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小ひきだし、あのひとの使いかた 01 四宮慎太郎さん・七絵さん
四宮慎太郎さん・七絵さんの
プロフィール
しのみや・しんたろう/しのみや・ななえ
長野県御代田町に居を構える。
2024年春、インテリアと暮らしをeditするユニット
LOSKAをスタート。
カーテンやブラインドといった窓周りから
家具、カーペットまで
住まいのインテリアをトータル提案するほか、
印刷物デザイン、インテリアスタイリングなど
インテリアや暮らしに纏わるさまざまな仕事を手がける。
七絵さんは以前「weeksdays」のコンテンツ
「saquiのサマーテーパードパンツ、
3人の方に着てもらいました。」に登場。
今年の春、
東京から長野の御代田に仕事場とお住まいを移した
慎太郎さんと七絵さん。
木工家が作ったというこの家に、
一目惚れしてしまったんですって。
じっさい住んでみていかがですか? と尋ねると、
「もうもとの暮らしには戻れそうにありません」
ととても満足されているご様子。
だって、ほら窓から見える景色がこれですもの、
その言葉に納得です。
カーテンやブラインドの窓周りを中心に、
インテリア全般を提案するおふたり。
ここ、御代田での暮らしを通して、
きっとお仕事にもいい変化が訪れるんだろうなぁ‥‥。
そんなおふたりにぜひ、
小ひきだしの新商品を使ってみて欲しい。
そう思ってたずねると‥‥
なんと、スタンダードなタイプを
すでに使ってくださっていました。
「ちょうどいいひきだしってなかなかないなぁ‥‥
と思っていた時に見つけたのがこの小ひきだしでした」
と七絵さん。
商品ページやコンテンツをじっくり読んで、
購入を決めてくださったそう。
ありがたいことです。
「ここには、領収証や医療関係の
無くしてはいけない紙類を入れています。
雑多なものもひとまずここに入れれば片づいて見える。
とても助かっているんです」
じつは小ひきだしの下の棚には、
ポリプロピレン製の引き出しが入っているのだとか。
用途は同じですが、
出しておいて眺めがいい、
weeksdaysの小ひきだしが
とても気に入っているのだとか。
「ひろびろ」タイプの小ひきだしは、
リビングと同じ階の和室に。
七絵さんの仕事道具を入れて、
必要な引き出しを持ってリビングに移動。
「ノートパソコンがぴったり。
深さもちょうどいいですね」
たしかに、これより深くなると、
いろいろ入れたくなって、結果、重くなり、
持ち運ぶのが大変になってしまうかも。
「トレーのように使えるのもいいですね」
というのは、
この小ひきだしを使っている方々の共通の感想。
「木が好き」というおふたり。
オーク素材が、
大きな木のテーブルともぴったりです。
浅間山を見ながらお仕事を。
おじゃましたのは初夏の午後。
秋も、それから冬も。
また違う景色が見られるんだろうなぁ。
1+1は?
1+1の答えは、
当然「2」なんだけれど、
こと人と人が一緒になると、
2人以上の力を発揮する。
それが、3人、4人‥‥と集まれば、
さらに心強い。
ひとりじゃ不安なことも、
やってのけそうな気がするんです。
それってなんだかすごいことなのでは?
そんなことを思ったのは、
新しくできた小ひきだしを使ったからかも。
引き出しの幅は、
今までの1.5倍。
見た目のスマートさはそのままに、
収納力は1.5倍、
ううん、それ以上に用途が、
広がった気がする。
今週のweeksdaysは、
weeksdaysの定番&人気商品の小ひきだし。
今までの小ひきだしを使って、
「出したらしまう」が身についたら、
2台目は新しい「ひろびろ」タイプもおすすめですよ。
上手になってはいけない
- 伊藤
- 話は戻りますが、
彫るほうの紙はネットで?
- 湯浅
- 見つかったんです。
「紙凹版画」で調べていたら、
10枚でセット売りしてるのを見つけて。
子ども用の教材だったんですよ。
で、それを使ったら、
「これこれ、これがやりたかった!」。
ようやく意味が分かりました。
見つけた時は、夫に「これでしょ」って。
- 伊藤
- ちょっと自慢げに(笑)。
ある程度大人になると、
そんなに試行錯誤をすることってないじゃないですか。
それってすごいことですよ。
- 湯浅
- いつもそうなんです。
誰かに聞けば早いのにって言われます。
- 伊藤
- だいたいのことが分かってしまう時代ですよね。
でも湯浅さんは、それをあえて「しない」。
- 湯浅
- 「版画家を紹介する」って
何人かに言われたんですけど、
聞いて分かっちゃうとつまんなくないですか?
- 伊藤
- ちょっと分かります。はい。
- 湯浅
- そこにたどり着かなきゃ意味がないような気がして。
- 伊藤
- その人のやり方は、わたしとは違うかも?
ということだってありますよね。
- 湯浅
- 紹介いただいた版画家の方も、
リトグラフやエッチング、木版のご専門でしたし。
もちろん紙凹版画のことはご存知だと思うんですけれどね。
ただプレス機の使い方だけは
聞いてもよかった気がします、ふふふ。
- 伊藤
- あはは、そうですね。
- 湯浅
- でも、それゆえに、すごく面白かったです。
まさこさんに
「どうしよう、連絡できないかも」
っていう時期が3か月ぐらいあって、
「いま見せられるものは何もないけれど、
やってないわけではない」って言った気がします。
- 伊藤
- そういえば連絡が来ないなっていう時期が
3か月ぐらいありましたね。
「待ちます」って返信しましたね。
いいものを紹介したいっていう気持ちだから、
急かして「何日までにやって」ということじゃないって。
- 湯浅
- まさこさんがわたしを急かさなかったことが
すごくありがたかったです。
「原画30枚を描き下ろした方が楽かも?」
って何度も頭に浮かんで。
でも「いや、版画でしょ」っていうのがあったし、
沖縄のうちわとパキスタンのうちわとインドの壺を、
とにかく版画で仕上げてみたかった。
同じものを10枚描いていたら、
きっとつまらないものになったと思います。
- 伊藤
- 原画で何枚も作品を描いて
「もうインドの壺なんて描くの嫌!」
ってなったらもう‥‥!
- 湯浅
- それこそ「うまくなっちゃった!」とか。
ふふふ。
- 伊藤
- そっかそっか。
- 湯浅
- この3つはとても好きなモチーフだから、
10枚ずつ自分でマットをつけて並べてみても
「それぞれ違うなぁ」っていうのがあるし、
プレス機でよれたりとか線が入ったりしたのも
いいなあと思っているんです。
- 伊藤
- 描きたい、好きなモチーフを見つけるのは
どうやって?
- 湯浅
- わたしは引っ掻いて描く画法なんですが、
道具が、以前はマイナスドライバーだったのが
割り箸になり、今は針を使っているんですね。
かなり細い手芸用の針を使うと、
うんと細い線が引けるから、
描くものがほうきや髪の毛になるんですよ。
で、ほうきもひと通り色々なものを描いて、
じゃあ髪の毛ということになると、
江戸時代の花魁の髪形(伊達兵庫、立兵庫)の絵を
ちょっと描き始めた時期があって。
でもそれってちょっと正気の沙汰じゃないんです(笑)。
- 一同
- (笑)
- 湯浅
- 誰も求めてないし!
- 伊藤
- ふと冷静に(笑)。
- 湯浅
- ほかにも三つ編みの絵を、
個展でちょっと並べようかと思ったんですが、
夫が「なんか少し怖いかも。
モノと違って変な意味合いにとられる」って。
「‥‥だよね、だよね、三つ編みは違うかもね」
って言って。
- 伊藤
- ちょっと偏愛的な‥‥。
その細かいものを描きたい気持ちって?
- 湯浅
- 線を引く、引っ掻くのがとにかく好きです。
- 伊藤
- 引っ掻くのが好きなんだ。
- 湯浅
- 塗るっていうよりは、
引っ掻く、削るのが好きです。
まさこさんがお持ちの封筒みたいな箱の絵は、
白のオイルクレヨンに
グレーベージュのアクリル絵の具をのせて、
割り箸で全面引っ掻いて描きました。
- 伊藤
- ええーっ?
- 湯浅
- 竹のかごとか、描く線の多いものが
モチーフとしては最高に好きなんですけど、
最近は線だけでなく、面も意識しています。
塗って、削って、塗って、削って、を繰り返しながら
紙を貼ったり。
絵の具を重ねるのではなく、
平面を立体的に凸凹にすることで線や面を描いています。
- 伊藤
- 面白いです。
- 湯浅
- なので版画って向いてたんですね。
削ることができるから。
本当に今回は
すごくいい機会を与えていただきました。
思い通りにいかないことが面白かった。
そもそも、「うまく線が出てるかな」とか
刷り上がるまでわからない。
プレス機を回した後おそるおそるはがして、
「うわっ、また駄目だった」とか、
「おお、水をはけで塗るとこんなにきれいに出るんだ」
とかいう発見を日々重ねながらたどり着いた30枚です。
途中、友達に「ようやく線が出た」と見せたところ、
「良いね」と言われたので得意気に部屋に並べていたら、
夫に「これで良いと思っているの?」
って言われたんですよ。
- 伊藤
- 家庭内にプロデューサーがいるんですね。
- 湯浅
- 「全然ダメ? これじゃダメ?」
「これを自分の作品と言えるの?」
「でも線出てるから」
「線が出てるだけじゃあねえ」
「‥‥ですよねえ」って。
- 伊藤
- おふたりのやりとりを聞くと、
哲也さんってそういうふうにもおっしゃるし、
応援役でもあるし、すごくいい関係ですよね。
- 湯浅
- そこでもう1回彫り直したんですが
「線が走ってない」と言われて。
- 伊藤
- 伸び伸びとしていない、っていうことかな。
- 湯浅
- そういうことですね。
「うまいけどつまらない」って。
「うわー、なんか結構苦労してここまで刷ったけど」
と思いながらも何度か彫り直したら、
「こっちの方が断然いい」とようやくOKが出て、
沖縄のうちわ合格! っていう感じでした。
パキスタンのうちわは、
1回目が上手く行かずに
2回目に良い版ができたものの、
版の限界で刷りに失敗が許されなかったので、
ウエスにするから「いらない服全部ちょうだい」と
夫にも協力をあおいで。
- 伊藤
- 版をきれいにして。
- 湯浅
- その、インクを拭き取る作業がとても重要でした。
- 伊藤
- メリハリがつくんですもんね、要するに。
- 湯浅
- 拭きすぎるとカスカスして、
せっかくインクが入った線も消えちゃうし、
「ここら辺はちょっと汚れっぽい部分を
残したいんだよなぁ」ってところを加減しながら
拭いていくんですよ。
この拭く作業が紙凹版画は
一番難しいってことに気付きました。
インドのうちわがどうやっても
つまらない絵にしかならなかったので、
うちわは諦めて「壺」にしたのですが、
この壺が一番インクをのせる範囲が多いので、
拭き取り方もいろいろと工夫しました。
真っ黒に刷ったものと、
そんなにのせないバージョンとに分けて刷り。
あれはもう、ドキュメンタリー映像を
撮ってほしかったぐらいたいへんでした。
半年間、本当に試行錯誤して。
- 伊藤
- 連絡来ないなぁ、
きっと今、いろいろ試しているんだろうな‥‥
とは思っていたけれど、
そんな大変なことになっていたとは!
そうそう、今回、額とマットもご自身で
やっていただいたんですよね。
- 湯浅
- はい、マットの付いた状態で撮影していただいて、
額への最後のセットはわたしがしています。
額は家具職人の友人に30枚つくってもらいました。
「頑張った」って言ってました。
- 伊藤
- すごくきれいですもの。
- 湯浅
- そうですよね。
家具の人なので、木を組んでもらって。
横を見るとわかるんですが。
- 伊藤
- まさしく家具のつくり方ですね。
- 湯浅
- 最初、額縁屋さんに「このつくり方で」って言ったら
「無理ですよ」って言われてしまって。
1回オイル塗装をした上に、
若干白を塗ってもらうという面倒なことを、
その友人にさせてて。
- 伊藤
- はあ‥‥!(ため息)
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- ほんとうにありがとうございます。
アーティスト監修のもとで
完成形としてお届けできるということですね。
あとは飾るだけ。
ほんとうにありがとうございます!
- 湯浅
- こちらこそありがとうございます!
試行錯誤も創作のうち
- 伊藤
- なぜ哲也さんは「紙凹版画」をご存知だったんでしょう?
- 湯浅
- ひそかに版画について
調べてくれていたらしいんです。
「エッチングじゃないしね」と言ってました。
- 伊藤
- 哲也さんは、いつも景子さんのこと考えてる。
もしかしたら、牛乳パックが使えるということで、
手軽だと思われたのかな?
- 湯浅
- でも牛乳パックだと、
使える面積が小さいんですよ。
折れ線もありますし。
- 伊藤
- なるほど。
- 湯浅
- 外国の人が牛乳パックで、
すごく細かい版画をつくっている
動画を見せてもらったりして。
- 湯浅
- 「なんだかよくわからないもの」の依頼を受けてからは、
夫もいろいろ調べてくれて、
ご飯を食べながら、
「紙凹版画とは」の特性や作り方を
説明してくれるんだけれど、どうにも分からない。
「どうしてそれがそうしてそうなるの?」
っていうとこからスタートでした。
- 伊藤
- そんな家族の時間にまで!
- 湯浅
- 最初は牛乳パックや、
プラ塩ビシートを削って試してみたのですが、駄目で。
しかもプレス機のハンドルが重くて、
回せど回せど、色がつかない。
インクも油性か水性か、
アクリル絵の具なのかですごく迷って、いろいろ試して。
- 伊藤
- その試す作業は楽しいこと?
- 湯浅
- 楽しい、つらい、というよりは、
「自分で知りたい」時間ですね。
版画をされている人に聞けば早いんですけど。
まずは自分で試そうと思って。
- 伊藤
- 結局紙はどうなったんですか?
- 湯浅
- 何百種類もある紙から
自分の好みのものを買ってきて試したんですが、
プレス機を1回まわすのに
頭の血管が切れそうなぐらい力が要る。
- 伊藤
- 重いんですね。
- 湯浅
- 「たぶんこれ間違ってるな」って思ったけど、
でもそのくらいの重さで回してようやく
線が出ることに気付いたんです。
それまで100枚以上刷ってみたものの、
全然線が出なくて、
どうしよう、まさこさんに
「できない」とは言えないし、
「とりあえず線が出るまでやる」と決めて
試行錯誤を繰り返すうちに、
インクは版画用の油性の黒がいいな、とか
そのインクをどの程度塗り込むと
写るのかっていうことも分かってきて。
ただ、その塗り込む作業も
かなり力がいるんですよ。
1枚のシートにたっぷりと塗り込んで、
余分な絵の具をウエスで拭き取る。
その作業が大変ってことに
1か月ぐらいしてようやく分かって。
でもここを丁寧にやっておくと、
線がきれいに出ることが分かったので、
いらない服をウエスにして、
インクまみれになりながら何度も繰り返しました。
- 伊藤
- 版画って、刷り師さんがいらして、
専業でやってくださいますよね。
それを全部1人で。
- 湯浅
- 版画家に聞きに行かないから分からないんです。
聞くにしても、まず絶対自分で試さなきゃと思って。
で、100枚以上刷ったところで
ようやく線が出ました。
- 伊藤
- 刷るほうの紙は?
- 湯浅
- 分厚いのから、薄いのから、いろいろ試しました。
1回目薄めの紙に吸わせて、
2回目ちょっと厚めの紙にのせるといいってことも
気付いて。さらに、2回目はハケで濡らすと、
インクがよく乗るってことも気付いて。
- 伊藤
- その2回目からが本番ですよね、
きついんですか? 体力的に。
- 湯浅
- 1回目は軽くていいいんですよ。
2回目はもう全体重をのっけて回します。
そしたら今度、紙の版だから
原版が崩れちゃって。
- 伊藤
- ああ、線が潰れちゃうんですね。
- 湯浅
- はい。だから原版も何度も描き直して。
ようやく色の出し方と
紙とインクの全ての相性が分かった時、
「よし、もう本番」と思って刷ってみたら、
版画は反転することを忘れてて!
当たり前だけど、
原版は左右反転で彫らなきゃいけない。
「仕上がりが何か変だな」とずっと思っていたら、
「あ、反転か」って。もう、ほんとに。
それで反転した絵で原版を彫って、
ようやく本刷りになりました。
- 伊藤
- 試行錯誤の連続‥‥。
最初に刷ったのは、
完成した3つの版画のなかの、どれだったんですか。
- 湯浅
- はじめは沖縄のクバ(ヤシ科の植物)の
うちわを選びました。
「なんだかわからないもの」ということで、
ぱっと理解できないものにしようと。
それで「うちわ」シリーズがいいかなと思い。
パキスタンのうちわと、
インドのうちわにしようと考えましたが、
インドは難しくて、壺にしました。
パキスタンのうちわは、
線をたくさん削れる絵だったから。
普段から線を引っ掻いて描くことが多いので楽しくて、
刷り方の要領も分かったから
仕上げることができました。
版画とはいえ、1点1点、全て違う仕上がりになったので、
結局のところ「原画」に近い版画っていう
説明をしないといけないかなって。
- 伊藤
- 一点もの、ですね。
- 湯浅
- 仕上げる時は1枚1枚に
コラージュをしています。
色が違う紙を貼ってあるものもあるし、
とにかく全部違うものになりました。
- 伊藤
- うんうん。でもそれ、うれしいです。
「weeksdays」のみんなで拝見したとき、
「これがいい」「わたしはこれ」って、
全員、欲しいものが違ったんです。
たぶんみんなその時に飾る場所を想像してたんでしょうね。
「あ、これはよかった」って。
- 湯浅
- 色の入り方がいちばん違うのはインドの壺なんですけど、
これ、わたしは割と気に入っています。
本当に、粗いし下手ですが、それだけに、
「これは駄目」とおっしゃってくださったあの方に
見ていただきたいです。
- 伊藤
- ほんとですね。
- 湯浅
- 技術的には下手でも、処女作ってたぶん
いちばんいいと思うんですよ。
版画も、こなれて上手くなってしまったら、
きっとわたしらしくなくなってしまう。
自分では「わあ、すごくいいのができた」って
思っています。
- 伊藤
- 夫の哲也さんはなんとおっしゃってました?
プロのデザイナーの目から。
- 湯浅
- 「ちょっと壊れた感じがしていい」と言われました。
- 伊藤
- 壊れた感じ。なるほど。
- 湯浅
- 刷りとった中から10枚ずつを厳選しました。
今回の失敗作は
自分の作品へのコラージュに
再利用しています。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 湯浅
- 結局のところ、プレス機はやはり
わたしの使い方が間違ってたみたいで。
- 伊藤
- ええーっ? そんなあ。
- 湯浅
- 先日、知人のギャラリーに行った時に、
偶然、美術家の方と居合わせて。
- 伊藤
- あの大御所の!
- 湯浅
- 思い切って、
「つかぬことをお聞きしますけど、
版画のプレス機って、血管切れそうになりますか」
って言ったら、
「ならないし、たぶん間違ってる」って言われて。
- 伊藤
- あはは!
- 湯浅
- 「そんなことしちゃいけない」とまで言われました。
ある意味、力の要る作業だけれどそこまでじゃない、
その機械がたぶん古すぎたんでしょうと。
- 伊藤
- 使い方もあるかもしれないけれど、
機械のメンテナンスの問題もあるかも?
- 湯浅
- 夫が「もう刷るのは僕が」って言ってくれたけれど、
最後まで自分でやらないと気が済まなくて。
機械のクセがようやくつかめてきた気がしたけど、
分解しそうな音がしてましたし、
もしまた版画で作品を作るのなら、
新しくプレス機を導入するのもいいかなって思います。
なんだかよくわからないもの
- 湯浅
- 結局、『田辺のたのしみ』の装画も
なんとか完成したから良かったのですが、
じつは私、風景や人以外に、
色もあまり得意じゃないんですよ。
黒とかベージュとか白とか、その感じが好きなので。
- 伊藤
- 確かに、そうかも。
でもだからこそ部屋になじむのだと思う。
湯浅さんはモノが好きってことなのかな?
- 湯浅
- はい、モノが好き。
- 伊藤
- 器や道具もお好きですよね。
- 湯浅
- どこの国のいつの時代の誰がつくったか分からない、
名もない職人がつくったような器や道具が好きです。
今はもう使われないというけど、
旅先でお土産に買うんですよ。
そういうものが絵のモチーフになる事が多いです。
今回の版画に関しては、
そんな好きなモチーフを描きました。
- 伊藤
- 最初、わたし、どんなリクエストをしたんでしたっけ?
- 湯浅
- まさこさんからのリクエストは、
「なんだかよくわからないもの」がお題でした。
- 伊藤
- うんうん。なるほど。なんでそう思ったのかというと、
色の重ね具合とか、テクスチャーだけで、
実体が何かわからないくらいのほうが、
いろんな人の部屋に合うと思ったんです。
洋間にも畳の部屋にも。
何が描かれているのかよく分からなくて、
でもなんだか部屋に馴染んで、
しかも、ひとつあるとうれしい、
みたいなものをと漠然と言ったら、
景子さんなら形にしてくれるんじゃないかなって。
しかも「版画がいいな」って。
- 湯浅
- そうなんですよ。
ところが私、版画、やったことなくて。
- 伊藤
- でもほら、たぶん面白がってくれる人だと思って。
慣れてないからいいと思ったの、逆に。
- 湯浅
- まさしく、そこなんです。
下手でも同じものを描き続けるとうまくなっちゃうから、
絵がつまらなくなってるなと思って、
最近は抽象画を描きたいと思っていたところでした。
- 伊藤
- 個展で「うまくなっちゃったね」って言われたとか。
- 湯浅
- すごい方がいらして。
「モノ」を描いた展示だったのですが、
「上手くなっちゃったね」って。
私、両手利きなので、
左も右も使って調整するんですが、
どこかで綺麗にまとめなきゃと考えてしまう事があり、
それが自分でもつまらないなと感じていて。
「これ駄目だね、これもよくない、これもよくない」と
以前にも描いたことのある作品すべてを指摘されて
「どうしてわかったの?」と愕然としました。
見る人が見れば分かるんだっていうのが怖くなって。
もともとギャラリーをなさっていた方なので
本質を見極めることができるんだと思います。
- 伊藤
- そんなに鋭い人がいらっしゃるんですね。
- 湯浅
- それで「ちょっとまずいな」と思ってた時に
まさこさんから「なんだかよく分からないもの」
「それも版画で」というリクエストが来ました。
- 伊藤
- じゃあ、タイミングよかったんだ!
- 湯浅
- でも、版画は経験がないし、よくわからなくて。
絵の描き方を習ったこともありません。
それで知り合いのお父さんが使っていた、
40~50年前のプレス機を貸してもらいました。
そもそも版画でも、
木版、銅版、シルクスクリーン、
といろいろあるじゃないですか。
- 伊藤
- 石版もありますよね。
- 湯浅
- ただ、版画が向いているかもと思ったのは、
私「削って描く」んですよ。
クレヨンで全面を塗って、アクリル絵の具をのせて、
針とかで削って下地を出して描くんです。
だからたまに「版画ですか?」って聞かれる。
で、まず木版画をやってみました。
これが、もうなんかね、全然だめでした!
- 伊藤
- そんなぁ(笑)。
それはなぜ? 彫刻刀を使うのが?
- 湯浅
- 自分の思い通りの線が出ないんです。
それで調べていくうちに
「紙凹版画」にたどり着きました。
特殊な紙を削ってプレス機にかけるんです。
ところが、プレス機は手元にあるけれど、
その特殊な紙っていうのが何か分からない。
- 伊藤
- そうだったんですね。
- 湯浅
- プレス機の使い方はYouTubeで見て、
フェルトを挟むんだとか、
こうやって圧を調整するんだとかを知りましたが、
版にする紙が分からなくて。
じつは紙凹版画は、夫から
「牛乳パックや段ボールを使って、
版画作品を作っている人がいるよ。
たぶんこれが一番向いてると思う」
って最初に言われたんです。
でもその「紙凹版画」の意味が分からないから、
画材屋に行って「紙凹版画をやりたい、何がいりますか」
って聞いたところ、その人も「紙凹版画?」ってなって。
- 伊藤
- やってる人が少ないんでしょうね。
- 湯浅
- 夫が「おそらくメディウムが必要」と言うので
わからないままに店で聞いても
「ちょっと分からないです」。
- 伊藤
- あはは。
- 湯浅
- 紙凹版画ってほとんどの人が知らなくて。
- 伊藤
- 美大の人は知ってるのかな?
- ──
- (美大出身スタッフ)いや、初めて知りました。
- 湯浅
- 著名な美術家の方も「何? 紙凹版画って」って
おっしゃってました。
コンペにかけた日々
- 湯浅
- 甲斐みのりさんの本の装画を担当してからは、
いろんな方が見てくださって、
展示の話をいただいて‥‥
ということで現在にいたります。
- 伊藤
- ここ数年のことなんですね。
- 湯浅
- そうです。
それ以前は、コンペに出して、
この絵でやっていけるのかな? というのを、
何年かかけて探っている状態でした。
- 伊藤
- 「この絵でやっていけるのかな?」っていうのは
「売れるのかな?」っていうことと、イコール?
- 湯浅
- コンペはたくさんの審査員の方が見てくださるので、
「いまのこの絵で間違ってないか」、
「自信を持って描き続けていいか」という
自分への確認が欲しくて。
まさこさんが絵を見に来てくださったのが2020年の夏で、
神宮前のHB GALLERYでしたね。
あれも、コンペで勝ち取った展示なんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね!
- 湯浅
- 何人か審査員がいらしたんですが、
「藤枝リュウジ賞」に選んでいただいたんです。
- 伊藤
- ちょっとかわいい感じの
イラストレーションを描いている方ですね。
- 湯浅
- そうですそうです。
HB GALLERYのコンペは3年がかりでした。
1年目は1次審査通過のみ。
2年目は最終選考に名前があったので
「もう次こそ絶対」と思い、
3年目にいただきました。
賞を獲った人は個展を開催する権利をいただけるんですよ。
まさこさんが買ってくださった絵はその時のものですね。
- 伊藤
- そっか、4年前なんですね。
じゃあ、ほぼデビューじゃないですか、それ。
- 湯浅
- そうです。東京のほぼデビューの個展でした。
- 伊藤
- そうなんだ! ずっと前から知っているけれど、
そういうことだったんですね。
あの時は、ギャラリーに入ってぱっと目が行き、
「これください」みたいな感じでしたね。
- 湯浅
- ふふふ、まさこさん、いつも早い気がします。
- 伊藤
- 器とか、なんでもそうですよ。
- 湯浅
- 同じHB GALLERYの個展には
料理家の坂田阿希子さんも来てくださって。
- 伊藤
- お店に飾る絵を、っておっしゃってましたね。
- 湯浅
- はい、大きい絵を「洋食 KUCHIBUE」用にと。
それを見て、「お店で見て気になってました」という方が、
直近の個展にも来てくださったりして。
- 伊藤
- 坂田さんの思い、わかる気がします。
お店の空間にその絵がある姿を想像して、
空間ごと「あ、いいな」と思ったんですよ。きっとね。
- 湯浅
- ありがたいことに、そんなふうに、
今、東京では、点と点がつながり始めている状況です。
まだ手探りなんですけれど。
ちょっとずつちょっとずつ。
- 伊藤
- minä perhonenで展示をなさいましたが、
そのご縁もKUCHIBUEから、ですか?
- 湯浅
- 皆川さんが審査員をされてた
「宮本三郎記念デッサン大賞展」でのコンペで
作品は見てもらっていました。
- 伊藤
- そういうご縁が。
いろんな人が審査員っていうのは、
すごく大事なことなんですね。
- 湯浅
- そうだと思います。
代々木上原での個展に皆川さんが来てくださって、
「あの時、審査をしていただきました」と伝えたら、
その時に出品した作品も覚えてくれていて
「minä perhonenのeläväでもぜひ展示を」
というお話をいただきました。
- 伊藤
- そうなんですね。
VISON(三重県の商業施設)に小さなホテルがあって、
そこにも湯浅さんの絵がかかっていました。
- 湯浅
- クリエイターが部屋をプロデュースする、
というコンセプトで、
プロデューサーの中原慎一郎さんに
声を掛けていただき参加しました。
中原さんはコロンブックスのお客様で
面識があったんですが、
わたしが絵を描いてる事を知らずに、
「月光荘」の展示に来てくださって
びっくりされていました。
コロンブックスをやっていたことによって
昔からお付き合いがあった方と、
今、違う形で仕事をさせてもらっているということが
結構あるんです。
- 伊藤
- とはいえ「知り合いだから」でその人たちが
仕事を依頼することは絶対ないから。
- 湯浅
- ありがたいことです。
本当にまだまだこれからです。
たくさんの方に見ていただきたいです。
いけばな小原流の月刊誌『挿花』の表紙絵を、
2022年と2023年の2年間、
描かせてもらったんですけど、
担当デザイナーのサイトヲヒデユキさんは、
「洋食 KUCHIBUE」で
わたしの絵を見てくださっていたことも
声を掛けてもらったきっかけのひとつだったそうです。
- 伊藤
- へえー、面白いつながりですね!
- 湯浅
- その『挿花』に「ギャルリももぐさ」の
安藤雅信さんが連載記事を書いていて、
表紙絵を見た奥さまの安藤明子さんから
「展示を」という話をいただいたり。
- 伊藤
- 仕事ってそうやって広がっていくんですね。
依頼されたお仕事と、
自分で描きたいものを描くのとは、
どういうバランスなんでしょう。
- 湯浅
- 依頼されたお仕事にはこまかなリクエストがあります。
具体的に、
「仕事で使うハサミの絵を描いてください」とか
「このお菓子を」と、
分かりやすく投げられるものが好きです。
甲斐みのりさんの本に関して言うと、
1冊目『たべるたのしみ』がクリスタルボンボン、
2冊目『くらすたのしみ』がワンピース。
それも具体的に「このワンピースです」と。
3冊目の『田辺のたのしみ』は、
和歌山の熊野古道とミカンの木という
リクエストだったんですが、
それがなかなか描けなくて。
モノと風景って全然違うんですよ。
- 伊藤
- 違うんだ!
- 湯浅
- そう、風景が苦手なんです。
人の顔の絵もたぶん描けないです。
熊野の石畳と木のある風景を描いたら
編集の方から
「地獄絵図を描いてくれとは言っていません」
って!
- 伊藤
- あはは、そんな。
- 湯浅
- わたしとしては枝にとまった
ヤタガラスを描いたのですが、
木に刺さってるふうに見えたみたい。
- 伊藤
- 地獄絵図!
- 湯浅
- なんていうんだろう、もう、
『八つ墓村』みたいになってたんですよ。
- 伊藤
- おどろおどろしくなっちゃったんだ。
- 湯浅
- 自分的には、「これなら」と思って
自信満々で送ったら、すぐ電話がかかってきて。
「木をよく思い出してください」、
「緑で、こうこう、こうですよ」って言われて。
- 伊藤
- ネットで「熊野古道」で画像検索はしなかった?
- 湯浅
- しました。歩いたこともあるんですけど‥‥。
- 伊藤
- なかなか明るい方向に行かない。
絵は家具に似て
- 伊藤
- 湯浅さんの作品は、
どんな方が購入されるんですか?
- 湯浅
- それが、おもしろい現象があって。
あくまでも私の個展での印象ですけれど、
名古屋から西は
「一軒家を買ったから自宅に絵が欲しい」、
「引っ越し祝いに絵を贈りたい」など、
家に絵を飾るという文化が
当たり前にあるように思います。
名古屋では20代、30代のうちに
家を建てたり購入する人も多いんです。
だからなのか、インテリアの一部として絵や器など
「いい」と思ったものにお金をかけるっていう
若い人が増えてる気がします。
そういう事情は土地土地で違うのが面白いですね。
家具が好きな人も多いですよね。
- 伊藤
- そう、家具!
「ウェグナーのYチェアを買う」みたいな感じと、
絵を買う感覚は近いように思います。
絵を買う時って、自分の部屋に合うかなとか、
そういう感覚がだいじですから。
だから「好きなものを買う」のがいいんです。
ちょっと頑張れば買えるという価格でも、
部屋に好きな絵が1枚あると気持ちがいい。
- 伊藤
- 湯浅さんの絵って、女性的すぎない加減がいいんです。
かわいらしいものもあるんだけど、
「かわいい」に寄り過ぎていない。
クッキーの缶など食品のパッケージなど、
いろいろなところで目にします。
- 湯浅
- Coffee Kajitaの紙袋とか?
- 伊藤
- そうそう。
湯浅さんが手がけたパッケージを見て、
包装紙になったり、紙袋になったり、
他のものと組み合わされることで、
かわいいものをつくる人なんだな、とも思っていました。
それは夫の哲也さん(グラフィックデザイナーの
湯浅哲也さん)と一緒にお仕事をなさっているゆえ、
というのもあるかなと思うのですが。
- 湯浅
- そういった仕事も含め、絵を描くことは、
最初、夫が背中を押してくれました。
「あ、じゃあ描かせてもらいます」みたいな。
もちろん他のデザイナーからの依頼も
増えてきていますけれど、
最近は絵の依頼がありきで、夫のデザインで、
っていう流れもできつつあります。
- 伊藤
- (部屋にかけている絵をさして)
ちなみにこれは景子さんの作品ですよ。
- 湯浅
- この当時のもの、下手ですよね。
下手だからいい気がするんです。
でも今回、版画に挑戦したおかげで、
ちょっと初心に戻ることができて、
自分としては嬉しいんですよ。
- 伊藤
- じゃあ「そもそも」からお話ししましょうか。
景子さんと知り合ったのは、
わたしが哲也さんと仕事で
ご一緒したのがきっかけでしたね。
- 湯浅
- そうですね。
- 伊藤
- 景子さん、その頃は「コロンブックス」っていう
アートブックを扱う店をお手伝いをされてて、
今みたいには絵を描かれていなかった。
- 湯浅
- 絵は10代のころから描いていたけれど、
コロンブックスを27歳で始めて、
38歳ぐらいまでの10年は
描いていなかったんですよ。
- 伊藤
- 全然描いてなかったの?
- 湯浅
- まったく描いてなかった。
- 伊藤
- 19歳から27歳の活動はどんな感じだったんですか。
- 湯浅
- コンペに出したり、
名古屋で小さな個展を開いたり。
でも絵で食べていくなんて、
一部の人しかできないことだと思ってました。
趣味で描く分にはいいけれど、
これを生業として、とは全く思っていなかったんです。
- 伊藤
- 描かずにいられたんですか?
- 湯浅
- 不器用なので、
その時は本屋のことだけに専念していました。
- 伊藤
- コロンブックスの仕事をやめたのは、
どんないきさつが?
- 湯浅
- コロンブックスをやっていた10年は、
夫は印刷会社に勤めていて、
印刷のことを勉強していたんです。
10年経ち独立しようとなった時に
本屋の形態もやめました。
その部屋はデザイン事務所としてそのまま借りて。
店をやめたことがきかっけで、
また絵を描き始めようかなって。
- 伊藤
- やめて、ちょっと時間ができた?
- 湯浅
- そうです。「私、なにかできたはず」と思い出して。
- 伊藤
- へえー。
- 湯浅
- それで、久しぶりにしまい込んでいた画材を引っ張り出し、
また描き出したらどんどん面白くなっていって。
そのうちに自分の立ち位置を確認してみたくなり
コンペに出してみたんです。
- 伊藤
- 賞を獲ったりしてましたよね。
- 湯浅
- はい、それからいろいろなところから
展示の依頼をいただいて、
今に至る‥‥というふうですね。
- 伊藤
- そして、絵が売れるようになっていって。
- 湯浅
- はい、コロナ前の2019年12月、
銀座の月光荘という画材屋の画室を自分で借りて
東京で初めての個展をひらきました。
その時にmille booksの編集の方が見に来てくださり、
のちに「甲斐みのりさんの本の装画」の
依頼をいただきました。
それで表紙絵を描いたのが甲斐さんの
『たべるたのしみ』です。
- 伊藤
- すばらしいですね。
実際に画廊に足を運んで見にきてくださるだけじゃなく
装画でいろんな人に、
それこそ何千人が見るお仕事につながった。
- 湯浅
- 正式に装画として流通したのはそれが初めてでした。
機嫌のいい、一枚
ティーポット、
カトラリー、
鍋に鍋敷。
ほうき、
バケツ、
テーブルに椅子。
身のまわりに置くものは、
長い時間をかけて、
気に入ったものを少しずつそろえてきました。
ハッと気がつくと、
美しいながらも、
私がえらぶものはほとんどすべて、
「用途があるもの」。
じっさいには使わないものもあるけれど、
それでも、
「お湯をそそぐ」とか、
「座れる」とか。
ものに対して、
なにか役割があるものをえらんできたのは、
どうしてだろう?
理由は今でもわからない。
ところが、
数年前から、
ちょっと様子が変わってきました。
「道具」としての役割はないけれど、
絵や小さなオブジェがあると、
なんだかうれしい。
見慣れたいつもの部屋が、
ちょっと機嫌よさそうな顔をしていることに、
気づいたのです。
機嫌いいのは、
「部屋」というより、
「私」なのかもしれないなぁ。
今週のweeksdaysは、
湯浅景子さんの版画。
部屋の景色を変えてくれる、
一枚をぜひ。
「機能」はデザインできる
- 伊藤
- zattuのバッグは外国の方も
好きそうだなと思うんですが、いかがですか。
- zattu
- 展示会にいらした海外のバイヤーさんは
「日本人らしい」って言っていました。
- 伊藤
- そうなんですね。
どんなところが、なんでしょう。
「ちょっと気が利いてるところ」かな?
- zattu
- はい、そんなことを言ってました。
でも、実際にはzattuは、
「とことん便利」にはつくっていないんです。
- 伊藤
- たしかに「全部が便利」というわけではなくても、
日本らしい製品って、
「ここが?!」という便利なところがありますよね。
たとえば日本車には、
駐車券を挟むところがあったり。
- zattu
- 傘立てがついていたり。
- 伊藤
- 小銭を入れておく場所があったり‥‥。
時に便利すぎるなぁと思うけれど、
zattuのバッグは、
ちょっと気が利いてるけれど、
気が利き過ぎてない。
zattuにも「わたしの気持ちを満たしてくれる」
というよさがあるんだと思います。
- zattu
- バッグってツール(道具)なんですが、
絶対に大事なのは欲しい、使ってみたいという
気持ちのドアを開けるデザインだと思っています。
私たちがそうなんですが、伊藤さんも、
第一印象で90%決まることってありませんか?
会った瞬間に「この人とは話せる」ってわかったり。
- 伊藤
- そうです。
- zattu
- それと同じで、モノも見た瞬間に90%は
「あっ!」って心が開くかどうかだと思うんですよ。
ithelicyやzattuのお客さまと接していると、
そういう方が多いという印象がありますね。
- 伊藤
- それはやっぱりいろんなものを見て、
いろんな経験をされてるからですよ。
迷っている方も多いと思うんですよ、
何を買っていいかわからない、みたいな。
- zattu
- そうなんですね。
うちのお客さま、強い人が多いのかも?
- 伊藤
- ふふふ、そうかもしれませんね。
それにしても「とことん便利にはつくっていない」
というのは、おもしろいですね。
- zattu
- ちょっとだけ不便な方が、
丁寧な人間性をつくるような気がするんです。
たとえばトートの開口部にファスナーがなく、
中を見せたくなかったら、
たぶんそこにスカーフをかけたり、
自分で考えて、それがオシャレになる。
そういうことをなさる方と
おつきあいしたいって思うんですよ。
家や部屋で言ったら、
新しくなにもかもが出来上がっている部屋ではなく、
自分たちでリフォームして住むほうを選ぶのが、
うちのお客さまなんだと思うし、
私たちもそんな方がたに向けてつくっているんです。
- 伊藤
- トートバッグにファスナーやスカーフを
付属品にするのではなく、
そこから先はお客さまの自由で、
っていうことですね。
- zattu
- その方が、お客さまが楽しんでくれそうな気がします。
- 伊藤
- とは言うものの、リュック、
よく考えられているなぁと思うんです。
モノが入れやすかったり、サッと出せたり、
紐をキュッとするとき引っかかりがなかったり。
そういうことがすごく気持ちよくて。
- zattu
- ほんとですか。
- 伊藤
- はい。それに、わたしたちのチームの
20代の女の子も第一印象で
「欲しいです!」って。
- zattu
- 嬉しいです!
全てが便利じゃないとは言っても、
このリュック、安全性を考えているんですよ。
最近、パリの治安が悪くなったという話を聞いて、
巾着型だと手を入れて中を探られるから、
金具で少し安全性を保ちましょう、とか、
そういうことを含めてのデザインなんです。
正面のポケットまわりも
本来ならつまみ縫いという縫い方をするところに、
ひとつステッチを打ったことで、
そこで折り紙みたいに折れて、屋根になる。
だから開けても中は見えないんです。
- 伊藤
- そうですよね! そのおかげで、
ちょっと立体的にも見えますね。
- zattu
- はい、視覚にも「え?」っていう印象が出るから、
人が「なんだろう」って、
なんとなくでも、目を向けてくださるんじゃないかな。
- 伊藤
- ポケットにファスナーや蓋をつけずに、
立体的な縫製にする。
すごいアイデアだし、デザインだと思います。
- zattu
- それに、ファスナーやボタンは、
ちょっと面倒だなって思うこともありますよね。
私たちって、どこか横着なところがありますし(笑)、
ちょっとせっかちな気分のときもある。
それに、工場のもう80〜90歳ぐらいかな、
会長さんに言われたことがあるんです。
「アウトドアとか登山とかのリュックは、
休憩や目的地に着いた時じゃなければ、
途中でほとんど荷物の出し入れをしない。
けれども、シティで持つんだったら、
シティの考え方でつくらなくちゃ、ダメだよ」って。
- 伊藤
- シティ。外国の方ですか?
- zattu
- いえいえ、日本のおじいちゃんです。
- 伊藤
- わぁ、いいですね。
- zattu
- そうなんです。「シティの考え方」と言われて
「え?」って返したら、
「やっぱりお財布を出す、なにかちょっとしたものを出す、
そういうときに、多少の出し入れのラクさは
考えてあげた方がいいよ」って。
たとえば登山用のリュックは、
山の五合目まで登らないと開けないから、
途中での細かいものの出し入れは、
あんまり関係がないわけですよね。
- 伊藤
- ところが、シティでは。
- zattu
- シティでは、電車に乗ったり、
ちょっと買い物をするのにお財布を出したり。
- 伊藤
- おじいちゃん、すごいですねぇ。
- zattu
- そうなんです。
「どこで使うかのニーズによって、
やっぱり考え方を少し足してあげなきゃいけない」って。
でも、私たち、あんまり便利にするのは嫌だから、
必要最低限にしとこうね、って。
- 伊藤
- その便利の足し算はするけれど、
なるべく工夫で、ってことですか。
- zattu
- そうです。やっぱりデザインをしないと、
ブランドにはならないので、
機能がある、いいデザインをしようと、
そういう考えです。
デザインしながら機能を考えるのか、
機能を考えながらデザインするのかは別ですけれど。
まず大枠の「かっこいい」を最初に考えて、
後のポイントのところで機能を大事にしつつ、
でもやっぱりデザインがあってこそ、
というところに戻ったり。
さっき言ったルービックキューブみたいにというのは
そういうことでもあるんです。
- 伊藤
- 「シティで使うことを考える」という
おじいちゃんの一言は、
そのキューブの一面だったわけですね。
- zattu
- 特にリュックはそうでした。
たとえば肩の部分(ショルダーハーネス)って
すごく身体に影響するものですし、
肩から落ちたりしても使いづらいので、
そこにすごく気を遣います。
そして同じように作っても、
身長180㎝の男性が持つのと、
160㎝弱の女性が持つのとでは、
やっぱりほんとに違うんですよ。
いちばん難しいところです。
- 伊藤
- おふたりのお話を聞くまでと聞いた後では、
このリュックの見方が変わりますね。
これまで「好き、持ちたい」という一目惚れの
お客さん目線だったんですけれど、
知るにつれ、より欲しくなります。
- zattu
- 嬉しいです。
ちなみに、持ち手の素材も撚糸で、
1枚仕立てなんです。
リュック本体の生地がやっぱりゴワゴワするので、
ショルダー部分の素材は身体にそうように
ちょっとだけ軟らかい素材に変えて、
本体の素材がガシッとしているのと、
使い分けています。
- 伊藤
- そうなんですね。気がつきませんでした。
- zattu
- 使ううちに馴染んでいきますよ。
- 伊藤
- この立ち姿、かっこいいですよね。
- zattu
- ありがとうございます。背負った姿を後ろから見て
「何だろう?」って気にして見てくださったら
嬉しいなというのもあって。
- 伊藤
- すごく派手なわけではないけれど、
目を引く存在だと思います。
そして、ダークカーキとブラックで、
この部分の色が微妙に違うのも、かわいいですね。
- zattu
- そうですね。微妙に変えています。
- 伊藤
- 大人の女性が持っているところが見たいですね。
お客さまには70代、80代の方もいらっしゃいますか?
- zattu
- 70代以上の方、いらっしゃいますよ!
強い女性が多いです。
はっきりと的確にものを言い、
私たちへの「こうしたら?」という提案もありつつ、
ちゃんとデザインを褒めてくださるんです。
「しっかりデザインをしてるわね」的なことを。
そういうふうに言ってもらえるのは嬉しいです。
今の世の中、簡単にモノがつくれるので、
シンプルだけど「さすが、違うな」っていう、
技のあるものをつくるため、
常に脳を磨いとかなきゃと思います。
- 伊藤
- かっこいいです。
- zattu
- 基本的に二人ともデザインするのが好きなんです。
お客さまにお金を払っていただく以上は、
どこかが違ってステキじゃないと。
- 伊藤
- ほんとうにそうですよね。
お話、たくさん聞かせていただきまして、
ありがとうございました。
- zattu
- いえいえ、とんでもないです!
こちらこそありがとうございました。
二人で考えて、三人で決める
- 伊藤
- zattuのバッグは、シンプルに見えるんですけれど、
じつはとてもデザインされていますよね。
- zattu
- もともとブランドのコンセプトが
「シンプル」なんですけど、
実はよく見るとデコラティブなんですよ。
だけど、見た目にガッと派手にはしたくないので、
シンプルでもちょっとだけ
違和感があるデザインだということが、
使っていくうちにわかるような仕掛けになっています。
前と後ろのハンドルが微妙にサイズが違うとか。
- 伊藤
- そうなんですよね。
持っているとわかる。
あと、畳めます。
- zattu
- それは、輸送費も考えたんですよ。
たとえば九州や北海道に送るときに、
畳んで運べると輸送コストが抑えられます。
この素材、畳んでもシワが復帰しますから、
Tシャツみたいに畳むことができるような
パターンになってるんですよ。
多少、残ったシワも、使ううちに戻ってきます。
ハイブランドのバッグを畳んで納品、なんて、
御法度なわけで。普通はあんこ(詰め物)を入れて
輸送コストをかけて、立ち姿のままで運ぶんですけれど。
- 伊藤
- 大きい立派な箱に入れて。
- zattu
- そうなんです。
そういうのもあって、
違うバッグをつくりたくて。
- 伊藤
- zattuを立ち上げた当初の
評判はいかがでしたか。
- zattu
- それが、なかなか“売場”がなくて。
きちっと自立するバッグが好まれる中で
こんなブランドを立ち上げちゃったものだから、
最初は大変だったんですよ。
それもTシャツみたいに畳まれて納品するので、
最初、取引先の皆さんも
「え?」みたいな感じだったんです。
- 伊藤
- そうなんですか。でも、それこそ、
「立派すぎる包装は無駄だなぁ」と、
今では思う人も多いと思いますから、
いろんな意味で、早かったのかもしれないですね。
- zattu
- ありがたいことに、
偶然にも時代の需要と一致する部分が
以前より増えたのかもしれません。
マイクロファイバースエードは
手洗いができるので、
コロナが蔓延した時には、
売場での「洗えますよ」という言葉が
購入のきっかけになったという声を
たくさん聞きました。
- 伊藤
- なるほど。
- zattu
- アルコールスプレーや
除菌シートなど持ち物が多くなったから、
軽いバッグを求める方が増えたんです。
意図していなかったことですけれど、
偶然にもそれが追い風になりました。
- 伊藤
- 今回、「weeksdays」では
zattuのリュックを扱わせていただきます。
このリュックをつくったときの
お話を伺わせてください。
- zattu
- はい。リュックをつくったのは、
同じ食事ばかりだと
変えたくなるのと一緒で
「zattuのコレクションがトートバッグばかりでも」
と思った時に、
女性が日常で使えるリュックは?
ということを考えはじめました。
アウトドアや男性用のリュックだと‥‥。
- 伊藤
- ごつい印象になりますよね。
- zattu
- そうなんです。
「でもリュックは欲しい」わけです。
それでzattuならリュックをどうデザインする?
ということを考えました。
すぐに、何パターンかのサンプルをつくりました。
その中のひとつが、
ナイロンのリュックで、
持ち手にアクセントとなる
コードハンドルを用いたものです。
- 伊藤
- そうだったんですね。
- zattu
- ハンドルは、伸びはあっても、
伸びすぎない程度の編み方はどうかとか、
カラーサンプルもいくつかつくって、
「かわいいんじゃない?」というふうに、
できあがっていきました。
結果、ちょっと「かっこいい」ものになったので、
最初、これはもしかしたら
スニーカーを愛用するような男性にも受けるかな?
と思ったんですが、
ちゃんと、エレガントなものを好む
女性たちにも受け入れてもらって。
- 伊藤
- そうですよ、
「このリュックなら持てる」と思いましたもの。
- zattu
- なんとなく、ですけれど、
女性たちが「かわいい」から「かっこいい」に
意識が変わった時期だったような気がします。
- 伊藤
- それは世の中が、ということとともに、
お客さまの年代的なこともありますか。
- zattu
- たぶんそうだと思います。
30代よりは40代、というように、
前はかわいいものを着たいとか、
かわいい感じに見えたいと思っていた方も、
意識が変わってきますよね。
また、時代的にも、
例えば女性でも大きな車に乗ったり、
ワンピースにキャップをかぶったり。
私たちも、「なんとなく、今、
女性は『かわいい』より『かっこいい』を
目指している感じ、しない?」
なんて話していたんですよ。
「この方が、これを選ばれるんだ!」
という意外なこともあって。
私たちも嬉しかったですよ。
アウトドアっぽいものよりは
日常着寄りの
リュックをつくりたかったので、
おしゃれに見えてくれるといいな、と。
- 伊藤
- 布袋さんと赤澤さんはともにデザイナーですが、
ひとつのバッグが出来上がるまでの、
お二人の役割分担はどういう感じなんでしょうか。
「こうだよね!」と、息が合った感じで
ひとつのものが出来上がっていく?
- zattu
- はい、その通りです。
- 伊藤
- 新しいものを生み出すのは、
どんなタイミングなんでしょうか。
- zattu
- まずは、全力投球をした展示会が終わると、
疲れとともに、自分たちの中に反省が生まれますよね。
「ああだったかな、こうしたほうがよかったな」って。
そのタイミングって、少し言い方が変ですけど、
放牧されているみたいにちょっとフリーなんです。
- 伊藤
- うん、うん。
- zattu
- どこか旅に出たり、休んだりすることもありますし、
仕事をしながらも、しばらく「だらける」時間があって。
仕事だけに集中するんじゃなくて、
ちょっと頭をだらけさせるというか、フリーにする。
そうするといろいろなものが目に入ってきます。
例えば新幹線に乗って、旅をしている人を見ると、
「やっぱりトートバッグは
こういうのがあった方がいいかも」とか、
人を見ても、「ああ、あの人のああいう格好が
かっこよかったなあ!」と思うわけです。
そして二人でそういう話をしたりするんですよ。
人に訊いてみることもありますよ、
例えば京都に行かれる方がいて、
「私は絶対キャスターは持たない」とおっしゃるんです。
「え、どうしてですか」と訊いたら、
「洋服に合わないから」。
2泊3日だったりすると荷物が大きくなるけれど、
あらかじめ送るなりして、
移動は絶対トートだけで行くんですって。
たしかに、国内旅行に行くときには、
大きなトートひとつ、という方がかっこいい。
海外はもちろんキャスター付きですけれどね。
そんな中から「いまどきのステキな格好をなさる方は、
どんなバッグを持つのがいいんだろう」
という話になって、だんだん、
「こういうのがあったらいいかも?」と、
次のバッグのアイデアにつながっていくんです。
- 伊藤
- ご自身でも旅や普段の暮らしで、
チェックを怠らないというか。
- zattu
- そんなにチェックをしているつもりはないんですが、
目についちゃうんでしょうね。
それは二人とも同じです。
ふだんからジッと見ているわけじゃないんですよ、
でもやっぱりステキな人を見ると、
つい観察してしまいますね。
- 伊藤
- バッグを持っていないという人、
ほとんどいないですものね。
- zattu
- そんな中、お洋服がかっこいい上に、
ステキなバッグを持つことで
更にセンスアップしてる方を見ちゃうと、
「おおー! こういうものを提供できたらいいな」
と思っちゃうわけです。
そして二人で共有して、
「この前、こういう人がいたんだけど、
いまどきの、袖の太めのものを着てらしたから、
バッグのハンドルも長い方がいいんじゃない?」
「でも短い方がかっこいいときもあるよ」とか、
そういう話をしてるんですよ。
そういうことをなんとなく頭の中に入れて、
最終的に「そろそろ次のシーズンのサンプルを
出さないとマズいよね」となったとき、
ルービックキューブの色を合わせるみたいに
デザインを構成していくんです。
最初はガチャガチャでも、だんだん面が合ってくる。
- 伊藤
- そうやってピタッとはまったものが、
展示会に並ぶんですね。
- zattu
- 最終的にはそうなんですが、
二人で一致して全部がピタッとはまったものが
毎回、できあがるわけではないんですよ。
もちろん「基本的によくない」というものは
製品化はしませんが、
ちょっとだけずれたまま、どうしよう?
というものがある。
「最後の最後に、色で迷っている」とか
「ひとつだけ気になる部分がある」
なんていう場合ですね。
そんなときに頼りにしているのが、
プレスを担当している鳥海です。
やっぱり第三者の目が入ることは大事で。
- 伊藤
- ずっとお二人が考えてきたものを、
鳥海さんが、製品化の最終段階で、
客観的に見てくださるんですね。
- zattu
- そうです、そうです。
第三の目が入るというのは、
平面が立体になるくらいのちがいなんです。
誰かが入ることによって、奥行きが出るんです。
だから信頼している鳥海に「どう思う?」って。
- 伊藤
- 鳥海さんからはどんな反応が返ってくるんですか。
正直に、厳しくても、思ったことを伝えてくださる?
- zattu
- そうですね。全部正直に言ってくれます。
もともとプレス以外のことでも
「あそこのお店に卸したらどうでしょう」とか、
いろいろな提案をしてくれる人なんですよ。
彼女は年下なんですけれど、最初に言ってくれたのは、
「やりたくないこととやりたいことを分けてください」。
つまり、私たち二人は、
やりたくないことはやらなくていいですよ、と。
- 伊藤
- 例えばやりたくないこととは?
- zattu
- 今の段階では、ですけれど、
ポップアップ(ポップアップストア=
数日から数週間など短期間だけ出店すること)とか、
他ブランドとのコラボレーションですね。
基本的には自分たちの仕事に
集中することを大切にしています。
- 伊藤
- 逆に、やりたいことというのは。
- zattu
- 極論を言うと、
「美術館などのミュージアムショップに置きたいなあ」。
そういうことを漠然と言います。
すると、彼女が探してくれるんです。
例えば最近ですと、
「センスのいいインテリアショップのお客様にも
zattuを知って欲しい」
と言いました。
そんな中でコンランショップでの取り扱いが始まりました。
- 伊藤
- そんなふうに漠然とでも伝えてもらうと、
なんとなく「これとこれ」が結びついて、
形になる場合がありますものね。
たしかにミュージアムショップ、いいですね。
zattuにピッタリです。
- zattu
- ありがとうございます。
「ホテルのお土産屋さんがいいな」っていうと、
鳥海が探してくれて、
そういうところにちょっと置いてもらったりとか。
- 伊藤
- たしかに、旅先のホテルに
これがあったらいいですね。
- zattu
- 自分が旅に行ったときにも、
いわゆるお土産だけじゃなくて、自分が
「これがあったらいいな」と思うものを
置いて欲しいなと思うんですよ。
ミュージアムショップにしても旅にしても、
似ている感覚の人が集まる傾向がありますよね。
ファッションって「基本的にはかぶりたくない」けれど、
「同じものが好きな人とかぶるのはいい」。
たとえば「このデザイナーの椅子が好き」とか
「同じ建築家が好き」という人が
「このバッグ、ステキですよ」って勧めてくれたら、
きっと、気になると思うんですよね。
そういう意味で、zattuが置かれる場所は、
なるべく私たちが好きなところに、って思うんです。
さきほどポップアップストアはやらないと言いましたが、
私たちが「このカフェでならぜひ!」と思ったら、
やってもいいと思うんですよね。
- 伊藤
- なるほど。それでzattuの取り扱い店舗が
あまり多くない理由がわかりました。
“雑材”でのバッグづくり
- 伊藤
- 布袋さん、赤澤さん、
このたびはありがとうございます。
- 布袋・赤澤
(以下、zattu) - こちらこそありがとうございます。
- 伊藤
- zattuのバッグ、わたしのまわりで
持っている人が多い印象なんですよ。
- zattu
- ありがとうございます。
- 伊藤
- まず、お二人で
ブランドをつくったきっかけを
聞かせていただけたらと思います。
なぜバッグだったのか、も、ぜひ。
- zattu
- “そもそも”を話しますと、
偶然、私たち、前の会社で一緒だったんです。
そこで、いろいろなブランドのバッグづくりを
デザインを通して
サポートする仕事をしていました。
充実した日々でしたが、
月日を重ねる中で、
年齢的にいずれ戦力外通告を受けるんじゃないかな、
「そろそろ」という時期が来るんじゃないかな、
と思いはじめました。
- 伊藤
- そうだったんですか。
- zattu
- はい。
だから、先に自分たちで
ブランドを作れば、
ずっと先まで仕事ができるんじゃないかと。
それで二人でithelicy(イザリシー)という
バッグのブランドを立ち上げました。
なぜバッグだったのかというと、
もともと私たち、基本的には洋服が好きなんです。
けれども洋服づくりを始めちゃうと、
その洋服しか着られなくなっちゃうなぁ、と。
- 伊藤
- なるほど。
- zattu
- 一番好きなものには、
手を出さない方がいいなって。
それで、バッグをつくり始めたわけですが、
ブランドデビューが「3.11」のすぐ後で。
当時は、そういうものにお金を使いたくない、
みんながそんな気持ちでいた時期でしたから、
展示会を開いても、人はほとんど集まらず‥‥。
- 伊藤
- あの時は「そういう場所に行くのもはばかられる」
みたいな雰囲気がありましたね。
- zattu
- そうなんです。その年にスタートを切り、
いまに至るわけなんです。
日本はやっぱり「袋物文化」、
いわゆる風呂敷から始まってると感じていて、
だから柔らかいものが好きなんですね。
バッグ屋さんだと、ビジネスに使うバッグは
「立つバッグ」じゃないと売れないって
言われてたんですけど、
それはいわゆる見栄えがいいからなんです。
デパートの棚でもそうです、
きちっと立たなきゃいけないというのが
バッグ屋さんのルールだったんですよ。
けれども、私たち、それがあんまり好きじゃないから、
革を用いて
ソフトなフォルムの袋をつくっていました。
‥‥けれども、それだとバッグの専門店には
取り扱ってもらえないので、
シェアは非常に小さいものにとどまりました。
そうやって続けてきたなかで、
もう一つ革じゃないブランドを
つくりたいと
zattuを立ち上げることにしたんです。
バッグ業界では
革以外の素材を総称して
「雑材」と言います。
zattuは、ラフに扱えるという意味の「雑」と、
「雑材を用いたバッグ」という意味です。
ちなみに、そう考えてzattuの商標を取ったのは早くて、
ithelicyを立ち上げて1年後のことだったんです。
じっさいにブランドとして商品を出すのは
2016年になってからでしたけれど。
- 伊藤
- いつもお二人で「そうだよね」と意見が合うんでしょうか。
どちらかが「いや、違う」「もうちょっと、こうじゃ」
と、意見をたたかわせるような感じではなく?
- zattu
- そういうことは、ほとんど、ないですね。
「こうだよね!」が一致します。
- 伊藤
- さきほどおっしゃった、
革という素材のむずかしさ、
というのは、どういうところで
感じられていたんですか。
- zattu
- そもそも小さなブランドでは、
革の数量と生産数のバランスがむずかしいんです。
ですからithelicyでは革そのものというよりも
ちょっとアクセサリー的な要素をバッグに加えて
デザインをしていました。
- 伊藤
- ということは「雑材」では、
いい出会いがあったんでしょうか。
- zattu
- はい。あるとき
素材の展示会で「マイクロファイバースエード」を
紹介してくれたアパレルの方がいて。
けれども展示会で表に出ていなかったので、
「他も見せてください」とお願いし、
奥の方のストックから出してもらいました。
多くの用途はエクスポート(輸出用)で、
よく欧米での高級車のシートに使われる
素材だと言うんです。
バッグの生地としては薄いのですが、
私たちにはむしろその感じがよくて。
- 伊藤
- いいところは‥‥。
- zattu
- 一番のいいところは、軽さですね。
- 伊藤
- そうなんですね。
高級な車のシートというと
革の印象がありますけれど。
- zattu
- それが、車業界は、
サステナブルな素材への注目が早く、
高級車のほうが、
すでに革を使わない傾向にあったんです。
そういうところでこの素材がいいと認めてくれたのが
欧米の車業界だったらしいんですね。
しかも重量税の問題もあって、
輸出するのに軽いこともプラスになって。
- 伊藤
- でも日本ではあんまり‥‥?
- zattu
- そうなんです。
この素材は日本では、
まず高いと言われるんですって。
そしてお客さまからは「合皮でしょ」
「人工のスエードね」なんて言われる。
人工のものイコール安いものだと、
まだまだ思っちゃうらしいんですよ。
ところが、この素材は非常にハイテクで、
革の持っているデメリット、
たとえば重さ、におい、カビの発生、色落ち、
そういうことを全てクリアしてるんです。
だからこそ、高いんですね。
- 伊藤
- 革を模したものじゃないことは
ひと目でわかりますよね。
- zattu
- そうなんですよ。
私たちもそういう目で見るんですけど、
一般的な視点からは「合皮」で、
いわゆる世にはびこっている
「安い素材」のひとつに見えてしまったんでしょうね。
この素材はヨーロッパでは
「ALCANTARA(アルカンターラ)」という名前で、
車用の高級素材として知られているんです。
だから日本では、逆に男性の方が飛びついたんですよ。
「あれ? これってアルカンターラ?」って。
- 伊藤
- 男の人っぽいですね、その素材への食いつきが。
- zattu
- そうですね。
最近はウィメンズの
取引先も増えましたが、
ブランドスタート初期は
メンズの取引先が多かったんです。
- 伊藤
- じゃあ、今はメンズとかレディースは関係なく?
- zattu
- はい、zattuは基本的にユニセックスです。
伊藤さんがzattuを気にしてくださったきっかけは?
- 伊藤
- 写真家の中川正子さんから「軽い」と聞いたことです。
わたしぐらいの年になると重いものが本当につらくて。
- zattu
- ithelicyの展示会に来てくださった方が
同じことをおっしゃっていました。
年齢が高めのかたはとくに、
「もう重いバッグは持てない」
「でもナイロンとかそういうのとかじゃなくて、
大人が持てる軽いステキなバッグを作ってほしい」と。
実はそのときにithelicyの付属品に
この素材を使っていたんですよ。
いわゆるスエードだと色落ちしちゃうので、
マイクロファイバースエードをパーツに使ったんです。
- 伊藤
- そのときはお二人には、
バッグが重いとか軽いとか、そういう実感は?
- zattu
- まだ、あんまりなかったんですよ。
それでも軽いものを作っていると思っていました。
でも企業で上の立場にいる女性や、
もう70歳を超えるスタイリストの大御所の方など、
いろんな年長の方たちが口を揃えて、
「もう、重いバッグはいらない。
軽くていい素材のものを、
みんな欲しがっていますよ」と。
言われてみたら、たしかにこの人たちに
エコバッグは似合わないなと思いました。
ハイブランドを着ている方にはカジュアルすぎるんです。
それで「あ! マイクロファイバースエード、
使えるかも!」と思って、
この素材だけでバッグをつくりました。
それはithelicyで出したんですが、
評判がよかったので続けようと思ったんですが、
「このまま革のブランドで出すのはおかしいな」と、
商標をすでに取っていたzattuで
商品化をしようということになりました。
それが2016年のことです。
- 伊藤
- じっさいつくってみて、
大御所の方たちはどんな反応でしたか?
- zattu
- 「やっぱりこういうものだね!」って。
- 伊藤
- 嘘のように軽いですよね。
- zattu
- そうですね。
まずは軽さを皆さんにわかって欲しかった。
見た目はスエード風なので、
そんなにカジュアルに見えないですし。
- 伊藤
- たしかに、キャンバス地だと重いですし、
汚れが目立つなど、いろんな問題がありますね。
最初につくったものは、どんな形だったんですか。
- zattu
- 大きいものをつくった方が、
きっと軽さがわかるだろうなと思って、
大きいトートと、
縦長のショルダーの2つでした。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月1日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
The care
TREATMENT COAT
指先の美しい人に憧れます。
手も、足も。
ここ最近、私は、
トリートメントコートを塗ってから、
ハンドローション→ハンドセラム→
ハンドモイスチャライザーの順にお手入れ。
肌に近い色合いなので、
多少はげても気にならない、というところも、
助かっています。
足のネイルに関しては、サンダルに合わせて
毎回塗り替えていたのですが、
今年の夏は、このトリートメントコートだけでも
いいかな‥‥というくらい気に入っています。
自然な色合いはどんな色のサンダルとも相性よし。
落として塗って‥‥を繰り返すと
肌や甘皮に負担がかかるし、
ちょっと面倒。
トリートメントコートを塗ることで、
爪がすこやかに。
コンテンツも合わせてどうぞ。
(伊藤まさこ)
BELLEMAIN
二層式ハンドローション No.0
2年前にこのハンドローションが発売された時、
なるほど! と思ったんです。
手だって、顔と同じお手入れがいいに決まってる、って。
まずは容器をふって、手の平にシュッシュ。
よく馴染ませると‥‥
なんともしっとりした
うるおいのある手に(足も!)なるんです。
ハンドセラムとモイスチャライザーを一緒に使うと、
さらにきれいで健やかな肌に。
手は気になった時に。
足は朝晩のお手入れの時に。
手入れした分、ちゃんと返ってくるところがうれしい。
とくにかかとは堂々と人前に出せるくらいになりました。
コンテンツも合わせてどうぞ。
(伊藤まさこ)
BELLEMAIN
ハンドセラム No.1
今年の冬から春にかけて、
爪が欠けやすくなった時期がありました。
そんな時に使い始めたのが、このセラム。
爪の内側にオイルを一滴ずつたらし、
爪全体に馴染ませて‥‥
使い始めて1ヶ月経った頃、
あきらかに自分の爪が変わったように感じます。
「爪の内側にオイルを」とか、
「甘皮は切ってはダメ」とか。
大谷さんが教えてくださった目から鱗のお手入れ法。
コンテンツも合わせてどうぞ。
(伊藤まさこ)
BELLEMAIN
ハンドモイスチャライザー No.2
洗いものに掃除に洗濯‥‥
手を使うことの多い、家仕事。
(そうでなくても、手は体の中でも
酷使しがちなパーツです。)
冬のみならず、春も夏も秋も乾燥していて、
荒れやすいのが悩みの種でした。
このままでは手がかわいそう‥‥
と思った時に出会ったのが、
べリュマンのケアアイテム。
まずは二層式ハンドローションを馴染ませ、
その後、このハンドモイスチャライザーを重ねると、
肌が瑞々しくなるんです。
さらにうれしいのは、つけ心地が軽やかなところ。
手と同じように足もケアすると、
しっとりもちもち自慢の素足になります。
コンテンツも合わせてどうぞ。
(伊藤まさこ)
美しい人、美しいバッグ
気になることやものができると、
そればかりに目がいってしまいます。
少し前だと、
引き戸のデザイン。
いや、これがね、
気にして見ているとあるんですよ。
ほんとにたくさんのデザインが。
すっきりしているもの、
意匠の凝ったもの、
ほれぼれしてしまうほど美しいもの。
人間の創意工夫って、おもしろいなぁ、
なーんて思うのです。
今、つい目がいくのは、
横顔が美しい人。
顎がシャープで、
無駄のないラインをしている人を見かけると、
うわー! なんて見入ってしまう。
この美しさを保つために、
努力を怠らないんだろうな‥‥などと
感心もしてしまうのです。
もうひとつ気になっているもの、
それはzattuのバッグ。
きっかけは友人が持っていたことから。
それから、
あれ? この人も持ってる。
あら、この人も?
街でも目に入るんですよ、
zattuのバッグを持っている人が。
今週のweeksdaysは、
そんなzattuからリュックをご紹介します。
デザイナーのおふたりへのインタビューもぜひ。
miiThaaiiの夏の服、たとえばこんなコーディネート 伊藤まさこ 02 大人のコットンパンツ、色が違えば違う服
ハリのあるコットンで作ったパンツ。
ネイビーは万能なカラー。
一本持っておくと、とても重宝します。
ここで合わせたのは、
肩の部分のリボンがポイントになった
ベージュのトップス。
シンプルなパンツは
ちょっと小技の効いたトップスを合わせると、
単調になりません。
足元はスネークベージュのサンダルでポイントを。
ここにラフィアのクラッチを合わせれば、
夏のおでかけスタイルに。
トップスをシャツにすると、
こんなかんじ。
ウエスト部分にシャツをインすると、
バランスがいいのです。
しゃきっとした大人のパンツスタイル、
すてきです。
レッドのパンツには、同じ色合いのキャミソールを。
足元は黒のサンダルで引き締めます。
かごバッグ持ってご近所スタイル。
赤の上下にシューズ、
それからかごの持ち手の黒が全体を引き締めます。
白いシャツをさらっと羽織っても。
ボーダーのトップスを合わせるとこんな風。
ここではサンダルを合わせましたが、
白いスニーカーもいいなぁ。
ネイビー、それともレッド?
迷うところではありますが、
色が違えば違う服。
「どちらも」というのもアリだなぁ。
[お問い合わせ先]
SLOANE http://www.sloane.jp
miiThaaiiの夏の服、たとえばこんなコーディネート 伊藤まさこ 01 サロペットは、いつもと違う自分に出会えます
ネイビーのサロペットに、
同色のノースリーブTシャツを合わせました。
サロペットの一番ベーシックな着方、
ではないかな。
シンプルだけれど、
サロペットならではのフォルムが、
ただのシンプルにおさめない。
一枚持っていると、
いつもと違う自分に会えるような気がします。
インナーを合わせる時は、
アジャスターで長めに調整。
この少しの調整が全体の表情を変えるので、
鏡の前でいろいろと試してください。
水着の上にさっと着て。
夏ならではの着こなしです。
この時は片紐は短めに。
素肌に着る時は、これくらいの肌の見え方が上品です。
薄手のカーディガンをさっと羽織って。
帽子や水着、カーディガン‥‥、
一枚の服も、
合わせるアイテムによって、
一日の表情が変わる。
夏の旅のおともに、ぜひ。
ブルーのサロペットには、
白Tシャツと白いサンダルをコーディネート。
オーバーシルエットのTシャツを着る時は、
アジャスターを調整して、
ゆったりめに着ます。
(この時は一番長めにしました)
パーカーも白にして、
すっきり、さっぱりとしたコーディネートに。
ビーサンでも、またはスニーカーでも。
一枚で。
下にTシャツなどを合わせて。
上から羽織って。
サロペットの着こなし、
いろいろ楽しんでくださいね。
[お問い合わせ先]
SLOANE http://www.sloane.jp
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月25日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
MOJITO
キャップ(ブラック)
朝、散歩に出かける時に、
さっとかぶれるキャップがあったらいいのにな。
整える前の髪や、
メイクする前の顔が隠せるばかりか、
かぶるだけでちょっと洒落た感じにさせてくれる、
そんなキャップがあったら。
‥‥という不精な考えから思いついたにも関わらず、
街でも堂々とかぶれる、すてきなものができました。
形にしてくれたのはMOJITOの山下さん。
キャップを作るのならば、この人!
そう思ってお願いしたのでした。
素材やステッチの幅、サイズを調整するための金具‥‥
小さなものなのに、
いえ、
小さなものだからこそ
こういったディテールが大事なのです。
一見ものすごくシンプルですが、
じつはツバがふつうより少し長め。
これ、小顔効果もあるし、日よけもできる。
男女問わず、いろいろな人にかぶってもらいましたが、
不思議とみんな似合うんです。
初夏から真夏はもちろん、
秋も冬も大活躍すること間違いなし。
ワンピースに合わせてもいいなぁなんて思っています。
(伊藤まさこ)
リネン屋さんのコットン
fogとのおつき合いは、
もう20年ほどになります。
まずはキッチンクロス。
それからワンピースやエプロンなど、
身につけるもの。
今の季節はなんといっても、
ベッドリネン。
洗い立てのリネンの気持ちよさを知ったら、
もうもとには戻れない。
つい先日も、fog linen workの関根由美子さんに、
ベッドリネンを買い足したいと連絡したところ、
「私も、夜眠るたびに、
気持ちいいなぁ、って思うんです。
リネン屋やっててよかったなって」
とのお返事が。
なんだかいいお話、聞いちゃった。
その関根さんが、
コットンを手がけるというのを耳にした時、
ちょっと意外な感じがしました。
だって、
「関根さんといえばリネン」だったから。
でもね、できあがったものを見た時、
納得したんです。
気持ちいいとか、
着心地がいいとか。
そういうところは
リネンもコットンも同じなんだなって。
今週のweeksdaysは、
インドコットンのサロペットとパンツ。
夏にぴったりの服ができましたよ。
大人のボーダー
- 伊藤
- ボーダーのトップスは、
わたしのリクエストだったんですよね。
「大人のボーダーが欲しい」と考えていたときに、
「そうだ、L’UNEにお願いしよう!」
と思い立って、気軽にお声掛けをしてしまって。
- 前沢
- いえいえ、ありがとうございます。
- 伊藤
- でも、そこからの道のりが大変でしたよね。
素材選びから縫製、プリントの方法‥‥。
- 前沢
- あははは。
そうでしたね。
まずボーダーを、どんな技術でプリントをしていくか
というところからはじまって、
試作を繰り返して。
- 伊藤
- 縫製のパターンもいろいろ考えましたよね。
背を縫うとか、肩線をなくしたらどうか、とか。
襟ぐりは頭がすぽんと入るように
スリットを入れたり。
- 前沢
- はい。
あと、襟ぐりとボーダーの間に
白い余白を作ろうか、とかね。
- 伊藤
- そうそう、
でもやっぱり、
上の部分まで全部ボーダーにするより、
この余白があってよかったと思いました。
- 前沢
- そうですよね。
これはプリントの方法を改善して
実現できたことでもあるんですけど、
サンプルの段階では、袖口と裾のヘム(ふち)が
内側に折り込んだ部分まで
ボーダーが続いていたので、
裏側のネイビーが表に透けてしまっていたんです。
- 伊藤
- あ、そうでしたね!
でも、完成品のこれは内側が白になってます。
- 前沢
- これ、プリントだからできたんです。
「パネルプリント」という方法なんですけど、
ちょうど裏にくるところは白くなるように回避して、
ボーダーをプリントしているんです。
- 伊藤
- なるほど。
端までクリアなボーダーになって、
気持ちいいですね。
生地の素材も、
プリント用の生地リサーチの時に前沢さんが展示会に
連れて行ってくださったんですよね。
- 前沢
- 行きました!
そこでいろいろ打ち合わせをしてね。
- 伊藤
- いわゆるボーダーTシャツの
ゴワっとした感じではなくて、
もっとやさしい素材のものがいいな
と思っていたので、
今回サテンで作ることができて、
すごくうれしいです。
前沢さんならどんなふうに着られますか?
- 前沢
- うーん、この子がきれいですからね‥‥。
ヒップまわりが気にならない丈感だから、
パンツか、デニムのストレートスカートとか。
- 伊藤
- デニムスカート、かわいいですね!
そう、この丈が絶妙なんですよね。
- 前沢
- 体の線を拾わなくて、ゆったりしてるんだけど、
ダボっとしている感じはしないし。
後ろはヒップラインがほんのり出て、
ウエストからヒップをきれいに見せてくれます。
- 伊藤
- ウエストまわりの見せ方って、
どうしようかなって思うことがあります。
- 前沢
- そうそう。
ただ長くして隠すのも、
野暮ったくなりますしね。
- 伊藤
- そうなんです。
でも、これはすごくいい感じなので、
ジャケットの下に着たりして、
一年中活躍しそうです。
ショートパンツも合いそうですよね?
- 前沢
- あ、いいですね、かわいい。
- 伊藤
- ショートパンツでも子供っぽくならないのが
すごいなと思います。
- 前沢
- それはやっぱり
この素材感とシルエットがミックスされて、
カットソーでは出せない、
サテンならではのドレープ感が出るのが
大きなポイントじゃないかなと思います。
- 伊藤
- うん、そうですね。
袖口はボタンを外すとフレアなラインも出せるし、
留めるとシンプルな形でも着られるし。
ぜひ大人に着てほしいボーダーです。
赤い口紅とか、バレエシューズにも
似合いそうですもの。
- 前沢
- わぁ、すごくすてきだと思います。
- 伊藤
- 秋冬は、何を合わせるといいでしょう?
- 前沢
- 白いボトムは、
絶対にかわいいですよね。
- 伊藤
- かわいい!
- 前沢
- それと、
カーゴパンツみたいなデザインパンツでも、
これと合わせるとカジュアルになりすぎずに、
「大人の女性らしさ」を出してくれると思いますよ。
- 伊藤
- ほんとうにそうですね。
襟元も華やかになりますし。
最近柄物を着ない方でも、
これなら、と思ってもらえるかもしれないです。
- 前沢
- 個人的見解ですけれど、
ボーダーのTシャツって、
好きな人はすごく好きじゃないですか。
私も大好きだけど、
最近は家の中だけで着て、
外へ着ていく服のレギュラーメンバーからは
外されていて‥‥。
でも好きだからクローゼットにはずっとある、
みたいな方におすすめしたいです。
- 伊藤
- そうですね。
しばらくボーダーをお休みしていた方も、
このトップスで復活していただけるはずです。
- 前沢
- ふふふ。
たくさんいらっしゃるんじゃないかしら。
- 伊藤
- ほんとうに素敵なものを作ってくださって
ありがとうございました。
- 前沢
- 私もうれしいです。
ありがとうございました。
1着で2度おいしい、名脇役
- 伊藤
- 前沢さん、お久しぶりです。
今日はよろしくおねがいいたします。
- 前沢
- こちらこそ。
お越しくださってありがとうございます。
- 伊藤
- わたしが以前から気に入って着ている、
2WAYブロッキングトップスと、
今回、新しくつくっていただいた
サテンボーダートップスについて
お話を伺えたらと思って伺いました。まず2WAYトップスのほうですが、
最初はいつ頃作られたんですか?
- 前沢
- あれは──、2022年ですね。
伊藤さんが買ってくださったのもそのときでした。
- 伊藤
- そうでした。
それからもう、すごく重宝しています。
涼しくてシワもできないですし、
ちゃんとしたところへも着て行ける。
夏だけでなくて、実は冬にも着てるんですよ。
- 前沢
- そうなんですか!
- 伊藤
- わたし、暑がりなので、
冬にタートルネックのセーターなんか着ていると、
外にいるときはよくても、
お店の中に入ると暑くなるんです。
たとえば長い時間を過ごすレストランの席では、
あまりモコモコ厚着しすぎないほうが好きなので、
これを着ると、すごくいいんですよ。
上にジャケットを羽織れば、ちょうどよくて。
- 前沢
- 夏も冬も着ていただいてるなんて、
すごくうれしいです。
- 伊藤
- しかも、前後2WAYで着られるのは、
ほんとうにすごいです!
デザインは、どうやって思いつかれたんですか?
- 前沢
- 一番最初に作ったのは5年以上前で、
そのときは素材も今のものではないし、
袖がもっと長くて、
2WAYではなかったんです。
そこから、まさしく
「ディナーにも着ていけるような
きれいなトップスにしよう」という
コンセプトを思いついて、
L’UNEらしい形を探っていきました。
パターン(型紙)を変えたり、
バランスを整えたりというのを繰り返して、
今の形にたどり着いたという感じです。
- 伊藤
- そんなに。
時間と手間がかかっているんですね。
- 前沢
- 前と後ろの丈を変えて、
2WAYで着られるようにしたり、
裾も、シャツのようにカーブをつけたら
もっと素敵になるんじゃないかとか。
あと、あまり見えないところですけれど、
縫製もきれいに仕上がるようにと、
細かい改善もしたんです。
袖はラグランスリーブ(首周りから袖下へ
斜めに切り替え線を入れ、肩から袖をひと続きに
付けられた袖)で構成してるんですけど、
この生地で実現するのは、
実はすごく‥‥。
- 伊藤
- 縫うのが難しいですよね?
- 前沢
- そうなんです。
ふつうに縫製すると、すごく伸びてしまう。
そこを、工場の方と相談をして、
縫い代の中にテープを貼って
伸びないように仕上げることができました。
この工夫で、腕を入れたときのドレープ感が
すごくきれいに出るんです。
- 伊藤
- 柔らかいシルエットになるんですね。
- 前沢
- ええ。
ラグラン切り替え位置はバイアスになるので、
伸びやすくもあるんですが、
糸が細くてドレープがきれいに出るので、
生地は絶対に変えたくないと思ったんです。
縫製で伸びないように工夫しようと。
- 伊藤
- なるほど。
前と後ろで、素材が違うんですよね?
- 前沢
- Vの方がポリエステルで、
クルーネック側は
トリアセテートとポリエステル混紡の
スムースというカットソー素材です。
トリアセテートはシルクのような美しい糸で、
接触冷感もあるので、
夏は涼しく着られるんです。
- 伊藤
- だから着心地がいいんですね!
前と後ろで素材を変えようと思われたのは、
どうしてでしょう?
- 前沢
- 着た時の表情が変わるのが、
たのしいかなと思って。
A面、B面みたいに(笑)。
- 伊藤
- ほんとうにたのしいですよ~。
ちなみに前沢さんのA面は?
- 前沢
- こっち!
- 伊藤
- やっぱり。
じゃあわたしもこっちをA面と思うようにします。
B面が好きな方も、
もちろんいらっしゃるでしょうね。
- 前沢
- ええ。
クルーネックとVネックって、
かなり印象が変わりますものね。
コーディネートによって変えられたら、
「1着で2度おいしい」かなって。
シンプルなデザインですけど、
そんなちょっと欲張りなところが気に入っています。
- 伊藤
- わたしもです。
それに、
たたむとすごくコンパクトになるし軽いので、
旅にも持って行きますよ。
- 前沢
- そうそう、ホテルで手洗いしても、
タオルドライして干しておけば、
次の日には乾いていますよね。
- 伊藤
- 幾度となく着て、お洗濯をして、と繰り返しても、
くたくたにならないところも魅力的です。
前沢さんは、どんなものと合わせられますか?
- 前沢
- 私はパンツが多いかな。
裾を出すときもあるし、
ゴワゴワしないのでインしたり。
前だけ少しインすると、
すごくきれいなドレープができるので、
そんな楽しみ方もできますよ。
- 伊藤
- なるほど。
素材感がきれいだから、
ブラウスとしても、
ジャケットの下のカットソーとしても、
ちょっと高級なTシャツ、
みたいな感覚でも着られますもの。
- 前沢
- ふふふ。
コーディネートの幅がすごく広いですし、
けっして主張しすぎないんだけれども、
付けているアクセサリーなんかも引き立ててくれる。
“名脇役” みたいなトップスです。
- 伊藤
- ほんとうに。
着ている本人も、
着心地がいいから疲れないんですよね。
- 前沢
- 前がラグランスリーブで、
後ろはドルマンスリーブ(袖ぐりが広く、
身頃と一体になったような袖)なので、
とても動きやすいですしね。
- 伊藤
- もしかしてこの袖のつくりだと、
「肩が合わない」ということが
あまりないんじゃないですか?
- 前沢
- そうなんです。
ラグランスリーブは肩の位置が問われないので、
幅広いサイズの方に着ていただけると思いますよ。
- 伊藤
- 試行錯誤のたまものですね。
制服のように
10代から20代の初め頃、
よく着ていたボーダーTシャツ。
毎日のように着ているものだから、
「まるで制服みたいだね」
なんて言われたこともありましたっけ。
ボーダーの色合わせも、
黒 × 白、
ちょっとくすんだピンク × えんじ、
赤 × 白‥‥といろいろ。
それにリーバイスの501を合わせるのが、
私の当時のスタイルでした。
それからだいぶ月日が経って、
しばらくの間、
ボーダーTシャツは、
あまり着なくなってしまいましたが、
でもやっぱり好き!
サイズぴったり目にしてみたり、
デザインに凝ったものを試してみたり。
それでもなかなかしっくりくるものに巡り会えず、
ボーダーへの想いは高鳴るばかり。
いえね、前に着ていたものが悪いわけではないんです。
私が変わったんです。
今週のweeksdaysは、
L’UNE のサテンボーダートップス。
「今」の私に似合うボーダーシャツを、
L’UNE の前沢さんに作っていただきました。
私の定番になっている、
2WAYブロッキングトップスも合わせてどうぞ。
“いいとこどり”でつくりました
- 惠谷
- 今回、リネンはイタリア製ではなく、
それと同じクオリティのものを日本で探しました。
トスコ(TOSCO)さんという、
世界で有名な麻の生地メーカーさんです。
- 伊藤
- 色はふたつ。「キナリ」は、
先染め(糸を染めてから織る)の糸を使って
白い糸といっしょに織ることで、
生成りのような色を再現しているんですよね。
- 惠谷
- はい、糸染めをしたベージュの糸と、
白の糸で、この色をつくりました。
- 伊藤
- 後染めだと、全体的に均一になりますけれど、
これは経(たて)糸と緯(よこ)糸が違うから、
独特のニュアンスがありますね。
そのあとわたしが「黒がほしいなぁ」って。
- 惠谷
- じゃぁ、逆に黒は生地染めにしましょう、
ということになりました。
それが「ブラック」ですね。
- 伊藤
- 同じように先染めにして、
経糸と緯糸を変え、白が混ざってしまうと、
ちょっと素材感が出すぎちゃうかなぁと思ったんです。
- 惠谷
- そうなんですよね。白が目立って、
ちょっとメンズっぽいというか、
杢(もく)っぽくなっちゃうんですよね。
だから「ブラック」は後染めにしました。
これは「weeksdays」オリジナルの別注生地です。
- 伊藤
- 原料の素材はどちらから?
- 惠谷
- フラックス(リネンの、原料段階の呼び方)は
フランスのノルマンディの産です。
そして中国に運んで、紡績を行ないました。
中国にはいま、いい紡績工場が多いんですよ。
- 伊藤
- その糸を日本に運んで‥‥。
- 惠谷
- 「キナリ」のほうに使ったベージュの糸染めは、尾州、
つまり愛知県の一宮市で。
そして織りは遠州、静岡県の浜松市です。
「ブラック」はその生地を
滋賀県の東近江、湖東地区で染め、
最終的に2つの色とも、
縫製を福井の工場で行なっています。
- 伊藤
- 日本の名産地がこぞって協力してくださったんですね。
- 惠谷
- ほんとに「いいとこどり」だなと思います。
たいへんな生地でした。
- 伊藤
- ありがとうございます。
- 惠谷
- いえいえ! ほんとうにいいものができました。
夏の麻って、着始めたら、気持ちよくて、
もう、麻しか着たくなくなっちゃいますよね。
黒も、すごく大人っぽく、上品になりました。
- 伊藤
- ほんと。
帽子に合わせたら、外にも着て行けそうですよ。
- 惠谷
- ね、そうですよね。
水着の上とかに、サッと着たら、気持ちいいですよね。
- 伊藤
- ね! たくさん着ていくうちに、どんどん馴染みそうです。
- 惠谷
- はい、そうなんです。
麻には、このリネン(亜麻)のほかに
ヘンプ(大麻)やラミー(苧麻)があるんです。
江戸時代には裃(かみしも)にも使われていたヘンプは、
粗く、硬さのある素材です。
ラミーは、糸自体が太く、いつまでも張りがある。
そしてこれはリネンなので、糸自体は細いんですけど、
もともと糊効果のある成分が入っているので、
最初は張りがありますが、
洗って乾かしてを繰り返していくうちに、
どんどん軟らかくなるんです。
だから、どんどん洗って、
糊がけ、アイロンせずに、
クタクタに軟らかくして着ていただけたら。
- 伊藤
- 洗ってもすぐ乾きますよね。
- 惠谷
- はい。乾きはすごくいいです。
- 伊藤
- うんうん。
- 惠谷
- フリルの長さも、
ちょっと「大人かわいい」感じにしました。
- 伊藤
- ね! ほんとうにかわいい。
- 惠谷
- ゴムも柔らかいゴムにしているので、
ビチッと跡がつきにくいはずです。
あと、背中。
前はふつうのトリミングで
バインダー仕上げなんですけど、
後ろは、ゴムが入っていて。
- 伊藤
- だから、身体に沿うんですね。
- 惠谷
- はい。ブカブカのものを着ちゃうと、
ズレていくことがありますが、
ここにストレッチを効かせているので、
背中でピタッとくるようになっています。
- 伊藤
- そこが嫌だなってこと、ありますもんね。
- 惠谷
- そして共布(ともぬの)のストラップは
自分のバストトップで調節してご着用ください。
そして胸の脇のところにも
ダーツが入ってるんです。
これは、胸の高さを出す、
立体をつくるのためのダーツで、
バストの膨らみを潰さないように、
立体にする工夫なんですよ。
このダーツ、あんまり入れすぎると、
ドレスみたいにぴったりしてしまうんです。
しかもリネンは伸びない生地なので、
着脱がたいへんになってしまう。
だからなかなかこのダーツって
入っていないことが多いんですよね。
- 伊藤
- ほんのちょっとの工夫で、
着心地がぜんぜん違うんですよね。すごいです。
- 惠谷
- そして、この部分、袋縫いにしています。
ふつうはロックミシンなんですが、
そうするとミシン目が肌に当たるので、
もっと快適になるように。
- 伊藤
- ここは気づきませんでした。なるほど。
袋縫いの分、より立体的になっているんですね。
- 惠谷
- はい、そうしていますね。
- 伊藤
- つまり、最初、表を縫って、
裏にして、縫いしろを隠すように
縫っているということですよね。
学校で習いました!
- 惠谷
- そうです、そうです。
これを縫っている福井の工場は、
ブラジャーや、ランジェリーの専門工場なんです。
ふつうのアウターの工場だと対応が難しくて。
立体裁断のパターンも、アウターからじゃなくて、
ランジェリーのパターンから引いているので、
より、グッと立体になっているんですよ。
- 伊藤
- だからきれいなんですね、
ほどけないし。
- 惠谷
- リネンなので、ロックミシンだと、
滑脱しちゃう(すべってずれてしまう)んですよね。
- 伊藤
- そうなりますよね。
- 惠谷
- 着続けているとミシン目も開いちゃいますし。
ですからそうならないように、
こういうふうに袋縫いにしているんです。
このギャザーの寄せ方も、均等でしょう?
これは私がいつも桂先生のところで
怒られたことなんです(笑)。
アウターだとあんまりきれいに寄らないものですから。
「均等に、何パーセントにしなさい」って。
- 伊藤
- これは何倍なんですか?
- 惠谷
- これ、2倍の200%になってます。
- 伊藤
- たっぷりですね!
- 惠谷
- はい、たっぷり入ってます。
1回、仮縫いで均等にギャザーを寄せて、
上からかぶせて縫っています。
- 伊藤
- ギャザーがたっぷり入っていると、
裾の縫い代がモタモタしちゃうじゃないですか。
- 惠谷
- はい、はい。
- 伊藤
- これは、仕上げがすっきりしていて
すごくいいなぁと思っていました。
- 惠谷
- 裾はメローなので、きれいに出ているんですよ。
メローの運針も、ランジェリー工場ならではです。
アウターではあまり使われることがない
本物のメローミシンをちゃんと使っているんです。
- 伊藤
- だからこそ、この軽やかさ。
- 惠谷
- そうなんですよね。
フワッとするかんじです。
ですから、オーバータイプのワンピースの下の
キャミソール、スリップとして着ていただいても、
邪魔にならないような軽やかさがあると思います。
これを着たら、もうポリエステルやナイロンなどの
ランジェリーが着られないかも?
身体がフレンチリネン対応に
なっちゃうかもしれません。ふふふ。
- 伊藤
- この暑い日本の夏を、
どうやって過ごすかが問題ですから、
今回のリネンウェアを部屋着にするって、
とってもいいと思うんです。
眠るときにも。
- 惠谷
- まさこさん、パジャマの代わりに、
スリップを着てらっしゃるって
おっしゃってましたものね。
ヨーロッパの人って、
スリップをナイトドレスにされてる方、すごく多くて。
横になるまでは部屋で上にガウンを着て、
寝るときにパッとガウンを外して、
このまま寝ちゃうんです。
このリネンウェアも、そんなふうに、
軽やかなかんじで着ていただけたら嬉しいです。
湿気の多い日本の夏には、もう、ピッタリだと思います。
湿気は吸ってくれるし、乾きも早いし。
しかも麻は自然の抗菌防臭効果があると
言われていますしね。
- 伊藤
- そうですね。
なにより、着ていて、うれしいと思います。
- 惠谷
- そうそう、これ、部屋着としてつくっているんですが、
「ブラック」の下にデニムを合わせて外出着にしても、
すごくかわいいと思いますよ。
- 伊藤
- きっとそうですね!
「キナリ」のほうも、重ね着をしたら、
外出着になると思います。
- 惠谷
- ワンピースの下に着て、フリルだけ見せるとか、
ドロワースの上に重ね着をするとか?
- 伊藤
- 白いTシャツに重ねても、きっとかわいいですよね。
- 惠谷
- かわいいと思います!
- 伊藤
- いいものができて、ほんとうによかったです。
太香子さん、今回もありがとうございました。
- 惠谷
- こちらこそほんとうにありがとうございました。
このリネンウェアがかたちになって、
私もとても嬉しいです。
太香子さんの4つの信条
- 伊藤
- 太香子さんのつくられるものは、
かたちはもちろん、素材もとてもよくて。
今回のものも、素晴らしかったです。
- 惠谷
- うれしいです! ありがとうございます。
今回のリネンもそうですが、
トレーサビリティのある天然素材を
なるべく使いたいと思っています。
- 伊藤
- どこで生まれて、どこで育って、
どこで加工したかが、全部追跡できるということですね。
だいじなことですよね。
- 惠谷
- はい、着てくださるかたにとっても、
つくる私たちにとっても大切なことだと思っています。
- 伊藤
- 太香子さんは、ずっと、そのことを
大事になさってきたんですか?
- 惠谷
- そうですね。‥‥ちょっと余計な話ですけれど、
私の師匠にあたる、
先日亡くなられた桂由美先生から
いろんなことを教えてもらったなかに、
「4つの大事なこと」があるんです。
- 伊藤
- 4つの大事なこと。
- 惠谷
- それは、私が桂先生のところから
オペラ座の衣装室に行く、
ということになったとき、
先生がニューヨークから手紙をくださったんです。
7枚くらいだったかな、便箋で。
- 伊藤
- 7枚も。どんなことが書かれていたんですか。
- 惠谷
- 私も苦労してパリに行きましたから、
あなたも頑張ってきなさいね、
ということだったんですが、
そこに「あなたは、これからも、
このことを必ず守って、ものをつくりなさい」という
いわば「4つの美学」が書かれていたんです。
- 伊藤
- ぜひ聞かせてください。
- 惠谷
- ひとつは、「必ず立体にして、
きれいなシルエットをつくりなさい」。
立体裁断でつくるというのは、
その後、オペラ座の衣装室でも、
ずっと言われてきたことでもあります。
そしてふたつめは、「品のあるデザインを。
あんまり特化したデザインにしないように」。
みっつめは「世界中から選び抜いた、自分で探し抜いた
素材やマテリアルを使いなさい」、そしてよっつめが
「細部にわたる繊細な縫製のテクニック」でした。
この4つは、もうなにがあっても守りなさい、
ということが書かれていました。
- 伊藤
- そうだったんですね。
- 惠谷
- 「weeksdays」はもちろん、
「ほぼ日」さんとのお仕事がすごくたのしいのは、
この4つを守ることができるからなんです。
今回のリネンウェアもそうです。
いろいろな会社と製品作りをしてきましたが、
それぞれに理念や信条がありますから、
かならずしも私の使いたい素材で
理想的な縫製をすることができるわけではありません。
当然ですけれどコストダウンが最優先の会社もありますし、
「それはいいですね」となっても
納期のために諦めざるをえないこともあります。
そういった制約は、私の勉強にもなるんですけれど、
そんな中で「ほぼ日」さんはちがうんですよ。
とことん、いいものづくりを
いっしょに追求することができます。
- 伊藤
- わたしたちも嬉しいです。
- 惠谷
- そんなことを、ちょうど先生が亡くなられたとき、
思い出しました。そういえば、
桂先生と仕事をご一緒していた時は
「数百円のショーツをつくるのも、
3億円のドレスをつくるのも、
その中で一番いいもの選ぶ目を持ちなさい」
とよく言われました。
オペラ座の衣装室では、
もっと厳しいことも言われました。
そういう経験も思い返して、
「やっぱり妥協しないで、いいものをつくろう!」って、
あらためて思ったところだったんです。
そんな折り、この取材のお話いただいたので、
このことはまさこさんにどうしてもお伝えしなくちゃって。
- 伊藤
- ありがとうございます。
わたしたちからすると、
プロ中のプロの太香子さんが提案してくださるものを、
どうして「これはちょっとね」と言えるのか、
わからないんですよ。
ほんとうにいい素材を使ってくださっているのに、
わたしたちにとって納得できる価格が実現できますし。
- 惠谷
- 私は、いいものをこなれた値段で、
価格と価値のバランスが合っている状態で
出したいなって思っています。
素材は原産地から直接買わせていただいたりとか、
いろんなところを節約していますから、
おそらく、べらぼうにすごい金額には
なっていないと思うんです。
ハイブランドが同じ素材で、
同じつくりかたをして同じものを出したら、
もっと高くなるかもしれないけれど。
‥‥商品愛が強すぎて、なんだか最近、
ちょっとうるさいおばさんに
なっている気がします。ふふふ。
- 伊藤
- そんなことないですよ。
いいと思いますよ。
太香子さん、メーカーさんとは
「こうあるべきです」というようなことで、
闘ったりするんですか?
- 惠谷
- 毎日が、闘いですよ!
- 伊藤
- え?! そうなんだー!
- 惠谷
- あはは! だからまさこさんとの仕事がたのしいんです。
「こうしたらどうでしょう?」
「だったらこういう方法も!」
というふうに、会話から
製品がどんどん良い方向に進むんですから。
先日、ずいぶん前に大手アパレルで
いっしょに下着ラインを立ち上げた
メンバーと会ったんです。
もうみんないい年齢になっていて、
「そろそろ惠谷さん、好きなことだけ
やったほうがいいんじゃない?」
なんて言われました。
そう言ってもらうと
「あ! いいんだ! やってもいいんだ?!」って
思うんですけれどね。
- 伊藤
- そうですよ!
「わたしはこれだけをします」って言うと、
仕事がそっちについてくると思うんですよ。
絶対、それがいいと思います。
- 惠谷
- この頃思うんです、
私がやってきてよかったこと、悪かったこと、
失敗したことも含めて、周りの人たちに、
啓蒙じゃないですけれど、そういうお話ができればって。
一所懸命、もっと愛情をもってつくろうよ、って。
これからでも遅くないんじゃないかなって思います。
- 伊藤
- ぜひお願いします(拍手)!
- 惠谷
- いきなり、こんな話をして、すみません。
- 伊藤
- 今回のリネンウェアは、
太香子さんからわたしたちに
ご提案いただいたことがはじまりでしたね。
- 惠谷
- はい、「こんなのをつくりたいです」って
ご提案をさせていただきました。
最初、見ていただいたのは同素材の布製品でしたね。
私がヨーロッパの仕事で
フランスの三つ星レストランから依頼を受け、
イタリアのリネンを使ってつくったものです。
レストランでウエイターさんが手にかけている布を
「トーション(torchon)」と言いますが、
お客さまがナプキンのようにひざに掛けるのに使ったり、
ヴィンテージやアンティークの布としても
人気があるんです。
私はそのレストラン向けに、
「この人にはブルー」とか、
「この人にはピンク」というように、
フリルつきのリネンで
いろんな色のトーションつくりました。
それをお持ちして素材感を見ていただき、
「こんな感じのリネン100%の生地を使い、
夏むけのスリップやキャミソールがつくられたら
かわいいですよね」
みたいな話をさせていただいて。
- 伊藤
- そのトーション、素材感も素晴らしくて、
フリルもとっても大人っぽかったんです。
これはすごくかわいい! となって、
すんなり「つくりましょう」。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月11日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
Le pivot
バックサテンベイカーラフパンツ
若い頃に着ていたカーキ色の古着のパンツ。
それが妙に気になり始めたのが去年あたりから。
とはいえ、気合いで穿き倒すおしゃれ心、今はないんです。
欲しいのは、
手強い服より、やさしい服。
そして今の自分に似合うもの。
そんな時に見つけたのが、
Le pivot のバックサテンベイカーラフパンツ。
一見、ハード?
でもよくよく見ると、すごーくシンプル。
シンプルだから、華奢なヒールだって似合っちゃう。
バレエシューズやスニーカー、
真夏はビーサンもよさそうです。
バック部分がゴムになっているからベルト要らず。
股上の深さや腰まわりのゆとりも絶妙。
そしてなによりすごいのは、柔らかい履き心地。
ごわっとした素材に見えるでしょう?
でも、すごーくやさしいんです。
素材や形など、デザイナーの小林さんにうかがった
コンテンツと合わせてどうぞ。
色はオリーブとブラックの2色ですよ。
(伊藤まさこ)
t.yamai paris
トリコットサッカージャケット
(ブラック、ネイビー)
私のまわりのすてきな女性たちが、
こぞって着ているのが、このジャケット。
軽くて、家でも洗えて、
きちんとした場所にも着ていけて、
かつ、カーディガンのように気軽にも着られる!
シワにもなりにくいし‥‥と
いいところを挙げるとキリがない。
旅にも重宝するとあって、
私のワードローブに欠かせない存在になっています。
同系色でまとめたり、
柄や色を利かせたり。
ベーシックな分、着こなしは無限。
一枚持っているととても助かるアイテムです。
(伊藤まさこ)
t.yamai paris
シルク混タフタカーゴパンツ
(ブラック)
去年の夏、洗っては穿いて‥‥
を繰り返したパンツがこちら。
軽くて着心地抜群。
シワにもなりづらいので、
旅の必需品になりました。
カーゴパンツですが、
素材はやさしげな雰囲気漂うシルク混のタフタ。
ウェストはヒモで調整するタイプなので、
サイズフリー。
ゆったりしているのに、
カジュアルに寄りすぎないのは、
さすが山井さん。
大人のカーゴパンツに仕上がっているのです。
トリコットサッカージャケットはもちろん、
Tシャツやシャツ、サマーニットもお似合い。
ニュアンスのある黒は、
様々なアイテムと相性がいいんですよ。
そして、今回は黒ともう一色、ゴールドをご紹介。
黒とはまた印象がガラリと変わって、
こちらもすてき。
色違いで揃えておきたいアイテムです。
(伊藤まさこ)
再入荷にあたり、ブラックのみ、
ワンサイズちいさい
「サイズ0」をご用意しました。
今
梅雨の合間の晴れ間。
仕事が立て込んでいなかったら、
カーテンの洗い時。
どうやら、
大掃除の時に一緒に、という人が多いみたいで、
「え、今?」
よくそう尋ねられるけれど、
年末の寒い時期は、
水仕事からはなるべく遠ざかりたいし、
花粉の時期が過ぎてからの方がいいと思ってる。
だからこその今、なのです。
脚立を引っ張り出してきて、
カーテンをレールからはずすのは、
少々面倒だけれど、
洗い上がってさっぱりとしたリネンの気持ちよさには、
変えられない。
今のカーテンとは6年ほどのおつきあい。
これまでに、
何回も洗ってきたけれど、
風に吹かれてそよそよしている様子を見るたび、
リネンっていいなぁ。
そう思うのです。
今週のweeksdaysは、
cohanのリネンウェア。
さらり、軽やか。
身につけているだけで、
気分が上がる。
今年の夏も乗り切れそうです。
SAQUIのスモッキングワンピース あのひとに着てもらいました 02 結城奈美さん
結城奈美さんのプロフィール
ゆうき・なみ
SAQUIでパターンを担当。
6年間のデザイナー兼
パターンメーカー(パタンナー)を経て、
ダンス衣装、TV衣装のパターンメーカーとなる。
その後デザイナーズブランドを経験し、
縁あってSAQUIのパターン担当に就任。
プライベートでは技術者養成学校である
「アミコファッションズ」に定期的に通い、
立体裁断を学ぶ。
助手を経て、現在、
同学校の初級コースの講師を務めている。
好きなものは、ファッション、
そして椅子などの家具、ひとり飲み。
「職業・肩書きや
年齢の違う人たちとの交流が楽しいです!」
同じSAQUIの服を着るのでも、
結城さんと私とでは、印象が違う。
‥‥と書いたのは、
過去のサマーテーパードパンツのコンテンツ。
「同じパンツでも、
ヒールの時と、ぺたんこのシューズの時とでは、
丈を少し変えます」という結城さん。
身長150センチと小柄ながら、
いつもバランスよい印象なのは、
ミリ単位の微調整があるからこそ。
さすがパタンナーです。
スモッキングワンピースの丈は5センチ詰めて。
歩くたびに、華奢なヒールがちらちら覗く、
絶妙な丈感です。
サンダルは、フェラガモ好きの
お母さまの買い物につき合った時に、
買ってもらったもの。
「もう何年も前のものですが、
このワンピースに合うかなと思って」
親子でおしゃれさんなのですねぇ。
ブルーのワンピースに、
赤をベースとした色いっぱいのサンダル。
なかなか真似できそうにないけれど、
足元に色を取り入れるの、いいなぁ‥‥。
このスモッキングワンピース、
深めのVネックがポイントです。
丸首だと甘くなりすぎるし、
Vが浅めだと、なんだか思い切りが足りないような。
だからこそのこの開き、なんですって。
首元には、
結城さんお得意の大きなアクセサリーを。
今回、結城さんがえらんだのはブルー。
ネイビーもきっとお似合いと思うけれど、
明るめの髪色にブルーがぴったり。
「髪の色を変えたら、
似合う服の色が変わった」のだそう。
リングやブレスレットを重ねづけ。
ブルーのスモッキングワンピースに、
赤いサンダル、アクセサリーに、明るい髪色。
ともすると、
やりすぎになってしまいそうなコーディネートを、
しっくりまとめあげる結城さん。
日々、服と向き合っているからかな、
ご自分に似合うものをよく知っている人。
これが、私が持つ結城さんの印象です。
今回の取材で、
ボス(デザイナーの岸山さん)から、
「アイライン、しっかり引いて撮影に臨んで!
と言われてきたので、
しっかり引いてきましたっ!」と結城さん。
いつもアトリエの雰囲気がいい、SAQUI。
いいものは、
いい人間関係から生まれるもの。
また遊びに行かせてくださいね。
SAQUIのスモッキングワンピース あのひとに着てもらいました 01 小林有樹子さん
小林有樹子さんのプロフィール
こばやし・ゆきこ
身に付けた瞬間、肌に溶け込み、
優しく馴染むジュエリーのブランド、
MAISON RUBUS.のデザイナー。
女性とジュエリーの間に生まれる特別な「調和」や、
手仕事による繊細な細工に柔らかな曲線、
意志を感じさせる凛とした佇まいを大切に
デザインしている。
「weeksdays」では
クラッチバッグのコンテンツに登場。
MAISON RUBUS.のピアスをつけていると、
「すてきですね」とか、
「どこのですか?」なんて、
声をかけられることが多いんです。
ジュエリーって、
小さなものだけれど、
その存在感は大きい。
つけているのと、いないのとでは
印象が違うから不思議です。
楚々としていて、上品。
花にたとえるならば、
野に咲くすみれ。
私にとって、
MAISON RUBUS.はそんな印象。
デザイナーの小林さんもまたしかりで、
話し方や立居振る舞いがやわらか。
「楚々」という言葉がぴったりな人なのです。
SAQUIのスモッキングワンピース、
きっと(というよりぜったい)お似合い。
今回、どなたに着ていただきたいかな‥‥と思った時に、
一番に思い浮かんだのが、
小林さんなのでした。
小林さん自身、
SAQUIのファンだそうで、
ニットやコート、シャツなどをお持ちとか。
SAQUIの岸山沙代子さんと、小林さん。
それぞれ服とジュエリー、と
デザインするものは違うけれど、
おふたりに共通するのは、
ご自身が欲しいものを作る、
というところ。
妥協をしない、
というところ。
声を大きくして、
それを伝えることはないけれど、
できたものを見れば分かる。
身につける私たちに響くのは、
そんな「静かな強さ」があるからなのではないかな、
と思っています。
今回、weeksdaysが展開するのは、
ネイビーとブルー。
2色あるうちから、
小林さんがえらんだのは、ネイビーです。
長めのネックレスは黒のオニキス。
手元はもちろん、
MAISON RUBUS.のリングとブレスレットを。
身支度をする時は、
ジュエリーから決めていくのですか? と尋ねると、
「その日のお天気や、気分、会う人によって、
まずは着る服をえらびます」とのこと。
毎日、身につけるジュエリーをがらりと変えるのではなく、
服に合わせて3割くらいを入れ替えるのだそう。
バッグはやわらかな革を。
足元は華奢なパテントのシューズで全体を引き締めます。
スモッキングワンピース、
ネイビーには、
「黒いジュエリーを合わせたくて」と小林さん。
ブルーを着るとしたら、
「ゴールドとかシルバーを」
「深めのVネックに重なるような
ネックレスもいいかなと思いました」
‥‥と、
着るものの色や形に合わせて、
合わせるジュエリーを変えて。
なるほど、勉強になりました。
「小さいものが好き」という小林さん。
前職はインテリアショップのディスプレイ担当。
なんと、ハイエースを運転し、家具を運び‥‥
という力仕事!
お店が閉店してからの作業は、
深夜まで及ぶこともあったそう。
「小さいもの好きは、その反動もあるのかもしれません」
小林さんのふとした時に感じる強さのわけが、
ちょっと分かったような気がしました。
背筋がシャン!
いつだったか、
私の前を歩く人が、
saquiのテーパードリボンパンツを穿いていて、
お! と思ったことがあります。
一目で分かる素材のよさ。
穿き心地がいいのに、
きちんとして見える。
シンプルだから、
コーディネートの幅が広がる。
シワになりづらいから、
立ったり座ったり、が多い時や、
旅にも重宝。
‥‥と「好きな理由」を挙げると、
キリがないくらい。
こんなに気に入っているのだから、
年中穿ければいいのに。
デザイナーの岸山さんにお願いして、
夏でも履ける、
サマーテーパードパンツを作ってもらったのが、
2年前のことでした。
穿いていて涼しいことを最優先に、
できあがったそのパンツ、
これがすごくいいんです。
暑いと、つい楽な方へ気持ちが向くけれど、
夏仕様のテーパードリボンパンツを穿くと、
背筋がシャン、と伸びる。
いつもと違う色のマスカラや、
ちょっとヒールのある靴を履きたくなるんです。
うれしいのは、
Tシャツやサンダルなど、
夏の定番アイテムを合わせても、
大人っぽくなるというところ。
夏に欠かせない、
私の定番のアイテム。
それがsaquiのサマーテーパードリボンパンツなのです。
さてさて、
今年の夏もどうやら暑くなりそうです。
楽ちん、もいいけれど、
おしゃれ心も忘れずに。
そんなあなたにおすすめします。
夏の少女
子どもの頃のお出かけ服といえば。
胸元にスモッキング刺繍が施された
ワンピースが定番でした。
丸襟で、
袖はふっくらとしたパフスリーブ
(当時はちょうちん袖と呼んでいました)、
ウェストはリボン。
ほんのわずかな少女の時期を、
一番引き立てる服。
そして、
その時期にしか似合わない服。
それがスモッキングワンピースなのではないかな?
‥‥と思っています。
一枚のワンピースにかわいらしさを詰め込んだ、
その様子が好きで、
娘が少女だった頃にも好んで着させていましたっけ。
懐かしい思い出のひとつです。
大人になってからは、
すっかり遠ざかっていた
スモッキングのワンピースでしたが、
さすがSAQUI。
少女の頃の懐かしさをほんの少し残しつつも、
しっとりとした雰囲気をまとった、
大人のワンピースを作ってくれました。
今週のweeksdaysは、
展示会で一目惚れしたワンピースをご紹介。
ネイビーはweeksdaysだけのオリジナルです。
夏のお出かけに、ぜひ。
CI-VA、わたしの使いかた 03 「ほぼ日」乗組員(後編)
子どもといっしょに
山川路子
わたしは忘れ物恐怖症で、
使うバッグはほぼ固定なんです。
通勤はリュック、
帰宅後のこどもの送迎や週末のおでかけは
このCI-VA、というルーティンになっています。
CI-VAのバッグはどんな服装でも
合わなくて困るということがないので、
とても便利なんです。
週末にこどもとお出かけのときのバッグの中身は
こんなかんじです。
こどもの着替えなどの荷物は
また別のリュックで持ち歩いています。
自分ひとりのおでかけのときも
ほぼ同じような持ち物ですが、
リュックの荷物より、
CI-VAのバッグは簡単に中身にアクセスできるので、
この持ち物でこどものお世話をすることも
けっこう多いです。
手を洗ったらタオルをどうぞ、
鼻水がでたらティッシュをどうぞ、
のどが乾いたといわれればお水をどうぞ、
というかんじでCI-VAのバッグが手放せません。
もう3年くらいともに過ごして、
たくさん(子どもに)引っ張られたり、
公園で滑り台をいっしょに滑ったりしているので、
カド部分がちょっと色が薄くなったりしていますが、
まだまだへこたれずいいかんじに使えています。
たまにはひとりで、
ちょっと遠くの美術館に行き、
ゆっくりアートを見て、
そのあとカフェでのんびりしたりしたいなあって思います。
その時もCI-VAを持って行きますよ。
気分を変えて、GREYがあったらいいな!
やまかわ・みちこ
「ほぼ日」デザイナー、
「weeksdays」を立ち上げからずっと担当している。
双子の娘の母。小柄ながらカメラは巨大な一眼レフ。
いつか、クラッチとして
坂口蓉子
近所へ買い物にいくときも
友達とお出かけするときも
旅行にいくときも
GREYのCI-VAをいつでも使っています。
シンプルなデザインなので
服装やシーン、季節を選ばず持てるのが嬉しいです。
財布や鍵などの貴重品、タオル、
リップや常備薬を入れたポーチ、
折りたたみ傘など、
これが必要最小限の荷物です。
財布は長財布、キーホルダーがたくさんついた鍵、
しっかりとした厚みのタオルなど、
ひとつひとつがかさばるものが多いので
小さいショルダーバッグだと
パンパンになってしまいますが、
CI-VAなら、かさばるものも
スッキリと収まるのでとても助かっています。
まだ余裕があるので
もうちょっと暑くなったら
たためる帽子や小さめの水筒も入れたいと思っています。
いつもショルダーバッグとして使っていますが、
伊藤まさこさんの
クラッチ風に持つスタイリングが
とても素敵だな、と思っていて
いつか、おしゃれな場所で
クラッチバッグとして使ってみたいです。
ちょっとしたパーティーなんて、
呼ばれることがあったらいいな、って。
もし2色目に選ぶなら、
やはりベーシックなBLACKがほしいな、
‥‥と、思っていたのですが
AQUA(新色)も気になっています。
夏に白いTシャツとあわせたら
絶対にかわいいだろうな、と。
さかぐち・ようこ
「ほぼ日」商品事業部、「weeksdays」担当。
スケジュール管理から取材の手配、原稿書きまで活躍。
落ち着いた美声の持ち主。
サウナセットをしのばせて
篠田睦美
持っているのはNAVYのCI-VA。
仕事関係で、商品の展示会に行くことが多いんですが、
ちょっときれいな雰囲気にしたい時は
このCI-VAの出番です。
(PCを持ち運ぶ場合はさらに別のバッグも持ちます。)
また、人に会う時、
食事やショッピングに行く時などにも使います。
バッグを変えるだけで、
カジュアルな洋服にあわせても
ラフな雰囲気になりすぎないので、
とても使うシーンが多いんです。
わたしはサウナが好きなので、
出先でチャンスがあった時には行けるように
1回分のサウナセットを忍ばせています。
大きい方のジッパー袋にはタオル2本、
サウナハット、サウナマット、ヘアゴムなどを入れ、
小さい方の袋にはスキンケア、シャンプー、
ヘアケア、日焼け止めなどを入れています。
他には、帽子、化粧品、サングラス、
財布、カードケース、お水などが基本のセットです。
盆踊りも好きなので、
いまの季節から秋くらいまでは、
盆踊りのあとにサウナ(もしくは銭湯)に行くのが
だいたいのお決まりコースです。
なぜCI-VAのバッグにこれを詰め込むのかというと、
その前の時間には人に会ったり、
ちょっとした用事を済ませることが多いため、
このスタイルに行きつきました。
持ち物がわりと多いので、
それぞれのものはとにかく
「軽い」「うすい」「コンパクト」
みたいなものが大好き。
これが自分が買い物をするときの大きな基準です。
冬はこのCI-VAのバッグの中に
ダウンジャケットを入れたりもしてます。
2色目に選ぶなら、
差し色に使えそうなAQUAか、
ニュアンスのある色味がかわいい
DARK BROWNで迷っています。
しのだ・むつみ
「ほぼ日」商品事業部、「weeksdays」担当。
サブカル大好き、みうらじゅん氏のファン。
そして時間があればサウナ巡りをしているそう。
毎日持ち歩いています
太田有香
NAVYのCI-VAに、
毎日持ち歩いているものすべてが入っています。
t.yamai parisの展示会でいただいた
リバティの小バッグに、
福田利之さんの丸いポーチと、小さい巾着に分けて
リップや美容液スティックなどの保湿系アイテムと、
ハンドスプレー、ヘアゴム、常備薬、
ハンドタオル、ティッシュなどをいれています。
ドラえもんの引き出しポーチには、
充電ケーブルなど電気系をいれています。
あとは傘、水筒、エコバッグ、イヤホン、
お財布、鍵、スマホなどの必需品です。
こんなにたくさん入れていますが、
バラつくものはキュッとまとめているので、
テトリス的にいれていくと、
すべてがCI-VAのバッグの中に収まるんです。
(平日の通勤は、これに別バッグを使って
パソコンとほぼ日手帳をプラスする感じです。)
これだけたくさん入れても、
かさばっている感じに見えないのが、
このバッグのすごいところだと思います。
カジュアルな服にも、きれいめの服にも
どちらにも合うので、本当に使いやすいです。
これを持って旅行に行きたいなって思います。
斜めがけにしたり、
紐の両端を結んで短めにして肩掛けにしたり、
いろんな表情で使えるし、
ペタンコなので旅行へ持って行くには
ピッタリだと思います。
ベーシックカラーと、
ポイントカラーの2色を持っていけば最強ですよね。
いま使っているのがNAVYなので、
次はポイントになるカラーが欲しいと思っています。
OLIVEか、AQUA(新色)のどちらかで、
とても迷っています。‥‥どうしよう?!
おおた・ゆか
「ほぼ日」商品事業部、「weeksdays」担当。
ほかにもたくさんの商品のジャッジをクールに担当。
趣味はチェロで、毎日練習をしているそう。
CI-VA、わたしの使いかた 02 「ほぼ日」乗組員 前編
ちょっと遠出、そして海外でも
斉藤里香
BLACKとYALE BLUEのふたつを持っていて、
自宅からちょっと離れたところに行く用事のときに、
ほんとうによく使っています。
旅行にも必需品。
海外で、出歩くのがちょっと不安な町では、
バッグを斜め掛けにした上から上着を重ねるんですが、
体によく添うので、持っているのがわからないほど。
あちこち、一緒に行って、
すっかり頼もしい相棒になっているので、
これからも一緒に行動したいなと思っています。
これが、いつも行動をともにしている基本セット。
ほぼ日手帳、財布、スマホ、ハンカチ、
鍵とリップクリーム(袋入り)。
見えないけれど、
ポケットのところにマスクも入れています。
そこに、携帯用の雨傘や交通系カード、
今回はありませんがリーディンググラスを入れることも。
その日のお天気やお出かけの内容によって変えています。
家の鍵は、布の巾着に入れて、巾着の紐部分を、
バッグの内側の肩紐が渡っているところに
くくりつけています。
暗い玄関先でもさっと出せますし、
鍵を探して、カバンの中をゴソゴソ探すのが嫌いなんです。
この巾着にはリップクリームなど、ぱっと出したいものを
入れていることもあるんですよ。
もう1色持てるなら、GREYかな。
3色、旅先で使い分けたら楽しそうです!
さいとう・りか
「ほぼ日」読みものチーム。
夏・恒例の「ほぼ日の怪談」などを担当。
1年前から、オリンピックを観に、
パリ旅行を計画している。
パソコン以外はなんでも!
諏訪まり沙
持っているのはBLACK。
パソコンが必要な出勤時以外は、
どんなシーンでもよく使っています。
たとえば夜、食事に行くとき、
お店って意外に荷物を置くスペースが
大きくないことが多いので、
コンパクトなこのバッグを持っていきます。
見た目以上にたくさん入るので
折りたたみ傘やうすいストールなど
「必要かもしれない」ものも入ります。
中のポケットにはリップやマルチオイル、
鍵などの細々したものを入れています。
ごはんに行くくらいだったらこれくらいの荷物量で、
1日出歩くときはさらにここに
エコバッグや水筒も入れています。
深すぎず中身がよく見渡せて
すぐ取り出せるところもとても気にいっています。
最近海外旅行に行く方がふえてきたのを見て
また“旅欲”がわいてきました。
貴重品をいれて常に持ち歩くバッグとして、
とても良さそう! って思います。
2色目を選ぶなら‥‥やっぱり新色のAQUAかな。
すわ・まりさ
「ほぼ日」デザイナー。
「weeksdays」デザインチームのひとり。
包装紙やパッケージ、箱や缶のコレクター。
昼と夜とで使い分け
倉持奈々
YALE BLUEを。お休みの日に使っています。
普段は、パソコンが入った
重ためのバッグを持ち歩く日々。
だからこの軽やかな感じが、
お休み気分にもつながって元気になるんです。
このバッグを持つときは、
厚みを出さずにすっきり使いたいんです。
そして重くもしたくないので、
本当に必要最小限の持ち物だけを入れています。
このサイズ感、理想的だなと改めて思います。
これから使いたいのは旅先で、ですね。
日中のカジュアルな場所へは斜め掛けで、
夜のお食事シーンには紐をはずしてクラッチとして。
そんなふうにアレンジが効くのも魅力だと思います。
くらもち・なな
「ほぼ日」糸井重里のマネジメント担当。
横浜DeNAベイスターズの大ファン。
極端な暑がりなので夏が来るのが怖い。
オールスタンディングのライブにも!
藤井裕子
BLACKをひとつ持っているんですが、
食事に出かけるときに使うことが多いです。
カジュアルにもフォーマルにも
どんなシーンでも合わせられるのが
このバッグのすごいところだなと思います。
冠婚葬祭のときも、このバッグの出番です。
また、よくライブに行くのですが、
スタンディングだったり、
荷物を預けられなかったりするので、
その時は両手が使えるこのバッグが
とてもピッタリだなと思います。
小さめのお財布に、お化粧直し用の巾着や
お手ふき、ハンカチと疲れたとき用の甘いもの。
あと眼が弱いので、替えのコンタクトと
これからの季節はサングラスを入れています。
weeksdaysでも販売したこのハンドローションは
ほんとうによいので、常に持ち歩いています。
さらに携帯と文庫本を入れてもまだ余裕のある収納力です。
もう1点持つなら、再販を待っていたGREY!
‥‥でもDARK BROWNも気になりますね。
ふじい・ゆうこ
「ほぼ日」商品事業部、「weeksdays」担当。
よく食べ、よく飲み、料理上手。
将来の夢は「1杯飲み屋を経営すること」。