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再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
1月19日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
weeksdays PAS Stool
「座る」だけでなく、
部屋のすみっこに置いて、
小さなサイドテーブル代わりにしたり、
花台として使ったり。
部屋にひとつあると、
とても重宝するスツールです。
今回、お願いしたのは、
東川で35年に渡って家具を作ってこられた、
北の住まい設計社。
従来のデザインにちょっと変化を持たせ、
weeksdays仕様に
していただきました。
色はオーク×ナチュラルと、オーク×ブラック。
もふもふしたシートパッドとともにぜひどうぞ。
(伊藤まさこさん)
Half Round Table あのひとのつかいかた 1・フラワーデザイナー 市村美佳子さん
市村美佳子さんのプロフィール
いちむら・みかこ
フラワーデザイナー、「緑の居場所デザイン」主宰。
大学では陶芸部に所属し、
卒業後(株)ロイヤルコペンハーゲンに入社。
丸の内本店で店内の花装飾を担当したことをきっかけに
通ったフラワーアレンジメント教室の講師、
あんりゆき氏のイギリス暮らしと花に憧れて渡英、
現地でフラワーアレンジメントを学ぶ。
帰国後、あんりゆき氏に師事し、1994年独立。
東京・南青山のアトリエで花教室を主宰するほか、
フラワーデザイナーとして
ファッション&ライフスタイルブランドの
イベント花装飾を手がける。
料理雑誌や書籍のテーブルスタイリストとしても活動。
2012年、小さな頃からのエプロン好きが高じて、
ディレクターの滝本玲子氏と「エプロン商会」を設立。
リバティプリントやヴィンテージの布を使った、
身につけるだけでワクワクする
「大人のためのエプロン」のデザイン、制作、販売を開始。
2016年、屋号を「緑の居場所デザイン」と改称、
2020年(株)緑の居場所を設立。
窓の外はすかーっと抜けた青空。
日当たりのよいリビングの壁に、
市村さんがえらんだのは印象的な黄色でした。
「もともと和室だったところを、
直してもいいですか? って大家さんに直談判。
ふた部屋つなげて広くしたんです」
お花の教室もするというこの場所。
黄色い壁は、花やフラワーベースの色と
ぶつからないのですか?
と尋ねると、
「黄色ってね、他の色との相性がすごくいいんです。
どんなお花も映えるんですよ」
と意外なお返事。
万能な色って、
てっきり白だと思いこんでいたけれど‥‥
と言うと、
「白はコントラストが強すぎるから、案外難しいの」
ですって!
かれこれ、30年近いおつきあいの市村さん。
知り合った当時から、お花の仕事をしていた彼女が、
「万能」と言うのだから、間違いない。
ラウンドテーブルも、ほら、この通り。
黄色い壁に黒いテーブルがしっくり馴染んでる。
ピッチャーに生けたのは、
土佐みずきの枝。
右に置いた一輪挿しの中には、
枯れそうなラナンキュラス!?
お花って、生き生きしている状態が
ベストだと思っていたけれど、
そうではないことを知りました。
だってここに、この一輪があるのとないのとでは
大違いだもの。
「花もフラワーベースも、
いろんなテイストを混ぜるのが好き。
シックなものの中に、ちょっと派手なものや、
異質なものを入れ込んだりとか」
違うスタイリングも、
見てみたいなぁとお願いすると‥‥
棚から、ささっとオレンジのベースを取り出して、
こんな風に仕上げてくれました。
テーブルの足元には、
無数のフラワーベースが。
「ヨーロッパの蚤の市で買ったり、
海外へ行けないここ2、3年は、
都内で開催されるマーケットで見つけたり」
‥‥とここでまた、
テーブルの上のスタイリングをチェンジ。
フラワーベースをたくさん乗せて。
テーブルの使い心地を尋ねると、
「70センチの高さは使いやすいですね。
奥行きがけっこうあるので、
ものも案外たくさん置くことができる」
そうなんです。
角がないから、部屋の中でじゃまにならない。
花やフラワーベースはもちろん、
パソコンを置いて、作業もできちゃうんです。
テーブルに合わせてくれたのかな?
今日のワンピースは黒。
すてきですね、と言うと
なんと、
市村さんが友人とはじめたブランドのものだそう。
きっかけは蚤の市で見かけた、
古い着物。
「いいなと思ったものをまずは買って、
じゃぶじゃぶ洗って。そこから仕立てます」
バイヤス使いだから、
着ると立体感が出るんですって。なるほど。
着物と、洋服。
古いものと、新しいもの。
シックなものと、異質なもの。
ピン、と元気な枝に、今にも枯れそうな花。
黄色い壁と、黒いテーブル。
テイストが揃ってないのが、
市村さんのテイスト。
これはなかなか真似できないけれど‥‥
いつか壁の一面を黄色にしてみたいな、
なんて思いました。
木を植える男
- 渡邊
- こんにちは、渡邊です。
よろしくお願いします。
- 伊藤
- よろしくお願いします。
渡邊さんに、やっとお目にかかれました。
スツールのときも、
いろいろとご尽力をいただき、
ありがとうございました。
- 渡邊
- とんでもないです。多くの方のところに届いたそうで、
とてもうれしく思っています。
ありがとうって言うのはこちらのほうですよ。
- 伊藤
- スツール、30分もしないうちに、完売したんです。
- 渡邊
- すごいことです。
ありがとうございました。
- 伊藤
- 前回はオンラインの取材で、
「北の住まい設計社」の
成り立ちを聞かせていただいたんですが、
社長である渡邊さんがご不在で、
ずっと謎の人物だったんです(笑)。
- 渡邊
- そうかなぁ? ぼく、わかりやすいですよ。
- 伊藤
- あの‥‥、木を植えるのがすごく好き、
と聞きましたよ(笑)。
- 渡邊
- アハハ! そうですね、
好き、っていうか「使命」ですね。
- 伊藤
- この土地と出会って、数十年後にはこうなるぞ、
ということを思い描きながら、
木を植えていったんですか。
- 渡邊
- いえいえ、そこまで壮大な気持ちはなかったんですよ。
ここへ来た時、あまりにも寂しかった、
ということが一番です。
寂しいっていうのは、学校が廃校になったあと、
誰も手入れをしていなかったからですね。
もう、なんていうか、みすぼらしくなっちゃって‥‥。
畑もそうなんですけど、
それまでずっと人が関わっていた場所が放置されると、
「自然のまま」というよりは
「荒れた」印象になってしまうんですよ。
このあたりは、あんまり作物が穫れなかったから、
農家のみなさんもみんな離農をしていった。
ちょうどこの場所の真ん前では、
三つ葉の栽培をしていたんですが、それがだめになり、
ぼくらがこのあたりの土地を買うことになったとき、
自分たちが住んで、どうしたらいいかなっていうなかで、
作物も穫れないのならば、無理して農地にせず、
この荒れ果てた土地を森に還してあげたいと思いました。
それが木を植えることと連動していったわけです。
- 伊藤
- 当時の写真を見せていただいたんですけど、
あの荒れた土地がよくここまでに、って感動しました。
校舎も古びていたというし、
それを「よしっ!」って‥‥。
- 渡邊
- いや、「よしっ!」なんて
いうつもりじゃないんですよ(笑)。
- 雅美
- そうなんです、
そんな大げさなことじゃないんです(笑)。
- 伊藤
- でも「よしっ!」じゃないと、
できないことだと思うなぁ。
- 渡邊
- いえいえ、そんな大げさなことじゃありません。
ぼくはむしろここに来るのを
ちょっと嫌がってたくらいですから(笑)。
- 雅美
- たしかに、ちょっと、嫌がってました(笑)。
- 渡邊
- でも周りの人、いろいろぼくがお世話になってた方が
すすめてくださったというか、
ぼくに白羽の矢が立ったっていうか。
この東川町からもお誘いを受けたんです。
それで「まぁ、しょうがないか」ですよ。
たしかにここを森に還すということは思ったけれど、
ここで何かをしようとか、
ここを立派なものにしようとか、
そういう気持ちはありませんでした。
- 雅美
- そうです。成り行きです。
もちろん場所は探していたんですよ、
どこであたらしい生活をスタートするか。
- 渡邊
- 7年間、探していたね。
- 伊藤
- 旭川で、インテリアデザインの事務所をなさりつつ、
ご飯屋さんもなさっていて、
そういう忙しいなかで、
違うスタイルの仕事をしよう考えた、
というお話でしたよね。
- 渡邊
- そう、探し回った。
- 伊藤
- 7年って、なかなか長いですね。
- 渡邊
- けっきょく、どこを見に行っても、
そこで何かをやろうとかっていう
強い思いがなかったんです。
だからないままに年月が過ぎていった。
海外にも紹介されて行ったりとか、
あっちこっちいろんな土地を見て歩きました。
- 伊藤
- 海外へも!
- 雅美
- はい。前の仕事をいったん辞めて、
1か月、2人で北欧に。
フィンランドが一番長かったです。
ファームステイをしたんですよ。
- 伊藤
- へぇ! どちらの町に?
- 雅美
- えっと‥‥なんていうところだったかな。
- 渡邊
- ハーパニエミ(クオピオ市)だね。
その郊外の小さな農家にステイしました。
- 雅美
- にんじん農家でした。湖のエリアで。
- 伊藤
- 今のようなことになると、
始めた頃は想像してらっしゃいましたか?
- 渡邊
- いやいや、もう想像とか、
そんなの、まったくなかったです。
とにかく木を植えて‥‥。
- 雅美
- でもね、木はもっと早くから植えてましたよ。
旭川の町の中のマンションから
郊外の戸建てに移り住んだ頃からだと思います。
なぜ憶えているかというと、
私がベリーを植えたのに、
ある日、それがすっかりなくなっていて、
替わりに木が植わってるんです。
彼のしわざです。
- 伊藤
- ええーっ?!(笑)
- 雅美
- もう、そういう戦いです。
私は下を見てるんだけど、
夫は上を見てる。
- 伊藤
- (笑)今も植えてるんですか?
- 渡邊
- そうですね。ここらへんにこんなのがほしいな、
っていう時があって。
今は、広葉樹というよりは、エゾマツを植えてます。
混交林にしたいと思ってやっているんですが、
ドングリなんかはどんどん落ちて、
若い芽が出てくるんですけど、
マツはなかなか新芽が出ないんです。
出ても違った樹種ですね。たとえばトウヒとか。
だからこのへんにあるエゾマツは、
自然に生えたものじゃなくて、
全部といっていいくらいぼくが植えたものです。
- 伊藤
- 自然に生えてきたものなのかなと思ってました!
こちらのスタートが1985年と聞きましたから、
そこから37年になるんですね。
いま、50人くらいいらっしゃるそうですが、
一番最初は何人だったんですか?
- 雅美
- 私たちを入れて5、6人でしたね。
そこに手伝いたいという人が来たりして‥‥。
- 伊藤
- その時は、家具をつくる工房として
スタートなさったんですか?
- 雅美
- そうと言えばそうなんですけれど、
ルートも販売先もなかったので(笑)、
やりたいことが、ただ、あっただけです。
- 伊藤
- やりたいこととは。
- 雅美
- 北海道の木を使って、
外での暮らしを楽しむ提案をしたい、っていうことです。
だから夏を楽しむような家具づくりからやろうと。
それでアウトドアの家具を
エゾマツでつくったんです。
- 渡邊
- 家具といっても、おもちゃみたいなものでしたよ。
- 雅美
- 巣箱とか、木のポストとか。
フィンランドで見かけたものに
影響されたんだと思います。
- 渡邊
- 森っていったら鳥ですよね。だから巣箱。
- 雅美
- 最初は見事に売れなかったけど(笑)!
- 渡邊
- それが、巣箱だけは売れたんですよ。
日本野鳥の会の認定品になって、
会が1000個単位で買ってくれたんです。
- 伊藤
- そうなんですね。そこから徐々に家具づくりが
拡がっていったんですね。
わたしがスタイリストのアシスタントになったのが、
ちょうど30年ぐらい前なんですけれど、
東京の家具屋さんで
おふたりの家具を扱っていらっしゃったと聞きました。
きっとわたし、そうと気づかず見ていたと思うんです。
- 渡邊
- そうですね。また30年前だったらありましたね。
サザビーのお店とか、
元代々木にあった頃のペニーワイズとか。
- 雅美
- 懐かしい!
あれは、輸入できる家具が
だんだん少なくなってきて、
もうそんなに持ってくるものがないから、
自社でやりたいっていうことで、
共同開発をしていたんです。
材料選びやデザインも一緒にやって、
オリジナル家具を出したんですよ。
シェーカーっぽい形でした。
- 伊藤
- それで名前が広まったんですか?
- 雅美
- いえ、名前は出ないんですけれど、
私たちにとっては、
ノウハウができたことが収穫でした。
大量に注文をいただいたことで、
材木を乾燥させたり、家具を組み立てる、
そういう家具の生産工程のノウハウですね。
‥‥それも、バブルの終わりで
バッサリなくなってしまいましたけれど。
- 伊藤
- バブルがはじけたことで、ちょっとずつ、みんなが、
暮らしを大事にするみたいな空気になっていきましたね。
『クウネル』が創刊されたりして、
新しいものを追いかけるのにちょっと疲れちゃったことと、
ずっと使える大事ないいものが欲しいという気持ちが
重なったような気もするんです、あの頃。
- 雅美
- そうですよね。私たち、
時代の影響って受けていないような気がしてたけれど、
やっぱり、けっこう受けているんですよね。
- 伊藤
- むしろ、時代をつくってこられたのでは?
- 渡邊
- いや、つくってない、つくってない!
そんな大それたことしてないですよ!
- 伊藤
- (笑)
- 渡邊
- 思い、だけなんですよ。
自分の思いがいつも先んじていて、
中身がなかなかついてこないんです。
城浦君も秦野君もわかると思うけど、
「これからはもう、木は輸入しないぞ」とか、
いきなり、言っちゃうもんですから、ぼく。
- 伊藤
- えっ? えっ?
Half Round Table
しっくり馴染む
椅子はもうたくさん持っています。
ダイニングテーブルは、
何年も前に、
「一生もの」と思えるものを買いました。
チェストは去年、
気に入ったものを手に入れたばかり。
ひとつひとつ、
時間をかけて、
部屋と自分の暮らしにあったものをえらんできて、
今は「足りていない」と感じることはないのかな。
‥‥とは言っても、
家具好きとしては、
何か新しいものが欲しくなってしまうんです。
家の中をきょろきょろと見渡して、
「あ! こんなのあったらいいな」
そう思うものを見つけました。
すぐに北海道に連絡をして、
行ったり来たりのやりとりの末に、
できあがったのは、
半円のテーブル。
玄関、ダイニング、ベッドルーム‥‥
家のどこにあっても、
しっくり馴染む。
新しく加わったばかりなのに、
まるで前からそこにあったみたいなんです。
作ってくれたのは、
北の住まい設計社。
サンプルを見に行った時に目にした、
窓辺に置かれた様子、
忘れられないな。
今週のweeksdaysは、
北の住まい設計社と作った Half Round Table。
コンテンツは、
3人の方の使っている様子を拝見。
それから、
北の住まい設計社の皆さんに、
「このテーブルができるまで」をうかがいました。
どうぞお楽しみに。
山の正装
誰もが家からでなくなって
おしゃれの機会が皆無になった春は2年前。
いつもなら明るい色の薄い服をまとって晴々と、
誰かに会いに行っていたのに。
新しい服を買う気にもならず、
くたっとした部屋着ばかり着ていた。
山、登ってみよう。
うちから歩いて5分の低い山に目を止めたのはその頃。
東京から岡山に越して10年近く経つのに、
忙しすぎてそんな気持ちになる暇もなかった。
今、山が呼んでいる気がする。
ある日、適当なジャージを羽織り、
水筒とカメラを持って登ってみた。
標高169mの山はなだらかな坂で、
登山というよりは山歩き。
一歩ごとに樹々が囁くように揺れ、
足下には無数の落ち葉が重なる。
鳥の声が何種類も響く。
人間はわたしひとりだけ。
気づけば瞑想のような状態。
たどり着いた土地は妙に開けていて、
信じられないくらい巨大な岩がある。
衝動的にそこに横たわってみた。
靴を脱いで、裸足で。
じわりと熱い岩が、そのときの不安な気持ちを
吸い取ってくれるような気がした。
視界は青一色で、
鳥たちが激しく交わす会話だけが聞こえる。
それからというもの、
その山に登ることはわたしの大切な日課となった。
朝起きてベランダから山を見る。
顔を洗って日焼け止めを塗り、
ぼさぼさな髪を適当にキャップで押さえてすぐ、でかける。
エクササイズというよりは、
山に会いにいく儀式、と思っていた。
山、というのは木も花も鳥も虫も落ち葉も岩も、
そこにあるもの、すべて。
レギンスを買おう。
ある日突然そう思いついた。
誰に会うわけでもないけど、山のための服がほしい。
登山用の分厚いパンツは必要ない。
なにか、気持ちがあがるすてきなレギンスがいい。
それをシンプルなTシャツと合わせて
山訪問の「正装」にしようと思った。
その頃にはもう、わたしはその山を「聖地」と呼んでいた。
まだまだ不安定な世の中で
揺れ動いてしまいがちなエネルギーを
整えてくれる力がすごすぎて。
聖地を訪ねるには正装がいるでしょう。
服を買うことがだいすきで、
それまでずいぶん消費してきたけれど、
最後に何かを買ってから4ヶ月ほど経っていた。
ひさしぶりの買い物はレギンス。
世の中のありとあらゆるスポーツレギンスを
ネットで検索した。
たくさん消費するループからも
自然と抜け出したい気持ちになっていた。
レギンス、すぐ乾くだろうから一本でいい。
渾身の一本を。
丸一日レギンスリサーチをした結果、
宇宙みたいな模様の一本にした。
私服なら選ばないであろう少しサイケデリックな柄。
届いたそれは、両サイドに巧妙に黒地がいれてあり、
正面から見ると脚がまっすぐ、ほっそり見える。
偉大な山はわたしの脚のラインなど気にもしないだろう。
そのままのわたしをジャッジもせず、
ただ受けとめてくれるだろう。
知ってる。
わたしが上から見下ろしてひとり、気分がいいだけ。
でも、この「気分がいい」の効用を
いやというほどこの時期思い知っていた。
気分がよければすべてがよい方向に進む。
不安な時期のあの頃、
いつも以上に必要としていたのはその作用。
山はわたしの気分をベストにしてくれる
すごい力を持っていた。
そこにクールな銀河柄の脚で分け入る。
岩に登る。靴を脱いで大の字で寝そべる。
空を見上げて、自分のサイズを確認する。
控えめに言って、最高だった。
時は流れ、また、山以外の場所も
多く行き来するようになった。
でも今でも定期的に山に入る。
宇宙のレギンスに両脚をいれて、
過剰な何かを持ちすぎていないか
いつも、確認しにいく。
天国のジュエリーボックス
出合いは、はじめてのハワイ。
その日は確か、オアフ島の東海岸にある
ラニカイビーチというところに行く
半日のオプショナルツアーに参加しました。
ワイキキから車で30分ぐらいのところにある
ラニカイビーチは、ハワイ語で「天国の海」と言われる
息を呑むような美しいビーチ。
エメラルドグリーンの海に真っ白サラサラな砂浜、
ずっと憧れでした。なのですが‥‥
実は着いて30分ぐらいで
「あ、もういいかな」って思ってしまったんです。
いやもちろん、送迎バスを降りて
ビーチに向かうまでのロケーション、
砂浜に足を踏み入れたときの感触、
ワイキキに比べてのんびり静かな空間。
木陰で本を読むご婦人や砂遊びをする子どもたちの、
まぁ絵になること。
どんなに適当に撮っても
なんだか雰囲気ばっちりに写ってしまう
エメラルドと白のコントラスト。
「永遠にここに居たい‥‥」なんて常套句が
自然と口からでちゃうもんだと思っていました。
でも連日絶景を前にして、
何となく自分の中のコップの水が
溢れてくるのを感じていたんです。
もともとうっすらと感じていた
「実はそんなに水辺が得意じゃない、正直ちょっとこわい」
という、どこかトラウマのような感覚。
中高も水泳部だというのに。
自分の中で克服したつもりでいたこの感覚がよみがえって、
この美しいビーチも
ちょっと遠目から眺めているだけでいいかなと。
じゃぁこれから3時間、どうしよう。
思い切って、ビーチクルーザーを借りて
街に出てみることにしました。
このビーチのあるカイルアという地域は
世界屈指の高級住宅地や別荘地であり、
小さなスリフトショップ(いわゆるリサイクルショップ)が
点在しているらしいというのは何かで読んだけど‥‥
旅行は事前リサーチを入念にしてしまうタイプの私が、
無計画に、しかもツアー参加者と離れて
勝手に単独行動なんて今でも不思議なのですが、
なにか胸騒ぎがあったのかもしれません。
気になるお店を見つけては入り、見つけては入り。
どの店も無造作とは程遠い、
それはそれはゴチャゴチャとした空間で、
でも私にとっての “天国” でした。
埃をかぶった食器やレコード、
経年で固くなった帽子やカゴバッグ、
とぼけた顔のぬいぐるみに業務用のドアプレート。
ああ永遠にここに居たい‥‥。
タイムリミットを気にしながらひたすら走って、
たどり着いたあるお店。
吸い込まれるように店に入ると、
店主がチラリとこちらを見て、
店の奥から何か持ってきました。
「これ似合うよ」と(言われた気がした)
手渡されたそれは‥‥。
ジュエリーボックスでした。
所々小傷が入った20cmぐらいのボルドー色の革装で、
中は2段になっていて、
ペールトーンのミント色のベルベット地が敷き詰められた
ガーリーな雰囲気。
1950年代のアメリカ製で、
当時好んで着けていた華奢なアクセサリーにもぴったりの、
まさに運命の出合いでした。
偶然なのか、店主のおじさんに
何某かのパワーがあったのか、
それ以上は私の英語力では聞き出せず
「30ドルだけど20ドルにディスカウントするよ」
という言葉と共に、
黄色いビニールのレジ袋にガサっと入れて
その箱をくれました。
「Enjoy!」とにこやかに見送ってくれたその顔は、
今でもなんとなく脳裏に焼きついています。
そうして運命の出合いをした数日後、
私は思い立って人生初のスカイダイビングに挑戦しました。
ノースショアの海の上3000mから
重力にまかせて急降下する数十秒の間、
ただこわいと思っていた海が、
とにかく大きくて、美しくて、優しくて、
未体験の感覚でした。
行動が極端だよと周囲からは笑われましたが、
おそらく私はあのおじさんとあのお店と
このジュエリーボックスに出合っていなかったら、
空も飛んでいなかったし、
海もいまだにこわいかもしれません。
あれからというもの、何か自分を奮い立たせたいときに、
ヴィンテージのジュエリーボックスや
リングボックスを1つ買うのが、
小さな願掛けになっています。
ひとつ増えるたびに、ハワイでのことを思い出します。
いつかまたあのお店に再訪したいと思っているんですが、
実はどんなに検索しても見つからないんです‥‥。
山岡士郎のように手に入らない
- 伊藤
- 一之輔さんは「まくら」のエッセイ本を
これまで数冊出されてますが、
一之輔さんの「まくら」って、
年代的にみて「ちょっと上」の話題が多いんですよ。
それはまわりにいらした年長のかた、
たとえばご家族の影響でしょうか。
- 一之輔
- きっとそうでしょうね。
この前の寄席の「まくら」では
漫画の『美味しんぼ』の話をしました。
ぼくが中1のときに、
いちばん上の姉が結婚したんですよ。
そんとき義理の兄になる人が、
ぼくを懐柔するために(笑)、
『美味しんぼ』を全巻くれまして。
- 伊藤
- 全巻! なんでまた『美味しんぼ』?
- 一之輔
- なんででしょう、
そんなことで手懐けられると思ったんでしょうか。
「これ、おもしろいから読んでみなさい」
「はーい、ありがとうございます」
そこからぼくは『美味しんぼ』を
読みふけりました。
日曜の昼下がり、中学生がずっと
家で『美味しんぼ』です。
- 伊藤
- いいですね。
- 一之輔
- 酒も飲んだことないのに、
「ボージョレ・ヌーヴォーはいまいちだ」
「ドライビールなんてビールじゃない」
なんて言ってました。
中1が、大人に向かって
「山岡士郎が言ってたよ、
そんな気の抜けたビール、ってね」
おまえ、飲んだことねえだろビール(笑)。
- 伊藤
- 『美味しんぼ』はわたしも去年、
アニメで全部見ました。
『美味しんぼ』の「まくら」って
どんな内容だったんですか?
- 一之輔
- Twitterで、ハロウィーンの恰好が
バズってまわってくるでしょう?
そのなかに子どもが
山岡士郎のコスプレしてるのがありまして。
- 伊藤
- ちょっと(笑)、どうやって
山岡士郎ってわかるんですか。
- 一之輔
- オールバックで髪がびゅっとなってて、
黒いジャケット、ゆるんだ黒いネクタイ。
新聞片手に持って、
ポケットに突っ込んでる。
- 伊藤
- なんでまた、子どもに
山岡士郎のコスプレをさせたんだろう?
- 一之輔
- あの恰好で子どもが
「トリックオアトリート」って来たら、嫌でしょう。
そんな奴にどんな菓子やっていいか
わからないですよ。
なまじスナックとかあげたら。
- 伊藤
- ダメですね。
- 一之輔
- 「これは添加物いっぱいだ」とか言いますよ。
そんな「まくら」をね、一昨日振ってました。
- 伊藤
- 結局、士郎さんって育ちがいいから、
いいものに触れる機会がありすぎなんです。
- 一之輔
- ええ、わかります。
でも士郎は、
人の心がわからないからね。
- 伊藤
- そうなんですよね。
- 一之輔
- ほかにお客さんが大勢いるのに、
「この店は、なってない」と
文句言ったりするじゃないですか。
やってること、
親父と一緒なんですよ。
- 伊藤
- 英才教育は受けたんだけれども、
いろいろあって、
ちょっと冷たい人になっちゃった。
そういうとこハラハラしちゃいます。
- 一之輔
- 料理を作ってくれた人の気持ちが
わかってないんだよ。
- ──
- 漫画ですから‥‥。
- 一之輔
- 漫画なんだ。
- 伊藤
- 漫画ですね。
- ──
- はい。急に出てきてすみません。
- 伊藤
- 一之輔さんはほかの漫画も
そんな感じで、
周囲の年上の方にすすめられて
読んだのでしょうか。
- 一之輔
- いえ、金持ちの友だちんちに、
読みに行ってました。
大人になって改めて気づいたんですが、
うちの暮らしむきって、中の下か、
たぶん下の上ぐらいでした。
母親が内職してたから、
そんなに裕福ではなかったんです。
子どももいっぱいいたし。
- 伊藤
- わたしは耳鼻科は、
『美味しんぼ』が置いてあるかどうかで
決めてました。
待たされてもいいから。
- 一之輔
- はい、はいはい。
- 伊藤
- 山岡士郎みたいに、
やすやすとなんでも手に入っていては、
つまらないですよね。
- 一之輔
- そうなんでしょうね。
その金持ちの友だちは、
ビックリマンチョコも箱買いしてました。
みんなでそこに行って、チョコだけもらって
『コロコロコミック』を読ませてもらう。
家の中にミニ四駆のコースもあったんです。
ミニ四駆は、みんな自分の車は持ってるけど
走らせるところがないから、
そこ行って走らせました。
そんなことも「まくら」に入ります。
もしもね、これ、自分ちがその家だったら、
ネタになんないです。
そこそこ貧乏でよかったなとも思います。
自分に欠けてるものとか、抜けてるものとか、
そういうものがあったほうが、
きっと楽しいんじゃないかな。
ちょっと生意気なんですけど、
満たされてるとね、
お客さんが「聞いて笑って」という感じに
ならないんですよ。
- 伊藤
- では、お正月ですけれども、
一之輔さんは今年のハロウィーン、
山岡士郎さんを着ますか?
- 一之輔
- いやぁ、山岡士郎を子どもに着させるのを、
先にやられちゃったから、もうダメだな。
悔しいっすね。
- 伊藤
- 知り合いから聞いた話なんですけど、
仮装しなきゃいけないイベントに、
フランス人が「フランス人の仮装」を
してきたことがあったんですって。
ベレー帽かぶって、フランスパン持って。
- 一之輔
- そりゃカッコいいですね。
- 伊藤
- そう。そのイベントでそのフランス人が
いちばんセンスがよかったんですって。
それを上まわりたいので、
一之輔さんなら
落語家さんの仮装じゃないですか。
- 一之輔
- いいですね。
いやぁ、でもこの格好のまま
ハロウィーン行ったら、
お坊さんの仮装だと思われます。
でもね、私服になるとぼくはほんとに、
しょぼーんとしちゃうんですよ。
仕事着ですからね、これは。
- 伊藤
- 着物を着ると「仕事だ」という気分になりますか?
- 一之輔
- 一応はね。
だいたいね、いつも
「一応」で仕事しています。
「一応やっとくか」とかね、
「念のため」とかね。
- 伊藤
- 「一応」が通年のモットーなんですね。
- 一之輔
- そうそう。
それでここまでやってきて、
けっこう、いいもんです。
- 伊藤
- ああ、まだまだ足りないけど、
ぜんぜん訊きたいこと訊けなかった気もするけど、
たっぷり時間も過ぎてしまいました。
たのしい新春対談を、ありがとうございました。
- 一之輔
- こちらこそ。
またもや時間が足りな過ぎたかもしれない。
またゆっくりどこかで。
- 伊藤
- はい、ぜひ。
ありがとうございました。
新しいチャレンジ
こんにちは。インテリアブランド「イデー」の
ディレクターの大島です。
パンデミック以降、
私のライフスタイルにも変化がありました。
これまで一度も車に興味を持つことが無かったのですが、
50歳を目の前にしてこれまでの人生を振り返り、
やり残したことを毎年一つずつでもチャレンジしてみようと
心に決め、2020年の年明けから自動車教習所に通い、
9か月かけて2020年秋に
自動車免許を取得することができました。
免許取得の次はマイカー選び。
オートマ限定で免許を取ったこともあり、
はじめは最近の車種を見ていたのですが、
尊敬する先輩に「車も洋服と同じ自己表現だから。」
と言われ、どうせ乗るなら少しぐらい手間がかかっても
自分が好きなものに乗ろうと旧車を選ぶことにしました。
そこで目に留まったのがスウェーデンの
Volvo 240という車。
1974年から1993年まで作られた
Volvoを代表するロングセラーシリーズ。
質実剛健の旧車らしいカクカクしたデザインと、
仕事柄大きな荷物や家具も運べるという理由で選んだ
ステーションワゴン。
旧車選びは人選びというぐらいで、
車の状態はもちろんですが、
信頼できる整備士と出会えるかが
重要ということを友人に聞き、
中古車屋に行っては整備士さんと話すことを繰り返し、
探し始めてから半年後
ようやく念願のVolvo 240に出会うことができました。
意外にもこれまでVolvo 240は故障もなく、
運転初心者にとても優しい車。
電車やバスではなかなか行けなかった
様々な場所にドライブする
充実したカーライフを送っています。
車は移動するプライベート空間。
好きな時に好きな音楽を聴きながら
好きな場所に行ける喜び、仕事にプライベートに
お気に入りの車でドライブするひと時は、
これまで感じることができなかった
とても有意義な時間です。
ドライブの道中に偶然見つけた飲食店、
車でしか行けない気になるお店、
ドライブをすることで新たな出会いや経験もでき、
私にとって無くてはならない相棒になりました。
そして昨年末には、車を持ったことで
行動範囲も広がり、
箱根に新しい拠点も作ることができました。
実家が九州で、
ゆくゆくは九州の実家で暮らすことを
ぼんやり考えていたこともあり、
一度も家を買うという選択肢が無かった自分にとっての
新しいチャレンジ。
おかげで、平日は都心で頑張って仕事をし、
週末は箱根でリフレッシュ、
メリハリのある二拠点生活を送ることができています。
さらに今年の春、ずっと憧れていた
クラシックタイプのVolvo 245が
お世話になっている中古車屋さんで突然売りに出され
衝動買い(笑)。
これまで乗っていた1993年製のVolvo 240から
1982年製のVolvo 245に乗り換えることにしました。
いつか欲しいと願っていた1台に出会うこともでき、
これからますます楽しいカーライフが訪れそうです。
さあ、今年はどんなチャレンジをしようか画策中です。
皆さんも、1度切りの人生ですから
小さなことでも何か始めることで、
新しい出会いやこれまでの価値観を広げる
良い機会になると思いますので、是非!
ホームでありアウェイ
- 伊藤
- 落語との出会いは?
- 一之輔
- 高校です。
男子校だったんですけど、
高2でラグビー部辞めちゃって、
浅草をフラフラしてて寄席に入りました。
それが最初‥‥いや、ほんとうの最初は、
小学5年生のときに
落語クラブに入ったんです。
- 伊藤
- 小学生で、落語を。
- 一之輔
- それはたいした動機もありませんでした。
学校のクラブに入ることになって、
落語クラブは人が少なかった。
ぼくは子どもながらになんだかマイナー志向で、
人がいないところを好んだんです。
で、落語クラブ。
「ちょっと変わった感じもあるし、いいかな」
なんて思って、入ってみたら案の定、
部員は4人ぐらいでした。
そこで先生に「これ覚えてやれ」って言われて、
落語を覚えたのが最初です。
- 伊藤
- そのときは1分間スピーチのあとですし、
ウケるたのしさも知ってる子ですもんね。
- 一之輔
- そうそう。「じゃ、まぁやるか」つって、
6年生を送る会で、やった覚えがあります。
だからぼくの最初の高座は、
客が1300人ぐらいでした。
それ、全校生徒の数なんですけどね(笑)。
- 伊藤
- それはすごい。
全校生徒の前で、いきなりよくしゃべれましたね。
- 一之輔
- どうしゃべったのかは覚えてないです。
たしかに落語クラブに入ったんだけど、
たいして好きにはならなかったんですよ。
でも「そういえば、やったな」という
記憶はありました。
そして高2で浅草ブラブラして、
浅草演芸ホールに入ってみたんです。
- 伊藤
- そのときに「これだ!」という、
輝くひらめきのような、
運命的なものが降りてきたのでしょうか。
- 一之輔
- そうですねぇ、
「これだ!」というよりか、鈍ぅーい、
「これ‥‥なのかな」みたいな(笑)。
「どうやらこの寄席ってところは、
なんだかへんてこな空間だぞ」
と感じました。
いいな、なんか俺に合ってるみたいだな、
だるい感じの、さしてみんな一所懸命じゃない、
エンターテイメントは名ばかりの、
10代の若者から
80すぎのおじいさんおばあさんがいて、
よくわかんない手品やったり、噺したりする。
で、お客さんも、
さほど一所懸命には聞いてないじゃないですか。
- 伊藤
- ええ、まぁ、気は許してます(笑)。
- 一之輔
- とにかく、なんだか変な空間だったんですよ。
高校生だった自分は詰襟姿でした。
同じような年まわりの人は客席にいない。
爆笑の場というより変な空間という印象で、
でも「居心地はいいかな」という感じ。
- 伊藤
- 「居心地がいい」か‥‥、
その印象はいまも変わらずずっと?
- 一之輔
- はい、そうですね。
- 伊藤
- 一之輔さんはテレビにも出演するし、
ラジオもやってらっしゃるし、
文章も書きますよね。
それは寄席の
「居心地のいいホーム」があってこその
ほかのお仕事という感じなんでしょうか。
- 一之輔
- うーん、そうですね‥‥、
寄席って基本的に10日興行なんです。
その10日のうち7日出られないと、
プログラムに入れてもらえません。
ほかの仕事で忙しくなると
7日出られなくなることもあるんで、
そういうときは
「はずしてください」と申し出ます。
でも、やっぱり寄席に出てないと、
ちょっとおかしくなっちゃうんです。
- 伊藤
- 体調が?
- 一之輔
- 自分のリズムがね。
たとえば夜に独演会があるとするでしょう、
そういう日はたいがい、昼間に2軒ぐらい、
寄席に出させていただくんですけどね。
- 伊藤
- うわっ、すごいですね。
- 一之輔
- だから1日に5席ぐらい、やったりします。
しかし寄席って東京に5軒しかないんですよ。
噺家の数のほうが多い。
入れてもらえない人のほうが多いわけです。
寄席に出られるのはそれだけで
ありがたいものなんです。
ありがたいんだけど、ギャラは少ない(笑)。
ほら、わかるでしょ?
これだけの人数が出てて、
入場料は、ご存知のとおり。
半分は、当然のことながら寄席が持ってくから。
- 伊藤
- はい‥‥、この前、寄席に来て、
出演者の数に驚き、
思わずそろばんはじいちゃいました。
「あれ? さっきわたしはこれだけ払って、
そして、お客さんがこの人数」
- 一之輔
- 先輩方もたくさん出ててね、
ほんとうはあり得ないんですよ。
ですからまぁ、ほかの仕事のほうが、
はるかにいただけるんです。
これは事実としての話です。
だけどあんまりみんな文句言わずに出ます。
「少ねぇな、おい」とか言いながら、出る。
もちろん売れ過ぎちゃったりして、
出なくなる人もいるんですよ。
でも寄席が好きな人はずっと出ます。
ぼくも、出てないとなんだか気持ち悪い。
- 伊藤
- 寄席と独演会は、ぜんぜん違う雰囲気ですか?
- 一之輔
- 違います。
さっき言ったように、
寄席は団体芸だから、
楽にしゃべれるってこともある。
寄席って、ホームなんだけどアウェイです。
それがいちばんの特徴です。
- 伊藤
- ‥‥ホームなんだけど、
- 一之輔
- アウェイ。
だってお客さん全員、
ぼくを目当てに来てないでしょう。
- 伊藤
- たしかに。
- 一之輔
- いちばん多くいらっしゃるのは
「寄席、行ってみようかな」と
ふらっと来る方。
そういう人がほとんどです。
もちろんトリなんか取ると、
目当てで来てくれる人は多いです。
それでも「はじめて見るよ、一之輔」という方が
トリ取ったとしても、いらっしゃるわけです。
「そういうお客さまである」というアウェイ感が、
とてもいいんですよ。
当然、ぜんぜんウケないこともあります。
これが独演会ばっかりやってるとね、
ちょっとおかしくなってくるんです。
お客さんはみんなぼくを見にいらしてるんで、
甘えちゃうんでしょう。
「好きだから来てくださったんだ」って、
ちょっと思ってしまうんです。
- 伊藤
- そういう甘えた気持ちに慣れないように、
という意味でも、
寄席に出ておいたほうがいいんですね。
- 一之輔
- そうですね。きっと両方やってると、
バランスがよくなります。
himieのピアス
早く帰りたい
- 伊藤
- 師匠から一対一でつけてもらう直接の稽古が、
落語の内容を身につけるうえでも、
いちばんいいですか?
- 一之輔
- おそらくそうでしょうね。
落語研究会なんかでは、みなさん、
録音したテープやCDで覚えるでしょ。
でも弟子になると、直(じか)で教わることになる。
ぜんぜん違いますよ。
技術的なことももちろんそうなんだけど、
「このときのこの登場人物の気持ちはこうだよ」
というところまで教えてもらえるんです。
それ、ぼくらが使うすごく便利な言葉で
「了見」って言うんですけど。
- 伊藤
- 了見。
- 一之輔
- 了見は頻出語です。
「この人の了見を考えながら、やんなさい」
そう言われる。
五代目の小さん師匠が
「狸の噺をやるときは狸の了見になれ」って
言ってたらしいけど、
狸の了見ってさ(笑)、どんなのだろう。
意味わかんないんです。
- 伊藤
- 何だろう。難しい!
師匠のおっしゃることを、
ビデオやレコーダーで録ったりするわけじゃなく、
その場で覚えるだけですか?
- 一之輔
- 音声はね、いまは録らせてくださいます。
でも、録らないほうが
ほんとうはいいんですよ。
昔はひとつの噺を区切って3連日通って、
録音せずにその場で覚える「三遍稽古」が
普通でした。
いまはみんな忙しくて、
スケジュールが合わなかったりするので、
1回の稽古を録音させていただいて、覚えます。
でも、録音するとね、
「いつでも覚えられるや」と思って、ダメですね。
「三遍稽古」でやったほうがすぐ覚えます。
だって3日だけで覚えるんですから。
- 伊藤
- 見るだけで覚えるんですよね。すごいなぁ。
- 一之輔
- 人間、必死になれば覚えられますよ。
三遍稽古つけてもらった後にはもう、
クククククーッって聞いたものをですね、
こぼさないように。
- 伊藤
- もう「聞き漏らさじ」状態ですね。
- 一之輔
- ほんっっとに、
インプットしたものを
ひとつも漏らさないように必死です。
「じゃ、今日はここまでね」と言われて、
「ありがとうございました!」つって、
すぐに帰ってメモしようとするでしょ。
すると師匠が「カレー食べてく?」って
言ってくるんです。
で、おかみさんが作ってくれたカレーを、
ギンギンの目しながら食べて。
- 伊藤
- カレーの味もわからない‥‥。
- 一之輔
- うまいけど、味はよくわかんなくなってる。
いただいた皿洗って、すぐにでも
ガラガラッと帰りたい。
だけど今度は「ケーキあるよ」なんて言われる。
勘弁してくださいよ。
- 伊藤
- (笑)ほんとですね。
- 一之輔
- 最後には「大リーグ中継、見てくか」とか言われて。
- 伊藤
- もうお願いだから早く帰して(笑)。
- 一之輔
- 「いや、帰ります」なんつって、
急いで井の頭線に乗って、
帰り道はずっと反芻するんです。
家に着いてやっとこさ、
自分の言葉でやってみると、
やっぱり違っちゃうんですよね。
「師匠はそうは言ってなかったな」
なんてことになります。
でも、そのわかんなくなっちゃったところを
自分の言葉で紡いでいってなんとかする。
ぜんぶひっくるめて「稽古」なんですよ。
テープを覚えたんじゃ、そうはならない。
わかんなくなってはじめて、
自分の言葉になるんです。
- 伊藤
- もしかしたら、
カレーも大リーグ中継も、
「もう早く帰してくれ」という気持ちも、
稽古のうちなんでしょうか。
- 一之輔
- そうでしょうね、
試練を与えられてるんです。
筋を覚えるだけなら、
だいたいいけるんです。
でも、勝負はそこからです。
自分で補って、お客さんの前でやってみて、
そこからです。
- 伊藤
- お客さんの前で、その了見を、
演じるんじゃなくて、話す。
「話す」というのは、
どんな感じでしょうか。
目の前の人に聞かせる感じ?
- 一之輔
- 「みんな聞いて聞いて、
こんなおもしろい話あるから聞いてよ」
って感じです。
落語家ってみんな、
そういう感覚なんじゃないでしょうか。
- 伊藤
- ああそうか、
だからちょっとだけ声の調子を変えたり
そこにある小道具だけで
やったりするんですね。
- 一之輔
- ほんとにそこにあるものだけでね。
「あのさ、この間おもしろいことあってさ、
泥棒が入っちゃってね、大変だったんだって。
じゃちょっとやってみるわ」
って、演じ分けしたりして
「こんなことなんですよ」でオチつける。
「おう、おもしろいね」と言ってもらえる。
落語は、お坊さんの法話が
もとになっているといわれたり、
大名に仕えていた御伽衆(おとぎしゅう)という
おしゃべり上手な人が
「こんなおもしろい話なんですよ、殿様」
「おもしれぇな、おめぇは」
と話していたことが落語になってった、という
節もあります。
いつの時代も、ただのおしゃべりな、
おじさん、おばさんがいたんですよ。
- 伊藤
- わかります。
そういう人、いますもんね。
- 一之輔
- まわりにもいるでしょう。
- 伊藤
- 一之輔さんは小さい頃から
そういう子だったんですか?
「もう、一之輔くん!!」みたいな。
- 一之輔
- 小学生の時分はね、
そんなことはなかったですよ。
ひょうきんものでもなくて、
どっちかというと人見知りでした。
でも、4年生のときに、
「1分間スピーチ」みたいなことを
言いだした先生がいて。
- 伊藤
- 4年生がスピーチするんですか。
1分ってちょっと長いですね。
- 一之輔
- 長いんですよ。
クラス全員で日替わりでしゃべってくんですが、
列の端っこから順番が、日に日にまわってくる。
すげえ嫌だなぁと思って。
ぼくの番が来て、てきとうに、
なんとかしゃべったんですよ。
そのとき、なんかちょっとウケたんだな。
- 伊藤
- その1分間スピーチ、
どんな話だったんでしょう?
- 一之輔
- いやぁ、何をしゃべったんでしょうね。
わからないんですけども、そこそこウケた。
で、なんだか自信が出たんですよ。
「しゃべるのってたのしいな」という感じ。
そこから中学まで、
生徒会長やら学級委員長やら、
やるようになりました。
私から私へ
10年くらい前から、
「毎年ひとつ、
何か新しいことに挑戦する」
と決めています。
5年前は、weeksdays。
ここから「新しいこと」は、
どんどん広がって、
いろんな経験ができました。
たくさんの方との出会いがありました。
仕事も、暮らしも。
今年も、いろんな新しいことが待っています。
うまくいっても、
もし失敗したとしても、
それはそれでいい。
何かを始めることが大切だと思っているんです。
今年最初のweeksdaysは、
himieのピアス。
私から私へ。
今年もどうぞよろしくね、
の気持ちを込めて。
コンテンツは、
3人の方に、「お買いもの」についての
エッセイを書いていただきました。
気になるあの人のお買いもの。
どうぞおたのしみに。
今年も、
weeksdaysをどうぞよろしくお願いいたします。
いろんな人のところへ行きなさい
- 伊藤
- 一之輔さんは、高座に上がるとき、
緊張はしないのでしょうか。
- 一之輔
- 緊張ね、
それなりにするんじゃないでしょうか。
でもまぁ、高座上がってお辞儀したら、
そんなにしないです。
でも楽屋に偉い人や怖い人がいたら
「ああ、聞かれたらやだな」と緊張します。
- 伊藤
- 一之輔さんは芸歴21年ですが、
最初はきっと、
緊張しないわけじゃなかったですよね。
「ここで自分が変わったな」とか、
そんな時期はありましたか?
- 一之輔
- 「あ、こういうふうにやっていいんだな」
とわかった瞬間、それはあります。
二ツ目になって3、4年のあたりかな、
入門して7、8年目くらいの頃です。
落語の登場人物が
勝手にしゃべるような感じがありました。
「こういうこと言ったら
おもしれぇんじゃないかな」
って、登場人物が、お客さんの前でね。
- 伊藤
- わたし、一之輔さんが
お弟子さんに稽古つけてる動画を
YouTubeで見たことがあるんです。
それがすごく怖くて。
- 一之輔
- ああ、ありましたね。
ごらんになったんですか。
怖いですか?
- 伊藤
- すごいんですよ、
お弟子さんの噺を聞いて、まず何も言わない。
怖いです。
- 一之輔
- 怖くないですよ。
- 伊藤
- そのあとに、
「だから、こうでこうで、ここは早い、
この登場人物は体をこう向ける」
と、アドバイスをどんどん出されてました。
落語って、いわば、
「ものすごいひとり芝居」ですよね。
- 一之輔
- そうですね、
単純にいえばひとり芝居です。
- 伊藤
- しかも座ったまま、
上半身しか自由にならずに、演じます。
舞台装置もなければ衣装もひとつだけ。
小道具は、羽織、扇子、手ぬぐい。
それでいて、威勢のいい若い衆から、
おかみさんから、泥棒から、ぜんぶやる。
泥棒だけじゃなく、
泥棒とその弟子やら、番頭さんや店の人たちやら、
とにかく無限に出てくる登場人物を
ひとりでどんどんやっていきます。
どういうことなんでしょう、あれは?
- 一之輔
- 落語って、
見かけはひとり芝居なんですけど、
要は、おしゃべりの延長なんです。
だから「芝居」じゃなく
「噺(はなし)」って言います。
その証拠に、ぼくらは芝居ほど
声色を変えたりしないんですよ。
おかみさんをやるときだって、
声はおじさんの、この声のままなんです。
- 伊藤
- あ、たしかに。
- 一之輔
- ひとり芝居の俳優さんであれば、
女の人はもっと声を高く、女らしくやるはずです。
ときどき役者さんで
落語をやる方もいらっしゃいますが、
そうなっちゃう方が多いです。
- 伊藤
- たしかに落語家さんは、
声色は変えないですね。
- 一之輔
- 語尾や、間、表情は変えます。
もっと言うと、目が変わります。
子どもをやるときは、
子どもの目になったりします。
- 伊藤
- そうそう、目です。
特に一之輔さん、
マスクして眼鏡かけてるのに、
目で全部わかります。
- 一之輔
- そのYouTubeの映像の目?
- 伊藤
- そうそう、目で伝わるようにと
お稽古をなさっていて、
わたしはその動画を見ながら
お弟子さんの気持ちになっちゃって、
汗をかきました。
- 一之輔
- ぼくらはいつも
たいてい一対一で稽古します。
最初にまず、師匠がひとつやってくれて、
弟子は正面で聞いて覚えます。
その次に、弟子が師匠の前でやる。
じつはこれ、いちばん嫌です。
客前でやるのはぜんぜん楽。
稽古をつけてもらった師匠の前で、
一対一でやるのは、もう、たいへんです。
ぼくもつけてもらうこと、
いまだにありますから。
- 伊藤
- そうなんですか。
- 一之輔
- 新ネタ覚えるときにやります。
ほんと、ドキドキしますよ。
- 伊藤
- やるほうもドキドキするけど、
お稽古つけて見るほうも、緊迫感ありますよね。
一之輔さん、そうとう本気でした。
- 一之輔
- 弟子に対する稽古では、
ぼくはけっこう細かく言うほうだと思います。
- 伊藤
- でも、あんなふうに一対一で
師匠に見てもらうなんて、
すごく嫌だけど、最高ですね。
それがないと、ってくらいにやりがいがありそう。
- 一之輔
- 教えてもらうのって、無償なんです。
つまり月謝がなくて、
なんなら前座のうちは、
飯食わせてもらって、お稽古つけてもらって、
交通費もらって帰ってくるんですから。
それも、自分の師匠だけじゃなく、
よその師匠もやってくれるんですよ。
ひとりだけに教わると、
その人のコピーになっちゃうっていうんで、
うちの師匠もいろんな人に
ぼくをまわしてくれました。
他の一門の師匠も、もちろん
無償で教えてくださいます。
ほんとにいろんな人に、ぼくは教わってきました。
- 伊藤
- 間口が広いというか‥‥、
技は「代々伝える」というようなものじゃ
ないんですね。
- 一之輔
- そうなんですよ。
「うちの芸はこれだから、
うちの一門しかやっちゃダメ」
なんていうのはありません。
- 伊藤
- 技の継承ということではない、と。
- 一之輔
- 落語に関してはね。
例えばです、師匠から
「おまえは人間がね、陰気だから、
なにかこう陽気な人、
にぎやかな明るい芸の人のところに行って、
身につけなさい」
と言われたり、逆に、
「端正な人のところへ行って、
きっちりした芸を身につけなさい」
と言われたり。
そんなふうにいろんな人の
いいところを取って教わったうえで、
自分なりのものを作りあげるというのが
いいんじゃないかな、と思います。
うちの師匠には10人の弟子がいますけど、
みんな、師匠には似ていません。
師匠は、それ、喜んでます。
放っておくと似るものなんですよ、
絶対にね。
だって、師匠が好きで、入ったんだから。
- 伊藤
- そうですよね、
憧れて入ってね。
- 一之輔
- それがいくらかキャリアを経て、
自分なりのものが芽生えていく。
この前も末廣亭で師匠と
「親子会」をやったんですけど、
「誰に教わったんだ、それ」って言われて、
「師匠ですよ」と返したら
「ぜんぜん違うね」
なぁんて言いながら、
うれしそうにしてました。
根多帳でわかる
- 一之輔
- 歌舞伎や能って、ちょっとハードルが高いでしょう。
でも落語って単純で、
日本語がわかればだいたい笑えます。
「この人好き」「この人苦手」って、
自分の好みもはっきりします。
いわば「推し」が見つけやすいから、
行く前はちょっと敷居が高いかもしれないけど、
一度行くとハマる人はハマります。
「この人がトリ取るんだったら行く」とか、
そうやって10日間、毎日来てくださる方もいます。
- 伊藤
- そういう意味でも、この末廣亭って
絶妙な場所にあると思うんです。
伊勢丹やいろんなお店で
キラキラしたものを売っていますけど、
そこから「何十歩」みたいな場所に、
この世界が待ってるなんて、
ほんとにびっくりですよ。
入口くぐったらすぐゲラゲラ笑ってる人がいて、
なんだか、どこでもドアみたいな感じ。
- 一之輔
- はい、はいはい(笑)。
- 伊藤
- 前のお店から出てきた
おなかいっぱいになってる人とか、
ふつうに買いものに来た
通りすがりの人たちがいる道なのに、
木戸銭払ったら1.5メートルぐらい先にもう、
笑ってる人の姿が見える。
「なに、ここ!」と思って。
- 一之輔
- 言われてみりゃそうっすね、
変な空間ですよ。
人が「笑ってる」って、おかしいっすね。
- 伊藤
- そうなの、笑ってるんです。
- 一之輔
- 爆笑してるって、みんながね。
- 伊藤
- ほんとうに。
だから、これを味わわない手は
ないなと思いました。もったいない。
- 一之輔
- 笑ったり、まぁ泣いたりね。
あと、寝てるっていう人もいます。
金払って寝てるんだ、これが(笑)。
ふつうはあり得ないでしょう、
サザンのライブで寝る人はいないけど、
‥‥いるんですよ、寄席って。
- 伊藤
- クラシックコンサートでも、
ちょっと眠気に誘われること、ありますよ。
- 一之輔
- ああ、ありますね、揺らいでいる感じ。
- 伊藤
- 寝られる噺家さんって、
心地いい声なのかも。
- 一之輔
- 上手い人は寝やすいとか、よく言います。
- 伊藤
- クラシックも上手い人をそう言うみたいですが、
落語でいう「上手い」ってなんでしょう?
- 一之輔
- 声のよさ、
あとは調子のよさ。
- 伊藤
- へぇえ。
- 一之輔
- それはまさに、歌と一緒だと思います。
- 伊藤
- そうかぁ、歌と同じ‥‥。
わたしも、声ってすごく重要だと思ってました。
- 一之輔
- 声は重要。
すごく重要です。
それはいい声とかきれいな声とかじゃなくて、
「聞きやすい声」ですね。
- 伊藤
- 入門するときに
「君は向いてないね」とか
言われることはないんですか?
- 一之輔
- 声で?
それはあんまりないかもなぁ。
- 伊藤
- 「どすっ」「うっ」
(鉛のボールをおなかに受けるような訓練)
「あっ、えっ、いっ、うっ」
- 一之輔
- それ、スパルタの発声練習?
ないない、ないです。
- 伊藤
- ないんですか。
- 一之輔
- 発声練習は一切ない。
ただし、まず、
「デカい声でしゃべれ」って言われます。
- 伊藤
- デカい声でしゃべれ。
- 一之輔
- とにかくデカく、です。
うまくたって、聞こえなきゃしょうがない。
だから寄席によっては、
前座にはマイクを
使わせてくれないところもあります。
- 伊藤
- 修行の一環で。
- 一之輔
- そうそう、もちろん。
- 伊藤
- 一之輔さんは、
「毎日が修行」とおっしゃいますけど。
- 一之輔
- そうですね、毎日が稽古です。
「本番、いつなのよ」っていうくらい、
落語はそういう芸能です。
- 伊藤
- それ、どういうことでしょうか。
- 一之輔
- ぼくらは毎日、
どこかでしゃべってます。
毎日が本番っちゃ本番なんです、じっさいは。
けれどもとくに寄席なんかは、
「このネタ、久しぶりに思い出して、
ちょっとやってみっかなぁ」
なんていって、
それをお客さん相手に稽古させてもらう、
そんなところでもあるわけです。
たとえ同じことを毎日やっても、
お客さんが違うと反応も違う。
そんな自分の噺を、
どんなお客さんがいらしても喜んでもらえるように、
すり合わせるように稽古していく。
寄席はそんな場所だと思っています。
- 伊藤
- そうかぁ。
袖の楽屋で、
「今日のお客さんはこんな感じだよ」
みたいなことを話したりしますか?
- 一之輔
- ありますね。
単純に、かわいらしい方が来てるとか。
- 伊藤
- 見てるんですか。
- 一之輔
- 見てますよ、すっごい見てます。
「最前列にいるぞ」とかね。
- 伊藤
- やっぱり、お客さんを前にすると、
張り合いが出ますもんね。
- 一之輔
- もちろんです。
なにより、よく笑うお客さんが
いてくださったら、
それは張り合いが出ます。
「子どもが来てるよ」と楽屋で言われたら、
「そうか、ちっちゃい子にもわかるやつ、
やってみるかな」
みたいに考えます。
- 伊藤
- その場でネタを変えたりするんですね。
- 一之輔
- みんな、ネタを決めるのは、
楽屋に来てからですよ。
- 伊藤
- えぇっ、そうなんですか。
- 一之輔
- 寄席は、です。
- 伊藤
- あ‥‥もしかして、
トリまでのリレーで、
前の人とネタがかぶったらやめよう、とか、
そういうことも?
- 一之輔
- そうです。
「あ、これできないな」なんていって調整します。
楽屋には根多帳があって、
前座さんが筆で「誰々が何やった」と
その日のネタを書いてってくれるんです。
ぼくらは楽屋で、それ見ながら
自分の噺を決めます。
たとえば泥棒の噺がすでに出ていたら、
泥棒の落語はもうできない。
親子の噺が出ていたら親子の噺はできない。
だから、トリというのは、それだけ
自分の持ちネタがないと、つとまらないんです。
- 伊藤
- そうか、そうか。
- 一之輔
- 根多帳を見てると、
お客さんの傾向がわかるんですよ。
わかりやすい噺が続いてる日には、
「あ、今日のお客さん、そういう感じなんだな」
「みんなけっこう苦労してんだな」とかね。
下ネタみたいなのが出てたら、
「お、今日はそういうお客さんなのか」なんてね。
渋いネタが続いてたら、
「こういうのが大丈夫なお客さんなんだな」と。
- 伊藤
- うわぁ‥‥なんだか、
寄席の楽屋、頭をフル回転させないと、
乗り切れそうにない。
- 一之輔
- いや、そんなに気合い入れて臨む感じじゃなくて、
寄席は基本的に、いつものぼくらの
生活の場のような場所なんです。
直前までふつうにお茶飲んで、
火鉢のところで無駄話しして、
自分の出囃子が鳴ったら、
「じゃ行ってきまーす」つって行って、
下りたら着替えてすぐ帰っちゃいます。
力いっぱいやらない
- 伊藤
- 一之輔さん、ネタづくりのために、
常にアンテナを張ってる感じですか。
- 一之輔
- いや、そんなことしてると
疲れちゃいますね。
ほんとにおもしろいことがあったときにだけ
覚えておく。
「これは『まくら』でしゃべれるな」とか、
「コラムいっこ書けるな」とか、
そういう感じです。
- 伊藤
- その‥‥先ほども出てきましたが、
「まくら」というのは
落語の「つかみ」?
なんて説明すればいいでしょう。
- 一之輔
- 落語の前のフリートークみたいなものですね。
お辞儀してからしゃべりはじめて、
本題に行くまでが「まくら」です。
- 伊藤
- そのときにお客さまの反応や、
自分の調子なんかも
見たりするのでしょうか。
- 一之輔
- 「まくら」の役割って、それはもう、
人それぞれなんです、ほんとに。
- 伊藤
- へえぇ。
- 一之輔
- 昔ながらの「まくら」の考え方だとね、
たとえば夫婦の噺をするなら
夫婦喧嘩の小咄を「まくら」で出す。
ありもの、出来あいの
「まくら」を振るというのが
ひとつのスタイルとしてありました。
それがおそらく(立川)談志師匠あたりから
時事ネタを振ったりするようになったんだと
いわれています。
ぼくらの世代では、なかにはオーソドックスな
小噺から行く人もいますけど、
「まくら」はもう、ごくふつうに
フリートーク的に振りはじめる人がほとんどです。
あの時間は、なんというんでしょう、
お客さんとの距離を詰める時間なんじゃないかな。
- 伊藤
- 以前、一之輔さんのエッセイを読んだとき、
時事ネタって、
ちょっと流行りが過ぎた頃にも
言ったりすると書いてありましたが‥‥。
- 一之輔
- そうそう、寄席の場合は、
「今日あったこと」をその日の昼に言っても
お客さんは笑わないんですよ。
ちょっと難しいんです。
- 伊藤
- 新鮮すぎてもだめなんですね。
- 一之輔
- 全員が新聞読んで来てないですし、
全員がネットニュースを
見ているわけじゃない。
- 伊藤
- なるほど。
- 一之輔
- だから流行り言葉も、
あんがい「賞味期限が切れたかな」という頃に
通じる場合があります。
- 伊藤
- 高齢のお客さまが多かったりすると、
また話題が変わってくるでしょうし。
- 一之輔
- そうですね、お客さまの年代は、
演者によっても変わります。
若くてイキのいい人が出ると
若い人が客席に来てくださいます。
- 伊藤
- わたしがたまたまこの前、
末廣亭に落語を聞きにきたときは、
おじいちゃんおばあちゃん‥‥。
- 一之輔
- ばっかり、ってときもあります。
- 伊藤
- でも、高齢の方ばかりでも
ドッと盛りあがる、
グルーヴのようなものが生まれます。
会場の盛りあがりって、
不思議なところで出るものなんですね。
何回も通わないと、
この場所はつかめないのかな、なんて思いました。
- 一之輔
- 寄席って、徐々に盛りあがって行くんですよ。
いきなりドッカーンとは、
絶対に、ならないんです。
- 伊藤
- 一気に大きな笑いにならないんですか?
- 一之輔
- そうなんです。
寄席にはいっぱい人が出るでしょう、
昼だけで20組ぐらい出ます。
しかも、落語だけではなく、
漫談、手品、紙切り、
みんなそれぞれの役割があります。
トップバッターは修行中の前座さん。
それは「料金の外」だっていうんでね、
プログラムに名前が書いてないんですよ。
前座はそういう扱いなんです。
だからプログラムの最初は、
二ツ目さんという、
前座のひとつ上の身分の人。
そうやってだんだんだんだん、
キャリアのある人が出てきます。
まずはそういう組み方になってるんですよ。
- 伊藤
- 寄席の盛りあがりは、
プログラムの順番を組む人の、
采配にもよるんですね。
- 一之輔
- そうそう、
イキのいい大爆笑派の人のあとは
落ち着いた芸の人、とかね。
そんなふうにお客さまを飽きさせない
プログラムにしていきます。
だから、さっき申し上げたように、
最初から爆笑で行くってことはまずありません。
前座さんはもちろん拙いですから、
ウケ過ぎると、
「そんなにウケさすな」と言う人もいるほどです。
- 伊藤
- それは、先輩方が?
- 一之輔
- そうそう、仲間内でね。
無理にギャグを入れたりして笑わせるより、
前座さんはお客さまを「ちょっと前のめり」に
させるぐらいでちょうどいいよ、なんて。
- 伊藤
- それ、頃合いが難しそうですね。
- 一之輔
- まぁ、教わったとおりに、
大きな声で一所懸命やればいいんです。
そのあとに若い二ツ目さん、
漫才などの色ものさんが続いていって、
トリを目がけて
お客さんのテンションを上げてくんです。
- 伊藤
- じゃあ、ひとりひとりが
力いっぱい、なんてことは‥‥。
- 一之輔
- ああ、やんない、やんない。
とんでもない。
- 伊藤
- 寄席って、個人芸じゃなくて、
一体感あふれるものなんですね。
- 一之輔
- そう。
個人営業なんだけど、団体競技。
- 伊藤
- リレーみたいなことなんでしょうか。
- 一之輔
- そうそう、リレー、まさにリレー。
野球の打順にも似ています。
1番は塁に出てつなぐ。
ひとりひとりはもちろん
一所懸命やるんですけど。
- 伊藤
- 「自分はこのぐらいのとこで出るから」
と踏まえてやるんですね。
- 一之輔
- 「この出番順だったらこのネタだな」とかね。
- 伊藤
- こう聞く前と聞いた後では、
寄席の見方が変わりますね。
- 一之輔
- 変わると思います。
でもまぁ、そんなのぜんぜん知らないで、
単純にたのしんでもらえばそれでいいです。
でも、寄席に通い慣れてくると、
どうしてもプロデューサー目線が出てきて。
- 伊藤
- 「あ、今日はこの人を入れたんだ」
みたいな(笑)。
- 一之輔
- 「あいつが今日休みでこの人が来たけど、
もうちょっといなかったのかよ」
とか、そういうことを(笑)。
あと、若手がやった噺を
「このネタは誰から教わったんだろう?」
とかね。
「あいつと同じ型だから、
きっとこの師匠から習ったんだろうな」
なんて。
- 伊藤
- そんなことまで?
- 一之輔
- そういうことを、
ひと月で言えるような、
そういう芸能です、落語って。
- 伊藤
- そんな。言えないと思います。
- 一之輔
- いや、マジでマジで。
週1通えば、すぐにそんな感じになれます。
そういう人、寄席の客席にいっぱいいるから。
生活臭がない落語家になりたかった
- 伊藤
- 楽屋も、なんだか部屋みたいですね。
火鉢のようなものがありますけれども。
- 一之輔
- あれで餅を焼くことはないと思うけど(笑)、
ぼくらはみんなここで着替えて、
しゃべって、お茶飲んで、出てく。
- 伊藤
- 上の階はどうなってるんですか?
- 一之輔
- 2階は落語以外の、
漫才や曲芸の「色ものさん」の楽屋です。
そうやって楽屋が分かれているのも、
しきたりっちゃしきたりです。
あと、座る場所も決まってて、
いちばん偉い人はここに座ります。
その次はここ、次にあそこというふうに、
順番が決まってるんです。
- 伊藤
- 入口のほうなのに、偉い人はここなんですね。
- 一之輔
- 柱を背にしてもたれられるから、ここが一番。
それに、ここにいると楽屋も高座も
ぜんぶが目に入るからでしょうね。
この空間でいちばん偉い人は、とにかくここ。
序列は決まってて、それはつまり、
「入った順」で偉い。
- 伊藤
- 偉い人が下っ端の席に座ると、
それはそれで不都合なんでしょうか。
- 一之輔
- 面倒くさいです。
「なんでそこ、座んないんだろう‥‥」
- 伊藤
- (笑)
- 一之輔
- でも、考えたらここに座る人、
いまはほとんどいないなぁ。
- 伊藤
- 一之輔さんは、そもそもこの末廣亭で
「出待ち」して、
落語家の弟子入りを希望したんですよね。
- 一之輔
- ええ、ウラに楽屋口があって、
おめあての師匠を待ちました。
自分のいまの師匠(春風亭一朝師匠)をね。
- 伊藤
- 一之輔さんでも、
1日目には声を掛けられず、って聞きました。
- 一之輔
- そうです、声掛けるまで
7日ぐらいかかりました。
いや、そんなもんですよ、
なかなかね。
- 伊藤
- いまもここで、
そういった場面が
くり広げられているのでしょうか。
- 一之輔
- ええ、ありますよ、
コロナで減りましたけどね。
不安定な仕事なので、なかなか人が
入ってこなくなったと思います。
コロナでいろんな仕事が中止になりましたし、
こういった時期に、
あんまり利口な人は来ないですよ。
- 伊藤
- 一之輔さんは、
なぜ落語家になろうと思ったんですか?
- 一之輔
- 消極的な理由です。
大学に全部落っこちたんで、
落語家になろうと思いました。
- 伊藤
- えっ。
でも、大学には行かれましたよね。
- 一之輔
- ええ、結局は浪人して大学に行きました。
そんとき親が止めてくれたんです、
よかったですよ。
- 伊藤
- 「よかった」って、どういうことでしょうか。
- 一之輔
- あのとき落語家になっていたら、
おそらくこんなに続いてない、ということです。
すごく気軽に、
「大学落ちたし、
落語家にでもなっちゃおうっかなぁ~」
みたいな感じでしたからね。
安直な考えです。
でも大学に行くのも、まぁ、
安易に流れただけなんですけどね。
- 伊藤
- 一之輔さん、たしか息子さんがいま
17歳くらいでしたよね。
- 一之輔
- 堅実です、うちの長男は。
ちゃんとしてます。
昔のぼくのほうがはるかにちゃらんぽらんです。
- 伊藤
- わかります。
それ、時代でしょうか。
- 一之輔
- どうでしょうね。
去年の4月、
ぼくの『いちのすけのまくら』という本の
文庫が出まして、
息子にあとがきを書かせたんですよ。
- 伊藤
- なぜ息子さんに?
- 一之輔
- あとがきって、お願いするときには、
有名な人とか、自分の憧れてる人とか、
いろんな名前が挙がります。
でも、そういう人に断られたら悲しいでしょ。
- 伊藤
- ああ、悲しいですね。
- 一之輔
- こっちは憧れているというのに、
切なくなるじゃないですか。
そりゃあスケジュールとか、
理由はいろいろつけるでしょうけどもね、
要は断られるってことですから。
- 伊藤
- なるほど。
- 一之輔
- だから編集の人に
「自分の子ども、どうですかね?」
って言ってみました。長男ね。
最初は家族全員に書かせようと思ったんですけど、
原稿料はひとりにしか払えないと言われて、
長男にしました。
そしたら、けっこうちゃんとした
ぼくの分析を書きました。
- 伊藤
- ええ、ちゃんと解説として書いておられました。
あれ、原稿料は出たんでしょうか。
- 一之輔
- 2万5000円ぐらいもらったと思います。
それで友だちと、京都に行ってました。
- 伊藤
- 息子さんは、
一之輔さんが高座にあがってるお姿は、
ごらんになったことがあるんですね。
家族は舞台を見ていいのでしょうか。
- 一之輔
- 家族はいいと思います。
でもその前に、息子がちっちゃい頃、
幼稚園で落語やってくれと
言われたことがあったり。
- 伊藤
- えっ、そんなことが。いいなぁ。
- 一之輔
- おじいちゃんやおばあちゃんと
おやつ食べる会みたいなのが幼稚園であって、
「お父さん、落語やってください」と
先生に言われました。
そのとき、息子はぼくの落語を
はじめて見たんじゃないかな。
そのあと小学校でもやりました。
家族はふだん、客席で見ることは
ほとんどありません。
でもYouTubeで生配信したときは、
10日間、全員で見てたそうです。
- 伊藤
- へぇえ!
自分の仕事を家族に見られるって、
どんなお気持ちでしょうか。
- 一之輔
- でもね、あんがい、おおむね好評です。
テレビやYouTube見て
「おもしろかった」とか言いますもん。
そういうときは、うれしいですよね。
- 伊藤
- やっぱりうれしいですよね。
うちの娘なんかだと、
わたしの仕事にはまったく興味がありません。
- 一之輔
- 自分からすすんで見るってことは、
娘さんはしないですか。
- 伊藤
- なんか、ぜったい‥‥いやむしろ、
見ないようにしてるぐらい、興味がない。
落語を家族に見られるときって、
恥ずかしかったりします?
- 一之輔
- もう恥ずかしくないです。
子どものことネタにしたり、
家庭内であったことを
「まくら」でしゃべったりしてるくらいですから。
最初はね、ほんとうに、そういうことしない、
生活臭のしない、粋な芸人に‥‥。
- 伊藤
- なりたかったのに(笑)。
- 一之輔
- なりたかったんですけど、
日常でいろんなことが起こるから、
これをしゃべらない手はないって思う。
だからもう、しゃべっちゃうことにしています。
客席から見てはいけない
- 伊藤
- weeksdaysの2023年新春対談です。
今年は落語家の
春風亭一之輔さんにご登場いただきます。
一之輔さん、今日はありがとうございます。
- 一之輔
- いやぁ、ありがとうございます。
- 伊藤
- いま、新宿三丁目にある寄席、
新宿末廣亭におじゃましています。
- 一之輔
- 新春対談、なぜぼくなんでしょうか。
- 伊藤
- えっ。
- 一之輔
- いったいいままでどんな方が?
- 一之輔
- おうつくしい、すばらしい方ばかりで。
- 伊藤
- その次の年が樋口可南子さん。
- 一之輔
- ‥‥いやぁ、すごいですね。
- 伊藤
- そして昨年はプロダクトデザイナーの
深澤直人さんでした。
毎年、weeksdaysの新春対談は特別なんです。
- 一之輔
- そんなおしゃれな人たちが勢揃いで、
で、なぜ、ぼくですか。
- 伊藤
- 少し前に、あるお仕事でご一緒しましたよね。
- 一之輔
- 「サザエさん」をテーマにした『週刊朝日』の
臨時増刊号。
伊藤さんが担当されたグラビアページに
出させていただきました。
- 伊藤
- 「サザエさん」って、お話のなかで
寄席に行ったりもしてたでしょう。
「一之輔さんがサザエさんといっしょに落語を見る」
というグラビアがおもしろいんじゃないかと
担当者と相談し、お声がけしました。
それは一之輔さんの写真とサザエさんの絵を
あとで組み合わせて合成するという
企画だったんですけど、
そのときにね、わたしはもう、感動しました。
- 一之輔
- 何をですか。
- 伊藤
- 「客席に座っていただいて、
サザエさんと一緒に
落語を見てる感じにしてください!」
というざっくりした指示に対し、
「ハッハァ」とか言いながら、
もう0.05秒ぐらいで、
みごとにやってくださいました。
- 一之輔
- それは、やりますよ、そりゃ。
- 伊藤
- プロってほんとに
すごいんだなって思いました。
そのあと、
「ちょっと高座にあがって、話してるふうで!」
ということになって、また写真を撮りました。
それがもうね、
「そんなことある?」というぐらい、
完璧な写真だったんです。
だからあのとき、全体で
20分ぐらいで撮影が終わりましたよね。
- 一之輔
- そうそう、あっという間でしたね。
- 伊藤
- 「すごいなぁ」と思いつつも、
すぐに撮影が終わってしまったので、
足りなかった。
- 一之輔
- お会いできた時間が、足りなかった。
- 伊藤
- ぜんぜんお話し足りなくて、
こうしてお迎えすることになりました。
新年ですし、一之輔さんのような
晴れがましい方に
出ていただきたいという思いもあり。
- 一之輔
- 普通ですよ、ぼく。
- 伊藤
- いやいやいや。
- 一之輔
- 山もないし、
波風も立たないような人生です。
- 伊藤
- そのあたりのこと、
新春対談ですし、たっぷりうかがいます。
よろしくお願いします。
- 一之輔
- よろしくお願いいたします。
- 伊藤
- ここ新宿末廣亭で、
一之輔さんはもちろん落語家として
高座にのぼられることはありますが、
ふだん客席でこんなふうに
舞台をごらんになること、ありますか?
お弟子さんの落語を見たりとか‥‥?
- 一之輔
- ぼくら、同業者の仕事を
客席から見てはいけないんです。
- 伊藤
- えっ、そうなんですか。
- 一之輔
- だから誰かの噺を
チケットを買って聞きにいく、
ってこともないです。
- 伊藤
- チケット買ったとしてもダメなんですか。
- 一之輔
- 基本、ダメです。
- 伊藤
- それは「しきたり」なのでしょうか。
- 一之輔
- ええ、袖からならいいんです、
先輩に「楽屋から勉強させてください」ってね、
なにか手土産持って、そう言うならいいんです。
でも、チケット買って先輩の落語会を
見にいったりは、ないです。
しちゃいかんことで、失礼にあたります。
これはなんでしょうかね、演劇のみなさんとか、
そんなこと普通じゃないですか。
- 伊藤
- ぜんぜん、みなさん行ってますよ。
そうかぁ‥‥そんな落語の世界ならではの
「しきたり」のようなもの、
ほかにもあったりするのでしょうか。
- 一之輔
- そんなことばっかりですよ。
どっから言っていいか、よくわかんないくらい。
- 伊藤
- きっとみなさんには、
ふつうになっちゃってることでしょうけど。
- 一之輔
- たとえばこの高座って、
「家の中」という設定なんですよ。
だからほら、正面に額があるでしょう、
そして奥は幕じゃなくて襖、袖は障子。
もう片側にあるのは床の間なんです。
- 伊藤
- ‥‥ほんとだ。
- 一之輔
- 高座は室内、
家のお座敷という設定なんですよ。
ですから噺家はもちろん、
漫才や手品の人もここに出ますけど、
みんな靴を履いてないです。
足袋や靴下で上がります。
- 伊藤
- そうなんですよね、
前から違和感がありました。
「あ、靴を履いてないんだ」と
気づいてはいたものの、
そうなんですね、お座敷だから‥‥。
- 一之輔
- 落語や曲芸などは
もともと座敷でやる芸だったからでしょうかねぇ、
寄席の中の拵えも、そうなってます。
もともとは、客席全部が
椅子席じゃなくて桟敷だったんですよ。
ただそこに噺家の座布団が
一枚敷いてある、そういう場所で。
- 伊藤
- 客席と高座がもっと近い感じだったのでしょうか。
- 一之輔
- ええ、近かったですね、すごく。
いまもたまに、ぼくは
料亭などのお座敷の仕事をいただくことがあります。
「落語聞きながら飲みたい」って、
5、6人の集まりなどに
呼んでくださる方があるんです。
そういうところでは台がなくて
フラットな場所で噺をします。
- 伊藤
- わわわ、そんなこともできるんですね。
- 一之輔
- そんな方が昔は
たくさんいらっしゃいました。
吉田茂さんとか、志ん生師匠を
贔屓にしてたとかね。
- 伊藤
- おお‥‥。
- 一之輔
- 「じゃ、落語家呼ぶか」みたいな感じで、
呼んでくださっていた。
それがまず、ぼくらの
基本にあると思います。
意外なあのひと
- 伊藤
- ふう、長い時間、おしゃべりしましたね。
みんな、言いわすれたことはない?
あの人に会えてよかった、とか。
- 篠田
- 私はもう断然、TKこと高阪剛さんです。
- 伊藤
- そうでした! 格闘家の高阪剛さんに、
きれいな背中のためのエクササイズを
教えていただいたコンテンツですね!
- 山川
- これ、おもしろかったです。
- 篠田
- まさに自分が、
背中ってどうしたらきれいにできるのかなっていうことを
考えたり悩んだりしていた時期だったんです。
その方法論に興味があって。
この時、cohanのオールインワンで、
ちょっと背中が見えるデザインのものを出す
タイミングだったので、
身体づくりのプロである
TKさん(高阪剛さんのニックネーム)に
お聞きしよう、って。
そうしたら、お話もすごくわかりやすくて、
「あ、そんなシンプルなことなんだ」と思って。
- 伊藤
- そうなんですよ。
ジムで器具を使って、みたいなことではなく、
普段できることを教えてくださった。
- 坂口
- 動画も付いてます。
これが「weeksdays」のコンテンツって、
すごく不思議だけれど、すごくいいですよね。
- 伊藤
- 「着てもらいました」は親切でいいコンテンツだし、
もちろんこれからも続けていきたいけれど、
TKさんに出ていただくようなことができるのが
「weeksdays」のよさだなって思います。
とくにTKさんは「ほぼ日」とお付き合いがあるからこそ
お目にかかれたし。
こういう、ちょっと読者のみなさんを
驚かせてしまうようなこと、
ずっとしたいって思ってます。
- 山川
- 「weeksdays」に幅と奥行きが出ましたね(笑)。
- 南
- お洋服だけじゃなくて、
TKさんのようなコンテンツもあれば、
ウー・ウェンさんのように
自分自身のあり方は、みたいなコンテンツがあるのが、
「weeksdays」のすごいところですよね。
読んでいると、自分の価値観とか、
暮らしについての考え方が
すごくアップデートされるというか‥‥。
- 一同
- (拍手)
- 山川
- 「アップデートされる」!
- 伊藤
- 若い人にそう思ってもらえるって、
とっても嬉しいな。
- 南
- 勉強させてもらってるっていう言い方はあれですけど、
「こんなふうになっていけるようにがんばろう」って
いつも勇気をもらってます。
- 山川
- デザインしながら、
そんなふうに思ってたんだ‥‥。
- 伊藤
- ミチコは?
- 山川
- 私は、ぼる塾の田辺さんが深く印象に残りました。
とってもすてきな方でした。
- 伊藤
- そう! そうなの、そうなんですよ!
- 南
- 私もです。お笑いが好きなので、
お目にかかれてうれしかったです(笑)。
まさかweeksdaysのコンテンツに、
こういう勢いのある芸人さんがいらっしゃるって、
あんまりイメージしてなかったので。
- 伊藤
- そっか。
- 山川
- けっこう初期に、
大久保佳代子さんが出てくださったときも、
「ありなんだ!」って思いましたけれど、
お会いして、良かったですよね。
- 岡本
- 前(青山)のオフィスですね。
- 山川
- ちゃんとweeksdaysっぽいんですよね。写真が。
- 岡本
- お二人の服、色を合せているんですね。
- 伊藤
- いや、あれ、偶然なの。
- 岡本
- えっ、偶然なんですか?!
- 伊藤
- そうなんです。
これ、読み返すと面白いのでぜひ。
- 山川
- いろんな番組で大久保さんを見るたびに、
とっても親しみを感じます。
- 伊藤
- 大久保さんにしても、田辺さんにしても、
お笑いの人ってほんとに頭の回転が速くて。
田辺さんなんて、テレビではのんびり見えているのに、
その場を察知する力とか、すごくある。
いやはや、いろんな方に会えて、
いろんな商品をつくって、
忙しかったけれど楽しい一年でしたね。
また来年もよろしくおねがいします。
新春対談は、ほら、意外なあのかたが登場!
まだ内緒ですけれど。
- 坂口
- 予想がつかないと思います。
私たちも意外でしたから。
- 伊藤
- みなさん、たのしみになさっていてくださいね。
さて‥‥このあたりで締めていいのかな。
思うのは、「weeksdays」も、
もうけっこうみんながうまく回すことが
できるようになったから、
違うシステムにしてもいいのかなって思うの。
- 山川
- システム?
- 伊藤
- みんなにスタイリングを任せるとか。
- 一同
- ええー!(ざわざわ)
- 山川
- それはダメです。それはダメです、
ダ・メ・でーっす!
- 伊藤
- 3回言った。
- 坂口
- 重ねます。ダメです(笑)。
- 伊藤
- そうかなぁ。
- 山川
- 伊藤さんのスタイリングが見られるのが、
「weeksdays」のいいところなんです。
- 岡本
- ほんと、そうですよ?
- 伊藤
- いやいや、ありがたいです。がんばります!
じゃ、いつもは司会をする
「weeksdays」チームで唯一の男子の
さんがきょうはいないから、
最後になにか書いてもらって、
おしまいにしましょうか。
一年、おつかれさまでした!
- 一同
- ありがとうございました!
(編集のより)
いやはや、ノンストップ座談会、
おつかれさまでした。
みなさんよく喋りますね。
文字起こしにして何文字分の
おしゃべりだったというと、
63,888文字ですよ!
作文の400字詰め原稿用紙にしたら159枚ですよ。
しかしそれだけ喋ることがあったというのは、
ひとえに「毎週新作を出し、毎日更新してきたから」に
ほかなりません。すごいことです。
あいかわらずのコロナ禍ではあるものの、
この1年は、だんだんと、
出かけての取材や対談が多くなりました。
もちろんリモートもありつつ、ですが、
そうやって出かけると、
目が開くというか、耳が澄むというか、
ボディに響くというか、
リモートだけじゃ入ってこなかった情報が
からだにすっと入ってくるのがわかります。
伊藤さんも、まだここでは発表できない
「おもしろいこと」をいくつか(いくつも)
仕掛けているようですし、
ますますこれからの「weeksdays」がたのしみです。
自分の思い出深いアイテムはやっぱり
「日めくりカレンダー」です。
あったらいいね、という言い出しっぺはぼくでしたが、
じっさいに制作を担当した「weeksdays」チーム、
限られた時間のなかで、すさまじい頑張りを見せました。
そうしてできあがった2つの「日めくりカレンダー」、
どちらもいい出来です。
ぜひみなさん使ってみてください。
来年は‥‥、
いまの「weeksdays」には男子が買えるものが
あんまり多くはないので、
ユニセックスなアイテムも増えるといいなあと、
ちょっと思ってます。
それではすぐに「新春対談」でお会いしましょう、
どんなかたが登場するか、おたのしみに!
これからもどうぞ「weeksdays」を
よろしくお願いいたします。
あれも好きこれも好き
- 坂口
- 続いては、MOJITOのAL′S COATです。
- 太田
- 大っ好きです。
- 伊藤
- 「すごく、いいですね」って、
着ていると言われるアイテムですよね。
- 山川
- 「ほぼ日」でもいろんな人が着ているんですよ。
さんとか、けっこう男性も着てて。
それも、ブルーを!
似合ってました。
- 伊藤
- わたしも今、黒を着てる。
- 山川
- やっぱ素材がすごくいいから。
- 伊藤
- そうなの。
- 山川
- いろんな人にちゃんと似合う。
- 南
- すごく小っちゃくなるんですよね。
- 太田
- 内側のファスナーつきポケットに
くしゃくしゃって収納できるので、
持ち歩きもしやすいんです。
もちろんシワシワになりますが、
そうなっていてもかっこいいんです。
シワがサマになるコートってなかなかないと思います。
- 伊藤
- 「シワがすてき」って、信じられないですよね。
でもほんとうにそうなんです。
あと、軽く撥水もするし。
これはね、ほんと、一着持っていると
いいアイテムだよなと思ってます。
- 南
- 「ほぼ日」の同僚といっしょに、
日光へ行ったんですよ。
東京を出発するときはあったかかったのに、
着いたら、寒くて。
そしたら、同僚がなにか取り出して‥‥。
- 伊藤
- おもむろに。
- 南
- パラパラって、広げて、着たのが、
このAL’S COAT。
あんなに小っちゃくまとまってたと思えないくらい
カッコよくて!
そのくしゃくしゃ、さっきおっしゃってたシワとかって、
あんまりカッコよくなかったりするはずなのに、
全然、そんなことなくて。
- 伊藤
- そうなんだよね~。
「間に合わせ感」が、全然、ないの。
- 山川
- 長い季節着れますよね。すごい。春も秋も。
- 太田
- 活躍するシーズン、長いですよ。
素材が風を通さないおかげで
薄くて軽くてあったかいから、
端境期だけじゃなくて、真冬以外だったら、
私、いつでも着ちゃいます。
暑くなったら袖をまくって着てもサマになるところも
すごくいいなと思います。
- 伊藤
- そうそう。
真冬と真夏以外は着れます。
これはほんとに、いいもの。
- 山川
- 神戸のギャラリーオーナーの方が
着てくださった写真がすっごいきれいでした。
- 伊藤
- ねー。森脇ひろみさん。
- 坂口
- カッコいい!
岡本さんの推薦する服は、DRESS HERSELFですよね。
- 岡本
- はい。形がきれいなシンプルなニットが
一番使いやすいっていうことを、
最近、あらためて思っているんです。
それで、DRESS HERSELFのシルクコットンのセーター、
ネイビーとホワイトを持っているんですけど、
10月の頭くらいから使いはじめ、
重ね着とかしたら、真冬もいけるなと思ってます。
- 伊藤
- たしかに! 使いやすいですよね。
- 岡本
- ほんとに。
たとえば下にちょっとボリュームのある
スカートを合せてもきれいだし、
普通にジーンズを合せても、
セーター自体の形がきれいなので、
野暮ったい感じにならない。
- 伊藤
- 首回りのデザインとか、
ほどよいゆとりとかが、いいですよね。
- 岡本
- あと、やっぱり背中のVがきれいで。
女性らしくなりますよね。
あと厚さもすごくちょうどいいから。
内側に着てもいいし、
パンツとかにインするのにも、
ゴワッとならない厚さなんです。
ほんとに着回しがきいて、すごく重宝する。
- 山川
- 2色買いしちゃったんだ。
- 岡本
- しちゃった。
- 伊藤
- 最初に1枚買って、次、もう1枚って感じだったの?
それとも、もうこれだと思って?
- 岡本
- 2枚、一気に。
肌触りがめちゃくちゃいいですよね。
- 山川
- ドレスハーセルフの製品、すごいですよね。
- 伊藤
- うん。着てる自分を一番楽しくっていうか、
快適にさせてくれるブランドだと思う。
- 岡本
- ほんとに。これが1枚あると、
ちょっとうれしくなる感じがします。
すごく好きです。
- 山川
- 「weeksdays」では
すごくいっぱいラインナップがあるんです、
ドレスハーセルフ。
- 伊藤
- ほら、上に羽織るタイプ、
ロングカーディガンシルクコットン。
これがあったら、これからの季節にいいと思う。
わたしは姉にプレゼントしたんです。
入院してる時があって。
- 山川
- たしかに、重宝しそう。そういう時に。
こういう形なのに、ポケットがあるって、
ポイント高いですね。
入院時には、ポッケが大事ですから。
- 岡本
- あ、そうなんだ。
- 伊藤
- うん。すっごい喜ばれました。
- 坂口
- そして、なっちゃんからは‥‥。
- 中山
- 私からは、KARMAN LINEのコットンタイツです。
4色持ってるんですけど。
- 山川
- すごい(笑)。
- 伊藤
- 4色? すごーい。
- 中山
- どれもかわいくて、選べなくて。
どの色も使い勝手があるからいいなと思って買いました。
買って、よかったです!
- 伊藤
- 気持ちいいよね。
- 中山
- タイツって、けっこう、化学繊維のものが
多いんですけど、これはコットンで、
着てて快適だということと、
1~2年使って、へたらないし、やぶれない。
丈夫なインナーだと思います。
- 伊藤
- うんうん。
ちょっと足元に色があると、いいんですよね。
- 中山
- そうです。ワンピースの時に
ちょっと見えるのが気に入って。
「ほぼ日」でも穿いている人、多いんですよ。
- 伊藤
- うれしい。
- 山川
- weeksdaysの撮影小物としても
常備していますよね。
いろんな撮影で役に立ってます。
- 中山
- あと、おまけでついている
オリジナルの巾着袋がかわいいので、
贈り物にもぜひって思います。
- 伊藤
- わたし、うちの娘の友達がパリに住んでいる時、
お土産にしました。
- 坂口
- 私はレッドとマスタードを持ってて、
履き心地もすごく良くて好きなんですけど、
色が、絶妙だなと思っていて。
派手すぎないというか、
落ち着いた色合いなので、
大人が履いても恥ずかしくないというか、
けっこうどんな服でも合わせやすいんです。
冬はアウターとか、色が黒くなりやすい時に、
このカラータイツが嬉しい。
気に入って履いてます。
- 伊藤
- わたしも、黒い服の時に、
ネイビーのタイツとかを合せると、
ちょっとだけ雰囲気が変わるのがいいなって。
- 中山
- そういう時は、伊藤さん、靴は黒なんですか?
- 伊藤
- うん、靴も黒。
でもちょっと真っ黒になりすぎるなと思って、
ネイビーにしたの。
- 中山
- 勉強になります!
それから、「あったかいもの」も
「weeksdays」は豊富ですよね。
去年の座談会でも言いましたが、
ROROS TWEEDのハーフブランケット、
アップルレッドがお求めいただけます。
- 山川
- きゅうに営業口調に(笑)。
- 伊藤
- かわいいよね。
- 中山
- はい。家の中でもいいし、
車の中もいいですよね。
- 山川
- これだけシンプルなものって、探してもなかなかない。
- 中山
- あたためるものといえば
ROROS TWEEDの湯たんぽも在庫がありますよ。
- 坂口
- かわいい~。
- 山川
- もうほんと、
イラストを現実にしたみたいなシンプルさ。
- 中山
- ステッチがしてあって。
- 伊藤
- わたし、冬気分を盛り上げるために、
デイベッドに、ブランケットを置いてるの。
いつもは、かごに入れてるんだけど、
今は、ブランケットをあえて出しておく。
- 岡本
- いいですね!
- 南
- ダウンのキルトスカーフもいいですよ。
これ、私が買ったんじゃなくて、
私の母が、手に入れて。
寒くなる前に買ったので、
本格始動はしてないんですけど、
母、最近、キャンプにハマりだしたらしく。
- 伊藤
- へぇ!
- 南
- 山に行くと気温が下がって寒くなるから、
これはすっきりしてて、持ち運びしやすそうだなって。
- 伊藤
- 小っちゃくなるんですよ。
- 南
- それでコンテンツを読んだら、
めちゃめちゃ本格的なものだと知ってびっくりして。
- 伊藤
- そう! そうなんです。
- 坂口
- (キャプションを読んで)
「PHDは、Peter Hutchinson Designs
(ピーター・ハッチンソン・デザインズ)の略。
英国アウトドア業界の草分けである
「MOUNTAIN EQUIPMENT」の創業者のひとりで、
“ダウンマイスター”(ダウンの巨匠)とも言われる
ピーター・ハッチンソン氏が
1998年に立ち上げたブランドです。
現在もマンチェスター近郊の工場で、
熟練の職人さん15人で製品をつくっています」
ですって!
- 伊藤
- そう、本気のダウンなんですよ。
- 南
- すごいんですよ、これ。
母、これから巻き方を研究したいって言ってます。
伊藤さんの置きコーディネートが
すごーく参考になるみたいです。
- 伊藤
- けっこうなんでも合うのよ。
巻きスカートにもなるし、
ひざかけにもなるしね。
- 南
- 新幹線の窓際とか飛行機に乗る時にもよさそうです。
母、ダウンジャケットは持ってなくて、
このスカーフから入りました。
- 伊藤
- ダウンジャケットって、着ると、
ちょっとカジュアルになりすぎるけど、
ダウンのあたたかさってすごくいいから、
そういう方にいいですよ!
- 南
- 母の好きなキャンプも、
本気の登山キャンプではなく、
ハイキングみたいな感じなので、
ちょうどよさそうですよね。
ちょっと町歩きにも使えますし。
- 伊藤
- お母様にお礼をお伝えください。
- 南
- わかりました!
- 一同
- (笑)
うつわがいいと料理が映える
- 坂口
- 高山さんは、東屋の磁器のお皿と、
島るりこさんのお湯のみも
お気に入りなんですよね。
- 高山
- はい!
- 伊藤
- 東屋の磁器のお皿、
わたしも毎日使ってます。
高山さんはどうしてこれが
いいと思ったの?
- 高山
- 暮らしの中で
シンプルだけどいつでも使いたくなる
お皿がほしいなと思っていたんです。
磁気のお皿は盛るものを選びませんし、
すっきりとしていて気持ちいいなと感じて。
それで「weeksdays」に
東屋さんのこれがあることに気づいて。
- 伊藤
- 高山さんって22歳ですよね。
すっごく嬉しいな。
- 山川
- よくぞそこに、たどり着かれました。
- 高山
- 土灰釉のかかった薄いブルーがかったものは
湖のようにずっと眺めたくなる色味で
シンプルさの中に風景が宿っているようです。
- 伊藤
- ことば!! ことばがきれい!!!
- 高山
- (笑)贈り物にも向いていると思います。
- 伊藤
- そうそう。中華とも合うし、
日本のおかずも合うし、
さしあげたら万能に使ってくれると思うな。
- 坂口
- 私もこれの「小」を使っています。
サイズ感がちょうどよくて。
ほんと、チャーハン的なものをサッと載せるだけでも、
サマになりますよね。
- 伊藤
- 餃子もね。
- 山川
- 最高ですね。
- 伊藤
- リムの内側におさめてもいいし、
はみ出してもいいし。
繊細でピシッとしてるから、
わりとラフに盛っても、きれいに見えます。
- 坂口
- 焼きそばとか。
- 伊藤
- わたしも!
- 坂口
- リモートワーク中、お昼、
適当にバーってつくった時でも、
こういうお皿を使うと、
ちょっといい、うれしい気分になるんですよね。
たいしたものじゃなくても、
おいしい感じになるのが、すごいです。
- 伊藤
- リムが額縁の役割をしてくれる。
なんでも合います。ほんとに。
そして、島さんのお湯のみも、
高山さんは使ってくださっているんですね。
- 高山
- はい。「小・黒釉」を使っています。
温かい飲み物やデザートが
おいしそうに盛られた写真を見た瞬間、
ああ、これでゆったり食事したい!
と思いました。
- 高山
- スタイリング写真は白だったんですけれど、
黒の、ひとつひとつかたちや焼き色が異なって、
裏返したときの高台も素敵だなと感じ、
黒を買うことにしたんです。
黒釉のものは持っていて大人な気分になれますし、
洗って置いたあとも、
家にあって幸せな気持ちになります。
両手で持って小さくおさまるお湯のみは
ほっとひといき、安心できるので、
小の黒釉をおすすめしたいです。
- 伊藤
- ありがとう! 高台まで写真に撮ってよかった。
- 伊藤
- 島さんのうつわはほんとにわたし、
ほぼ毎日使っていますよ。
すごくいいんです。
みんなはどうかな。
- 岡本
- 私、持ってます。
どっちかっていうと、
料理が下手なほうなんです。
盛り付けも残念なんですよ。
- 伊藤
- そんなぁ(笑)!
そんなこと、ないと思うよ。
- 岡本
- ほんとうなんです、
どうもセンスがなくて。
ところが、このお皿、黒の朝顔鉢ですが、
意識せずに料理を載せるだけで、
ほんとに様になるんです。
- 伊藤
- そうなの! そうなんだよ~。
- 岡本
- 黒いうつわを使うのは初めてだったんですけど、
黒がひとつ食卓にあるだけで、全体が締まる。
- 伊藤
- ほんとうに、わが意を得たり。そうなんです。
- 岡本
- 素人の私が言います、
料理に苦手意識があったり、
盛りつけが難しいなあと思っていたり、
そういう人こそ使ってほしいです。
- 坂口
- どんなものを入れてるんですか。
- 岡本
- もうほんとに簡単なものですよ。
お惣菜とか。
- 山川
- たとえ買ってきたお総菜でも、
パックから出して入れ替えるだけで、
全然、違いますよね。
- 岡本
- それです! そうなんです。
- 伊藤
- そう考えると、うつわの持つ力って、
すごいですよね。
島さんの朝顔鉢はちょっと深さがあるから
盛り付けがしやすいんですよ。
まんなかに、自然とまとまって、
額縁効果があるの。
- 坂口
- 立体的になりますよね。
- 山川
- お料理系の撮影、すごく楽しいですね。
これもすごいきれいですよ。
- 諏訪
- おいしそう!
「紫キャベツの白和え」に
花山椒が入ってるんですか。
- 伊藤
- 料理家・小堀紀代美さんに教わったんです。
おいしいですよ。そして、きれい。
- 山川
- 伊藤さんのお宅で料理の撮影があると、
こういうのがすごい早さで出てくるんですよ。
- 一同
- おお‥‥。
- 山川
- 私、もう、まんまと
全種類のうつわ、買いました。この時。
- 諏訪
- まんまと(笑)。
- 伊藤
- ふうむ、撮影に来ると、
買いたくなるっていうことは、
‥‥実演販売をすると、いいのかな?
- 一同
- (笑)
- 坂口
- 私も中里花子さんのマグカップ、
撮影の時に見て、欲しくなりましたよ!
- 伊藤
- やっぱり、調理の現場を見るのが、いいんだ。
- 山川
- いいうつわって、うつわが目立つんじゃなく、
料理やのみものがおいしそうに見えるんですよね。
それに気づきました。
伊藤さんの料理と組み合わせた時の、
説得力、すごいですよね。
- 坂口
- 中里さんのマグカップは
売り切れで申し訳ないんですけど、
あるだけで、おしゃれな感じ。
かわいくて。
またぜひ機会があるとうれしいです。
- 伊藤
- 「weeksdays」は
キッチン、ダイニングまわりのアイテムも
たくさんあるんですよね。
たとえば、ガラスのコップ。
わたしも今日、使いました。
- 坂口
- 松徳硝子(しょうとくがらす)さんですね。
- 山川
- とてもすてきな商品ですよね。
便利なサイズ感で、
大きすぎないから、気持ちよく何杯も飲める感じ。
「おいしいうちにドリンクが飲める」というか。
- 伊藤
- 口当たりが、いいんですよね。
使っていても、見ていても、
嫌なところがないの。
- 山川
- 並んでいても、すっきりしてるし。
収納されている様子もかわいいですよね。
- 山川
- ドリンクレシピのページも、
本当にかわいいです。
- 伊藤
- わぁ、懐かしい!
なにを飲むのが好き?
- 山川
- 「とりあえず、ビール」ですね(笑)。
- 伊藤
- うん、これからの乾燥の強い季節、
部屋をあたたかくして飲むビール、
うれしいよね。
- 山川
- 松徳硝子さんのプロダクトはどれもほんとに
プレーンで、シンプルで、
weeksdaysらしいなって思うんです。
- 岡本
- 美しい。
- 伊藤
- グラスの立ち上がり角度とか、
ほんとに計算されていて。
- 山川
- でも、ディレクションなさったのは伊藤さんですよ。
- 伊藤
- そうだっけ?
- 山川
- はっきり絵を描いて。
- 伊藤
- そうだった‥‥かもね。
でもわたしが伝えるのは「ざっくり」なんですよ。
内田さんも、松徳硝子さんもそうで、
それを、一回でちゃんと形にしてくれるの。
それがすごいんです。
すっごい変な絵なのに、それを理解してくれて
- 山川
- (笑)ガラスの器、使い方がいろいろあるのが、
すごくいいですよね。
- 伊藤
- ここに写っている山口和宏さんの
カッティングボードもいいんです。
毎日使ってる。
- 山川
- 私も使ってます。
めっちゃいいです。
食べたり飲んだり
- 伊藤
- すご~い、びっくりしてた!
- 山川
- 私も、あれ、びっくりしました。
- 諏訪
- お箸が白っぽくなってきたら、
もう、終わりだと思っていました(笑)。
でも、黒檀という木の性質で、そうなると知って。
あと、正直、お箸にこんなにお金を出したのは初めてで。
いままで持っているお箸で一番いいお箸なんです。
そして使いはじめてみたら、
ほんとにつかみやすいっていうことは
もちろんなんですけど、
洗ってる時とか、使ってない時がすごくうれしくて。
そのことにびっくりしました。
「いいお箸って、そうなんだ!」と思って。
食べている時は、食べていることに必死だから
気づかないんですけど、
食べ終わったあととか、拭いている時に、
「やっぱこれ、すごい!」って思うんですよ。
- 伊藤
- そうなんだよね!
うちも、いろんなお箸があるけれど、
今はこれをずっと使っていて。
で、わりとすぐ白っぽくなっちゃうので、
洗って乾かした後に、毎回磨いてから戻すっていうのが、
一連の作業。見た目も美しいしね。
- 諏訪
- そうですね。あとキャプションにもあるんですけど、
土ものの器にも合うし、
ほんとにキリッとした時にも合うし。
- 伊藤
- そうなの! そうなんですよ。
- 諏訪
- ほんとになんかすごいなぁって。
- 伊藤
- キリッとするのよね。
やっぱり黒っていうことと、
真っすぐっていうことが、
食卓を引き締めるんですよ。
- 坂口
- 写真もすごくすてきです。
- 諏訪
- でもweeksdaysを知らなかったら、
私の年齢では、お箸にこの値段、
出してなかった気がします。
- 伊藤
- そうだよね。
- 諏訪
- 気づかせていただきました。ほんとに。
- 伊藤
- そっか、そっか。
ちょっと余談ですけど、うちの娘は、
すすたけの箸をずっと使っていて。
すすたけっていうのは、囲炉裏の上ですすになった、
そもそも何十年も経ってる竹を使っていて、
すごく強いの。ほんとつかみやすくて。
それをお弁当に──、6歳くらいから、
スヌーピーのお箸入れに入れて(笑)。
- 一同
- (笑)
- 諏訪
- しぶい! ギャップがいい(笑)!
- 伊藤
- いいものを使うと、大切に手入れするし、
けっきょく長持ちするし。
最初にいいものを知るって、
すごく大事だなって思ったんです。
他のものとの違いがわかるっていうか。
- 諏訪
- 細いけど、安心感があるんですよ。
- 坂口
- この時は、よみものの取材に、
京都にお住まいの仁平綾さんに
取材に行っていただきましたね。
- 伊藤
- そうでした。
fogの関根(由美子)さんも
買ってくださってました。
ありがたいです。
わたしの周りの女性たち、
「weeksdays」を毎日見に来てくれるって
おっしゃるかたが多いんですよ。
「毎日パトロールするの」って。
わたしもあるんです、
物件の楽しい不動産屋さんのサイトと、
ビンテージの家具屋さんと、って。
それと同じようにみなさん、ほぼ日を、
weeksdaysをパトロールしてくれてるんだなと思うと、
すごくうれしいです。
- 諏訪
- そうですね。毎日11時に更新をしていますから、
毎日なにか新しいんですよね。
見にいっても、更新してない日があったりすると、
だんだん見なくなってしまうから‥‥。
- 伊藤
- 毎日、続けてきてよかったです。
それも、これも、みなさんのおかげです。
ありがとうございました。
- 坂口
- 伊藤さん、コンテンツを締めくくるのは
ちょっと早いです! もうちょっと話しましょう!
- 伊藤
- (笑)そうだよね。
みんなのおすすめ、もっと知りたいな。
- 坂口
- じゃあ、ちょっとよみもので。
「weeksdays」チームにも参加している
「ほぼ日」インターンの高山七虹(ななこ)さんが
おつまみのコンテンツを強く推してくれてます。
- 高山
- はい(笑)!
私、お酒をけっこう飲むんです。
ほんとに、このコンテンツを見て、
このお酒のセットがほしいなって思いました。
- 伊藤
- わぁ、うれしい!
お世話になっている、
nooyのお二人も買ってくださったそうです。
「すごくうれしいセットです」って言ってくれて、
わたしもうれしい。
- 高山
- こういう飲み比べみたいなのって、ワクワクします。
自分で買っても、いただいてもうれしい。
コンテンツでひとつひとつの特徴を知ることができて、
ほんとに「ぜんぶ」が楽しめる感じがして。
しかも、合うレシピも紹介されてて、
ほんとにうれしいセットだと思います。
- 伊藤
- お客様をもてなす。ちびちびセット。
- 坂口
- 私、家に人を呼んで、
レシピを再現しました!
- 伊藤
- えーっ! そんなありがたい人いる?
- 坂口
- 楽しかったです。
こないだも「れんこんの柚子胡椒風味」を
つくったんですけれど、めちゃくちゃおいしくて。
- 伊藤
- ほんと? よかった。
- 坂口
- 2回、つくりました。
- 伊藤
- 簡単だよね。
- 坂口
- そうなんですよ。
思ったより、本当に簡単で、おいしくて。
お酒のつまみとしてじゃなく、
ごはんのおかずにもなるという感じで、
すごくよかったです。
- 伊藤
- うんうん。よく、これを
娘のお弁当に入れてたから。
- 坂口
- お弁当に入ってたら、うれしいと思います。
- 山川
- このお酒のセットは2年目なんですけれど、
おまけのレシピ本、
内容が全部新しくなってるっていうのが、
ほんとにすごいことですよ。
- 伊藤
- そうかなぁ? いつもつくっているものだよ。
- 高山
- レシピが3ステップになってるので、
気がラクですよね。
お酒を飲みたい時って、
つまみをすごく凝ってつくるというより、
ぱぱっとラフにやりたい時が多いので。
最後のほうに「うつわもたのしい」っていう
よみものがあって、
伊藤さんがお酒からストーリーを広げているのが、
とってもおもしろかったです。
- 伊藤
- おいしいものを食べる時、
いいうつわだったらうれしい、みたいな。
高い器っていうのとはまた違うんですよ。
ふだんからお気に入りのうつわを使うと、
部屋も片付けたくなるし、
どんどん、暮らしの楽しさが広がっていくんです。
- 諏訪
- すてきです。
- 伊藤
- これも、日めくりカレンダーと同様、
今年、お世話になった方々にお送りしました。
- 山川
- もらったら、うれしいですよね。
- 伊藤
- 日本酒は、飲まなくても、
料理にも使えるし。
- 山川
- おつまみもついてますしね。
- 坂口
- このパッケージがすごくかわいくて。
昨年、私、忘年会をした時、
これを買って、みんなで開けて楽しんだんです。
そうするとこの箱を開ける時、みんな、
盛り上がるんですよ。「ワー」って。
「6本も入ってるー!」とか、
「おつまみがこんなにたくさん!」とか。
そういうちょっとワイワイした感じがすごく楽しくて、
贈り物とか、みんなで楽しむ時に、
すごく最適だなっていうふうに思いましたね。
- 伊藤
- 今回、松林誠さんがまた
絵や文字を描き直してくださって。
- 山川
- 1本のラベルとレシピの中のタイトル文字ですね。
- 伊藤
- かわいい字ですよね。
- 山川
- パッケージの色は変え、
新鮮になりましたね。
- 坂口
- この箱も捨てずにいます。
ものを入れたり、
ちょっと置いておくのにいいので。
ずっと置いてあります。
お菓子、入れて。
- 山川
- 私の家でも使ってます!
子どものお菓子を入れる箱に。
- 坂口
- ちょうどいい大きさでいいですよね。
- 伊藤
- なるほどね。ありがたいです。
- 山川
- 私もいいですか。
鋼正堂のスープ皿なんですけど、
もう、めっちゃ! 使ってます。
今朝もこれでごはん食べてきました。
- 伊藤
- ありがたい~!
- 山川
- 「スープ皿」っていう名前なんですけど、
スープに限らず、
どんな料理を載せても映えるというか。
- 伊藤
- そうなの。そうなの。
- 山川
- うちはカレーライスをよくこれで食べてるんですが、
ご飯もの系はすごいいいし。
あとパスタも食べやすい。
リムの立ち上がりがあるから、
最後まできれいに食べられるのが、すごく便利で。
- 伊藤
- 「すくえる」んですよね。
- 山川
- なんだかんだこれを使うので、
買いたそうかなって思っています。
積んだ時がかわいいんですよね。
- 伊藤
- そう。横から見た姿がすごい好きです。
- 山川
- 裏の刻印もまたね、かわいくて。
いいものを持っているなっていう気持ちになります。
この微妙な白い色もかわいいし。
普通の白の食器と違うんですよ。
内田鋼一さんが、これのために特別に
調合してくれた釉薬の色が良くて。
全然、違います。普通の白いお皿と。
- 伊藤
- 先日、雑誌の取材班が家に来たので、
みんなのごはんをつくろうと、
このお皿を使ったら、
それも撮影になっちゃった。
使ってみると、良さがよりわかるみたい。
作家の1点ものではなく、
工場生産品とはいえ、
1枚ずつ型にはめるのは職人さんの手仕事なんですよね。
「手加減」があるので、全部同じじゃないの。
積んだときの姿がきれいだというのは、
その「ゆらぎ」があるから、
重ねたときにまっすぐにならないところがいいんです。
- 山川
- かわいいです。
- 伊藤
- 毎日のごはんに本当にぴったり。
- 山川
- さんが激推しというか、激・欲しがっている
「鋼正堂のオーバル皿が欲しい」件は、
進捗、いかがですかって、言付けが。
- 伊藤
- ハイッ! わたし、近々、
四日市の内田さんのところを訪ねるので、
オーバル、押してきます。
- 山川
- 楽しみにしてます!
プロダクトとはいえ、
人がつくっているものですし、
ほいほいできるわけじゃないので、
気になるみなさまは、
ぜひ、在庫がある今のうちに買ってください(笑)!
- 岡本
- 一番最初に買うとしたら、
どれがおすすめですか。
- 山川
- このスープ皿です。
たとえば4枚とか、家族ぶんを、
最初に買うのってすごくいいと思います。
‥‥この丸プレート「小」もいいですけどね。
- 伊藤
- うん。
- 伊藤
- わたしは大きいお皿大きなプリンをドンと載せて、
小に銘々切ったものを分けます。
- 山川
- いやぁ、すてき。
ヒットしましたね
- 伊藤
- 「あのひととコンバース」も、
たくさんのかたに取材をして、
ご登場いただきましたね。
- 坂口
- 圧巻の12組、18人!
ほんとこれは、
みなさんに、あらためて見ていただきたい。
ぜひっていう感じです。
ほんとにコンバースのこの靴が、
どの方も、みなさん、お似合いで。
- 伊藤
- 友人知人総動員(笑)!
料理家の渡辺康啓さんでしょ、
同じく料理家の小堀紀代美さんに、
野口真紀さん。
なんだかすでに懐かしい‥‥。
- 坂口
- カーマンラインのお二人にも。
- 伊藤
- 編集者の和田泰次郎さんも。
糸井さんも、だ。
- 山川
- この糸井さんの写真、
すごくカッコよくて。
まりさちゃんが撮ったんだよね、
すごいと思いました(笑)。
- 諏訪
- 緊張しました(笑)!
あんまりないですよね、
糸井さんを撮ることって。
- 坂口
- 伊藤さんに9組の原稿を書いていただいたんですが、
けっこう過密なスケジュールでしたね。
- 伊藤
- 先方とスケジュールを合せるのが大変だったと思う。
ミナ・ペルホネンの代表の田中景子さんとか。
- 坂口
- このコンテンツを見ると、
コンバースってどの服にも似合って、
「あ、こんなふうに履けるんだ」って思いました。
- 伊藤
- そうなんですよ!
- 坂口
- ちょっと大人になると、
「スニーカーはちょっとな‥‥」
って思うことがあるんですけど、
これなら、大人でも着こなせます。
- 山川
- 普段、weeksdaysを買わないタイプの
「ほぼ日」乗組員も、
すごいこれはめっちゃ買ってるんですよ。
- 坂口
- たしかに、みなさん履いてますよね。
- 山川
- ダンディなさん、履いてるでしょ。
システム部の凄腕の、
オシャレなおじさまなんですけど、
うれしかった~。
- 伊藤
- このコンバース、商品ページと
コンテンツ、写真の撮り方がちがうんですよ。
商品ページは商品ページで、
いつもの「weeksdays」のトーンで見られるのが
いいですよね。
商品写真やモデルカットは、
写真家の有賀傑(ありが・すぐる)さんに、
「なるべく引き算で」と、お願いしているんです。
たとえば、光がドラマチックに差したりする時は、
陰影を抑えてほしいとか、
写真のトーンを一定にしているんです。
バックの壁は白、床はグレーでシンプルに。
でもコンテンツでは、ワイワイ楽しくっていうのを、
そのまま撮影しているので、住んでいる場所や、
お仕事場などにお邪魔して、
その方のストーリー性やドラマが見えるようにしている。
つまり写真の見た目を変えている、ということに、
‥‥みなさま、お気づきでしたでしょうか?
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- 気づいてますよね!(笑)
ところでこのコンバースは
「生活のたのしみ展」にも出したんですよね。
- 山川
- 盛り上がりましたね。
私、レジの担当をしたんですけど、
何度「ありがとうございました!」を
言ったことか。
- 坂口
- 私も店頭で販売をしていて、
とても楽しかったです。
- 伊藤
- 逆説的な言い方だけれど、
このコンバースは、
「いらない」っていう気持ちから
生まれたものかもしれないな。
「これはいらない」「あれもいらない」で‥‥・
- 山川
- 最後に残ったのが、これ、ということですね。
- 坂口
- ヒットした商品といえば、洗剤ですね。
「LIVRER YOKOHAMA洗濯用洗剤 シルク&ウール」
- 諏訪
- 私、これ、おすすめしたい!
冬物の洗濯って、
もう面倒くさいことでしかなかったんですけど、
この洗剤を知ってから、すっごくいい時間になって。
これを機に持っていなかったスチーマーも買って、
乾く直前ぐらいにスチーマーをかけて。
- 伊藤
- すごい!
- 諏訪
- それも伊藤さんが教えてくださって。
そうすると、風合いがよくなって、
とっても気持ちよくなるよ、って。
いまは洗濯の時間が大好きになりました。
- 伊藤
- うんうんうん。
- 諏訪
- 人ってこんなに変わるんだと思いました、
ほんとに(笑)。
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- あの洗剤って、人を変えるよね。
- 諏訪
- 変えますね。
- 伊藤
- 洗濯の仕方も変わるし、
もちろん、衣類も変わるし、
洗濯に向かう気持ちも変わる。
ほんとにすごいと思う。
マツコさんのTVにも、
洗濯ブラザーズが出たんですってね。
それで、一時期、すごい、全然買えなくなったって。
- 中山
- 『マツコの知らない世界』ですね。
- 諏訪
- 三兄弟が出たんですね。
- 中山
- 「お前たちは、見た目で損してる」とか
言われてましたよ。
洗濯には生活感が大事なのにって。
- 一同
- (笑)
- 諏訪
- 注目されるの、うれしいですよね。
洗濯ブラザーズの洗剤は、香り方もいいんです。
洗ってる時がいちばん気持ちがよくて、
乾くとあまり残らないんですよね。
着る時にはほんとうに少しだけ残っているかな、
くらいの控えめな香り方。
- 伊藤
- うんうん。ほのかでね。
- 諏訪
- 「weeksdays」では特別に香りをプロデュース
させていただいたんですけれど、
パッケージもオリジナルにさせていただいて。
そのイラストも、かわいいですよね。
こういうパッケージの洗剤はないなと思って。
- 伊藤
- そう。
イラストレーターの勝山八千代さんに描いていただいて。
一度使ってほしいです。
わたしもお友達にプレゼントしたら、
さっそく使って、
「すごーい」って言ってくれた。
- 諏訪
- プレゼント! それはうれしいですね。
- 篠田
- 私、「weeksdays」のタオル「さっぱり」を
おすすめしたいです。
タオルは洗うたび乾燥機にかけるんですけど、
毎日のようにかけていると繊維が弱ってくるんですよね。
なので、耐久性がよくて、
かつ、使い心地のいいものを探していたんです。
「さっぱり」に行き着くまで、
10種類くらい、いろいろ試して。
- 一同
- すごい!
- 伊藤
- すごーい!
- 篠田
- 乾かして、顔を拭いたり、手を拭いたりして、
どれが自分の好きな使い心地かなっていうのを
探していた時に「これだ」と。
ちょっと厚みもあって、手を拭いたりするのにも、
朝、顔を洗って拭く時も、すごく気持ちが良くて。
それで、家のタオル、全部これにしました。
- 伊藤
- え? そうなの?
- 一同
- わー(拍手)。
- 篠田
- 私はグレーを買ったんですけど、
家中のタオルが同じ色、同じもので
そろっているのって、
すごく気持ちがいいことなんですね。
- 伊藤
- そうなの!
うち、今、各サイズ、
10枚ずつくらいあるのだけれど、
この前、撮影で、
8人くらいが家に来る日があったので、
洗面所にハンドタオルを揃いで並べて置いたら
「ホテルみたい!」と、みんな喜んでくれて。
その横にあのウッドバスケットを置いて、
「使い終わったらこっち」って。
- 山川
- すてきです。
- 伊藤
- 今度引っ越すお友達へのプレゼント、
これにしようかなと。
- 山川
- 最高です~。
じつは、うちも、これにしているんです。
すごくふわふわだから、
子どもも喜んでます。
- 伊藤
- ちょうどいいんだよね。
ごわごわすぎず、ふわふわすぎず。
- 山川
- もともとほぼ日には
「やさしいタオル」っていう
ロングセラーの商品があるんですけど、
それをずーっとつくってくださっている
今治のタオルの会社にお願いをしているので、
品質的には間違いないだろうとずっと思ってたんです。
それで買ってみて、さらに安心。
- 伊藤
- わたし、今度、洗面所を改装するんだけど、
タオルウォーマーを付けようと思ってて。
その時に一気に買い足そうかな。
- 山川
- 最初は白だけだったのが、グレーが入って、
選択肢に幅が出てさらによくなりましたね。
白の潔さもいいけれど、
グレーはガシガシ使える感じがします。
- 伊藤
- カラーした日に髪を洗って拭くのに、
白だとちょっとビクビクしながら使ってたから、
グレーは本当にいいんですよね。
篠田さん、担当じゃないのに、嬉しいな。
- 篠田
- そうなんです、タオルの担当は太田なんですけど、
- 伊藤
- 客観的に読んでいるから、
お客さん目線なのかな。
- 山川
- そうなりますよ! 自分が立ち会わなかった
撮影の時の写真を見るのとか、めっちゃ楽しいです。
- 伊藤
- うれしい。
そういえば、坂口さんがチームに入って、
「撮影に立ち会うの、初めてなんです」
って言った時の驚き!
いままで別のお仕事をなさっていたから。
- 坂口
- そうなんです。感激でした。
でもまだ慣れないです。
毎回、新鮮ですよ。
saquiといっしょに
- 山川
- 私、サマーテーパードリボンパンツを買ったんですが、
コンテンツがすごく印象的でした。
「着てもらいました」のシリーズなんですけれど、
伊藤さん自ら行ってくださることが、
今年、すごく増えて。
- 山川
- 伊藤さんが自ら行ってくださるようになって、
コンテンツに魅力というか、奥行きというか、
幅というか、説得感が、増しましたよ。
- 諏訪
- それ、今年からですね。
- 伊藤
- あれ? 今年からだっけ?
- 山川
- そうなんです。
伊藤さんが「わたしが行く!」と
おっしゃってくださって。
- 伊藤
- そっか、そうだった。
それまではレポート系のコンテンツは
おまかせすることが多かったのだけれど、
ぜひ自分の目でって思ったんです。
- 山川
- といっても、なかなか取材対象となるかたを
探すのがたいへんだったんですけれど、
メーカーやつくり手のかたがたと
親しくなっていくなかで、
お客さまをご紹介いただくことが
できるようになりましたしね。
このときは、saquiのお客さまにお願いして。
- 伊藤
- かわいいよね。
- 坂口
- 「weeksdays」の
TEMBEAのバッグも使っていただいて!
- 山川
- そうなんです。
みなさん、本当にすてきに着こなされていて。
- 伊藤
- ほんと。
- 山川
- 私、撮影係として同行することが多かったんですが、
写真を撮るのに「そこを見るんだ」って
すごく勉強になるんですよ。
伊藤さんが「ここを撮ってね」って言ってくださって、
それを撮ると、「たしかに、いい」って、
毎回、なるんです。
自分では気づかないようなことなんですよ。
- 伊藤
- わたしも、実際に着ているかたに会って、
「あっ」って気づくことがあるんです。
それがおもしろくって、どんどん、
いろんな方のところを訪ねたくなって。
あと、試着をしていただくと発見もあるんですよね。
背の高いかたで、
「これ、すっごくいいのに、丈がもうちょっとあれば」
みたいなことがあるんです。
そうすると、saquiだったらそれをそのまま
デザイナーの岸山さんに伝えて、
「身長が高い人のために、なにかできることはないかな?」
って相談ができたり。
お客さまの声を聞くっていうのは、
すごく大事だなと思って。
- 山川
- 次のアイデアにつながりますね。
- 伊藤
- たしかに、5年続けてきたなかで、
デザイナーのみなさんや、
商品開発のかたがたと
真っ正面から話せるようになったのは、
すごくいいことですよね。
来年も──まだ言えないけれど、
「あるもの」を「あるブランド」にお願いしていて、
実現しそうですもんね。
- 山川
- 「着てもらいました」シリーズは、
いろんな体型のかたが出てくださるので、
すごく参考になるんです。
- 伊藤
- 結城奈美さんが、
靴のかかとの高さによって、
パンツの丈の長さを考えているというのも、
とっても参考になる意見ですよね。
- 伊藤
- saquiはストレートスカートもすばらしかった。
あれも「ほぼ日」のが履いてくれていて、
ほんとうに似合うの。
- 山川
- 似合ってましたよ。
ちゃんとした場でも安心なデザイン。
- 篠田
- 生地が、イタリアの、ファリエロ・サルティ。
- 伊藤
- そう、サルティの生地の良さを知ると、
手放せなくなりますよね。
シワにもなりにくいし、
こっくりした黒とかネイビーが、
着る人をきれいに見せてくれる。
わたしも色違いで持ってます。
- 坂口
- テーパードリボンパンツと同じ素材ですよね。
- 伊藤
- フォーマルのシリーズもそうですね。
- 山川
- いろんなコーディネートができますよね。
- 伊藤
- これ、フォーマルでも役に立つんだけど、
Tシャツとかスニーカーにも合うから、
真夏以外、いけるかも。
- 山川
- ストレートスカートは、
さんっていう、
「ほぼ日」の乗組員も、
めちゃくちゃいいって、
すごく褒めてくれています。
- 伊藤
- ほんとう? 聞きたい!
- 坂口
- たしか、社内にいます。お呼びしますね。
(他のフロアから呼んでくる)
- 大和
- ‥‥こんにちは、大和です。
えっ、伊藤さんに、私が説明?
- 伊藤
- ぜひおねがいします!
- 大和
- えー‥‥、喋れるかしら。
コホン。
まず、私、スカートが大好きなんです。
それで「weeksdays」でこのスカートが紹介された時、
「欲しい!!」と思ったんですけれど、
「同じようなスカートを
何枚も持っているしなあ、
でも欲しいなあ。どうしようかなあ」
と、悩んで悩んで‥‥。
- 伊藤
- 悩んで、悩んで?
- 大和
- 購入しました!
- 一同
- わーっ。
- 大和
- 結果、買って大正解!
一番よく履くスカートになりました!
- 伊藤
- うれしい~。岸山沙代子さんもすごく喜ぶと思う!
いいでしょう、このスカート。
- 大和
- そうなんです。このスカートをはいていると、
気持ちがとっても高揚します。
素材がトロンとしていて、とても美しく、
タイト過ぎないシルエットと
後ろのスリットのおかげで、
歩きにくさも全く感じません。
シルエットがきれいなスカートには
ついていないことが多いポケットも
ちゃんとついています!
ハンカチや、IDカードなどをポケットに入れたい
私としては、本当にありがたいです。
- 南
- すごい‥‥関西弁ならアンミカさんかと
思うほどの饒舌ぶり‥‥。
- 大和
- そして、このスカートを
私が大好きな一番のポイントは、
カジュアルなものにも合わせやすいこと。
でも、このスカートを履いていると
全体がカジュアルになり過ぎず、
大人のシックな雰囲気がちゃんと出せるんです。
たぶん。
きっと。
おそらく‥‥出ている‥‥はず‥‥。
- 山川
- アンミカさんみたいに言い切って!
- 大和
- そうですよね!
大人シックに、ちゃんと、なります!(笑)
もちろんシルクのブラウスや
カシミアのニットなどに合わせて
エレガントに着ても素敵ですし、
私は子どもが小さいこともあって、
スウェットとスニーカーに
合わせることが多いのですが、
それでもちゃんと、エレガントさを
感じられるのがとってもうれしいです。
素材もシルエットも美しく、
こんなにオールマイティなスカートは
なかなかないと思います。
出会えてよかった! と思える1枚です。
ふーっ! 思いの丈をすべて言いました!
おさわがせしました。
- 一同
- おーっ(拍手)。
- 伊藤
- さん、ほんとうにありがとう。
- 大和
- おわかりいただけたでしょうか、
私のsaquiのストレートスカート愛。
- 伊藤
- しかと、受け止めました。
- 大和
- これからも「weeksdays」、
とっても期待してます!
失礼いたしました。(去る)
- 伊藤
- うれしいなぁ、あんなに喜んでくれるなんて。
- 坂口
- ですね!
- 伊藤
- ところで「weeksdays」はアイテムのページの下に
「CHECKED ITEMS」という欄があるでしょう。
これまでその人がそのブラウザで見たアイテムが
表示されるんだけど、
わたし、それを見るのが、大好きで。
当たり前だけれど、
自分の好みで統一されているでしょう。
- 山川
- これ、楽しいですよね。
わかります。
- 伊藤
- 「weeksdays」のものだし、
わたしの目を通しているものだから、
おかしなものは入ってないという自信もあり、
「わー、気持ちいいー」っていつも思うの。
- 諏訪
- たしかに、たしかに。
- 山川
- こんなふうになるオンラインショップ、
案外、ないんですよ。
もうちょっと、ガチャガチャしちゃう。
- 伊藤
- このときね、写真のトーンを揃えて
撮り続けてきてよかった! って思うんです。
- 山川
- わかります。毎週、新しいページができて、
新しいアイテムが出てくるのも、
やっぱりうれしいですよね。
「新作が加わった!」って。
- 伊藤
- 「weeksdays」をつくっていて、
ちいさなたのしみですよね。
- 坂口
- saquiの今年の新しいアイテムとしては、
カラーパンツが入ったことも
かなり新鮮でした。
- 伊藤
- デザイナーの岸山さんには
ひきつづきがんばっていただきましょう!
がんばりました
- 山川
- これは「weeksdays」から生まれた
「ほぼ日」のコンテンツなんですけど、
すごく印象深かったです。
- 坂口
- これ、写真が、すごくかわいいですね。
- 山川
- 伊藤さんとおさだゆかりさん。
半円テーブルの前で写真を撮りましたね。
- 伊藤
- そうでしたね。
このときはもうにっこにこしてるけど、
日めくりカレンダーづくりは、
なかなかたいへんでしたよね。
それだけに「日めくりカレンダー」が
完成したときの嬉しさ!
- 山川
- 来る日も来る日も
写真とにらめっこしましたね(笑)。
- 伊藤
- 大変だったねー(笑)。
もちつきみたいなんです。
「これもダメでした、差し替えお願いします」。
- 山川
- 「すみません、またダメでした」みたいな。
というのも、商品として販売するものなので、
ウェブのコンテンツに比べて、
写真に写っているものの許可が厳しいんです。
現行商品が写っている写真はメーカーに許諾を、
お店にも連絡を入れて、って。
- 太田
- 海外のもので日本に代理店がなければ
本社までメールで問い合わせましたし、
おさださんの『SCANDINAVIAN 365 CALENDAR
2023』については、大使館のご協力もいただいて。
- 坂口
- 365枚、カレンダーの写真を用意するって、
そういうことなんですね‥‥。
- 山川
- でも、お2人とも、
本当に素晴らしい打ち返し力というか、
毎回。打てば響くようなお返事で、
私たち「待つ」ということがほとんどなく。
- 伊藤
- そうじゃないと、無理かもしれない
スケジュールだったんですよね。
- 太田
- 急に思いついたんですよ、さんが。
いまいませんけど。
私、すっごく嬉しくて。
なぜなら、毎年、日めくりカレンダーを
買って使うんですけれど、
1年間、楽しかったなっていうものが、
ほとんど、なかったんですよ!
- 諏訪
- そう、太田さんがすごく食いついたの覚えてます。
前年までつくっていた美篶堂の暦帖の製作を
お休みすることになったことと、
おさださんの1年の連載が終わって
なにかかたちにできたらいいなあと
思っていたことが重なったんですよね。
- 伊藤
- 太田さんが日めくりカレンダーのよさを
力説したのがおもしろかった。
- 太田
- 明日はなにかな? と思いながら
毎日めくるのは本当にたのしいですよ。
毎日うれしいことがあるって、すごいですよ。
- 山川
- もちろん伊藤さんもみんなも
「わぁ、ほしい!」ってなったけれど、
時間もないし、
写真をたくさん載せるカレンダーの製作が
ここまでたいへんだとは思わなかった(笑)。
‥‥でも、できましたよ!
- 伊藤
- わたし、たくさん買って、
いろんな人にお歳暮みたいに配っているんだけれど、
みなさんすっごく喜んでくれますよ。
70過ぎの税理士のおじさんも、
「これ、いいね!」って。
- 山川
- そう、すごく喜ばれますよね。
伊藤さんに「日めくりカレンダーをつくりませんか」って
提案したときに、「それ、わたしに合ってる!」って
おっしゃっていませんでした?
- 伊藤
- そう。日めくりカレンダーって、
一日、一日、なくなっていくでしょう?
それがすごく自分の性(しょう)に合ってると感じて。
- 山川
- 新しい日が来たら古い日はぱっと忘れる。
たしかに伊藤さんらしいです。
「だったらこうしたいな」という提案も、
「こういう写真を使ったらどうかな」という候補も、
すぐにいただけたので、すぐ製作にとりかかって。
- 伊藤
- スタンド型で、なるべくシンプルにって。
- 山川
- 本当にミニマムな感じで、
しかもかわいいたたずまいになりました。
- 伊藤
- わたしの「weeksdays」と
おさださんの「SCANDINAVIAN」、
両方を買ってくださった人もいて。
- 山川
- TOBICHIにいらした60代後半ぐらいの女性が、
「離れて暮らしてる娘2人分と、自分の分を買って、
毎日、一緒にめくります」って、
おさださんが、とっても喜んで。
- 諏訪
- そっか、離れて暮らす家族の、
共通の話題になるんですね。
必ず同じ日の写真が見られるから。
- 伊藤
- そっか、「どのページ?」ってことがないんだ。
- 中山
- それってすごくいい時間ですね。
- 岡本
- めくる時に、思い出すんですね。家族のことを。
「めくってるかな?」って。
- 山川
- ふとしたときに、
今日、これだったねって言えるのもいいですよね。
- 諏訪
- すてき! そんなこと考えたことなかったな。
- 山川
- つくっただけで、そこまで思ってなかったけど。
- 伊藤
- こういう商品って、1年、
その人の暮らしの中に入るのだから、
責任重大だなと思ってつくりました。
- 山川
- そうですよね。
その日が誕生日の人は、
この写真どう思うかな、って考えたり。
- 伊藤
- フランスの公園で撮った
「ここは犬は入っちゃダメ」の看板が、
すごくかわいかったんだけれど、
この日に、犬好きの人が誕生日だったら、
どう思うかな、ということとか。
- 山川
- そういうところも伊藤さん、おさださん、
配慮されていて。
- 伊藤
- だからこそ手を抜かず、丁寧につくりました。
あと「丸いものが写っている写真が
何日も続かないように」とか、
季節感を入れたりとか。
- 山川
- 「またテーブルの上の料理?」みたいに
違う写真でも同じテーマが続かないようにとか。
- 伊藤
- 1年使ってみて、どういう感じかなっていう、
感想も聞きたいですね。1年後になるけれど。
- 太田
- このカレンダーだったら、
インテリアとしても置いておくだけで
かわいいゾーンがつくれますよね。
といって、かわいくなりすぎないのが
2つともすごくいい塩梅なんです。
私は、玄関にSCANDINAVIAN 365 CALENDAR 2023、
部屋の飾り棚に、
weeksdaysの日めくりカレンダー2023を置く予定です。
- 山川
- めくりわすれることはない?
- 太田
- めくるのを忘れたら、
一気にめくってしまえばいいんです。
どのページをめくってもかわいいですから。
こんなかわいいものは、他にはありません!
- 伊藤
- すごい力説、うれしいな。
それでね、これ、とってもいいものができたけれど、
2024年版もつくりましょう! ってなったら、
どうするかが課題なんです。
わたし、過去数年分の写真から選んでいるので、
もうストックがない‥‥。
- 太田
- そんなぁ!
- 山川
- でも伊藤さん、
このカレンダーの入稿が終わった頃から、
取材先で「これいいな、次のカレンダーにどうかな?」
なんておっしゃって撮っているから、
きっと大丈夫だと思う。期待してます!
- 伊藤
- がんばります。
- 坂口
- 製作中、写真について
みなさんの興味が向かったので、
長野陽一さんにご登場いただいて
リモートで伊藤さんと対談をしていただきましたね。
- 山川
- これ、すごいんです。
長野陽一さんと伊藤さんじゃないと、
語れない内容で。
- 南
- スマホの中に入っている最後の写真、何?
みたいな話をされていて、
それがすごくおもしろいと思いました。
そもそも写真家の方のスマホの写真を見る機会なんて、
滅多にないわけで。
- 伊藤
- そうだよね。
わたしなんか、今、iPhoneに入っている写真、
1枚だけだよ。
- 伊藤
- だって、パソコンに保存するでしょ?
- 篠田
- え? 毎日入れて、スマホから消しているんですか。
- 伊藤
- そう。取材でメモがわりに写真を撮ったとしたら、
パソコンに移動して、原稿を書いて、
そうしたらiPhoneに入れておく必要ないじゃない?
だから全部削除する。
- 諏訪
- ‥‥けっこう衝撃です。
- 伊藤
- えっ?(笑)
- 山川
- 衝撃ですよ! 私、
何枚たまっているだろう(笑)。
- 坂口
- ストレージひっ迫ですよ。私。
- 諏訪
- 私も~。
- 中山
- 私もです‥‥。
- 伊藤
- パソコンにある写真も、
2週間に1回ぐらい整理するよ?
要るものはとっておき、
メモのような写真は削除します。
- 伊藤
- メールの受信箱もゼロにするっていうのも、
前に、すごく驚いていたよね。
- 中山
- えっ、えっ?!
- 坂口
- 受信箱をゼロにする?
つまり、読んで、するべき返信はしたら、
削除するってことですか?
- 伊藤
- うん。
あ、今、動いていることは、
ちゃんとファイルを作って格納しているのよ。
「weeksdays撮影」とか、
わかりやすい名前をつけて。
- 諏訪
- そういう主義の伊藤さんが、
それでもパソコンに残しておいた写真から、
このカレンダーがつくられたということですね。
私、日めくりカレンダーを、
赤ちゃんを産むのに故郷に帰ったお友達に
送ろうと思っているんです。
子育てで、家にいる時間も長いかなと思うので。
- 伊藤
- そっか、それはきっとうれしいね。
- 諏訪
- プレゼントにすごくいいなと思いました。
勉強になります
- 伊藤
- 「weeksdays」のコンテンツを読んで、
「これ買おう!」みたいなことって、
みんなはあった?
仕事として関わっているわけだけれど‥‥。
前に「ほぼ日」の里香さんが、
中里花子さんのマグカップを
買おうか迷っていたとき、わたしが書いた
「我が家には作家の作ったお湯のみが、
たくさんあるのですが、
そういえばマグカップってないなぁ。
あったらいいのにな。」
というキャプションが、
ポチッとする一押しになったとおっしゃってたの。
- 山川
- 私、毎週、毎週、ページをつくり終えるごとに、
買いそうになってます(笑)!
- 太田
- 買ったものじゃないんですけど、
伊藤さんの着こなしのレポートって、
よみものとしても面白いですし、
買いたい気持ちを後押しするコンテンツですよ。
いっぱいありますよね。
- 伊藤
- えっ、わたしの? そうなんだ?
- 太田
- いつも、すごく参考になります。
「かわいい!」と思った商品も、
いざ「買うぞ!」と思ったときに、
「あれ? でもどうやって着たらいいんだろう?」って
自分と商品が
つながらなくなってしまうときがあるんですよ。
そういう時、とてもありがたいんです。
伊藤さんのコンテンツを参考にして‥‥
というか完コピして、着てます!
- 伊藤
- そこまで?
- 山川
- 太田さん、完コピ体質。
- 太田
- そうなの。だって間違いないんだもの。
教えてもらったことは、
素直にそのまま実践。
- 伊藤
- 「これは無理」みたいなことはないかなぁ?
大丈夫?
- 太田
- それは「え!?そうやって着るんだ!」という
驚きになるんですよ。
シンプルな組み合わせなのに、
それもあるんだ! って。
- 伊藤
- 「ほぼ日」のも、完コピ体質。
社内でばったり会うと、
「今日、全身、完コピでーす。
ぜんぶ『weeksdays』でーす」って
見せてくれたことが幾度もあるの。
- 諏訪
- 完コピって体質なんですね(笑)。
- 山川
- 、株主ミーティングに登壇したんですが、
全身「weeksdays」でした。
フォーマルのクルーネックの黒と、
タイトスカート。「ほんとに助かるわ」って。
Satomi Kawakitaさんのピアスして、
フラットシューズ履いてました。
- 坂口
- 完璧!
あと、うちの乗組員のから、
「サイドゴアブーツのパープルのワンピースとの
組み合わせがすばらしかったです!」と。
- 伊藤
- あのワンピースはsaquiのものでしたね。
やさしい色とハードなブーツを合わせて。
- 坂口
- トープのブーツを合せているのを見て、
そのトープを買ってくれたんです。
でもよくよく考えたら、
自分は紫の服を持ってなかったのにって。
ちなみに私も、全く同じエピソードなんですが、
あのコーディネートがすごいかわいくて、
最初は黒を買おうと思ってたんですけど、
トープのブーツにしたんですよ。
そして、今日も履いてます。
- 伊藤
- あ、ほんと!
- 山川
- 実は私も買っちゃったんです。
- 伊藤
- え?
- 岡本
- 私は黒を買いました。
- 伊藤
- え、えっ?
- 太田
- じつは私も‥‥。
- 伊藤
- すごい。
- 諏訪
- チームの人がこれだけ欲しがるって
すごいことかもしれないですね。
- 伊藤
- 撮影の時から盛り上がるんだものね、
「どれを買う?」みたいな話になって。
「発売日いつだっけ?」って。
- 坂口
- このコンテンツの撮影、
みなさん、大騒ぎでしたよね、
「かわいい!」って。
- 伊藤
- そっか、よかった。
時々「わざわざ言うこともないかなあ」と思って、
「でもやっぱり書いておこう!」という箇所があるんです。
そうすると「あの一言で背中を押されました」って
言われることがある。
‥‥ん? なに、この音楽‥‥。お祭り?
- 山川
- 窓の外をちんどん屋が通ってます!
- 諏訪
- ほんとだ、すごく陽気な音楽が!
- 山川
- 3人で!
あのかたがたも宣伝をしているんですよね。
私たちもがんばらなくちゃ。
- 伊藤
- (笑)そうよ~!
- 南
- 私、今年、大学を卒業して、
まだいいお洋服を買うまでに至れてないんですけれど、
ネイルをweeksdaysで買ったんです。
それがとっても嬉しくて‥‥。
- 山川
- うんうんうん。
- 岡本
- OSAJIですね。
- 伊藤
- ひところ、「ほぼ日」社内、
みんなつけてたね。
- 山川
- 大流行り。
夏もよかったし。
- 南
- 冬もいいですよね。
- 岡本
- 手が色白に見えますよね。
- 山川
- コートからちらっと見えたらかわいい。
- 伊藤
- そう、この前もニットの撮影の時に、
袖口からちょっと見えるネイルの色の
効き方がすごいと思って。
- 坂口
- モヘアの時のものですね。
- 南
- カラーパンツの時も。
- 南
- 草場妙子さんが、夏のコンテンツで
ネイルの話をしてくださったじゃないですか。
私はすごくそれを参考にしているんです。
- 岡本
- BARIのサンダルの時ですね。
- 南
- 草場さんのシリーズは、
ほんとうに、参考にしているんです。
永久保存版です。
- 伊藤
- 草場さんって、お仕事でメイク道具を使って、
終わると、きちんと箱に戻すでしょ。きれいに拭いて。
それを見習って、わたしも毎日、
メイクしたら、全部拭いて、
引き出しに戻すっていうことをしています。
- 一同
- ええー!! すごーい(ざわざわ)。
- 伊藤
- 散らからないし。汚くならなくて、おすすめ。
- 山川
- そんな‥‥、なぜできるんですか!
- 伊藤
- 時間があるからよ(笑)。
- 山川
- いやいやいや、
伊藤さん、これだけ働いて、
そんな時間があるとは‥‥。
でも、草場さんに勧められると、
欲しくなりますよね(笑)。
- 伊藤
- 撮影で草場さんとご一緒すると、
どんなメイク道具を使っているのか気になって、
教えていただいて、知らないものだったりすると、
それを探しに伊勢丹に走ったりしてるよ。
- 山川
- わかります! みんなそうです。
さすがだなと思いますよね。
打ち合わせの時から、
草場さんって、いつも提案がすごくて。
- 伊藤
- うん。何を聞いても絶対、
「なんとなく」選んだものはない。
- 山川
- 日々のリサーチがちゃんと生きてるというか。
アイデアがすごくあるんですよね。
しかも草場さんのアドバイスって、
どれもそんなに無理がない
- 伊藤
- そうなんですよ。
メイクに対して愛があるから、
ほんとに任せられる。
そして、かわいいの、草場さんが!
- 山川
- すてきですよね。
- 岡本
- 私、「あるていど、日焼けしてもいい」っていう言葉、
すごくありがたかったです。
- 伊藤
- そうなのよ!
「こうじゃなければいけない」から自由なんですよね。
その人に合った一番いいものを選んでくれる。
- 山川
- モデルさんに合わせて、すごい差し引きされてますよね。
- 伊藤
- ほとんどアイメイクしないとか、
この肌ならファンデーションは要らないとかね。
「え!」って思う。
- 山川
- でも、すっごくすてきに、なりますよね。
- 伊藤
- 草場さんと仕事をしてると、
みんな着るものの流行には敏感なんだけど、
わりとメイクって変えられていないとわかりますね。
その時代時代に合ったことを、
べつにそんなに派手な感じじゃなく取り入れると、
ちょっとした眉の描き方ひとつで
「あ、今っぽくなる」みたいなことがある。
「ほぼ日の學校」の草場さんの
「では、眉毛だけメイクしてみましょう。」でも、
「え、こんなになるんだ!」と思った。
勉強になります。
お目にかかれて
- 坂口
- (立ち上がって)伊藤さま、みなさま、
ほんじつはお集まりいただいてありがとうございます!
進行を務めさせていただきます、
不肖、さ、さ、サカグチです。
ふだんはコンテンツの進行管理を担当しております。
いつもの「weeksdays」の座談会では司会の
さんが本日は不在ということで、
わたくしが代打を仰せつかりました。
なにぶんにも不慣れでございますし、
至らぬ点も多々あるかと存じますが、
なにとぞ、よろしくお願いいたします。
‥‥言えた!
- 伊藤
- どうしたの坂口さん!(笑)
- 山川
- 硬い、かたい!
- 篠田
- 台本つくってきたの? すごい。
- 太田
- そうだよリラックスして!
もう年末年始のお休みに入る人も多いし、
「ほぼ日ストア」の発送もお休みになるから、
みんなでワイワイ、
1年を振り返っておしゃべりしよう、
って集まったんだから。
- 坂口
- さ、左様でございますね‥‥。
- 山川
- まだ硬い。
- 坂口
- コホン、えーっと、すみません、無理がありました。
いつものように話していいですか。
- 中山
- そうしてください!
- 坂口
- では‥‥、はじめたいと思います。
今年もたくさんの人にお会いしました!
- 山川
- すご~~~く、いっぱい
対談をしましたね、伊藤さん。
2022年の対談コンテンツ、
思い出深いものがいっぱいです。
- 伊藤
- そうだよね!
もう、ほんとうに‥‥。
ウー・ウェンさんのところに伺ったの、
忘れられないなぁ。
‥‥って、こんなに前なの?
- 坂口
- そうですね。
ウーさんのお宅に伺ったのは、対談が2月、
そのあとにももう一回、半年後、
バスケットの取材に伺いました。
- 伊藤
- 深澤さんもそうだけれど、
「暮らしが見える」場所に伺うことができたのは、
わたしにとっては、すっごく大きなことでした。
勉強になったし、
あの本の中の世界が本当のものなんだ!
と感動もしました。
ウーさんとは、取材の後、
「欲しいものもあるけど、
いらないものもいっぱいあるから、
それをテーマに対談をいつかしましょうね」
みたいな話になりましたね。
- 諏訪
- そうでしたね!
- 伊藤
- 「これ、いらなくない?」
っていうもの、わたしもすごく多くて。
‥‥世の中に。
- 一同
- (笑)
- 山川
- 聞きたいです(笑)。
- 伊藤
- 「weeksdays」はものを売る場所だから、
「欲しい!」をあつめたコンテンツだけれど、
その向こうには「いらない」もあるんですよ。
そういうことを考えるのって、
ちょっと「ほぼ日」ならでは、っていう感じがする。
ウーさんもわたしも言うことがはっきりしてるから、
あらためて対談をしたらちょっとおもしろいかなと(笑)。
「これ、いらないですよね」
「そうよ、これ、いらない!」みたいな。
- 一同
- (笑)
- 山川
- 度肝を抜かれそう(笑)。
- 諏訪
- バスケットで取材に伺った時に、
そういう話に、ちょっとだけ、なった気がします。
- 伊藤
- そう! そしてね、
そんなに「いらない」っていう人が、
実際「weeksdays」の商品を
買ってくださっていたっていうのが。
- 山川
- タオルもバスケットもですよね。
- 諏訪
- たしかに、
あんなに選び抜かれたものしかないおうちに
選ばれたって、光栄です。
- 伊藤
- 印象的だったのが、
「ごみにもきれいなごみと、
きれいな捨て方がある」ということば。
- 諏訪
- そんなこと考えたことなくて、
すごくびっくりしました。
- 坂口
- 「ごみの捨て方にもセンスが必要だと思っているんです」。
はぁぁ‥‥!
- 山川
- 「美しく捨てる」んですね。
- 伊藤
- 坂口さん「はぁぁ‥‥」って言ってる(笑)。
- 坂口
- そうですよ、私、これを読んで、
発売当日にこのバスケット買ったんです。
ごみ箱にしようと思って。
- 山川
- 買ったんだ?
- 坂口
- はい。ウーさんを意識して、
最初は汚く見えないようにごみを捨ててたんです。
- 伊藤
- 今は?
- 坂口
- 今は‥‥ちょっと雑に。
- 山川
- 伊藤さんでしたっけ?
バナナの皮をそのまま捨てるなんてすごく嫌だ、って。
- 伊藤
- そうよ。わたしは生ごみは全部、
すぐ冷凍庫に入れている。
生ごみが出たら、すぐ袋に入れて空気を抜いて
冷凍庫の中に場所を決めて冷凍しておく。
- 諏訪
- 冷凍庫!
- 伊藤
- 嫌じゃない? 臭くなるの。
- 諏訪
- 夏とかすぐ。
- 山川
- 虫もわくし。
それは週に1回とか捨てるんですか。
- 伊藤
- マンションにごみ置き場があるんだけれど、
タヌキやハクビシンが近くの公園に出て、
生ごみを漁りにやって来るのね。
だから生ごみは蓋付きの大きなバケツがあって
みんながそこに入れるようになっているのだけれど、
開けるたびに、「うっ」ってなるのが嫌で。
せめてすこしでも、
部屋でもごみ置き場でもにおいを減らそうと、
冷凍しておいて、回収直前に出すようにしているんです。
この話をするとね、「生ごみを冷凍庫に?!」って、
よく驚かれるんだけれど、
りんごの皮にしてもお魚の骨にしても
新鮮な食材から出たものなんだから、
べつに汚いものじゃないのよ。
‥‥って、なぜわたしのごみ捨ての話に(笑)。
- 諏訪
- 興味津々で聞いちゃいました(笑)。
- 伊藤
- そうなんだよね、
こうしたらきれいになるっていうより、
こうしたら自分が気持ちいいっていうのは、
わたしたち二人に共通している気がしました。
- 南
- ウーさんのタオルのコンテンツで、
私が衝撃を受けたフレーズがあって。
- 伊藤
- なんですか?
- 南
- 「お客さんをお呼びする時に、
あらためて掃除はしない」
- 伊藤
- ああ。
- 南
- それはつまり、いつもきれいだから、なんですよね。
衝撃といったら恥ずかしいですけど、
お客さんが来るとなったら、
念入りに、念入りに、みたいなイメージがあったんです。
私自身はそうなので。
でも、日々を大事にするというか、
自分もお客さんのように大切に扱ってお掃除し、
美しくその場を保っているというのは、
すごくいい考え方だなって思ったんです。
それは自分自身のためでもあるし、
おもてなしするお客さんのためでもあるし、
その全てをリスペクトしてる感じが‥‥。
- 伊藤
- そうしないと、自分も気持ち悪いんじゃないかなって。
お客さんの多い家だということもありますよね、
うちも、わりと予告なしに人が来るの。
だからいつでも大丈夫なようにしている。
- 山川
- 伊藤さんのおうち、
ほんとうにいつもきれいです。
- 伊藤
- わたしはいつも
写真を撮るみたいな目で、家を見ているの。
イスがちょっと曲がっていると気持ち悪いなあとか。
そういえば、ウーさん、毎日あの広い家を、
全部自分で水ぶきしているんだって!
- 山川
- 手で拭いてるって、私も本で読みました。
- 伊藤
- それがエクササイズなんですって。
タオルもきちんと折って仕舞うのね。
それはお茶を習っていて、
袱紗をたたむ習慣があるからよ、
みたいなことをおっしゃって。
- 中山
- 憧れます‥‥。
- 伊藤
- 深澤さんもそう。
ほんとにもう細部にわたるまで
「ここは!」って気になるところが
おうちのなかにいっぱいあって。
それがすごい勉強になったし、
2人ともすごい人なのに、
全然、偉そうじゃなくて、
「好きだからやっているんですよ」っていう感じが、
すばらしかったですよね。
それから、深澤直人さんとの対談、アトリエに
同行したチームが興奮してた。
すごい、すごい、って。
- 諏訪
- そうです。深澤さんのアトリエって、
「その場にいて気になることが、一個もない」んです。
これ、うまく説明できるか自信がないんですが、
会社にいたりすると、
照明がちょっと目にまぶしかったり、
乾燥が気になったり、暑すぎたり、
寒すぎたり、ドアの開閉音がどうとか、
このにおいなんだろうとか、
その空間が完璧に気持ちいいっていうことはあまりない。
「そういうものだ」と思って過ごしてますよね。
ところが、深澤さんのところに行った時に、
驚いたんです。全くなんにも、気にならない。
- 伊藤
- 現地で、すごくそう言ってたよね。
- 諏訪
- もう呼吸がしやす過ぎて(笑)。
びっくりしました。いかに普段、
ストレスの多い環境にいるんだって気づきました。
- 伊藤
- 深澤さんが、センスがいいっていうことを、
センサーがいいとおっしゃっていましたね。
デザインがどうのっていうこと以上に、
そっか、すごく高性能なセンサーを
持っている人なんだっていうのを、改めて思った。
- 諏訪
- センサーの話、覚えてます。
そのことに対して、感じられる人が
それをできる人っておっしゃって。
- 伊藤
- わたしは、家が散らかっていると、
センサーが鈍ると思ってて。
それも、いつも家をきれいにしている理由かも。
- 諏訪
- 研ぎ澄ましておくっていうことですね。
あと、深澤直人さんって、
プロダクトデザインのイメージが強かったんですけど、
たまたま家をまるごとデザインされたっていう
タイミングで対談をオファーしたじゃないですか。
やっぱり伊藤さん「持ってる!」って、
その時、思ったんですよ。
- 一同
- (笑)
- 諏訪
- ほんとにできたてのタイミングで、お伺いして。
- 伊藤
- 「来てほしかった」って言ってくださった!
- 諏訪
- それを知っていて
お願いしたわけじゃなかったんですけど。
- 伊藤
- タイミングがいいこと、
「weeksdays」ではよくあるよね。
- 中山
- 私は「あたらしいクリエイティブが
世界に灯をともす」。
これは、軽井沢の須長檀さんたちがやってらっしゃる
ラッタラッタルさんのお話で、
とても印象的でした。
- 伊藤
- 読んでどんな感じでしたか?
- 中山
- そもそも、場所がすごくすてきで!
お写真を見て、すごいワクワクしたんです。
そして、文中にもあったんですけれど、
障害のある方の手づくりのものって、
バザーなどで見かけるものとして認識していたのが、
ちゃんとアート作品として成り立っていることが
素晴らしいと思いました。
経営してるみなさんと、
障害のある方が、対等な位置で。
- 伊藤
- そう! このメンバーの誰がいなくても、
絶対、このプロジェクトにはならなかったと思います。
そして、須長檀さんというすばらしいデザイナーが
いたからこそのプロジェクトですよね。
わたしもすごくいいコンテンツだと思っています。
- 中山
- 感動しました。
ものづくりの方法においても、
「これをつくろう」ということが先にあるのではなく、
「絵を描いてみよう」っていうところから、
「こういう絵が描けたね。これで何をつくろうか」
っていう、そういう方法論も、
すばらしいと思ったんです。
- 伊藤
- 目的があって何かを描くとかっていうのが多いけど、
先に絵があって、
それに適したっていうものづくりというのは、
わたしもハッとさせられました。
中山さんの言う通り、この場所は、
どこを撮っても絵になるんです。
ものづくりには、環境って本当に大事だなと思います。
美しいところにいないと、
きれいなものなんて、できない。
だから、ね、「ほぼ日」の撮影スタジオもね。
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- いつもきれいにしていましょう!
って、こんなところで(笑)。
- 山川
- ほんとうですよ、
きれいにしないと
きれいな写真は撮れないです(笑)。
- 伊藤
- (笑)絶対そうだと思うの!
- 山川
- 伊藤さんのおかげで
なんとか弊社のスタジオが
きれいに保たれています。
「きれい」って大事ですね。
- 中山
- 軽井沢町の「お薬手帳」が
コンテンツに出てきたじゃないですか。
あれもとてもきれいで、
うらやましく感じました。
一冊ずつ手描きなんですよね、表紙が。
- 坂口
- 軽井沢の方、いいですよね。
- 伊藤
- 考えてみたら、お薬手帳って、
こうじゃなくちゃいけないという
フォーマットがなく、
薬局が出してくれるシールが貼れる
紙の冊子があればいいんだものね。
どんなデザインでもいいんだということに
まったく気づかなかった自分は、
すごく既成概念にとらわれていたんだって、
あれを見て、ハッて思いました。
- 諏訪
- 絶対、こっちのほうがいいじゃん!
ってなりますよね。
- 坂口
- 持ってて、気持ちが晴れやかになる。
- 伊藤
- これはほんとに刺激的な仕事でした。
- 南
- リスペクトがたくさん、
詰まっている感じがします。
持ってるだけで会話が始まる
- 伊藤
- 一田さんは
服やバッグや靴に飽きることもあるんでしょうか。
その場合、どうしていらっしゃいますか。
- 一田
- マイブームみたいなものはありますよ。
さきほどのバッグ「m0851」は、
『大人になったら、着たい服』を立ち上げた
2011年のちょっとあとから使ってきたから、
けっこう長くなります。
でも、その前に買ったものは、
すごく溜めていたけれど、
思い切って全処分しました。
- 伊藤
- 誰かにあげたとか?
- 一田
- はい、そうして手放しました。
まーちゃんもそうでしょう?
- 伊藤
- わたしもおなじです。
- 一田
- 私より回転が速いんじゃないかなあ。
スタイリストという職業柄。
- 伊藤
- そうですね、シーズンごとに。
- 一田
- 去年と同じものを着て
メディアに出れないとか?
- 伊藤
- それは全然、べつに‥‥。
変えるといっても、
ホント、似たようなものが好きですから。
- 一田
- それに「weeksdays」で
ご自身が欲しいものをつくられているから。
- 伊藤
- そうなんです。それに、家の置き場所は一定ですからね。
だから「ここに入らなくなったら、人に渡す」と
わたしは決めているんですけれど、
一田さんはどんなタイミングで?
- 一田
- 『大人の片づけ できることだけやればいい』
っていう本を出したときに、
その本に合わせてクローゼットの使い方を
整理収納アドバイザーのEmiさんっていう人に
アドバイスしてもらって大改造したんです。
以前は寝室にクローゼットがあったんだけれど、
朝、夫が寝てるのにそこ開けて着替えるのは不便だから、
リビングにクローゼットを
持ってきたほうがいいですよって言われて。
ハッ、そうか! ってなって。
そのときにギュッて服やバッグも処分したんです。
- 伊藤
- わたしも実は
リビングに下着が入ってる引き出しがあります。
自分の動線を考えると、
「ここにあるべき」という定説って
あんまり関係ないんですよね。
- 一田
- そう。私は下着は洗面所がいいって言われて
その時置き場所を変更しました。
- 伊藤
- なるほど。
- 一田
- けっこう便利になりました。
でも、バッグって、収納に困るじゃないですか。
しまいにくくないですか。
- 伊藤
- わたしは小っちゃいバッグが多いから、
箱に立てて収納しています。
小さいバッグが入った箱が2個、
オープンラックに入ってます。
- 一田
- そうか、小っちゃいから(笑)、
場所をとらないんですね。
ところが私の使ってきた仕事用のバッグって、
かたちも不揃いだし、大きいし、
中身が入っていないと直立しないし‥‥。
- 伊藤
- 一田さん、どうやって収納しているんだろう?!
- 一田
- 私はS字フックに全部かけてます。
- 伊藤
- なるほど。
- 一田
- じゃあ、まーちゃんにとって、
今回のバッグは「大きい」のね。
でもたくさん入れずに持ち歩く。
- 伊藤
- そうなんです。
この大きさで全部革だと
見た目も重量も重いんですけれど、
網状になっているので軽さがあるんです。
- 一田
- 持たせていただいてもいい?
わぁ、軽い! かわいい!
- 伊藤
- わたし、小柄だから、
これぐらいのバッグで全面が革だと、
まるでバッグが歩いてるみたいになるんです。
- 一田
- このデザインなら、持っているだけで
会話が始まりそうじゃないですか。
- 伊藤
- 確かそうですね。これがきっかけになりそうです。
- 一田
- スタイリングの仕事のときは
さすがに荷物が多いでしょう?
- 伊藤
- 車で移動しますからね。
でも、スタイリストにしては少ないかもしれません。
もう「これ」って決め打ちみたいな感じで、
自分で持てる範囲って決めているんです。
若い頃、「用意したものが少ない」と
言われたこともありましたけれど。
- 一田
- 「これがダメだったらこっち、これがダメだったらこっち」
と、3番目ぐらいまで用意するかたもいますよね。
- 伊藤
- そうそう。そうしたら友人が
「スタイリストとして引き出しがあるのはいいけれど、
引き出し全部を持ってこられてもね」って慰めてくれて。
溜飲が下がりました。
- 一田
- さすが!
- 伊藤
- ところで一田さんが
「一田憲子」としての仕事を始めた
きっかけって何だったんですか。
自分の名前でお仕事をするようになったのって。
- 一田
- 私はずっと、名前ナシの、
雑誌のいちライター時代が長かったんです。
2006年に『暮らしのおへそ』を立ち上げたときも、
クレジットは載っても、
自分の名前で仕事をしているというところからは
ほど遠い立場でした。でも、その頃、
ライターが1冊の雑誌を立ち上げるって、
あんまりなかったから、
ちょっと目立ったんですよね。
- 伊藤
- そして2011年「大人になったら着たい服」を、
2016年にウェブメディア「外の音、内の香」を。
- 一田
- それを立ち上げたのも大きかったですね。
でも、ウェブメディアは、すごくネガティブな発想で。
年をとって、雑誌の連載がなくなったとしたら、
書く場所がなくなってしまう、どうしよう? って思って。
- 伊藤
- えぇ?? そんな。
- 一田
- ライターって、オファーがないと
できない仕事じゃないですか。
だったら「ほぼ日」さんみたいな、
自分で自分のプラットフォームをつくっておけば、
マネタイズはできていないけれども、
バイトしながらでも、
「きょうこんなことあったよね」って書けるでしょ?
- 伊藤
- えっ。バイトって?
- 一田
- わからないですよ。
わからないけれど(笑)、
クヨクヨ気質だからそういうことを考えるの。
その時、書く場所があれば書けるじゃない、
誰かに頼まれなくても。
そういう場をつくっておきたいと思ったんですよ。
- 伊藤
- まさしく糸井さんが「ほぼ日」を立ち上げたときの
発想と同じなんですね。
- 一田
- そのことを糸井さんが書かれた本、
すり切れるほど読みました、私(笑)。
- 伊藤
- オファーがなくなっても、バイトしてでも
書きたい気持ちって、
どういうことが原動力になっているんでしょう。
- 一田
- ちょっと考えたことがあったり、
誰かと会って、あの人のこういうところがいいな、
とか思うと、書きたくなっちゃうんです。
書いて誰かに伝えたくなるんですよ。
書かなければ「あの人いい人だったね」で
終わるじゃないですか。
でも、どういうところが良かったのかとか、
自分のなかに落とし込むっていうのが
私にとっては、書くという作業なんです。
人でもものでも「わかりたい」、そして
書きながら「わかる」みたいことがあるんです。
それを誰かに渡して「そうだよね」って
言ってもらえるのが嬉しい。
- 伊藤
- そうなんですね。おもしろいです。
それじゃ、ライターだった一田さんのところに、
「一田憲子」として依頼が来るようになったのは‥‥。
- 一田
- 「外の音、内の香」を立ち上げて、
そこからちょっとずつ、
単行本のオファーがくるようになりました。
それより前にもちょっとだけは出してたんですが、
ポツ、ポツみたいな感じだったので。
- 伊藤
- 「本を出しませんか?」ってくるじゃないですか。
それで、「じゃあこういうのにしませんか」っていうのは、
どちらが提案するんですか?
- 一田
- 出版社の編集者に提案してもらうこともあるけれど、
話し合って決めていくことが多いですね。
いま幸いなことに
とてもたくさんのお話をいただいているので、
出版が、だいぶ先になってしまうんですよ。
だから、2ヶ月に1回ぐらいお茶会をして、
将来的に出すものに関しての雑談をするんです。
そうすると出したい本がだんだん変わっていく。
その人も私もやりたいことを言って、
2人で話が盛り上がったほうへ行く。
- 伊藤
- 雑談のなかから、「あ、これだ」みたいな。
- 一田
- そうそう、そんな感じです。
編集の人に掘り出してもらわないと、
1人ではできないものですから。
- 伊藤
- 自分って、自分にとっては「普通」じゃないですか。
それを人に聞いてもらって、初めて
「あ、ここがおもしろいんだ」って思ったりしますよね。
- 一田
- 「こういうことが知りたいんだ?!」とか。
- 伊藤
- みんなやってることと思ってることが、
実はそうではなかったり。
雑談って、すごく必要ですよね。
- 一田
- 雑談大事。
- 伊藤
- 雑談のなかから生まれること、いっぱいありますよね。
- 一田
- そうですよ! そうだ、思い出した、
バッグのお話しに戻してもいい?
私、このあいだの『大人になったら、着たい服』で
大分に取材に行って、そこでバッグを見つけたんです。
超ピンクのバッグなんだけれど、
「how to live」(ハウトゥリブ)のもので、
珍しくそれを買ったんです。
- 伊藤
- 見たいです!
- 一田
- 持ってくるね。‥‥これ。
- 伊藤
- わぁ!!!
ホントだ、かわいい~。
- 一田
- 私としては珍しく遊びのバッグだったんですよ。
そしたら、これを持って外に出るのが楽しくて!
めっちゃピンクじゃないですか。
だから、ネイビーのワンピースに合わせると、
めちゃくちゃバッグがアクセントになる。
これで思ったんです、
「バッグって、そういう役目もあったのね」って。
「weeksdays」のこのバッグも
たぶんそういう役目のなんですよね。
- 伊藤
- すごい、さすがすぎる。
最後にみごとにバッグの話に。
一田さん、ありがとうございました。
久しぶりにゆっくりお話しできて楽しかったです。
- 一田
- 私も楽しかった! ありがとうございました。
また近いうちに。
40歳の壁、60歳からの冒険
- ──
- さきほどおふたりから
「大人」というキーワードが出ましたね。
社会人になったら大人だ、
っていう意味での「大人」とはちがい、
おふたりのおっしゃる大人って、
もう1段階上の「成熟」みたいな部分が
あるように思います。
一田さんの『大人になったら、着たい服』もそうですし。
その感覚が近いですよね、おふたりは。
- 伊藤
- そうなんです。
そもそも『大人になったら、着たい服』っていうのは、
一田さん、どうしてつくろうと思ったんですか?
- 一田
- 40になったときに突然、いままで着ていた服が
全く似合わなくなっちゃったんですよ。
よくあるじゃないですか、40の壁って。
- 伊藤
- よく言いますよね。
- 一田
- しかも、40歳の頃って、
それまでひたすら駆け続けてきたところから、
ちょっと立ち止まる年齢でもある。
そして、フッと振り返る。
これから年をとっていくのかな、さみしいな、みたいな。
そのときに、すごいオシャレで、
キラキラした先輩がいることに気づいたんです。
じゃあ、40歳から何を着たらいいのかってことと、
その先の人生の後半を
どうキラキラ生きていくかを聞く本にしようと、
立ち上げたんですよ。
- 伊藤
- なるほど。じゃあそのときは40歳の一田さんが
憧れの先輩たちを取材していたけれど、
いまはその一田さんが、かつての先輩の年齢に‥‥。
- 一田
- そう!
- 伊藤
- じゃあ、かつては取材をした
「ちょっと上の人たち」の年齢層を探すと、
いまは年下になる。
でもそういう人を取材することは
だんだん少なくなりましたか?
- 一田
- 少なくなりました。
最初立ち上げたときは40歳以上を取材していたんですが、
いま50歳以上になって、
しかも60、70代がけっこう増えているんです。
- 伊藤
- ほら、一田さんにご紹介した、志賀朋子さん。
「weeksdays」では
トレンチコートを着てくださって。
- 一田
- そう、志賀さん!
ご紹介いただきありがとうございました。
めちゃくちゃカッコいいですよね。
- 伊藤
- 性格もカッコいいんです。
- 一田
- そう。セレブなんだろうけれど、
生活感もちゃんとあるかたですよね。
- 伊藤
- あまりに素敵だったから
「一田さん、このかた取材したほうがいいですよ!」って、
勝手におすすめしたの。
- 一田
- 写真を拝見して「絶対取材する!」って(笑)。
- 伊藤
- 「この人とこの人、つながったらいいだろうな」
って思うと、バンバンおすすめします。
- 一田
- だからご自分の人脈も広がっていくんですよね、きっとね。
- 伊藤
- それが財産ですよって尊敬するかたから言われました。
- 一田
- いいことですよ。
誰かに誰かを紹介するって、
自分が抱え込まないからできる循環ですよ。
- 伊藤
- 確かに! 紹介した人同士が
わたし抜きのところで仲良くなってるのもうれしいし。
「私が紹介したのに」という人もいますけれど、
あれはどうしてだろうって思うんですよね。
- 一田
- いる(笑)。私、若い頃はそう思ってたかも。
いま、自分で、そう思うんです。
- 伊藤
- そうなんですか。
- 一田
- 「私が取材した人なのに、あの雑誌でも!」みたいに
チラッと思ってた時期もあったんですよ。
いまは「どうぞどうぞ」と思えるようになりました。
- 伊藤
- そっか、そんなふうに思う時期、
わたしもあったのかなあ。
言ってもらうとうれしいですよね、
「紹介していただいたあのかたと、
こんど、こんなお仕事をするんです」とか。
- 一田
- それ、絶対、大事ですよ。
それがないのが多すぎるの。
それを言ってさえくれれば、ということが。
- 伊藤
- わかります。わたしも伝えるようにしています。
一田さん、今回出版なさった
『大人になったら、着たい服』では、
あたらしい発見はありましたか?
- 一田
- 年上の人たち、それこそさきほどの志賀さんも、
「コム デ ギャルソンを買うようになったのは
60歳を過ぎてから」とか、
みなさん年をとってから
新しいことを始めているんだなぁということが、
すごく刺激になりました。
- 伊藤
- なるほど。
- 一田
- 「年をとったからこそ、
いままで着たことのない服を着るのよ」みたいな。
- 伊藤
- 先日「saqui」の岸山沙代子さんが、パリに行って、
初めてシャネルできちんと会話をして
買い物ができたって喜んでいたんです。
それこそ成熟ですよね、彼女もいま40代、
学生でフランスに住んでるときはお金もなかったし、
いまやっとできました、って。
岸山さんって面白いんですよ、
「私はホントにフランスに行って良かったんだろうか」
なんて、帰ってきてから言ったりしていたんです。
クヨクヨするの。
- 一田
- あ! 私もクヨクヨ体質だから、よくわかります。
- 伊藤
- え? 一田さん、クヨクヨ体質?!
- 一田
- クヨクヨ体質ですよ。
だからまーちゃんのクヨクヨとは真逆の性格を
いつも羨ましいと思ってます。
学ぶところが多い!
だってこの「weeksdays」を立ち上げるときの潔さ。
ほかの連載の仕事を整理なさって、これ1本でって、
思い切った舵のきり方だったじゃないですか。
失敗したらどうしよう、っていうことが、ない。
私だったら、「これで食べられなくなったらどうしよう」
みたいになりますよ。
- 伊藤
- そういえばそうですね。
あんまり心配をしていないというか、
自分が大人になっていったら、
そのぶん、欲しい物がついてきて、
ずっと仕事が続いてくれたらいいなと
思っているんです。
- 一田
- そういうところがすごい。
私だったらホラ、枯れていっちゃって、
何にもなくなっちゃったらどうしよう?
とか思うんですよ。
- 伊藤
- いくらでもありますよ!
軽いお鍋とか、杖とか、老人ホームとか。
- 一田
- 確かに。
- 伊藤
- 楽しくやりたいじゃないですか。
みんな平等に年をとっていくのに、
なぜわたしが入りたい老人ホームがないのかなと
疑問に思っているんです。
- 一田
- ホントそうですね。
- 伊藤
- 軽井沢の須長檀さんたちが
「老人ホームをつくりたい」とおっしゃっていて、
- 一田
- 軽井沢なら、できそうですよね。
お医者さまの稲葉俊郎先生とか、
すすんだ考えをお持ちのかたがいらっしゃいますし。
- 伊藤
- 軽井沢病院の稲葉先生ですね。
「Karuizawa hospital without roof」
という活動をされていて、
須長さんたちは「konst」という立場で
お手伝いをなさっているんだそうです。
町ぐるみでいろいろなことをなさっているから、
ホントにできるんじゃないかなぁって期待しているんです。
年を重ねた人たちばかりじゃなくて、
いろんなモノづくりの人が
ひとつの場所にいるっていうのを
目指しているそうですよ。
素敵な人の真似をして
- 一田
- こんどの「weeksdays」では
どんなカバンを並べるんですか。
- 伊藤
- これです!
パリに住んでる日本人女性2人組の
MAISON N.H PARIS(メゾン・エヌアッシュ・パリ)の
バッグなんですよ。
- 一田
- えっ、えっ。
なぁに、これ!
いったいどうなっているの?
(ためつすがめつして)
えー? えっ、おもしろい!
- 伊藤
- しかもリバーシブルで使えるんです。
- 一田
- えっ?! 驚くことばかり。
そもそもこれがバッグとは思えないかたち。
- 伊藤
- 撮影のとき、あらためて思ったんです、
これは、持つだけで、
オシャレな人になるバッグです。
- 一田
- 確かに!
- 伊藤
- あんまりいっぱいは、
ものが入らないんですけど。
- 一田
- アクセサリー的な存在ですよね。
入れるものは、中袋に?
しかも、軽い。
かわいい~。
- 伊藤
- そうなんです、かわいいんです。
- 一田
- パリで知り合った方たちなの?
- 伊藤
- t.yamai.parisという
ご夫婦でなさっているブランドがあるんですが、
そこの展示会で紹介していただいたんですよ。
これは一田さんがお仕事で使うタイプの
バッグじゃないですよね(笑)。
- 一田
- ハハハ! その通り。
- 伊藤
- いつもは、どういう感じですか?
お仕事はAMIACALVAのバッグパックで、
お出かけするときは小っちゃいバッグとか、
そういうふうに使い分けていらっしゃいますか。
- 一田
- そうですね、
仕事ではいつも大きな荷物があるから、リュック。
お出かけするときに小っちゃいバッグです。
それだけに、小っちゃいときは、
とってもうれしいんですよ。
だから、こういうのを持って出かけられるってなったら、
ほんとうに、うれしい!
- 伊藤
- なるほど、なるほど。
- 一田
- なかなかそういう機会が多くはないんですけれど(笑)。
- 伊藤
- でも面白いですね、
一田さんがお仕事ではリュック派になったって。
- 一田
- それまで、リュックは苦手だったんですよ。
便利だろうなと思うから、
アウトドアブランドのものなど、
いろんなリュックを買ってみたんだけれど、
背負うと、なんだか、小学生の遠足みたいになるの。
「大人のリュック」みたいに、どうしてもならない。
- ──
- 着たい洋服と、アウトドアブランドのアイテムの
相性がいまひとつということはありますよね。
- 伊藤
- 確かに!
- 一田
- それが、AMIACALVAのリュックを背負ったら、
それまでアウトドアブランドのものが似合わなかった理由が
やっとわかったんです。
普通のアウトドアブランドのものは、
かなり生地が張っていて、
背負ってもそのかたちがホールドされるんですよ。
だから小学生のランドセルみたいになる。
でもAMIACALVAは、
なんのホールドも入ってないでしょ?
背負うと自然に重さで下に垂れるから、
それでカッコよく見えるんだ、
ということがわかったんです。
あれを背負うようになってからですよ、
「一田さん、めっちゃリュック似合ってますよ」
って言われるようになったのは(笑)。
- ──
- (拍手)
- 伊藤
- 色も関係してるかもしれないですね。白。
- 一田
- 白いリュックって、あんまりないですものね。
周りはネイビーとかグレーが多いので、
白にすると、すごく映えますよね。
でも、カーキのトレンチとかを着たときに
黒を持ちたいと思って、黒も買ったんです。
- 伊藤
- なるほど。
バッグは、そうやって色違いで買うことが
多いんですか?
- 一田
- けっこう多いですね。
バッグに関しては、
使いたいかたちとかサイズっていうもので、
なかなか「これ」っていうのが見つからないから。
リュックの前は、日本から撤退しちゃったんだけれど、
「m0851」(エム・ゼロ・エイト・ファイブ・ワン)
っていう、カナダのモントリオールの
ライフスタイルブランドのバッグを使っていました。
イタリアの一枚革でつくられた、
A4がギリギリ入るぐらいのバッグがあったんですよ。
それを4色、同じかたちで持っていました。
- 伊藤
- なんと! それは1色、まず気に入って、
じわじわ増えていくんですか?
- 一田
- そうなんです。『大人になったら、着たい服』の取材で
それを持っている人と会い、かわいくて、
ひとつ買ったら、すごく小っちゃいんだけれど、
いっぱい入ることがわかったんです。
しかもストラップが太いから肩が痛くならない。
一枚革だから軽くて、持ち始めたら良くて、
次々と色違いを買っていったんです。
- 伊藤
- わたしの「CI-VA」のバッグもそうなんですよ。
「2189 NUVOLA」というショルダーバッグを
全色持っているんです。
- 一田
- ホントですか(笑)!
- 伊藤
- そうなんです。
一田さんがバッグを最初に気に入る
ポイントってなんですか?
モノが入るかな、とか?
- 一田
- そうですね。
やっぱりA4サイズの書類が入らないと、
私の仕事柄、困るので。
取材に出かけるときは見本誌も
できれば持って行きたいし。
- 伊藤
- そうですよね。
- 一田
- ある程度、自分の絶対必需品みたいなものが
全部おさまってくれるかどうか。
そして年を重ねてきてわかったのは、
あんまり重いバッグはいやだなあ、ということです。
- 伊藤
- バッグ自体が重いと、困りますよね。
軽さって大事です。
- 一田
- 若いときは体力があったから、
めっちゃ重いバッグとか持っていましたよね。
- 伊藤
- 服もそうですよね。
あたらしいバッグとは、
どういうところで出会うんですか?
やっぱり取材先で「おっ、いいな」って?
- 一田
- そうですね、素敵な人の真似をして買うんです。
- 伊藤
- わたしはバッグでいうと、ホントに見た目で
いいなって思うかどうか。
- 一田
- デザインってことですね。
- 伊藤
- はい。仕事のときは車で移動するから、
持ちやすさや容量はあまり気にしないんです。
- 一田
- そっか。大きいものはもう別に入れて持つとか?
- 伊藤
- そうですね。カゴにドンとモノを入れて、
あとは小っちゃいバッグを持って。
大きいバッグのときもあるけれど、
中はそんなに入っていないんです。
- 一田
- 中身、スカスカ、みたいな?
- 伊藤
- そうなんです。
- 一田
- 大きいバッグが好き?
- 伊藤
- うーん? 服や靴とのバランスかなぁ。
例えば、先日、前身を黒でまとめたときは、
ちょっと重い印象になるので、
あえて大きなカゴを持ちました。
でも、入ってるのはスマホとハンカチとリップ、
みたいな。
だからホントに見た目優先なんです。
- 一田
- どこで見つけるの?
- 伊藤
- 展示会で、知らなかった海外のメーカーを
知ることも多いですし、
ネットで見つけることもありますよ。
最近、ネットショッピングで
バッグを買うこともあります。
- 一田
- 失敗は恐れず?
- 伊藤
- 先日、大きさを見誤って、
「かわいい」と思ってネットで買ったカゴバッグが、
ほんとうに小っちゃいものだったんです。
それは友達の子どもにあげました。
小っちゃい子が持ってるとかわいいだろうなと思って。
- 一田
- カゴバッグは、どこのものが多いの?
- 伊藤
- カゴバッグは古いものが多いんですけれど、
新しいものは実店舗やネットで探します。
ある時、フランスのマルシェバッグみたいなのを
持ちたいなと思ったんだけれど、
あのマルシェバッグをそのまま持つのは
もう大人としてどうなのかな? と思って、
いろいろ探したら、
持ち手が黒っぽいガッシリした
「HEREU」(ヘリュー)っていうブランドを見つけ、
「これだ!」と。