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スタートは歯科技工士から。

未分類

伊藤
イヤーカフ、とっても素敵なものができました。
撮影のときも、すごく盛り上がったんですよ、
どの組み合わせで着けたいか、って。
大きい方、小さい方、
ひょっとして両方をあわせて
着けるのもいいのかも? って。
下川
いろんなスタイリングがあっていいと思います。
イヤリングよりもちょっとライトな感じですし、
ピアスがつけられない人や、
ピアスホールが開いてない人でも楽しめます。
伊藤
ピアスと合わせて使ってもいいですしね。
下川さん、ほんとうにありがとうございます。
下川
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
ぼくら(himie)のところでは
これまでつくっていなかったアイテムでしたが、
依頼をいただいて、
「まさこさんをはじめ、
みなさんの女っぷりを上げるジュエリー」を、
と考えたんですよ。
伊藤
すごい。そうなんですか。
じつはわたしも持っていなくて、
落ちないものなのかなと、ずっと思っていたんです。
でもふと「いいんじゃないかな」と、
去年の冬ですよね、ここ(青山店)で
イヤーカフがあったらと相談をしたら‥‥。
下川
それはチャレンジしてみたい、と。
伊藤
いままで、つくらなかった理由はあるんですか。
下川
いや、別に意味はないんです。
でも、まさこさんだけじゃなく、
ほかのお客さまからも
リクエストがあったんですよ。
いいタイミングでした。
伊藤
下川さんは、来歴がユニークなんですよね。
最初のお仕事は歯科技工士だったと聞きました。
下川
はい、父親が歯科技工士で、
そこを継ぐ予定でぼくもその勉強をしたんです。
じっさい、父の工房に入り、
月曜から金曜までは歯をつくっていたんですよ。
で、休みの日はアクセサリーを。
伊藤
ちょっと待って、その流れで
いきなりアクセサリーを?
下川
銀歯も、銀の指輪も、
つくる工程は一緒なんですよ。
伊藤
そうなんですか。
下川
最後のかたちが違うだけで、
溶かして流し込むという技法は同じです。
歯科技工士になるための学校では、
授業で指輪づくりも習うんですよ。
伊藤
えーっ!
下川
最初のほうだったと思います、
そういう授業がありました。
伊藤
なるほど‥‥でも、
月~金、ずっと歯をつくる仕事をしていたら、
土日は別のことがしたくなるんじゃないかなって
思ったんですけれど。
下川
ファッションが好きだったから、
楽しかったんです。
伊藤
それは自分でたのしむファッションとして?
下川
いやいや、僕は、アクセサリーを身に着けることには
興味がなくて。
伊藤
そういえば、全く、つけていないですよね。
下川
「つけてもらう」のが楽しいんですね。
伊藤
デザイナーの方のなかには、
自分が着たい服がないから立ち上げました、
みたいなこともあるのだと思うんですけれど。
下川
それはないんです。
伊藤
つくったものは、どうしていたんですか。
下川
日曜日に、当時住んでいた近くにあった
井の頭公園で路面の販売をしたんです。
そもそも、を言いますと、友人であり、
今も一緒にhimieをやっている職人がおりまして、
横浜でモノづくりのイベントに出るというんです。
「それなら僕もつくるよ」と、
指輪をつくって、2、3個かな、出したんですよ。
ところが全然売れなかった。
伊藤
どんな指輪だったんですか。
下川
シルバーに、入れ歯の材料を絵の具で染めて、
ペースト状にして垂らした、青いリングでした。
伊藤
なるほど‥‥売れなかったんですね。
下川
はい。でも、
その時のお客さんとのコミュニケーションが
すごく記憶に残ったんです。
物を通して話ができるっていうのが面白いと。
伊藤
そっか、歯科技工士のかたとお客さまが、
直接会う機会ってないですものね。
下川
そうなんです。作って納めたら終りなので、
まったくコミュニケーションがとれません。
本当に影武者なんです。
伊藤
だから、自分のつくったものを
身に着けようとする人の反応を見るのは、
すごく新鮮だったということなんですね。
下川
そうですね。ぼくがつくったものがもとになって
会話ができるっていうのが面白かった。
それで、井の頭公園で売ってみようと思いました。
当時は、許可もいらなくって、
いろんな人がいろんなものを売っていたんですよ。
いまは「井の頭公園アートマーケッツ」という
東京都が主催する年次のイベントとして
アートの販売が許可されるようになっていますが、
当時はかなり自由でした。
伊藤
何年くらい前の話なんですか?
下川
20年くらい前の話ですね。
最初はペプシの箱を持ってって、
裏返しにして台にして並べてました。
伊藤
それも、きっと素敵だったんだろうな。
お店に来ると、いっつも、
ジュエリーの飾り方がかわいいのにおどろくんです。
井の頭公園時代、楽しかったですか。
下川
楽しかったですね。
女性たちが公園に見に来てくれるわけですよ、
ワーワーと話をしながら、
それでこう、着けてくれたり、買ってくれたりして。
それが単純に楽しかった。
伊藤
歯科技工士は何年くらい続けていらしたんですか。
下川
技工所、いわゆるラボがあって、
そこに5年くらい勤め、
そのあと父のもとで1、2年です。
その時からですね、本格的に
アクセサリーをつくりはじめたのは。
30歳で結婚をして、それを機に歯科技工士を辞め、
アクセサリーづくりに専念をすることにしましたが、
最初の頃は相談を受けてから作る、
のんびしたペースでした。
気負いもそんなになくって、
なんというか‥‥フワッと始めたんです。
伊藤
フワッと。
現在、奥様の里美さんが
ショップの運営をいっしょになさっていますが、
当時、不安はなかったですか。
下川(里)
私は実家が和菓子屋で、
商売をしているので、職人さんというか、
モノづくりしてる人にとても寛容なところがあり、
そんなに不安を持たなかったんですよ。
「なんとかなる!」って。
伊藤
たのもしい! 
お父さまも理解を?
下川(里)
もうほんとうにやさしくて、
ご両親とも、賛成、応援してくれました。
下川
一時期は、父が歯をつくってる隣で
ぼくが指輪をつくって、一緒に仕事をしてました。
同じ機械、同じ材料なので。
下川(里)
環境に恵まれてたと思います。
全て設備が整っているし、
材料は常にあるし。
下川
普通は独立にあたって機材を買うんですが、
当初は資金がなかったものですから、
使わせてもらって。すごく恵まれていました。
伊藤
なるほど!

himieのイヤーカフ

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はじめてのイヤーカフ。

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「歳を重ねると、
時が経つのが年々速く感じる」

年長の友人たちが、
そんな風に言っても、
ふーん‥‥なんて思っていた私ですが、
今年は、あっという間だったなぁ。

それでも、
と思い出すのは、
あの人やこの人の顔。

今年もお世話になりました。

そして自分よ、
一年、おつかれ様でした。

今年のクリスマス、
私は私にイヤーカフを贈ります。
ピアスでもなく、ネックレスでもない、
はじめてのイヤーカフは、
himie(ヒーミー)のもの。

デザイナーの下川宏道さんが、
ひとつひとつ手作業で作った、
weeksdaysのイヤーカフは、
ゴールドとパールの2種類。
耳元をさりげなく飾る、
大人のイヤーカフ。
クリスマスプレゼントに、
ぴったりではありませんか。

点と点が、一本の線に。

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伊藤
「北の住まい設計社」のみなさんが、
今回、わたしたちに
声をかけてくださったといういきさつは、
どんなことだったんでしょうか?
渡邊
もともと「ほぼ日」に関心は持っていました。
私たちと、やってることは違っても、
社会に対するメッセージ性など、
向かってるところは共通してるよねっていうのは
ずっと思っていたんです。
秦野
それで、唐突にメールでコンタクトを。
伊藤
お話をいただいて、いろいろ拝見していたら、
「あれ、ここって?!」と思って。
共通の知人がたくさんいるんです。
奈良「くるみの木」の石村由紀子さんとか、
「Landscape Products」の中原慎一郎さんとか。
点と点が線になったような気持ちでした。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
秦野さんが最初にくださったメール(抜粋)

私たちの会社は北海道の家具のメーカーです。
商材に家具をという訳にはいかないですが、
小さな商品でスツールがあります。
とても可愛らしく、愛着を持って
使っていただけるとお勧めができるものです。

詳細をお伝えしますと
北海道産の木材を使い、職人が手組で作っています。
使うほどに良くなり、修理が可能で
お手入れも自分でできること、
それは永く使っていただきたい、
環境に負荷を掛けたくない思いからです。
着色にも中世で使われていた、エッグテンペラを使用し、
有機溶剤や揮発系のものを使用していません。
ただし乾燥には4~6週かかってしまうのがネックですが、
仕上がり感、経年変化とも素晴らしいものです。

ぜひカタログを送らせていただき
サンプル等でご確認をしていただきたいと思います。
少々思いが先走って稚拙な説明となっておりますが
どうぞよろしくお願いします。

北の住まい設計社 秦野
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

伊藤
感動したんです、いただいたメール。
秦野
いや、その、お恥ずかしい。
伊藤
スツールって、きっと
「weeksdays」にいいんじゃないかと、
私も感じました。
スツールというものが、わたしもほんとうに好きで、
何個も持っているんですね。
家具としてちゃんと成り立つものなのに、
存在感がそんなにないし、
幾つあっても邪魔にならないものだし、
座らなくてもサイドテーブルみたいにできたり、
何か飾ったりもできる。
それから秦野さんが東京に来てくださって。
秦野
はい、行きました。
伊藤
お目にかかって、ぜひお願いしたいと思い、
すでにあるサンプルを送っていただき、
そこからどうしようか、と、
ああでもない、こうでもないと、
わたしたちが投げかけたボールを、
毎回、きちんと投げ返してくださって。
秦野
そうでしたね。
伊藤
幾度かのやりとりのあと「これでいきましょう」となり。
意思の疎通がちゃんとできたと思って
とっても嬉しかったです。
秦野
やりとりのなかで、実現したのは、
丸い脚の先をちょっとエッジを効かせてみてはどうだろう、
ということでしたね。
伊藤
家に持ち帰り、うちにあるスツールと並べてみたときに、
ちょっとだけ足が丸っこいかなって思って。
他と同じようにしたいわけじゃなく、
うんと角張りにはしたくもなく、
「もうちょっとだけ丸を少なくしたら」と、
そういう提案をさせてもらいました。
秦野さんはどう思われましたか。
秦野
「あ、これ意外といいんじゃない?」と。
伊藤
よかった。
秦野
また、黒脚の提案も、楢材と似合いますね。
脚の色を変えるというのは、僕たちもやっていたので、
違和感なく、素敵なものになったと感じました。
伊藤
うちもそうなんですけど、
今、楢の家具がとても多くて。
北欧の家具が好きな方は、
楢で揃えていることも多いでしょうから、
買い足しやすいだろうと思いました。
また黒い方は、
楢の家具がいいんじゃないかなと思う人でも、
黒は新鮮に感じてくれる気がしたんですね。
実際、わたしもどちらを買おうか迷っています。
また、羊のシートをポンって置くと違う印象になるので。
原型となったスツールは、
今まで何脚ぐらい作られたんでしょう。
渡邊
どうだろう。1,000脚くらいでしょうか。
伊藤
え、そんなに。
秦野
1,200ぐらいになるのかな。
伊藤
すごい。どんなお家で
どんなふうに使われてるんでしょうね。
作るときは職人さん、何人ぐらい関わるんですか。
秦野
1人ですよ。
伊藤
え? 全工程をたった1人で?
秦野
そうなんです。でも、同じ人がずっと、
というわけじゃなく、
1人の職人が、1脚のスツールの
全工程に責任をもって担当します。
伊藤
最初から最後まで1人の方が1脚の椅子を。
秦野
うちの家具は流れ作業がないんです。
最初の削り出しから完成品まで1人で行くんですよ。
なので、検印の名前も入っていますよ。
伊藤
なぜ、流れ作業ではないんですか。
秦野
職人さんも自分で最後まで作るっていうところで、
責任を持てますよね。
誰かが作った部品を合わせて仕上げるのではなく、
また、その部品を担当するのでもなく、
最初から最後まで木目を見ながら作っていく。
だからこれはこの職人さんの目で作ったもの。
やっぱり個性が出ますけれど、そこを大事にしています。
渡邊
オートメーション化していないですからね。
基本的な木工機械しか置いていないんです。
伊藤
私たちも、あ、これは1人の職人さんが
大切に作り上げてくれたんだという
特別な嬉しさがありますね。
どういう使い方の提案をされますか。
渡邊
やっぱり基本的には補助椅子としてが
メインだと思うんですね。
後は、しっかり座って食事とかじゃなく、
何かちょっと作業をするときに
テーブルに持っていって使う、というような。
あるいはソファの横で本を置いたりとか、
お花を置いたりとか。
ちょっと玄関に置いて
靴を履くときにっていう方も多いですよ。
伊藤
あと、送られてきたときに意外と小さな箱で来たので、
それにびっくりしました。
重くないのもいいですね。わたしでも運びやすい。
秦野
そうですね。
伊藤
お手入れとかはどうしたらいいですか。
何か注意点とかありますか。
渡邊
木部は別に天然オリーブオイルの石鹸など、
要は純石鹸、固形石鹸でいいんですけど、
水とそれをつけて絞った布で拭いて、
汚れ落としをして頂く。
オイルも販売してますけど、
よほどかさつかないない限りは
そこまでのケアは必要ないんじゃないかな。
黒く塗っているものも同じです。
伊藤
エアコンの風が当たるところは避けるとか、
直射日光が当たるところは避けるとかは?
渡邊
そこまでデリケートじゃないですよ。
テーブルだと、クーラーの風が直接あたると乾燥し過ぎて、
木が持ってる水分を取っちゃいますけれど、
スツールは大丈夫ですよ。
もともとの木材の乾燥がしっかりしているので、
あのぐらいの大きさのものであれば、大丈夫。
伊藤
お手入れが簡単なのはうれしいですね。
あと、お客様に何かお伝えしたいことがあればぜひ。
渡邊
買われた方に、どんなふうに使って頂けるのか、
ちょっと覗いてみたい気持ちがありますね。
伊藤
わたしたちも見たい。どんな家に置かれるんだろうとか。
インスタグラムに投稿していただきましょうか。
「#weeksdays」とつけて。
渡邊
自分たちの家具の販売のチャンネルは、
問屋さんを通さない、全国の小さな家具屋さんです。
そんなふうに家具の流通の仕方も変わってきてますから、
私たちも直にお客様と結びついていきたいなと思います。
だから「ほぼ日」「weeksdays」のように、
考え方、メッセージ性が共通した、違うチャンネルで
発信して頂けるのはとっても有難いなって思います。
自分たちだけでは限りがありますから。
伊藤
楽しい広がりがあるといいですね。
わたしたちも頑張らなくちゃ。
渡邊
これからも、木のもので、
小さなものであれば、ご提案くださいね。
伊藤
あ、はい! ひとつあるんです。
それは、こういうものなんですけれど‥‥
(まだ内緒です)。
渡邊
なるほど! 
それは提案ができそうですよ。
伊藤
ほんとですか。
渡邊
はい。
以前、業務用でつくったことがあります。
かわいいくて、使い勝手がわりとよくて、
しかも、世の中にあんまりないですよね。
きっと、できると思いますよ。
伊藤
じゃあ、それが出来たときは、
ぜひ取材に行きたいです。
そのときはよろしくおねがいします!
渡邊
ありがとうございます! 
たのしみにしています。


家具づくり、家づくり。

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伊藤
40何年前の当時は、衣食住を提案するという店は
すごく少なかったと思います。
今でこそ、雑貨屋さんにカフェが併設されているとか、
お洋服屋さんにレストランがありますが、
当時はすごく珍しかった。
渡邊
ほかに、なかったような気がします。
でもそういうお店をやること自体が目的なのではなく、
ここに移ってくるときは、
自分たちがここで自給自足的な暮らしをしながら、
ものづくりを通じた表現ができたらいいと思っていました。
むしろ、お店をする予定はまったくなかったんです。

▲家具を売り始めた頃。

伊藤
それで、家具をまず最初に。
渡邊
北欧で夏に外での暮らしを楽しむようすを見てきました。
皆さんみんなお庭に、木でできたテーブルやベンチ、
ブランコをつくっていた。
だから木の家具を提案するのに、外の家具からいこうと、
当時北海道の松を使ってノックダウン(組み立て式)で、
アウトドアグッズとして販売を始めました。
その頃、テーブルが3万ぐらいだったと思うんですね、
部品が箱に入れてあって、組み立てるだけ。
でも販売したら「高い!」って言われました。
むしろ、安いと思うんですが‥‥。
伊藤
ええーー! 
安いですよね。
渡邊
今、やればいいのかもしれない(笑)。
そして、そのうちにいろんな出会いがあって、
DIYの大手ショップで販売をしたり、
雑貨・インテリアのブランドが
国内で家具を作りたいという時に、
受け皿がうちになり、一緒に家具をつくったりしました。
そのブランドとは材料も含めて
長くおつきあいをしましたが、
無垢材の家具って管理が大変なんですよね、
突然、先方の意向で終了になってしまったんです。
伊藤
なかなかうまくいかないものなんですね。
渡邊
そうなんです。
その後、家具の見本市にたまたま出ることになり、
どうせなら、家具を見せるというよりは、
自分たちの世界を演出して見せようと、
そんなブースをつくったら、
良い評価をしていただきました。
そこからですね、
家具の道が本格的にスタートしたのは。
伊藤
東川の小学校の建物との出会いは、
紹介があったとか、元々の故郷だったとか、
何かつながりがあったんですか。
渡邊
いえ。私たち、そのときは2人だったので、
どこでもよかったんですよ。
それでこういうことをやれる場所を探して
ずっと車で探して回ってたんですが、なかなかなくて。
そのときに友人がこの東川で
焼物の窯をやっていたんですね。
すると「ここにこんな建物が空いているよ。
町に企画書を出してごらんよ」って。
それでプランを出したら、
「いいですよ」ということになったんです。
伊藤
そこから、職人さんを探して?
渡邊
その前に代表が責任者として、
店舗什器を作る工場を立ち上げていたんですね。
彼は手は動かさないんですけど、
作るっていうこと自体には関心が高かったので、
いい職人がいて、打ち合わせさえすれば、
いい家具は幾らでも作れると言うんです。
それで、その工場にいたベテランの人が1人、
そのまま、来てくれました。
そのほかに塗りをしてくれる女性が1人いたので、
わたしたち2人、職人2人のスタートでした。
もちろん私たちも梱包をしたり、
いろんなことを手伝いながらでしたよ。
今は、職人が20人ぐらいになりましたけれど。
伊藤
家具をつくり、店舗も開き、家の設計もされるという、
今のような形態になったのはいつ頃からなんでしょう。
渡邊
うちの家具のユーザーの方から、
いろんな相談を受けているうちに、
家も設計して欲しいなということになり、
1軒、2軒やらせて頂き‥‥、というのが、
だんだん増えてきたんです。
代表は全部天然素材、とくに木でやりたい人だから。
使い捨てが嫌だ、土に還るものをというのが、
家具づくり、家づくりに通じていることですね。
伊藤
社長の渡邊さんの頭の中にずっとあったのは、
自然に還る素材でものを作るということと、
北欧の暮らしからヒントをもらい、
いいなと思ったことを北海道で形にすること。
渡邊
そうなんですよ。
何かを目指して、ゴールがあって、
ということではまったくないんです。
ほんとに出会いとなりゆきで今がある。
伊藤
吉川さんから、御社のイベント「夏至祭」について、
最初はこじんまりだったのが、評判が評判を呼んで、
どんどん大きくなっていったとききました。
1回行くと、みんな好きになっちゃうと。
そんな感じで仲間も増えていった、
ということなんでしょうね。
渡邊
共感、でしょうか。うれしいことです。
伊藤
このプロジェクトのきっかけとなった秦野さんにも
お訊ねしたいんですけれど、
もともと秦野さんは建築家だったということですよね。
秦野
そうです。北海道の設計事務所にいました。
そのときは公共施設ばかり担当していて、
正直、「もういいかな」という気持ちになって。
それでこの「北の住まい設計社」に来たんです。
伊藤
転職して、いかがでしたか。
きっと、全然違いますよね。
秦野
全然違いますね。
ここの会社に来てから初めて木造を担当したんです。
それまで鉄骨や鉄筋コンクリートしか
やったことがなかった。
伊藤
へえー!
秦野
家具の図面も描いたことがなかったんです。
家具をつくるときは、家具メーカーに図面を依頼し、
自分で描くことはなかった。
それで渡邊(社長)に
「家具の図面、描いたことないです」って言ったら、
「俺が教えてやるから」と。
「じゃあ、お願いします」ってここに来たんですね。
渡邊
代表は、家具図面も建築図面も全部手描きでやれますから。
秦野
実務としては、スケッチをもらうんですよ。
それをCADで図面化するという。
伊藤
渡邊さんのスケッチには
アイデアがいっぱい詰まってるんでしょうね。
秦野
それはもうほんとにたくさん詰まっています。
昔はちゃんとディテールも描いていたんですが、
この頃はサッサッサ、としか描いていないから、
僕たち、そのアイデアを拾わなきゃいけない。
伊藤
家具って、ずっと使うものだし、
椅子なら座ったり立ったりに
耐えられるものである必要もあるし、
かつ、デザインの美しさが要る。
それをサッサと描けるって、すごいですよ。
しかも今は「こういうの」ってニュアンスを
伝えてもらえれば、みなさんで形にできる。
渡邊
レベルの高いスタッフが揃っているんです。
職人と代表が直接話をしながら、
ちょっとしたディテールを調整しつつ、
全体のプロポーションを作り上げていくんですね。
やりながら直して、また直して、
っていう作り方ですね。
秦野
そうですね。現場で直接、
打ち合わせをしながら作り上げていくという感じです。

北欧旅行がきっかけで。

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伊藤
(オンラインで)こんにちは、伊藤です。
今回は、直接お目にかかることがないまま、
このスツールをつくっていただくことになって、
東川(北海道「北の住まい設計社」の拠点)に
伺わないまま、ずっとリモートで‥‥。
渡邊
そうですよね、あらためて、渡邊雅美です。
伊藤
この度はありがとうございました。
渡邊
こちらこそ!
秦野
伊藤さん、こんにちは。
以前「ほぼ日」に伺った秦野誠治です。
牧野
広報の担当をしております
牧野やよいといいます。
伊藤
秦野さん、牧野さん、よろしくお願いします。
ちょうど先ほどSTAMPSの吉川さんと
お話しをしていたんですよ。
渡邊
あら!
伊藤
みなさんに、ほんとうに
お世話になっているとおっしゃっていました。
くれぐれもよろしくお伝えくださいって。
渡邊
そうでしたか。ありがとうございます。
こちらのほうですよ、お世話になっているのは。
今、「STAMPS」さんの秋冬ものがたっぷり入って、
店頭が賑わっていますよ。
伊藤
東川に行かれた吉川さんが、
ほんとに素敵なところだなぁっておっしゃっていました。
今回も、コロナがなければ、行きたかったです。
もうちょっとの我慢ですよね。
渡邊
そうですよ、もうちょっと、我慢です。
伊藤
ウェブサイトを拝見して、
1985年に廃校だった小学校を
買い取ったところから始まった、
というふうに書かれていました。
渡邊さんたちがこのお仕事を
85年に始めるまでっていうのは、
どんなことをなさっていたんでしょう。
渡邊
会社を創って43年になります。
東川に来る5年ほど前から仕事をはじめました。
最初は旭川の町で、
インテリアの内装デザインの会社としてスタートしました。
その後、店舗だけじゃなく、
自分たちで飲んだり食べたりお喋りしたり、
そんな場所が欲しいよね、となって、
設計事務所をやりながら、パブを経営し始めたんです。
伊藤
パブ?! 
渡邊
パブです(笑)。
飲んで食べて安くて美味しく、って。
皆さんお若いからご存知ないでしょうけど、
「オレンジバーン」っていう、
有名な建築家の方(島弘子さん)が1988年に
建築設計事務所「オレンジポイント」とともに開いた
ショールームなんですが。
伊藤
はい、知ってますよ。
渡邊
あら! あの頃にしては衝撃的な大テーブルがあって、
隣の方は誰? という感じで若者が集まって、
飲んで食べてお喋りしてっていう場所だったんです。
それを見て、「私たちも、こんなことしたいね」って。
伊藤
そうだったんですね。
渡邊
その頃は、ファミリーレストランの出始めで、
そこに代表、わたしの夫ですね、が
仕事で関わっているうちに、
もうすっかり洗脳されまして、
自分たちでもつくろう! 早くつくろう! と。
仕組みはファミリーレストランの
セントラルキッチン(*)のマネをして、
仕込みが8割で、お客様には完成品を
すぐ出せるようにということが課題でした。
小さいお店だったんですけど、
大テーブルにみんなで座って、
だいたい客単価は1,200円。
ボトルをキープしても
1回1,000円ぐらいで収まるようにって。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(*)セントラルキッチンとは、あらかじめ調理をまとめてしておいて、
お店ではあたためたり、皿に盛って出す飲食店のしくみ。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

伊藤
ええーっ!
渡邊
お陰様で大繁盛で、
入るのに並ぶようになっちゃった。
私も事務所へ行って、お店へも出て、っていう生活で。
それが、3年ぐらいやったのかな、
突然「もう嫌だ!」って思ったんです。
伊藤
忙し過ぎたんですか。
渡邊
それもありますね。
しかも夜中まで毎日ですから、
「こんなの、一生は、したくない」って。
伊藤
理想の店はできたけれども、働くとなると、
ご自身が大変。
渡邊
極端に言えば、自分たちが生きていくにあたって、
自分自身が何のために存在するのかということに
ぶつかってしまったんですよ。
それで、そこは、一緒に働いててくれたスタッフに譲り、
設計事務所を休眠させ、
夫婦2人で1カ月、
フィンランドの田舎のにんじん農家に
ファームステイをしました。
ものすごい田舎なんですけど、
納屋のペンキ塗りをしたりして。
そこでの食卓は、女性のご主人がパンを焼き、
ウェディングパーティーをやったり、
ベリー摘みにも行きましたし、
釣りにも行ったし、とにかくとってもいい時間、
プレゼントな数週間を過ごし、
その後はスウェーデンとかノルウェーを回りました。
「あ、これだな」って、
それが現在のスタイルの出発点になったんです。
北海道の四季というのは、
北欧ととってもよく似ているんですよ。
伊藤
北欧での経験が、
北海道での暮らし方のヒントに。
渡邊
はい。自分たちがこれから仕事としていくのは、
こういうことを
何かを通じて伝えていくことだと思いました。
つまり、衣食住、
ライフスタイルぜんぶを提案したいんだって。
それで、北海道に戻ってきてから、
何でそれを表現しようっていうことになったときに、
「家具」だと、何故か、思ったんです。
主人はデザイナーではあるんですが、
職人ではないんですね。でも木がとにかく好き。
それで木の家具でスタートしようということになり、
今に至っているんです。
伊藤
そういうことだったんですね。

▲代表の渡邊恭延さん。

英国のオーエンバリーのこと。

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伊藤
木と羊を組み合わせたいっていう
私の思い付きが、こんなふうに形になって、
ほんとうにうれしいです。
吉川さんは、できあがって、どう思われました?
吉川
僕は、できあがったときは、ただただうれしくて。
人間関係と一緒で、モノづくりにも、
こういう幸福な組み合わせがあるんだ、
「思いが重なる」ってあるんだなあ、って、
チームのみんなとも、喜びました。
うまく言えないんですけれど。
伊藤
わかりますよ。あのブランドの人が、
じつはこのブランドのファンで、
またその逆でもあったりして、
「つながった!」という瞬間があるんです。
会ったことがない人たちでも、
なんとなく通じることがあるんだなというのは、
このweeksdaysをやっていて感じることです。
わたしは思いつきで「これとこれを合わせたい」と
言うだけなんですけれど、なんとなく通じ合っている。
吉川
偶然なのか必然なのかわからないですよね。
そして、ぼくがデザインしたら、こうはならない。
やっぱりこのバランスとか、
伊藤さんじゃないとできないことだと思うんです。
伊藤
この「かわいい」「かっこいい」は。
年齢や性別と関係なく、
もちろん吉川さんのおうちにも
合いそうだなと思いますよ。
吉川
それも感じます。どんなお家でも。
伊藤
オーエンバリーのこと、
すこしくわしく教えていただけますか。
吉川
はい。はじめて彼らのファクトリーを訪ねたのは、
2019年のことでした。
ロンドンから西へ、列車で2時間くらい、
サマセット州の、キャッスル・キャリーという駅です。
伊藤
きれいなところだとうかがいました!
吉川
はい、これぞ英国の田園風景! という感じですよ。
そこに工場があるんです。
2階が事務所で、1階が工場なんです。
オーエンバリーは
初代のオーエンバリーさんからずっと
家族経営なんですよ。
現在のオーナーは
シンディ・バーンスタブルさんという女性で、
娘のチャスさんとともに切り盛りしています。
伊藤
ブランド創設のきっかけは
どんなことだったんでしょう。
吉川
オーエンバリーさんが始める前も、
じつは、3世代にわたって
革のなめし工場を運営してきたんだそうです。
ところが、戦争や紛争が続いた英国では、
革もまた軍需産業に使われていったんですね。
そのことに強い疑問といきどおりを感じて、
個人向け、家庭向けの仕事がしたいと、
1948年から、
こうした製品作りをするようになったんです。
それがブランドのはじまりです。
伊藤
最初につくったのは‥‥。
吉川
レザーグローブだったそうです。
だんだんとアイテム数がふえ、
今回のシートのようなインテリア洋品、
バッグ、服へとひろがって行き、
いまや「革のライフスタイルブランド」として
知られています。
自社ブランド製品だけじゃなく、OEMも多くて、
ちょうど、僕らが工場に行った時には、
アメリカの有名なデパートの革製品を
つくっているところでしたよ。
伊藤
デザイナーは社内に?
吉川
はい、社内デザイナーがふたり。
伊藤
いまも、革をなめす工程からやっているんでしょうか。
吉川
いえ、オーエンバリーとなってからは、
革を買い付けているとききました。
革は、食肉産業の副産物としてうまれたもので、
主にヨーロッパの信頼できる工房から仕入れるそうですが、
今シーズンの革は、風合いや毛の密度などが最適な
オーストラリア原産の羊を使いました。
加工の工程、環境への配慮なども大事にした、
質の高い革です。
ヨーロッパは、世界的にも、
環境への意識が高い地域ですよね。
本来、捨てられてしまうものを使うということも含め、
オーエンバリーのモノづくりは、
とてもポジティブに受け入れられているそうです。
伊藤
しかも、家族経営だったら、
最初から最後まで自分たちの責任ですから、
ていねいな仕事をなさるでしょうね。
吉川
本当にみんなが「ファミリー」な印象なんですよ。
たのしそうで、しかも、手を抜かない。
長く勤めている職人さんも多くって、
いい環境だなあって思いました。
伊藤
今回は、羊のシートをつくるだけじゃなく、
その余り革も無駄にしたくないですよね、
という話になって。
吉川
羊のシートを丸く切り取ると、
どうしても端切が出てしまうんですよね。
イングランドの工場に相談したら、最初は
「ペンケースがいいんじゃないか」と、
すぐにサンプルをつくってくれました。
伊藤
面白かったですよね、フワッフワのペンケース! 
でも、だったら、ペンに限らず、
スマートフォンくらい入るといいんじゃないかなと、
このポーチになりました。
余ったものを利用して
こんなにかわいいものができたっていうことが、
すごくうれしくって。
吉川
はい、そうですね。
伊藤
そして、さらに小さな余り革を使って、キーホルダーも。
これはバッグにつけて
チャームにしてもいいですし、
ほんとうにキーホルダーとして使ったら、
なくすことがなさそう。
うちは、玄関に鍵の置き場所があるんですが、
そこにこれが置いてあったら、
それだけでもかわいいです。
そういえば、色や毛のカールの具合も迷いましたね。
スツールにぽん、と置いたとき、
どれがいちばん馴染むだろうかと。
毛足が短いタイプもかわいかったんですけれど。
吉川
もこもこしたタイプもありましたね。
伊藤
でもそれだと端っこのところが心もとなくて、
この、長めの毛がしっくりくるなあと。
何回も何回も話しましたね。
それって製品づくりには必要なことでした。
ほんとうに、ありがとうございました。
きょうは、このあと、
北海道とオンラインでつないで、
「北の住まい設計社」のみなさんとお話をするんですよ。
吉川
そうですか! ぜひよろしくお伝えください。
ほんとうにお世話になってます。
伊藤
わかりました!

偶然のつながり。

未分類

伊藤
今回、「北の住まい設計社」のみなさんと
木のスツールをつくるプロジェクトで、
STAMPSの吉川さんにもご協力をいただきました。
ありがとうございます。
吉川
いえいえ、こんなふうにご一緒できて
とても嬉しいです。
ぼくらが担当したのは、英国の「オーエンバリー」に
羊のシートをつくってもらうことでした。
スツールは「北の住まい設計社」の
定番のデザインを、「weeksdays」用に
アレンジしたのだとお聞きしました。
伊藤
そうなんです。もともとのデザインの
「かわいらしさ」をいかしながら、
ほんのちょっとシャープな印象を足したくて、
素材を楢材(北海道産ミズナラ)にし、
すこしだけデザインもアレンジを。
スツールの脚の接地面が、
もともとはドラムスティックの先みたいに
丸い、きれいなラウンド形状だったのを、
あえて、すこし、エッジをつけてもらったんです。
でもシャープすぎないように、という、
そんな按配を、みごとに体現してくださったんですよ。
吉川
脚が黒いものもつくられたんですね。
伊藤
はい、ナチュラルな座面に
イタヤカエデ材を黒く塗った脚を組み合わせてみたら、
ちょっと見慣れない、新鮮な印象になったんです。
わたしはスツールが好きで、
家に何脚かあるんですけれど、
「この組み合わせはなかった!」って。
吉川
スツールって便利ですよね。
いまはお客さまを呼ぶことが減りましたが、
「もう一脚あったら」ということは、よくあって。
でも椅子を買うのはちょっと、と思っているなか、
スツールを買っておくっていうアイデアは、
すごくいいと思うんですよ。
伊藤
椅子じゃなくてスツールだったら、
座るだけじゃなくて、花を飾ってもいいし、
ちょっとサイドテーブル代わりにしてもいいんです。
吉川
いいですね!
伊藤
それで、吉川さんに手伝っていただこうと思ったのは、
わたしが持っているスツールに、
座面が羊の毛で覆われているものがあるんです。
それをつくれたら、というのが最初の考えでした。
吉川
座面をくるんじゃうスタイルですね。
伊藤
はい。そうしようとしたんですけれど、
座面を加工すると、全体の印象が重たくなって、
価格もはねあがってしまうことがわかって、
あきらめることにしたんです。
それに、はじめから固定してしまうと、
台やサイドテーブルとして使うことができない。
じゃあ別添えで、
羊のシートができたらいいんじゃないかなって。
そうしたら、すでに「ほぼ日」で
吉川さんが「オーエンバリー」の
シートパッド
を紹介なさっていて。
それで相談に伺ったんです。
吉川
びっくりしたんですよ、
なぜなら僕らは「北の住まい設計社」のみなさんと
お付き合いがあったからなんです。
2017年に「インテリアライフスタイル展」
という催しに出展したとき、
「北の住まい設計社」の渡邊雅美さんが、
僕らの「STAMP AND DIARY」のブラウスを
気にいってくださって、取引がはじまったんです。
伊藤
社長の奥さまですね。
それまでは御存じなかった?
吉川
なんとなく、ですけれど、知っていました。
旭川の南東に位置する東川というまちの郊外で、
きちんとしたモノづくりをされてらっしゃる方たちだと。
北欧とのつながりが太い会社で、
スウェーデンのゴットランド島の
アーティストと仲がよいとか、
そういうことをおぼろげに知っていたので、
北欧好きの僕としても、
ぜひ取引したいと思っていたんです。
伊藤
お互いが「いいな」って思っていた。
いい出会いですね。
吉川
はい、ほんとうに! 
彼らは自分たちのオリジナルの家具を、
かなりおっきなスペースで展開しているんですが、
オリジナルプラス仕入れのものも置いて、
東川のショールームでは、
家具にかぎらない、生活全般の、
彼らのセンスにあう「いいもの」を紹介しているんです。
そこでSTAMP AND DIARYの服を
展開させてもらったら、
とてもいい手応えがあったんですよ。
東川って人口は8千人ほどで、
「北の住まい設計社」はさらにその郊外。
どうしてそんなに売れるんだろう? と不思議で、
1回行ってみたいなと思っていたら、
雅美さんから「夏至祭っていうイベントがあるので、
いらっしゃいませんか」と。
夏至祭は、日の出から日の入りまでの時間が
一年でいちばん長い夏至の日に、
ガーデンマーケット、ワークショップ、コンサート、
キャンドルナイト、それから持ち寄りパーティを開く、
かなり楽しいイベントらしいと知っていたんです。
毎年、うわさがうわさを呼んで人気が出ているんです。
それで、せっかく行くなら、と、
販売のお手伝いに行ったんですよ。
そしたら、ほんとうに素敵で! 
もともとは夏至祭っていうのは
北欧のライフスタイルで、
クラシックの音楽を聞いたり、
みんなで持ちよりパーティーをして、
火を焚いて、明るい夜を過ごすんです。
そんなに壮大なものじゃないらしいんですけど、
東川の夏至祭は、それの拡大版みたいな感じでした。
伊藤さんもよく御存じの、奈良の「くるみの木」の‥‥。
伊藤
石村由起子(いしむらゆきこ)さんですよね。
吉川
はい。石村さんも参加なさっていたし、
ランドスケープ(Landscape Products)の
中原慎一郎さんも関わっていて。
伊藤
そうなんですってね! 
中原さん、店舗をデザインしたとき、
「北の住まい設計社」に
椅子やスツールを頼んだとおっしゃっていました。
それで、私と合うんじゃないかとも。
吉川
そうなんですね! 
夏至祭があまりに楽しかったことと、
常設のショップの素敵さにおどろいて、
「こういうところにうちのコーナーがあったら素敵だな」
って思ったんです。
あの手づくりの家具の中で、囲まれるように
うちの洋服が並んだらいいな、と。
そうしたら、そのコーナーを
作らせていただくことになりました。
伊藤
そういう経緯だったんですね。
市街地からは遠い場所でも、
人が集まる場所なんですね、きっと。
吉川
想像ですが、大都会である札幌の人にとって、
東川に遊びに行くのは、
東京の人が箱根や軽井沢に行くような感覚なのかなと。
「あのお店に行こうよ!」みたいな、
小さな旅の、素敵な目的地なんだと思うんです。
カフェレストランもあるので、
そういう行先になってるのかな。
と、話が長くなっちゃいましたが、
そんな経緯があったものだから、
伊藤さんから「北の住まい設計社とつくるスツールに
オーエンバリーの羊のシートをあわせたいんです」と
相談をいただいたときは、びっくりして!
伊藤
よかった、ご縁がありました。

木のスツールと羊のシート

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再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月9日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

ちびちびセット

▶︎商品詳細ページへ

福光屋のお酒を知って20年ほどになります。
金沢を訪ねた時はもちろん、
東京にもお店があるので、
近くに行くと立ち寄っては、
気分に合うお酒を見繕い、抱えて帰ります。
お酒はもちろん、気の利いたおつまみなどもあって、
それがうれしいんです。

weeksdaysを始めた頃、
何かご一緒できませんか? と相談し、
ああでもない、こうでもないを繰り返して、
できあがったのが、このちびちびセットです
(構想から4年!)。

箱の中はこんな風。

1・福光屋のおすすめする6本のお酒

2・6つのちびおつまみ

3・ひれ酒用のふぐのひれ

4・お酒に合ったおつまみ20品の
  小さなレシピ本『ちび本』

お酒はひと瓶、180mlの飲みきりサイズ。
今日は、このお酒とこのおつまみにしようかな、
なんて迷う時間もいいですし、
家族と2、3本を飲み比べ! なんて楽しみ方も。
これまでお酒にあまり縁がなかったという方でも、
馴染みやすいサイズ感ではないかなと思います。

箱の絵を描いてくださったのは、
松林誠さん。
きりりとした中にも、
お茶目でかわいらしさに溢れるセットになりました。

私は自分用にはもちろん、
今年お世話になった友人知人にプレゼントしたいな、
と思っています。
(伊藤まさこさん)

今回の追加販売は、50セットとなります。
今回の追加ぶんが完売した場合、
その後の再入荷はいまのところ予定していませんので、
お早めにご検討くださいね。

チョコプレッツェル

▶商品詳細ページへ

一口食べるとチョコのあまさが。
そのあと、プレッツェルの塩気がふわり。
最初のひとつが喉を通り過ぎる頃には、
次のひとつに手が伸びる。
これにコーヒー(それもたっぷり入れた)があれば、
この上なく幸せなおやつタイムとなります。
私がニューヨークで食べた記憶をもとに作ったのが、
このweeksdaysオリジナルのチョコプレッツェル。
自分のために、
友人に。
ちょっとしたお土産にも。
今回から、パッケージのデザインが変わリましたよ。
(伊藤まさこさん)

今回の追加販売より、
パッケージはクラフト紙のものに変更となります。

木とモフモフ。 

未分類

ダイニングのすみっこ、
ベッドの脇、
台所、
それから玄関。

家のあちこちにスツールが置いてあります。

どっしりと腰を据えて座るというのではなくて、
ちょっと腰掛ける、とか
ちょっと何かを置く、とか。

この「ちょっと」が、
私の暮らしにちょうどいい。

椅子でもなく、
サイドテーブルでもない、
とても小さな家具だけれど、
あると、なんだかうれしい。
スツールって家具界の名脇役だわ、
なんて思うのでした。

今週のweeksdaysは、
木のスツールと、
それから、
冬にうれしいモフモフしたものをいろいろと。

明日のルックブックをどうぞおたのしみに。

美味しい組み合わせは無限。

未分類

伊藤
APOCのパンケーキミックスが4種類あると、
今日撮影させていただいたように、
すごく食卓に広がりが出ますね。
いろんな食べ方を教わりました。

甘いものとしょっぱいものをいっしょのお皿に並べたり、

パイナップルをソテーして、
スパイスを加えたメープルシロップをかけたり、

缶詰のチリビーンズをあたためてのせたり、

うすく焼いてクリームとシナモンで
バナナを巻いて胡桃をのせたり、

ちいさく焼いてクリームをはさんで
重ねてケーキみたいにして、

こんどはそれをミルフィーユみたいに切ったり。
(串をさしてカットすると、
こんなに厚くても崩れにくい!)

大川
そう。チョコもしょっぱく食べたりね。
伊藤
え、チョコをしょっぱくって?
大川
たとえばチョコにマスカルポーネでもいいし、
リコッタとかでもいいし、
塩とペッパー振って食べてもいいと思う。
伊藤
そっか、あとは、オリーブを切ったりと
おっしゃっていましたね。
大川
そうですね。
「バターミルク」の生地をフライパンに流したら、
スライスしたオリーブをのっけて焼くんです。
「コーンミール」には
トウモロコシの粒を振りまいてもいいし、
「チョコレート」だったら、
ブルーベリーをパラパラっとしてもいいし。
伊藤
そうか。焼いたものと組み合わせるんじゃなくて、
生地にパラパラと振る。
でも、混ぜ込まない?
大川
中に混ぜ込んでしまうと、どうしても、
生地のバランスにムラが出ちゃうでしょ? 
だから生地を流したところに好きなだけ、
お好み焼き形式でのっける。
うち(自宅)ではそうしてるんです。
あるいはミックス1袋ぶん、
1枚にしてど~んって焼いちゃったり。
伊藤
で、皆で食べる?
大川
そう、切り分けて食べます(笑)。
ジャムとか、目玉焼きとか、
テーブルの上に適当に出しちゃうんですよ、
各自好きにして、って。
伊藤
ジャムは温めますよね、雅子さん。
大川
そうそう。瓶から直接でもいいんだけれど、
ちょっとあっためてクリームにかけたりすると、
香りもフッと立つし、
クリームもサッと溶けておいしくない?
伊藤
メープルシロップを温めるっていうのも、
雅子さんに教わったことです。
すごく新鮮でした。ちょっと煮詰まって。
大川
メープルシロップ専用の保温ポットで
ず~っと電気で温めているんです。
だから煮詰めるのが目的というわけじゃなく、
自然に詰まっちゃうんですけどね。
メープルシロップは、以前はデニス・バンクスっていう
アメリカ先住民の方がつくったものを使っていたんですが、
そのデニスさんが亡くなってしまったんです。
跡を継いだ人たちで頑張ったんだけれど、
コロナでアメリカ国内も移動ができなくなって、
破綻しちゃったんですね。
それで今はカナダのオーガニックの通称「クマさん」を。
カナダでも、オーガニックの木って本当に少ないんです。
だから、業務用サイズをつくるのは無理で、
このサイズが精一杯。しかも割り当ても決まっているので、
欲しければ無限に送ってもらえるものでもない。
伊藤
いつまであるか分からない?
大川
そうかもしれない。
伊藤
大事なメープルシロップなんですね。
そして撮影では、メープルシロップにスパイスを入れて、
温めて香りをだして。
大川
シナモン、カルダモン、クローブ、生姜。
ホットワインのようにね。
伊藤
美味しかった~! 
使い切れないぶんは瓶に入れて
とっておくといろいろ使えそうですね。
伊藤
生クリームにマスカルポーネを足したりもしたし、
そうそう、APOCはベーコンもおいしいですよね。
大川
あれは、ホエイを食べている豚に、
塩をすりこんでつくったベーコンなんですよ。
元は、イタリアのパルマハムの原料となる豚を
使っているんです。
それを日本に持ってきて燻製にしています。
この作り方は日本でめずらしく、希少なベーコンなんです。
無添加、無着色、臭みもない。
伊藤
そんな手間をかけたベーコン! 
それを片面だけ焼くんですよね。
大川
両面を焼くと締まってしょっぱく感じすぎるから。
伊藤
目玉焼きの黄身が白身のまんなかで
ポコンと盛り上がっているのも、
じつは焼き方に技術があると知って驚きました。
大川
卵をフライパンに落としたら、
新鮮なものほど白身がホワンって盛り上がるでしょう。
あそこね、均一に火が通らないの。
だからフォークで白身を潰して、
ちょっと均一にしてあげるのね。
穴をあけるっていったら大袈裟だけど、
フォークで広げて、フライパンを傾けて、
黄身を真ん中にしています。
伊藤
そして欠かせないのがクレオールスパイス。
これは今回のセットでも買えるように。
大川
あのクレオールスパイスは、あるご縁があるんですよ。
ある本の翻訳で、私がレシピを
分かりやすく書き直すっていうお仕事をいただいて、
そこにヒントがあったんです。
伊藤
どういう内容だったんですか?
大川
アメリカの本なんですけど、
BROWN SUGER KITCHENっていうお店があって、
そのお店のレシピブックなんです。
伊藤
かわいい名前!
大川
そこにスパイスを使うお料理がいくつかあって、
それをもうちょっと日本人向け‥‥
というわけでもないんだけれど、
作りやすくなるように、ちょっと変えさせていただいて。
そこに載っているレシピがもとになって
できたスパイスミックスなんですよ。
向こうの方に許可を得て販売をしています。
伊藤
カイエンペッパー、ブラックペッパー、
パプリカ、クミン、セイジ、タイム、
フェンネル、ローズマリー、そしてゲランドの塩。
なるほど。
パンケーキミックスだけでは
使いきれない量だったりもしますけれど、
これはお料理にも活用できますね。
大川
そういうときは、多めに使って欲しいの。
遠慮なくお肉に揉み込んだりね。
一瞬ね、味見したとき、「あっ辛い!」ってなるんだけど、
馴染むと本当にいい味になるんですよ。
鶏肉にたっぷり揉み込んでから揚げにするとか。
伊藤
フライドポテトとか!
大川
私、ポップコーンマシーンも持っているくらい、
ポップコーンが好きなのね。
それでつくりたてのポップコーンに、
熱いうちにクレオールスパイスをかけて、
少しオリーブオイルもかけて、くっつけて。
大好きなんです。いい味になりますよ。
伊藤
わたし、カレーの中に
ちょっと入れたりとかしますよ。
大川
いいですね。
買ってきたお惣菜にちょびっとかけてもいいのよ、
サラダとかスープとか。
マヨネーズにも合うし。
私、てんぷらにもかけちゃう。
伊藤
なるほど!
大川
そうだ、最後に、パンケーキの保存のお話も
ちょっとしていいですか?
伊藤
ぜひ。
大川
1袋で6枚とか7枚焼けるけれど、
食べるのは2枚だった場合、
生地を半分にして使うのではなく、
全部いちどに使い切って、
残ったパンケーキは冷凍されるのをお勧めします。
アルミホイルに包んで。
伊藤
アルミホイルなんですね。
大川
そう。解凍はアルミホイルを外して
お皿に乗せて、かるくラップをかけて
電子レンジで1分~2分。
常温で解凍してもいいし、
冷凍のままオーブントースターでもいいですよ。
伊藤
なるほど~。
大川
そうだ、電子レンジで、メープルシロップを温めるのは
お勧めしません。沸いて泡が出てあふれるから。
メープルシロップを温めるときは、
鍋でゆっくり、目で見ながらお願いします。
伊藤
わかりました。
焼いたパンケーキを冷凍しておくの、いいですよね。
パンケーキが冷凍庫にあるなって思うと
嬉しい日ってあるんですよ。
何にもしたくないけど、でも食べたいというとき。
大川
大体私は2枚ずつ冷凍します。
と、今回のセットには、
そんなことを書いたお手紙もつけましたので、
読んでいただきたいな。
あと、作り方は、YouTubeにものせています。
恥ずかしいけど。
それでね、フライパンで焼く場合は、最初の1枚は、
もしかしたらうまくいかないかもしれない。
でも失敗してもいいんです。
すこしくらい焦げてもいいんですよ。
英語のことわざに
The fisrt pancake is always spoiled.
(一枚目のパンケーキは必ず失敗する)
というのがあるんです。
それくらい気楽に焼いてほしいな。
伊藤
だんだんうまく焼けるようになるんですよね。
そして今回は、特別な紅茶の入ったセットも。
大川
アッサムの、CTCっていう、
茶葉を丸めた加工をしたものです。
これは煮出すのも早いのね。
で、ミルクと相性がいいので、
ミルクティーとか、
チャイみたいにしてもいい。
ミルクティーのときは、
最初に少量のお湯で濃く煮出してから、
冷たいミルクを注ぐ方法が、私は好きです。
コアントローやグラン・マルニエ
(いずれもオレンジリキュール)とかあったら、
ちょっと垂らしても美味しいですよ。
伊藤
美味しそう!
大川
あとお砂糖も、かき回して全部混ぜず、
最後に甘さを感じるのもいい。
エスプレッソみたいな感じで。
伊藤
このセット、どれを選んでも、
きっと楽しんでもらえると思います。
大川
ね、楽しんでいただけますように!
伊藤
ありがとうございました、雅子さん。
大川
こちらこそ、まさこさん。
またお店にいらしてね。
伊藤
はい、ぜひ!

はじまりは「ワンボウル」。

未分類

伊藤
コロナで働き方は変わりましたか。
大川
変わりました。元々そんなに夜遅くまで
働くことは好きではないけれど、
より、キュッと働いてキュッと帰るようになりました。
伊藤
こういうお仕事は、
仕込みの時間がけっこう大変なんじゃないかなと。
大川
お店を閉める日(定休日)に
仕込みを集中してやってるの。
だから私の休みはないんです。
伊藤
キャリアのスタートは‥‥。
大川
本当のスタートはキッチンの洗い物から。
カフェの店員から、
メニューの開発、製菓を担当するようになって。
田園調布の「デポー39」、
広尾の「F.O.B COOP」、
青山の「ディーズ」にもいましたよ。
伊藤
いずれも名店に。すごいです。
大川
そういう場所で働けたこと、とても感謝しています。
オーナーのみなさんには、
いまだに足を向けて寝られません。
伊藤
へぇ~!
大川
私は、料理の仕事がしたくて、
でも何をしていいか分からなかったんです。
それでお店に入って仕事をしたり、
手先が器用だったから、なにかをつくることで
背中を押されたりもして。
友達が声を掛けてくれたんです、
「お菓子をやりなよ」って。
そうしたら『non-no』という雑誌で、
16ページを任されることになって。
伊藤
え~~!
大川
「ワンボウルケーキ」っていう名前でした。
伊藤
それ、のちに、本になりましたよね?
大川
はい、『ボール1つでシンプルケーキ』という名前で。
伊藤
画期的だったんですよ、ボウル1つでって。
大川
最初、「雑誌じゃなくて本がやりたい」って言ったら、
「まずは雑誌からやりなさい」って。
それがスタートで、雑誌、書籍の仕事をしながら、
教室もやるようになりました。
伊藤
わたしが雅子さんと仕事をご一緒したのも、
もう25年ぐらい前の話ですよね。
もうお菓子がとにかく美味しくて、
ハートを鷲掴み、みたいな。
大川
そんな(笑)。
伊藤
容赦ないんですよ。
甘さとか、バターの使い方とか、
そういうことに、ギュッと鷲掴みにされるんです、
雅子さんのお菓子って。
大川
習ったわけじゃないから。自由なのよ(笑)。
伊藤
「バターが冷たいまま、溶かさずに、
あったかいパンケーキといっしょに口に入れてね。
ほら、溶ける前に!」
というのも、納得。
大川
もちろん染みたパンケーキのバターも美味しいけど、
カットしながら冷たいバターを口の中で溶かす、
バターの味を味わっていただきたいんですね。お店ではね。
バターいいもの使ってますし。有塩で国産の。
伊藤
そうですよね。わかります。
──
蒸かしたアツアツのジャガイモに
有塩バターをのっけて、
溶け切る前に口に入れたときのあの感動に
近かったです、今日、いただいて。
大川
上あごに冷たいものが、舌にジャガイモの熱いのが来る、
あの感覚ですよね。パンケーキもそうで、
ちょっとホワンっていうパンケーキに、
冷たいバターが一緒に入るっていうのがね。
伊藤
ここに来るといろいろなことが
「OK」となるのが嬉しいですよね。
冷たいものとあったかいものを一緒に食べる、
甘いものとしょっぱいものを一緒に食べる。
さらに、酸っぱい、辛い、
その味も食感もすごく楽しいし。
大川
まーちゃん(伊藤さんの愛称)が
初めてここに来たときに、
目玉焼きのお塩をすごく褒めてくれたんですよ。
「見て、この粒の光り具合!」みたいな(笑)。
うちの塩は、粒が大きくて、振ってあるというより、
容赦なく黄身の上に置いてある、ぐらいな感じなんですよ。
伊藤
その量が的確なんですよ。
食べるとわかる、「ん!」みたいな(笑)。
「あぁ、この人ほんとすごいなぁ」と思いました。
大川
すごいのはまーちゃんよ、
親子ふたりで2皿ずつぐらい食べるんだもの。
伊藤
そうでした(笑)。
これにしようかな、こっちにしようかなって
わが家は、迷ってるときに
「我慢しない、どっちも」
っていうのが決まりなんですよ。
大川
私もそう。迷ったら両方。
「いいなぁ」って思うとね。
伊藤
あと私は雅子さんで感動したのが、
「ア・ピース・オブ・ケーク」で
ドライフルーツがいっぱい入ったケーキを、
「なんでこんな美味しいんですか?」って訊いたら、
ちょっと間をおいて「‥‥時間ね‥‥」って。
かっこいい~! って。
それは、フルーツをお酒に漬ける時間が、
「何年」とかだったんですよ。
大川
そうですね。うん。
伊藤
「ありがとうございます」っていう感じ。
それから、自分でつくろうという気が起こらない。
雅子さんのとこで買えばいいんだよってなるもの。
それで、はじめて雅子さんのミックスで
パンケーキを作ってみてびっくりしたんですよ。
それまでのミックスは、
たとえばバニラの香りが強すぎたり、
成分表に気になるところがあったりしました。
でも雅子さんのミックスは、安心なんです。
しかも、牛乳と卵をまぜて焼くだけで
こんなに美味しいものができるなんて。
大川
自分でも食べるものだから、
変なもの入れたくないじゃない。
伊藤
バターミルクのかわりに使っている
ホエイパウダーもそうですよね。
選んで、選んで、やっと見つけた、って。
大川
最初はバターミルクを使っていたんです。
それは日本に入って来たばっかりのもので、
ところがその製品が輸入中止になってしまった。
どうしよう? と。
今でこそ国産のバターミルクがありますが、
当時、ほんっとになかったんです。
伊藤
今でも手に入りづらいものですよね。
大川
そうですよね。で、代わりに、
ホエイ‥‥乳清ですね、そのパウダーを使っています。
北海道でチーズをつくる副産物。
もちろん小麦粉も吟味して、
自分が食べるものとして探していますし、
パームオイルはトランスフリーで
オーガニックのものを使うとか、
混ぜるメープルシュガーもオーガニックを選ぶとか、
アルミニウム不使用で、遺伝子組み換えでない
コーンスターチのベーキングパウダーにするとか。
探せば、そういういいものがあるんですよ。
私、原価の低さ優先じゃないんですよね。
伊藤
しかも手作業ですよね。ミックス。
大川
うん。ここで、手で作ってます。
今回皆さんにお届けするパンケーキミックスは、
私と夫と息子の3人で作りました。
伊藤
せっせ、せっせと。
「どこかに頼んでるんですか?」って昔聞いたら、
「違うよ、これ全部ボウルで作っているのよ」と。
大川
計量して、調合。
それを何回も何回もやるの。
伊藤
でも、その最初の基本ができるまでには、
試行錯誤があったでしょうね。
大川
しましたねぇ。
伊藤
「よし、これ!」ってなってからは、
もう配合は変わっていない?
大川
配合は変わっていません。
でも材料は、より良いものにどんどん変えていく。
伊藤
で、味がどんどん増えていく。
最初は1種類だったのが、いまや4種類。

v

大川
増やしていきたくなっちゃうの、もう(笑)。
それで二番目に作ったのが「グレイン」。
これは、私が雑穀が好きだから。
そうしたら「次はトウモロコシもあったらいいね」と
「コーンミール」を作って、
「そりゃチョコレートでしょ!」っていうことで、
最後の「チョコ」が生まれました。
「チョコ」はね、とくに気合いが入ってます。
伊藤
どんなところが?
大川
メープルシュガーの配合がすごいんです。
たくさん入ってる。
伊藤
しっとり焼き上がりますよね。
しかも、チョコがチップで入ってる。
大川
そう。
伊藤
大人味。
チョコ味のパンケーキと言われて想像する感じとは違って。
大川
うん、そう。
伊藤
これからまた種類が増えたりするんでしょうか。
大川
たまに、ケールを粉末にして入れてみたり、
抹茶入れてみたり、いろいろしましたけど、
あんまりそういう変化球は商品化に至らないかな。
なにか折があればやりたいなぁと思うんですが。

パンケーキミックスをつくった頃。

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伊藤
(撮影が終わり、ほっとして)
ああ、たのしくて、美味しかったです。
ほんとうによくできていますよね、
雅子さんのパンケーキミックス。
これは、いつごろから、あるんでしょう。
大川
20年ちょっと前くらいからかな。
伊藤
その時、このお店(APOC)はまだ‥‥。
大川
なかったです。
1998年から、岡本太郎美術館に
「ア・ピース・オブ・ケーク」という
カフェをオープンしましたが、
そこはパンケーキのお店ではありませんでした。
伊藤
私が雅子さんを知ったのは、
「ア・ピース・オブ・ケーク」を始める前、
南青山のビルの一室で教室をやっていらした頃ですね。
ずっと青山が本拠地。
大川
そうなの(笑)。お菓子の教室では、
「こういうミックスを作っておいたら
便利ですよ」と、配合を紹介していたんです。
ミックスを作っておけば、
卵と牛乳入れたらパンケーキができる、
とっても便利ですよということで。
でもね、きっと、なさらない方もいるし、
わたしが作ったミックスを売れば、
もっと早いかも? と思って、
つくって、売ってみたんです。
インターネットもまだそんなに普及していない頃。
ブログ‥‥というかホームページね、
そこでちょっと書いては、WEBと
「ア・ピース・オブ・ケーク」の店頭で売ったりして。
伊藤
そうですよね。
もしかしたら「ほぼ日」創刊と
同じくらいの時期じゃなかったかな。
大川
そう! 「ほぼ日」は1998年の6月ですよね。
カフェは、4月なんです。
──
先輩ですね!
大川
(笑)。
伊藤
すご~い。
大川
それで2年くらい経ってから、
パンケーキをお店で焼いて出してみようかなと、
「ア・ピース・オブ・ケーク」の
メニューに入れてみたんです。
当時はパンケーキというものが
あんまり一般的ではなくて、
「ホットケーキとパンケーキはどう違うの?」
「いや、一緒なんです」
「じゃ、何が違うの?」
「ですから、一緒なんですけれど」みたいな(笑)。
そうしたら、そのうち、なんとな~く、
パンケーキという言葉が浸透してきました。
そんななか、信号待ちしていた不動産さんで見た張り紙に、
このお店の賃貸情報が出ていたんです。
それが2011年、年明け間もなく。
伊藤
パンケーキ屋さんをやりたいから探したのではなく?
大川
信号待ちしてたら、「お?」って。
「軽飲食“相談可”」と書いてあって。
伊藤
うん、うん。
大川
51だったかな、
パンケーキミックスを開発して10年たって、
10年頑張れば一人前、
と思っていたので、
姉妹店を出すことを考えたんです。
伊藤
へぇ~。
大川
それにパンケーキも、単純に、
受け入れてもらえるのかな、と思って。
教室で借りていたスタジオを閉じて、ここに来ました。
伊藤
前からお店はやりたかったことだったんですか?
大川
わりと衝動的かな。
伊藤
お子さん、まだ小さかった頃ですよね。
大川
だって、「ア・ピース・オブ・ケーク」も
お腹が大きいときにつくったんですよ。
伊藤
え?!
大川
ははは。息子は99年の2月生まれなんだけれど、
お店は98年の4月につくったの。
だからどんどんお腹が大きくなって、
まだお店が開店して1年も経ってないのに産休、
みたいな。
伊藤
すごいですね~。
大川
今、やりたいことをやろうと(笑)。
あんまり考えてないんですよね。
伊藤
なんとかなった?
大川
なんとかなった。うん。
そしてこの2店舗目は、
もう、やりたくなっちゃった。
そうそう、その頃、親の介護とかもしていたのよ。
伊藤
え?!
大川
親戚のおばのヘルプもしてました。
子供もまだちっちゃかったし、
すごく人のお世話が大変で。
でもなんだか、不動産屋さんでピンと来て。
伊藤
どういう感じだったんですか? 最初は。
大川
陶器屋さんだったんですって。
だからキッチンもなんにもなくって。
それで「軽飲食“相談可”」って書いてあったのね。
キッチンはないけれど、やりたい人は
ご自分でつくってどうぞ、みたいな。
伊藤
仕切りとかももう全っ然なく、いちから全部?
大川
そうなんです。
でもお金もないし、デザイナーさんもいないから、
全部自分でこまかくレイアウトを考えて。
伊藤
お金はどうしたんですか。
大川
銀行に借りに行ったの。そしたら貸してくれなくって。
「何で?」って。
だって、「ア・ピース・オブ・ケーク」をつくるとき、
借りて、す~ごくきれいに返したのよ。
なのにね、何でだと思う? 
そのあと、借りてないからですって。
お金って借り続けてないと貸してくれないの。
きれいに返してすごい気持ちいいなと思って、
数年経っていたんですよね。
でも銀行にとっては信用がゼロになっちゃった。
伊藤
そんなぁ!
大川
借り続けながら事業をちゃんとやっている、
っていうことが、
「貸すに値する」っていう信用なんでしょうね。
だからもう大変でした、走り回ったり、面接に行ったり。
最終的には金融公庫に書類が通って。
伊藤
そういうものなんですねぇ。
それを原資に。
大川
そう、オール借金です(笑)。
飲食はたいへんですよ、うちのような個人商店は。
伊藤
でもそのうちお酒もやろうかなとか、
なるかもしれないですよ、大川さん。
大川
そのうち、「スナックマコちゃん」をね(笑)。
伊藤
「スナックマコちゃん」! すごく、いいですね。
わたしも手伝おうかな(笑)。

APOCのパンケーキセット

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その日はごきげん。

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休日の朝、
とくに天気のいい日は、
パンケーキを焼きたくなります。

合わせるのは、
目玉焼きにベーコン、
メープルシロップに発酵バター。
それから、
たっぷり入れたミルクティーがあれば
その日はごきげん。

ふだん寝坊気味の娘も
「わー、いいにおい!」なんて言いながら、
台所を覗きにやってくる。
その日ばかりは早起きなのです。

使うのは、いつもストックしている
APOCのパンケーキミックス。
牛乳と卵があればおいしいパンケーキが焼けるんだもの、
毎回、使うたびに「すごいなぁ」と感心しちゃう、
私の定番中の定番です。

コンテンツはAPOCの大川雅子さんに、
パンケーキミックスを使った
おいしいアレンジをうかがいました。

知り合って四半世紀。
雅子さんのまわりには、いつもおいしい匂いが漂っている。
weeksdaysでは、そんな雅子さんと相談しながら、
4つのセットを作りましたよ。
どうぞお楽しみに。

「よろずや」がやりたい。

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菊池
ファッションでもシンプルでストイックなものは
崩したくなっちゃうんですが、
それもあまのじゃくな性格の
あらわれなのかなという気はします。
ベーシックなものがあったら、
そこから自分流に変えちゃおう、みたいな。
伊藤
さっきも撮影で、タートルを折ったら‥‥。
菊池
やっぱり伸ばします、みたいな。
自分の中のイエス、ノーはたぶん結構はっきりしてて、
どっち? って言われたら、絶対、こっち! って言う。
伊藤
帽子のかぶり方にしてもそう。
菊池
こぶし1個ぶんの膨らみをつくって浮かせたくなるとか。
そういうことって、
長年の自分と向き合ってきた結果なので、
みなさん、あると思うんですよ。
すべての人においての正解はたぶんなくて。
伊藤
そうだね!
菊池
自分の中の正解があればいい。
定期的に持ち物を見直したとき、
手放さず残っていく服は、
時間が経っても輝きを失わない服ですよ。
ただ、たとえばアランニットがいくら好きでも、
年齢ゆえ、あの羊毛のちくちくに
私の首が耐えられなくなってきたから、
素材のいい薄手のタートルを
下に仕込んでから着る、みたいなこともあって。
伊藤
知り合いに、コム デ ギャルソンが大好きだけれど、
時に自分には手強い、でも着たいデザインの
服が出ることがあるんですって。
そういうものを欲しくて買っちゃったときは、
一晩一緒に抱えて寝るそうです。
菊池
(笑)匂いをつけるみたいな。
伊藤
そういうのはある? 
自分にとってすぐには馴染まないんだけど、
憧れて、着たい、みたいな。
菊池
バレエシューズがそうかも。
足元が華奢な靴が似合わなくて。
きょうもごっついパラブーツ(Paraboot)です。
伊藤
でもそれがあっこちゃんのバランスとして
定着してるんだよね。
菊池
そうなんですよ。でも、レペット(repetto)の
エナメルシューズも持ってるんです、
ぺたんこのレザーとか。
ところが履かないんです。
1年に1、2回ぐらいトライしようかな、みたいな。
伊藤
その1年に1、2回はどんな日?
菊池
ピンときた日。
今日はいける! みたいな。
あとは、白シャツ。
ずっと憧れがあるけど、似合わないんです。
伊藤
そう言えば、襟がついたものを
あんまり着ていない気が。
菊池
そう。ノーカラーやスタンドカラーですね。
コンサバになっちゃうんですよ。
伊藤
そうかな。ボタンダウンとか似合いそうだけどな。
菊池
そう、好きなんです。
メンズっぽいボタンダウンのシンプルなシャツに
憧れがあるんですけど、
そこがいちばん難しいゾーンかもしれない。
マニッシュでスタンダードベーシックみたいな服。
フレッシュな20代のときはそういうシンプルシャツや
チノパンがいけたんですけど、
40手前になった今が、一番難しい。
でもまたたぶん、着る時がやってくる。
私の母親を見ていると、
そういう格好をよくしてるから。
伊藤
へえー。
菊池
60代になったら、
また似合うようになるかもなと思って、
取ってあるんです。
伊藤
なるほどね、そっか、そうか。
じゃあ、これから仕事で何がしたいかを訊いて、
終わりにしようかな。
やってみたいことは? 今。
菊池
やってみたいことですか。
お店をやりたくて。
伊藤
キラッ! お店、何屋さん?
菊池
商店みたいな(笑)。よろずや、兼、喫茶店。
そういう場所が作りたいという気持ちがあって。
洋服に限らず、まな板とか、
そんなに売上には貢献しないかもしれないけど、
予定調和な感じのものじゃなくて、
本当に欲しいものだけを置いて、
コーヒーも飲める、みたいなお店です。
昨年、「jicca」っていうものづくりの企画で、
バナナニット(胸に立体的なバナナの編み込みのある
ニット)を作ったんですけど、
それは娘がバナナばっかり食べていたのがヒントで。
子供服も作ったんですよ。
そういうものも置きたい。
ひとつのブランドをやり続けます、
商品を出し続けます、っていうのは
自分の中で違うんですよね。
そのときに欲しいものを必要なだけ作りたい。
伊藤
ふむふむ。
菊池
まさこさんが作るものは
いつも守備範囲が広いですね。
今回の「weeksdays」のサロペットは
そういう意味ですごいなと思いました。
すごく、多くの人が似合いそうです。
私はああいうふうに作れないなと思う。
私は自分基準で考えちゃうから、
自分に似合うものが多くの人に似合うとは限らないんです。
伊藤
そうですね、「weeksdays」は広い。
「weeksdays」が似合う人って、
すっごく、いると思うんです。
菊池
そろそろ、自分の持ってるものを愛していかないとなぁ。
私は手が筋張ってることが
ずっとコンプレックスだったんだけれど、
先日、舟越桂先生の作る彫刻に
その筋感が似てるって言われて、
そっか、じゃあ、この筋っぽさも愛していこうって思って。
伊藤
ヘアメイクの草場さんが、
あっこちゃんの手、指の長さを
すごく褒めてたよ、さっき。
菊池
そう。自分で見ると嫌になるんだけど、
そんなふうにどなたかのフィルターを通して見たり、
カメラとか通して見ると、
ここだけでドラマが作れるかも、みたいな。
手元で哀愁があるというか。
伊藤
哀愁‥‥はわからないけど、綺麗だよ。
菊池
いやあ、だからでもプクプクした手の子が好きで、
「すごい、ああ、もう触りたーい」
みたいな感じになりますよ。
伊藤
逆に、そっちの感じの子は、
あっこちゃんみたいなスッとしたい人に憧れるの。
でも自分って、ある程度体重のコントロールはできても、
基本、変えられないものよね。
菊池
そうですね。
伊藤
うまく好きになって折り合いをつけて、年を重ねたい。
菊池
昔、初めて作った本に、
「自分でいることが嬉しくなる」と書いたことを
最近思い出して、なんかほんとそれだなぁと思って。
その服を着たら、自分でいることが嬉しい、
みたいなふうに思える服というのは、
結構あると思いました。
帽子もそうですよね。
伊藤
あるね。わたしは、靴かな。
もうとにかく華奢な靴が大好きで、
歩けない靴ばっかり持ってる。
それを履くのは、
家の前でタクシーを拾って行ける場所だけ。
菊池
履くと痛いけれど、ファッションとしての靴、
それが歩けない靴ですね。
結局私はこの年まで、
歩けない靴で頑張る精神というのを
経験しないで生きてきちゃったけれど。
伊藤
歩かないのでかかとが全然減らない。
そういう靴がいっぱいになるのって、
どうだろうなって思いつつ。
菊池
4歳になる娘が、
ビニールでできたキラキラの靴が好きで、
その靴で毎日登園してるんです。
伊藤
かわいい。
菊池
それを素足で履きたいと言うんですよ。
シンデレラみたいに、って。
でも痛くなるの。
「だから言ったでしょ、痛いから、こっちに替えよう」
って言っても「痛くても我慢するの!」。
‥‥この年でそれを言うかと思って。
伊藤
面白い。どうなるんだろう。
菊池
どうなるんだろう? 
誕生日のリクエストは
キラキラの光る靴だそうです。
私の趣味じゃないんだけれど、
‥‥まさこさんだったら買いますか。
伊藤
買ってあげると思う。
うちの娘は欲しがらなかったけど。
‥‥あっ、我慢してたのかなぁ。
わたしが嫌がるのを察知して(笑)。
菊池
でもお母さんが嬉しそうだから、というのも、
別に悪いことじゃないですよ。
私もそうだったんです。
母がトラッドのものが好きで、
私がその服を着ると
「ああ、やっぱり素敵。まあ素敵」
って言ってくれることが嬉しかった。
それはお母さんにすり寄ってるわけではなくて、
お母さんが嬉しそうにしてるのが好きで、
だからその服も好きになる、
それはわりと自然なことだし、
それがその家で育っていくということだから。
とはいうものの、
やっぱり自分の美学は
ある程度貫かねば、とは思うんだけど。
「だがしかし、このキラキラ靴は」と。
伊藤
うん、うん。
菊池
これはどうかなみたいなジャッジを、
最初から親がしちゃうのもなぁと。
‥‥そうは言いながらも、
私も最近ピンクが好きになってきたし、
光るもののかわいさとか、わからなくはないんです。
同じ花柄でもこれはすごく素敵な花柄だとか。
伊藤
そうだよね。じゃあ買うこと、決定だね。
菊池
そうですね。ああ、なんかね!
伊藤
ふふふ、ありがとうございました。
ああ、楽しかった。
菊池
ありがとうございました。
こちらこそ、です。ほんとうに!

わたしのヲタ活。

未分類

伊藤
‥‥そうだ、「weeksdays」のチームに
あっこちゃんの大ファンがいるんですよ。ね。
──
はい。私は、高校2年生ぐらいのとき、
本屋で『マッシュ』(菊池さんが編集長をした雑誌)の
創刊号を見つけたんです。
そこで初めて菊池亜希子さんのことを知りました。
「しりとりコーデ」にびっくりして。
菊池
しりとり。うん、そうなんです。
──
コーデしたなかから1つだけアイテムをのこして、
次のコーデにいかすんです。
そうやってぜんぶを着回したらゴール。
その着こなしが素敵で、
それこそオーバーオールを合わせたり、
メンズライクもいけるし、
ちょっとガーリーなものもうまくご自身に合わせて。
とても真似できないと思いながら、
でも、ひたすら読み込んでいました。
伊藤
なかなかそっくりは真似できないよね。
──
できないです。
でも、すごく参考にしてました。
『マッシュ』は、
洋服を着ること自体がワクワクすることで、
こんなに楽しいんだ、と教えてくれた雑誌です。
菊池
へえー! 嬉しい! 
伊藤
いい話。
菊池
ありがとうございます。
高校生のときに『マッシュ』を読んだっていう人たちが、
立派に大人になられて、こうして各所で活躍されてて、
ほんと感慨深いです。
伊藤
本といえば、今は、
アイドルの写真集を作ってるんでしょ?
菊池
そう。作ってるんです。
蒼井優ちゃんとふたりで。
伊藤
そうなんだ。
なんていうアイドルなの?
菊池
「アンジュルム」っていうアイドルグループなんですが、
そもそも出る予定のなかった本なんですよ。
メンバーの笠原桃奈さんが卒業するって知って、
マネージャーさんに
「写真集は出る予定あるんですか」って訊いたら、
「ない」って言うから、私と優ちゃんで
「あり得ないよね、あの子が卒業するのに
写真集が出ないなんて!」と、
企画書を出したんです。
2人で直談判。
伊藤
ファンだったのね。
菊池
そうです。大ファン。
伊藤
そんな2人に言われたら、企画も通る。
菊池
といっても、
「予算をこれ以内で収められるのであれば‥‥
内容はお任せします」という感じでした。
それで「やらせてください!」って言って。
だからぜんぶ、やっているんです。
伊藤
ぜんぶ。
菊池
ぜんぶです。どんなふうに撮るか企画を立て、
アートディレクターを大島依提亜さん、
写真を高橋ヨーコさん、
ヘアメイクを茅根裕己さんにお願いして。
伊藤
洋服のスタイリングは?
菊池
スタイリストさんにお願いする予算はなかったから、
私と優ちゃんの私服をかき集めて
スタイリングを組みました。
伊藤
スタジオで?
菊池
いえ、ロケなんです。
主に鎌倉、葉山、逗子で撮影しました。
撮影をしたら、写真選びをして、
編集して、入稿して、校正して、
そして校了・発売がもうすぐです(*)。
苦手だけど、お金のやりくりも
頭ひねって考えています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(*)菊池亜希子さん、蒼井優さんがダブル編集長をつとめる「アンジュルム」の笠原桃奈さんのフォトブック『Dear sister』は、オデッセー出版より、笠原さんが卒業した11月15日に発売されました。
ちなみに菊池さん、蒼井さんは2019年に『アンジュルムック』(集英社)という本の編集も担当しています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

伊藤
すごい。
そういうあっこちゃんの活動は、
マネージャーさんとしては
どういうふうな位置づけなんですか。
──
完全に治外法権です。会社の中で。
伊藤
そうなんだ!
菊池
ほんとに。
私と優ちゃんがヲタ活で
大暴れしてるようなものです。
伊藤
大暴れ! もしかして‥‥ノーギャラ?
菊池
製作費の中にギャラも含まれているので、
やりたいことをやればやるほど、
ギャラは減っていく方式です(笑)。
でも、彼女の魅力が伝わるいい本が作りたい
という気持ちが第一だったので、
それは全く問題なかったです。
伊藤
本当に好きなものを形にするって、
わかる人にはちゃんとわかりますよ。
伝わってほしい人のところには、
本当のことが伝わると思う。
それが一番ですよ、
本当にやりたいことをやるに尽きる。
あっこちゃんは
いろいろな仕事をなさっていると思うけれど、
その仕事の選び方はどうですか? 
やりたい、やりたくないで決める?
菊池
そうです。
伊藤
じゃあマネージャーさん的には、
「これ断るの?」みたいなこともある? 
──
いえ、客観的な判断をしていると思います。
もちろん自分が好きということはあるでしょうけれど。
伊藤
そもそも「これは違う」という仕事は来なさそう。
菊池
それはそうですね。納得! みたいなところで
声をかけてくださいますね。
──
菊池のことが好きだという方が、
仕事の依頼をしてくださることが多いので、
すごく恵まれているのかもしれません。
相思相愛で仕事をしているイメージがありますね。
伊藤
なるほど。いいですね。
モデルの仕事と女優の仕事って、
自分のなかで住み分けはあるんですか。
私たちから見るとまったく違う種類の仕事のように
思えてしまうんですけれど。
菊池
いや、そんなに深いことを考えているわけではないです。
でも昔よりも、だんだんその住み分けは
なくなってきてるような気はします。
完全に裏方の仕事と、
お芝居の仕事とではラインがあるけれど、
表に出るときは、モデルとしてでも、
役者としてでも、そんなに意識は変わりません。
ディレクションをする人がいて、
その人に呼ばれて出るときに、
何で呼んでもらったのか、
こっちかな、こっちかなみたいに
なんとなく察知するみたいなところはあるんですが、
それが器用にでき過ぎる自分は、
最近、嫌だなと思っていて。
伊藤
それは、どうして?
菊池
予定調和になるのがもともと嫌いだし、
必要なものを手のうちに全て持っていて、
その中から「はい、これね」って出せちゃう、
監督の意図をさっと理解してすぐにできる、というのは、
すごくプロフェッショナルだなと思うけれど。
逆に言うと「それしかない」ってことになるのかも、と。
伊藤
経験が重なると、できるようになっちゃうんでしょうね。
菊池
それじゃちょっと面白くないかも、って。
予測できない方がきっと面白いな、
と自分は思います。
伊藤
そっか。例えば取材を受けるのでも、
その編集部の考えとして、
「ここに落とし込みましょう」という意図が
見えてしまうと、話していて面白くない。
それと同じかもしれない。
菊池
うん、ある、ある!
伊藤
あれ、嫌だよね。
菊池
そう。ゴールはここですよね、ってなっちゃうと、
方向転換したくなっちゃう。
あまのじゃくだから。
伊藤
わたしだと「ていねいな暮らしをしている人」
というまとめで、くくられることが多かった。
数年前まで、そういう依頼が多くて。
「全然そんなことありませんけど」
って言ってました。
菊池
「サッポロ一番、食べますけど?」みたいな。
伊藤
そうそう! すると、ガックリされたりもして‥‥。
いろんな話の引き出しから、
そこが面白い、って広げていくのが面白いのに。
そうじゃないと、結局全部同じになっちゃう。
菊池
フォーマットを作った方が、ラクなのかな。
でも人間味に欠けますよね。
予定調和を嫌うのもたぶん同じ気持ちです。

寝かせておこう。

未分類

伊藤
年齢の曲がり角って、ほんとうにあって、
38、9とかで「おや?」みたいな時が来るの。
これも似合わない、あれも似合わない、みたいな。
わたしはそれがあったから。
菊池
今、ほんとうに、まさに今、
クローゼットを整理していて!
伊藤
「おや?」と思うことが。
菊池
あります、あります。
かわいい感じのワンピースが似合わなくなってきて。
丈の感じとか、流行もあるのかもしれないけれど、
かといってシンプルなパンツにタートルだけ、
みたいなストイックな格好も、
なんか足りないっていう気もしていて。
伊藤
かっこよくなり過ぎるんじゃない? 
体型もスーッとしてて。
モードっぽくなるから、
それが自身で落ち着かないのかな。
菊池
たぶん洋服が好きだからだと思うんです。
ベーシックなのをサラッと着るのが
かっこいいと思う自分と、
もう自分しかこれを好きじゃないだろうなみたいな、
すごくニッチなものを愛していたい自分もいる。
せめぎ合いなんです、今まさに。
でも、今は着れないけれど、
あと15年ぐらい経ったら、
逆に似合って来る、みたいな気がするものは、
寝かせておこう、みたいな。
伊藤
先日、パリに住んでいる「チャコさん」という
私のオシャレの師匠と呼んでいる
すごく素敵な人と会ったんだけれど、
似合わないっていう時期があっても、
寝かしとくっておっしゃってました。
そういうのを「自分ヴィンテージ」って
呼んでいるんですって。
菊池
自分ヴィンテージ。
──
それって、流行が変わったから、
という外的な要因じゃなくて、
自分との関係だけにおいて
「似合わない」と思うんですか。
菊池
うん、そうです。
伊藤
そうなの。
──
つまり人は似合うと言うかもしれないけれど、
自分は違う、って思っちゃうってことですね。
菊池
そう、ものとしても好きだけど、
どうしても今しっくりこない。
でもきっとまた似合う時期が来る。
伊藤
私、以前、バーバリーのコートで、
肩がピタッとしたタイプを買ったのね、
それを去年着たら「おや?」みたいな。
すごい古臭く感じちゃって。
菊池
今、まわりがちょっとオーバーサイズだから。
伊藤
そう。それで去年weeksdaysでも
ちょっとオーバーサイズのトレンチを出したんです。
で、バーバリーはお直しかなあ、と思ったら、
デザイナーの友達が「絶対直さない方がいいよ」って。
「取っとけば? いいものだし。
いつかまた巡ってくるから」。
それで「わかりました」って。
でもそんなことしていると、
どんどん増えちゃうじゃない? 服が。
菊池
そうなんですよね。
あるいは、自分じゃなくても、
娘がティーンになったときに着たら
かわいいかもみたいな服もあるんです。
古着の膝丈の花柄ワンピースとか、
「自分はさすがに、これは」みたいなもの。
伊藤
それが、なかなかどうして!
菊池
‥‥着てくれない?
伊藤
これ着ればいいのにと思うものを、娘は全然着ないのよ。
ただ、私が高校生のときに父親が買ってくれた
バーバリーのカシミヤのマフラーは、唯一、気に入ってる。
菊池
ああー。でも絶対にお母さんのクローゼットを
あさる時期が来る気がする。
伊藤
来るかなぁ。
去年とかまでは
「ちょっと貸して」とか言ってたけど、
最近‥‥。
菊池
私は、10代後半ぐらいのときはよく着てた記憶があるな。
伊藤
最近は「これ、韓国の服なの、かわいいでしょう。
1,800円だったの!」みたいな。
菊池
それはもう、そういう時期だと思う。
伊藤
そうなんだ。
菊池
30ぐらいになって、
お母さんがいつか着てほしいと取っててくれたものを
「ありがとう」って着る時期が、絶対、来ますよ。
伊藤
そうなればいいんだけど。
菊池
来ると思う。
韓国の服はどこで買うんですか。
通販かな。
伊藤
そう、通販。
あっこちゃんは、どうしてた?
菊池
私は岐阜から名古屋の街に出て、
古着屋さんを回っていました。
子供の頃は、お小遣いに限度があるでしょう、
そのなかで服を買うのに、
一往復して、最初は買わず、まず喫茶店に行って、
欲しいものを全部紙に書いて計画するんです。
そして、これとこれとこれだなって、
もう一回行ってそのセットを買う。
そういうやり繰り、すごくしてましたよ。
伊藤
かわいい。
そうだよね。
わたしも古着を探して着ていたかなぁ。
菊池
上京してからは、代官山から原宿まで歩いて
古着を探してました。
伊藤
古着も、もうね、
自分が古くなってるから、
絶対着れない‥‥。
菊池
自分が古く(笑)。それ、どうなんだろう。
伊藤
娘の世代はフレッシュだからバランスが取れるのよ。
そういう意味でも、質のいいものを着て、
バランスを取らないと。
リネンにもアイロンをかけないと。
菊池
取材先で、私の穿いてたリネンのズボンの
シワが気になった先方のかたが、見かねて、
「アイロン、かけてあげるから」って(笑)。
年長の方だったんですが、
「ちゃんと綺麗な状態で着た方がいいよ」。
その感覚は、その時の自分には、なかったんです。
伊藤
あっこちゃんなら、
リネンのシワもかっこいいけど、
そういう日が来るのかな。
菊池
古着がダメになる日が! 
今、古着も好きで着ているんですよ。
伊藤
うん、そのままずっといきそう。
菊池
ただ、古着に限らず、
自分に似合わない、
色や形がしっくりこない、
顔色がさえない、ということは絶対にあって。
伊藤
顔色がさえない!
菊池
服の色で。
伊藤
なんでも着こなすイメージだけれど、
似合わない色もあるのね。
菊池
そうですね、エンジ色とか。
ピンクでも、このピンクはいけるけど、
このピンクは危険! っていうことも。
それは経験上、だいたいわかっているんです。
友達と洋服を見に行って、
「絶対似合うよ」って言われても、
「それは絶対に無理!」ってジャッジができる。
伊藤
職業柄、自分を客観的に見る機会が多いし、
服を着る機会、種類も人より多いしね。
菊池
仕事じゃなくても、買物が好きだから、
ちょっと暇があるとお洋服を見ますし。
そういう時はかならず試着をしますね。
「とりあえず着てみよう」と。
最近の若い子たちは、
通販でサイズ違いを買って、
合わなかった方を返す、
みたいな買い方をしてるらしいけれど。
伊藤
ありがたいことに「weeksdays」のお客さまは、
そういうことはなさらないんですよ。
「weeksdays」を立ち上げるときも、
最初に、かなり考えたんです。
試着ができない、というのがECの前提なので、
そこをどうやって補おうかと。
それで、読みものを充実させて、
商品のことを丁寧に説明することにしました。
わたしがそれを好きな理由を書いたり、
モデルのかた以外にも、いろんな人に着てもらって、
そのようすをレポートしたり、
つくった人に話をきいたり。
コロナでたいへんだった、
買物したくても外出ができなかった時期は、
このやりかたでよかったなって思いました。
菊池
そうですよね。

大人って。

未分類

伊藤
あっこちゃん、撮影に参加してくださって
ありがとうございました。
帽子のいろいろなかぶり方も一緒に考えてくださって。
帽子をかぶる前提で前髪を短くしてるって、ほんとう?
菊池
そうなんです。帽子が好きで、
かぶってちょうどいいぐらいに、
ぱっつん、と切っています。
「ちょっと切り過ぎましたね」って
マネージャーに言われちゃうんですけど、
かぶると前髪の位置がちょっと下がるんですよ。
だからかぶってちょうどいいぐらいの位置にくる前提で
切ってもらっているんです。
伊藤
いつもキャップの印象があるな。
菊池
そうですね、このごろ、キャップが多いですね。
とくに、髪の毛を長くしてから、よくかぶるようになって。
伊藤
うしろでまとめて、
サイズ調整のアジャスターのところの
半月型のすきまから髪を出すのね。
帽子をかぶるために全体のバランスを考えてるし、
髪型も、今日はヘアメイクの
草場妙子さんがいてくれたから、
一緒に考えてくださったりして、
すごくいろんなバリエーションが撮れて面白かった! 
帽子はずっと前から好きだったの?
菊池
もともと頭とか足元に
ボリュームがあるのが好きでした。
背が高いから、なにもないと、
バランスが寂しくなるっていうか。
オリーブ(Olive Oyl)みたいなバランスが好きなんです。
伊藤
ポパイのガールフレンドの!
菊池
あの髪形、いいですよね。
わたしの場合、頭と足元にボリュームを足すと、
トータルでバランスがよく見えるんです。
そういうバランスをいつも研究してて。
だから帽子も、どっちかと言うと、
ボリュームがある帽子が好きですね。
でも、そのときは、髪をタイトにする。
全体でのバランスですね。
伊藤
出かけるときに、全部上から下まで着て、
引いた目で見たりとかしてる?
菊池
はい、引いて見る、けれども、
長年の好きなバランスっていうのは
だいたい固定されていますね。
だから今日みたいに草場さんが
「下ろしてみるのもかわいいかも」と言ってくださったり、
スタイリストのかたが、ふだん履かないような
華奢なフラットシューズを合わせてくださると、
「ああ、これもかわいいな」みたいな。
自分のいいなと思うバランスって
どうしても凝り固まっちゃうから、
時々そうやって第三者の目で言われるのっていいですよね。
‥‥いい職業だなって思う!
伊藤
あっこちゃんの場合、着せる側もすごく嬉しいと思うな。
今日も、ほんとうに、かわいかった。
サロペットは、私服でも穿いているけれど、
それも全体のバランス的なところから選んでいるの?
菊池
そう、サロペット自体に重みがあって、
ボリュームが出るものが好きで、いろいろ持ってます。
weeksdaysのリネンのも。
伊藤
わあ、ありがとう。
サロペットってそんなに世の中にあるんだね。
菊池
あります、あります。
でもブランドの方に聞くと、
そんなにたくさんは売れないみたいです。
多くの人が着やすいものではないから。
だからたぶん、今日着せてもらった生地感
(ベロア)のものは、
大人っぽくてちょうどいいんだと思う。
伊藤
なるほど。
菊池
サロペットって、子供っぽく幼くなっちゃうか、
ファームっぽいというか、本気な印象になっちゃうか。
伊藤
パンツ部分もズドーンとしてなくて、
スッとしてると、印象が変わるし。
菊池
大きく見え過ぎなくていいのかもしれないですね。
このサロペットは、
生地がちょっと大人っぽいニュアンスだから、
古着と合わせてもいいかもしれない。
わりとなんでも合いそうですよね。
伊藤
古着も好き?
菊池
古着の、すごくベーシックな格好も好きです。
でもこのサロペットだったら、
細かな刺繡がほどこしてあるブラウスとか、
鍵編み針でどこかのおばあさんが編んだような
セーターとか、そういうデザインの細かいものを
中に着てもいいんじゃないかな。
オーバーオールやサロペットって、
「ちょっと too much かな?」みたいなデザインを、
丸く収めてくれるんですよ。
古着でちょっと変わった質感で、
うまく着こなせるかな? みたいなものも、
サロペットやオーバーオールを上に着ちゃうと、
私の中ではすごく馴染むというか、
わりと自分のものにできる気がしますね。
伊藤
そうなんだ。
でもあっこちゃん、今39でしょう。
来年は、まさかの・・・・。
菊池
うん。40。
伊藤
同じ戌年なの。
そのくらいの年齢になると、カシミヤとか
上質のもの、をというけれど。
菊池
はい、大人のたしなみとして、
じゃなく、体でわかってきました。
それまでは、雑誌に
「大人は、肌に触れるものに、上質な、いいものを」
と書かれているのを、
「あら、そう、へえー?」
みたいな感じで見ていたんですよ。
ピンと来てなかった。
伊藤
ほんとにそう。
菊池
それが、身をもってわかったんですよ。
一昨年ぐらいから、
肌着はシルクがカサカサしなくていいな、
やっぱりいいものなんだ、って。
いっぽうで、
「ああ、お金がかかるなぁ、大人って」
とも思ったんですけれど。
伊藤
そうそう、そうなの。
菊池
もう背に腹は代えられない。
素材、大事です。
伊藤
そう、素材は大事なんです。
今回のサロペットは、「weeksdays」では珍しくて、
わたしが着たいもの、ほしいもの、というよりも、
「これを着ている人、かわいいな」と思って、
誰かに紹介したいみたいな気持ちなんです。
「t.yamai paris」というブランドなんですが、
その主宰のひとりである山井自子さん、
ずっとパリにいた方で、
わたしより年上なんですけれど、
彼女は、似合うんです、サロペット。
私が躊躇してしまう柄物なども着こなされていて、
そんな山井さんを見ていると
「大人のサロペット、いいな!」と、元気が出ます。
わたしはずっと着ていなかったんだけれど。
菊池
1枚で完結するし、要素が少ないから、
大人っぽく持っていきやすいんですよ。
靴とかで。
伊藤
そうなんですよ。
胸当てがあるとね、途端に
「わたし、着られるかな?」と。
菊池
胸当て(笑)。
着ているイメージが湧くといいんですよね。
つまり、ゴール、完成形が見えれば、
まさこさんも躊躇なく着られると思うんです。
靴で大人っぽさを出すのもいいですよ、
たとえばまさこさんがいつも履いてるような
エナメルのパンプス、甲が見えるような。
伊藤
そっか!
菊池
私みたいなスニーカーじゃなくてね。
私も、最近、ほんとにそういう、
浅いパンプスって使えるなと思っているんです。
フラットシューズで足の甲が見えるだけで
「抜け」ができるし、「作業着」ぽくならない。
伊藤
そうなの。作業着になるのが恐ろしい。
菊池
自分の中ではすっごいかわいいと思って買った
オールインワンを久しぶりに着て友達に会ったら、
「あ、おばちゃーん、お仕事お疲れ~」
みたいに言うんです。
冗談だと思うんだけれど。
伊藤
ほんとにそう見えてたら言えないはずだから、
絶対に冗談ですよ!
菊池
ギャグだといいんですけど(笑)。
でもそう言われて、自分としてはかわいいと思っていても、
そう言わせる何かがあるのだと気づいたら、
着るのをためらっちゃうだろうなと。
たしかにちょっと本気のワークウェアすぎたかも?
伊藤
ワークウェアぽいとね。そうか、そうか。
菊池
私はオールインワンやサロペットって、
常に研究をしているんですよ。
本格的なワークの生地は好きだから、
それを女子が着て、
いい感じに見えるラインがないかなって。
ワークぽくなり過ぎず、
かといって、レディ過ぎない、
いい塩梅ってどこなんだろうと。
そういうのを見つけると買って研究です。
伊藤
研究!
菊池
オールインワンやサロペットって、
着る人は着る、着ない人は絶対着ないから、
ほんとに好きな人に向けての研究ですね。
自分が洋服好きだから、まずは自分が実験台になって。
伊藤
その研究の成果は?
菊池
まだゴールは出てなくて。
伊藤
髪型だけじゃなくてメイクも研究したり? 
普段あんまりしてないと思うけど。
菊池
メイクはほんとに苦手なんです。
マスカラだけちょっと色を、みたいな。
伊藤
今日も、ファンデーション、
ほとんど塗ってないよね。
菊池
それも「ファンデーション塗ってません」という人に
憧れているわけでは全然なくって、
塗れるものなら、サラッとうまく塗りたいんです。
塗りたいんだけど。
伊藤
塗らなくていいんだから、いいんじゃない?
菊池
塗らないでいいなんてことはないと思うんです!
でも、なりたいイメージや好きな質感を
草場さんに相談していると、
「結局要らないね」という話になっちゃって。
伊藤
なるほどねぇ。
でも年長の友人から言います。
「これから変わるかもしれないよ」。
菊池
大人のたしなみ!

菊池亜希子さんに着てもらう冬の服

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ちょっとだけ冒険するアイテムを。

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秋冬の買いものもそろそろひと段落。
みなさん、おしゃれを楽しんでいる頃ではないでしょうか?

私はというと、
今年えらんだものは、
ベーシックなものがほとんど。

でもその中にほんの少し、
冒険アイテムを入れて、
着こなしの幅を広げようと思っています。

‥‥とはいっても、
もういい大人なので冒険は控えめに。

今まで挑戦してこなかったアイテムも、
黒だったらいけるかな‥‥とえらんだのは、
ベロアのサロペットや
ちょっともこもこっとした冬の帽子。
かわいくなりすぎぬよう、
モノトーンでまとめようか、
いやいやそれとも明るめの色を足してみようか?
なーんて思いを巡らせています。

今回、モデルをお願いしたのは、
菊池亜希子さん。
着た瞬間から、まるで前から持っていたの? 
と思ってしまうくらいお似合いでした。

コンテンツは、
そんなあっこちゃんとのおしゃれトーク。
どうぞお楽しみに。

偉大なる先輩たちの教え。

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伊藤
ときには、ちょっと着心地は悪いけど、
これを着ていると気分が上がる、
みたいなスタイルをすることって、
チャコさんはありますか。
鈴木
着心地悪くても気分が上がる、といえば‥‥、
冬の寒い日の、重いコートとかのこと?
伊藤
そうそう!
鈴木
たしかに昔は重いコートを着ましたね。
でも、だんだん着なくなってきました。
パリではすごい歩くし、
パーソナルコンピュータを持って行く日もあって、
バッグの中身もいっぱいなこともある。
そんなふうに荷物が重い上に、
冬、コートまで重いと、絶望的な気分になっちゃう。
伊藤
わたしも、「重い」ということが、
自分にとってこんなに大変なことなのかと、
ごく最近わかってきました。
鈴木
だからコートは身軽にしていますね。
でも、寒いからって、うんと軽いダウンだけ、
っていうのも嫌なんです(笑)。
だったら、何枚か重ねて防寒する。
伊藤
ダウンは、たしかに、軽いし、温かくって、
冬のアウターの条件を満たしているけれど、
おしゃれを考えると「違う」こともありますね。
鈴木
そこ(機能)だけに頼っていると、
自分がご機嫌になれなくなっちゃうから。
伊藤
それでもわたしは「今日は人とは会わないし」
みたいな日には、ちょっと手を抜いちゃう。
でも、チャコさんって、そんな日であっても、
いろいろ組み合わせて、楽しそうにしてるように思います。
鈴木
あら、そんなに楽しそうに見える(笑)?
伊藤
はい。それがご機嫌でいる秘訣なのかな。
鈴木
うん、そうかもしれない。
だって、些細なことじゃないですか、
どうおしゃれをするかって。
そういう日は、
肌触りがよく、ベーシックなものを
好んで着ていますね。
でもいつも同じにならないように、
シャツ一枚だとしても、
今日はちょっとボタンを開けてデコルテを見せ、
ネックレスをしてみようとか、
髪にリボンを巻いてみるとか、
袖をめくってみるとか。
そんなちょっとしたことで
イメージが変わるでしょ? 
ささやかなるおしゃれ、ですよ(笑)。
伊藤
印象的だったのが、
オリビエさん(チャコさんの夫)から借りた
大きな赤いカーディガンを羽織っている姿です。
すっごく、かわいくて!
鈴木
雑誌の『LEE DAYS』に掲載されたものですね。
伊藤
オリビエさんは、
チャコさんのおしゃれのことを
なんておっしゃるんですか。
「かわいい」とか、「すごい似合ってる」とか、
褒めてくれますか。
鈴木
うん。褒める。
伊藤
やっぱり、パートナーの言葉、大事ですよね。
鈴木
そうですね。
上手ですよね、ただ褒めるのではなくて、
本当に思ったときだけ「素敵だね」と言う。
必要以上にベタベタ褒めてばっかりだと、
言葉が軽くて、真摯に聞こえてこないでしょう。
自分も相手も、夫婦だけじゃなく、
人間関係、ぜんぶそうですよね。
伊藤
パリは、歩いていても、
知らない人が褒めてくれたりしますよね。
鈴木
すれ違いざまに、全然知らない人が、
「素敵ね」って言ってくれたりしますよね、
「それ、どこで買ったの?」とか。
伊藤
そうそう(笑)!
鈴木
そういうのがいいなあと思って。
パリに限らないですよ。
ロンドンで地下鉄に乗ってたときに、
私の隣にいた女性が、わざわざ立って、
正面に座ってた女の子に向かって、
「そのペディキュア、すっごくきれいな色なんだけど、
どこの何番?」みたいに聞いていました。
みんな、素敵と思うものには容赦なく切り込む。
伊藤
言われてもうれしいし。
鈴木
そう、言われたら、すごく、うれしいですよね。
それで相手の情報になり、
自分のニコニコ度も上がるんだから、
相乗効果になってる。
伊藤
それはいいな。
褒めるのっていいですよ。
娘が本屋さんでバイトしてるんですけど、
お客さんに褒めてもらったって。
おばあちゃんが、娘の指をみて、
「あなた、手がきれいね。ずっと見ちゃうわ」って(笑)。
鈴木
ああ、いい!
伊藤
やっぱり褒められるはうれしいもの。
きょうも撮影中、にぎやかでしたね。
みんなで褒め合って「かわいい!」って。
チャコさんのおしゃれって、
20年前から、変わってない気がするんですよね。
鈴木
本当ですか。
伊藤
つまり、好きなものが変わっていない気が。
鈴木
そうですね、それはそう。
伊藤
自分ヴィンテージとおっしゃる
バレンシアガのスカートにしても、
膝丈くらいだけれど
若い頃とちがうからもう着ない、
とかいうんじゃなくて‥‥。
鈴木
着る(笑)。
伊藤
年に関係なく似合ってるから。
ああ、チャコさんのお宅にお邪魔して、
クローゼットに何が残ったか、
自分ヴィンテージ、ぜんぶ知りたい!
鈴木
パリに、皆さんで来てください(笑)。
来年になったら、少し動けるのかな。
どうなんでしょうね。
伊藤
行きたいです。
ずっと大好きなパリを、
いまの年齢の自分が
久しぶりに訪ねたらどう感じるか。
若い頃ほど、あれもこれもって
買い物もしなさそうだし。
そのときは、また、チャコさんに
コーディネートをおねがいします。
2006年に出版した
『ボンジュール パリのまち』
取材のときのように。
鈴木
ぜひ!
こんどは、大人になった娘さんと一緒にね。
伊藤
ありがとうございます! 
みんなからもチャコさんに質問はある? 
せっかくの機会だから。
──
チャコさんはずっと
ハイブランドの服を着こなされてきた、
というイメージがあるんですが、
いま、ハイブランドとは、
どんなふうなつきあいかたをされていますか。
鈴木
もう最近は全然、ハイブランドだから、
という興味は、もたなくなりましたね。
どこってわかるようなものを持ちたいとは思わなくなった。
いまは、むしろ、
ブランドが見えない方が素敵だなと思う。
たとえば、フランスでずっと昔から作っている
工場のニットを応援したいとか、
そういう気持ちのほうが強くなりました。
ハイブランドの製品は、そのブランド力ゆえに、
同じ質のものが高くなりますよね。
だったら、あえてブランドじゃないものを選びたい。
これは、フランスに住んで思うようになったことで、
わたしのまわりのフランス人のなかには、
「どこのブランドか、わからないようにしたい」
とまで言う人もいます。
冷静に考えると、ハイブランドの製品のなかには、
お値段とクオリティのバランスについて、
ちょっとハテナと思うものがありますね。
でもね、昔買ったものハイブランドの服で、
ベーシックなものは着ています。
やっぱり飽きずに着ていられるから。
だから、ハイブランドは否定、ということじゃなく、
ファストファッションで10枚買って500ユーロなら、
1着500ユーロでも、
いいものを買った方がいいと思いますよ。
その感覚も、やっぱり、パリに住んで、
パリの方に教えてもらったことですね。
伊藤
そうですよね。
鈴木
「本当にいいものを持ちなさい、
私は祖母からそう言われてきたの」と、
マリー=フランス・コーエン
(Marie-France Cohen)さんも言っています。
彼女はこども服「ボンポワン(Bonpoint)」の設立者で、
パリにおしゃれと暮らしのコンセプトショップ
「メルシー(Merci)」作った方。
いま、70代半ばだと思うんですが、
そんなふうに、本当に普通で素敵な言葉を言う人が
フランスにはいっぱいいるんですよね。
生きていく上で聞けるそういう言葉って、
もう宝石のようなものですよ。
すごく、楽になっていくんです。
「そうか、誰かと同じじゃなくていいんだ」とか、
「誰かが持ってて、私は持ってない、
でも私はこっちが好きなんだもん」って、
ちゃんと言える人になる、ということも、
そんな人たちから教わりました。
伊藤
うん、うん。
鈴木
「あなたがあなたでいること、それが素敵なんですよ」、
それは、30年住んで、
フランスの人たちが教えてくれたことです。
一同
へえーっ(拍手)!
鈴木
いやだ、なんで拍手。
伊藤
ああ、染みるーっ。
でも、本当にそうですよ!
「これを着たらおしゃれは正解」
なんて、ないですからね。
鈴木
うん。そう思います。
こういうことが、ちょっとでも、
みんなへのエールになればいいなと思います。
そういえば、この間、3月に60歳になったときに、
まさこさんが送ってくださった
「weeksdays」の朱赤のワンピースを着ましたよ。
それが評判よくって!
伊藤
かわいかった! 
朱赤も似合いますよね。
鈴木
「どこのですか」って、みんなに聞かれて、
「これはね」って説明するのがうれしいじゃない? 
すぐに「あ、どこそこの」ってわかっちゃうより。
伊藤
そんな存在になれるように
「weeksdays」、頑張ります!
ほんとうに、今日はありがとうございました。
鈴木
いえいえ、こちらこそありがとうございました。

自分ヴィンテージ。

未分類

鈴木
フランスの人は、ちょっと見栄っ張りだから、
裏では、ラフに見せたがったりもしますね。
実はすごい努力や計算をしてるのに。
伊藤
チャコさんに書いていただいた
「おとなの水着事情。」
そんなエピソードがありましたね! 
もう全然いつでも食べてるのよ、みたいな感じで、
実は、すごく糖質制限をしているとか。
鈴木
そう、ウィークデイはアルコールを抜くとか。
伊藤
それを聞いて、すごくホッとしたんです。
フランスの女性たち、
あんなにおいしそうなものを食べていて、
なんで太らないの? って思っていたから。
何もしないのにキレイが保てるなんて‥‥って、
ちょっとやきもち(笑)。
でも努力をしているんですね。
鈴木
そういう魔法はないってことですよ。
伊藤
マダムになればなるほど
代謝も悪くなってくるはずだもの。
鈴木
そうですよね。
でも、私の大好きな、
ソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)っていう
ジャーナリストの方がいて、
その人もフォロワーがすごいんだけれど。
伊藤
へえ。
鈴木
彼女は50代後半かな、
つい最近の『ELLE』の表紙
ヌードで飾ったんです。
胸をロゴで隠したりして、
見えないようにはしているけれど。
伊藤
へえーっ。
鈴木
彼女は言うんです、
「年齢を重ねていって、古びていく肌の方が
あたたかくて優しくなるから素敵だ」って。
本当にそうだなと思って。
伊藤
うんうん。
鈴木
それでも、年を取ることは怖くないですよと。
フランスって、年齢を重ねるのに楽だな。
本当に生きていくのが楽(笑)。
伊藤
それにひきかえ、わたしたちのこの抗い! 
もちろん自分を大切にしてあげるのはいいんだけど、
鈴木
うんうん、うんうん。
伊藤
以前、ジュエリーを対面販売したことがあるんですが、
70近いおばさまがいらして、
大粒のルビーを「あ、いいわね」と指につけられたんです。
とうぜん、年を重ねた女性の手で、
しわもあるし、しみもある。
けれどもその手に、
大きめのルビーが、ピッタリ合って! 
その後に、若い女の子が、キャッキャッと、
「かわいい」って言ってくれたんだけれど、
もちろん似合うけれど、
あなたたちは何も付けなくても大丈夫よ、と。
鈴木
たしかに、たしかに。
大きなルビーは、しわがあって、しみも、
血管も出ているような手にこそ、合いますよね。
伊藤
うん、合う。
しみ取りをすることよりもね、
自分に似合う服を着ているとか、
そういうことで人は素敵に見えているんですよ。
おしゃれな人っていうのは、結局のところ、
どのブランドの何を着ている、じゃない。
サイズ感、自分の肌との相性、TPO、
それがわかっている人なんです。
スウェット一枚でも格好いい人はいるけれど、
それを自分がマネしてもダメ。
思い出しますよ、いまから17年前、
初めてチャコさんに会ったとき、
穿いていらしたあのスカート。
本当にかわいくて!
鈴木
(笑)バレンシアガ(BALENCIAGA)のね。
伊藤
そう! すっごいかわいいスカートで、
「え、なぁに、この人!」と思ったんです。
パリでロケの仕事だったんですけれど、
借りているバスの運転手さんへの接し方ひとつとっても、
本当にチャーミングで。
それで、この前、インスタで、
あのスカートを穿いていて!
鈴木
そうそう(笑)。
ずっと大切にしてる「自分ヴィンテージ」です。
持っているうちにヴィンテージになっちゃった。
こういう、自分ヴィンテージなものって、
入れ替えはそんなにないんです。
伊藤
でも、新しいものも買うでしょう? 
お買い物、お好きですよね。
鈴木
好きですよ。この2年間、
お店が開いてなかったから、
いま、うれしくて。
私、ネットでポチッとお買い物するのが
あんまり得意ではなくって。
信頼していて、サイズ感がわかっていれば、
まだ、いいんですけれど、
やっぱり服は触れて、
着てみたいという気持ちも強くって。
だから2年間、服を全然買っていなかった。
そうこうしてるうちに、引っ越しもあるからと
断捨離していたら、
「あ、こんなのもあった、こんなのもあった」って。
伊藤
それが「自分ヴィンテージ」の発見に? 
それにしても、チャコさん、
どうやって整理してるんですか、
その膨大な服や靴やバッグを。
鈴木
いやいや、もうね、整理できないから、あげたの。
お友達、若いお嬢さん、
たとえば私の同世代のお友達の娘さんに、
「好きなのあったら持ってって」って。
そう声をかけたら、22、3歳の
かわいいおしゃれな子たちが来てくれて、
「かわいい」って持って行ってくれました。
伊藤
わぁ、みなさん、ラッキーですね!
鈴木
若くてかわいいお嬢さんが着たら、
服も喜ぶし、靴もうれしいし。
それでも残ってしまったものは、
「エマウス」(Emmaüs alternatives)っていう
慈善団体があるんですけど、そこに寄付しています。
エマウスはピエール神父(Abbé Pierre)っていう方が
始めた慈善事業で、
社会的に困難な状況にある人を雇い、
寄付された衣料や日用品を販売して、
その売上を全部、貧しい方の住まいや食べること、
暮らすことのために使われる、
っていうものなんです。
エマウスの支部はフランスにいっぱいあって、
わたしも寄付するものをせっせと蟻のように運びました。
「エマウス」の人から、
「あら、今日は何を持ってきてくれたの?」
みたいな感じで、この夏は日参して(笑)。
そんなふうに、5月、6月、7月は
ずっと家の片付けをしていました。
伊藤
「まだ着る・もう着ない」は、
どういう判断でするんですか。
「自分ヴィンテージ」になるものと、
ならないものがあるわけですよね。
鈴木
昔は、デザインされたものを
買っていたんですけれど、
そういうのがどんどんそぎ落とされていますね。
シャツにデニム、みたいな、
ベーシックなものが残ってる。
伊藤
でも、チャコさんが着ると、
普通にならないんですよ。なんでだろう‥‥。
足首の見せ方とかかなぁ。
あと、ちょっとしたこと、
たとえばリボンの使い方とか。
チャコさんは、これから出かけようという時、
いったん全部を着て、バランスを見ますか、
姿見とかで。
鈴木
そうですね。それは見ます。
玄関に置いてあるので、
靴を履いてみて、全身を。
伊藤
「やっぱり違う」みたいなときもありますか?
鈴木
あるある。そういう時、靴って大事ですよね。
伊藤
そうですよ、靴、大事ですよ。
パリって、石畳だけど、
だからといって歩きやすいスニーカーばかりじゃなく、
みんな、結構ちゃんとしている、
というイメージがあります。
鈴木
そうですね。
なんか自分が機嫌よくいなきゃだめじゃないですか。
おしゃれは誰のためでもなく、自分のためで、
誰かにどう思われるっていうより、
本当に、自分の気持ちがご機嫌でいられるように、
それが、私、一番大事です。

人生をカバンに詰め込んで。

未分類

伊藤
今回、なぜチャコさんに
モデルをお願いをしたかというと、
いつもInstagramを拝見していて、
チャコさんのファッションスナップが
すごくかわいいと思っているからなんです。
しかも、バッグを持っていることで、
おしゃれが完成している気がして。

▲いつもバッグと一緒のチャコさんのおしゃれ。

鈴木
本当ですか。うれしいな。
伊藤
Instagramの写真は、
どなたが撮影を? 
鈴木
取材や撮影でごいっしょさせていただいた
プロのかたがいらっしゃると、
終わった後に撮っていただいたり。
そういうときはクレジットを入れているんですよ。
伊藤
そうなんですね。
着るものって、いつも、何から決めていくんですか、
たとえばわたしは靴から決めるんですけれど。
鈴木
うーん? 本当に何も‥‥。
伊藤
バッグも、靴も、全部でチャコさん、って感じがする。
どれひとつとして欠かせないって感じがするんです。

鈴木
そのときの気分気分なんですよ。
あるいはその日の天気、その日の行動。
ふたつ出かける先がある日に、
一回帰って来られるかどうかでも
着てゆく服が変わりますよね。
伊藤
そっか。仕事に出て、
そのままプライベートの食事に行く日の装い。
なるほど。
鈴木
パリは小さいから、
出先から住まいに一度帰ることも、
できなくないんですよ。
時間にすこしでも余裕があるときは、
帰って着替えます。
そうすると、自分の気持ち、気分も変わるから。
伊藤
よくわかります!
鈴木
でも出先が1箇所だったら、
朝起きたときのお天気が大事かな。
そこから、今日はどんな色だろう、って。
伊藤
色?
鈴木
そう、私、色から選ぶかもしれない。
「なんだかブルーな感じ」とか。
伊藤
そうなんだ!
鈴木
パリって、曇天が多いんですよ。
だから朝から曇っている日には
「少し明るい色にしよう」と。
たとえば、今日は薄いピンクのコートを
着てみよう、というふうに考えたり。
伊藤
うんうん。
鈴木
あるいは
「今日はヌードカラー(ベージュ系)にしよう」
とか。
伊藤
お天気や気温に適応して、色を考える。
それで、色を決めたら、
最初に選ぶのは‥‥靴、ですか?
鈴木
うん。そうですね。
伊藤
そして、バッグ?

鈴木
そう、バッグ‥‥バッグといえば、
フランス人のおもしろいところは、
いくらだらしなそうに見えても、
お家はみんなきれいなんです。
なのに、バッグの中はぐちゃぐちゃなんですよ。
伊藤
えっ? バッグだけ?
鈴木
そう、バッグの中はグッチャグチャで、
伊藤
ええーっ?
鈴木
ジェーン・バーキンがそうなんですって。
大きめのバーキン(エルメス)に、
口が締まらないくらいにモノを入れているので、
人生を詰めて歩いてる、って言われます。
伊藤
毎日バッグを替えるわけじゃないのかしら。
チャコさんは、毎日持つバッグを
替えている印象があるけれど。
鈴木
私は、そうですね、
そのときの用途に合わせて替えています、
伊藤
そっか、バーキンは、人生を詰めて‥‥。
鈴木
そう言うんですよ、ふつうのフランス人も、
インタビューをすると、
「そうなのよ、私たちは人生を詰めて歩いている」って。
おもしろいでしょう? 
伊藤
いったい、人生の、何を詰めているんだろう?
鈴木
銀行の小切手とか(笑)?
伊藤
ええっ(笑)?
鈴木
今はもうみんなデジタルになっちゃったけど。
でも、お財布や家の鍵はもちろんだし、
水道の請求書とか、パスポートや身分証明書、
いろんなものが入っているの。
伊藤
パスポート?! 
IDを求められることが多いからかなぁ? 
日本にいたら、家の大事なところに
仕舞っておきますよね。
鈴木
なぜそんなにいろんなものを持って行くの? 
と訊いたら、
「パンッ! と、すぐにどこかに行けるように」
って言った人もいた。
私はそんなふうには考えていないですよ、
それはまたどうかと思うほうで。
伊藤
そっか、パスポートも、
ヨーロッパ内の地続きのところなら、
すぐに行けるでしょ、って意味なのかも。
鈴木
そうですね。パッと電車に乗って、
パリからブリュッセルにお茶を買いに行っちゃうとか。
大きなバッグにぜんぶ入っていれば、
思い立ったらすぐ行けるものね。
でもね、みんな、バッグの中がそんなだから、
探し物も多いんです。
夕方、スーパーのレジに並んでいて、
前の人、ずいぶん遅いなと思うと、
一所懸命お財布を探してたり。
伊藤
そうなんだ。
鈴木
だいたいがグチャグチャなんです。
日本の女性は、このポケットにこれを、
みたいな感じでしょう? 
そういうの、ないですね。
伊藤
じゃあ、バッグ・イン・バッグなんか、
使わないのかな。
鈴木
そうですね。以前はそういう習慣はなかったかも。
でも、最近増えてきた‥‥かな? 
とにかく、なんでもかんでも詰め込んでます。
伊藤
夜、食事に行くときはどうするんだろう。
鈴木
食事に行くときはね、
大きなバッグは野暮だから、
小っちゃなバッグで。
それは絶対。
伊藤
そうですよね。
以前、パリに行ったとき、
レストランで隣の女性が、
こぉんなに小っちゃいビーズのバッグを、
ポンってテーブルの上に置いて、
そこからタバコを出していたのが格好よかった。
小っちゃなバッグの時は、
本当に、必要最低限のものだけを入れているんですよね。
それを見習ったわけじゃないんですが、
私は、本当に、バッグ、小っちゃいんですよ。
鈴木
うんうんうん。知ってる(笑)。昔からそう。
伊藤
私って、人生が何もないのかしら!
鈴木
(笑)フランスの人たちは、
なんていうのかな、いつも「押せ押せ」なの。
ちょっと時間があったら銀行に行って、
この支払いをしなくっちゃ、とか、
郵便局でこれを出さなくちゃ、とか。
だからなんでもかんでも「ひとまず」バッグに
詰め込んじゃうんだと思う。
伊藤
へえーっ。
鈴木
人生がハチャメチャっていうか!
伊藤
そんななのに、なぜ、家はきれいにできるんだろう。
鈴木
そこが不思議なんです。
わからない。ミステリアス。
本当にきれいなんですよ。
クローゼットの中とか、すごくきれい。
「え、家政婦さんを雇っているの?」
と訊くレベルできれいなんだけど、
「ううん、私がやってる」って。
伊藤
アイロンをかけるのも好きですよね。
なのにどうしてカバンの中だけ。
鈴木
ほんと。あと、車ね。
ちらかってるのはバッグと車です(笑)。
ダッシュボードの中とか、ひどいの。
蓋とか締まってないし。
あれだけスリや泥棒のいる国なのに‥‥。
請求書は持ってても、
あんまり現金は持ち歩かないからかなあ。
伊藤
なんか、でも、それを含めてかわいいなあ。
鈴木
そうですね。
伊藤
なるほど、なるほど。
パリの女性たちは、
バッグにもオンとオフがあるってことですね。
鈴木
そうですね。靴よりもバッグの方でTPOをつけるかも。
日本だと、ちょっと素敵なドレスコードがあると、
女性はヒールのある靴を履くでしょう。
パリの人は、靴はわりとラフで、
ぺたんこの靴で行ったりもするけれど、
バッグには凝りますよ。
ちゃんとしたお出かけにエコバッグなんて絶対ダメ、
せっかく素敵な所に行くのに! って。
伊藤
ああ!
鈴木
それじゃ「取り急ぎ駆け付けました」感が
出ちゃうからかもしれないですね。
お呼ばれなのか、
友達とのディナーなのかわからないけど、
準備が間に合わなくて駆け付けてきたっていう感じに。
伊藤
わたしも、夜、あらためて出かけるときは、
仕事先からいちど家に戻って、
バッグと服は替えることにしています。
今住んでいる場所は交通の便が良いし、
もちろん自分のためでもあるけれど、
「これから会う人のために時間をつくる」みたいな。
鈴木
そうですよね。そういうのがいいのかも。

ムートンバッグ、あのひとのコーディネート。 鈴木ひろこさん編

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インスタグラムの、
チャコさんの街角スナップを見るたびに思うんです。

「自分に似合うものを知っている人が、
芯のおしゃれさんなんだ」

そう、チャコさんのファッションを
そのまま私が真似してもだめ。
もっともっと服と友だちになって、
「自分のもの」にしないとね‥‥。

「パリの女の人たちのおしゃれの要って、
バッグのような気がします」

なるほど、チャコさんのおしゃれも、
いつもバッグが一緒です。

今回、weeksdaysで紹介するムートンバッグ、
チャコさんならどんな風に持ちますか? と
尋ねると、えらんでくれたのは白のショルダー。

「冬の白って新鮮だなと思って」

この日は、6年ほど前から着ているという、
ネイビーのケープとコーディネート。
襟元や袖口から除く、白いフリルがバッグにぴったり。

そうそう、こういうちょっとしたバランスが、
いつも絶妙なんです!

ボトムスは、ケープと同じネイビーのハーフパンツを。

足元は、もう何年も履いているという、
「自分(で作った)ヴィンテージ」の
グッチのヒールの靴。
お会いしたのは、
雨のそぼ降る寒い午後でしたが、
チャコさんはなんと素足。
この心意気が、
いかにも「パリの女性」といった感じ。

髪は、ささっとリボンでまとめて。

フリルにリボン。
‥‥なのに、ちゃーんと大人の雰囲気を纏っている。
憧れるなぁ。

ムートンショルダー、もうひとつは、
コートとコーディネートしてくれました。

デニムは、リーバイスのボーイズ。
チャコさんといえば、デニム! 
さすがよくお似合いです。

ダンガリーのシャツはラルフローレン、
まっ赤なニットは、これまた自分ヴィンテージの、
セリーヌのもの。

自分にとっての定番を持つのも、
おしゃれ上手へつながる道なのかもしれません。

明日からは、チャコさんとの対談が始まります。
バッグのこと、
おしゃれのこと、
パリの女性がすてきな理由などなど、
たくさんうかがいましたよ。
どうぞお楽しみに。

ムートンバッグ

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再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
11月18日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

めがねチェーン

▶︎商品詳細ページへ

つけたり、外したりしている間に
あれ? どこに置いたんだっけ?
なんてことになってしまう老眼鏡。
ああ、感じのよい眼鏡チェーンがあったらなぁと
今まで何度、思ったことか! 
そこでBonBonStoreの井部さんに、
「メガネのチェーンを作ってもらえませんか?」と
無理を承知でお願い。
以前、お会いした時に、
傘だけでなく、
小物のデザインもされているというのを
小耳に挟んだのでした。
できあがったチェーンはシックで上品。
チェーン部分のゴールドが肌に馴染むので、
いかにも「つけてる」という感じがありません。
さすが井部さん。
また、
weeksdaysオリジナルの
JINSの老眼鏡との相性はもちろん、
サングラスにつけてもいい感じなんですよ。
(伊藤まさこさん)

いつもの冬が。

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最近、
少しずつ出かける機会が増えてきました。

画面越しに会っていた、
あの人やこの人と、
久しぶりに会って話すことができて、うれしい。
やっぱり、こうでないとねと思う毎日です。
「ふつう」ってありがたい。

お出かけといえば、
欠かせないのがバッグです。
そういえばあんまり出番がなかったな‥‥
クローゼットに並ぶバッグを見て、
あらためて、そんなことを思いました。

「いつもの冬が戻ってきますように」
という願いも少々込めて、
この冬、新しく買い足したのはムートンのバッグ。
仕事にも、
ちょっとそこまで出かける時も。
もこもこしたバッグが一緒だとちょっとうれしい。

大きさはふたつ。
色は2色。
冬のおしゃれにいかがですか?

コンテンツは、
パリに住む鈴木ひろこさんと対談を。
バッグについて。
パリの女性たちのおしゃれの心意気。
それからそれから‥‥。

おしゃれの師匠と仰ぐ鈴木さんから、
たくさんのお話しをうかがいましたよ。

カシミヤストール、 たとえばこんなコーディネート。[5]グリーンチェック 伊藤まさこ

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同じチェックでも、赤とはひと味もふた味も違う、
シックな佇まい。
無地の服を着なれている方に、
スーッと馴染んでくれそうな一枚です。

タートルニットとお揃いのスカートの上に、
ケープのようにふわり。

タートルのネック部分を少し見せて。

巻き方はとても簡単。
フワーッと風に乗せるように、肩にかけます。
フリンジがアクセントの後ろ姿がかわいい。

首に沿わせるように、
ぐるぐる二重巻き。
一重か二重かで、
暖かさも、またフリンジなどの出方も変わるので、
気分に合わせて変えてみて。

横の姿はこんな風。
二重に巻いても、
首周りがもたもたしないのは、
しなやかな質感のおかげです。

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