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よい買いもの

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伊藤家のお正月の恒例行事は、
家族揃ってのトランプ大会。
それから横浜中華街へのお出かけ、
でした。

いつもの店の変わらぬ味。
今日もおいしかったね、
ああ、お腹いっぱい。
なんて口々に言い合いながら、
中華街での食事の後はきまって、
元町まで腹ごなしの散歩をします。

元町では、
父がなにか買ってくれる、というのも毎年の恒例。

私は元町ユニオンでお菓子? 
(当時は外国のお菓子がめずらしかったんです。)
姉はMIHAMAで靴をえらんだのかな? 
(ハマトラって知ってますか? 時代ですね。)
何を買ってもらったかは忘れてしまったけれど、
わくわくしながら石畳の商店街を歩いたのは覚えてる。

そうだ。
「買いものにわくわくする」という感覚、
きっとあの時がはじめてだったに違いない。

さてさて、年が明けました。
今年最初のweeksdaysは、
ほぼ日の「ほぼ日ストア特別セール
Hello! Good Buy!」にちなんで、
よい買いものをしよう! と名づけて、
セールのアイテムをご紹介します。

石畳を歩きながらウィンドーショッピング、
ではなくって、
家に居ながらにしてお買いものできちゃう。
子どもの頃は、
まさかそんな日が来るなんて、
思いも寄りませんでしたが、
「たのしい」のはどちらも同じ。

よいお買いもの、しようではありませんか!

一年のおわりに

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秋に久しぶりに台湾を旅してきました。

4年ぶりの台北の街は、
変わらずやさしく、
そしてパワフルでした。

ああやっぱりいいなぁと思ったのは、
茶藝館でのお茶の時間。
シュンシュンというやかんの音を聞いているうちに、
気持ちがおだやかになっていく。
こんなの久しぶり‥‥
と思っているうちに、
ハタと気がついたのでした。
ふだんの私はやかんの音など、
気にも留めていなかったことに。

いかんいかん。
時々、立ち止まらないと。
お湯が沸く、このなんともいえないいい音も、
このままでは気づかずに歳をとってしまうぞってね。

さてさて、
今年で6年目を迎えたweeksdaysですが、
この年末からは時おりお休みをいただくことにしました。

気持ちのティータイムを取り、
身も心もさらに研ぎ澄まして、
さらによいものを見つけていこうではないか!
なーんて思っています。

年明けからはページも少しリニューアルするんですよ。
新しいweeksdaysをどうぞおたのしみに。

わたしたちの将来

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伊藤
お仕事のスペースを
スキップフロアにしたのには
どんな意図がおありだったんですか。
小林
住宅地の建築制限のなかで2階建てをつくると、
1階の天井がどうしても高くとれないんです。
けれども仕事場はちょっとでも高く感じたい。
ですから基礎の上に直接床を敷き、
フロアを下げることで天井高を出しました。
もちろん床には断熱材を入れ、床暖房も入れて、
寒くないようにしています。
伊藤
階段を数段下りただけなのに、
急に仕事モードになる。
すばらしい効果ですね。
小林
キッチンからこちら側は配管の関係で
あんまりフロアを下げられない、
ということもありました。
伊藤
でもご飯を食べるのは、
高すぎない天井、いいですよ。
小林
そうなんです。
天井って高すぎても落ち着かない。
リラックスして食事をしたいダイニングは、
高くする必要はないなと思いました。
伊藤
天井の高いダイニングは、
それこそお店みたいな感じになりますね。
ちょっと緊張感が出る。
小林
そうですね。
広いリビングや高い天井の部屋って、
なぜかみんなはじっこに集まったりして。
ふふふ。
伊藤
うんうん(笑)。
マナさんのおうちは、
そこかしこに椅子が置かれていますね。
小林
はい、椅子は好きで、
ちょこちょこ買ってしまうんです。
座るためだけじゃなく、
ちょっとした物置きにもなるし、
上の本を取るための踏み台にもなるし。
伊藤
そっか、そっか。
2階ではリビングにクッションが置かれていて、
いわば「収まる場所」がありました。
そんなふうな、住まいのスペースのつくり方って
とっても興味があるんです。
小林
はい、すっごくおもしろいです。
独立前、夫はインテリアデザイナーの
仕事をしていたんですが、
私はディスプレイの仕事をしていたので、
つくっては壊し、つくっては壊しが当たり前で、
ちょっとさみしい感じだったんですよ。
せっかく徹夜までして大変な思いをしてつくっても、
期間限定で終わっちゃう。
ところが旅行から帰ってきて、
彼の仕事を手伝うようになったら、
「あ、残るって、いいな」と思って。
店舗設計を始めたのも新鮮でした。
人がどう入ってくるのが自然かという
動線を考えることが楽しくて。
伊藤
それがおうちにも生きているんですね。
小林
まさしくそうですね。
このキッチンもそうです。
キッチンってだいたい間取りのなかで
どんつき(突き当たり)のところにあって、
そうなると複数人が入るとギューギューになって、
動きのとれない人が出てくるんですよ。
とくにここはひとりで使うわけじゃないので、
往き来がしやすいように。
伊藤
たしかに、すれ違うのがきつい動線の
キッチンもありますよね。
ここだったら大丈夫ですね。
小林
そう、調理中に、後ろも通れますし、
混んでいたら迂回もできます。
全体を回遊できるようにしたら、
老犬がグルグル回って、
運動になってちょうどよかったです(笑)。
伊藤
そういえばお店でも、
広いけれど、なんとなく
動きに迷うところもありますね。
扱う品物によっても違いますよし。
小林
そうですね。ただ日本人のメンタルで言うと、
レジが入り口の正面にあると入りにくい、
とか、そういう共通項はあるんですよ。
伊藤
ああ、なるほど!
小林
レジが目立つと、入り口から近い所だけを見て、
奥まで行かないで帰っちゃう。
最近はインバウンドの方も増えてきて、
そういう方たちは全然平気なので、
お店のつくり方も、ちょっと変わってきましたが。
伊藤
へぇ、日本人ならではの
お買い物のメンタルがあるんですね。
日本人は、レジはどこがいいんですか?
小林
ほかの人から見えづらい場所ですね。
お会計が人から見られていると思うと、
入りにくいって考えちゃうんです。
もちろん買いたいものがハッキリとある方は、
平気なんですけれどね。
あとは、手にとりやすいものが手前で、
落ち着いて見たいものは奥にあるとか。
伊藤
いろいろ考えることがあるんですね。
マナさんのお仕事は考えるヒントが
日常のなかにたくさんおありだろうし、
夫婦で同じ仕事をなさっているうえ、
こうしてプライベートと仕事の場所が近いわけですが、
オンとオフの切り替えは‥‥、
やっぱりお酒だったりするんですか。
小林
そうですね。お酒‥‥も、ありますね。
でもオン、オフ、けっこうはっきりしてますよ、
仕事が7時に終わったらみんなが帰るので。
残業は基本、なしです。
伊藤
なるほど、ふたりになったら、
それが切り替えの合図。
小林
そうですね。
「もうビール飲む?」って。
とはいえ、仕事の話もしますけど、
伊藤
このおうちがきっかけになって
気づいたことや変化って他にありますか?
小林
1階で靴の生活をしだしたことで、
すぐテラスに出たり、
すぐお散歩に行ったりができて、
すっごくフットワークが軽くなりました。
前は「どうしよう、出かける? 出かけない?」
だったのが、その選択がなくなりました。
「空を見に行こう」というくらいの
きっかけで出かけたり。
というのも、ここから緑は見えますが、
あんまり空が見えないんです。
だから外がちょっとピンク色の気配に
なっていたりすると、
夕焼けがきれいにちがいないと、
公園にぱっと行っちゃいます。
そういうフットワークの軽さが、
すごくいいなと思ってます。
伊藤
靴を履くって、ワンアクションありますよね。
小林
そうなんです。
伊藤
でも逆に、2階に上がる階段はいいですね。
一回、靴を脱いで。
小林
そうですね。上にいる時と、下にいる時で、
それが大きな違いですね。
上にいると静的、
下にいると動的になります。
伊藤
わたしが「気に入った室内履きがないから、
家を土足にしたい」って言ったら、
娘に反対されました。
「落ち着かないから嫌だ」って。
小林
あはは、すべてが靴だと、そうかもしれません。
あとは、テラスでご飯を食べるようになりました。
集合住宅だと、テラスやベランダ、バルコニーって
あってもなかなか使わないんです。
でもここでは活用しています。
伊藤
さぞや、気持ちいいでしょうね。
夏の夕暮れとか、お酒がおいしいでしょう。
小林
最高です。
春先とか、新緑の頃とか。
伊藤
こうして素敵なお宅にお邪魔すると、思うんです。
好きなものに囲まれたい気持ちは、
最初はうつわとか、毎日使うものではじまり、
次にテーブルなどの家具、
どんどん大きくなってきて、
結局、家がつくりたくなるって。
小林
伊藤さんにもぜひつくっていただきたいです。
伊藤
これから年を重ねていっても、
快適に暮らせる家を考えたいですよね。
小林
たとえば高齢者の暮らしに対応することを考えると
まず手すりをつけるんですが、
そこにいいデザインのもの、
あたたかみのあるものって、あんがいないんです。
でも、つくればいいんですよね。
伊藤
マナさんたちにも考えてもらいたいな。
老人ホームや高齢者住宅の依頼はこれまでには?
小林
子ども園的な施設のデザインは
手がけたことがあるんですが、
高齢者向けの案件は、まだ、ないですね。
すごく、やりたいんですけどね。
身体に自由がきかなくなってきた人たちが
のびのびと住める小さめの集合住宅とか。
伊藤
そうですね。
ちょっと助け合えるぐらいの距離感、
いいですよね。
段差がなく、ちゃんと手すりがあって、
温かくて風通しがよくって、気のいい家。
小林
そうですね。
そして、すぐに出かけやすい家。
いま、私たちがしているように、
寝室だけ靴を脱いで入るという間取りも
考えられるんじゃないかなと思います。
伊藤
街の中にあるというのもいいかも。
自分で買い物に行け、
自立した生活が送れますから。
小林
最後まで自分で買い物して、みたいな暮らし、
憧れますよね。
やっぱり自分で動ける、
動きやすい家がよさそうです。
‥‥なんて、私たち、
何の話をしているんでしょう(笑)。
伊藤
ふふふ、でもみんながほしがっていることですよね。
マナさん、またぜひ、いろいろとお話、させてください。
今日はほんとうにありがとうございました。
小林
ぜひ、また、いらしてくださいね。
ありがとうございました!

旅と地続きの暮らし

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伊藤
お忙しく過ごされる中で、
旅もお好きだとお聞きしました。
小林
はい、そうなんですが、
独立して仕事を始めてからは、
旅というより出張のほうが多いんです。
仕事で旅をしているという感じ。
あるいは仕事で行った先で時間をつくって、
近くにある建築を見に行ったりとか、
美術展を見に行ったりとか。
伊藤
旅も、仕事とプライベートが地続きなんですね。
そこで見たものからインスピレーションを受けて、
また仕事の形になったりもするでしょうし。
じゃあ、「ちょっとのんびりしていこう」というよりは、
「ついでに、あそこにも行ってみよう」という
行動的な感じ?
小林
はい、夫が好きなんですよ、旅のこまかい計画が。
だから私たち、プライベートの旅でも移動が多くて、
たとえばリゾート地で3日間、
のんびりしたことなんてないんです(笑)。
伊藤
そうなんですね! 
マナさんもそれにお付き合いして?
小林
そうですね。
「さすがに詰め込みすぎじゃない?」
とか言いながら、一緒に行動してます。
私もまあまあそういうのが好きなんですね。
でも、忙しいのが好きだなんて、
あんまり北欧的じゃないですね(笑)。
伊藤
そういえば、おふたりで
何カ月も海外を旅されたことがあるとか。
小林
はい、独立して仕事を始める前のことです。
私たち、同い年で、
新卒でそれぞれ7年くらい会社員をしていました。
結婚してから2人とも会社を辞め、
いっしょに事務所を立ち上げようと。
その時じゃないと長い旅には行けないと思ったので、
半年間、17カ国、70都市に行きました。
伊藤
えっ! ヨーロッパ方面だけで?
小林
はい、ヨーロッパです。
トルコから入って、ギリシャに行って、
北欧からヨーロッパ全土を回りました。
1日で3カ所、電車を降りて
回ったりもしたんですよ。
伊藤
すごい! 
そういった計画を立てるのは
やっぱりご主人? 
小林
そうなんですよ。
スマホがなかったから、時刻表を持って。
伊藤
なんでしたっけ、トーマス‥‥。
小林
トーマス・クック!(*) 
伊藤さん、よくご存知。

(*)トーマス・クックは英国の旅行会社。その出版部門が出していた時刻表『Thomas Cook European Timetable』は、1873年から2013年まで発行された。現在は『European Rail Timetable』に引き継がれている。

伊藤
なぜ知っているかというと、
義理の兄が前職を辞めて、
独立開業をする間の数ヶ月間、
同じようにヨーロッパを旅したんです。
そのとき姉夫婦が頼りにしたのが
トーマス・クックの時刻表だったと、
聞いたことがあったんですよ。
小林
うんうん。一緒です。
伊藤
当時はデジタルカメラもなかったですよね。
小林
そう! 36枚撮りフィルムを100本、
持って行きました。
でもだんだん残り枚数がなくなるので、
「いや、ここは撮らなくていいだろう」とか。
伊藤
今みたいにとりあえず撮っておいて、
あとで削除とかできないですもんね。
でも逆に決めて撮ることが、
よかったのかもしれないですね。
その時の膨大な写真は、今は?
小林
選んでプリントアウトしたんですけど、
それも膨大な数になったので、
さらに選んでアルバムにしました。
伊藤
いまでも、旅は多いですか?
小林
そうですね。
国内では出張に行くついでに、2~3日とか。
仕事は全国的にやっているので。
伊藤
店舗、住宅、展覧会の会場構成まで
なさっているんですよね。
ずいぶん違うお仕事だと思うんですが、
どうやって気持ちを切り替えるんですか。
小林
気持ちは‥‥、切り替えないんです。
どんな仕事も同じで、
物件がきたときに、まずすごく調べます。
そして新しいアイデアが出るまで、みんなで話す。
昨日もそんなことがありました、
クライアントの方と3人でご飯を食べながら、
おもしろいアイデアが決まって、
それに発展させて、さらにずーっとしゃべって。
どの仕事も、そういう感じですね。
伊藤
それはとってもおもしろそうですね。
でも切り替えをしないって、
住宅と展覧会と店舗では、
わたしからすると、
全然違うように思えるんです。
小林
そうなのかもしれないんですが、
2人で独立した32歳の時から、
少なくても同時に5案件、
普通に10、15ぐらいが同時に動いているので、
切り替えていると逆に大変っていうか(笑)。
伊藤
きっと、頭の中に、
いろんな引きだしがあるんですね。
たとえば住宅で使うテクニックや物が、
会場構成や店舗のヒントになることも?
小林
そうですね。
たとえば、ですけど、
お店だったら居心地のいい、
家のようなお店を考えますし、
住宅の仕事だったら、
ちょっと非日常が出るように、
店舗の技術をちょっとだけ使ったりもします。
お客さまの目から隠すこととか、
バックヤードにストックの場所をつくるとか、
店舗から住宅にも応用できることってあるんですよ。
間接照明を住宅のキッチンの後ろに入れると、
キッチンとダイニングが温かな感じになる、
というのもそうですね。
ちなみにこの部屋(ダイニング)も、
今は全体的に明るい照明ですが、
夜、落ち着きたい時はスポット照明にして、
一瞬、暗いと感じるくらいまで光量を落とすんです。
‥‥スイッチを切り替えてみますね。
友人と集まるような時は、
夜ごはんはこういう感じで。
伊藤
わぁ! 
たしかに、落ち着きます。
住宅の設計っていうと、
まず「形」や「間取り」だけれど、
窓からの光の当たり方や、
照明ってすごく重要だと思うんです。
小林
そうです。すごく重要です。
伊藤
ところが、わりとみなさん、
照明のこと、後回しにされますよね。
小林
そうなんですよ。
というのも「明るい」ことに慣れているんですよね。
昭和時代、私たちの親世代は、
もう隅々まで明るいのが正しかったんです。
伊藤
そうですね。実家もそうでした。
でも、改めて思うんです、
「明るすぎない」って、居心地がいいですよね。
小林
そう、すごく居心地がいい。
最近、夜、家々やマンションの
窓からこぼれる光を見ると、
だいぶ白く煌々とした照明のおうちが減りましたよ。
温かくて、明るすぎない光になってきました。
私、いつも見てるんです。
伊藤
わかります。そうですね。
みんな、だんだんと、
それが気持ちいいっていうことがわかって。
マナさんたちは、施主さんにも、
照明の提案をされるんですか? 
小林
そうですね。
「リビングはそんなに明るくしなくてもいいけれど、
キッチンはこまかい作業をするから
明るくしましょう」とか、
そういう提案は常にしています。
伊藤
「やっぱりそうしてよかったです」と
おっしゃられるんじゃないですか。
小林
はい、嬉しかったのは、
「キッチンで働く感じが、すごく美しく見えます」
と旦那様がおっしゃってくださったんです。
奥様を見た時に、すごく美しいと感じたんですって。
伊藤
なんと! うれしいですね~。
小林
そして、インテリアといっても、
表面的なものだけではないんです。
動線もそうですしね。
伊藤
つい、テーブルをどうしようとか、
ソファは、とか、
家具のことばかりに目がいくけれども、
動線ってすごく大事です。
小林
この家はキッチンが真ん中にあって
まわりをグルグル回れるっていうのが、
すごくいいんです。
伊藤
そうですよね。

ものがあっても、ノイズはない

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小林
ここが、リビングルームです。
伊藤
わぁ。マナさんのおうち、ほんとうに、
北欧みたいです。
天井の高さと光のまわり方と、
周辺の緑の多さ‥‥。
小林
実は大きな開口部は北側に面しているんです。
南側は、すぐそばにおうちが建っているので、
上だけオープンにしています。
北側の窓からの景色って、
南からの日が当たるのが見えるので、
緑がとてもきれいなんですよ。
伊藤
北側の開口部は、直射日光が入らないけれど、
室内に届く光が安定しているんですよね。
小林
そうなんです。
事務所のほうも光が一定なのがよくて、
開けっ放しで過ごすことも多いんです。
伊藤
ほんとうに、緑がいっぱい。
小林
紅葉の季節もきれいですよ。
しかも静かで、夜なんて、
最初の頃はちょっと怖いくらいでした。
最近は慣れましたけれど。
公園はいいですね、
枯れた木があると切ってくれるし、
ある程度、剪定もしてくれるし。
伊藤
そして、ここにも、ロフトが!
小林
そうなんです。ここも上はロフトになっていて、
お友達が来て泊まったりするときに使います。
リビングルームで寝てもらうことも多いですけど。
伊藤
リビングルームはソファではなく、
クッションだけというのもいいですね。
小林
そうです。このクッションは、
ミナ・ペルホネンさんの生地で、
生地自体がリバーシブルになっているので、
経年変化で反対側の色が出てくるはずなんですけど、
なかなか丈夫で、もう7年くらい経っているのに、
きれいなままなんですよ。
ネコが爪を研ぐ場所はボロボロになっちゃってますけど。
このクッション、お友達のお子さんが来る時は、
床ぜんぶに広げたりしますよ。
伊藤
とても便利そう。
そして、飾り棚! 
すごくすてきです。
刺し子の布が飾ってありますね。
小林
これは、ミャンマーのものかな? 
キルティングみたいな感じになっているんです。
この棚、本棚にするとか、
ほんとはもうちょっと普通に、
実用として使おうと思っていたんですよ。
けれども、ここにいろいろ詰まっていると、
ぎゅうぎゅうで圧迫感があったので、
やっぱりやめようって。
2人がオッケーなものだけを置くと決めたんです。
伊藤
時々入れ替えをなさるんですか。
小林
そうですね、たまに。
でもいまの状態が気に入ってます。
伊藤
ここにも、音楽の気配が。
お二人ともお好きなんですね。
小林
私は聞くだけ、
夫は(レコードを)探す、かけるばっかりですが、
共通のたのしみです。
夫は有線で選曲の仕事もしていて、
カフェ・アプレミディ(Café Apres-midi)っていう
チャンネルで土曜日の6時から10時までの
曲のセレクトをやっていたり、
それこそ人前でDJをやっていたり。
伊藤
すごーい。
そういう楽しさが詰まっていますね。
(やってきた猫に向かって)あら、こんにちは。
今、犬と猫で2匹ですか?
小林
そう、犬とネコで2匹。
以前は猫だけでも3匹いたんですよ。
当時からこの子だけは人前に出るのが平気で。
伊藤
そうなんですね。
2階にはキッチンはないんですね。
小林
はい、料理は1階ですね。
でもここの扉を開けると‥‥。
伊藤
えっ、えっ?! シンクが出現!
小林
水屋っていうか、お酒をつくるための
ミニキッチンです。
私たち、すごくお酒を飲むので。
もうお恥ずかしいぐらいガブガブ飲むの。
伊藤
なるほど! ふふふ。
扉を閉めると収納家具のようで、
開けるとお酒専用のキッチンが出現するなんて、
最高じゃないですか。
マナさんたち、「こういうのがいいな」と思ったら、
全部実現できちゃうのがすごい。
扉の持ち手もすてきですね。
小林
ちょっとクラシックですよね。
これ、古くからある製品なんですけれど、
最近はあまり使われていないんですよ。
でも、いいでしょう。
伊藤
キッチンが見えているのと見えていないので、
こんなに印象というか、
生活感のあるなしが変わるんですね。
小林
そう、だから見せる部分と
見せない部分を考えてつくっています。
そうじゃないと、
やっぱりガチャガチャしちゃうっていうか、
ノイズになっちゃうので。
伊藤
それにしても、やっぱり天井の高さ! 
そして、窓外の景色のよさ。
この窓枠の素材は‥‥。
小林
これ、アルミと樹脂の混合の
複合サッシというものです。
樹脂は熱伝導率が低く
冬に屋外の冷たさが室内に伝わりにくいんです。
最近は全部樹脂の窓枠もありますね。
伊藤
いわゆる金属のサッシだと、
風景が、急に日本の家になるんですよね。
味気なくなっちゃうというか。
小林
窓に関しては、できるだけ仕切りの少ない
大きなガラス窓を入れたかったんですが、
建設計画をしていた頃、サッシの規格が変わり、
あんまり大きい窓がつくれなくて、
こういった普通のサイズのものになりました。
でもガラスも、建物自体も、
雪国でも大丈夫なくらいの断熱仕様なんですよ。
伊藤
冬、熱が逃げないから、あたたかいでしょうね。
おうちってしっかり断熱すると、
夏も外の暑さが入ってこないので、
一年を通して快適だとききました。
それにこのおうち、開口部の工夫で、
風が通り抜けるようになっていますよね。
小林
そうなんです。
二ヶ所開けると、風が抜けます。
伊藤
引っ越される前は集合住宅だったんですか?
小林
はい、都心の古いマンションでした。
それをリノベーションして暮らしていました。
伊藤
ここに「よし!」って、
家を建てようと思ったきっかけは、
どんなことだったんですか。
小林
住んでいた古いマンションが建て替えになるというので、
出ることにしたんです。
そこも敷地や周辺に緑がいっぱいだったので
好きだったんですけど、
ここの緑とは全然違うなと思いました。
伊藤
暮らしは、だいぶ変わりました?
小林
そうですね。
コロナのこともあってか、
よく歩くようになりました。
それまでは、できるだけ歩きたくなかったんですよ。
伊藤
わたしもそうです。
今、まさに歩いてます。
小林
あ、ほんとですか。
都心にいる時は、タクシーもよく使いましたし、
階段は嫌だ、エスカレーターがいいとか、
そういう感じだったのに、
これほど歩くようになるなんて自分でも驚きです。
1日1万歩歩きたいと思っていて、
ここから最寄り駅までが徒歩15分なんですけど、
15分歩くと1500歩、往復で3000歩、
それじゃ足りないので散歩もしています。
伊藤
前も住居とお住まいとお仕事場が
一緒だったんですか?
小林
前は別々でした。
それで一緒にできる場所をと探したんです。
緑が多いところに、って。
エリアは限定せず、広範囲に、
たとえば鎌倉なども探したんですよ。
北欧によく行っていたので、
「北欧みたいな暮らしがしたいよね」と。
伊藤
2階のプライベートスペースを拝見して、
こうしてあらためて1階に戻ると、
お仕事場なのに、
暮らしと近い感じがして、
とても居心地がいいと思いました。
小林
そうですね。とくに最近、コロナ以後は、
私たちの気持ちも変化しましたね。
走り続けるような仕事の仕方ではなく、
「休みながら」と考えるようになったんですよ。
それまでは忙しいのが当たり前でしたから。
伊藤
忙しいのって、当たり前になっちゃうんですよね。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月21日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。


ROROS TWEED 
ハーフブランケット

▶︎商品詳細ページへ

たて135×よこ110cmの
使いやすいサイズのブランケットです。
無地なので、どんなインテリアにも
さりげなく合うのもうれしい。
「車の中に置いて、子供が寝てしまったら
そっとかけてあげよう」
と言ったのは、
小さな子供がいるお母さん。
家の中だけでなく、車の中や仕事場、
ピクニックなど、あらゆる場面で
活躍すること間違いなしです。
(伊藤まさこさん)


pageaérée 
ray unisex pajamas

▶︎商品詳細ページへ

ここ数年、
シルクのシーツやピローケース、
ナイトパンツなど、
眠る時の体への負担をできる限り無くそうとしている私。

心地よい眠りのためには、
肌、そして自分にやさしい素材に包まれたい。
わがままでもいいから、
好きなものに囲まれて眠りたいんだ!
そんな時に出会ったのが、
pageaérée(パージュアエレ)のパジャマでした。

素材のよさはもちろんですが、
肌に当たらないようにと、
縫い代の始末がていねいにされていたり、
ポケットがついていたり(意外にないんです)、
リラックスできるのに、
だらしなく見えないように考えられた
シルエットだったりと、
このパジャマの中に、さまざまな工夫がされている。

一見、とてもスタンダードに見えますが、
袖を通すと、よさが分かる。
洗っては着て‥‥を繰り返しているので、
weeksdaysの発売を機会に、
もう一枚欲しいなぁ
なんて思っています。
(伊藤まさこさん)


pageaérée 
vic one-piece stand

▶︎商品詳細ページへ

デザイナーの篠さんは、パリ在住。
前立て部分にさりげなく施された刺繍のヒントは、
フランスのヴィンテージのパジャマからと聞いて、
なるほどと納得しました。
私も、リネンのパジャマやシーツに施された
イニシャル刺繍がとても好き。
シンプルなこのワンピースのポイントになっていて、
なんだかうれしいんです。

weeksdaysでは
上下セットのパジャマ型にくわえて、
ワンピース型もご紹介。
パジャマかワンピースか、と眠る時にえらぶものは、
それぞれ好みですが、
いずれも寝心地のよさ、そして気持ちのよさは抜群なので、
「今日はワンピース」「明日はパジャマ」なんて、
気分によって使い分けても。

ワンピース型は、寝巻き感があまりないので、
ワンマイルウェアとしてもよさそうです。
(伊藤まさこさん)

ふたりそれぞれに

未分類

小林
はじめまして、小林マナです。
伊藤さんとは、共通の知人、友人が多くて、
よく話をきいていました。
伊藤
そうなんですよね。
weeksdaysでもお世話になっているかたが、
マナさんたちに
お部屋のリフォームをお願いしていたりして、
お目にかかってみたかったのでうれしいです。
今日はどうぞよろしくお願いします。
小林
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
伊藤
あら? とてもかわいい子が。
こんにちは。ぬいぐるみみたい。
小林
老犬を預かるボランティアをしているんです。
この子は比較的若いんですけど、
ほとんどの子がうちで亡くなる感じで、
老犬はいろいろとお世話もありますから、
この事務所兼住まいの1階は
土足で使うことにしているんです。
伊藤
なるほど、それで
「そのままどうぞ」だったんですね。
汚れても、拭いたりしやすいように。
小林
お散歩にも行きやすいですしね。
伊藤
最初に、お家の中を
拝見させていただいてもいいですか?
小林
どうぞ、どうぞ。
広い家ではありませんが、ハウスツアーを。
うちは、公私混同といいますか、
1階が仕事場、
2階がプライベートルームと大きく分けてはいますが、
キッチンとダイニングは共用にしていて、
夫婦でも、事務所の子たちも使うんです。
いまいる場所はダイニングですが、
打ち合わせでも使いますし、
食事をとるのもここ。
伊藤
壁の書棚に、お仕事関連の書籍がいっぱい。
小林
はい。隣がキッチンです。
キッチンは通路にもなっていて、
抜けるとその先の
スキップフロアで3段下がったところが
仕事場になっています。
どうぞ、こちらへ。
伊藤
はい、お邪魔いたします。
今日はどやどやとすみません。
鹿児島睦さんの絵がありますね。
小林
鹿児島さんとは、展覧会の会場構成を
させていただいたご縁で、
仲良くさせていただいているんです。
これは展覧会の時に会場構成で使ったものなんですが、
ここに運んでから真ん中を描き足してもらいました。
私と主人はここが仕事場ですが、
スタッフのみんなは、
コロナ禍を経てリモートが増えました。
それで常駐する人が減ったのと、
老犬の預かりで車いすのような装具の子もいたので。
広々と使えたほうがいいと、
デスクを減らし棚を外してスッキリさせたんです。
伊藤
デスクの目の前が一面の緑ですね。素敵。
小林
はい、井の頭公園に隣接しているんです。
リビングルームにはテラスをつけたので、
季節のいいときはテラスに出て
公園に向かってご飯を食べたりもします。
伊藤
すばらしい借景ですね。
小林
ありがとうございます。
あとは事務所にバックヤードがあって、
これで1階はぜんぶ。
2階もご案内しますね。
ここでスリッパに履き替えをお願いします。
変なところで靴を脱いでいただいてすみません。
伊藤
なるほど、階段から先が
プライベートスペースなんですね。
小林
(2階へ上がって)
ここが私の部屋です。
伊藤
わぁ! かわいいですね。
飾り棚にたっぷりのボリュームがあって、
かわいいものが、たくさん。
小林
ふふふ、そうなんですよ。
もう、子ども部屋みたいでしょう? 
この個室をつくって、
対外的なデザイナーの私と、
かわいいものが好きな私が
同居しているんだってわかりました。
伊藤
自分のお部屋を持たれて、
好きなものを並べているうちに、
実はかわいいものが好きだったんだと気づいた、
という感じだったんですか。
小林
はい。かわいいものは、
前の家にもあったことはあったんですけど、
こうして一ヶ所に集めてみたら、
こんなにかわいいものが好きなんだって。
伊藤
そうなんですね。
さらにロフトが。上が寝室に?
小林
ええ、上に私のベッドがあります。
うち、夫婦別寝室なんです。
伊藤
ここでお仕事をすることはないんですか。
小林
ふだんの仕事は1階なんですが、
私、趣味で、古代マヤ文明の暦を使った
占いをやっていて、
ここからリモートでお話しをすることはあります。
伊藤
ここはコンパクトなお部屋だけれど、
天井が高いし、
ロフトの天井まで抜けがあるからいいですね。
小林
そうですね、広さほんとにないんですけどね。
ロフトの下が、まるごとクローゼットです。
つまり、バンクベッド(二段ベッド)みたいになっていて、
一段目がまるごと背の高いクローゼット、
という感じなんです。
小林
そして、いちどドアを出まして‥‥、
ちょうど対称になっているスペースが、
夫の部屋です。どうぞお入りください。
伊藤
お邪魔します。
えっ、なんて楽しいお部屋! 
DJルームになっているんですね。
レコードもたくさん。
小林
そうなんですよ。
引っ越す前は個室がなかったので、
リビングに全部、レコードがあって、
それはちょっとよくないと思って。
ほんとに圧迫感があったんです。
伊藤
あら。でもたしかに
「あなたの趣味のものを毎日見る私」になりますよね。
小林
そうそう! 
伊藤
わかります。
小林
そうすると、なんかよくないねって。
だから別に一部屋借りて、
そっちに大量のレコードを
置いてもらっていたんです。
伊藤
なるほど。
でもこうして、個室の趣味の部屋ならば、
これぐらいの広さでも、
むしろキュッとしてて、
憧れの部屋みたいな感じになるものですね。
狭いからといって嘆くわけではなく。
小林
そうですね。スペースってつくり方によって
もうほんといくらでもどうにでもなる。
伊藤
しかも緑が見える。
やはりロフトの上が寝室に?
小林
そうなんです。
この部屋は、クローゼットの中から
上につながっているんです。
伊藤
秘密基地みたいで楽しいですね。
夫婦別寝室、なるほどって思いました。
ご夫婦だからといって、
睡眠のタイミングが一緒ではありませんものね。
起きるタイミングも違いますし。
小林
はい。それと、
夫にネコアレルギーがあったので、
ネコを入れない個室で眠りたい、
ということもありました。
伊藤
あ、ネコちゃんもいるんですか?
小林
今もいますよ。隠れているのかな。
そして‥‥、ここがバスルームです。
伊藤
こちらもかわいいつくり! 
シャワーブースが別にあるんですね。
小林
ふだん、シャワーばかりなので、
独立させたんです。
濡れるのはシャワーブースだけなので
掃除が楽ですよ。
伊藤
バスタブは身体を洗う場所ではなく、
温まるためのものということなんですね。
小林
そうなんですよ。
身体はシャワーで洗います。
そして湯船を使いたい時は、
いったんシャワーブースを出て
移動しないといけないので、
うち、いっぱいバスマットがあるんです。
この間取りのヒントは、
フィンランドで訪ねたお宅にあるんです。
そのおうちは、「浸かるだけだから」と
ダイニングルームに湯船を置いていて! 
それをマネしたんですよ。
伊藤
そうなんですね。
ほんとうにリラックスすることが目的の
湯船なんですね。
小林
そうなんです。
そのダイニングルームには窓があって、
そこから見る景色が好きなんだそうです。
そういうの、とてもいいなと思いました。

ハーフブランケットとくまの湯たんぽ

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ミルクティとエリック

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出かける予定のない日の私は、
リビングのソファかデイベッド、
またはリクライニングチェアの
3カ所のどこかでごろごろしています。

いつも仕事で動き回っているせいなのか? 
家にいる日は、
とにかくじっとして本を読んだり映画を観たり。
あとはお茶と
ちょっとあまいものがあれば言うことなしです。

今の季節に欠かせないのは、
ブランケットと湯たんぽ。
ひとつふたつ‥‥と数えてみたら、
ブランケットは7枚、
湯たんぽは4つありました。

この冬くわわったのは、
ROROS TWEEDの小さめブランケットと、
OWENBARRYのくまの湯たんぽ。

冬のひだまりの中で飲む、
ミルクティーのような色合いが、
とにかくかわいくて。
置いてあるだけでほっこりするんです。

ブランケットはその名もミルクティ。
くまの名前はERIC。
ERICくん、
冬生まれの友人のプレゼントにもいいかな、
なんて思っています。
きっと喜んでくれるに違いない。

おばあちゃんになっても

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伊藤
今後、Satomiさんが使いたいと思われている石は
ありますか?
Satomi
オパールで、色がはっきりしていて、
形もユニークなものとか。
一点もののオパールは、それぞれ個性があって、
プチっとしたかわいい石もあれば、
力強い石もあるんです。
伊藤
そうなんですね。
Satomi
まさこさんは、今後、欲しいものはありますか?
伊藤
大きめのオパールの指輪で、
おばあちゃんっぽくないけど、
おばあちゃんになっても
似合いそうなものが欲しいなぁ。
Satomi
それ、最近つくりましたよ(笑)! 
すごくかっこいい一点もののオパールリング。
お店には置いてないんですけど、
サイトに出てるので、のぞいてみてください。
伊藤
えっ、それは見なくちゃ! 
お店といえば、表参道に出店されたお店、
いかがですか?
Satomi
予約制のニューヨークのショールームとは違って、
オープンな路面店って
いつどんな方が来るかわからないから、
そこが、おもしろいです。
この前なんて、高校の同級生がふらっと
来てくれたんですよ。
Facebookで知ったみたいで。
伊藤
それはうれしいですね! 
タイミングがよければ、会えますものね。
Satomi
路面店ならではのサプライズですよね。
それと、お店を出してよかったなと思ったのは、
お客さんと会話ができたこと。
ニューヨークでは基本的に
お客さんと直接やり取りをしないので、
なかなか生の声が聞けなかったんです。
私はいいと思ってつくっているものを、
実際お客さんはどう感じているのかわからなかった。
でも、東京のお店で接客してみて、
「これ、めっちゃいいんですよ」ってお伝えすると、
本気で気に入ってくださる方が多かった。
そのことがほんとうに嬉しくて。
伊藤
なるほど。
お見立て受注会でも、それは感じました。
Satomi
ちゃんと好きになってくれる方がいると分かったから、
私がいいと思うものづくりを、
自信を持って突き進めていかなあかんなと感じましたね。
伊藤
コロナ禍のとき、
ニューヨークのお店は大変だったと聞きました。
Satomi
それはそれは大変でした! 
世の中もそうだったと思いますけど、
まさか、ということがたくさん起こって‥‥。
3ヶ月出社出来なかったので
自宅に機材を持ち帰って制作から出荷作業まで
ひとりで行いました。
そしてやっと会社に戻れる状態になったと思ったら
人が戻りたがらない‥‥。
アメリカは当時「失業保険+手当」を
ものすごく出していたので、
会社に戻らずにそれをもらい続ける方がいい
という人たちがアメリカ中にいて、
うちの会社に限らずこの問題は深刻でした。

そしてやっといろんなことが落ち着いたと思ったら、
制作スタッフが全員辞めてしまう、という‥‥。
コロナ禍で今後の人生を考え、
それまでやりたいと思っていたことを
このタイミングでやりたい、など
理由はさまざまでしたが
あの時は本当に大変で、
もう会社を畳んで日本に帰ろうかと思いましたね。

でも、そもそもひとりでスタートしたことなので、
またあの時に戻ったと思えばいい、
「ピンチはチャンス」と無理矢理自分で自分の背中を押して
なんとか乗り切りました(笑)。

伊藤
今目の前にある仕事が全てというか、
全力を出してこそ、
次に繋がるというのはありますよね。
「これでいいや」って一度気を抜くと、
もう続かない。
Satomi
ええ。
「もう無理!」って思ったときは占いでも見て、
「今はそういう時期なんや」と思って耐える。ふふふ。
伊藤
そうだ、Satomiさんは占いがお好きなんでしたね! 
そういえば石も、そういうときに力をもらえる、
という人も多いような。
私はそんなに気にしないタイプなんですけど、
気づかないうちにもらってるのかも?
Satomi
「面接の日にSatomiさんの
ネックレスをつけて行ったら、すごい力が湧いた」
と友達から言われたことがありますよ。
伊藤
おおー! わかる気がします。
Satomiさんのつくるジュエリーだけでなく、
Satomiさん自身からもパワーをもらってるんですよ。
誰がつくっているのかは、すごく大事ですから。
「この人だから」、ね。
Satomi
ハイ、私がつくっています(笑)。
伊藤
力強いです。
Satomiさん、どうもありがとうございました。
Satomi
こちらこそ。
また日本でお会いしましょう!

ふたつ目のパールピアス、そしてミステリアスな光

未分類

伊藤
今回のお見立て受注会で、
Satomiさんがお客様に選ばれるものが、
どれもこれも、新鮮でした。
お客様も、「えっ、私に、これを?」って、
ちょっとびっくりしながらも、目を輝かせて。
Satomi
たくさんある中から自分に似合うものを選ぶのって、
すごく難しいことだと思うんです。
ですから、こちらが直感的に
「似合わはるやろな」と思うものをつけていただくと、
ご自身では選ばないようなものであっても、
「すごくいい!」って気に入ってくださる。
伊藤
たとえばあこやパールのフープピアスは、
Satomiさんご自身でもつけられますか?
Satomi
これはフォーマルなテイストもあるデザインだから、
私なら片方だけつけるかなぁ。
片方だけとか、他のものと混ぜてつけると、
パール特有の“優等生感”がなくなるんです。
伊藤
へぇー! 片方だけを? 
確かに両方つけると、
きちんとした印象になるかもしれない。
いいこと聞いちゃいました。
私、いつも同じピアスを両耳に1つずつ
つけていたから、ハッとしました。
もっと自由でいいんだ、って。
Satomi
1粒パールや石が1つだけのピアスって
わりとよくある形だから、
今回は2mmっていう小さいサイズの
あこやパールを連ねたデザインにしました。
伊藤
パールってピアスの入門編というか、
基本みたいな素材だから、
こういう目を惹くデザインはうれしいです。
一番端っこの留め方もかわいい。
Satomi
基本の1粒パールを持っている方にも、
ふたつ目のパールピアスとして使っていただけるかなと。
伊藤
ふたつ目、いいですね!
片耳に1粒パール、
もう片方にこのフープピアスをつけてもいいし、
私はピアスホールが左に3つあるから、
ふたつ並べてつけてもいいな。
Satomi
うん、片耳にふたつしてもおもしろいと思いますよ。
私もピアスホールが多いから、
いつもどうやって遊ぼうかなって考えてます。
伊藤
Satomiさんはピアスも指輪も
たくさん身につけていらっしゃるけど、
全体的にまとまって、バランスが取れているのが
素敵だなぁと思って。
Satomi
ひとつひとつのデザインが、
そこまで主張が強くないからでしょうね。
重ねづけしてもわりとなじむので、
いろいろ遊んで、楽しんでいただけたらうれしいです。
伊藤
レインボームーンストーンのピアスは、
遠くからでもわかるほど、存在感がありますよね。
いわゆるムーンストーンとは別の石なんでしょうか?
Satomi
ええ。同じ鉱物ですが発色が違います。
一般的に知られているムーンストーンは、
もうちょっと乳白色をしていて、
こんなふうに青みがないんです。
私はレインボームーンストーンが放つ、
このなんとも言えないミステリアスな光が好きなんです。
伊藤
ほんとうだ。
ぱっと見た感じは白い石だけど、
角度によって色が違って見えて、
「こういう面もあるんだ」
ということが発見できますね。
Satomi
そうなんです。
それからムーンストーンの場合は、
「カボションカット」という面のない球形のカットを
することが一般的なんですけど、
今回のレインボームーンストーンには、
「ローズカット」(三角形を組み合わせた24面)という、
面が大きめのカットを施しています。
それによって氷のような表情も生まれて、
ちょっとクールな味が出せたと思います。
伊藤
すごくよくわかります。
こんな小さな世界の中に、
ほんとうにいろんな工夫をされているんですね。
Satomi
石自体は小さいんですけど、
カットの仕方や、石を留める爪の種類といった
ちょっとしたことで、
見え方や光り方、印象が全然違ってくるんですよ。

再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月14日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

weeksdays
weeksdaysの日めくりカレンダー2024

▶︎商品詳細ページへ

weeksdaysチームから、
「日めくりカレンダーが欲しい」という声が出た時、
できるのかしら?(つまり365枚も
写真が撮れるのかということ)と思ったけれど、
撮ってみると、意外なほどにおもしろかったんです。

作る過程で気がついたこと、
それは、日常の中に、
「いい!」と思う瞬間があふれていたこと!

8ヶ月ほど使ってみると、
カレンダーとしてだけでなく、
メモにしたり、
メッセージを書き込んで贈りものに添えたり、
壁に貼ったり‥‥
いろんな使い方ができることも発見。
このカレンダー、なかなかの働き者ですよ。

皆さんの「こんな風に使ってる」コンテンツも必見。
目から鱗の使い方をどうぞ。
(伊藤まさこさん)


LIVRER YOKOHAMA
洗濯用洗剤 シルク&ウール 600ml

▶︎商品詳細ページへ

洗濯ブラザーズの
「シルク&ウール」を初めて試した時は、
本当にびっくりしました。
エッセイにも書いたように、
私の「洗濯革命」と断言できる、
洗い上がりの美しさ、そしてしなやかさ。
家でこの仕上がりになるなんてとうれしくて、
去年の衣替えの衣類はほぼすべてを
自分で洗濯をしたほどです。

思わず、友人知人に「使ってみて!」
と連絡をしたところ、
みんなが「すごい‥‥」と絶賛。
洗濯って、どことなく
家事の片手間という感じでしたが、
洗濯する時間が楽しい時間へと変化したのは、
なによりの収穫でした。

weeksdaysオリジナルは、
沈丁花とすずらんの2つの香り。
さりげなく、そしてほのかに漂ってくる春の香りは、
洗濯している人へのご褒美。

洗い上がった服は、前より一層愛着が湧く。
服が好き、おしゃれが大好きという方に、
ぜひ使っていただきたいなぁと思います。
(伊藤まさこさん)


Le pivot
リサイクル裏毛起毛ZIPパーカー

▶︎商品詳細ページへ

「袖を通した瞬間、
思わず『わぁ、軽い!』という言葉が口に出ました。
私にとって10年(いやもしかしたらそれ以上)ぶりの
パーカーです」

3月の発売で、こんな風に書きましたが、
そう思ったのは私だけではなかったみたい。
「パーカー、久しぶりです!」
そんな声をたくさんいただき、
ああ、紹介してよかったな、そう思いました。

欲しくなったのは、軽さだけではありません。
生地の触り心地のよさや、
袖(とくに二の腕部分)がすっきり見えること。
身頃のサイズ感も絶妙で、
これなら着たい!
そう思わせてくれた
大人のパーカーだったのです。

今回はダブルジップになり、
サイズ感も少し変わりました。
くわしくはコンテンツをご覧くださいね。

そうそう、
フードですが、
じつはかぶれません。
デザインの要素のひとつとなっていて、
これがあるのとないのとではシルエットがぜんぜん違う。
この「ちょっとした違い」が、
Le pivotの服の特徴。
パールの似合うパーカーなんて、
他のどこにもないのです。
色は、杢グレーとオートミールの2色。
お好きな色をどうぞ。
(伊藤まさこさん)

エイジレスなホワイトオパール

未分類

伊藤
Satomiさん、9月のお見立て受注会では、
ありがとうございました。
いっしょにお店に立ってくださって、
とっても楽しい時間でした。
Satomi
こちらこそありがとうございました。
日本のお客様と直接お会いできた、
貴重な機会でした。
伊藤
weeksdaysはふだんはオンラインでの販売ですから、
買ってくださる方のお顔が見られたのは、
とても嬉しい経験でした。
今回は、weeksdays限定のコラボとして
「白」ということをテーマに
3つのジュエリーをつくっていただいたんですよね。
そしてSatomiさんが選んだのは、
ホワイトオパール、
レインボームーンストーン、
そして、あこやパール。
Satomi
はい。
この3つの中でも、ホワイトオパールって、
ちょっとめずらしいでしょう? 
最近よくジュエリーデザイナーが使うオパールは、
もっと青みが強いものが多くて、
主に若い方たちに好まれているイメージがあります。
そんな中、ホワイトオパールって、
いわゆるトレンドのアイテムではありませんが、
それだけに新鮮に映りますし、幅広い年代の方に
つけていただけるかなと思ったんです。
伊藤
ジュエリー業界には「来年はこの石がくる」
というような、トレンドの予測があるんですか?
Satomi
わりとありますよ。
トレンドでも、オパールはここ数年、
すごく人気の石なんです。
私も気にはなっていたんですけど、
あまりキャッチーなものをつくりたくない、
という思いもあって、
「私らしいオパールってどんなものだろう」
って考えながら、ずっと使えずにいました。
それでやっと最近、
私のデザインにも使えると思えたのが
このホワイトオパールでした。
伊藤
なぜ「これなら使える」と思われたんでしょう?
Satomi
私、ダイヤモンドを用いたデザインが一番得意で、
10年くらい色がついた石をほとんど使ってこなかったし、
それほど魅力も感じなかったんです。
それがふと、純粋に、
「色のある石ってきれいだなぁ」と感じて、
レインドロップコレクションという、
色とりどりの石を使ったシリーズをつくりました。
その中にホワイトオパールも入れたんです。
伊藤
その「すとんと落ちた感じ」、
言葉にするのは難しいけれど、わかります。
Satomi
急に訪れますよね。
私の場合、それまでにつくってきた
ベースとなるコレクションがあったから、
色つきの石をスパイスとして加えるという形で
チャレンジできたということもあると思います。
たとえば指輪を重ねづけしていただいても、
地味な色のダイヤモンドの中に
きれいな色の石が1つだけあるようなデザインなら、
私らしくていいかなって。
伊藤
実際に仕上げてみて、
そして、つけている人を見てどう思いましたか?
Satomi
やっぱり石の持つ魅力ってすごいなぁ
と感じましたね。
伊藤
ほんとうに。
オパールって儚げな印象だし、この小ささ。
でも、つけるとちゃんと存在感があるんですもの。
すごく新しい出会いでした。
Satomi
真っ白ではないところがいいですよね。
この大きさでこの色なら、
つける方の年齢も選ばないと思いますよ。
伊藤
なるほど。
若い方はもちろん、
年齢を重ねた方にもつけられるピアスですね。

Satomi Kawakita Jewelry 白い石のピアス

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耳からこぼれる

未分類

はじめてのピアスは18歳の時。

パールのピアスが、
耳からこぼれ落ちるような感じで‥‥
と、耳の下の方にホールの位置を定め、
開けてもらったのでした。

両耳に、ゴールドのシンプルな
ファーストピアスがちょこん。

小さなものだけれど、
つけているのといないのとでは大違いで、
鏡をのぞいては、
うれしい気持ちになったものでした。

ホールが落ち着いて、
パールのピアスをはじめてつけた時は、
感慨深かったなぁ。
ずっと憧れていた、
「耳からこぼれる」が実現したのですから。

今週のweeksdaysは、
久しぶりにSatomi Kawakitaの
ジュエリーをご紹介します。
テーマは「白」。
Satomiさんがイメージする、白いピアス。
耳にちょこんとつけると、
あのうれしかった時を思い出すのでした。

コンテンツは、
Satomiさんへのインタビューですよ。
どうぞおたのしみに。

日常使いのすすめ

未分類

──
伊藤さんの漆の話も聞かせてください。
「まさこさんが、漆器を好きなの、知ってますよ」
という方も、多いと思うんですが。
伊藤
「ふつうに家にあるもの」という印象。
ずっと身近な存在でした。
みなさんもそうではないかなと思っているのですが‥‥。
田代
真室川に漆器をつくる土壌がなかったように、
ふだんから漆器を使う習慣のない地域もありますよね。
──
使うのはお正月だけとか。
いまは樹脂の汁椀で漆器風のものもありますし、
木製でウレタン塗装で仕上げているものもありますし、
とくに若い人には、漆器はハードルが高いって
思われているかもしれません。
おじいちゃん、おばあちゃんがいない生活だと、
漆器のない家、案外あるんじゃないかと思います。
伊藤
そっか。漆器の使い勝手のよさを、
もっと知ってほしいな。
お味噌汁だけではなく、
たとえばうどんや煮麺などの麺類を食べるときも、
漆器を使うといいんですよ。
うちの娘も、そういうとき、
漆器を選ぶことがほとんど。
田代
持ったとき、熱くないんですよね。
伊藤
そうなんですよね。
たぶん娘は、そういうことを考えず、
感じがいいから選んでると思うんだけれど。
田代
味噌汁を作らないから、
お椀はいらないっていう人たちも結構いるんです。
──
カジュアルに、マグカップを
汁物に使う人も多いですし、
インスタントなら、
使い捨てのカップがついてきますからね‥‥。
伊藤
料理家のウー・ウェンさんが、
中国のお父様に、
漆器を贈ったことがあるんですって。
そしたらすっごく喜ばれたそうですよ。
万が一落としても割れにくいし、
手にも優しいし軽いし。
田代
中国の漆器の歴史は古いんですが、
いまも使われているかどうかは、
私もよくわからないんです。
──
日常に使うという意味では、
現代の私たちのほうが
漆器に親和性が高いかもしれませんね。
漆器の日常使いの注意点は‥‥。
伊藤
電子レンジやオーブンには入れないこと、
あつあつの油など熱すぎるものは入れないこと、
ナイフやフォークを当てないこと、
使った後は食洗機は使わず、漬け置きせず,
やさしく洗ってすぐに水気を拭くこと。
ちょっとおそるおそる、という人は、
漆器を「手」だと思うといいんですって。
田代
そうそう! 漆器の扱いは、手と一緒です。
それね、漆屋さんはみんな言うんです。
その通りです。
研修生の頃にそれを聞いて
「なるほど!」って思いました。
伊藤
手が嫌なことはしなければいい。
だからフォークで強くさすこともしないし、
洗って濡れたらすぐに拭くんです。
──
洗うのもやさしく、
金タワシは使わない。
田代
ちなみに、洗ってそのままにしておくと、
水滴の跡がついて取れにくくなるんです。
自分の手を洗ったら
ハンカチで拭くのと同じだと思って、
拭いてあげてください。
伊藤
直射日光が苦手というのも同じですね。
田代
そう、紫外線を受けると、
ちょっとダメージがあるんです。
──
伊藤さんは、漆器は、旅に行った先で
いいなと思ったものを買う、という感じですか。
伊藤
そうですね,
骨董屋さんで買う場合もありますし、
作家さんと知り合いということも。
たとえばこれは、金沢の町を歩いてたら、
骨董屋さんにこれともう一個、
すごく大きい菜盆というのもあったんです。
とても惹かれたんですが、
その日はお店が休みだったので、
後日友達に見に行ってもらって、
あらためて、購入しました。

▲手前が1年間使った田代さんのお椀。右は角偉三郎さんの合鹿椀(ごうろくわん)、白漆は山本美文さん。奥のふたつは北原久さん作。どれも10年、20年選手の伊藤さんの私物。

──
漆器は、ふだん使いをなさるんですか。
伊藤
使いますよ。たとえば飯椀。
「マイ茶碗」というのは我が家にはなくて、
その日の気分で変えるのですが、
漆のお椀にすることも。
白いごはんも合うし、
炊き込みごはんもいいんです。
田代
そう。漆の器でご飯を食べると
おいしいんですよね。
伊藤
おかずがこれしかないなぁ、
っていうときでも、
漆器に盛ると、ちょっと、
いい感じになるんですよね。
田代
そうそう。ご飯の上に
残りもののおかずをのせても、
全部おさまるというか。

▲田代さんがつくった、
パッと食べられるワンプレートならぬワン椀。
そぼろと小松菜のお浸しの残りをのせたもの。

伊藤
寂しい感じがしない。
田代
そう。私は忙しくて
面倒なときはそうしています。
漆器だから特別なものをのせる、
と考えなくて大丈夫ですよ。
伊藤
そうですね、なんとなく、漆器は特別なもの、
お正月のものっていうイメージがある人も
いらっしゃるかもしれないけれど、
ふだん使いができるんです。


──
ところで、盛岡で
「うるしぬりたしろ」を構えたのが
2010年だということですが、
それから13年、盛岡にいらして、
なにか変化はありましたか。
田代
金継ぎを始めたことかな。
2010年当時、漆の仕事をしてるんですって、
はじめましての人に言うと、
「じゃあ、金継ぎ、できますか?」って
よく訊かれたんですよ。
伊藤
金継ぎも、漆を使うから。
田代
そうなんですよ。
でも私は金継ぎはやっていなかった。
ところが大家さんが焼き物がすごく好きな方で、
「これ、直せるかしら」って持って来られて、
がんばって直してみたら、意外と楽しくて。
それでちょっとずつ
知り合いの器を直すようになり、
教えて欲しいと言われるようになり。
伊藤
そして、わたしが今、
田代さんに金継ぎを習っているんです。
教室を始められたのはいつごろだったんですか。
田代
2011年からです。
うれしい誤算は、
金継ぎってパッと1日じゃできないから、
何回か教室に通ってもらって、
そのときに雑談で漆の話をしたりすると、
陶磁器を直したくて来ているのに、
最終的にみんなが漆に興味を持ってくれることです。
半年間、月に1回会って、漆の話をすると、
最終的に「漆のお椀欲しくなっちゃったから、
どうせだから先生の器買おうかな?」なんて。
だから金継ぎ教室を開いて
すごくよかったなぁと思っています。
じつは漆業界の中で、金継ぎの位置が、
かなり変わって来たんですね。
私の恩師の世代だと
金継ぎをする人は多くなかったです。
みんなお椀を作ることで忙しかった。
大家さんから修理を頼まれたとき、
金継ぎはぼんやりと知ってはいたけど
やったことはなくて、
金継ぎの本を見てみたけど
ボンドを使った簡易金継ぎのことばかりで困りました。
手探りで、漆器の修理の応用で
何とか自分なりの金継ぎが出来るようになり、
今は同業の仲間も出来たので答え合わせをしたり
相談をしたりしています。
簡易金継ぎも気になって一度やってみたら工作っぽかった。
でも私は、それは違うな、
漆のことは漆でやるべきだなって思って、
やってきました。
伊藤さんはどうして金継ぎを習おうと?
伊藤
大きく割ってしまったものは
プロの手を借りるにしても、
ちょっと欠けたようなものは
自分で直せたらいいなと思ったんです。
でも、わたしも田代さんの教室で雑談をするのが
とても楽しみなんですよ。
田代
ありがとうございます。
──
金継ぎって、人によって、
ずいぶんセンスが出るものなんですね。
田代
直す人によって全然違うんですよ。
私は壊れた場所を
膨らませたりはしないで、
欠けたところは欠けたところだけを直す。
たとえば割れた器の継ぎ目も、
すごく太くすることはなく、
最低限の手間で印象が変わらないようにして
直すのが当たり前だと思っていたんですね。
なのに「田代さんがよくて頼みに来ました」
って言ってくださる方がいて、
なんでだろうと思っていたら、
人によってずいぶん違う、
個性が出るんだなとわかったんです。
伊藤
田代さん、あらためて、ありがとうございました。
金継ぎの腕もみがきます。
このそば椀も、たくさんの人のところに
届くといいなと思います。
田代
ありがとうございました。

地域の食とのつながり

未分類

伊藤
研修所のお仕事と、
ご自身の作品づくりの配分って
どんなふうになさっていたんですか。
田代
勤務時間内はそこの研修所のための仕事をし、
勤務時間外は自分のものをつくっていました。
だから夕方5時以降は自分の時間ですし、
土日も全部自分の制作の時間にあてられました。
最初の5年くらいは、地元の方との交流もなく、
とにかく家と研修所の往復をずっとしてました。
そしたらあるとき役所の農作物担当の職員の方が
「うるしセンターのねえちゃんって、
すごい食いしんぼうらしいぞ」
っていう情報をどっかから聞いてきたのか。
伊藤
食いしん坊! 田代さんのことなんですね。
田代
そうなんですよ。それで
「農業関係のイベントがあるから、
漆の絵付け体験のワークショップを
やってくれ」というんです。
それで参加したら、
すぐそばで町のおかあさんたちが、
季節の自慢の料理を並べていた。
そこではじめて、私、
地域の食べ物を食べたんです。
伊藤
何年目で?
田代
6年目で。
伊藤
ええーーっ、すごい。
そんなに、漆ひとすじ‥‥。
どうでしたか、地域の食は、
田代
「え、みんな家でこんなおいしいもの食べてるの?」
ってすごいびっくりして!
伊藤
おいしかったんだ。よかった。
田代
ちょうど秋だったから、おこわとか、
きのこのものとか、お餅もあって。
そのとき農業関係の仕事の人は、
新しいものを作るんじゃなくて、
地元にあるものを再評価しようと、
郷土料理の掘り起こしを始めていたんです。
それで、地元のおかあさんたちが
ふだん家で作っていて、
家族は当たり前過ぎて、
誰も褒めてくれないけれど、
おいしいものを持ちよっていたんですね。
おかあさんたち、研究熱心だから、
「これ、どうやって作ったの?」とか話しながら。
そこに私も行って、試食させてもらって、
「おいしい、おいしい。
またこういうのがあったら呼んでください!」
って、私も、急に、職員の方に声をかけたりして。
今思えばその人は色々今後のことも含めて、
私を誘ったんですよ。
伊藤
実は。
田代
ゆくゆく、郷土料理の掘り起こしプラス
地元のものをいかすっていうことで
漆器作りとも結びつけたかったんです。
伊藤
いいプロデューサーですね。
田代
そうして私も郷土料理の会に
呼んでもらうようになりました。
そのとき、せっかくだから
漆器に盛ったらどうかなって、
自分のとこの漆器を持っていったんですよ。
もともと山形は漆器がある土地じゃなかったから、
地元の人も使うことがなかったんですよね、
「なんか、やってるなあ」程度で。
だからおかあさんたちも、
最初はおそるおそる盛りつける、
みたいな感じでしたが、
2回目とかになると結構大胆になってきて。
ところが地元の人が料理を盛りつけるサイズ感が、
私が作ってる器と合わなかったんです。
伊藤
ちょっとちっちゃかったってこと?
田代
そうなんです。「たくさん食べてね」
という食文化なんですよ。
山形では「いっぺけぇ」と言うんです。
「いっぺ」っていうのは「いっぱい」、
「けぇ」は「食べなさい」。
「いっぺけぇな」っていって盛りつけてくれる。
そうすると、私が作ってるお椀から、
たけのことかがはみ出してたりして(笑)。
伊藤
その三寸八分だと、小さかったんですね。
田代
「あ、これ、地元のサイズじゃない」。
私は“漆器の当たり前のサイズ”で
つくっていたんですよね。
それは東京の人の暮らしには合うかもしれないけど、
地元のおいしいご飯を食べるのに、
地元の人に使ってもらいたいなと思うと、
「このサイズじゃない」って。
それで地元の人用にサイズを考えるようになりました。
山形の私が住んでるところだと、
春はたけのこ汁、
初夏は山菜の「みず」を使った
「みず汁」っていうのがあって、
みずをポキポキ折ったものと、
くじらの肉を入れるんです。
伊藤
へえ!
田代
夏は「だし」。
きゅうりやなす、しょうが、みょうが、大葉など
夏野菜を生のまま刻んで味をつけたものを、
冷ご飯にぶっかけて食べる。
そして秋は「芋煮」。
そういえば山形の真室川で
「ほぼ日」さんとつながるのは
「甚五右ヱ門芋」(じんごえもんいも)ですね。
伊藤
糸井さんがお好きな! 
あれ、おいしいですよね。
真室川のものだったんですね。
田代
そして冬は「納豆汁」。
伊藤
へえ、山形の「納豆汁」ってどんな?
田代
納豆のポタージュみたいな料理なんですよ。
納豆をすり鉢で一所懸命擂って、
10種類くらい具材が入ってて。
山形は雪が深いから、
冬は何も採れないじゃないですか。
だから、春のうちからいろんなものを
塩蔵しておいたり、干しておくんです。
冬に「納豆汁」を食べるために、
春から準備してるようなものなんですね。
伊藤
すごくおいしそう。
田代
もうすっごいご馳走なんです。
私も、そういうのに合うような、
ちょっとおおぶりのお椀を企画して作ったりとかして。
後半の5年間というのは、
そういう地元のための仕事をしました。
伊藤
それで、11年いて、いよいよ独立を?
田代
はい、独立するんだったら、
体力があるうちにと思って、
決めたのは38歳で、
実際に独立したのは2010年、39歳のときです。
50歳になって山形で働いてる自分が
全然イメージできなくって‥‥。
だったら、ちょっと別の場所で
独立をしようと思って、
幾つか場所を考えていたんですけれど、
その中で盛岡は好きな喫茶店とかもあって、
住んでみたい場所だったから、
一生に一回ぐらい、縁がなくても
自分が住んでみたい場所に住んでみるのも
いいかなと思ったんです。
そして、たまたま住む家が見つかった。
伊藤
工房をつくったんですか。
田代
そうですね、一軒家を借りて、
家に作業場があるみたいな感じですね。
そして今日(こんにち)にいたる、という感じです。
このそば椀も、しばらくは
真室川の製品だったんだけれども、
元から私が作っていたものだから、
これだけは私が持って行きたいということで、
私のものとしてつくりはじめました。

▲上塗り前の研磨後、次の準備をしているところ。

▲溜の漆(ため。仕上げに使う透明の漆)を塗って乾かしているところ。

伊藤
「うるしぬりたしろ」という屋号は、
盛岡に移ったときに?
田代
はい。独立するときに、
やっぱり屋号があった方がいいよって
周りの人に言われて。
でもかっこいい名前をつけちゃうと、
「それってどういう意味?」
って訊かれるじゃないですか。
自分では馴染みのないような
外国風の名前をつけるのもガラじゃないので、
パッと聞いて、
なんの仕事かわかるものにしようと思ったんです。
あるとき友人であるデザイナーの方と
ご飯を食べながら、相談していて
「うるしぬり」の「たしろ」だから
「うるしぬりたしろ」。
これをデザイナーさんが提案してくれて決めました。
伊藤
なるほど、そういう経緯だったんですね。
このそば椀をつくられたときのこと、
もうすこし教えていただけたら。
研修生の2年目でしたっけ、
田代
そうです、研修所で2年目の夏に、
自分のオリジナルを1個つくってみよう、
という授業がありました。
ちょうど盛岡に手づくり村っていう施設があって、
そこの主催で工芸のコンペがあったんですね。
私の一つ上の先輩たちのときは、
審査員が柳宗理さん、
私の年は喜多俊之さんでした。
それに間に合うように自分で考えた漆器を作って、
もちろん上塗りまでやるっていうのが
研修の中に入っていました。
なぜそば椀をつくったのかというと、
当時、ふだん用に、
お椀は研修所からもらった漆器を使ってて、
でも、おそばを食べるぐらいの器がなかったから、
ちょっと大きめのお椀を作ろうということです。
つまり、私が最初に自分でデザインした器が
これなんですよ。このそば椀で
「伝統技能賞」っていう賞をいただきました。
とても嬉しかったです。
伊藤
それを今でもずっと作られているんですね。
田代
作っていても、使っていても、
全然飽きないんですよ。
伊藤
ずっと好きなものって、
あんまり入れ替わらないんですよね。
そういえばフリマに出品して、って依頼されても、
出すものがないんだそうですね。
田代
そうなんです。ふだん使いの器も、
最初にバイヤーをやっていた時代に
自分が買ったものを、ずっと使っていて、
手放したいものがないんです。
20代のときのものをまだ使ってるし、
つくってもいる。
伊藤
今にいたるまで作り飽きないし、
使ってても飽きないって、すごい説得力!
田代
なぜでしょうね‥‥。
とにかく、自分でおそばとかラーメンを
食べるときの器を持ってなかったから、
欲しいものをつくった、という理由なんですよ。
伊藤
この独特なかたちは、どういう発想で?
田代
昔からの伝統的なお椀が
いっぱい載っている資料が研修所にあって、
そういうのを見て考えました。
ツルッとしてたら普通だから、
段がついたらかっこよくない? 
みたいな感じでつくりました。
伊藤
この形、実用的でもあるんです。
手がちょうどここで留まるの。
田代
この形が完成したのには、
木地をひいてもらった職人さんが
すごくセンスのいい方だった、
ということもあります。
私のつたない図面でも
「この人、こういうことじゃないのかな」
っていうのを汲んでくれたんですよ。
伊藤
お父さんのお友達といい、
背中を押してくださった先生といい、
屋号を推してくれたデザイナーさんといい、
田代さんは、いつもいい人に導かれていますね。
田代
ふふふ、わりと流されてきた
だけなんですけどね。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月7日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

weeksdays
タオル さっぱり バスタオル
(グレー/ホワイト)

▶︎商品詳細ページへ

外国のホテルに行くと、
何度も水を通った、
そして乾燥機でからりと乾いた厚手のタオルが
バスルームに用意されていることが多いのですが、
あのなんともいえない、
ちょっとかための質感が好きです。
「拭いてるぞ。水分吸収してるぞ」というような。
でも、家だと厚手のタオルは、
かさばるし、乾きづらいしと
なかなか使うには手強い存在でもある。
(とくに日本は湿気が多いですしね。)

ホテルのタオルのような使用感を生かしつつ、
でもちょっと薄手にならないものか?
‥‥でできたのがこのタオルです。

さっぱりした使い心地は、
気分までさわやかにしてくれる。
このタオルが洗いあがって、
きれいにたたまれ、
バスルームの棚に並んでいる姿を見ると、
なんだか元気になる。
ちょっとはりきった気持ちにさせてくれます。

(伊藤まさこさん)

売り手からつくり手へ

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伊藤
田代さんとは、かれこれ、
30年のおつきあいになりますね。
田代
そうなんですよ。古い仲です。
伊藤
田代さんが青山の大きな雑貨店で
正社員として働いていたとき、
わたしが3か月だけ、
アルバイトで入ったのがご縁でした。
22歳だったかな、わたしは学校を卒業して、
これからどうしようかなと
思っていたときでした。
田代
人の出入りが多いお店でしたが、
まさこさんとは、辞めたあとも、
こうしてずっとお付き合いがあって。
世代が近かったし、
上下関係もなく仲良くしていましたね。
伊藤
わたしは、スタイリストのアシスタントになる
伝手ができたことで、
お店を辞めたんです。
田代
そう、辞めてすぐぐらいに、
撮影用のモノを借りに来ていた。
伊藤
田代さん、和食器担当のバイヤーでしたね。
田代
そう。入ってすぐの私でも、
仕入れを任せてもらえるような、
おおらかな時代だったんです。
和食器を担当したのも、
割り振られたからなんですよ。
伊藤
でも、すごく詳しかった。
田代
詳しくならなきゃいけなかったんですよ。
伊藤
勉強をなさったんですか。
田代
勉強というか、和食器のことが知りたくて、
休みの日に原宿のZakkaや
六本木のサボアヴィーブルなど、
作家ものを扱うような
有名店に見に行っていました。
伊藤
田代さんが揃えた棚、ほんとうに素敵でしたよ。
わたしは3か月で辞めてしまったんですが、
田代さんは3年くらい? いらっしゃいましたね。
田代
そうです、3年です。
そのうち、自分が扱っている漆器について
考えるようになって。
「もっといいものを」ということですね。
お店では産地で作っている量産のもので、
手ごろな価格帯のものがメイン。
いくら好きに仕入れていいとはいえ、
価格帯が高めのものは扱うことができなくて。
でも、他のお店には、作家ものを含め、
そういうのもあって、
ちゃんと求めてくださるかたがいるのにって。
伊藤
そんなモヤモヤが?
田代
そうなんです。そしてたまたま
旅行で盛岡に行った時、
器を売る仕事をしているのならば、
ここのお店は行った方がいいよと、
仕入れ先の方に勧められたのが、
光原社っていう盛岡の民芸品店でした。
そこは漆器に力を入れていて、
お椀がたくさんありました。
その塗り物がすごく素敵で‥‥。
無地で、ピカピカもしていないんですよ。
蒔絵とかもない、岩手県北の塗りもの、
浄法寺塗安比塗りだったんです。
すごくそれがよくて。
こういう本物を売る店で働きたい! と思って、
「求人はありますか」って問い合わせたんです。
伊藤
そうだったんですね。
田代
そうしたら「今、採っていません」。
がっかりしていたら、
そのお店を紹介してくれた知り合いが、
私が見ていいなと思った器は
ある漆の研修所で作られていると教えてくれたんです。
伊藤
その方は、いったい、どなただったんですか。
いろいろ教えてくださった方は。
田代
父の友人です。
デザイナーで、
地場産業とつながった工芸の仕事を
なさっていたんですよ。
それで、岩手の安代(あしろ)っていう、
安比高原スキー場があるあたりにある
研修所に行ったんです。
そこは昔、荒沢漆器というのがあった地域なんですが、
昭和30年代に産地として一回途絶えてしまった。
それを町おこしみたいなことで、
昭和50年代に復活させたんですね。
その時つくった研修所でした。
当時、私は漆のことを何も知らなかったんですが、
2年通ったらお椀が作れるようになるよと聞いて。
過疎の町だから若者の定住化、
またゆくゆくは小さな漆器産地になることを目指して
全国の誰でも受け付けます、というときでした。
その年の1月の末に研修所を知り、
見に行ったのが2月のあたま、
そうしたら「4月から来たら?」と言われて。
「じゃあ、来たいです!」と、すぐ東京に帰って、
「3月いっぱいで辞めたいんですけど」と、
お店を辞めて、行くことにしたんです。
伊藤
すごい行動力。
ご両親はなんと? 
横浜生まれの横浜育ちの子が、
いきなり岩手の漆の研修所に行きますだなんて、
驚かれたんじゃないですか。
田代
「いいんじゃない」って言ってました。
両親が岩手出身なんですよ。
とはいえ宮古で沿岸地域で、
安代とはずいぶん離れているものだから、
岩手の祖母は「なんで、淳はあんな雪が
いっぱいあるところに行くのか」と
驚いていましたけれど。
伊藤
それで丸2年?
田代
はい、2年でひと通りの工程を習いました。
でもやっぱり2年で自立できるほどは
覚えられなかったんですよ。
ですから、その後3年半ぐらい、
同じ場所で修業をさせてもらいました。
今はわりと人気なんですけど、
その頃はそんなに研修生が次から次へと来なかったので、
研修所にも少し場所の余裕があって、
「急にひとりじゃできないから、
少しいさせてください」ってお願いして。
仕事は、研修所が下請けの作業を
用意してくれたので、
それをやっていましたね。
伊藤
そういう収入もあったんですね。
しかも研修所を自分の工房として使えた?
田代
といっても、塗師の仕事で一番高価な機械である
「研磨ろくろ」は、自分で買うようにと。
研修所にも研磨ろくろはあるけれども、
まず自分で買うのが独立の第一歩だったんです。
それでローンを組んで、研修所の木工場の2階に
私のスペースを確保してもらって、
そこにろくろを置いて、作業をさせてもらいました。
伊藤
それは幸運。
田代
研磨ろくろは結構音が大きいので、
当時住んでたアパートでは
使えなかったんですよ。
だから間借りしての作業でした。
伊藤
下請けってことはパーツ的な仕事、
ここの作業をお願いね、
みたいな感じだったんですか。
田代
そもそも、
ベースとなる形は木地屋さんがつくるんです。
だから私は漆を塗るのが仕事でした。
それも仕上げの手前の段階まで、
「中塗り」と呼ばれる工程までを
担当するんです。
その研修所では、さらにそれを先生が上塗りして、
仕上げて、製品として出すんです。
伊藤
研修所に行く前、田代さんが
「いいな」と思っていた、
まさにその器をつくっていたんですね。
そして3年半がたち、独立を?
田代
そうなんです。
そろそろ、自分でもできるようになってきて、
漆が面白くなってきたところで、
独立を決めました。
どこにいてもできる仕事ではあるので、
東京のほうに引っ越そうかと。
いちど岩手から離れてみるのもいいのかな、
という思いもあったんです。
‥‥という話を先生にしたら、
「お前は怠け者だから、漆で食べていけない分、
アルバイトでカバーするだろう、
そうすると楽な方、楽な方に流れて、
漆じゃなくてバイトで食べていくようになる。
だから漆を続けられる環境に身を置け」
と、強く言われました。
伊藤
先生も、きっと、
いろんな人を見てきたんでしょうね。
田代
そうかもしれません。
そしてたまたまそのタイミングで、
山形の真室川(まむろがわ)というところに、
私が行っていた安代の研修所を
モデルにしてつくった漆の研修所に
勤めている人が辞めてしまうというので、
役所の人が困っていると相談に来たんですよ。
そうしたら先生が、
「ちょうどいいのがいます」(笑)。
伊藤
すごーい。
真室川って、どんなところなんですか。
田代
山形のいちばん北の方なんですけれども、
『真室川音頭』ってご存知ですか。
ある程度の年齢の方だと知っている、
民謡なんだけれど、三橋美智也が歌って
流行歌にもなった歌があるんですが、
それで有名なところなんです。
林業が盛んで、
もともと漆器がない土地だったんですけれど、
昭和50年代あたりに漆の木を植えようと
林野庁の呼びかけがあったんですね。
漆の木を植えるなら助成金を出す、って。
それで日本全国いろんな土地で
漆の木が植えられたんですが、
真室川でも、植えたんですって。
というのも杉を植えても
お金になるのは孫の代だけど、
漆の木だったら15年ぐらいで
漆が採れるようになるから、早く儲かる。
それでいっぱい植えたんです。
漆が採れるようになるならば、
漆器を作る場所も町で作ろうというので、
私の研修した八幡平市漆工技術研修センターをモデルとして
「真室川町うるしセンター」ができました。
けれども職人さんがいないから、
私のいた安代から人を派遣していたんですが、
その人が辞めてしまう、と。それで先生は、
「あそこに行くと、月に幾らもらえるらしいぞ」と、
私に勧めたんです。
すごく立派な施設だし、そこで3年働いたら、
貯金が出来るぞという話をされて。
それで「そういうのもいいかな」って、
3年の約束で山形に行き、
研修生に教えながら、
商品を作る仕事を始めたんです。
それで、3年のつもりが、
11年いることになりました。
伊藤
その研修所をベースに11年!
生徒に教えつつ、
ご自分のこともなさりながら?
田代
そうなんですよ。
私が入った時に、
すでに商品はあったんですけれど、
前の人が作ったものじゃなくて、
自分で真室川用のものをと、
企画して作りました。
それを仕事にしていました。
伊藤
どんなものをつくられたんですか。
田代
四寸のお椀と、
それより一回り小さい三寸八分ぐらいのお椀、
ほかにも菓子皿とか、
そういうのをひと通り作って、
「真室川漆器」という名前で、
山形県内で売ったんです。
その中に、当時私の定番としてつくっていた
このそば椀を、ラインナップに入れました。
これ、安代の研修所の2年生のときに、
私が自分のものとして
いちばん最初につくったものだったんです。
伊藤
その当時から、
このそば椀はあったんですね。
田代
そうなんです。

田代淳さんの漆のお椀

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使うたびに

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友人の多くは、
子育てでてんやわんやだったり、
遠くに住んでいたり。
最近は親の心配も増えてきたから、
そうしょっちゅうは会えない。

でも、
「会えない」っていうのも、
まんざら悪くないものだと思っています。
久しぶりに会った時間を、
いいものにしようと思い合うから。

「会えない時間が愛を育てるのさ」
じゃないけれどね。

会えない時間がさみしくないのは、
毎日の食事で使う器が、
友人たちの作ったものだから、
というのもあるかもしれない。
使うたびに会っているような、
そんな気分にさせてくれるから。

今週のweeksdaysは、
新しい年にぴったりな田代淳さんの漆の器。
30年間、つかず離れず。
彼女とはそんな中。
今は私の漆継ぎの先生でもあるんですよ。

年をとるのもたのしみです

未分類

伊藤
バッグもかわいいですね。
ちびバッグがあります。
岡本
ちびバックは、
バッグインバッグにしたり、
大きさによっては提(さ)げたりします。
石澤
いっぱいお持ちですよね。
岡本
いやいや、石澤さんこそお持ちでしょ(笑)。
石澤
いやいや、私はなんかもう!
岡本
数というより、
タイプがいろいろあるといいですよね。
伊藤
そう、たしかにいろんなタイプがある。
逆に、このタイプには
手をつけてないなっていうのはありますか?
岡本
う~ん、華奢なものは手をつけないかな。
でも小物って、総合的に全部好きですよ。
伊藤
若い頃から好きなものが
全然変わってないっていうのも、すごいですね。
岡本
うん。たしかにそれはね、ほんとにそう。
伊藤
お仕事とプライベートで、
外出の服装は替えますか。
岡本
いや、あんまり替えることはないですね。
外出は外出です。
伊藤
ドレスアップしなくちゃ、みたいな時は?
岡本
ドレスアップ‥‥最近、ないなぁ。
でも、ちょっといいホテルで食事、みたいな時は、
スマートカジュアルじゃないけれども、
おかしくない程度のものを着ます。
でも、そんなに、そこまで
きちんとしたドレスアップっていうのは、
ないかもしれないですね。
伊藤
石澤さんも?
石澤
冠婚葬祭のものは持っていますけれど、
それ以外は普段、変わらないんです。
伊藤
なるほど。
わたしはご飯を食べに行く時は、
ガラッと服を替えるんです。靴も。
そういう時だけ、ヒールの靴を履いたりします。
岡本
ほんと?! それはすごいなぁ。
伊藤
わたしはそれで自分の中でのメリハリを
つけているのかもしれないですね。
それでは、石澤さんにお持ちいただいたものも、
ぜひ拝見させてください。
石澤
岡本さんに比べたら、
私のは、バリエーションが少なくて、
なんだか恥ずかしいくらい。
岡本
そんなことないですよ。
伊藤
コサージュがいっぱい。
いまは頭に、スカーフの上からつけていますけれど、
胸につけたり、いろいろと?
石澤
それが、コサージュを胸につけることはないんです。
全部、頭用です。
岡本
頭用のコサージュ!
石澤
正面だったり、横だったり、
つける位置は考えますけれど。
最近は、複数つけることもあるんですよ、
たとえば前にお花のコサージュをつけたから、
後ろには蝶々にしよう、とか。
岡本
かわいい~。
ストーリーがあるんですね。
伊藤
ピアスはいかがですか。
石澤
ピアスは、「tamas」(タマス)のものが好きです。
ビンテージのパーツを使って、
イヤリングやピアスにしているブランドです。
コサージュやスカーフと、相性がいいかなと思って。
伊藤
たしかにそうですね。
いろいろな組み合わせで楽しめそう。
ビンテージのものもお好きなんですか。
石澤
そうですね。昔だったら、
ヨーロッパに旅行に行った時に買ったり、
日本でも古着屋さんで見つけたり。
今、こうして並べてみると、
私の好きなモチーフは、
植物のものが多いですね。
伊藤
ほんとうだ。
スカーフを首に巻くことはありますか。
石澤
首には巻かず、ほぼ全部、頭につけます。
首に巻こうという気持ちが、
なぜか浮かばない。
伊藤
バッグはどういうタイプを持ちますか?
石澤
バッグは最近、好きなのがあって。
こういう、マルシェバッグみたいなタイプです。


▲石澤さんのご自宅にある、マルシェバッグのコレクション。
持ち手も丈夫で使いやすそうです。

伊藤
かわいい! 
メイクアップは変えますか、
その日の服装に合わせて。
石澤
そうですね、色を替えることがありますね。
岡本
リップの色を変えたりとか、
カラーものは、少し考えますよね。
私はネイルはやらないんだけれど。
石澤
私はネイルは自分で。
伊藤
そんなふうに「決まっていること」が
おふたりそれぞれあるんですよね。
たとえば岡本さんはいつも髪を
キュっとおだんごにしている、とか。
岡本
そうなの。これがもうトレードマークで、
25年くらいおんなじ。
伊藤
ええー(笑)! その前は?
岡本
それまでは、毎月髪形が違うというくらい、
いろいろやったんです。
キャロル・キングみたいなカーリー・ボブから。
伊藤
似合いそう!
岡本
ドレッドにしたら髪が傷んだので、
ベリーショートにするしかないと、
タンタンぐらいにしちゃったり。
伊藤
きっと似合う!
そのいろいろやり尽くしたのが、25年前?
岡本
そう、それで終わってしまった。
それで今は、おだんごです。
そのバランスで、服も選んでいるんです、
もし髪にシャギーを入れて、今風にしたら、
手持ちの服が似合わなくなっちゃう。
あとはもう、プラチナにするしかないかな。
早く真っ白になるのを待っているんですよ。
伊藤
今、何%ぐらいですか?
岡本
そうだな、50%いってるかいってないか。
なかなかきれいな白髪にはならなくて。
寝て起きたら真っ白になりたいぐらいなんですけど。
石澤
途中が一番、面倒なのよね。
岡本
そうなの、そうなの。
伊藤
え、石澤さんも白くしたいの?
石澤
どっちでもいいんですよ。
今は染めてますけれど。
伊藤
それも、いいと思う。
石澤
私のこの数年の変化は、
マスクをするようになって、
カラーマスカラをつけるようになったこと。
それを洋服によって、茶系にしようか、
ピンクにしようか、オレンジとか、
それぐらいかな、替えるのは。
伊藤
香りはどうですか?
岡本
香りはね、‥‥大好きです! 
無香料だと、もう全然、気分が上がらない。
香料の苦手な人には申し訳ないんだけれども、
私は香りに包まれたい。
伊藤
「今日はこれ」とかあるんですか。
岡本
「今日はこれ」っていうこともありますね。
基本、気に入っているものがあるけれど。
石澤
私も年を重ねるようになって、
香りをつけるようになったんですけど、
仕事の時、香りの苦手な人から
気になると指摘されたことがあって。
岡本
その人、香りが好きじゃないのね。
“香害”じゃないけれど‥‥。
伊藤
難しいところですね。
もちろんお寿司屋さんに行くときはつけないとか、
そういうことは大事だと思うけれど、
逆に、香りでその人のことを思い出すくらい、
印象深いものでもあるし。
石澤
そう、そういうふうに
“自分の香り”を持ちたいなと思っているんですけれど、
仕事の時はつけず、休みの日に楽しむ感じです。
岡本
お仕事の時につけると、
すごく気持ちが上がるのにね。
石澤
香りでファッションの最後の一押しをして、
「今日もがんばろう!」みたいなことですよね。
好きなんですけどね。
伊藤
わたしも、香りはたまにつけるんですが、
食事の直前は控えるかな。
石澤
夜、食事に行く直前は控えますよね。
そういう日は、外出まですこし時間をおいて、
夕方ぐらいに、つけたりします。
食事の時になるとちょっとやわらいで、
迷惑はかけない。
伊藤
その方法もありますね。
おふたりは、朝の支度は時間をかけますか? 
‥‥かからなそうだけれど(笑)。
岡本
でも、朝、お風呂に入るから。
結構早く起きて、ウォーキングをするのが日課です。
伊藤
なるほど。
石澤
ウォーキングの時は、
ウォーキング用のスタイル?
岡本
そう、ウォーキング用。
ピタっとしたレギンスにTシャツ、
そしてキャップみたいな感じです。
石澤
私も最近、ピラティスを始めて。
でもヨガウエアを持っていないから、
ダボッとしたスウェットとカットソーを着て行ったら、
「着替えはあちらです」って言われて。
「え? これでやろうと思ってたんだけど」
みたいな。ふふふ。
伊藤
ピタッとしたものを着てくださいって
言われるんですよね、
先生が、筋肉の動きを見るのにいいんですって。
石澤
そっか、そういうことだったんですね。
でも何度かそのままでいたら、
ようやく諦めてくれたみたい。
伊藤
おもしろいです、おふたりとも。
今日、お話が聞けてよかった! 
岡本
ふふふ、こんなに小物を買わずにいたら、
いいところにマンションが買えたのかしら、
っていう感じも、しないでもないけど(笑)。
だいぶ授業料を払いましたよ。
石澤
ふふふ。
伊藤
でも、それでいいんですよね。
すごく楽しかったです、
ありがとうございました。
石澤
ありがとうございました。
岡本
ありがとうございました!

大事なものが増えてゆく

未分類

伊藤
岡本さんが愛している
キラキラしたもののお話を
うかがってもいいですか。
‥‥これはもう、舞踏会ですよー。
岡本
このキラキラを普段使いにするのよ。
こういうものはね、
Tシャツとかカットソーなど
シンプルな服に重ねるといいんです。
私、キラキラものが大好きで。
本物だったら、またうれしいけど、
本物ではないんですよ。
本物のファインジュエリーに対して、
コスチュームジュエリーと呼ばれてるんだけど、
気軽につけられるのがいいの。
ケイト・スペード ニューヨークのブランドの
PR担当をしていた時にセレクトで入れていたもので
ケネス・ジェイ・レーンというアメリカ人デザイナーで
コスチュームジュエリーを代表する
ニューヨークブランドのものなのです。
ジャクリーン・ケネディ・オナシスや
ダイアナ妃などファーストレディーから
オードリー・ヘップバーン、エリザベス・テイラーなど
大女優から愛されていたブランドで
現在も世界中のファッショニスタや
著名人たちが愛用しているようですよ。
伊藤
こちらは?
岡本
こちらは、スワロフスキーで、
ジョバンナ・エンゲルバートっていう
ファッションディレクターがやっている
「Collection Ⅰ」というラインがあって。
伊藤
ちょっとおっきめのリングとかつくっている人かな。
岡本
そうかもしれない。
イヤーカフとかもつくってる。
伊藤
これは欲しいな。メモメモ。これは?
岡本
これは私が大昔のアパレル時代に、
東京コレクションでつくったサンプルです。
これも、ほんとに普通にTシャツとかに。
石澤
そういうほうが映えるっていう感じがしますね。
伊藤
これは付け襟? かわいい! 
触ってもいいですか?
岡本
どうぞ、どうぞ。
これも付け襟。
セーラーカラーなんです。
伊藤
こういう小物の収納はどうしていますか。
岡本
もう普通にカゴや箱の中にポンポンポン、って。
伊藤
石澤さんは?
石澤
私も同じ。
いつでも出せるように、
スカーフもカゴにボンって入れてます。
伊藤
そっか、じゃあそんなに
小物で場所はとってないっていうことですね。
岡本
そうなんです。だから旅にも持って行ける。
伊藤
実際に旅にも?
岡本
持って行きますね。
まさこさんは? 
伊藤
わたしはもう旅は、リングひとつ、ピアスひと組、
それもシャワーを浴びても大丈夫なものだけで、
替えは持って行かないんですよ。
ちなみに旅には小物を
どうやって持って行くんですか。
岡本
巾着とかに入れて。
石澤
コサージュなどつぶしたくないものは、
お菓子の箱に入れるといいですよ。
伊藤
持って行くものは、
旅先での服と一緒に考える?
岡本
うん、そう。
伊藤
なるほど。こういうタイプを付けるって、
考えたことがなかったなぁ。
気合かな? やっぱり。
「似合え!」みたいな。
岡本
そうよ、付けてみて、この襟。
うん、そうそうそう。
いいですよ、まさこさん。
伊藤
ほんとだ。
柄だと思えばいいんだ!
岡本
そうなの、そうなの。
こういうものって、旅に便利です。
伊藤
たしかに。
これもかわいいですね。
ちょっと民族っぽいアイテムって、
おふたりともお好きですよね。
岡本
そうですね。
石澤
結構、好きです。
岡本
これはアレキサンダー・ジラード
(ミッドセンチュリーを代表する
テキスタイルデザイナー)のお孫さんである
アレイシャル・ジラード・マクソンっていう
アーティストがつくっていたものなんです。
彼女は今はもう絵しか描いてないんですけれど、
一時期、こういうものを手がけていた。
石澤
それは貴重ですね。
岡本
そうなの。貴重なの。
アーティストの作品っていう感じです。
伊藤
どういうものに合わせるんですか?
岡本
ニットとか、
普通のものに合わせることが多いですよ。
伊藤
合わせると、普通じゃなくなりそう(笑)!
一同
(笑)
岡本
ちょっと味付けを足す、みたいなこと。
伊藤
お料理みたい。
岡本
そうかもしれないですね。
伊藤
これは? とってもかわいい。
岡本
これね、スヌードなの。
ちょっと寒い時にも、いいですよ。
夕方とか寒くなったら、
パッと、アクセント代わりに、
隙間を埋めるみたいな感じで。
伊藤
こういうアイテムって、
「こういう着方で」が決まっていて、
ちょっとイレギュラーなことを提案すると、
驚かれちゃいますよね。
でも岡本さんの自由さを見ると、
「これでいいんだ!」って。
岡本
法則なんかないから、
「ご自由にどうぞ」なんですよ。
私、思うのよ、あの制服文化が、
私たちを自由にさせていないんだと。
だから学生時代、制服の時は、
学校指定のシャツを着なかった。
石澤
そういうのはアリだったの?
岡本
アリじゃないんですけど、
そういうのが嫌なのに、
制服は着なきゃいけないから、
どうにかアレンジしようって、
もう毎日頭をいろいろ使って。
伊藤
え? 制服までもアレンジ?
岡本
ボタンダウンシャツや丸襟シャツを着たり、
見かけは不良っぽい子たちと一緒かもしれないんだけれど、
スカートの丈もちょっと長くしてね。
とにかくなにか味付けしないと、
そのまんまのものが嫌だったんです。
伊藤
そうなんだ。
石澤さんは制服でしたか?
石澤
制服、着てましたよ。
そんなにアレンジはしていませんでしたが、
これを持ちなさいっていうカバンが嫌でした。
エスカレーター式の学校で、
中学と高校ではカバンが違うんですね。
私は中学生なのに
「高校生のが欲しい」と、
先輩からバッグを譲ってもらって使ってました。
伊藤
そう言えば、うちも高校がすごく厳しかったんですが、
学校の行き帰りだけ、スカート丈を短くして、
友だちとおそろいのウィンドブレーカーをつくって、
それを羽織ってました。懐かしいな。
岡本
私の制服嫌いはその後も影響して、
制服のあるバイトもできなかったんです。
ファストフードのハンバーガーチェーン店なんて、
靴まで制服で決まっているものだから、
アルバイトしようと入ったのに、
とにかく「それを着なさい」って言われるのが嫌で、
「すみません、辞めます」って。
伊藤
うちの娘は、ずっと学校が私服だったから、
制服に憧れるところがありましたよ。
石澤
そうなの、ないものねだりなのよね。
岡本
そうかも。
伊藤
岡本さんは、スカーフはどんなふうに? 
岡本
スカーフもいろいろ活用します。
石澤さんのように、頭に巻くこともありますよ。
伊藤
スカーフを頭に巻くの、
すごく憧れているんですけど、
「よし、今日はこれで出よう」と思っても、
玄関で「やっぱりやめよう」ってなるんです。
石澤
でも帽子は被るでしょ? 帽子感覚よ。
伊藤
帽子ね、そっか、そっか。
じゃあ、スカーフは
いろいろお持ちなんですね。
岡本
いっぱい持ってます。
伊藤
そうですよね。
少しずつ買っていかれたんですか?
岡本
ギフトです。
なにか機会があるたびに、夫が買ってくれるんです。
もちろん自分が好きっていうのもあるので、
「エルメスでお願いします」みたいに、
一緒に買いに行ったりして。
伊藤
それは羨ましい。
そして、これですよ。メガネ! 
岡本
まさこさんはかけますか? 
サングラスとか。
伊藤
サングラスは以前は運転の時だけだったんですが、
最近は普通にかけるようになりました。
慣れなんだなと思います。
岡本
そうなんですよ。
石澤
そうか、私、サングラスは
まだなんだか馴染めないんです。
持っているんだけど、そんなにかけない。
なんか頭の先からやりすぎ? みたいに思えて。
岡本
そっか(笑)。
でも、印象が引き締まるんじゃないかな、
サングラスをかけたら。
石澤
そうかもしれないんだけれど、
きりがなくアクセサリーが増える感じがして、
だからほんとにまぶしい時だけですね。
伊藤
ということは、岡本さんのサングラスは、
実用というより、おしゃれなんですね。
ちょっと色が足りないな、みたいな感じですか。
岡本
そう、まさしく「色が足りない」時とか、
真っ白い、ホワイトコーディネートの時に
ポイントとしてかけるとか。
メガネのフレームの形や色も同じ考え方で、
派手な色など、あんまりみなさんが
選ばない色かもしれないけど、
結構いいんですよ。
ちなみにこの丸メガネは、黒いタートルとか、
ほんとにシンプルな時にかけると、
なかなか良いんです。
ノーアクセサリーでも、メガネだけっていう感じで。
伊藤
えっ、ノーアクセサリー? 
岡本さんにそんな日もあるんですか。
岡本
もちろん、このへん(バングルやリングなど)は、
カウントしてないけど。
伊藤
そのへんは当たり前? あっても、
もうノーアクセサリーなんですね、ふふふ。
石澤
それは肌の一部?
岡本
そう、これはもう肌。
一同
(笑)

変化することとしないこと

未分類

岡本
ある程度、自分のスタイルが決まったというのに、
そんな中で、突然やってくるんですよね、
ブームが。自分の中で。
石澤
そう、ブームがね。
伊藤
え、何のブームがあったんですか?
岡本
例えば大きい襟のブラウス。
でも大きい襟のものは持っていないから、
付け襟をつけたり。
伊藤
突然のブームによって、
スタイルが変わるんですね。
岡本
そう、なぜかわからないんだけれど、
突然なの。
伊藤
世の中の流行とは関係なく?
岡本
関係なく。
石澤
そうなんですよね。
私も、芸術家としてのフリーダ・カーロは
前から知っていたけれど、
1年すこし前かな、突然、
「スカーフの上から、
フリーダ・カーロのように
お花をつけたい」と思ったんです。
岡本
そう、突然、来るんですよね。
もちろん何かに感化されることもあるんですよ。
たとえばニューメキシコに旅をして、
ジョージア・オキーフの家に行き、
オキーフのワードローブを見た時に、
「これぐらいシンプルなのがいいよね」なんて言って、
帰ってきて突然シンプルになって、
毎日モノトーンで暮らす、
みたいな感じになったこともあるんです。
でもなんかね、モノトーンもちょっと飽きちゃって。
石澤
物足りなくなっちゃったんでしょ?
岡本
そうそうそう(笑)。
伊藤
そういう、気になる人の存在って、
大きいですよね。
岡本
その前は、キャサリン・ヘプバーンだったんです。
彼女のスタイルは今も私のベースにあるんですよ。
あの方は赤を部分に取り入れるのがお上手なの。
私も、それにインスパイアされました。
キャサリン・ヘップバーンと
ジョージア・オキーフは、
今も私のなかで大きな存在ですね。
伊藤
石澤さんは、フリーダ・カーロの前に、
気になる方はいらしたんですか。
石澤
イーディス・ブーヴィエ・ビールという、
ジャクリーン・ケネディ・オナシスの従姉で、
上流階級出身の破天荒な女性がいるんです。
彼女の装いが、まあとにかくなんていうんでしょうね、
たとえばストッキングを頭に被って巻き付けたり。
それがすごくすてきな感じなんです。
そのまんまマネすることはないんですが、
影響を受けたと思います。

▲イーディス・ブーヴィエ・ビールについての、書籍や映像。
鼎談のあと、石澤さんがお家から送ってくださいました。
書籍の表紙の姿、ひょっとして「ストッキングを頭に」?!

伊藤
すごい。頭にストッキングって、
ちょっとポカンとしちゃいました。
石澤
ははは。
伊藤
わたしがあんまりそういうふうにならないのは、
職業がスタイリストだからかもしれません。
岡本
それはあるかも。
石澤
見過ぎてきたんじゃないかな。
岡本
うん。ある。
伊藤
わたし、服は専門じゃないんですが、
お洋服のスタイリストさんって、
ご自身がロールモデルになって
メディアに出るという方と、
裏方に徹して、ものすごくシンプル、
という方がいますよね。
もちろんそのなかに、
自分のお好きなものがあると思うんだけれど。
それを考えると、わたしは後者かもって。
──
伊藤さん、以前は花柄だとか、
マリメッコの大きい柄を着ている時期も
ありましたよね。
伊藤
そうですね。ありましたよね。
今は、年齢とも相まって、
迷い期なのかもしれないです。
それで、スタイリングの時に邪魔だからとか、
なんとなく理由をつけて、あっさりした方向に
進んでいるのかもしれません。
ちなみに石澤さん、今日は、
ミナ・ペルホネンの服ですか。
石澤
はい、上がミナなんですよ。
無地のコートをワンピースみたいに着ています。
中は元ミナのスタッフが独立をして
始めたブランドです。
古着を再構築してつくっていて。
そして、軍パンです。
伊藤
え? 軍パン?
伊藤
ほんとだ。古着の?
石澤
古着です。
伊藤さんは、やっぱりシンプルですね。
伊藤
今日もパンツ、カットソー、靴、
以上! みたいな。
岡本
私もシンプルです。
石澤
‥‥シンプルって意味が(笑)。
一同
(笑)
伊藤
シンプルじゃないですよー。
岡本
いえ、私の中では、かなりシンプルです。
まあ、この襟元が、
ドリーミーな感じですけど。
石澤
主張があるもの。
伊藤
おふたりともご自身の存在感が強いから。
全部取り去っても、光があるのかも。
そんな気がしてきました。
岡本
これ、ほんとうにだいぶシンプルなのよ。
今日はメガネもシンプルだもの。
伊藤
そうかも? いつもと比べたら‥‥。
その、ふたりの敬子さんそれぞれの、
小物使いのたのしみを知りたいんです。
服の新陳代謝はそんなにないって
おっしゃっていたけれど、
小物も、好きなものはずっとお好きですか?
岡本
うん。小物は、嫌いになるものが
あんまりないかな。
伊藤
年上の女性で、
「華奢なリングが似合わなくなった」と、
そういうアクセサリーを断捨離した方がいました。
わたしも最近、Satomi Kawakitaで
ボリュームのあるリングを買ったんですけど、
以前はそういうものには目がいかなかったし、
つけなかったんですよ。
岡本
私は、もともと、華奢なものを
選んでこなかったんですが、
好きなものの根底が変わらないから、
断捨離をしたことがないんですよ。
伊藤
そういえば、石澤さんはリングをしていませんね。
石澤
たまたま、いまはリングをお休みしているんです。
最近、ちょっと指に合わなくなったので。
伊藤
以前はされてたんですか。
石澤
はい、華奢な感じのものを
重ねてつけるのが好きですよ。
伊藤
なるほど。おもしろい。
わたしは、好きなものと似合うものは
違うと思っているんですけれど、
おふたりは、好きなものを
自分に寄せることができるんですよ。
好きなものが似合うもの、みたいな感じで、
着こなしている感じがします。
石澤
着こなすというより、
着倒しちゃう感じ。ふふふ。
岡本
なんとかしてやろうという感じよね。
「こっちに来なさい!」みたいな。
石澤
そうそうそう。
岡本
たとえば普通に袖があるものも、
普通に着たらつまんないって言って、
逆さに着てみたり、しますよ。
このボレロも天地逆にして着ることがあります。
カーディガンでもすることがある。
伊藤
ええっ?!
石澤
ちょっと見え方が変わるのよね。
岡本
そう。デザイナーの意図とは
違うことをしたくなっちゃうんです。
伊藤
おもしろいと思う!
石澤
伊藤さんの似合うものと、好きなものは、
ちょっとずれることもあるっていうこと?
伊藤
もう全然、ずれてますよ。
かわいいな、すてきだなって思っても、
いや、これ、わたしの着るものじゃないなって。
まあ自分のこのスタイルも、
年季が入っているから‥‥。
一同
(笑)
伊藤
おふたりも年季が入ってますよね。
岡本さんのメガネもしかり。
岡本
これはシンプルなんですけどね。
石澤
だ・か・ら~(笑)。
岡本
これもサングラスだったんだけど、
私はサングラスとして
かけるイメ―ジはなかったから、
レンズを変えて、メガネとして使っているんです。
伊藤
ちなみに伊達メガネですよね。
岡本
そう、アクセサリーとして大好きなんです。
アイテムが一つ増えることがうれしい。
将来、年を重ねて、杖を使う時が来たら、
ハリー・ポッターのダンブルドアみたいな杖を
選ぶのかもって、想像しちゃいます。
おばあちゃんになることって、
以前はネガティブなイメージだったんだけれど、
そう考えると怖くないかもって。
伊藤
パリやロンドンにあるような
素敵な杖屋で買ったらいいかも?
岡本
そうそう、専門店で素敵な杖を買って、
若いもんのお尻をペンペンするのよ。
石澤
似合う、きっとね。
岡本
老眼鏡もそうですね。
私はまだ老眼が来てないんですよ、
早くつくりたいんだけれど。
伊藤
石澤さんは老眼鏡は?
石澤
私は縫物をするので、
夜にステッチをかけるときに、
老眼鏡があったらいいなと思うんですが、
鼻の上に乗っている感じがどうしてもダメで、
ルーペが付いているアクセサリーを使っています。
もうちょっとすてきなものが
ないものかしらって思いつつ。
伊藤
チェーンつきのルーペ、
ふたりとも似合いそうです。
岡本
舞台を見る持ち手のついたタイプで、
老眼鏡があったらいいなって思います。
それがさっと仕舞えるつくりだと、いいなあ。

身につけると、スイッチが入る

未分類

伊藤
岡本さん、石澤さん、
きょうはありがとうございます。
石澤
よろしくお願いします。
石澤敬子です。
岡本
岡本敬子です。
どうぞよろしくおねがいします。
伊藤
ふだんはおふたりそれぞれに
「敬子さん」とお呼びしているんですが、
今日は、わかりにくいので「岡本さん」
「石澤さん」と呼ばせていただきますね。
今日は、おふたりに、ふだんお使いになっている
小物をたくさん持ってきていただきました。
石澤
私は、スカーフとコサージュがほとんどです。
岡本
私もスカーフ、コサージュ、
メガネにバッグ、
ほかにもアクセサリーをいろいろ。
伊藤
すごいです。どれも、かわいい!
岡本
ゴージャスなものもありますよ。
伊藤
舞踏会ですか、っていうくらい、
ゴージャスですね。
岡本
これを、普通に、
Tシャツに合わせるのよ。
伊藤
Tシャツに?!
岡本
邪気払いでもつけるといいのよ。
キラキラしたものやシルバーは、
そういうものを払ってくれるの。
石澤
邪気払い、なるほど。
岡本
大きなバングルとかもそうです。
整体の先生と占いの先生、
ふたりに言われて「そうか」って。
おふたりとも仕事柄、
人から受けるエネルギーがたまっちゃうんですって。
ネイティブアメリカンの人たちが
シルバーとかターコイズをつけるのも
そういう意味があるのだとか。
伊藤
“寄ってこない”感じがしますね。
岡本さんは、アクセサリーを
つけ忘れて外出するのは、
まるでパンツを‥‥。
岡本
そう、パンツを穿き忘れちゃった、
みたいな気分になるんです。
伊藤
そこまで? 
岡本
そういう気分になるぐらい、
もう欠かせないものになっています。
伊藤
そして、石澤さんは、
いつもスカーフを頭に巻いているので、
地元の商店街を歩いていると
二度見をされるっておっしゃっていて。
石澤
二度見されます。
最近は頭にお花をつけているので、
「あれ?」みたいに、
視線が頭頂部に集まるんですよ。
冬になると上から帽子を被せます。
岡本
そう、私もそういう使い方、します。
石澤
そしてある時、お花をつけたいと思って、
いまはこのスタイル。
イメージはフリーダ・カーロです。
伊藤
たしかにフリーダ・カーロの自画像って、
頭に花を飾っているものが多いですよね。
石澤さんはスカーフを巻かない日はない?
石澤
そうなんですよね。ほぼ毎日、巻いています。
岡本さんがアクセサリーがない時と同じように、
スカーフを巻かないと裸にされている感じがして、
ちょっと恥ずかしいんですよ。
だから私の髪形をみんな知らないの。
「どういう髪型をしてるかは、
大事な人しか知りません」みたいな。ふふふ。
伊藤
わぁ! そうなんだ。なるほど~。
わたしが、見てのとおり、
いっつもなんにもつけないタイプなので、
とても新鮮です。
岡本
まさこさんはシンプルなのよね。
伊藤
そうなんですよ。
岡本
あまり柄物を着ているイメージもないけれど、
色はパキっとしたものが多いですよね。
ブルーとか、ピンクとか、グリーンとか。
石澤
鮮やかなものをお召しですよね。
伊藤
人前に出たり、取材を受けたりするときは、そうですね。
でもスタイリストとして参加する撮影は、
写真に映り込んではいけないということもあり、
いつも黒で統一していて、リングもつけないんです。
おふたりは、それぞれ小物使いがお上手で、
共通点は「つけていないと心もとない」こと。
でも、そもそも「つけるの忘れちゃった」状態で
外出をなさることなんて、あるんですか。
石澤
‥‥ないですね。
岡本
ほとんどないんですけど、
たまに急いでいて、
バングルひとつつけ忘れた! とか、
そういうことはあります。
伊藤
ご自宅に戻られたら、外すんですか。
岡本
家に帰ったらすぐ外します。
伊藤
石澤さんも?
石澤
家に帰ったら、そうですね。
またすぐ出かける予定があれば、
つけっぱなしですけれど。
岡本
出掛ける時は“武装”なんです。
石澤
そうですね。まさに戦闘服っていう感じ。
伊藤
そうなんだ!
岡本
そう、パチンと、スイッチを入れる感じ。
石澤
オンとオフを切り替えるの。
伊藤
小さな頃からそうなんですか?
岡本
母親が洋裁をやっていたので
出来上がった洋服に合わせて
色々な素材で帽子をつくっていて、
バッグとセットでのフル装備を
子どもの時からしていたんです。
石澤
私がスカーフを巻き始めたのは
10代の学生時代でした。
服飾の専門学校に行っていたので、
そこに通う時に、巻き始めたんです。
マッチ売りの少女みたいだから、
「マッチください!」って同級生に
からかわれたりしてたんですけど、
わが道を行き、今日に至るって感じです。
伊藤
戦闘服ってことは、
外に行く時に「よし!」っていう
気合みたいなものが出るんですね。
岡本
私はわりとそうかも。
伊藤
おうちでの感じは?
岡本
わりとダラっとした、
リラックスウェアみたいなのを着て、
髪の毛もギュっと。
‥‥今もおだんごなんだけれど、
もうちょっと崩したような、ラフな感じです。
伊藤
石澤さんもリラックス系ですか?
石澤
家でリラックスするときは、
カットソーのワンピースだったり、
シャツワンピースみたいな感じです。
でも、朝、起きて、
その日着る服を決めるのって大事なんですよ。
気分がちょっと落ちてたりとかする時は、
戦闘服というほどじゃなくても、
自分の好きな服を着ることが、
気持ちを押し上げていってくれる。
アクセサリーもそういう効果がありますね。
岡本
そう! それと、
私は、その日の天気を見て服装を決めるんです。
今日は日中が暑くなるって聞いたから、
肌が出てないと暑くて汗だくになっちゃうかなって。
伊藤
小物か服か、どっちが先ですか?
岡本
う~ん、どちらとも言えないかな。
同時かな。
伊藤
お二人とも、重ね着が上手ですよね。
岡本
まさこさんは重ね着、しないですよね。
伊藤
暑いっていうのがまずあるんですけど、
面倒くさいっていうのもあって。
岡本
たしかに、考えるのが面倒だというのはわかる。
伊藤
防寒のためにコートを、という重ねかたはしても、
レイヤードを楽しむとか、
重ねることでコーディネートを完成させるような、
流行の重ね着は苦手かもしれません。
石澤
私は、寒くなると、薄いものを重ねるんです。
衣替えをしないんですよ。
伊藤
あ、そうなんですね!
岡本
私も一時期はそうでした。
薄いものを重ねて、一年中同じっていう感じでした。
それはね、更年期を迎えて、
「暑い~」っていう感じで、
とにかく薄いものじゃないとダメになってしまって。
冬でも暑くて、ニットなどの厚いものが
着られなくなっちゃったんです。
タートルネックなんてとんでもない、みたいな。
今は、もう大人になって(笑)、
第二のステージに行ったので、
ニットも着るんですけれど。
石澤
そうなんだ(笑)。
伊藤
石澤さんは、本格的な冬になったら、
今の感じにコートを重ねるということですか。
石澤
そうですね。あとは足元がブーツになるとか。
伊藤
考えてみると、わたしもそんなに
ハッキリと衣替えをするほうじゃないなぁ。
冬の間はコートを出しておくくらいで。
──
伊藤さん、ワードローブの全体量、
実は少ないっておっしゃいますよね。
伊藤
うん。少ないと思う。
石澤
私も少ないと思いますよ。
伊藤
え?! 意外です。
石澤
ずっと好きなのを着続けます。
何十年と着ている服もあります。
洋服を扱う仕事をしているから、
普通の人よりは多いかもしれないですけれど、
新しい服も、仕事の仲間が買うのに比べたら、
そんなに買ってないなと思う。
岡本
うんうん。
私もそこまで多くないと思うんですけど‥‥。
伊藤
でも、岡本さんは、気に入った服は
色違いでお求めになるとか。
岡本
そう、形の好きなものがあると、
色違いで揃えるのが好きなんです。
石澤
大人買いですね。
伊藤
じゃあ、ご自分にとっての
ベーシックなものが決まっていて、
そんなに増えもせず、減りもせず、
小物で差をつけるみたいなこと?
岡本
それもあるかもしれない。

VINCENT PRADIERのグローブとCI-VAの新色バッグ

未分類

料理のように

未分類

料理をしながら、
何を考えているかというと‥‥
どんな器に、
どんな風に盛りつけようかな? ってこと。

器ひとつ、盛りつけひとつで、
同じ料理がよくなったり、
時には、あれ? なんてことになったりする。
だから、おろそかにはできないんです。

盛りつけた後、
ちょっと何か足したいな、
なんてこともあって、
そんな時は、ひと工夫。

白いスープに、
粗びき黒こしょうを全体にがりがり。
ローストした肉の横にハーブを添えて。
きくらげのあえものには、
枸杞の実を足して。

ちょっと何かをプラスすると、
とたんにその一皿が生き生きしだす。
食感や味わいも変わって、
新たなおいしさを発見することもあるから、
この「ひと工夫」、
なかなかいいんです。

今週のweeksdaysは、
VINCENT PRADIERのグローブと、
CI-VAのバッグの新色をご紹介。
コーディネートの「ひと工夫」に欠かせない、
アイテムです。

大人のための、“きちんと”パーカー

未分類

伊藤
パーカーのほうは、
前回とサイズ感を
すこし変えていただいたんですよね。
小林
そうなんです。
以前はすっきり見えるコンパクトなシルエットでしたが、
ひとまわり大きいのが欲しいというお声をいただいて、
つくりなおしました。
袖幅をすこし広げているんです。
ボディーの着丈を長くしたので、
ダブルジップにして。
裾のリブ部分をちょっと上げても
着られるようになっています。
伊藤
ダブルジップだと、
車を運転する時に下を開けられるから、
締め付けがなくて楽かもしれない。
小林
たしかにそうですね。
下から開けられるだけで、着方も広がりますよね。
伊藤
軽いし、裏起毛だからほんとうにあたたかいですね。
着た時に、ゴワッとしないのもいい。
小林
ちょっと肌寒い時に羽織ると、
じんわり温まってくる感じがする。
それが天然の綿の良さなんですよね。
「あらびき杢」という、
凹凸や濃淡のある糸を編み上げることで、
すごくいい風合いが出ているんです。
伊藤
それに、オートミールの、
なんともいえない色。
小林
このソフトな色味が、
エレガントなアクセサリーにもよく合いますよ。
肩まわりが開きすぎない形なので、
パーカーでも “きちんと感” が出るんです。
伊藤
うれしいです。
ボトムを合わせるなら、
どんなものがおすすめですか?
岡本
今回のタックパンツとも相性がいいですよね。
私だったら、グレーのワントーンで着て、
パールやスカーフみたいな小物を加えるかな。
小林
いいですね。
ロングスカートとか合わせるのも、
すごくかわいい。
岡本
光沢感のあるスカートとか、
テンションの違う素材と合わせるのもいいかも。
小林
そうそう、スウェット素材をおしゃれに着るのは
すごくかっこいい。
大人にこそ似合う着こなしですね。
伊藤
ちらっと見える、
ポケットの内側のサテンもポイント。
小林
昔はピンク色にしたり、
内側がもっと見えるように
つくったりしていたんですけど、
カーブを5ミリずつ削ったりしながら、
今の形にたどりつきました。
伊藤
パンツと一緒で、
同じアイテムでも、そんなふうに、
少しずつ変えていかれているんですね。
これからのLe pivotも
ますますたのしみになります。
小林
はい、ものづくりは続きますから!
伊藤
小林さん、岡本さん、
どうもありがとうございました。
たくさんのかたに届きますように。

何本でも欲しくなる

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伊藤
このパンツには、
オーバーサイズのジャケットも合いますよね。
なにかと合わせやすいから、
色違いで買われる方も多いのでは?
小林
ええ。
リピーターの方もだんだん増えてきたし、
季節ごとに素材違いでもつくっているので、
全色を持ってらっしゃるという方もいますよ。
私みたいに身長が低くても、
バランスがとりやすい形なんです。
伊藤
身長が高い方は、
ウエストから少し落として穿いていると聞きました。
小林
そうそう。腰で穿いてもかっこいいですよ。
前身頃を重ねて止めるようにつくってあるので、
トップスをインしても、
お腹まわりがすっきり見えます。
伊藤
いろんな体型の方に合いますよね。
小林
はい、そのために何度も調整しながらつくったので、
今の形はベストだと思います。
ポリウレタンを入れて
ストレッチ性を出している素材って、
身体のラインが出ることが多いんですけど、
このパンツはウエストからサラッと落ちてくれて、
体型を拾いすぎないですから。
伊藤
もしかして、真夏以外は穿けますか?
秋冬用につくっていただいたんですけど、
できあがって触ってみたら、
これはもしや、と思って。
小林
そうなんですよ。
サマーウールのようなさらりとしたタッチなので、
真夏以外は着ていただけると思います。
毛羽立ちにくくて、ほんとうにいい生地なんです。
伊藤
それがひと目でわかるのか、先日穿いていたら
「それ、どこのですか?」って聞かれました。
褒められパンツです。
小林
わぁ、うれしい。
伊藤
今回の3色には、どんな色が合いそうですか? 
ライトグレーには黄色いニットもいいなって。
小林
そうですね。
ライトグレーは明るい色を合わせるとさわやかになるかな。
ブラックはちょっとトラッドっぽく着たり、
ボーダーのTシャツと合わせてカジュアルに着るのも
かわいいと思いますよ。
岡本
グレーには赤いトップスも合う。
伊藤
赤、いいですね! 
小林
ざっくりした形のニットでもいいし、
素材も、綿でもウールでも。
伊藤
トップスを選ばないパンツなんですね。
小林
いろんなものに合わせて楽しめるので、
「他の色も欲しい」とリクエストをいただいたりして、
とてもうれしいです。
伊藤
試着されたら、この良さに
ハッと気づかれるんじゃないでしょうか。
小林
そうそう、最初はみなさん、
「スタイルがよくないから似合わない」って
言われるのだけど、
試着されると、わかっていただける。
伊藤
やっぱり。
敬子さんは、何色、持ってらっしゃいます? 
わたし、敬子さんのクローゼットが気になって
しょうがないんですよ。
いったい、服を何着お持ちなんだろうって。
岡本
みんなが思うほど持ってないんですよ。
小物は多いけれど‥‥。
小林
でもこのパンツは、色違いで
10本ぐらいはお持ちなんじゃないですか?
岡本
ふふ、たしかにこのパンツは何本もある! 
ウールストレッチのものは黒とネイビー。
素材違いだとピンク、ブルー、パープル、アイボリー。
サテンのモスグリーンも持ってます。
伊藤
すごい!
それだけ持っていても、
また欲しくなるって。
岡本
ほんとにね、
魔法のパンツですよ。

10年ものの形の秘密

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伊藤
今回は秋・冬に活躍しそうなパンツとパーカーを
つくっていただきました。
パンツのほうはLe pivotの定番アイテムだそうですが、
どのくらい前からつくられているのでしょうか?
小林
かれこれ10年近くなりますね。
当時は、こういう太めのパンツって、
全く流行っていなかったんですよ。
でも、一度つくってみたら気に入って、
いまでも毎シーズンつくっています。
伊藤
当時流行っていたのって‥‥。
小林
ぴたっと細いスキニーデニムとか、
美脚に見えるフレアの(膝から裾にかけて広がる)
パンツでしたね。

▲手前が小林一美さん、奥に写っているのは、同席してくださったLe pivotの
営業・プレス・店頭販売担当である金井美幸さんです。

伊藤
そっか! ふふふ、時代を感じますね。
そんなときに、なぜあえてこの形を?
小林
古い映画を観て、思いついたんです。
もう作品のタイトルも忘れてしまったけれど、
水兵さんが身につけていた
斜めの巻きエプロンの形が妙にかわいくて、
こんな感じかしらと生地を探して、
ラップパンツをつくってみたんです。
それがこのパンツの原型になりました。
敬子さん、それも持ってらっしゃいましたよね?
岡本
持っていましたよ。
すごく好きでした。
小林
私も気に入って穿いていたんですが、
紐で巻くタイプだったから、
お手洗いの時とか面倒で(笑)。
それから紐をやめてホックに改良して、
シルエットもストレートにととのえて、
かっこいい感じに仕上げて、
このパンツができあがったんです。
伊藤
古い映画の水兵さんということは、男性ですよね。
そういえば小林さんがつくられるものって、
ちょっとメンズっぽいテイストが入っています。
この前つくっていただいたノースリーブロングシャツも、
メンズシャツの袖を切った形がヒントだったり。
小林
そうですね。
メンズのものづくりの要素は、
Le pivotの中には多いかもしれません。
昔、古着やミリタリー調のものを
好んで集めていた時の影響かな。
伊藤
このパンツは、かっこよさも感じるけれど、
足を閉じるとロングスカートにも見えますよね。
岡本
シルエットが、すごくきれい。
小林
そうなんです。
パンツだけど、裾幅をワイドにしてあるから、
ロングスカートの表情もあって、いいでしょう? 
時代によって、気になるところを
ほんの少し変えるだけで旬の顔になるので、
微調整しながらつくり続けてきました。
この形になってからは、もう5~6年変えていません。

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