっちかなみたいに
なんとなく察知するみたいなところはあるんですが、
それが器用にでき過ぎる自分は、
最近、嫌だなと思っていて。
伊藤
それは、どうして?
菊池
予定調和になるのがもともと嫌いだし、
必要なものを手のうちに全て持っていて、
その中から「はい、これね」って出せちゃう、
監督の意図をさっと理解してすぐにできる、というのは、
すごくプロフェッショナルだなと思うけれど。
逆に言うと「それしかない」ってことになるのかも、と。
伊藤
経験が重なると、できるようになっちゃうんでしょうね。
菊池
それじゃちょっと面白くないかも、って。
予測できない方がきっと面白いな、
と自分は思います。
伊藤
そっか。例えば取材を受けるのでも、
その編集部の考えとして、
「ここに落とし込みましょう」という意図が
見えてしまうと、話していて面白くない。
それと同じかもしれない。
菊池
うん、ある、ある!
伊藤
あれ、嫌だよね。
菊池
そう。ゴールはここですよね、ってなっちゃうと、
方向転換したくなっちゃう。
あまのじゃくだから。
伊藤
わたしだと「ていねいな暮らしをしている人」
というまとめで、くくられることが多かった。
数年前まで、そういう依頼が多くて。
「全然そんなことありませんけど」
って言ってました。
菊池
「サッポロ一番、食べますけど?」みたいな。
伊藤
そうそう! すると、ガックリされたりもして‥‥。
いろんな話の引き出しから、
そこが面白い、って広げていくのが面白いのに。
そうじゃないと、結局全部同じになっちゃう。
菊池
フォーマットを作った方が、ラクなのかな。
でも人間味に欠けますよね。
予定調和を嫌うのもたぶん同じ気持ちです。

寝かせておこう。

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伊藤
年齢の曲がり角って、ほんとうにあって、
38、9とかで「おや?」みたいな時が来るの。
これも似合わない、あれも似合わない、みたいな。
わたしはそれがあったから。
菊池
今、ほんとうに、まさに今、
クローゼットを整理していて!
伊藤
「おや?」と思うことが。
菊池
あります、あります。
かわいい感じのワンピースが似合わなくなってきて。
丈の感じとか、流行もあるのかもしれないけれど、
かといってシンプルなパンツにタートルだけ、
みたいなストイックな格好も、
なんか足りないっていう気もしていて。
伊藤
かっこよくなり過ぎるんじゃない? 
体型もスーッとしてて。
モードっぽくなるから、
それが自身で落ち着かないのかな。
菊池
たぶん洋服が好きだからだと思うんです。
ベーシックなのをサラッと着るのが
かっこいいと思う自分と、
もう自分しかこれを好きじゃないだろうなみたいな、
すごくニッチなものを愛していたい自分もいる。
せめぎ合いなんです、今まさに。
でも、今は着れないけれど、
あと15年ぐらい経ったら、
逆に似合って来る、みたいな気がするものは、
寝かせておこう、みたいな。
伊藤
先日、パリに住んでいる「チャコさん」という
私のオシャレの師匠と呼んでいる
すごく素敵な人と会ったんだけれど、
似合わないっていう時期があっても、
寝かしとくっておっしゃってました。
そういうのを「自分ヴィンテージ」って
呼んでいるんですって。
菊池
自分ヴィンテージ。
──
それって、流行が変わったから、
という外的な要因じゃなくて、
自分との関係だけにおいて
「似合わない」と思うんですか。
菊池
うん、そうです。
伊藤
そうなの。
──
つまり人は似合うと言うかもしれないけれど、
自分は違う、って思っちゃうってことですね。
菊池
そう、ものとしても好きだけど、
どうしても今しっくりこない。
でもきっとまた似合う時期が来る。
伊藤
私、以前、バーバリーのコートで、
肩がピタッとしたタイプを買ったのね、
それを去年着たら「おや?」みたいな。
すごい古臭く感じちゃって。
菊池
今、まわりがちょっとオーバーサイズだから。
伊藤
そう。それで去年weeksdaysでも
ちょっとオーバーサイズのトレンチを出したんです。
で、バーバリーはお直しかなあ、と思ったら、
デザイナーの友達が「絶対直さない方がいいよ」って。
「取っとけば? いいものだし。
いつかまた巡ってくるから」。
それで「わかりました」って。
でもそんなことしていると、
どんどん増えちゃうじゃない? 服が。
菊池
そうなんですよね。
あるいは、自分じゃなくても、
娘がティーンになったときに着たら
かわいいかもみたいな服もあるんです。
古着の膝丈の花柄ワンピースとか、
「自分はさすがに、これは」みたいなもの。
伊藤
それが、なかなかどうして!
菊池
‥‥着てくれない?
伊藤
これ着ればいいのにと思うものを、娘は全然着ないのよ。
ただ、私が高校生のときに父親が買ってくれた
バーバリーのカシミヤのマフラーは、唯一、気に入ってる。
菊池
ああー。でも絶対にお母さんのクローゼットを
あさる時期が来る気がする。
伊藤
来るかなぁ。
去年とかまでは
「ちょっと貸して」とか言ってたけど、
最近‥‥。
菊池
私は、10代後半ぐらいのときはよく着てた記憶があるな。
伊藤
最近は「これ、韓国の服なの、かわいいでしょう。
1,800円だったの!」みたいな。
菊池
それはもう、そういう時期だと思う。
伊藤
そうなんだ。
菊池
30ぐらいになって、
お母さんがいつか着てほしいと取っててくれたものを
「ありがとう」って着る時期が、絶対、来ますよ。
伊藤
そうなればいいんだけど。
菊池
来ると思う。
韓国の服はどこで買うんですか。
通販かな。
伊藤
そう、通販。
あっこちゃんは、どうしてた?
菊池
私は岐阜から名古屋の街に出て、
古着屋さんを回っていました。
子供の頃は、お小遣いに限度があるでしょう、
そのなかで服を買うのに、
一往復して、最初は買わず、まず喫茶店に行って、
欲しいものを全部紙に書いて計画するんです。
そして、これとこれとこれだなって、
もう一回行ってそのセットを買う。
そういうやり繰り、すごくしてましたよ。
伊藤
かわいい。
そうだよね。
わたしも古着を探して着ていたかなぁ。
菊池
上京してからは、代官山から原宿まで歩いて
古着を探してました。
伊藤
古着も、もうね、
自分が古くなってるから、
絶対着れない‥‥。
菊池
自分が古く(笑)。それ、どうなんだろう。
伊藤
娘の世代はフレッシュだからバランスが取れるのよ。
そういう意味でも、質のいいものを着て、
バランスを取らないと。
リネンにもアイロンをかけないと。
菊池
取材先で、私の穿いてたリネンのズボンの
シワが気になった先方のかたが、見かねて、
「アイロン、かけてあげるから」って(笑)。
年長の方だったんですが、
「ちゃんと綺麗な状態で着た方がいいよ」。
その感覚は、その時の自分には、なかったんです。
伊藤
あっこちゃんなら、
リネンのシワもかっこいいけど、
そういう日が来るのかな。
菊池
古着がダメになる日が! 
今、古着も好きで着ているんですよ。
伊藤
うん、そのままずっといきそう。
菊池
ただ、古着に限らず、
自分に似合わない、
色や形がしっくりこない、
顔色がさえない、ということは絶対にあって。
伊藤
顔色がさえない!
菊池
服の色で。
伊藤
なんでも着こなすイメージだけれど、
似合わない色もあるのね。
菊池
そうですね、エンジ色とか。
ピンクでも、このピンクはいけるけど、
このピンクは危険! っていうことも。
それは経験上、だいたいわかっているんです。
友達と洋服を見に行って、
「絶対似合うよ」って言われても、
「それは絶対に無理!」ってジャッジができる。
伊藤
職業柄、自分を客観的に見る機会が多いし、
服を着る機会、種類も人より多いしね。
菊池
仕事じゃなくても、買物が好きだから、
ちょっと暇があるとお洋服を見ますし。
そういう時はかならず試着をしますね。
「とりあえず着てみよう」と。
最近の若い子たちは、
通販でサイズ違いを買って、
合わなかった方を返す、
みたいな買い方をしてるらしいけれど。
伊藤
ありがたいことに「weeksdays」のお客さまは、
そういうことはなさらないんですよ。
「weeksdays」を立ち上げるときも、
最初に、かなり考えたんです。
試着ができない、というのがECの前提なので、
そこをどうやって補おうかと。
それで、読みものを充実させて、
商品のことを丁寧に説明することにしました。
わたしがそれを好きな理由を書いたり、
モデルのかた以外にも、いろんな人に着てもらって、
そのようすをレポートしたり、
つくった人に話をきいたり。
コロナでたいへんだった、
買物したくても外出ができなかった時期は、
このやりかたでよかったなって思いました。
菊池
そうですよね。

大人って。

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伊藤
あっこちゃん、撮影に参加してくださって
ありがとうございました。
帽子のいろいろなかぶり方も一緒に考えてくださって。
帽子をかぶる前提で前髪を短くしてるって、ほんとう?
菊池
そうなんです。帽子が好きで、
かぶってちょうどいいぐらいに、
ぱっつん、と切っています。
「ちょっと切り過ぎましたね」って
マネージャーに言われちゃうんですけど、
かぶると前髪の位置がちょっと下がるんですよ。
だからかぶってちょうどいいぐらいの位置にくる前提で
切ってもらっているんです。
伊藤
いつもキャップの印象があるな。
菊池
そうですね、このごろ、キャップが多いですね。
とくに、髪の毛を長くしてから、よくかぶるようになって。
伊藤
うしろでまとめて、
サイズ調整のアジャスターのところの
半月型のすきまから髪を出すのね。
帽子をかぶるために全体のバランスを考えてるし、
髪型も、今日はヘアメイクの
草場妙子さんがいてくれたから、
一緒に考えてくださったりして、
すごくいろんなバリエーションが撮れて面白かった! 
帽子はずっと前から好きだったの?
菊池
もともと頭とか足元に
ボリュームがあるのが好きでした。
背が高いから、なにもないと、
バランスが寂しくなるっていうか。
オリーブ(Olive Oyl)みたいなバランスが好きなんです。
伊藤
ポパイのガールフレンドの!
菊池
あの髪形、いいですよね。
わたしの場合、頭と足元にボリュームを足すと、
トータルでバランスがよく見えるんです。
そういうバランスをいつも研究してて。
だから帽子も、どっちかと言うと、
ボリュームがある帽子が好きですね。
でも、そのときは、髪をタイトにする。
全体でのバランスですね。
伊藤
出かけるときに、全部上から下まで着て、
引いた目で見たりとかしてる?
菊池
はい、引いて見る、けれども、
長年の好きなバランスっていうのは
だいたい固定されていますね。
だから今日みたいに草場さんが
「下ろしてみるのもかわいいかも」と言ってくださったり、
スタイリストのかたが、ふだん履かないような
華奢なフラットシューズを合わせてくださると、
「ああ、これもかわいいな」みたいな。
自分のいいなと思うバランスって
どうしても凝り固まっちゃうから、
時々そうやって第三者の目で言われるのっていいですよね。
‥‥いい職業だなって思う!
伊藤
あっこちゃんの場合、着せる側もすごく嬉しいと思うな。
今日も、ほんとうに、かわいかった。
サロペットは、私服でも穿いているけれど、
それも全体のバランス的なところから選んでいるの?
菊池
そう、サロペット自体に重みがあって、
ボリュームが出るものが好きで、いろいろ持ってます。
weeksdaysのリネンのも。
伊藤
わあ、ありがとう。
サロペットってそんなに世の中にあるんだね。
菊池
あります、あります。
でもブランドの方に聞くと、
そんなにたくさんは売れないみたいです。
多くの人が着やすいものではないから。
だからたぶん、今日着せてもらった生地感
(ベロア)のものは、
大人っぽくてちょうどいいんだと思う。
伊藤
なるほど。
菊池
サロペットって、子供っぽく幼くなっちゃうか、
ファームっぽいというか、本気な印象になっちゃうか。
伊藤
パンツ部分もズドーンとしてなくて、
スッとしてると、印象が変わるし。
菊池
大きく見え過ぎなくていいのかもしれないですね。
このサロペットは、
生地がちょっと大人っぽいニュアンスだから、
古着と合わせてもいいかもしれない。
わりとなんでも合いそうですよね。
伊藤
古着も好き?
菊池
古着の、すごくベーシックな格好も好きです。
でもこのサロペットだったら、
細かな刺繡がほどこしてあるブラウスとか、
鍵編み針でどこかのおばあさんが編んだような
セーターとか、そういうデザインの細かいものを
中に着てもいいんじゃないかな。
オーバーオールやサロペットって、
「ちょっと too much かな?」みたいなデザインを、
丸く収めてくれるんですよ。
古着でちょっと変わった質感で、
うまく着こなせるかな? みたいなものも、
サロペットやオーバーオールを上に着ちゃうと、
私の中ではすごく馴染むというか、
わりと自分のものにできる気がしますね。
伊藤
そうなんだ。
でもあっこちゃん、今39でしょう。
来年は、まさかの・・・・。
菊池
うん。40。
伊藤
同じ戌年なの。
そのくらいの年齢になると、カシミヤとか
上質のもの、をというけれど。
菊池
はい、大人のたしなみとして、
じゃなく、体でわかってきました。
それまでは、雑誌に
「大人は、肌に触れるものに、上質な、いいものを」
と書かれているのを、
「あら、そう、へえー?」
みたいな感じで見ていたんですよ。
ピンと来てなかった。
伊藤
ほんとにそう。
菊池
それが、身をもってわかったんですよ。
一昨年ぐらいから、
肌着はシルクがカサカサしなくていいな、
やっぱりいいものなんだ、って。
いっぽうで、
「ああ、お金がかかるなぁ、大人って」
とも思ったんですけれど。
伊藤
そうそう、そうなの。
菊池
もう背に腹は代えられない。
素材、大事です。
伊藤
そう、素材は大事なんです。
今回のサロペットは、「weeksdays」では珍しくて、
わたしが着たいもの、ほしいもの、というよりも、
「これを着ている人、かわいいな」と思って、
誰かに紹介したいみたいな気持ちなんです。
「t.yamai paris」というブランドなんですが、
その主宰のひとりである山井自子さん、
ずっとパリにいた方で、
わたしより年上なんですけれど、
彼女は、似合うんです、サロペット。
私が躊躇してしまう柄物なども着こなされていて、
そんな山井さんを見ていると
「大人のサロペット、いいな!」と、元気が出ます。
わたしはずっと着ていなかったんだけれど。
菊池
1枚で完結するし、要素が少ないから、
大人っぽく持っていきやすいんですよ。
靴とかで。
伊藤
そうなんですよ。
胸当てがあるとね、途端に
「わたし、着られるかな?」と。
菊池
胸当て(笑)。
着ているイメージが湧くといいんですよね。
つまり、ゴール、完成形が見えれば、
まさこさんも躊躇なく着られると思うんです。
靴で大人っぽさを出すのもいいですよ、
たとえばまさこさんがいつも履いてるような
エナメルのパンプス、甲が見えるような。
伊藤
そっか!
菊池
私みたいなスニーカーじゃなくてね。
私も、最近、ほんとにそういう、
浅いパンプスって使えるなと思っているんです。
フラットシューズで足の甲が見えるだけで
「抜け」ができるし、「作業着」ぽくならない。
伊藤
そうなの。作業着になるのが恐ろしい。
菊池
自分の中ではすっごいかわいいと思って買った
オールインワンを久しぶりに着て友達に会ったら、
「あ、おばちゃーん、お仕事お疲れ~」
みたいに言うんです。
冗談だと思うんだけれど。
伊藤
ほんとにそう見えてたら言えないはずだから、
絶対に冗談ですよ!
菊池
ギャグだといいんですけど(笑)。
でもそう言われて、自分としてはかわいいと思っていても、
そう言わせる何かがあるのだと気づいたら、
着るのをためらっちゃうだろうなと。
たしかにちょっと本気のワークウェアすぎたかも?
伊藤
ワークウェアぽいとね。そうか、そうか。
菊池
私はオールインワンやサロペットって、
常に研究をしているんですよ。
本格的なワークの生地は好きだから、
それを女子が着て、
いい感じに見えるラインがないかなって。
ワークぽくなり過ぎず、
かといって、レディ過ぎない、
いい塩梅ってどこなんだろうと。
そういうのを見つけると買って研究です。
伊藤
研究!
菊池
オールインワンやサロペットって、
着る人は着る、着ない人は絶対着ないから、
ほんとに好きな人に向けての研究ですね。
自分が洋服好きだから、まずは自分が実験台になって。
伊藤
その研究の成果は?
菊池
まだゴールは出てなくて。
伊藤
髪型だけじゃなくてメイクも研究したり? 
普段あんまりしてないと思うけど。
菊池
メイクはほんとに苦手なんです。
マスカラだけちょっと色を、みたいな。
伊藤
今日も、ファンデーション、
ほとんど塗ってないよね。
菊池
それも「ファンデーション塗ってません」という人に
憧れているわけでは全然なくって、
塗れるものなら、サラッとうまく塗りたいんです。
塗りたいんだけど。
伊藤
塗らなくていいんだから、いいんじゃない?
菊池
塗らないでいいなんてことはないと思うんです!
でも、なりたいイメージや好きな質感を
草場さんに相談していると、
「結局要らないね」という話になっちゃって。
伊藤
なるほどねぇ。
でも年長の友人から言います。
「これから変わるかもしれないよ」。
菊池
大人のたしなみ!

菊池亜希子さんに着てもらう冬の服

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ちょっとだけ冒険するアイテムを。

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秋冬の買いものもそろそろひと段落。
みなさん、おしゃれを楽しんでいる頃ではないでしょうか?

私はというと、
今年えらんだものは、
ベーシックなものがほとんど。

でもその中にほんの少し、
冒険アイテムを入れて、
着こなしの幅を広げようと思っています。

‥‥とはいっても、
もういい大人なので冒険は控えめに。

今まで挑戦してこなかったアイテムも、
黒だったらいけるかな‥‥とえらんだのは、
ベロアのサロペットや
ちょっともこもこっとした冬の帽子。
かわいくなりすぎぬよう、
モノトーンでまとめようか、
いやいやそれとも明るめの色を足してみようか?
なーんて思いを巡らせています。

今回、モデルをお願いしたのは、
菊池亜希子さん。
着た瞬間から、まるで前から持っていたの? 
と思ってしまうくらいお似合いでした。

コンテンツは、
そんなあっこちゃんとのおしゃれトーク。
どうぞお楽しみに。

偉大なる先輩たちの教え。

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伊藤
ときには、ちょっと着心地は悪いけど、
これを着ていると気分が上がる、
みたいなスタイルをすることって、
チャコさんはありますか。
鈴木
着心地悪くても気分が上がる、といえば‥‥、
冬の寒い日の、重いコートとかのこと?
伊藤
そうそう!
鈴木
たしかに昔は重いコートを着ましたね。
でも、だんだん着なくなってきました。
パリではすごい歩くし、
パーソナルコンピュータを持って行く日もあって、
バッグの中身もいっぱいなこともある。
そんなふうに荷物が重い上に、
冬、コートまで重いと、絶望的な気分になっちゃう。
伊藤
わたしも、「重い」ということが、
自分にとってこんなに大変なことなのかと、
ごく最近わかってきました。
鈴木
だからコートは身軽にしていますね。
でも、寒いからって、うんと軽いダウンだけ、
っていうのも嫌なんです(笑)。
だったら、何枚か重ねて防寒する。
伊藤
ダウンは、たしかに、軽いし、温かくって、
冬のアウターの条件を満たしているけれど、
おしゃれを考えると「違う」こともありますね。
鈴木
そこ(機能)だけに頼っていると、
自分がご機嫌になれなくなっちゃうから。
伊藤
それでもわたしは「今日は人とは会わないし」
みたいな日には、ちょっと手を抜いちゃう。
でも、チャコさんって、そんな日であっても、
いろいろ組み合わせて、楽しそうにしてるように思います。
鈴木
あら、そんなに楽しそうに見える(笑)?
伊藤
はい。それがご機嫌でいる秘訣なのかな。
鈴木
うん、そうかもしれない。
だって、些細なことじゃないですか、
どうおしゃれをするかって。
そういう日は、
肌触りがよく、ベーシックなものを
好んで着ていますね。
でもいつも同じにならないように、
シャツ一枚だとしても、
今日はちょっとボタンを開けてデコルテを見せ、
ネックレスをしてみようとか、
髪にリボンを巻いてみるとか、
袖をめくってみるとか。
そんなちょっとしたことで
イメージが変わるでしょ? 
ささやかなるおしゃれ、ですよ(笑)。
伊藤
印象的だったのが、
オリビエさん(チャコさんの夫)から借りた
大きな赤いカーディガンを羽織っている姿です。
すっごく、かわいくて!
鈴木
雑誌の『LEE DAYS』に掲載されたものですね。
伊藤
オリビエさんは、
チャコさんのおしゃれのことを
なんておっしゃるんですか。
「かわいい」とか、「すごい似合ってる」とか、
褒めてくれますか。
鈴木
うん。褒める。
伊藤
やっぱり、パートナーの言葉、大事ですよね。
鈴木
そうですね。
上手ですよね、ただ褒めるのではなくて、
本当に思ったときだけ「素敵だね」と言う。
必要以上にベタベタ褒めてばっかりだと、
言葉が軽くて、真摯に聞こえてこないでしょう。
自分も相手も、夫婦だけじゃなく、
人間関係、ぜんぶそうですよね。
伊藤
パリは、歩いていても、
知らない人が褒めてくれたりしますよね。
鈴木
すれ違いざまに、全然知らない人が、
「素敵ね」って言ってくれたりしますよね、
「それ、どこで買ったの?」とか。
伊藤
そうそう(笑)!
鈴木
そういうのがいいなあと思って。
パリに限らないですよ。
ロンドンで地下鉄に乗ってたときに、
私の隣にいた女性が、わざわざ立って、
正面に座ってた女の子に向かって、
「そのペディキュア、すっごくきれいな色なんだけど、
どこの何番?」みたいに聞いていました。
みんな、素敵と思うものには容赦なく切り込む。
伊藤
言われてもうれしいし。
鈴木
そう、言われたら、すごく、うれしいですよね。
それで相手の情報になり、
自分のニコニコ度も上がるんだから、
相乗効果になってる。
伊藤
それはいいな。
褒めるのっていいですよ。
娘が本屋さんでバイトしてるんですけど、
お客さんに褒めてもらったって。
おばあちゃんが、娘の指をみて、
「あなた、手がきれいね。ずっと見ちゃうわ」って(笑)。
鈴木
ああ、いい!
伊藤
やっぱり褒められるはうれしいもの。
きょうも撮影中、にぎやかでしたね。
みんなで褒め合って「かわいい!」って。
チャコさんのおしゃれって、
20年前から、変わってない気がするんですよね。
鈴木
本当ですか。
伊藤
つまり、好きなものが変わっていない気が。
鈴木
そうですね、それはそう。
伊藤
自分ヴィンテージとおっしゃる
バレンシアガのスカートにしても、
膝丈くらいだけれど
若い頃とちがうからもう着ない、
とかいうんじゃなくて‥‥。
鈴木
着る(笑)。
伊藤
年に関係なく似合ってるから。
ああ、チャコさんのお宅にお邪魔して、
クローゼットに何が残ったか、
自分ヴィンテージ、ぜんぶ知りたい!
鈴木
パリに、皆さんで来てください(笑)。
来年になったら、少し動けるのかな。
どうなんでしょうね。
伊藤
行きたいです。
ずっと大好きなパリを、
いまの年齢の自分が
久しぶりに訪ねたらどう感じるか。
若い頃ほど、あれもこれもって
買い物もしなさそうだし。
そのときは、また、チャコさんに
コーディネートをおねがいします。
2006年に出版した
『ボンジュール パリのまち』
取材のときのように。
鈴木
ぜひ!
こんどは、大人になった娘さんと一緒にね。
伊藤
ありがとうございます! 
みんなからもチャコさんに質問はある? 
せっかくの機会だから。
──
チャコさんはずっと
ハイブランドの服を着こなされてきた、
というイメージがあるんですが、
いま、ハイブランドとは、
どんなふうなつきあいかたをされていますか。
鈴木
もう最近は全然、ハイブランドだから、
という興味は、もたなくなりましたね。
どこってわかるようなものを持ちたいとは思わなくなった。
いまは、むしろ、
ブランドが見えない方が素敵だなと思う。
たとえば、フランスでずっと昔から作っている
工場のニットを応援したいとか、
そういう気持ちのほうが強くなりました。
ハイブランドの製品は、そのブランド力ゆえに、
同じ質のものが高くなりますよね。
だったら、あえてブランドじゃないものを選びたい。
これは、フランスに住んで思うようになったことで、
わたしのまわりのフランス人のなかには、
「どこのブランドか、わからないようにしたい」
とまで言う人もいます。
冷静に考えると、ハイブランドの製品のなかには、
お値段とクオリティのバランスについて、
ちょっとハテナと思うものがありますね。
でもね、昔買ったものハイブランドの服で、
ベーシックなものは着ています。
やっぱり飽きずに着ていられるから。
だから、ハイブランドは否定、ということじゃなく、
ファストファッションで10枚買って500ユーロなら、
1着500ユーロでも、
いいものを買った方がいいと思いますよ。
その感覚も、やっぱり、パリに住んで、
パリの方に教えてもらったことですね。
伊藤
そうですよね。
鈴木
「本当にいいものを持ちなさい、
私は祖母からそう言われてきたの」と、
マリー=フランス・コーエン
(Marie-France Cohen)さんも言っています。
彼女はこども服「ボンポワン(Bonpoint)」の設立者で、
パリにおしゃれと暮らしのコンセプトショップ
「メルシー(Merci)」作った方。
いま、70代半ばだと思うんですが、
そんなふうに、本当に普通で素敵な言葉を言う人が
フランスにはいっぱいいるんですよね。
生きていく上で聞けるそういう言葉って、
もう宝石のようなものですよ。
すごく、楽になっていくんです。
「そうか、誰かと同じじゃなくていいんだ」とか、
「誰かが持ってて、私は持ってない、
でも私はこっちが好きなんだもん」って、
ちゃんと言える人になる、ということも、
そんな人たちから教わりました。
伊藤
うん、うん。
鈴木
「あなたがあなたでいること、それが素敵なんですよ」、
それは、30年住んで、
フランスの人たちが教えてくれたことです。
一同
へえーっ(拍手)!
鈴木
いやだ、なんで拍手。
伊藤
ああ、染みるーっ。
でも、本当にそうですよ!
「これを着たらおしゃれは正解」
なんて、ないですからね。
鈴木
うん。そう思います。
こういうことが、ちょっとでも、
みんなへのエールになればいいなと思います。
そういえば、この間、3月に60歳になったときに、
まさこさんが送ってくださった
「weeksdays」の朱赤のワンピースを着ましたよ。
それが評判よくって!
伊藤
かわいかった! 
朱赤も似合いますよね。
鈴木
「どこのですか」って、みんなに聞かれて、
「これはね」って説明するのがうれしいじゃない? 
すぐに「あ、どこそこの」ってわかっちゃうより。
伊藤
そんな存在になれるように
「weeksdays」、頑張ります!
ほんとうに、今日はありがとうございました。
鈴木
いえいえ、こちらこそありがとうございました。

自分ヴィンテージ。

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鈴木
フランスの人は、ちょっと見栄っ張りだから、
裏では、ラフに見せたがったりもしますね。
実はすごい努力や計算をしてるのに。
伊藤
チャコさんに書いていただいた
「おとなの水着事情。」
そんなエピソードがありましたね! 
もう全然いつでも食べてるのよ、みたいな感じで、
実は、すごく糖質制限をしているとか。
鈴木
そう、ウィークデイはアルコールを抜くとか。
伊藤
それを聞いて、すごくホッとしたんです。
フランスの女性たち、
あんなにおいしそうなものを食べていて、
なんで太らないの? って思っていたから。
何もしないのにキレイが保てるなんて‥‥って、
ちょっとやきもち(笑)。
でも努力をしているんですね。
鈴木
そういう魔法はないってことですよ。
伊藤
マダムになればなるほど
代謝も悪くなってくるはずだもの。
鈴木
そうですよね。
でも、私の大好きな、
ソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)っていう
ジャーナリストの方がいて、
その人もフォロワーがすごいんだけれど。
伊藤
へえ。
鈴木
彼女は50代後半かな、
つい最近の『ELLE』の表紙
ヌードで飾ったんです。
胸をロゴで隠したりして、
見えないようにはしているけれど。
伊藤
へえーっ。
鈴木
彼女は言うんです、
「年齢を重ねていって、古びていく肌の方が
あたたかくて優しくなるから素敵だ」って。
本当にそうだなと思って。
伊藤
うんうん。
鈴木
それでも、年を取ることは怖くないですよと。
フランスって、年齢を重ねるのに楽だな。
本当に生きていくのが楽(笑)。
伊藤
それにひきかえ、わたしたちのこの抗い! 
もちろん自分を大切にしてあげるのはいいんだけど、
鈴木
うんうん、うんうん。
伊藤
以前、ジュエリーを対面販売したことがあるんですが、
70近いおばさまがいらして、
大粒のルビーを「あ、いいわね」と指につけられたんです。
とうぜん、年を重ねた女性の手で、
しわもあるし、しみもある。
けれどもその手に、
大きめのルビーが、ピッタリ合って! 
その後に、若い女の子が、キャッキャッと、
「かわいい」って言ってくれたんだけれど、
もちろん似合うけれど、
あなたたちは何も付けなくても大丈夫よ、と。
鈴木
たしかに、たしかに。
大きなルビーは、しわがあって、しみも、
血管も出ているような手にこそ、合いますよね。
伊藤
うん、合う。
しみ取りをすることよりもね、
自分に似合う服を着ているとか、
そういうことで人は素敵に見えているんですよ。
おしゃれな人っていうのは、結局のところ、
どのブランドの何を着ている、じゃない。
サイズ感、自分の肌との相性、TPO、
それがわかっている人なんです。
スウェット一枚でも格好いい人はいるけれど、
それを自分がマネしてもダメ。
思い出しますよ、いまから17年前、
初めてチャコさんに会ったとき、
穿いていらしたあのスカート。
本当にかわいくて!
鈴木
(笑)バレンシアガ(BALENCIAGA)のね。
伊藤
そう! すっごいかわいいスカートで、
「え、なぁに、この人!」と思ったんです。
パリでロケの仕事だったんですけれど、
借りているバスの運転手さんへの接し方ひとつとっても、
本当にチャーミングで。
それで、この前、インスタで、
あのスカートを穿いていて!
鈴木
そうそう(笑)。
ずっと大切にしてる「自分ヴィンテージ」です。
持っているうちにヴィンテージになっちゃった。
こういう、自分ヴィンテージなものって、
入れ替えはそんなにないんです。
伊藤
でも、新しいものも買うでしょう? 
お買い物、お好きですよね。
鈴木
好きですよ。この2年間、
お店が開いてなかったから、
いま、うれしくて。
私、ネットでポチッとお買い物するのが
あんまり得意ではなくって。
信頼していて、サイズ感がわかっていれば、
まだ、いいんですけれど、
やっぱり服は触れて、
着てみたいという気持ちも強くって。
だから2年間、服を全然買っていなかった。
そうこうしてるうちに、引っ越しもあるからと
断捨離していたら、
「あ、こんなのもあった、こんなのもあった」って。
伊藤
それが「自分ヴィンテージ」の発見に? 
それにしても、チャコさん、
どうやって整理してるんですか、
その膨大な服や靴やバッグを。
鈴木
いやいや、もうね、整理できないから、あげたの。
お友達、若いお嬢さん、
たとえば私の同世代のお友達の娘さんに、
「好きなのあったら持ってって」って。
そう声をかけたら、22、3歳の
かわいいおしゃれな子たちが来てくれて、
「かわいい」って持って行ってくれました。
伊藤
わぁ、みなさん、ラッキーですね!
鈴木
若くてかわいいお嬢さんが着たら、
服も喜ぶし、靴もうれしいし。
それでも残ってしまったものは、
「エマウス」(Emmaüs alternatives)っていう
慈善団体があるんですけど、そこに寄付しています。
エマウスはピエール神父(Abbé Pierre)っていう方が
始めた慈善事業で、
社会的に困難な状況にある人を雇い、
寄付された衣料や日用品を販売して、
その売上を全部、貧しい方の住まいや食べること、
暮らすことのために使われる、
っていうものなんです。
エマウスの支部はフランスにいっぱいあって、
わたしも寄付するものをせっせと蟻のように運びました。
「エマウス」の人から、
「あら、今日は何を持ってきてくれたの?」
みたいな感じで、この夏は日参して(笑)。
そんなふうに、5月、6月、7月は
ずっと家の片付けをしていました。
伊藤
「まだ着る・もう着ない」は、
どういう判断でするんですか。
「自分ヴィンテージ」になるものと、
ならないものがあるわけですよね。
鈴木
昔は、デザインされたものを
買っていたんですけれど、
そういうのがどんどんそぎ落とされていますね。
シャツにデニム、みたいな、
ベーシックなものが残ってる。
伊藤
でも、チャコさんが着ると、
普通にならないんですよ。なんでだろう‥‥。
足首の見せ方とかかなぁ。
あと、ちょっとしたこと、
たとえばリボンの使い方とか。
チャコさんは、これから出かけようという時、
いったん全部を着て、バランスを見ますか、
姿見とかで。
鈴木
そうですね。それは見ます。
玄関に置いてあるので、
靴を履いてみて、全身を。
伊藤
「やっぱり違う」みたいなときもありますか?
鈴木
あるある。そういう時、靴って大事ですよね。
伊藤
そうですよ、靴、大事ですよ。
パリって、石畳だけど、
だからといって歩きやすいスニーカーばかりじゃなく、
みんな、結構ちゃんとしている、
というイメージがあります。
鈴木
そうですね。
なんか自分が機嫌よくいなきゃだめじゃないですか。
おしゃれは誰のためでもなく、自分のためで、
誰かにどう思われるっていうより、
本当に、自分の気持ちがご機嫌でいられるように、
それが、私、一番大事です。

人生をカバンに詰め込んで。

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伊藤
今回、なぜチャコさんに
モデルをお願いをしたかというと、
いつもInstagramを拝見していて、
チャコさんのファッションスナップが
すごくかわいいと思っているからなんです。
しかも、バッグを持っていることで、
おしゃれが完成している気がして。

▲いつもバッグと一緒のチャコさんのおしゃれ。

鈴木
本当ですか。うれしいな。
伊藤
Instagramの写真は、
どなたが撮影を? 
鈴木
取材や撮影でごいっしょさせていただいた
プロのかたがいらっしゃると、
終わった後に撮っていただいたり。
そういうときはクレジットを入れているんですよ。
伊藤
そうなんですね。
着るものって、いつも、何から決めていくんですか、
たとえばわたしは靴から決めるんですけれど。
鈴木
うーん? 本当に何も‥‥。
伊藤
バッグも、靴も、全部でチャコさん、って感じがする。
どれひとつとして欠かせないって感じがするんです。

鈴木
そのときの気分気分なんですよ。
あるいはその日の天気、その日の行動。
ふたつ出かける先がある日に、
一回帰って来られるかどうかでも
着てゆく服が変わりますよね。
伊藤
そっか。仕事に出て、
そのままプライベートの食事に行く日の装い。
なるほど。
鈴木
パリは小さいから、
出先から住まいに一度帰ることも、
できなくないんですよ。
時間にすこしでも余裕があるときは、
帰って着替えます。
そうすると、自分の気持ち、気分も変わるから。
伊藤
よくわかります!
鈴木
でも出先が1箇所だったら、
朝起きたときのお天気が大事かな。
そこから、今日はどんな色だろう、って。
伊藤
色?
鈴木
そう、私、色から選ぶかもしれない。
「なんだかブルーな感じ」とか。
伊藤
そうなんだ!
鈴木
パリって、曇天が多いんですよ。
だから朝から曇っている日には
「少し明るい色にしよう」と。
たとえば、今日は薄いピンクのコートを
着てみよう、というふうに考えたり。
伊藤
うんうん。
鈴木
あるいは
「今日はヌードカラー(ベージュ系)にしよう」
とか。
伊藤
お天気や気温に適応して、色を考える。
それで、色を決めたら、
最初に選ぶのは‥‥靴、ですか?
鈴木
うん。そうですね。
伊藤
そして、バッグ?

鈴木
そう、バッグ‥‥バッグといえば、
フランス人のおもしろいところは、
いくらだらしなそうに見えても、
お家はみんなきれいなんです。
なのに、バッグの中はぐちゃぐちゃなんですよ。
伊藤
えっ? バッグだけ?
鈴木
そう、バッグの中はグッチャグチャで、
伊藤
ええーっ?
鈴木
ジェーン・バーキンがそうなんですって。
大きめのバーキン(エルメス)に、
口が締まらないくらいにモノを入れているので、
人生を詰めて歩いてる、って言われます。
伊藤
毎日バッグを替えるわけじゃないのかしら。
チャコさんは、毎日持つバッグを
替えている印象があるけれど。
鈴木
私は、そうですね、
そのときの用途に合わせて替えています、
伊藤
そっか、バーキンは、人生を詰めて‥‥。
鈴木
そう言うんですよ、ふつうのフランス人も、
インタビューをすると、
「そうなのよ、私たちは人生を詰めて歩いている」って。
おもしろいでしょう? 
伊藤
いったい、人生の、何を詰めているんだろう?
鈴木
銀行の小切手とか(笑)?
伊藤
ええっ(笑)?
鈴木
今はもうみんなデジタルになっちゃったけど。
でも、お財布や家の鍵はもちろんだし、
水道の請求書とか、パスポートや身分証明書、
いろんなものが入っているの。
伊藤
パスポート?! 
IDを求められることが多いからかなぁ? 
日本にいたら、家の大事なところに
仕舞っておきますよね。
鈴木
なぜそんなにいろんなものを持って行くの? 
と訊いたら、
「パンッ! と、すぐにどこかに行けるように」
って言った人もいた。
私はそんなふうには考えていないですよ、
それはまたどうかと思うほうで。
伊藤
そっか、パスポートも、
ヨーロッパ内の地続きのところなら、
すぐに行けるでしょ、って意味なのかも。
鈴木
そうですね。パッと電車に乗って、
パリからブリュッセルにお茶を買いに行っちゃうとか。
大きなバッグにぜんぶ入っていれば、
思い立ったらすぐ行けるものね。
でもね、みんな、バッグの中がそんなだから、
探し物も多いんです。
夕方、スーパーのレジに並んでいて、
前の人、ずいぶん遅いなと思うと、
一所懸命お財布を探してたり。
伊藤
そうなんだ。
鈴木
だいたいがグチャグチャなんです。
日本の女性は、このポケットにこれを、
みたいな感じでしょう? 
そういうの、ないですね。
伊藤
じゃあ、バッグ・イン・バッグなんか、
使わないのかな。
鈴木
そうですね。以前はそういう習慣はなかったかも。
でも、最近増えてきた‥‥かな? 
とにかく、なんでもかんでも詰め込んでます。
伊藤
夜、食事に行くときはどうするんだろう。
鈴木
食事に行くときはね、
大きなバッグは野暮だから、
小っちゃなバッグで。
それは絶対。
伊藤
そうですよね。
以前、パリに行ったとき、
レストランで隣の女性が、
こぉんなに小っちゃいビーズのバッグを、
ポンってテーブルの上に置いて、
そこからタバコを出していたのが格好よかった。
小っちゃなバッグの時は、
本当に、必要最低限のものだけを入れているんですよね。
それを見習ったわけじゃないんですが、
私は、本当に、バッグ、小っちゃいんですよ。
鈴木
うんうんうん。知ってる(笑)。昔からそう。
伊藤
私って、人生が何もないのかしら!
鈴木
(笑)フランスの人たちは、
なんていうのかな、いつも「押せ押せ」なの。
ちょっと時間があったら銀行に行って、
この支払いをしなくっちゃ、とか、
郵便局でこれを出さなくちゃ、とか。
だからなんでもかんでも「ひとまず」バッグに
詰め込んじゃうんだと思う。
伊藤
へえーっ。
鈴木
人生がハチャメチャっていうか!
伊藤
そんななのに、なぜ、家はきれいにできるんだろう。
鈴木
そこが不思議なんです。
わからない。ミステリアス。
本当にきれいなんですよ。
クローゼットの中とか、すごくきれい。
「え、家政婦さんを雇っているの?」
と訊くレベルできれいなんだけど、
「ううん、私がやってる」って。
伊藤
アイロンをかけるのも好きですよね。
なのにどうしてカバンの中だけ。
鈴木
ほんと。あと、車ね。
ちらかってるのはバッグと車です(笑)。
ダッシュボードの中とか、ひどいの。
蓋とか締まってないし。
あれだけスリや泥棒のいる国なのに‥‥。
請求書は持ってても、
あんまり現金は持ち歩かないからかなあ。
伊藤
なんか、でも、それを含めてかわいいなあ。
鈴木
そうですね。
伊藤
なるほど、なるほど。
パリの女性たちは、
バッグにもオンとオフがあるってことですね。
鈴木
そうですね。靴よりもバッグの方でTPOをつけるかも。
日本だと、ちょっと素敵なドレスコードがあると、
女性はヒールのある靴を履くでしょう。
パリの人は、靴はわりとラフで、
ぺたんこの靴で行ったりもするけれど、
バッグには凝りますよ。
ちゃんとしたお出かけにエコバッグなんて絶対ダメ、
せっかく素敵な所に行くのに! って。
伊藤
ああ!
鈴木
それじゃ「取り急ぎ駆け付けました」感が
出ちゃうからかもしれないですね。
お呼ばれなのか、
友達とのディナーなのかわからないけど、
準備が間に合わなくて駆け付けてきたっていう感じに。
伊藤
わたしも、夜、あらためて出かけるときは、
仕事先からいちど家に戻って、
バッグと服は替えることにしています。
今住んでいる場所は交通の便が良いし、
もちろん自分のためでもあるけれど、
「これから会う人のために時間をつくる」みたいな。
鈴木
そうですよね。そういうのがいいのかも。

ムートンバッグ、あのひとのコーディネート。 鈴木ひろこさん編

未分類

インスタグラムの、
チャコさんの街角スナップを見るたびに思うんです。

「自分に似合うものを知っている人が、
芯のおしゃれさんなんだ」

そう、チャコさんのファッションを
そのまま私が真似してもだめ。
もっともっと服と友だちになって、
「自分のもの」にしないとね‥‥。

「パリの女の人たちのおしゃれの要って、
バッグのような気がします」

なるほど、チャコさんのおしゃれも、
いつもバッグが一緒です。

今回、weeksdaysで紹介するムートンバッグ、
チャコさんならどんな風に持ちますか? と
尋ねると、えらんでくれたのは白のショルダー。

「冬の白って新鮮だなと思って」

この日は、6年ほど前から着ているという、
ネイビーのケープとコーディネート。
襟元や袖口から除く、白いフリルがバッグにぴったり。

そうそう、こういうちょっとしたバランスが、
いつも絶妙なんです!

ボトムスは、ケープと同じネイビーのハーフパンツを。

足元は、もう何年も履いているという、
「自分(で作った)ヴィンテージ」の
グッチのヒールの靴。
お会いしたのは、
雨のそぼ降る寒い午後でしたが、
チャコさんはなんと素足。
この心意気が、
いかにも「パリの女性」といった感じ。

髪は、ささっとリボンでまとめて。

フリルにリボン。
‥‥なのに、ちゃーんと大人の雰囲気を纏っている。
憧れるなぁ。

ムートンショルダー、もうひとつは、
コートとコーディネートしてくれました。

デニムは、リーバイスのボーイズ。
チャコさんといえば、デニム! 
さすがよくお似合いです。

ダンガリーのシャツはラルフローレン、
まっ赤なニットは、これまた自分ヴィンテージの、
セリーヌのもの。

自分にとっての定番を持つのも、
おしゃれ上手へつながる道なのかもしれません。

明日からは、チャコさんとの対談が始まります。
バッグのこと、
おしゃれのこと、
パリの女性がすてきな理由などなど、
たくさんうかがいましたよ。
どうぞお楽しみに。

ムートンバッグ

未分類

再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
11月18日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

めがねチェーン

▶︎商品詳細ページへ

つけたり、外したりしている間に
あれ? どこに置いたんだっけ?
なんてことになってしまう老眼鏡。
ああ、感じのよい眼鏡チェーンがあったらなぁと
今まで何度、思ったことか! 
そこでBonBonStoreの井部さんに、
「メガネのチェーンを作ってもらえませんか?」と
無理を承知でお願い。
以前、お会いした時に、
傘だけでなく、
小物のデザインもされているというのを
小耳に挟んだのでした。
できあがったチェーンはシックで上品。
チェーン部分のゴールドが肌に馴染むので、
いかにも「つけてる」という感じがありません。
さすが井部さん。
また、
weeksdaysオリジナルの
JINSの老眼鏡との相性はもちろん、
サングラスにつけてもいい感じなんですよ。
(伊藤まさこさん)

いつもの冬が。

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最近、
少しずつ出かける機会が増えてきました。

画面越しに会っていた、
あの人やこの人と、
久しぶりに会って話すことができて、うれしい。
やっぱり、こうでないとねと思う毎日です。
「ふつう」ってありがたい。

お出かけといえば、
欠かせないのがバッグです。
そういえばあんまり出番がなかったな‥‥
クローゼットに並ぶバッグを見て、
あらためて、そんなことを思いました。

「いつもの冬が戻ってきますように」
という願いも少々込めて、
この冬、新しく買い足したのはムートンのバッグ。
仕事にも、
ちょっとそこまで出かける時も。
もこもこしたバッグが一緒だとちょっとうれしい。

大きさはふたつ。
色は2色。
冬のおしゃれにいかがですか?

コンテンツは、
パリに住む鈴木ひろこさんと対談を。
バッグについて。
パリの女性たちのおしゃれの心意気。
それからそれから‥‥。

おしゃれの師匠と仰ぐ鈴木さんから、
たくさんのお話しをうかがいましたよ。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[5]グリーンチェック 伊藤まさこ

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同じチェックでも、赤とはひと味もふた味も違う、
シックな佇まい。
無地の服を着なれている方に、
スーッと馴染んでくれそうな一枚です。

タートルニットとお揃いのスカートの上に、
ケープのようにふわり。

タートルのネック部分を少し見せて。

巻き方はとても簡単。
フワーッと風に乗せるように、肩にかけます。
フリンジがアクセントの後ろ姿がかわいい。

首に沿わせるように、
ぐるぐる二重巻き。
一重か二重かで、
暖かさも、またフリンジなどの出方も変わるので、
気分に合わせて変えてみて。

横の姿はこんな風。
二重に巻いても、
首周りがもたもたしないのは、
しなやかな質感のおかげです。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[4]レッドチェック 伊藤まさこ

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去年、ブラウンとともに買って、
とても重宝したのが、この赤いチェックのストールです。

明るい赤なので、
顔まわりがぱっと華やかになる。
全体的に地味だな‥‥なんて時、
このストールを差し色にすると、
とたんに生き生きする‥‥といいことづくめ。
赤い色の持つ力ってすごいんです。

また、コートなどだと
ちょっと臆するかもしれないけれど
(柄物の面積が広いので)
ストールならば挑戦しやすい。
モノトーンの服が多いと言う方、
差し色にぜひ。

赤いチェックのストールに合わせたのは、
赤いカーディガン。

それから、
履き慣れたデニムと、
スウェードのブーツ。

デニムに合わせて、
ストールは前部分でラフに結びます。

全体的にカジュアルな着こなしですが、
「大人な感じ」が漂うのは、
ストールが上質だから。

思わず頬擦りしたくなる、
この質感。
寒い日には、頭をすっぽり覆う、
こんなスタイルはどうでしょう?

この上から、ぬくぬくとしたアウターを羽織れば、
北風も粉雪も恐くない。
ああ、早く冬が来ないかなぁ。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[3]ライトブラウン 伊藤まさこ

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去年、とても重宝したのがこのライトブラウン。

肌に近いからか、
身につけると、しっくりくる。
生成り色や薄いブラウンなど、
やさしげでやわらかな色合いとの相性も抜群です。

まずは、
タートルネックの襟元にふわり。

見るからに気持ちよさそうな質感が伝わってくるのは、
こんなシンプルな巻き方。

同系色でまとめたコーディネートの足元は、
黒のロングブーツできりりとひきしめます。

また、大判なのでレギンスなどの上から
スカートのように巻いても。
この場合は、ベルトで押さえつつ、
心配だったら大きめのピンで腰のあたりを止めて。

首に巻いたり、
腰に巻いたり。
自由に楽しく。
巻き方はあなたのお好みで。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[2]ネイビー 伊藤まさこ

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いつものコーディネートに、
一番しっくりくるのが
ネイビーのストールではないでしょうか。
(じつは私がそうなんです。)

ネイビーのアウターも何着か持っているのですが、
ネイビー同士のコーディネートで
気を遣っているのが、
「重くならないこと」。

ここでは首にかけたストールの上から、
コートを羽織りましたが、
白いTシャツをチラリと見せ、
すっきり見せます。
この、ほんのちょっとのバランスがものを言うんです。

パンツはグレー、
靴は明るめのネイビーのローファー。
色の配分も「重くならないため」の工夫の一つ。

もう少し寒くなってきたら、
手袋をしたり、
ニットを袖口から覗かせて色を足すと、
コーディネートのアクセントに。

襟元で軽く片結び。
ストールをふわりとさせると、
首まわりに表情が出てまた違った雰囲気になりますよ。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[1]グレー 伊藤まさこ

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黒やネイビーなど、ダークな色合いが多くなる冬。
出かける前に、全身をチェックすると、
あれ? 全体が少し重いな‥‥と感じることがあります。
そんな時に、プラスしたいのがグレーのストール。
顔まわりに、この明るめのグレーがくるだけで、
全体がグンと軽やかになるのです。

モノトーンだけでなく、
赤やピンク、水色など、
なんでも合う万能カラーがこのグレー。
ここでははっきりした色合いの
グリーンのニットをコーディネートしました。

くしゅくしゅっとさせず、
きちんと折って、
着物を着るように胸の部分でパタンパタンと重ねます
(重ねた部分に、大きめのブローチをしても)。
この上からコートを羽織っても、
コートの下でもたつくことはありません。

上の折り方で、
首まわりをくるり一周させるとこんな感じ。
ずいぶんイメージが変わるでしょう? 

また、薄手の上着を着るような感覚で、
さらりと上に羽織っても。

寒い時は、首にぐるぐる巻きに。
少し気温が上がる日中は、肩にかけて‥‥
一日のうちで、
寒暖差がある時は、
巻き方で変化をつけます。
気温の変化にも対応できるし、
気分も変わるしで一石二鳥。

ストール自体がとても軽く、
しかも嵩張らないため、
バッグに入れて持ち運ぶのも苦にならない。
ストールを身につけていなくても、
質感を感じるように
フリンジを見せつつバッグに入れて。
この時、クシュっとさせるといい感じに。

きちんと折ったり、
クシュっとさせたり。
一枚でたくさんの表情が楽しめるのが、
ストールのいいところなのです。

カシミヤのストール

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大切な一枚。

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今から25年くらい前のこと。

ふと立ち寄った店で、
グレーのカシミヤのストールを見つけました。

上等な風合いに一目惚れしたものの、
当時の私には、手が届かない値段。

欲しい‥‥
でも‥‥

お店で迷う私に、
一緒にいた人が、
「これからはいいものを買うべきだよ。
一生ものになるよ」と一言。

その言葉が引き金となって、
晴れてそのストールは私のものになったのでした。

「一生もの」
の言葉通り、
四半世紀経った今でも、そのストールは健在。
毎年、春の衣替えには手洗いをし、
スチームアイロンをかけて、
クローゼットにしまって‥‥
私にとって、そのストールは、
秋冬のおしゃれになくてはならない
一枚となったのでした。

今週のweeksdaysは、
5枚のストールを紹介します。
思わず頬擦りしたくなる、
やさしい風合いのカシミヤ。
あなたにとっての大切な一枚が、
見つかりますように。

松林さんの活躍。

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伊藤
松林さんが(オンラインに)いらしたみたいです。
一同
わあーっ(拍手)。
伊藤
松林さん、こんにちは! 
すごくかわいいのができて、うれしいです。
最初、いろいろな色を提案してくださったなかから、
わたしたちが黒を選びましたが、
それはどう思われましたか?
松林
あのぅ、実は‥‥黒は、原稿のつもりで、
印刷の指定で色をつけてもらおうかなと
思っていたんですよ。だから黒で塗っておけば、
たとえばピンクとか緑とか青とか、
違う色で印刷を仕上げたいときにもいいかなと思って。
伊藤
あら‥‥! そうだったんですね。
そうしたら、私が「黒がいい!」って飛びついた。
一同
(笑)。
松林
だから「あ、黒のままなんだ!」って。
伊藤
でも、結果、よかったですよ。
それが基本となって、本も黒にしましたし。
お酒、おつまみとのバランスも本当にいいんです。
そういえば「松林さんに箱を作ってもらおう」
という発想、ちょうど、高知の、
セブンデイズホテルでもなさっていて。
松林
『7days laatikko』ですね。
箱に絵を描く依頼、
ほぼ同時にいただいたんです。
びっくりしました。
伊藤
そうだったんですか、すごい。
松林
不思議です。
伊藤
私が、「松林さんにお願いしたい」みたいなことを
言いだしたら、福光屋の社長室に、
松林さんの絵があると知り、
「ええっ?」みたいになって。
利岡
そうなんです。
伊藤
松林さんは、まだ商品の完成形を
ごらんになっていないんですよね。
松林
あ、まだ見ていないです。
僕の絵のラベルも、できたんですか。
伊藤
できました! ピンクのラベルですよ。
(オンラインのカメラに)見えますか?
松林
あ、いいですね!
伊藤
かわいいですよね。ラベルも箱も。
松林
箱の白いドットも、一番最初に送ったのが、
ドットのリズムがもっと整然としていたんですよ。
伊藤
はい。けれども、もうひとつ書いていただいた、
アルファベットをちりばめた、
ちょっとふぞろいのものを見ていたら、
こっちのほうがいいかな、と。
文字が水玉に馴染んでいるのがかわいかった。
松林
こうやって仕上がってみたら、
水玉というよりも、
雨や雪が降っているようにも見えますね。
伊藤
ああ、たしかに。
そうしたら、色を変えたりすれば、
ほかの季節、たとえば夏バージョンもできるかも?
松林
そうですね、
そんなふうに使っていただけたらうれしいです。
伊藤
箱のデザインで、試行錯誤はありましたか。
松林
いや、正直言って、まったくなくて。
伊藤
ええ、すごい!
松林
見本で送ってもらった無地の箱に、
絵の具で何パターンか描いたものを、
金沢での展覧会のときに利岡さんに持って行って、
それがそのまま採用された、という感じです。
お酒のラベルになったのも、
そのときに描いたもののひとつです。
伊藤
そうだったんですね。
松林さんは、日本酒は?
松林
飲みますね。最近すごく。
伊藤
どんなアテで飲むのが好きなんですか。
松林
やっぱり、カツオですね。
高知に住んでいるので。
伊藤
ああ、いいなあ、いいなあ。
でも、金沢も、いいなあ。
利岡
はい。金沢だと冬はブリですね(笑)。
伊藤
ねえ、いいなあ。寒ブリ。
そうそう、『ちび本』の松林さんの書き文字! 
これはオンラインでミーティングをして、
その場で依頼をしたら、
すごいスピードで届きました。
松林
これも本当に、一発書きだったんです。
「絵として文字を書いているんですか」
と言われるんですが、
ふだんからこういう文字なので、早いんです。
伊藤
わたし、松林さんからの手紙、取ってありますよ。
平仮名と漢字と片仮名のバランスが最高なんですよ。
こうして使わせていただくと、
全てをフォントを使ってデザインをするのと違い、
印象がやわらかくなって、よかったです。
松林
はい(笑)。
伊藤さんのレシピ、どれもおいしそうですね。
伊藤
簡単なものばっかりでしょう?
利岡
そこがいいんですよ。
伊藤
作れるかな、みんな。
──
編集をしながら読みましたが、
作れると思います。
利岡
「じゃがいものおひたし」
作ってみました。おいしかったですよ。
伊藤
意外な味ですよね。
利岡
本当に透き通って、おいしくて。
伊藤
みなさん作ってくださるといいな。
この「ちびちびセット」は、
「weeksdays」のほかに、
福光屋さんでも。
利岡
1週間遅れで、
玉川店ミッドタウン店金沢店
公式オンラインショップで販売します。
伊藤
おおーっ。それもうれしい。
よろしくお願いします。
松林さん、言い残したことはないですか。
松林
ああ。この黒い面、白いペンを使って、
ご自分で絵とかメッセージ、サインを
入れたらいいかなと思うんです。
伊藤
いいですね! 「こんなふうに」
っていう例を描いていただけたらうれしいな。
松林
はい、わかりました。
あの黒い面は、きっと
「weeksdays」や福光屋さんのロゴや
商品名が入るんだろうなと思って
あけておいたんですが、
そのまんま黒だったので‥‥。
伊藤
あっ、また、作家の意図と違うことを、
わたしたち‥‥。
松林
いえいえ、いいんです、
なので、みなさん、自由に使って
いただくのもいいかなと思って。
伊藤
いいですね!
松林さん、利岡さん、
ありがとうございました。
いいものができて、ほんとうにうれしいです。
利岡
こちらこそありがとうございました。
金沢にいらしてくださいね。
松林
高知にも! 
ありがとうございました。

6種類のお酒を、ちょっとくわしく。

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伊藤
ここに入っている6種類の日本酒は、
福光屋さんが厳選した、
いわば酒蔵の「代表選手」ですよね。
利岡
そうですね。福光屋のそれぞれの味わいを
お楽しみいただけるセットです。
日本酒の飲み比べって
なかなかできないと思うんですけれども、
このサイズだと気軽に楽しんでいただけるかと。
本当に、お米や酵母の違いなど、
仕込み方で味わいが全く違いますから。


伊藤
「ちょい飲みセット」を買われるお客様は、
福光屋さんのお酒を買うのが初めての方が多いのかな。
飲み比べてみたいな、という気持ちで。
利岡
はい、多いですね。
1日1本飲んでみよう、みたいな感じで。
そこから気に入ったお酒を
定期購入してくださるお客様もいらっしゃいますよ。
伊藤
「私はこの『加賀鳶』がいいわ」とか、
そういう感じになっていくのかな。
利岡
そうですね。
伊藤
このサイズだと、贈り物にもいいですよね。
私も、何セットか買って
いろんな人に贈りたいなあと思っているんです。
利岡
これが届いたらうれしいですよね。
今回、ボックスが黒になったことが、
ふだんの福光屋のデザインとも違いますし、
甘すぎない感じもあって、
社内でも大好評なんですよ。
社長も喜んでいます。
▲福光屋の13代当主、福光松太郎さん。
伊藤
うれしいです! 
画家の松林誠さんに
箱の絵や『ちび本』の題字などを
お願いしたんですが、
たくさんのアイデアを出してくださって。
「こうすればどうかな」
「ああすればこうなるよ」って、
言ってくださったことが、
いい形になった感じがします。
おつまみは、個包装ですが、
1個ずつのラベルをつけずに、
紙袋にまとめて入れて、
その紙袋に「ちびおつまみ」の文字を入れる、
というのも、松林さんのアイデア。

利岡
箱には、できるだけ文字情報を載せたくないと、
商品名すら書いていないんですけれど、
表示義務はあるものですから、
箱の底面に、再剥離シールに印刷をして
貼ったんですよ。
伊藤
そうすることで、箱が目立つから、
とってもいいと思います。
箱の再利用もしやすいですしね。
松林さんの遊びはまだあって、
手書きのドットのなかに隠れているアルファベットが
「FUKUMITSUYA」のなかの文字だったり。
ああ、こんなにいい感じにできると、
発売前から「またちがうセットをつくりたい」
って思っちゃいます。
利岡
できますよ、まさこさん。
それこそ、オリジナルのお酒を加えて、
ちょっとステップアップしていくのもいいですよね。
伊藤
それは金沢に選びに行かなくちゃね(笑)。
試飲をしないと! 
利岡
是非いらしてください!
伊藤
利岡さんは、この6種類のお酒で、
どれが好き、とかありますか。全部好き?
利岡
ええと、そうですね、全部好きですけれど、
とくに、と言われたら、私は、やっぱり
「黒帯 悠々」が好きですね。
ひれ酒にするのも「黒帯」が一番いいです。
伊藤
それは、負けない強さがある、みたいな?
利岡
そうですね。ひれの香ばしさを引き出してくれるのは
吟醸よりも、純米酒なんですよ。
純米酒でしっかりとした味わいのもの。
「黒帯 悠々」は、発売から45年が経ちますが、
金沢の料理屋を中心に
味覚のプロ達に鍛えられてきたお酒です。
お刺身やお寿司など魚料理との相性も抜群。
伊藤
ああ、おいしそう。
ほかのお酒についても、
利岡さんはこういうときにこれを飲むとか、
教えてもらえたらうれしいな。
利岡
「風よ水よ人よ」というお酒は、
本当にスッキリとして、
アルコール度数も12度で、軽いんですね。
福光屋独自の酵母による「爽麗仕込み」で、
フルーツ酸(リンゴ酸)の爽やかな風味があります。
喉越しでクイクイって飲める感じなので、
焼肉などに合わせてみると良いです。
これは室温でもいいし、
8℃くらいの、白ワイン感覚でも。
伊藤
へえーっ。
ちょっと乱暴ですけれど、
日本酒を氷で割って飲むこともありますか。
利岡
それはどれでも! 
じつは「氷負け」しないんですよ、
福光屋のお酒って。
伊藤
「氷負け」っていう言葉があるんですね。
利岡
氷が溶けて薄まって、
味のバランスが崩れることを「氷負け」と
私たちは言っているんです。
そして福光屋の酒は「氷負けしない」。
伊藤
なるほど。そうかもしれない。
薄まった感じにならず、
冷たいけれど個性がそのまま生きてるんですよね。
じゃあ、今回のお酒はどれでも?
利岡
はい、強いかたは、グイグイって、どうぞ。
伊藤
わかりました(笑)。
それで「加賀鳶」には2種類、
純米吟醸と純米があるんですね。
利岡
その2つを比較すると、
純米吟醸の方が香りが高くて、繊細なタイプ。
「飲み飽きしない」と私たちは言っているんですが、
フルーティーな香りが特徴の吟醸酒は、
最初の一杯が美味しく飲めても、
香りが高すぎるとそれ以上はなぜか疲れてしまいますが、
「加賀鳶 純米吟醸」は何杯でも飲める
美味しい吟醸酒を目指してつくったんです。
伊藤
ふむふむ。
利岡
いっぽう、純米の「加賀鳶」は、しっかりとしています。
酒造りに最も適した厳冬の時期に、
低温発酵でじっくりと仕上げたもので、
福光屋の「純米酒の定番」です、
これで、ひれ酒をいただいてもいいですよ。
伊藤
「加賀鳶」には、
素敵な名前のいわれがありましたよね。
利岡
そうですね。「加賀鳶」は、
火消しのチームの名前なんです。
金沢は、町内ごとに、火消しのチームが、
今でもあるんですよ。
そして「加賀鳶」というのは、
江戸の、今の東大の赤門の所に、
加賀藩の屋敷があったんですね。
要するに、前田家の東京の別邸みたいなもの。
そのお屋敷を守る火消しの軍団のことを
「加賀鳶」って言ったんです。
伊藤
当時、アイドルみたいな存在だったんですよね、
火消したち。
利岡
「加賀鳶」のチームは、みんな背が高くて、
イケメンが揃っていたということで。
しかも喧嘩が強くて、
何よりも、火消しの技がすごい、と、
まさしくアイドル的存在だったんでしょうね。
このお酒にはその「加賀鳶」の名前を付けています。
伊藤
以前「加賀鳶」について利岡さんに聞いたとき、
「江戸と加賀の文化が混ざり合っている、
それが大好きなんです」っておっしゃっていて、
なるほどと思ったんです。
歌舞伎にもなっていますよね。
利岡
江戸時代に、河竹黙阿弥さんという方が、
「盲長屋梅加賀鳶」(めくらながや うめが かがとび)
っていう「加賀鳶」を題材にした
歌舞伎の脚本を書いてらっしゃって、
それは、今でも歌舞伎座で
何年かごとに演目としてかかるんです。
最近では、海老蔵さんが、主人公の道玄と梅吉を
二役で演じていらっしゃいましたね。
ラベルの「加賀鳶」の文字を書いてくださったのは、
その河竹黙阿弥さんの曾孫で
演劇学者の河竹登志夫さんという方です。
伊藤
そうなんですね! 
こちらの「黒帯」の文字は、
どなたが書かれたんですか。
利岡
「黒帯」は、電通のアートディレクターだった、
鈴木八朗さんという方です。
「エキゾチックジャパン」や「フルムーン」も
鈴木さんの有名なお仕事ですよ。
伊藤
その方が? そうなんだ!
利岡
高峰三枝子さんだとか、
いろんな昭和の芸能人ですとか、
役者の似顔絵なんかを描いてらしたりもしていて。
ちなみに河竹さんは、
福光社長のお父様と同じ大正13年生まれ、
子年の会でご一緒だったそうで、
八朗さんは、金沢にいらしたときに、
お料理屋さんで福光屋のことを知ってくださり、
それで酒蔵を訪ねてきてくださったっていうのがきっかけで
ラベルデザインはさまざまなご縁から生まれています。
伊藤
そうなんですね、そんなご縁が。
「福正宗」の丸に福の字はどなたが。
利岡
金沢の書家である能川富美子さんに
書いていただいています。
日本酒で使うのは珍しい黒麹で仕込んだ辛口タイプで、
しっかりとした酸があり、お料理によく合ってくれますよ。
伊藤
どういう料理が合いそうですか。
利岡
和食で、ちょっと濃い目の味とか、煮物とか、
しっかりとした味わいのものに。
お酒もしっかりとした味わいなので、
同じような味のボリュームのものがいいんです。
伊藤
ひとりで順番に飲むのもいいですけれど、
家族や友達と集まって全部を試してみる、
というのもいいですね。
利岡
そうですね。
1合ずつですから、数人いたら、
あっと言う間に飲んじゃいますよ(笑)。
そして、松林さんのオリジナルラベルのお酒、
これが生酒タイプの
「福正宗 氷温生貯蔵酒 辛口ドライ」。
厳寒の酒蔵で仕込んだ純生酒を
生のまま氷温で貯蔵したものです。
スッキリとしたお酒なので、
ちょっと脂っこい肉料理にも合います。
これはうんと冷やして、5℃くらいでどうぞ。

インスタグラムアカウント 「@weeksdays_official」新規開設について

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インスタグラムアカウント「@weeksdays_official」は、
第三者により乗っ取りにあい、
weeksdays公式アカウントを、消失しておりました。

今回の件に関して、原因の調査が終了し、
再発防止の体制が整いましたので、
以前と同じインスタグラムアカウント名
「@weeksdays_official」を新規開設いたしました。

こちらのアカウントで
weeksdaysに関する情報やコンテンツを
発信してまいります。

長い期間、ご心配をお掛けしましたことを
心よりお詫び申し上げます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

大満足! のセットができました。

未分類

伊藤
利岡さん、ありがとうございます! 
(サンプルを開梱しながら)
これ、すっごくかわいいです。
利岡
かわいくなりましたね。
伊藤
うれしいです。
箱をあけて上から見ると、
シルバーと黒でスッキリしているのもいいんです。
利岡
外箱と中、雰囲気の頃合いがいいですよね。
伊藤
うん、うん。
利岡
ありがとうございます。
伊藤
こちらこそ、ありがとうございます!
これ‥‥いつから考えていたんでしたっけ。
お酒を販売させていただくのもよさそうだし、
いっしょに、酒粕を使った
お菓子も作れるんじゃないかとか、
「weeksdays」を立ち上げる前から、
いろんなことを一緒に考えてきたんですよね。
利岡
それで、一度、金沢に、
酒蔵見学に来ていただいて。

▲チームで金沢に行ったのは、2018年のことでした。
伊藤
あのときは、社長の福光さんから、
とくべつな熟成酒を試飲させていただきましたね。
でもそのときの企画は、いろんなことがあって、
なかなか実現しなかったんですよね。
「ほぼ日」がお酒を売る免許をとらなくちゃとか、
企画も、これだ! っていう決め手に欠けたまま、
時間が経って、そのうちにコロナが起こり。
利岡
そうです。そんななか、伊藤さんが、
福光屋の「ちょいボトルセット」をお求めくださって。
伊藤
今回の企画のベースになった商品ですね。
1合(180ミリリットル)ずつ、
福光屋さんの代表的なお酒が入っているボトルが、
6本、セットになっているんです。
「今日はこれ飲もう!」と選ぶのも楽しいし、
おつまみをつくるのに、
それをちょっとお料理にも使ったりして、
「あ、こういう日本酒とのつきあいかたって、
なんだかいいなぁ」と思いました。
でも、そのまま仕入れて売るのではなく、
「weeksdays」らしい工夫をしたいな、とも。
利岡
そこから「おつまみを一緒に」というアイデアが出て。
まさこさんも「1日1本開けるとして、
ボトルの数だけちいさなおつまみが
付いていたらうれしい!」と。


ちびおつまみ


伊藤
「ちびおつまみ」といっしょに、

おつまみじゃないものが、

じつは、ひとつ入っているんです。
利岡
「ふぐのひれ」ですね。
伊藤
そうそう。最高ですよ。
私、これ、大好きなんです。
利岡
本当に、まさこさんらしいです(笑)。
──
未経験の人、いっぱいいると思います。
ひれ酒。
伊藤
焙ったふぐのひれを、
アツアツの日本酒に浸し、
3分くらい蒸らしてから、
そのお酒をいただくんです。
利岡
ぬる燗だと、ちょっとヒレの臭みが出ちゃうので、
熱々燗、だいたい50度くらいでつくるといいですね。
いただくときはすこしさましても。
ふぐのひれは、じっくり弱火で焙るといいんですが、
最近はIHのお宅も多くて。
伊藤
そうですよね。
利岡
そういう方は、
オーブントースターを使っていただければ。
あるいは、小っちゃいので、
マッチやライターで焙るというかたも(笑)。
伊藤
それ、すっごく
お酒飲みっぽいですよ(笑)。
この「ふぐのひれ」のパッケージが好きで、
ちょっと量が多いんですけれど、
「これは小分けをせず、このまま行きましょう」
とお願いをしたんですよね。
かわいいなあ。ああ、うれしい。
企画の最初で考えたなかに
「酒粕のお菓子」があったんですが、
いろいろあって実現はしなかったものの、
どれもおいしかったので、
このチームだったらお酒のおつまみも
いいものが集められそう、と、
いったん、セレクトをお任せして、
そこからわたしが選んで、
と、すこし時間をかけましたね。
利岡
決めるのは、まさこさん、早かった。
伊藤
そこから、おつまみを入れるなら、
箱はこんなかたちにしようとか、
そのデザインはどうしようとか、
いろーんなことを考えて‥‥。
それだけ試行錯誤した甲斐があって、
こんなにかわいいものができました。
よかった、本当に。
利岡
私はおまけの『ちび本』に驚きました。
素晴らしいです、本当に。
20のおつまみのレシピが冊子になっている!
伊藤
お酒のおつまみのレシピ本がほしいって、
「ほぼ日」のみんなが。
──
伊藤さんの著作に、
お酒のエッセイにおつまみのレシピの紹介がついた
2冊があるんですよ。
『ちびちび ごくごく お酒のはなし』
『夕方 5時から お酒とごはん』
それが好きで「もっとないですか」と訊いたら‥‥。
伊藤
それなら、できるよー、って。
毎日ひとつずつつくって、自分で写真をとって。
ほんとうにかんたんなものばかりなんですよ。
利岡
いえいえ、このレシピがおまけだなんて!
──
「weeksdays」の
読み物コンテンツにしようかな、
とも思ったんですが、
「だったら、印刷して、おまけにしない?」と。
利岡
うんうん(笑)。
──
そうしたら、まあ力の入ること。
「もののかたちにする」って、がんばりますよね。
伊藤
本当!

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