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わたしたちの変遷
- 小泉
- 私、コーディネートのクレジットを見て
アイテムを探すのが好きなんです。
「weeksdays」でも、
メインで紹介しているアイテムに、
伊藤さんが何を組み合わせているのかが気になって、
リンク先を見たり、調べたりしてます。
- 伊藤
- わぁ、すごい。
- 藤井
- 雑誌のファッションページでも、
スタイリングのアイテムって
気になりますものね。
- 倉持
- 知らないブランドを知ることができると
うれしいですよね。
私だけじゃわからなかった新しい世界だ、って。
- 小泉
- それで知ったアイテムを
「いつか買おう」というリストに入れたり。
- 藤井
- 世の中には目利きのセレクトショップが
たくさんあるわけじゃないですか。
信頼しているショップの方に
コーディネートをしてもらうとか、
そういうことはしてこなかった?
- 伊藤
- そうですよ、それまで、どうしてたの?
- 小泉
- 「ほぼ日」が青山にあった頃は、
徒歩圏内におしゃれなお店がいっぱいあったので、
同僚や先輩にあちこち連れていってもらい、
勧めてもらったり、店員さんに相談してました。
でも、そもそも、自分の方向が定まっていなかった。
- 伊藤
- その時代は「ほぼ日」では
どういうお洋服を扱っていたのかなあ。
- 小泉
- アパレル、というよりも、
メッセージを伝えるもの、という感じで、
プリントのTシャツが多かったですよ。
その延長でロンTやポロシャツを
つくったこともありますし、
パーカを出したこともあります。
でも「ファッション」ではなかった。
- 伊藤
- 自分の年代にフィットするアパレル的なものは、
あんまりなかった?
- 倉持
- ちゃんとしたアパレルを紹介したはじまりは
大橋歩さんの「hobonichi + a.」(エードット)
だと思います。
- 小泉
- 2011年のことでしたね。
大橋さんのつくられる服は、
世代を超えて受け入れられる画期的なものでした。
私もとっても好きで、
当時、たくさんは買えなかったけれど、
よく着ていました。
- 伊藤
- そっか、そっか!
- 小泉
- それからしばらくして、
だんだんとアパレルが増えていって。
2016年にはYAECA(ヤエカ)と組んだLDKWARE
がうまれたり。
- 伊藤
- だんだん、「ほぼ日」にアパレルが
増えていったんですね。
- 小泉
- はい。いま「ほぼ日」には
いろんなアパレルブランドがあって、
どこもちゃんと信頼のおけるものを
紹介していると思います。
そんな中、個人的に
「weeksdays」の好きなところは、
中にいろんなブランドのものがあって、
扱う品目も多くて、見るだけでも楽しいから。
- 藤井
- 「ほぼ日」で小泉さんの昔の写真を見ると、
いまとはちょっと違う感じですよね。
- 小泉
- いろいろ変遷があるんです。
そもそもを言うと、「ほぼ日」に入る前の私は、
いわゆるちょっとコンサバ系の格好をしてたんです。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 小泉
- けれど「ほぼ日」がまるで合宿所だったので、
いくらでも動けるような格好にしようと、
カジュアルなもので一式そろえたんですよ。
デニムとカットソー、みたいな。
それでハチノコの時代とか、
いろいろあったわけなんですけど。
- 伊藤
- ハチノコ?
- 小泉
- 数人しかいない会社に、
お菓子や頂き物がいっぱいあって、
つい食べ過ぎていたら3か月で13キロ太っちゃって、
着ていたボーダーシャツが
まるでハチノコのようにぱっつんぱっつんに‥‥。
そんな私を糸井さんが悲しそうに見て、
「‥‥ストレスかねぇ」って(笑)。
- 伊藤
- いろんな変遷があるんだ!
それで今のような感じのファッションに
落ち着いているのは、
四十代になって身体の変化もありつつ、
仕事の内容が変わったりとか、立場とか、
そういうことも関係しているの?
- 小泉
- いや、そこは関係がないと思います。
正直に言うと、
自分がいちばんステキだな、いいな、
と思っていたスタイルに、
やっと近づいたのが今です。
すごく満足してます。
- 藤井
- ちょっときちんとしなくちゃ、
というような日もあると思うんだけれど、
そういう時でも「weeksdays」で大丈夫?
- 小泉
- ジャケットを着なくちゃいけないとか、
きちんとしたセットアップでなければならない、
というようなことって、
「ほぼ日」の仕事ではほとんどないんですよ。
きちんとしたい時はSAQUIのフォーマルです。
もうほんとうに便利で!
- 伊藤
- そうなんですね。
倉持さんのファッションは、
どういう変遷なんですか。
わたしと同い年で、横浜だから、
ハマトラ時代もあったのかなぁ。
- 倉持
- 私は、もう、いっぱい、
いろんな服を着てきました。
当時の『JJ』を参考にして
ボディコンを着ていたこともあったんですよ。
ジュリアナに行ってるような時代。
- 伊藤
- そんな時代もあったんだ!
- 倉持
- えっ、伊藤さんには
『JJ』時代がなかったんですか。
- 伊藤
- わたしはそこに触れていないの。
- 倉持
- そっか、そこからもう違うんですね!
同じ横浜で同い年でも‥‥。
- 伊藤
- 『JJ』はいくつぐらいのとき?
- 倉持
- 20歳ぐらいだったと思います。
- 伊藤
- その頃、わたしは、
「agnès b.」(アニエスベー)の
カーディガンプレッションに
LEVI’Sの501でした。
- 倉持
- 私、そっちじゃなかったんです。
派手な感じでしたよ、常に。
髪の毛も長くて、バーッてかきあげて、
合コンしまくってるような‥‥。
- 伊藤
- えーっ、そういう話、大好き!
そういうちょっと派手な時代を過ごして、
でも大手の堅い会社に入ったんですよね?
- 倉持
- そうなんです。電機メーカーに。
後半は秘書をしていたので、
おのずとスーツが多くなりました。
その頃はどこで買っていたのかな‥‥、
そうそう、「BARNEYS NEW YORK」
(バーニーズ・ニューヨーク)が好きでした。
- 伊藤
- バーニーズの製品は、安心ですよね。
- 倉持
- そう、まさしく、そこで買えば安心で。
ほかにも「ESTNATION」(エストネーション)とか、
信頼のおける大きなセレクトショップに
行っていたんですが、価格はとても高くて、
全身を揃えようと思ったら、
とんでもない金額になっちゃうんです。
だからちょっとずつしか買えなかった。
しかも、好きで着ていたわけではないので、
「私、この路線でずっと行くのかな?」
って疑問に思いながらも、周りもそうだし、
「社会人ってお金がかかるんだなぁ」
って過ごしていました。
「ほぼ日」に入ってその世界から抜け、
カジュアルでもオッケーな場所に来たんですが、
まだ「weeksdays」はなかったんです。
流行りに関係のないものを
- 伊藤
- ふだんのお買い物の話も聞かせてください。
この秋にむけて買ったお洋服、
もしくは今、狙ってるものってありますか?
- 小泉
- それが‥‥ひどい暑さが続いていたから、
私、秋の服のこと、
なんにも考えられなかったんです。
- 伊藤
- そうですよね、わかります。
- 小泉
- でも今、伊藤さんに訊かれて、
一気に秋の気分が入ってきました!
- 伊藤
- よかった(笑)。ふだんの服は、
決まったお店で買うことが多いですか。
- 小泉
- 街に買い物に行くっていうことが
すごく減ったかもしれません。
だって「ほぼ日」でばっかり
買い物をしてるんですよ。
それも「weeksdays」が多いんです。
- 伊藤
- ほんとに? 嬉しい!
- 倉持
- 私もそうなんです。
あんまりお店に行っていない。
- 小泉
- 今日、この座談会で
ぜひ言おうと思っていたんです。
私のコーディネート、週の3分の2は
「weeksdays」のアイテムで回してます。
伊藤さんに、どれだけ助けられていることか。
- 伊藤
- えっ? そんなに?
- 小泉
- 「weeksdays」を着るようになったら、
夫から「なんだか洗練されたね」って言われたんですよ。
そんなこと、なかなか言う人じゃないんです。
あきらかに「weeksdays」は
私の洋服に関する悩みを解決してくれました。
- 伊藤
- 悩みって、例えばどういうこと?
- 小泉
- 40歳になった頃、
それまで似合っていたはずのものが、
突然、似合わなくなったと感じたんです。
それまではテロっとした薄い素材のものや、
古着だって平気で着ていたのに、
鏡を見て「あれ?」って思うようになって。
ひょっとして今の自分が必要としているものは、
ちゃんとした生地で、形も整っていて、
体型を上手に隠してくれる服じゃないかなぁ‥‥と。
そんなときに「weeksdays」が始まったんです。
- 伊藤
- そうなんですね。
年齢とともに肌の質感や体型って
変化していくんですが、
それってダイエットをすれば済む、
ということじゃないんですよ。
- 小泉
- そうなんです。体重とは別。
とくに気になってきたのはお腹まわりや二の腕、
肘のあたりで、そこをじょうずに隠したいな、
って思うようになりました。
その点、伊藤さんがセレクトされるものって、
配慮が行き届いているんですよ。
- 伊藤
- それは、自分が必要としているからなんです。
スッキリ見せたいんですよね。
- 小泉
- そこが私たちに響くんですよね。
しかもエレガントなんだけれど、
甘すぎないし、カッコよさもあって、
「ちょっとだけ女性らしさをプラスしたいし、
でもシャープでもいたい」という気分にぴったりで、
「これからはweeksdaysを着よう!」
って決めたんです。
その時からワードローブががらりと変わりました。
- 伊藤
- ありがとうございます。
- 倉持
- 「weeksdays」の服って、
以前買ったものでも、最近買ったばかり、
みたいな気がするんですよ。
そこも好きなところです。
- 小泉
- そう! よく考えたら
もう4、5年前? っていう服も、
今の気分にちゃんと合って、着られますよね。
普通だったら4、5年着ていたら
ちょっとヘタったり、
古びて見えちゃったり、自分も飽きたり、
なにか変化があるはずなんですけど、
「weeksdays」のものって流行りに関係なく、
「いいものはいい」というか。
- 倉持
- 私、正直、流行りというものが
わからなくなってきています。
若い子と同じものを
目指してもしょうがないし、って。
- 伊藤
- だんだん、
流行を追うことに疲れてきますよね。
- 小泉
- たしかに若い人にはある「流行り」が、
年齢を重ねてくると、なくなりますよね。
そもそも今って「流行り」はあるのかな?
- 倉持
- 「傾向」みたいな感じなら、
なんとなく、あるかも。
こういうのを着てる人が多いな、
っていう感じ。
藤井さんもそう?
- 藤井
- 流行りはほとんど気にしなくなりましたよね。
そして私も気がついたら足の先から頭の先まで
「weeksdays」っていう日があります。
- 倉持
- 流行りを追うのとは別に、
「weeksdays」は私の指針になってますよ。
今これを着ればいいんだ、って。
- 小泉
- そうなんです。
以前は自分で選んで買った服を
好きで選んで着ていたはずなのに、
違和感を感じたりして、
どこか自信が持てなかった。
でも「weeksdays」は、
伊藤さんが選んだというところで、
もうオーディションが終わっているんです。
そこから探すわけなので、
「これで大丈夫なのかな?」
という心配をしなくていいんです。
- 倉持
- ほんとにそうです。
自信を持ってこれで正解! って思える。
何を合わせても大丈夫、という安心感
- 伊藤
- 「ほぼ日」のなかでも
「weeksdays」の服をよく着てくださっている
小泉さん、倉持さんに
消費者の視点からいろいろお話を伺いたくて、
集まっていただきました。
どうぞよろしくお願いします。
「weeksdays」の担当でもある
藤井さんにも参加してもらって。
- 小泉
- 呼んでいただいて光栄です。
よろしくお願いします。
- 倉持
- どうぞよろしくお願いします。
- 藤井
- よろしくお願いします。
- 倉持
- (ラックに掛かっている
Honneteのワンピースとシャツを見て)
もう私、これはもう‥‥。
- 小泉
- これは絶対!
- 倉持
- もうすでに持っているもののような気すらします。
- 伊藤
- ふたりともワンピースがお好きですよね。
それぞれ好みがあると思うんですが、
これはいかがですか?
- 倉持
- とても新鮮。
こんなふうに生地に
ニュアンスがあるワンピースって、
あんまり見たことがなかったです。
素材は‥‥。
- 伊藤
- 高密度コットンなんです。
- 倉持
- あ、さわると、柔らかい。
- 藤井
- 着てみたときの感覚がすごくいいんです。
シワも気にしなくていいんですよ。
- 倉持
- そこ、大事ですよね、
- 小泉
- 私、着てみてもいいですか。
グレーがいいかな‥‥。
ちょっと丈が長いかな?
詰めなくてもいいですか?
- 伊藤
- かわいい。大丈夫です。
丈が長めなのがいいんですよ。
- 倉持
- グレー、かわいい!
あやさん、すでに着ていそう。
袖がたっぷりしているのも、いいですね。
- 小泉
- ほんと? ほんと?
- 倉持
- 袖はまくってもいいくらいの感じ?
- 伊藤
- そのままでもいいし、
クシュッとさせるのもいいかも。
- 倉持
- 私、このVのかたちが好きです。
- 伊藤
- うん、似合う。
- 小泉
- めっちゃいい。どうしよう、
ブラウンも着てみます。
‥‥あっ。これも新鮮。
- 倉持
- ブラウン、とくに新鮮ですね。
すごく秋色。
- 伊藤
- ワンピースって、ほかのコーディネートを
考えなくてもいいから、ラクですよね。
- 小泉
- そうなんです。
足元だけ考えればいいから。
- 伊藤
- このワンピースなら、何を合わせても大丈夫。
ブーティやショートブーツ、
もちろんスニーカーも、
フラットシューズもいいし。
- 倉持
- 首の抜け感も、よさそう。
しかも、ワンピースだけじゃなくて、
シャツもいっしょに展開するんですね。
- 伊藤
- そうなんです。
シャツもかわいいんです。
- 小泉
- 伊藤さんはふだん、
衿無し、そして襟ぐりが開いている服が多い印象ですが、
こういうシャツも選ばれるんですね。
- 伊藤
- 前を開けて着るとカッコいいなって。
小泉さんも倉持さんも
シャツを着る印象があまりないけれど、
これだったら似合うと思うな。
ぜひ羽織ってみてください。
- 倉持
- はい。‥‥あ、こんなに
たっぷりしたサイズ感なんですね。
- 小泉
- かわいい。ステキ。
- 倉持
- あやさん、前ボタンをきっちりしめれば、
お子さんの学校行事にも着て行けますよ。
- 小泉
- ほんと? 前を開けて
カジュアルっぽくも着られるし。
- 倉持
- 開けるとしたら、
どれぐらい開けるものですか?
- 伊藤
- ボタンを2つくらい外して
すこしうしろに落として、
ラフに着るといいですよ。
- 倉持
- 立ち襟ってすごく新鮮。
- 伊藤
- このシャツ、前身ごろにも、後ろ身ごろにも、
たっぷりとギャザーがあるでしょう?
だから第一ボタンを留めて、
きちんと着ても
クールになりすぎない。
- 小泉
- ほんとだ! めっちゃかわいい。
- 倉持
- 袖をまくりたいときは、
ワンピースと同じように、
きちんと折らずに、くしゅくしゅっと?
- 伊藤
- そうそう。
- 小泉
- そっか、それも、立体感。
ああ、シャツもいいしワンピースもいいし‥‥
迷っちゃいますね。
- 伊藤
- どちらもおすすめなんです。
ようやく秋
「あ。今、季節が変わったな」
と感じる瞬間があるものです。
秋から冬は、
鼻の頭を冷たい風が撫でた時。
冬から春は、
日向と黄色い花のにおいがただよってきた時。
春から夏は、
素足が無性に恋しくなった時。
夏から秋に変わったのは、
ちょうど昨日の夕時。
今日の晩は、
あったかいもの食べたいなぁ。
お腹にじんわりくるものを。
なんて思ったのでした。
ようやく秋。
とうとう秋。
やっと秋がやってきました。
今週のweeksdaysは、
秋色の服。
一枚着れば、おしゃれが決まる。
Honnete のワンピースとブラウスをご紹介します。
コンテンツは、
秋のおしゃれ座談会。
久しぶりメンバーとのおしゃべり、
たのしかったな。
ジョガーパンツをエレガントに
- 伊藤
- 今回、初めてご紹介するテーパードジョガーパンツは、
わたしがSAQUIの展示会で見て、「いいな!」って。
- ──
- ジョガーというのは
ジョギングをする人のことですよね。
だからジョガーパンツというと
裾にゴムやリブがついている
スポーティなものを想像するんですが、
SAQUIのテーパードジョガーパンツは
とてもエレガントです。
- 岸山
- ジョガーパンツは、
もともとはスポーツ用のものだったのが、
ストリートファッションに取り入れられ、
いまはもっと広く、おしゃれ着のデザインとして
知られるようになりましたね。
私はこれを、きれいめだけど、ちょっとラフで、
すこし“外した”感じを目指して、
テーパードリボンパンツと同じ
Faliero Sarti(ファリエロ サルティ)の
バックサテンジョーゼット生地でつくろうと思ったんです。
このパンツ、先日初挑戦した
パリコレクションでお披露目した新作なんですよ。
- ──
- パリコレクション、
2024秋冬に参加なさったんですよね。
ランウェイのようすを
ウェブサイトで拝見しました。
- 岸山
- そうなんです。はじめてのパリコレでした。
そのデザインを考えるとき、
今までのSAQUIの延長でやりたいと思ったんです。
それを崩してまで
新しいものをつくろうとは思わなかったですし、
ランウェイでモデルさんに着てもらうのは、
じっさいに販売をするもので構成しようと思いました。
だとしたらお客さまがご愛用くださっている
テーパードリボンパンツをちょっとアレンジしようかなと。
それで、形を変えてカッコよく見せたいと、
ジョガーパンツに挑戦したんですよ。
- 伊藤
- 一般的なジョガーパンツでリブにあたる部分を、
SAQUIでは、Faliero Sartiの共布を使って
カフスで表現なさっているんですよね。
- 岸山
- はい、共布のカフスです。
リブはつけたくなかったんですよ、
急にカジュアルになっちゃうから。
そもそも、この生地に合うリブって、ないんですよ。
- 伊藤
- そうですよね、わかります。ないと思う。
- 岸山
- このFailure Sartiの黒は特別なので、
他素材との色合わせがとても難しいんです。
たとえばカフス部分を
シルクでつくったとしても、無理だと思う。
そして中にゴムを入れるのも違う、となり、
きれいに見せるにはどうしたらいいかを考え、
共布でカフスをつくり、
フラシ芯(*)を入れることにしたんです。
(*)芯地が必要な部分表地の布と接着させないことで、
生地の風合いをいかし、高級感を出す手法。
シャツの衿やカフスに用いられることが多い。
- 伊藤
- なるほど、だから柔らかさが出ているんですね。
- 岸山
- そうそう、柔らかいし、
接着芯にするとペタッとしちゃうんです。
これっていわゆる“高級仕立て”なんですが、
普通に手洗いをしていただければ、
お洗濯で崩れることもありません。
- 伊藤
- うん、うん。
- 岸山
- あと、パタンナーさんとかなり細かく詰めたのが、
裾のカフスの細さをどう出すか、でした。
ジョガーパンツって、キューッと足元を
細身にしたくなるじゃないですか。
- 伊藤
- たしかに一般的なジョガーパンツって、
リブが細くて長い印象がありますね。
- 岸山
- そうなんです。
でもそれをめざすと、ゴムを入れるか、
リブをつけるかしかなくて。
- 伊藤
- ボタンでもないし‥‥。
- 岸山
- そうなんです。
だから足の甲が無理なく入る幅で、
いちばんきれいに見えるように
幅と長さを考えました。
- 伊藤
- SAQUIが長く展開してきた
Faliero Sartiの生地を使うのって、
とても素敵なことだと思います。
いちど経験した人はこのよさを知っているし、
デザインが新しいから、さらに多くの人に
受け入れてもらえそうだなと思います。
- ──
- 今までのテーパードリボンパンツと比べて、
このテーパードジョガーパンツは
丈が長くなっているんですよね。
- 岸山
- はい。テーパードリボンパンツの
ロングよりも長いんです。
足首がタプッとするのがいいなと、
ちょっと長めにしているんです。
- 伊藤
- でも156センチのわたしが穿いても大丈夫なんですよ。
裾のたぷっとした感じがよくて。
- ──
- 靴も目立つので、
コーディネートのたのしみがありそうですね。
- 岸山
- 今回のコーディネートでは、
ちょっと甲が見えるように、ソックスを履かず、
フラットシューズを合わせました。
もちろんバレエシューズもすごく合いますし、
スニーカーでもいいですし。
- 伊藤
- ブーティーも似合いますよ、きっと。
- 岸山
- ブーティーなら、
裾をちょっとかぶせてもいいですよね。
それからヒールにもよく合います。
weeksdaysのお客さまって、
あんまりヒールのイメージが
ないかもしれませんが‥‥。
- 伊藤
- でも、ヒールを履くときには、
このテーパードジョガーパンツを合わせてみてほしいな。
甲が立って、また違うシルエットが楽しめそう。
- 岸山
- そうですね。
そして上は、コートを合わせてみました。
みなさん、トレンチなど、
ロングコートをお持ちでしょうから、
ぜひこんなふうに着てもらえたらと思って。
コートの裾からカフスが見える感じが、
とてもかわいいなと思うんです。
ちょっとリラックス感があって、
大人の印象がうまれますよね。
- 伊藤
- 白いシャツにも似合いそう。
- 岸山
- 似合います!
このパンツはシチュエーションを問いませんよね。
それから、いいところをもうひとつ。
足首があったかいんです。
だから秋冬におすすめですよ。
真冬だったら下にタイツを穿いて。
- 伊藤
- なるほど!
長く着ていただけそうですね。
テーパードリボンパンツ、そのロング、
そしてテーパードジョガーパンツ、
Faliero Sartiの生地を使った
SAQUIのパンツのラインナップが充実して、
わたしもとてもうれしいです。
岸山さん、ありがとうございました。
また次のシーズンがたのしみです。
- 岸山
- ありがとうございます!
テーパードリボンパンツにロングができました
- 伊藤
- 今回、SAQUIの新作として
テーパードリボンパンツのロングと
テーパードジョガーパンツを
ご紹介することになりました。まず、ロングのほうなんですけれど、
オリジナルのテーパードリボンパンツが穿きたいけれど、
ちょっと短いな、というかたがいらっしゃることから、
「ロング丈があったらいいな」
と、岸山さんに相談したんです。
そうしたら、じつは、お客さまからも
そういうリクエストがあるのだとおっしゃって。
- 岸山
- はい。SAQUIのパンツは、サイズが小さくなると、
丈も少しずつ短くなっていくんです。
なので長身の細いかたがウエストに合わせて
34とか36サイズを選ぶと、
丈が短くなってしまうことがあるんですね。
なら40サイズにすればいいのかというと、
こんどは全体の印象が変わってしまう。
そういうお客さまには、個別に、
ウエストは細めのまま丈は長め、というように、
セミオーダーを受けていたんです。
- 伊藤
- 156センチのわたしが穿くぶんには、
オリジナルサイズがちょうどいいんですが、
モデル撮影のとき、コーディネートによっては、
「もうちょっとだけ長いバージョンが
あってもいいんじゃないかな?」
って思ったりもしましたね。
- 岸山
- モデルさん、小柄でも脚が長いかたが多いですものね。
そういうときは、腰でちょっと落としたりして。
- 伊藤
- そうそう。
だからお客さまの立場からすると、
穿きたいのに、丈の都合で穿けない、
っていうかたがいるんじゃないかと思って。
- ──
- ということは、今回のロングは、逆に、
伊藤さんにはすこし長いんでしょうか。
- 岸山
- いえ、それが、大丈夫なんです。
靴とのバランスなんですよ。
オリジナルの丈だと足首や靴下が見えて
軽快な感じになるんですけれど、
ロングは、丈がちょっと長くなることで、
シックというか、“こなれた”感じが出るんです。
- 伊藤
- SAQUIのパタンナーの結城奈美さんが、
靴によってパンツの丈を変えるとおっしゃっていて、
「なるほど!」と思いました。
つまり靴で調整すればいいんですよね。
- 岸山
- 各サイズ3センチ、丈を長くしているんですけれど、
164センチのかたに試着してもらったら、
裾にワンクッションのゆとりができました。
それを見たときに、
この穿きかた、すごくいいなって思ったんです。
- 伊藤
- オリジナルではちょっと短いな、
というかたはもちろんのこと。
オリジナルの丈の軽快さがいいなと思いつつ、
ちょっとエレガントにも着たい、
と思っているかたにも、
ぜひ穿いていただきたいと思うんです。
基本は同デザインの2本目のパンツとして、
丈の長さが違うものを持っていても
いいんじゃないかなって。
これって、長くしたことで
パターンも変えたんですよね。
- 岸山
- はい。裾に向かって細くなっているので、
そのまま延長すると足首が細すぎてしまいます。
なので膝から下のパターンを微調整し、
裾口の幅は同じで、自然に感じられるように
修正しているんです。
- ──
- 同じに見えても、パターン、じつは違うんですね。
- ──
- 今回のこのコンテンツのコーディネートは
岸山さんにご担当いただきましたが、
ポイントを教えていただけますか。
- 岸山
- パンツの丈が長いとエレガントな印象になりますから、
黒いジャケットを合わせて、シックにまとめました。
シューズはあえてスニーカーで、“外して”います。
足首部分が隠れるかどうか、くらいの丈感が
カッコいいなって思って。
- 伊藤
- とてもよかったですよ。
- 岸山
- もしちょっとフォーマルな場所に行くのなら、
靴を替えてもいいと思いますよ。
ヒールでもいいし、ローファーでもカッコいい。
レースアップシューズもいいですよね。
- 伊藤
- なるほど。
- 岸山
- そしてオリジナルの丈のほうは、
あえて足を見せたくて、パンプスにして、
レースのタイツを履いてもらいました。
ちょっと短いからこそ、
あえて足の甲や足首を見せようって。
- 伊藤
- そのかわいさ、ありますよね。
- 岸山
- トップスはちょっとフェミニンなブラウス。
軽快な印象の丈感ですけれど、全身が黒なので、
シックでおしゃれな感じになっています。
- 伊藤
- これならちょっとしたレストランにも行けますね。
丈違いは違う服
SAQUIのテーパードリボンパンツを買い足すという友人。
もう何本も持っているはずなのになぜ?
と尋ねたところ、
こんな答えが返ってきました。
「今までのももちろん穿くけれど、
大人だから、きれいなものを
一本持っておきたいなと思って」
なるほど。
仕事の時と、「ここぞ」というシーンとで、
穿き分けるのだとか。
「色違いは違う服」は、私の持論なのですが、
よく穿いているパンツと、
新品に近いパンツはまた「違う服」なのだなぁ。
weeksdaysの定番中の定番、
SAQUIのテーパードリボンパンツ。
私も何本も持っているアイテムですが、
靴やトップスとのバランスで、
ちょっと長めが欲しいな、
そう思うことが何度かありました。
そこで岸山さんにお願いして作ってもらったのが、
今回の新・テーパードリボンパンツ。
「丈違いは違う服」なのです。
新たに、秋冬の中からえらんだ
テーパードジョガーパンツもご紹介。
これもまた、すごくいいんですよ。
コンテンツは岸山さんに、
新しいパンツについていろいろとうかがいました。
どうぞおたのしみに。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
9月19日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
SAQUI
フレアワンピース
一枚でさらりと着られて、
様になる服って意外に少ないものです。
きちんと見えながら、
でも着心地は窮屈じゃない。
かつシワにもならず‥‥と
「いいところ」をあげるとキリがない
(けして大げさではなく)のが、
SAQUIのこのフレアワンピース。
ウエストの切り替えがデザインのポイントになっていて、
エレガント。
袖丈やスカート丈もほどよく、
一枚持っていると、何かと役に立ってくれそうです。
卒業や入学、
ちょっとあらたまった集まり、
またお別れのシーンにも。
デザイナーの岸山さんのお話もぜひ参考にしてくださいね。
(伊藤まさこさん)
オックスタックパンツ、こんなコーディネートで 02 岡本敬子さん
岡本敬子さんのプロフィール
おかもと・けいこ
服飾ディレクター。
文化服装学院スタイリスト科卒業後、
スタイリストオフィスを経て、
大手アパレル会社のPR部門で
国内外のブランドのプレスを担当。
2008年に独立し、ファッションブランドの
ものづくりからPR、店舗の計画など、
「おしゃれ」に関する幅広い仕事に携わる。
2011年に立ち上げたブランド「KO」は、
流行は追わないけれどスタイリッシュでいたい、
人と同じものはつまらない、エイジレスでいたい、
というひとたちに向け“旅のMIXスタイル”をテーマに、
ジュエリー、革小物、アイウェアなどを展開。
オーガニックコットンの
nanadecor(ナナデェコール)では、
KO by nanadecor という、岡本さんのラインをもち、
2017年からは東京・千駄ヶ谷の「Pili」というお店の
ディレクションも担当。
編集者の夫・岡本仁さんとの共著に、ブログを書籍化した
『今日の買い物。』
『続・今日の買い物。』が。
現在は発信のベースをインスタグラムにうつし、
おおぜいのフォロワーの支持を集める。
著書に『好きな服を自由に着る』
『好きな場所へ自由に行きたい』
『私の定番』
(いずれも光文社)などがある。
「weeksdays」では
座談会「Le pivotの定番服のつくり方」
「わたしたちの好きなちいさなもの」などに登場。
長年ファッションに関わる仕事をしていることもあって
持っている服の数はそれなりに多い方だと思います。
でも年齢を重ねてくると
「バリエーションがそれほど無くてもよいのでは?」
という気持ちになってきて
少しずつ自分のワードローブも
変化しているような気がします。
具体的には、本当に着心地がよくて
気に入ったアイテムを色違いで揃えること。
Le pivotのオックスタックパンツも
そんなアイテムのひとつです。
あまりにも好きすぎて
6本も持っていることに笑われることも。
でも実は、恥ずかしながら
この夏の新色もすでに手に入れたので
とうとう合計7本になりました。
1週間毎日違う色を穿けちゃいますね(笑)。
これだけ持っているタックパンツについて
好きな理由をあげるとすれば、
素材はオックス生地で張りはあるけど柔らかく
ドライタッチで肌にまとわりつくことがないのがよいこと。
ウエストのタック部分が
気になるお腹周りをカバーしてくれるし
ワイドシルエットにありがちな重さがなく
シルエットがスッとしていて綺麗なので
小柄でもスッキリと穿けること。
そして、生地が丈夫なので
家で洗濯できるイージーケアだというのが
なによりもうれしいんです。
そんなタックパンツに惚れ込んだ私の
ある日のスタイリングをご紹介します。
まずはターコイズカラーのオックスタックパンツ。
美しくて上品なターコイズカラーは好きな色のひとつ。
白やネイビーと合わせるのももちろん素敵ですが
この日はスカイブルーの
シルクのフェミニンなブラウスと合わせて
ブルーのグラデーションと
ブルーと相性抜群のキャメルの小物で
スタイリングしました。
つぎにチャコールグレーのオックスタックパンツ。
メンズライクでハンサムカラーのチャコールグレーには
レディな要素を入れたかったので
リブニットとメリージェーンシューズに
それぞれ赤を差し色に。
ジャケットはダークなカラーではなく
ベージュカラーにすることで軽やかに。
差し色の赤が効いてくるスタイリングです。
そして、アイボリーのオックスタックパンツ。
どんなスタイルにも合わせられそうな
便利なカラーということもあり
私が穿いているのを見た友人たちも
こぞって購入してくれました。
冬はオフホワイトのタートルニットに合わせ
ワントーンスタイリングをしていましたが
まだ暑さの残る今の時期は
シアーなレモンイエローの
少しだけオーバーシルエットのトップスに
バッグは竹カゴを。
柔らかいイメージのシアーなアイテムには
クールなタックパンツで
メリハリあるスタイリングが出来上がりました。
同じ形のパンツでも、差し色や小物ひとつで
スタイリングが自由自在に変化できる楽しみがあります。
年齢問わず小柄な方や大柄な方にも
なぜかフィットするこの脚長効果抜群である
(マジックパンツだと個人的には思っている)
オックスタックパンツに
ぜひみなさんチャレンジして頂きたいなぁと思っています。
オックスタックパンツ、こんなコーディネートで 01 伊藤まさこ
クローゼットの中にあるLe pivotのタックパンツ、
1枚2枚‥‥と数えていったら、
なんと7枚もありました。
最初に買ったのは、
今回weeksdaysでも販売するターコイズ。
私が今まで穿いてきたパンツと比べると、
シルエットはかなりワイド。
身長156センチとそう高くはないので、
当初、大丈夫かしら‥‥と思っていたけれど、
そんな心配は杞憂でした。
サイズ感も丈もぴったり。
タックが取られているので、
腰まわりがゆったりしていて、穿いていて楽。
なのに「きちんと」見える。
シャツや薄手のニットをインしても、
すっきり見える、という素晴らしいパンツ。
トップスは、
Tシャツ、ニット、シャツ‥‥となんでも。
ジャストサイズのニットや
Tシャツとの相性は言わずもがな、なのですが、
オーバーシルエットのジャケットを合わせると、
新鮮なシルエットに。
これも合う!
あれ、これもいける。
‥‥と、なんだかコーディネートが楽しくなって、
いろいろと合わせたのですが、
友人たちから好評だったのが、
少しフォーマルなジャケットとのコーディネート。
インナーはジャケットと同色の黒にし、
靴はぺたんこのバッグストラップ(写真下左)、
黒のかごバッグを持つ、
というスタイルに何度助けられたことか。
(今回販売する、どの色のパンツとも相性よし、でした。)
合わせる靴はヒールのあるものから、
ぺたんこのもの、
スニーカー、真夏はビーサン(!)も。
もう少し涼しくなってきたら、
薄手のニットにジャケット、
冬が近づいてきたら、ざっくりしたタートルニットに、
バレエシューズを合わせてもいいなぁ。
タックパンツを前に、
夢は膨らむばかり。
やっぱり秋っておしゃれしたい気分になりますね。
それ、どこのですか?
外国を旅すると、
いつもより見知らぬ人と話す機会が多くなる。
たとえばパリの街角。
信号待ちをしている隣のマダムから、
「あなたのコートすてきね。似合ってる」
なんて褒められたり、
ニューヨークのスーパーのレジ係の人に、
「そのワンピースすてき! どこのブランド?」
と、はじけんばかりの笑顔で尋ねられたり。
だからこちらもうれしくなって、
ありがとう! とか、
タグを見せて、このブランド、チェックしてみて。
なんて言ったりする。
こんなやりとり、
日本でももっと頻繁にあったらいいなと思って、
私はどんどん話しかけちゃう。
エレベーターで乗り合わせた人、
蕎麦屋で隣りに座った人‥‥。
その時その場所を一緒にいたという、
(勝手な)連帯感がそうさせるのかもしれないなぁ。
このパンツを穿いていると、
「それ、どこのですか?」
と尋ねられることが多いんです。
おおー! シャイな日本人もつい声に出して、
尋ねたくなるパンツなのだな。
もちろん、答えますとも。
元気よく、Le pivot のです! ってね。
今週のweeksdaysは、
一本買うと、色違いで欲しくなっちゃう、
Le pivot のオックスタックパンツ。
3色展開ですよ。
どうぞおたのしみに。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
9月12日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Le pivot
バックサテンベイカーラフパンツ
若い頃に着ていたカーキ色の古着のパンツ。
それが妙に気になり始めたのが去年あたりから。
とはいえ、気合いで穿き倒すおしゃれ心、今はないんです。
欲しいのは、
手強い服より、やさしい服。
そして今の自分に似合うもの。
そんな時に見つけたのが、
Le pivot のバックサテンベイカーラフパンツ。
一見、ハード?
でもよくよく見ると、すごーくシンプル。
シンプルだから、華奢なヒールだって似合っちゃう。
バレエシューズやスニーカー、
真夏はビーサンもよさそうです。
バッグ部分がゴムになっているからベルト要らず。
股上の深さや腰まわりのゆとりも絶妙。
そしてなによりすごいのは、柔らかい履き心地。
ごわっとした素材に見えるでしょう?
でも、すごーくやさしいんです。
素材や形など、デザイナーの小林さんにうかがった
コンテンツと合わせてどうぞ。
今回、weeksdaysのために、
通常サイズに加え、
丈を4センチ短くしたものも作っていただきました。
身長156センチの私が穿くとほどよい丈なんです。
色はオリーブとブラックの2色ですよ。
(伊藤まさこさん)
撮る、見る、選ぶ
- 伊藤
- ご自分で、何を撮るのが好き、とかありますか。
気がつくと、こういうものが多いなあ、とか。
- Kanoco
- 以前は「光」でした。
光の入ったお部屋とか、
太陽が差し込んでいる、
ちょっとキラッとした様子が好きだったんです。
それをフィルムで撮っていたんですよ。
- 伊藤
- カメラを持ち歩いて?
- Kanoco
- 2台持ちで肩からさげて。
- 伊藤
- そうなんだ!
2台は、ちがうカメラなんですか。
- Kanoco
- はい、マニュアルカメラだったり、オートだったり。
別々のレンズをつけていたので、
写りも違うんですよ。
でも長男が生まれてからは、
重い荷物をできるだけ減らしたいと、
フィルムカメラを持つ機会が
すっかり減っちゃいました。
今はスマートフォンで子どもたちを撮ることが
うんと増えました。
- 伊藤
- フィルムカメラの時は、
あんまり人は‥‥?
- Kanoco
- 人はあんまり撮っていなかったですね。
- 伊藤
- 撮る行為が好き?
それとも撮ったものを眺めるのが好き?
- Kanoco
- 撮ったものを眺めるのが好きです。
- 伊藤
- それが何かの形になったりとか。
- Kanoco
- 『SPRiNG』という雑誌で
「カノコの観る世界」という連載や
『OZmagazine』という雑誌で
「Kanocoのハローアゲイン」という
写真の連載をしたこともあります。
もともと「何を撮ろうかなあ」って
気にしながら歩くのが好きでした。
そういうひとりの時間っていうのが
すごく好きなんです。でも今はもう
「晩御飯何にしよう?!」と考えながら
歩いてるものですから‥‥。
もうちょっと経って、
再開できたらいいなって思うんですけど、
- 伊藤
- なるほど! 写真を撮るのって
ちょっと心の余裕がないと
できないことなのかもしれないですね。
- Kanoco
- そうなんです、できないです。
- 伊藤
- 時間があって写真を撮る気分のときって
景色も違って見えませんか。
何気ないものが目に入ってくる。
わたし、春にマンホールや
塀のすき間から出てくる緑が
すごく好きで、写真におさめるんです。
でも、もしカメラがなかったら
見過ごしてたかもしれないって思います。
- Kanoco
- わかります。
フィルムカメラを持ち歩いていた時は、
(両手で横長の長方形をつくって)
こういう縦横比でいろんな場所を見ていた気がします。
- 伊藤
- わかる! それはちょっと職業柄もあるのかも。
たぶんKanocoさんの場合はその中に
どう自分が収まるか、
わたしの場合はどうモノを配置するかを
考えているんですよ。
- Kanoco
- うん、きっと、そうですね。
- 伊藤
- 横長の長方形を意識するというのは、
スマートフォンの今も?
- Kanoco
- そうですね、考えています。
伊藤さんは正方形ですよね。
- 伊藤
- わたし、ずいぶん昔、
インターネットのない頃でしたけれど、
パリに行って撮ったフィルム写真の紙焼きを、
正方形に切って、アルバムに並べていたんですよ。
写真は正方形の方が収まりがいいなあ、
って思うことがあって。
- Kanoco
- へえー。
- 伊藤
- 今はInstagramもあるので、
もう、完全に、正方形で考えています。
weeksdaysの写真もそうですし、
目が正方形を意識している感じです。
日めくりカレンダーは、
サイズと写真の入れ方を考えるときに
「ポラロイド写真のように」って思ったんですよ。
- Kanoco
- そっか、ポラロイド写真も正方形ですね。
- ──
- サイズや余白もポラロイドフィルムと同じなんです。
- Kanoco
- 私、Instagramも頑なに
ずっとフィルムサイズの縦横比で
載せ続けているんです。
横向きの、長方形。
- 伊藤
- あ、なるほど、なるほど。
フィルム写真の名残なんですね!
- Kanoco
- 手間なんですけどね。
Instagramって長方形の写真をそのまま載せると
一覧のサムネイルがすべて正方形で表示されてしまう。
そこも長方形にしたいので、
あえて余白をつくって、データとしては正方形で、
白枠の中に長方形の写真が入るように
加工をしているんですよ。
- 伊藤
- そっか!
長方形と正方形ということで、
わたしたち、それぞれ見る目が違うのかもしれないですね。
とても面白いです。
だからいろんな人の日めくりカレンダーが
あったらいいなって思うんですよ。
もしKanocoさんが
日めくりカレンダーをつくるとしたら
どういう構成にするんだろう?
- Kanoco
- 伊藤さんが、季節を感じさせながら、
同じようなテーマの写真は連続しないようにと
おっしゃっていたのと逆に、
私は同じような写真を
続けて載せるかもしれないです。
- 伊藤
- そっか、なるほど!
この週はずっとこのテーマ、
みたいな構成、面白いかも!
- Kanoco
- 白いものだけ続けるとか、
しばらく黒いものだけ載せるとか。
ルール好きの、ルーティーン人間なんです。
決めたがり、ですね。
「継続の鬼」なんです、私。
- 伊藤
- わたし、ノールール人間。無継続の鬼。ふふふ。
- Kanoco
- でもルーティーン人間になったのは
自分がその方が楽だからなんです。
そうすれば考えなくてもいい、というか。
出産してからは特にそうですね。
「この時間にはご飯」「この時間にお風呂」と
決める方が動きやすいので、
自分が楽になるためにそうしてる気がします。
- 伊藤
- それをクリアしたときの喜びとかもあるんですか。
- Kanoco
- クリアをすることがあたりまえなので、
イレギュラーにめちゃくちゃ弱いんです。
「あああ、どうしよう」ってなっちゃいます。
でも仕事に影響することはなくって、
自分の中で完結できる範囲で、ですね。
- 伊藤
- 撮影のときとっても落ち着いているKanocoさんを見て、
すごいなあ、プロだなあって感じてました。
まったくあたふたしないで、
わたしたちが思ってる以上の表現をしてくださった。
すごかったです。
- Kanoco
- ありがたや!
撮影は別なんです、まったくあたふたしない。
- 伊藤
- ものづくりをしていく上ではどうですか。
思い掛けないトラブルがあったりしますよね。
そのときはあたふたする?
しなさそうな感じが‥‥。
- Kanoco
- そうですね。ものづくりでは、
あたふたしないですね。
- 伊藤
- どんなときにあたふたするんだろう。
- Kanoco
- 完全にプライベートのときです。
- 伊藤
- 子育てでどんなにあたふたしていても
仕事に来ちゃえばもう大丈夫、みたいな?
- Kanoco
- そうですね。
- 伊藤
- 撮影の時に話していたんですけれど、
プラムを食べた次の日の写真がプラムだったりして、
お子さんと喜んでくださったとか。
- Kanoco
- そう、まさしく! っていうタイミングでした。
ヤングコーンを息子に出した次の日の写真に
ヤングコーンが出てきた! とか。
そんなふうに喜んでいるので、
子どもも楽しいらしいんですよ、
だから「今日のカレンダーなに?」って
言ってくれるようになりましたね。
「今日まだめくってないよ!」とか。
- 伊藤
- うわぁ、かわいい!
面白いのかな、毎日めくるって。
- Kanoco
- 日めくりは生活の一部なんだなって思いました。
とっても生活に密着した商品なんだなって。
- 伊藤
- ほんとにありがたいなあと思ってます。
その一年、ずっとその人の生活とともに
あるものだから。
- Kanoco
- それに、モノとしてかわいいですよ。
部屋に置いておきたいですもん。
- 伊藤
- ありがたいー。
ちなみにどこに置かれてるんですか。
- Kanoco
- 今は子ども用の背の低い箪笥の上に置いてます。
そうそう、私の母は英語の塾をやっていて、
60才でやめちゃったんですけど、
教室にいつも日めくりがありました。
毎年、誕生日に「ほぼ日手帳」をプレゼントするので、
ことしは日めくりカレンダーもあげようかなと。
- 伊藤
- とっても嬉しいです。
わたしも母に、キッチンと寝室用で
2つプレゼントしています。
めくったものは、買い物などの
メモにしているみたいです。
- Kanoco
- その使い方もいいですね!
- 伊藤
- Kanocoさん、モデルも、対談も、
ほんとうにありがとうございました。
また日めくりの使い方、見せてくださいね!
- Kanoco
- こちらこそありがとうございました!
一日が始まった!
- 伊藤
- Kanocoさんが、こんな写真を
Instagramに上げてくださってるのを見ました。
「weeksdays」の日めくりカレンダーの裏を
使ってくださっているんだとわかり、
チームみんなで、とっても喜んで。
-
▲ある日のKanocoさんのInstagram。
- Kanoco
- 3才になって、描くことが楽しいらしくて。
だからめくったカレンダーをとっておいて
裏をお絵描き用にしているんです。
カレンダーを毎日めくる、ということで、
息子も“日にちが変わる”ことを
理解した気がします。
- 伊藤
- そんな成長の役にたって!
こういうお絵描き、捨てられませんね。
- Kanoco
- 捨てられないです。
- 伊藤
- 日付もあるわけだから、
それをとっておけば、
この年のこの日はこうだったんだ、
という記録にもなるわけですね。
- Kanoco
- 素敵ですね。
- 伊藤
- 「weeksdays」のものをお使いいただく前から、
日めくりカレンダーはお使いだったんですか。
- Kanoco
- そうですね、毎年かならず‥‥ではないですけれど、
とても好きで、使ってきました。
- 伊藤
- じつは日めくりカレンダーを作るというのは、
わたしの発想ではなかったんですよ。
それまで「weeksdays」では
「暦帖」という自分で描き込む式の
シート型のカレンダーをつくっていたんです。
美篶堂の手製本で、
とてもきれいな製品だったんですが、
一部の方には支持をいただいたものの、
なかなか広く受け入れられるものではなく、
継続を断念することにしたんです。
でもチームから
「weeksdays」のカレンダー的なものが
ないのは寂しいという話が出て。
そこでチームと相談をし、
わたしの写真で作ってみようということに。
- Kanoco
- そうだったんですね。
私、大好きですよ、日めくり。
- 伊藤
- その“日めくりが大好き”なところって、
やっぱり毎日変わるから?
- Kanoco
- そうですね。それに、日めくりって、
一日の始まりと終わりがはっきりしますよね。
- 伊藤
- なるほど。
何時頃にめくる、ってありますか。
- Kanoco
- 朝がいちばん多いですね。
めくるのは息子の仕事になってます。
そうすると「一日が始まった!」って思うんです。
- 伊藤
- そうなんだ。
しかもめくった日のカレンダーを
とっておいてくださって。
- Kanoco
- こんなふうに
対談に呼んでいただくとは思っていなかったんですが、
とっておいてよかったです。
こうして缶に入れているんですよ。
息子がお絵描きしたものもいっしょに。
- 伊藤
- とってもかわいいですね。
これはアルファベット?
- Kanoco
- ABCを覚えたばかりなんです。
それでこういう文字を書いたりも。
- 伊藤
- わたしたちが思いつかない使い方です。
Instagramを見ていると、
味噌を仕込んだ日のカレンダーを
容器に貼り付けておく、
というかたもいたりして、
なるほど! いろんな使い方ができるんだな、
って思いました。
- 伊藤
- ところで、Kanocoさんって
書くことがお好きなんでしょうね、
さっきもメイク室の傍らにノートが置いてあって、
いつも何かを書いていらっしゃるんだなって思いました。
- Kanoco
- そんな、全然、たいしたものではないんです。
洋服のデザインとか、いろいろですね。
- 伊藤
- わたしは、全然、メモをとらないんです。
昔からそうで‥‥。
画像ならスマートフォンで撮影して、
言葉で思いついたことで
共有したいことがあったら
「weeksdays」のチームLINEや、
メールで伝えているんです。
- Kanoco
- 今は、そうですよね。
- 伊藤
- でも書いておいたほうが
いいものがあるのはわかります。
ずっと残すかどうかは別にして。
- Kanoco
- そうなんですよね!
残したいと思って書いてるわけではないんですよ。
昔は日記を書いても、
1年が終わったら捨てていました。
たとえばちょっと嫌なことだったり、
頭の中から取り出しておきたいことを
日記帳に移行するみたいなイメージで書いていたんです。
だから読み返すものでもありませんし、
誰かに見られたら嫌だなぁ、と思って。
- 伊藤
- つまり、Kanocoさんにとってノートや日記は、
そのときの考えを一時的に移行しておくものなんですね。
- Kanoco
- そういうことなんでしょうね、
その習慣が今も続いている感じです。
- 伊藤
- お洋服のデザインとかはどういうふうに?
絵を描かれるんですか。
- Kanoco
- 言葉で書き留めておくことの方が多いです。
というのも絵がすごく下手なので。
「ほぼ日」の「Cacco」の制作アイデアも、
言葉で伝えつつ、たまに絵を添える感じです。
- 伊藤
- それでちゃんと形になってきたのなら、
それでいいんだと思いますよ。
自分がパターンを引いたり絵が描けなくても、
言葉で欲しいものを伝えることで、
理想のものってつくれますよね。
ちゃんとその思いが通じる
プロフェッショナルなチームと一緒なら。
わたしもよく、そのことを思うんです、
- Kanoco
- ほんとに! ひとりだと絶対にできないことが、
チームだとできるんですものね。
ありがたいですよね。
- 伊藤
- 「Cacco」のデザインの発想はどんなところから?
- Kanoco
- コンセプトは、私の好きなもの、好きなこと、
記憶のなかの宝物をかたちにしていく、
とうことなんですけれど、
同時にそのアイテムの撮影のことを考えちゃいますね。
その服をつくってどう撮るか、ということを。
- 伊藤
- それはプロのモデルさんとして
いつもそういう場面にいらっしゃるからでしょうね。
でもね、お客様に届くきっかけは、
その撮影した写真から、だから、
すごくいいと思うんです。
- Kanoco
- そうですね。
伊藤さんはどんなふうに?
- 伊藤
- どこで着るかとか、どこで使うかを想像するかも。
とくに「もの」は使う様子や置く場所を考えます。
でも、Kanocoさんといっしょで、
洋服だと、こう撮ったらかわいいな、
ということを、同時に、いつも考えていますね。
日めくりカレンダーのつくりかた
- 伊藤
- Kanocoさんが「weeksdays」の
日めくりカレンダーを使ってくださっていると知り、
とっても嬉しくて。
今日は、モデルもやっていただいて、
そのうえ、対談まで、
ほんとうにありがとうございます。
- Kanoco
- こちらこそありがとうございます。
そうなんです、この日めくりカレンダー、
季節感があって、毎日楽しくて。
- 伊藤
- 嬉しいです。季節感があるのは、
なるべく撮った日に近い並びにしているからかな。
- Kanoco
- 伊藤さんはふだんから、たくさん
写真を撮ってらっしゃるんですよね。
こんなふうに365枚も選べるって、すごいです。
- 伊藤
- 1年目は、過去5年分の写真から選んだんです。
でも2年目、ストックがないぞ、どうしよう? って。
コロナ中で旅もしていなかったので
ちょっと苦労しました。
2025年版が3年目で、
この1年は旅にも出かけられたので、
選ぶのも楽しい作業でしたよ。
ぜひ、できたばかりの2025年版、見てください。
- Kanoco
- じゃあ‥‥まず、自分の誕生日のところを。
- 伊藤
- あ、やっぱり?
- Kanoco
- 2月の6日は、っと。
- 伊藤
- あら、わたし、2月9日です。
- Kanoco
- 近いですね! 嬉しいです。
2025年版の2月6日は‥‥、
わぁ、好きです。
めっちゃかわいい。
- 伊藤
- よかったあ。
これはヨーロッパのおみやげのクッキーです。
- Kanoco
- 嬉しいな。
- 伊藤
- 誕生日って特別ですものね。
だから一日もおざなりにできない。
- Kanoco
- そう。どの日も、絶対、誰かの誕生日ですものね。
並び方の工夫は、季節感のほかにも?
- 伊藤
- そうですね、今回は旅の写真もあるので、
同じ旅先や国の写真が続かないようにしています。
- Kanoco
- へえー、すごい。
- 伊藤
- それから、ものを撮るとき、
撮影の角度が斜めのこともあれば、
真上からの場合もあるので、
同じ角度の写真が続かないようにしたり。
- Kanoco
- それを考えるのってたいへんですよね。
具体的にはどうやって進めているんですか。
- 伊藤
- まず候補の写真を多めに選んで、
日めくりカレンダーのサイズでプリントアウトします。
それを大きな紙に、月間カレンダーのように、
1か月単位で貼っていくんです。
そこで並び順を考えて。
- Kanoco
- それは大変ですね!
- 伊藤
- 「食べ物が続かないように」
「景色ばかりが続かないように」
「硬いものが続かないように」なんてことも
考えながら並べていますよ。
- Kanoco
- 硬さ‥‥まで?!
- 伊藤
- そうなんです。
生ものが続かないようにとか、
同じような色が並ばないようにとかも。
- Kanoco
- なるほど、そういうことって、
理詰めというよりはきっと
伊藤さんの「感覚」ですね。
- 伊藤
- そうなんだと思います。
でも月間カレンダーに貼って並べる作業って、
ちょっと集中し過ぎちゃうんですよ。
だからちょっと時間を置いて見直したり。
- Kanoco
- そういうつくり方なんですね。
きっとその作業、楽しいと思います。
- 伊藤
- そう、つくるのも楽しいんです。
同じ素材でも並べるのがKanocoさんだったら
また違うカレンダーができると思いますよ。
たとえばこの中からだったら、
どういう写真がお好きですか。
美味しいもの?
- Kanoco
- 美味しいもの、大好きです。
たとえばこんな、お正月のなます。
東京のお正月、っていう感じがします。
- 伊藤
- これは、姉が、葉っぱつきの柚子を送ってくれたとき
思いついて撮ったものなんです。
- Kanoco
- あとは‥‥、私、丸いものが好きなので、
たとえば、こんな、雨粒の写真とか。
- 伊藤
- 雨粒。わたしも大好きです。
タクシーの中から撮ったんです。
- Kanoco
- わかります。
タクシーの中って、
いい雨粒、撮れますよね。
それから卵が並んだ写真。
- 伊藤
- 台湾の露店で、
卵が道端にわーって並んでいた様子ですね。
- Kanoco
- そうなんですね。
それから、大好きなソフトクリーム。
- 伊藤
- すごく美味しいんですよ、これ。
ヴィソンっていう三重の商業施設の中に、
白いものだけを置いてるギャラリーがあって、
そこのちょっとした小窓から買えるんです。
- Kanoco
- アイス好きにはたまらないです!
こういった写真を撮るのに、
伊藤さんはカメラをお使いですか。
それともスマートフォンで?
- 伊藤
- スマートフォンの前はカメラを持ってました。
でも、写真を撮るのはすごく好きなんですが、
そんなにたくさんは撮らなかったんですよ。
「カメラって、ちょっと面倒だなぁ」
なんて思ってもいたんです。
でも時間があるときはプリントしたものを
ちゃんとアルバムに貼ってました。
iPhoneを使い始めたのが十何年か前で、
これで写真が撮れるのであれば、
「これでいいんだ!」って思ったんです。
出かけるとき、電話って自分とセットでしょう?
だからちょっとしたかわいいものとかを、
まめに撮るようになったんですよ。
思えば、それがいい形になったのが
この日めくりカレンダーなのかもしれません。
Kanocoさんも写真を撮りますよね。
- Kanoco
- はい。写真、大好きです。
ずっとフィルムカメラで撮ってきたんですけれど、
長男が生まれてからもうぜーんぜん撮れなくて!
いまはスマートフォンで撮ることが多いです。
- 伊藤
- そっかそっか。
いまお子さんがふたり?
信じられないです。
- Kanoco
- ふふふ、大騒ぎしながら育児してますよ。
大きな声で「早く何々しなさい!」ばっかり。
なんでもない日に
ガラス窓についた雨粒。
夏の終わりのフルーツゼリー。
蚤の市で見つけた古いボタン。
プールの向こうの青い空。
母の庭で摘んだミント。
一日、一週間、一ヶ月‥‥
そして一年。
カメラロールを振り返ると、
いろんなことがありました。
絶好調な日もあれば、
冴えない日もあって、
そんなこんなを繰り返しながら、
私の毎日が過ぎていく。
なんでもない日こそ大切だと思えるようになったのは、
大人になった証かも?
今週のweeksdaysは、
日めくりカレンダー。
あなたの一年のおともにぜひ。
t.yamai parisの開襟シャツ、あのひとに着てもらいました 木本真帆さん
木本真帆さんのプロフィール
きもと・まほ
パリを拠点に活躍する
ファッションバイイングコーディネーター。
1995年に渡仏、
ソルボンヌ大学にてフランス語を習得し、
その後、現職につく。
一男一女の母。
自子さんの「わたしが着たいから」
という、とてもシンプルな
理由でつくられたこの開襟シャツは、
それだけあって、やっぱりとてもよくお似合い。
「全体的にベージュ系のカラートーンで
コーディネートしました。」
シャツに合わせた光沢感のある
コットンモールスキン素材のパンツは、
裾が少し広がるシルエット。
バランスがよく見えるようにと
足元は同系色の厚底のサンダルを選んだそう。
カジュアルさとエレガントが同居する、
ほんとうにこのシャツのよさを
知り尽くしているさすがの着こなしです。
そして、ご友人の木本真帆さん。
30年来のご友人だそう。
真帆さんのスタイリングも
ベージュのワントーンでまとめられていますが
自子さんとはまた違った雰囲気に
このシャツの幅の広さを感じます。
「シンプルなブラウスなので
ボリュームのあるアクセサリーと合わせたい」と
首元にはゴールドのネックレス。
そして「このシャツは合わせやすいんです」
と真帆さんがいう通り、
デニムやキャップ、スニーカーとの
スタイリングもとてもすてきです。
襟の開き具合がとても女性らしいので
カジュアルになりすぎない
大人っぽいデニムスタイルになるんですね。
アクセサリーやヘアスタイルを変えて、
自分の気分次第で
どんな雰囲気にも寄り添ってくれるシャツは
一枚あるときっと心づよい。
あらためて、フランス生まれのブランド、t.yamai paris。
やっぱりパリがよく似合うんですね。
普通のシャツではないんです
- 伊藤
- 山井さん、自子さん、
きょうは、開襟シャツのお話を伺えたらと思います。
前回、「グリーン」があっという間に
完売してしまったので再販をするにあたり、
新色をお願いして、つくっていただいて。
- 自子
- 「キナリ」ですね。
これ、すごくいい色だと思いますよ。
- 山井
- 光沢があって、
シャンパンみたいな色合いですよね。
伊藤さんから、
カラーサンプルで依頼をいただいたとき、
僕たちもこの色がいいなと思っていたので、
とても嬉しかったんです。
- 伊藤
- ほんとうにいい色!
ありがとうございます。
パールを合わせても似合いそうですよね。
- 自子
- もちろん似合いますよ。
- 伊藤
- 色はもちろんなんですけれど、
この開襟シャツ、何より形が好きで。
実はわたし、メンズっぽい普通のシャツの襟の形
(台襟つきで高さのあるもの)が
どうも似合わなくて‥‥。
でも襟付きのシャツは着たいんです。
- 自子
- わかります。
私もそうだから。
- 伊藤
- えっ、自子さんも?
ボタンダウンとか、
メンズっぽいシャツが
お似合いになるイメージなんですけれど。
- 自子
- それが、着てみると、全然ダメなんです。
似合う・似合わないっていうのは、
首の長さとかにも関係があるのかな?
って思っちゃう。
- 山井
- 襟の「形」に、好き嫌いがあるのかもしれないですね。
でも、襟が立っている普通のメンズシャツと違って
このシャツは襟が寝ているから、
ずいぶん印象が変わるでしょう?
- 伊藤
- ええ。
わたしと同じように首が詰まる感じの襟が苦手な方でも、
この開襟シャツなら
きっと心地よく着られるだろうなと思います。
- 山井
- そう思います。
寒い季節には下にタートルネックを合わせても
いいですし。
- 伊藤
- それはいいですね!
このシャツは秋冬向けのアイテムということですけれど、
どうして寒い季節のための開襟シャツを
つくろうと思われたんですか?
- 自子
- ふふふ。
私が着たいからかな。
- 伊藤
- なるほど!
- 自子
- でも、襟が開いているだけではなくて、
ディテールの部分で、
「普通のシャツではない」ようにつくっています。
- 伊藤
- たとえばどういったところでしょう?
- 自子
- アームホールは太めなんですけれど、
袖口にかけて細く絞っていたり、
後ろにギャザーを入れたり。
- 山井
- このギャザーがポイントになっているから、
うしろ姿がすごくカッコいいんですよ。
- 伊藤
- そういえば以前、
街でグリーンのシャツを着ている人を
見かけたんですよ。
うしろ姿で「t.yamai paris のシャツだ!」って
すぐにわかりました。
- 自子
- そうそう。
一見、普通のシャツのようで、
うしろ姿が印象的なシャツなんですよね。
- 伊藤
- このギャザー、
ほんとうにすごく素敵です。
- 山井
- ギャザーの量も、
この素材に合っていると思います。
- 伊藤
- 端までたっぷり入っていますものね。
光沢感もあるから、
黒いパンツと合わせたりしたら、
お食事にも行けますね。
- 山井
- 全然行けますよ。
この微妙な色合いも
エレガントさがあって素敵だし。
- 伊藤
- 肩の落ち感もすごくきれい。
これなら、いろんな肩幅の人にも合いますね。
- 自子
- ええ。
どなたでも着ていただけるものがいいなと思って、
サイズは設定していないんです。
うちはほとんどのアイテムがフリーサイズ。
- 伊藤
- そう言われれば、そうですね。
t.yamai paris のお客様は、
どれくらいの年代の方が多いんですか?
- 山井
- 30~50代くらいの方でしょうか。
- 伊藤
- そうなんですね。ちなみにあのジャケットは
20代のうちの娘も着てましたよ。
「なんか今年っぽい雰囲気になった!」
なんて言ってました。
- 山井
- へえー!
- 自子
- 若い方にも気に入っていただけて
うれしいです。
- 伊藤
- このシャツは、
今後も色違いで展開していかれるご予定ですか?
- 自子
- そうですね。
次はきれいめなコットンの素材で、
ストライプで作ってみようかと考えています。
もちろんギャザーを入れてね。
- 伊藤
- ギャザーは欠かせないですね!
- 山井
- このデザインは、
うちの開襟シャツの定番になっていますからね。
- 伊藤
- たのしみにしていますね。
今日はどうもありがとうございました。
- 自子
- こちらこそ。
またお越しくださいね。
あなたのうしろ姿
家の前の坂道を下っていると、
前を歩く女性のうしろ姿に目が留まりました。
ああ、きれいだな。
というのがまずはじめの印象。
でも、
「きれい」だけじゃなくって、
なんだか見覚えがあるような、
懐かしいような。
しげしげと(でも怪しまれない程度に)
見ていると、
分かったんです。
t.yamai parisのシャツを着ているんだ、ということに。
わたしも持っているから、よく分かる。
自分からは見えないけれど、
このシャツはうしろ姿が美しい。
身体を動かすたびに、
ひらひら、
ふわふわと流れるように布が動く。
背中にその様子を感じると、
着ている自分がうれしくなるのです。
今週のweeksdaysは、
t.yamai paris の開襟シャツ。
山井さんにお願いして、
weeksdaysのためにふたたび作っていただきました。
あなたのうしろ姿を、
きれいに見せてくれるシャツですよ。
PAS Stool、わたしの使いかた 伊藤まさこ
これまで、weeksdaysのスツールは、
座面がオーク、脚がナチュラル。
それから、
座面がオーク、脚がブラックの2種類。
ふたつとも同じ形なのですが、
脚の色が違うと雰囲気ががらりと変わる。
私が家で使っているのは、
オーク×ブラックなのですが、
そのままはもちろん、
冬はグレーのファーのシートパッドを敷くと、
また違う雰囲気に。
私のまわりでは、
オーク×ブラックをえらんだ人が多く、
その理由は、
「オークの椅子をたくさん持っているから」。
ちょっと目先の変わった色合いの椅子が
欲しくなったんですって。
なるほど。
今回、北の住まい設計社にお願いして、
作ったのが新色のオーク×グレー。
ナチュラルともブラックとも違う、
おだやかでやさしい色合いは、
グレーからブルーにかけての、
壁や小物が多い我が家にぴったり。
ナチュラルな木の肌合いと、
グレーの組み合わせって、
なんて相性がいいんだろう!
新色のスツールの出来栄えに、
大満足したのでした。
白い壁には、
グレーの脚がポイントに。
また、ブルーのドアの前に置いて、
馴染ませたりと、
家のどこに置いても、新鮮な空気を漂わせてくれる。
スツールって、
小さな家具だけれど、
ただ座るだけじゃない。
「その場の空気を変える」
そんな役割も担ってくれるのでした。
花を飾ったり、
サイドテーブル代わりにしたり。
また、
メーク道具一式や、
ライトを乗せたり‥‥と、
使い方は自由。
いつもの部屋を、
ちょっと変えたい。
そんな方にぴったりなアイテムではないかな、
と思うのです。
PAS Stool あのひとの使いかた 四宮慎太郎さん・七絵さん
四宮慎太郎さん・七絵さんの
プロフィール
しのみや・しんたろう/しのみや・ななえ
長野県御代田町に居を構える。
2024年春、インテリアと暮らしをeditするユニット
LOSKAをスタート。
カーテンやブラインドといった窓周りから
家具、カーペットまで
住まいのインテリアをトータル提案するほか、
印刷物デザイン、インテリアスタイリングなど
インテリアや暮らしに纏わるさまざまな仕事を手がける。
七絵さんは以前「weeksdays」のコンテンツ
「saquiのサマーテーパードパンツ、
3人の方に着てもらいました。」
「小ひきだし、あのひとの使いかた」に登場。
白い壁に木の床。
窓の外は木々の緑が広がって‥‥。
それだけで、
ずっとここに居たい‥‥
という気持ちになる四宮家なのですが、
それにプラスして、
くつろいだり、
ちょっと腰掛けたり、
あるいは花を飾ったりできる椅子の存在が、
その居心地のよさに一役買っているような気がします。
それもそのはず。
慎太郎さんも七絵さんも、
「大の椅子好き」なのだそう。
「ダイニングで使っているセブンチェアは、
前の職場で廃棄予定になっていたものを譲り受けました。
その後、自分たちの好みに塗り替えて‥‥」
と慎太郎さんがいえば、
「このグランプリチェアはカフェの閉店セールで。
その日、仕事で行けなかったので
友人が私の分まで買ってきてくれたんです」
と七絵さん。
一人暮らしをしていた七絵さんの部屋から持ってきたもの、
建築家だったおじさまから受け継いだもの‥‥と、
椅子との思い出もたくさんのよう。
さて、weeksdaysのスツールは、
どこに‥‥とキョロキョロすると、
案内されたのはバスルーム。
白い空間に、ブルーグレーの脚がよく映えてる。
バスルームに新色のスツール、いいなぁ。
「ここでお風呂上がりに座って
スキンケアをすることもあるんですよ」と七絵さん。
腰掛けて背筋をスッと伸ばすと、
鏡に顔が届くのだとか。
「だから姿勢がよくなるんです!」
ですって。
今日はグリーンを飾りました。
「スツールにもタイプがあって、
座ったり踏み台代わりにする質実剛健なものは、
花があんまり似合わないのですが、
weeksadaysのこのスツールは、
グリーンや花を飾っても絵になりますね。
フォルムがきれいだからかな」
美しい木目がポイントのスツール、
自然光が入るバスルームにぴったりです。
この日、キッチンやリビング、
ベッドルーム、お風呂、
ウォークインクローゼットまで見せていただきましたが、
どこもかしこもすっきりピカピカ。
椅子たちも、この家で幸せそうな顔をしていましたよ。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月22日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Lue
大スプーン(栗型)
口当たりのやさしさ、
それからすくいやすさ。
ほどよい大きさもよくて、
使わない日はない、と言ってもいいくらいな、
Lueのスプーン。
実家の母にプレゼントしたところ、
すっかり気に入り、
「チャーハンはこれでないと」というほど、
母娘で定番となっています。
チャーハンはもちろん、
ドライカレーや、
チキンライス、タコライスなどにもぴったり。
「最後の一口」を、
気持ちよくすくってくれます。
小さなサイズは、
お茶やデザートの時間に重宝。
真鍮の輝きは和洋問わず、
幅広い器に合うところも気に入っています。
(伊藤まさこ)
毎日ちょっとずつ
ここ数年、
夏は家の中でひっそり過ごすことにしています。
理由は、とても単純。
暑いから!
もともとの暑がりにくわえて、
年々、加速する猛暑に、もうお手上げ。
無理できない年頃なのかもしれません。
でもね、
いいこともあるんです。
それは、
家と向き合う時間がたっぷりあること。
ある日は、リビングの家具を移動して。
またある日は、チェストの中を整理整頓。
今日はスツールの上を、
ほんの少し模様替え。
涼しい家の中とはいえ、
やりすぎは禁物。
「毎日、ちょっとずつ」
が基本です。
今週のweeksdaysは、
北の住まい設計社のPAS Stool。
好評いただいている2色にくわえて、
新しい色が仲間入りです。
どうぞおたのしみに。
小ひきだし、わたしの使いかた 伊藤まさこ
つい先日、
思い立って小ひきだしの中をすべて出して、
整理しました。
我が家には、小ひきだしがふたつありまして、
ひとつは文房具系、
もうひとつは豆皿を入れているのですが、
中のものをすべて出すと、
え? こんなに入っているんだ‥‥
と、思わず呟いてしまうほどの量でした。
この小ひきだしのうれしいところは、
収納力がありつつも、
見た目に「美しい」というところ。
それってなんだかすごいことなのでは? と思うのです。
今回、実現したのは、
横幅が1.5倍になった「ひろびろタイプ」。
なんとこのひろびろ、
わたしのノートパソコンがちょうどおさまるのです。
収納力も増えたため、
文房具関係とパソコン、ちょっとした資料も入る。
これ一台あれば、
私の仕事道具はほぼすべて収まります。
うれしくなって、
いろいろなものを入れてみました。
まずはメイク道具。
ビューティに関しては、
スキンケア重視の私。
なのでメイクアップの道具はこの引き出しひとつで十分。
広くなった分、
ハンドクリームや老眼鏡もまとめて入れることができ、
さらにすっきりです。
裁縫道具も過不足なく収納。
お箸やカトラリー、レンゲを入れて。
横にすれば、長めのサーバーも入ります。
お茶とお茶関係の道具もぴったり。
カップ&ソーサーや、
お菓子を入れて、
そのままテーブルへ、なんて
トレーのようにも使えるのです。
この「ひろびろ」小ひきだし、
ちょっと足りないなとか、
もう少し大きかったらいいのにな、
なんてことがない、
わたしの暮らしにちょうどいいサイズ感。
ジュエリー、薬、ネクタイ、領収証、文房具、小銭、
それからあとは‥‥。
ちょっとした身の回りのものを、
使いやすく、そして美しく見せてくれる、
魔法のような引き出しなのです。
小ひきだし、あのひとの使いかた 02 引田かおりさん
引田かおりさんのプロフィール
ひきた・かおり
Dans Dix ans/gallery fève オーナー
「吉祥寺においしいパン屋をつくりたい」
という思いを実現すべく、
夫であるターセン氏の退職をきっかけに、
2003年に「Dans Dix ans」(ダンディゾン)を
夫妻で開業。
同じ建物の2階には、引田夫妻が
「素敵だと感じるもの」を紹介するギャラリー
「gallery fève」を同時にオープンさせた。
著書に『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)
「たぶん だいじょうぶ」(大和書房)がある。
「weeksdays」では
「鋼正堂のうつわ、あのひとのつかいかた」
「weeksdaysのハンドソープ、
あのひとに使ってもらいました」などに登場。
■Dans Dix ansのwebsite
■gallery fèveのwebsite
「引き出しが大好き」という引田かおりさん。
お部屋を見回してみると、
あるある。
仕事のデスクまわりは、
グレーのBISLEYが。
食器棚の片隅には、
weeksdaysの小ひきだしが!
かおりさんのすごいところは、
引き出しに入れたらそれでおしまい、ではなく、
時々、見返して、
中を使いやすくアップデートしているところ。
それは引き出しの中だけでなく、
おいしいものやファッション、美容、
健康のこと‥‥と幅広く、
お会いするたびに刺激を受けているのです。
「weeksdaysの小ひきだしは、
初回か、その次くらいの応募で当たったの。
私、くじ運強いんです」
とかおりさん。
ありがたいことに、
weeksdaysのコンテンツを、
よく見てくださっているよう。
「あれ欲しい!」
「これ買ってみたらすごくよかった」
そんな言葉がどれだけ励みになっていることか。
「杉工場さんとは、
フェブ(吉祥寺のgallery fève)でもおつきあいがあって、
テーブルや棚を販売したこともあるんです。
仕事がとてもていねい。
そしてどの製品も使いやすくてきれい。
安心感があります」
今回、使っていただいたのは、
今までのものより横幅が1.5倍広くなった、
「ひろびろ」タイプ。
まるで前からここにあったみたいに馴染んでいる!
「ダイニングとキッチンの間の
カウンターに置いてみました。
どちらからも引き出せるので、
すごく重宝」
お茶のセットを入れたり、
紙ナプキンを入れたり。
切手や封筒などの、
手紙関連のものを入れたり。
「トレーのような使い方ができるところもいいですね」
とかおりさん。
なんと一番下の段には、
お孫さんが夢中というアイロンビーズが入っていました。
「小さなお子さんがいるおうちは、
お知らせのプリントなど入れてもいいかもしれませんね」
なるほど。
何段目に学校関係、
何段目に保険証や診察カード、
なんて家族内で決めておけば、
あれどこにあるの?と必要な時にバタバタしない。
小さな時から、
「出したらしまう」を身につけておけば、
お片づけも自然とできるようになるのかも。
「使ううちに、あ、これもいいかもって、
新たな使い道を発見する」というかおりさん。
いつかまたアップデートされた引き出し、
見せてくださいね。
小ひきだし、あのひとの使いかた 01 四宮慎太郎さん・七絵さん
四宮慎太郎さん・七絵さんの
プロフィール
しのみや・しんたろう/しのみや・ななえ
長野県御代田町に居を構える。
2024年春、インテリアと暮らしをeditするユニット
LOSKAをスタート。
カーテンやブラインドといった窓周りから
家具、カーペットまで
住まいのインテリアをトータル提案するほか、
印刷物デザイン、インテリアスタイリングなど
インテリアや暮らしに纏わるさまざまな仕事を手がける。
七絵さんは以前「weeksdays」のコンテンツ
「saquiのサマーテーパードパンツ、
3人の方に着てもらいました。」に登場。
今年の春、
東京から長野の御代田に仕事場とお住まいを移した
慎太郎さんと七絵さん。
木工家が作ったというこの家に、
一目惚れしてしまったんですって。
じっさい住んでみていかがですか? と尋ねると、
「もうもとの暮らしには戻れそうにありません」
ととても満足されているご様子。
だって、ほら窓から見える景色がこれですもの、
その言葉に納得です。
カーテンやブラインドの窓周りを中心に、
インテリア全般を提案するおふたり。
ここ、御代田での暮らしを通して、
きっとお仕事にもいい変化が訪れるんだろうなぁ‥‥。
そんなおふたりにぜひ、
小ひきだしの新商品を使ってみて欲しい。
そう思ってたずねると‥‥
なんと、スタンダードなタイプを
すでに使ってくださっていました。
「ちょうどいいひきだしってなかなかないなぁ‥‥
と思っていた時に見つけたのがこの小ひきだしでした」
と七絵さん。
商品ページやコンテンツをじっくり読んで、
購入を決めてくださったそう。
ありがたいことです。
「ここには、領収証や医療関係の
無くしてはいけない紙類を入れています。
雑多なものもひとまずここに入れれば片づいて見える。
とても助かっているんです」
じつは小ひきだしの下の棚には、
ポリプロピレン製の引き出しが入っているのだとか。
用途は同じですが、
出しておいて眺めがいい、
weeksdaysの小ひきだしが
とても気に入っているのだとか。
「ひろびろ」タイプの小ひきだしは、
リビングと同じ階の和室に。
七絵さんの仕事道具を入れて、
必要な引き出しを持ってリビングに移動。
「ノートパソコンがぴったり。
深さもちょうどいいですね」
たしかに、これより深くなると、
いろいろ入れたくなって、結果、重くなり、
持ち運ぶのが大変になってしまうかも。
「トレーのように使えるのもいいですね」
というのは、
この小ひきだしを使っている方々の共通の感想。
「木が好き」というおふたり。
オーク素材が、
大きな木のテーブルともぴったりです。
浅間山を見ながらお仕事を。
おじゃましたのは初夏の午後。
秋も、それから冬も。
また違う景色が見られるんだろうなぁ。
1+1は?
1+1の答えは、
当然「2」なんだけれど、
こと人と人が一緒になると、
2人以上の力を発揮する。
それが、3人、4人‥‥と集まれば、
さらに心強い。
ひとりじゃ不安なことも、
やってのけそうな気がするんです。
それってなんだかすごいことなのでは?
そんなことを思ったのは、
新しくできた小ひきだしを使ったからかも。
引き出しの幅は、
今までの1.5倍。
見た目のスマートさはそのままに、
収納力は1.5倍、
ううん、それ以上に用途が、
広がった気がする。
今週のweeksdaysは、
weeksdaysの定番&人気商品の小ひきだし。
今までの小ひきだしを使って、
「出したらしまう」が身についたら、
2台目は新しい「ひろびろ」タイプもおすすめですよ。
上手になってはいけない
- 伊藤
- 話は戻りますが、
彫るほうの紙はネットで?
- 湯浅
- 見つかったんです。
「紙凹版画」で調べていたら、
10枚でセット売りしてるのを見つけて。
子ども用の教材だったんですよ。
で、それを使ったら、
「これこれ、これがやりたかった!」。
ようやく意味が分かりました。
見つけた時は、夫に「これでしょ」って。
- 伊藤
- ちょっと自慢げに(笑)。
ある程度大人になると、
そんなに試行錯誤をすることってないじゃないですか。
それってすごいことですよ。
- 湯浅
- いつもそうなんです。
誰かに聞けば早いのにって言われます。
- 伊藤
- だいたいのことが分かってしまう時代ですよね。
でも湯浅さんは、それをあえて「しない」。
- 湯浅
- 「版画家を紹介する」って
何人かに言われたんですけど、
聞いて分かっちゃうとつまんなくないですか?
- 伊藤
- ちょっと分かります。はい。
- 湯浅
- そこにたどり着かなきゃ意味がないような気がして。
- 伊藤
- その人のやり方は、わたしとは違うかも?
ということだってありますよね。
- 湯浅
- 紹介いただいた版画家の方も、
リトグラフやエッチング、木版のご専門でしたし。
もちろん紙凹版画のことはご存知だと思うんですけれどね。
ただプレス機の使い方だけは
聞いてもよかった気がします、ふふふ。
- 伊藤
- あはは、そうですね。
- 湯浅
- でも、それゆえに、すごく面白かったです。
まさこさんに
「どうしよう、連絡できないかも」
っていう時期が3か月ぐらいあって、
「いま見せられるものは何もないけれど、
やってないわけではない」って言った気がします。
- 伊藤
- そういえば連絡が来ないなっていう時期が
3か月ぐらいありましたね。
「待ちます」って返信しましたね。
いいものを紹介したいっていう気持ちだから、
急かして「何日までにやって」ということじゃないって。
- 湯浅
- まさこさんがわたしを急かさなかったことが
すごくありがたかったです。
「原画30枚を描き下ろした方が楽かも?」
って何度も頭に浮かんで。
でも「いや、版画でしょ」っていうのがあったし、
沖縄のうちわとパキスタンのうちわとインドの壺を、
とにかく版画で仕上げてみたかった。
同じものを10枚描いていたら、
きっとつまらないものになったと思います。
- 伊藤
- 原画で何枚も作品を描いて
「もうインドの壺なんて描くの嫌!」
ってなったらもう‥‥!
- 湯浅
- それこそ「うまくなっちゃった!」とか。
ふふふ。
- 伊藤
- そっかそっか。
- 湯浅
- この3つはとても好きなモチーフだから、
10枚ずつ自分でマットをつけて並べてみても
「それぞれ違うなぁ」っていうのがあるし、
プレス機でよれたりとか線が入ったりしたのも
いいなあと思っているんです。
- 伊藤
- 描きたい、好きなモチーフを見つけるのは
どうやって?
- 湯浅
- わたしは引っ掻いて描く画法なんですが、
道具が、以前はマイナスドライバーだったのが
割り箸になり、今は針を使っているんですね。
かなり細い手芸用の針を使うと、
うんと細い線が引けるから、
描くものがほうきや髪の毛になるんですよ。
で、ほうきもひと通り色々なものを描いて、
じゃあ髪の毛ということになると、
江戸時代の花魁の髪形(伊達兵庫、立兵庫)の絵を
ちょっと描き始めた時期があって。
でもそれってちょっと正気の沙汰じゃないんです(笑)。
- 一同
- (笑)
- 湯浅
- 誰も求めてないし!
- 伊藤
- ふと冷静に(笑)。
- 湯浅
- ほかにも三つ編みの絵を、
個展でちょっと並べようかと思ったんですが、
夫が「なんか少し怖いかも。
モノと違って変な意味合いにとられる」って。
「‥‥だよね、だよね、三つ編みは違うかもね」
って言って。
- 伊藤
- ちょっと偏愛的な‥‥。
その細かいものを描きたい気持ちって?
- 湯浅
- 線を引く、引っ掻くのがとにかく好きです。
- 伊藤
- 引っ掻くのが好きなんだ。
- 湯浅
- 塗るっていうよりは、
引っ掻く、削るのが好きです。
まさこさんがお持ちの封筒みたいな箱の絵は、
白のオイルクレヨンに
グレーベージュのアクリル絵の具をのせて、
割り箸で全面引っ掻いて描きました。
- 伊藤
- ええーっ?
- 湯浅
- 竹のかごとか、描く線の多いものが
モチーフとしては最高に好きなんですけど、
最近は線だけでなく、面も意識しています。
塗って、削って、塗って、削って、を繰り返しながら
紙を貼ったり。
絵の具を重ねるのではなく、
平面を立体的に凸凹にすることで線や面を描いています。
- 伊藤
- 面白いです。
- 湯浅
- なので版画って向いてたんですね。
削ることができるから。
本当に今回は
すごくいい機会を与えていただきました。
思い通りにいかないことが面白かった。
そもそも、「うまく線が出てるかな」とか
刷り上がるまでわからない。
プレス機を回した後おそるおそるはがして、
「うわっ、また駄目だった」とか、
「おお、水をはけで塗るとこんなにきれいに出るんだ」
とかいう発見を日々重ねながらたどり着いた30枚です。
途中、友達に「ようやく線が出た」と見せたところ、
「良いね」と言われたので得意気に部屋に並べていたら、
夫に「これで良いと思っているの?」
って言われたんですよ。
- 伊藤
- 家庭内にプロデューサーがいるんですね。
- 湯浅
- 「全然ダメ? これじゃダメ?」
「これを自分の作品と言えるの?」
「でも線出てるから」
「線が出てるだけじゃあねえ」
「‥‥ですよねえ」って。
- 伊藤
- おふたりのやりとりを聞くと、
哲也さんってそういうふうにもおっしゃるし、
応援役でもあるし、すごくいい関係ですよね。
- 湯浅
- そこでもう1回彫り直したんですが
「線が走ってない」と言われて。
- 伊藤
- 伸び伸びとしていない、っていうことかな。
- 湯浅
- そういうことですね。
「うまいけどつまらない」って。
「うわー、なんか結構苦労してここまで刷ったけど」
と思いながらも何度か彫り直したら、
「こっちの方が断然いい」とようやくOKが出て、
沖縄のうちわ合格! っていう感じでした。
パキスタンのうちわは、
1回目が上手く行かずに
2回目に良い版ができたものの、
版の限界で刷りに失敗が許されなかったので、
ウエスにするから「いらない服全部ちょうだい」と
夫にも協力をあおいで。
- 伊藤
- 版をきれいにして。
- 湯浅
- その、インクを拭き取る作業がとても重要でした。
- 伊藤
- メリハリがつくんですもんね、要するに。
- 湯浅
- 拭きすぎるとカスカスして、
せっかくインクが入った線も消えちゃうし、
「ここら辺はちょっと汚れっぽい部分を
残したいんだよなぁ」ってところを加減しながら
拭いていくんですよ。
この拭く作業が紙凹版画は
一番難しいってことに気付きました。
インドのうちわがどうやっても
つまらない絵にしかならなかったので、
うちわは諦めて「壺」にしたのですが、
この壺が一番インクをのせる範囲が多いので、
拭き取り方もいろいろと工夫しました。
真っ黒に刷ったものと、
そんなにのせないバージョンとに分けて刷り。
あれはもう、ドキュメンタリー映像を
撮ってほしかったぐらいたいへんでした。
半年間、本当に試行錯誤して。
- 伊藤
- 連絡来ないなぁ、
きっと今、いろいろ試しているんだろうな‥‥
とは思っていたけれど、
そんな大変なことになっていたとは!
そうそう、今回、額とマットもご自身で
やっていただいたんですよね。
- 湯浅
- はい、マットの付いた状態で撮影していただいて、
額への最後のセットはわたしがしています。
額は家具職人の友人に30枚つくってもらいました。
「頑張った」って言ってました。
- 伊藤
- すごくきれいですもの。
- 湯浅
- そうですよね。
家具の人なので、木を組んでもらって。
横を見るとわかるんですが。
- 伊藤
- まさしく家具のつくり方ですね。
- 湯浅
- 最初、額縁屋さんに「このつくり方で」って言ったら
「無理ですよ」って言われてしまって。
1回オイル塗装をした上に、
若干白を塗ってもらうという面倒なことを、
その友人にさせてて。
- 伊藤
- はあ‥‥!(ため息)
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- ほんとうにありがとうございます。
アーティスト監修のもとで
完成形としてお届けできるということですね。
あとは飾るだけ。
ほんとうにありがとうございます!
- 湯浅
- こちらこそありがとうございます!
試行錯誤も創作のうち
- 伊藤
- なぜ哲也さんは「紙凹版画」をご存知だったんでしょう?
- 湯浅
- ひそかに版画について
調べてくれていたらしいんです。
「エッチングじゃないしね」と言ってました。
- 伊藤
- 哲也さんは、いつも景子さんのこと考えてる。
もしかしたら、牛乳パックが使えるということで、
手軽だと思われたのかな?
- 湯浅
- でも牛乳パックだと、
使える面積が小さいんですよ。
折れ線もありますし。
- 伊藤
- なるほど。
- 湯浅
- 外国の人が牛乳パックで、
すごく細かい版画をつくっている
動画を見せてもらったりして。
- 湯浅
- 「なんだかよくわからないもの」の依頼を受けてからは、
夫もいろいろ調べてくれて、
ご飯を食べながら、
「紙凹版画とは」の特性や作り方を
説明してくれるんだけれど、どうにも分からない。
「どうしてそれがそうしてそうなるの?」
っていうとこからスタートでした。
- 伊藤
- そんな家族の時間にまで!
- 湯浅
- 最初は牛乳パックや、
プラ塩ビシートを削って試してみたのですが、駄目で。
しかもプレス機のハンドルが重くて、
回せど回せど、色がつかない。
インクも油性か水性か、
アクリル絵の具なのかですごく迷って、いろいろ試して。
- 伊藤
- その試す作業は楽しいこと?
- 湯浅
- 楽しい、つらい、というよりは、
「自分で知りたい」時間ですね。
版画をされている人に聞けば早いんですけど。
まずは自分で試そうと思って。
- 伊藤
- 結局紙はどうなったんですか?
- 湯浅
- 何百種類もある紙から
自分の好みのものを買ってきて試したんですが、
プレス機を1回まわすのに
頭の血管が切れそうなぐらい力が要る。
- 伊藤
- 重いんですね。
- 湯浅
- 「たぶんこれ間違ってるな」って思ったけど、
でもそのくらいの重さで回してようやく
線が出ることに気付いたんです。
それまで100枚以上刷ってみたものの、
全然線が出なくて、
どうしよう、まさこさんに
「できない」とは言えないし、
「とりあえず線が出るまでやる」と決めて
試行錯誤を繰り返すうちに、
インクは版画用の油性の黒がいいな、とか
そのインクをどの程度塗り込むと
写るのかっていうことも分かってきて。
ただ、その塗り込む作業も
かなり力がいるんですよ。
1枚のシートにたっぷりと塗り込んで、
余分な絵の具をウエスで拭き取る。
その作業が大変ってことに
1か月ぐらいしてようやく分かって。
でもここを丁寧にやっておくと、
線がきれいに出ることが分かったので、
いらない服をウエスにして、
インクまみれになりながら何度も繰り返しました。
- 伊藤
- 版画って、刷り師さんがいらして、
専業でやってくださいますよね。
それを全部1人で。
- 湯浅
- 版画家に聞きに行かないから分からないんです。
聞くにしても、まず絶対自分で試さなきゃと思って。
で、100枚以上刷ったところで
ようやく線が出ました。
- 伊藤
- 刷るほうの紙は?
- 湯浅
- 分厚いのから、薄いのから、いろいろ試しました。
1回目薄めの紙に吸わせて、
2回目ちょっと厚めの紙にのせるといいってことも
気付いて。さらに、2回目はハケで濡らすと、
インクがよく乗るってことも気付いて。
- 伊藤
- その2回目からが本番ですよね、
きついんですか? 体力的に。
- 湯浅
- 1回目は軽くていいいんですよ。
2回目はもう全体重をのっけて回します。
そしたら今度、紙の版だから
原版が崩れちゃって。
- 伊藤
- ああ、線が潰れちゃうんですね。
- 湯浅
- はい。だから原版も何度も描き直して。
ようやく色の出し方と
紙とインクの全ての相性が分かった時、
「よし、もう本番」と思って刷ってみたら、
版画は反転することを忘れてて!
当たり前だけど、
原版は左右反転で彫らなきゃいけない。
「仕上がりが何か変だな」とずっと思っていたら、
「あ、反転か」って。もう、ほんとに。
それで反転した絵で原版を彫って、
ようやく本刷りになりました。
- 伊藤
- 試行錯誤の連続‥‥。
最初に刷ったのは、
完成した3つの版画のなかの、どれだったんですか。
- 湯浅
- はじめは沖縄のクバ(ヤシ科の植物)の
うちわを選びました。
「なんだかわからないもの」ということで、
ぱっと理解できないものにしようと。
それで「うちわ」シリーズがいいかなと思い。
パキスタンのうちわと、
インドのうちわにしようと考えましたが、
インドは難しくて、壺にしました。
パキスタンのうちわは、
線をたくさん削れる絵だったから。
普段から線を引っ掻いて描くことが多いので楽しくて、
刷り方の要領も分かったから
仕上げることができました。
版画とはいえ、1点1点、全て違う仕上がりになったので、
結局のところ「原画」に近い版画っていう
説明をしないといけないかなって。
- 伊藤
- 一点もの、ですね。
- 湯浅
- 仕上げる時は1枚1枚に
コラージュをしています。
色が違う紙を貼ってあるものもあるし、
とにかく全部違うものになりました。
- 伊藤
- うんうん。でもそれ、うれしいです。
「weeksdays」のみんなで拝見したとき、
「これがいい」「わたしはこれ」って、
全員、欲しいものが違ったんです。
たぶんみんなその時に飾る場所を想像してたんでしょうね。
「あ、これはよかった」って。
- 湯浅
- 色の入り方がいちばん違うのはインドの壺なんですけど、
これ、わたしは割と気に入っています。
本当に、粗いし下手ですが、それだけに、
「これは駄目」とおっしゃってくださったあの方に
見ていただきたいです。
- 伊藤
- ほんとですね。
- 湯浅
- 技術的には下手でも、処女作ってたぶん
いちばんいいと思うんですよ。
版画も、こなれて上手くなってしまったら、
きっとわたしらしくなくなってしまう。
自分では「わあ、すごくいいのができた」って
思っています。
- 伊藤
- 夫の哲也さんはなんとおっしゃってました?
プロのデザイナーの目から。
- 湯浅
- 「ちょっと壊れた感じがしていい」と言われました。
- 伊藤
- 壊れた感じ。なるほど。
- 湯浅
- 刷りとった中から10枚ずつを厳選しました。
今回の失敗作は
自分の作品へのコラージュに
再利用しています。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 湯浅
- 結局のところ、プレス機はやはり
わたしの使い方が間違ってたみたいで。
- 伊藤
- ええーっ? そんなあ。
- 湯浅
- 先日、知人のギャラリーに行った時に、
偶然、美術家の方と居合わせて。
- 伊藤
- あの大御所の!
- 湯浅
- 思い切って、
「つかぬことをお聞きしますけど、
版画のプレス機って、血管切れそうになりますか」
って言ったら、
「ならないし、たぶん間違ってる」って言われて。
- 伊藤
- あはは!
- 湯浅
- 「そんなことしちゃいけない」とまで言われました。
ある意味、力の要る作業だけれどそこまでじゃない、
その機械がたぶん古すぎたんでしょうと。
- 伊藤
- 使い方もあるかもしれないけれど、
機械のメンテナンスの問題もあるかも?
- 湯浅
- 夫が「もう刷るのは僕が」って言ってくれたけれど、
最後まで自分でやらないと気が済まなくて。
機械のクセがようやくつかめてきた気がしたけど、
分解しそうな音がしてましたし、
もしまた版画で作品を作るのなら、
新しくプレス機を導入するのもいいかなって思います。
なんだかよくわからないもの
- 湯浅
- 結局、『田辺のたのしみ』の装画も
なんとか完成したから良かったのですが、
じつは私、風景や人以外に、
色もあまり得意じゃないんですよ。
黒とかベージュとか白とか、その感じが好きなので。
- 伊藤
- 確かに、そうかも。
でもだからこそ部屋になじむのだと思う。
湯浅さんはモノが好きってことなのかな?
- 湯浅
- はい、モノが好き。
- 伊藤
- 器や道具もお好きですよね。
- 湯浅
- どこの国のいつの時代の誰がつくったか分からない、
名もない職人がつくったような器や道具が好きです。
今はもう使われないというけど、
旅先でお土産に買うんですよ。
そういうものが絵のモチーフになる事が多いです。
今回の版画に関しては、
そんな好きなモチーフを描きました。
- 伊藤
- 最初、わたし、どんなリクエストをしたんでしたっけ?
- 湯浅
- まさこさんからのリクエストは、
「なんだかよくわからないもの」がお題でした。
- 伊藤
- うんうん。なるほど。なんでそう思ったのかというと、
色の重ね具合とか、テクスチャーだけで、
実体が何かわからないくらいのほうが、
いろんな人の部屋に合うと思ったんです。
洋間にも畳の部屋にも。
何が描かれているのかよく分からなくて、
でもなんだか部屋に馴染んで、
しかも、ひとつあるとうれしい、
みたいなものをと漠然と言ったら、
景子さんなら形にしてくれるんじゃないかなって。
しかも「版画がいいな」って。
- 湯浅
- そうなんですよ。
ところが私、版画、やったことなくて。
- 伊藤
- でもほら、たぶん面白がってくれる人だと思って。
慣れてないからいいと思ったの、逆に。
- 湯浅
- まさしく、そこなんです。
下手でも同じものを描き続けるとうまくなっちゃうから、
絵がつまらなくなってるなと思って、
最近は抽象画を描きたいと思っていたところでした。
- 伊藤
- 個展で「うまくなっちゃったね」って言われたとか。
- 湯浅
- すごい方がいらして。
「モノ」を描いた展示だったのですが、
「上手くなっちゃったね」って。
私、両手利きなので、
左も右も使って調整するんですが、
どこかで綺麗にまとめなきゃと考えてしまう事があり、
それが自分でもつまらないなと感じていて。
「これ駄目だね、これもよくない、これもよくない」と
以前にも描いたことのある作品すべてを指摘されて
「どうしてわかったの?」と愕然としました。
見る人が見れば分かるんだっていうのが怖くなって。
もともとギャラリーをなさっていた方なので
本質を見極めることができるんだと思います。
- 伊藤
- そんなに鋭い人がいらっしゃるんですね。
- 湯浅
- それで「ちょっとまずいな」と思ってた時に
まさこさんから「なんだかよく分からないもの」
「それも版画で」というリクエストが来ました。
- 伊藤
- じゃあ、タイミングよかったんだ!
- 湯浅
- でも、版画は経験がないし、よくわからなくて。
絵の描き方を習ったこともありません。
それで知り合いのお父さんが使っていた、
40~50年前のプレス機を貸してもらいました。
そもそも版画でも、
木版、銅版、シルクスクリーン、
といろいろあるじゃないですか。
- 伊藤
- 石版もありますよね。
- 湯浅
- ただ、版画が向いているかもと思ったのは、
私「削って描く」んですよ。
クレヨンで全面を塗って、アクリル絵の具をのせて、
針とかで削って下地を出して描くんです。
だからたまに「版画ですか?」って聞かれる。
で、まず木版画をやってみました。
これが、もうなんかね、全然だめでした!
- 伊藤
- そんなぁ(笑)。
それはなぜ? 彫刻刀を使うのが?
- 湯浅
- 自分の思い通りの線が出ないんです。
それで調べていくうちに
「紙凹版画」にたどり着きました。
特殊な紙を削ってプレス機にかけるんです。
ところが、プレス機は手元にあるけれど、
その特殊な紙っていうのが何か分からない。
- 伊藤
- そうだったんですね。
- 湯浅
- プレス機の使い方はYouTubeで見て、
フェルトを挟むんだとか、
こうやって圧を調整するんだとかを知りましたが、
版にする紙が分からなくて。
じつは紙凹版画は、夫から
「牛乳パックや段ボールを使って、
版画作品を作っている人がいるよ。
たぶんこれが一番向いてると思う」
って最初に言われたんです。
でもその「紙凹版画」の意味が分からないから、
画材屋に行って「紙凹版画をやりたい、何がいりますか」
って聞いたところ、その人も「紙凹版画?」ってなって。
- 伊藤
- やってる人が少ないんでしょうね。
- 湯浅
- 夫が「おそらくメディウムが必要」と言うので
わからないままに店で聞いても
「ちょっと分からないです」。
- 伊藤
- あはは。
- 湯浅
- 紙凹版画ってほとんどの人が知らなくて。
- 伊藤
- 美大の人は知ってるのかな?
- ──
- (美大出身スタッフ)いや、初めて知りました。
- 湯浅
- 著名な美術家の方も「何? 紙凹版画って」って
おっしゃってました。