未分類カテゴリー記事の一覧です
アコーディオンアルバム、 わたしの使い方。[2] ほぼ日乗組員・諏訪/高澤 編
▲見開きごとに、葉っぱをあつめた場所と年号を書いてみました。
今回はいずれも山梨県北杜市の森のなかであつめた葉っぱです。
次回からは、木の名前も調べて葉っぱのかたちとともに
覚えていきたいと思います。
「普段収集したきりになっている細々としたものを
ときどき見返したり飾れるように
このアルバムに貼りたいな」
と言うのは、「weeksdays」の担当でもある、
「ほぼ日」デザイナーのです。
「たとえば美術館の展示を観たあとに買う
ポストカードです。
ピカソや猪熊弦一郎、ブルーノ・ムナーリなど
このアルバムに貼ったら
ポストカードが小さな絵になって
棚の上に飾れていいなと思いました。
あとは、好きな風合いの紙の端切れを貼って
紙見本帳みたいにするのもいいなと思いました。
仕事で印刷物をつくる際に、
旅先でもらってとっておいたカードや紙袋などを渡して
こんな紙を使いたいです! と印刷会社の人に
聞いてみることもよくあるのですが、
自分の好きな紙がアルバムにまとまっていたら
うれしいし便利だな。
外国の切手や、なぜか捨てられない
プレゼントについているリボン、
旅先のレストランでつい持って帰ってきてしまう
コースターや紙ナプキン‥‥など、
このアルバムに貼りたいものを考えたら
きりがありません!(笑)」
そんなが、
じっさいにつくってみたのは、こんなアルバム。
「葉っぱのかたちが好きで
保存しておきたい欲があるのですが、
新聞紙と重い本に挟んで保存したっきり
どうしたらいいものか
ずっとそのままになっていました。
今回はその葉っぱの中から
いくつかお気に入りを
透明のフィルムを使って
このアルバムに貼ってみました。
通常のフィルムに挟み込むタイプのアルバムだと
ページ全体がテカテカしてしまいますが
透明フィルムを貼っても紙の余白があって
文字を書き込めたりするのがすごくいいなと思いました」
完成品は、じゃばら状に開いた状態で、
絵のように飾りたい、とのこと。
このアルバムは畳むとすごくコンパクトに収まるので
何冊か同じテーマで増やして
図鑑のように本棚に並べたいそう。
なるほど、それはおもしろい!
そして、もうひとり、
「ほぼ日」で「小舟のインターン」中の高澤季裕(きひろ)さんにも
つくってもらいましたよ。
大学ではデザイン学科の4年生、
「もの」好きの女子です。
じつはスクラップもよくしているという彼女、
このアコーディオンアルバムをどう使うんだろう?
▲なんだかわかりますか? これ、映画の鑑賞記録なんです!
「たくさん映画を観るので
鑑賞記録をつけているんです。
でも最近はサブスクで観ることも増えたので、
観たときの思い出の品
(半券やパンフやポストカードなど)がない。
そこでこのアルバムを
鑑賞記録として活用できないかなあと思いました」
それで、描いたんだ!
「はい。直近1ヶ月で観たものから選抜し、
1ページ1作品で
記録というよりはラフに、
観た映画の好きなシーンや
印象に残っているシーン、セリフを
ペンやマーカーで描きました」
じっさいに描いてみて、どんな印象でした?
「いつものメモだけのノートや
アプリだと味気ないですが、
アコーディオンアルバムなら
だんだんと別々の作品が
1つのものとして繋がっていくので、
好きな共通点を見つけられたり、
映画に対しての思い出が深まり、楽しかったです!」
1冊まるっと仕上がったら、
部屋に飾って
自分がどの映画のどの部分が好きだったのか
楽しく振り返りたいそう。
ちなみに、色移りを気にして描いていたそうですが、
紙を貼り合わせているので、厚みがあり、
その心配はいらなかったようです。
そうそう、細かく「何の映画か」知りたいですよね。
解説してもらいました。
①「2001年宇宙の旅」白と黒とオレンジの色が絶妙。
②「欲望の翼」この映画の湿度と鬱蒼とした感じがわかる
青緑の木々の画。
③「マルジェラと私たち」観ながらノートにメモした言葉を
そのまま貼りました。
④「冬冬の夏休み」のラジコンを追うカメラワークと兄妹の足。
⑤「Little Women(原題)」若草物語の爽やかな浜辺のシーン。
⑥「竜とそばかすの姫」髪色と夜空の色の組み合わせが素敵。
⑦「DOWN BY LAW」モノクロのお茶目な脱獄犯たち。
⑧「SOMEWHERE」夏の親子の卓球のシーン。
⑨「グッバイ、サマー」坂を下っていくシーン。
⑩「Swing Kids」の2人の引きのシーンが好きでした。
アコーディオンアルバム、 わたしの使い方。[1] 伊藤まさこ 編
もともとは、御朱印帳として作られたという、
アコーディオンアルバム。
その佇まいが、なんだか好きで、
もっと他の使い道はないかしら?
‥‥と思っていました。
そこで頭に浮かんだのが、父の若い頃の写真。
他の写真はきちんとアルバムに収まっているのに、
なぜかこれだけ古い缶に、
がさっと入っているのです。
母に理由を尋ねても、
「さあ、どうしてかしらね?」
と首を捻るばかり。
セピア色の写真の中の父は、
ちょっとかしこまったり、
ポーズをつけてきめていたり。
今のように、写真を撮ることが
身近ではなかった時代の特別感に溢れていました。
大切な写真ですもの、
缶の中ではなく、
もっと丁寧に扱ってあげたい。
一枚一枚、えらんでは
フォトコーナーをつけて挟んでいく。
‥‥するとなんだかアルバムが急に息づきはじめて、
とても愛おしいものに感じられました。
(閉じた時のことを考えて、写真と写真の間に
紙を一枚、間に挟んでおくとよいかと思います。)
23年ほど前に訪れた、
カトリックの巡礼地、フランスのルルド。
到着してすぐ、
街を散歩している途中で、
偶然入った教会でいただいたのが、
このマリア様のカードです。
その後すぐに、娘を授かっていることが分かり、
なんだか縁を感じて、
お守りのように持っていました。
その後、無事に娘は生まれ、
以来、このカードは20年以上、
母子手帳と一緒に保管しています。
アコーディオンアルバムには、
生まれて間もない娘の写真と、
マリア様のカードを一緒に。
いつか、娘が独立する時、
母子手帳とともに渡したいなと思っています。
こちらは、人生の先輩からいただいた大切な手紙。
「まさこ様」の宛名の文字もうれしくて、
封筒ごとアルバムに綴じました。
「アルバム」という名前ですが、
取っておきたいものは人ぞれぞれ。
写真だけではもったいない、そう思っています。
平たいものだったら、素材はきっとなんでも大丈夫。
布の作家をしている私の友人は、
「織りの端切れを貼って、
見本帖にするのもいいな」なんて言っていましたよ。
パリの美術館でもらった入場券は、
今から30年近く前の一人旅の思い出。
当時、私は20歳と少し。
パリ。
憧れのパリ!
見るものすべてがそれは新鮮でワクワク。
切符やチケット、カフェの角砂糖の包紙など、
紙ものはすべて後生大事に取っておき、
ファイルに挟んで持って帰りました。
自分で貼る、
フォトコーナーは、綴じたい紙の大きさも自由自在。
ノリやテープによる、紙の変色も防げて一石二鳥です。
色合いを考えて貼ったら、
なんだかいい感じ。
ここ最近、紙ものは、すてき! と思っても
すぐに処分していたけれど、
そんなのもったいない。
紙っていいな、
やっぱり、紙っていい。
そのことを、
アコーディオンアルバムが、
気づかせてくれたのでした。
暦帖とアコーディオンアルバム
無駄な月日なんてない。
カレンダーのような、
手帖のような、
weeksdaysの暦帖も、
今回で3回目の紹介となりました。
‥‥ということは、
もう来年の準備!?
年々、時が経つのが早くなっているような
気がしてなりません。
そうそう、若い頃は年上の先輩方に
言われたものです。
「歳をとるにつれ、時間が過ぎるのが
早く感じるようになるよ」
ってね。
そうか‥‥あの言葉はたしかにほんとうだわ。
暦帖を作ってからの、
この2年は、今までにない毎日を過ごしました。
暦帖に書き込む予定も、
あんまりなかったけれど、
でもだからといって、
無駄に時を過ごしたのではないと思いたい。
暦帖を開いて見返してみると、
そこには、
誰々から野菜が届く、とか
たのんでいたお菓子を取りに行く、とか
ちょっとしたことが書き込まれいて、
それを見ているだけで、
ちょっとなごんだ気持ちになる。
これから先、この時のこの気持ちを忘れないために、
時々、見返したいなと思っています。
今回、もうひとつ
私がずっと欲しいな、と温めていた、
新しいアイテムが加わりました。
暦帖同様、思い出をそっと閉じ込めておくための
とっておき。
どうぞお楽しみに。
鋼正堂のうつわ、 あのひとのつかいかた。 [その4]料理を盛るだけじゃなく。 ダンディゾン/fève オーナー 引田かおりさん 後編
引田かおりさんのプロフィール
ひきた・かおり
「吉祥寺においしいパン屋をつくりたい」
という思いを実現すべく、
夫であるターセン氏の退職をきっかけに、
2003年に「Dans Dix ans」を夫妻で開業。
同じ建物の2階には、引田夫妻が
「素敵だと感じるもの」を紹介するギャラリー
「fève」を同時にオープンさせた。
近著に『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)がある。
新しく家にやってきた器は、
すぐにしまわず、
まずは目につくところに置いて、
その姿を愛でるというかおりさん。
うかがったこの日は、
これから撮影をする
鋼正堂の器をずらりと並べて待機中。
最近、買ったという
アアルトのペールグレーの半円テーブルに、
白い器がよく合います。
「こうして眺めながら、
どんな風に使おうかな? と考えるの」
いつ来ても掃除が行き届いていて、
清々しい空気を放つ引田家。
ふと玄関に目をやると、
なんとそこには鋼正堂の耐熱皿が!?
「耐熱皿に、炊いたお香のパッケージを置いておくと、
あらいい香りね! なんて言ってくれたお客様にも
どんなものを使っているか分かるでしょう?」
なるほど。
このホスピタリティ、さすがかおりさんです。
耐熱皿を「料理を盛る器」として使わないところも新鮮。
そうか、自由に使ったらそれだけ用途も広がるってこと。
器もきっと喜んでる。
「アクセサリーも、買ってきてすぐは眺めていたいから、
引き出しの上にお皿を置いて、そこに並べます」
右はお母様から譲り受けたという指輪を
リメイクしたもの。
左は貝のボタンのネックレス。
「昔ながらの立て爪だったんですが、
それだとつけないな、と思ってネックレスにしました」
耐熱皿の使い方もしかりですが、
使うものや身につけるものを、
自分仕様に変えるその自由さ。
(ちなみにsaquiのパンツのリボンも「取っちゃった!」とおっしゃっていました。)
気分よく暮らすかおりさん、見習いたいものです。
鋼正堂のうつわ、 あのひとのつかいかた。 [その3]一人一皿が基本。 ダンディゾン/fève オーナー 引田かおりさん 前編
引田かおりさんのプロフィール
ひきた・かおり
「吉祥寺においしいパン屋をつくりたい」
という思いを実現すべく、
夫であるターセン氏の退職をきっかけに、
2003年に「Dans Dix ans」を夫妻で開業。
同じ建物の2階には、引田夫妻が
「素敵だと感じるもの」を紹介するギャラリー
「fève」を同時にオープンさせた。
近著に『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)がある。
ベトナムのかごや、杉工場の小引き出しなど、
weeksdaysのものを多数愛用してくださっている
引田かおりさん。
取材にうかがったこの日も、
saquiの夏のパンツをすてきに穿きこなしていました。
仕事柄もあって、
多くの「よいもの」を目にしておられると思うのですが、
そんなかおりさんが、
weeksdaysで買いものしてくださっていると思うと、
うれしいし励みにもなる。
そして、よし! がんばろう、なんて気合も入るのです。
中でも、気に入っているのが鋼正堂の器とか。
どんな料理を盛っているのですか? とたずねると、
「もう本当にいろいろ!」とかおりさん。
たとえばスープ皿はこんな風に、
キャベツとルビーグレープフルーツの
コールスローを盛って。
コールスローの淡い色合いが、白い器に映えます。
取り皿にしたのは、オーバル耐熱皿の小。
そうか、「耐熱」としてでなく、
ふつうの器と考えれば、
使う幅も広がりますね。
「スープ皿はスープよりも、
サラダを盛ることが多いかな。
他に、ベビーリーフとお豆腐とアボカドのサラダとか」
わー、おいしそう!
二人分盛ってシェアするのではなく、
一人一皿が基本とか。
たくさん盛って、野菜をもりもり食べるんですって。
丸プレートの大きい方には、ふだんのおかずを。
「今日は、ピーマンの肉詰めにしました」
添えたのは、枝豆入りのポテトサラダ。
コールスロー同様、盛りつけがとても美しい!
ピーマンのグリーン、枝豆、きゅうり。
そうか、食材の色を抑えると、
すっきりした一皿になるのですねぇ。
ピーマンの肉詰めと同じくらい好きなのが、
アジフライとか!
きっとお皿の中にいい具合にレイアウトして、
アジフライを盛りつけるのだろうな。
丸プレートの小さい方には、
ギャラリーのスタッフが作ったフルーツサンドを。
(fèveに勤務する傍ら、
フルーツ喫茶オハラというお店もされています)
小さなプレートの上に、
色とりどりのフルーツが乗って、
楽しげな雰囲気に。
「フルーツサンド、このお皿にぴったりでしょう?」
とかおりさん。
盛るもので、いろんな表情を見せる。
それが鋼正堂の器のいいところなのです。
重ねるとこんな感じ。
上から見た時とはまた違って、
真横もいい感じです。
そうそう、
もうひとつ、おやつの時間のために、
こんなかわいい器使いも披露してくれました。
「福岡出身だから、ひよこ饅頭を」
オーバルを横にして、ひよこを4匹こちら向きに並べます。
ひよこの丸みとオーバルの丸みがぴったり。
なんてかわいいんだろ。
鋼正堂のうつわ、 あのひとのつかいかた。 [その2]飾りはいらない。 A.K Labo 庄司あかねさん(パティシエ)後編
庄司あかねさんのプロフィール
しょうじ・あかね
パティシエ。
前職のグラフィック・デザイナー時代に、
料理本のデザインがきっかけで菓子作りの道へ。
渡仏し菓子作りを学び、
都内でのカフェ勤務を経て
2003年、吉祥寺に
伝統的なフランス菓子を提供する
パティスリー&カフェ「A.K Labo」を開業。
伝統的なフランスの郷土菓子と、
新作の菓子をあわせて紹介している。
●twitter
●A.K LaboのFacebook
「耐熱皿でまず思いつくのは、
季節のフルーツを入れたクラフティ。
今だと桃、もう少し前だったらさくらんぼ。
さくらんぼは、ヘタのついたまま焼いてもいいかな」
ヘタつきのさくらんぼ!
クラフティの生地から、
ちょこんと赤い実とヘタが出ている様子を想像すると
おいしそう! そしてかわいらしい。
今日は、あかねさんのお菓子にもよく登場するという
(旬の季節に一年分をたっぷり仕込んでおくそう)
白いちじくを使ったクラフティを。
さっとコンポートにした白いちじくが
たくさん入っています。
一口食べてみると‥‥、?!?!
いちじくの中にフランボワーズのジャムが入ってる!
「お借りした器なので、
最初、扱いにドキドキしていましたが、
とても丈夫。
食洗機にも何度か入れましたが、まったく問題なし。
安心して使える器ですね」
そうなんです。
盛りやすいとか、
盛る料理をえらばないとか。
鋼正堂の器のいいところってたくさんあるのですが、
「丈夫さ」もそのひとつ。
毎日使う器として、これってすごく大切です。
「お店で使ったらすごく重宝するのでは」
なんて、うれしい感想をいただきました。
冷やしてもおいしいというクラフティ。
この日は焼き立て熱々を。
下に敷いた花柄の布もお菓子にぴったり。
大きい方のプレートには、
ウィーン菓子として有名なザッハトルテを。
「フランスでは
ガトー・サッシェ(Gâteau sacher)と呼ばれている
このお菓子、白い器に合うんじゃないかなと思って」
毎年、大量に仕込むという
杏のジャムを使ったザッハトルテを、
大きなプレートの真ん中に盛って、
横にはシャンティを。
「このお菓子、見た目は地味なんだけれど好きなんです。
白いお皿に乗せるだけでもう充分かなと思って」
余計な飾りは一切なし。
茶色と白の潔い一皿ができあがりました。
白い器が好き。
そして、
持っているのは白い器だけ。
そんなあかねさんならでは、
「さすがはプロ!」の使い方、
新鮮だったなぁ。
鋼正堂のうつわ、 あのひとのつかいかた。 [その1]額縁のように。 A.K Labo 庄司あかねさん(パティシエ)前編
庄司あかねさんのプロフィール
しょうじ・あかね
パティシエ。
前職のグラフィック・デザイナー時代に、
料理本のデザインがきっかけで菓子作りの道へ。
渡仏し菓子作りを学び、
都内でのカフェ勤務を経て
2003年、吉祥寺に
伝統的なフランス菓子を提供する
パティスリー&カフェ「A.K Labo」を開業。
伝統的なフランスの郷土菓子と、
新作の菓子をあわせて紹介している。
●twitter
●A.K LaboのFacebook
ここに来れば、
おいしいフランス菓子が食べられる。
そんな安心感がある、あかねさんのお菓子。
素朴で実直。
きちんと正統派なんだけれど、
お店に漂う雰囲気は、
どこか親しみやすく、かわいらしい。
ああ、こんなお店が家の近所にあったらいいのに、
と願わずにはいられないお店です。
今回は、あかねさんに
鋼正堂の器を使っていただくことに。
「スープ皿にクレメダンジェを。
まわりにはエルダーフラワーのジュレを添えて」
どの位置から撮るのがいいですか? と尋ねると
「上からがいいかな」とあかねさん。
(料理の撮影の時は、
その一皿が一番いい顔をしているアングルを
たずねるようにしているのです。)
白いお皿にフワッフワのクレメダンジェとジュレ、
そのまわりにはフランボワーズなどのベリー類。
皿自体に深さがあるので、ジュレもすくいやすく、
かつ上から見ることで、リムが額縁のよう。
おいしそう、そして美しい!
「白い器は、どんなものをのせても相性がいいですね」。
なんとあかねさん、家で使っている器は、
すべて「白」なんですって。
「器って、それこそ世の中に数えきれないほどあるから、
何かひとつに絞らないと無限に増えてしまう。
だからひとつ決め事を作ったんです。うちは白だけって!」
作家が作ったもの、古いもの。
質感もいろいろな白い器を少しずつ集めているのだそう。
厨房からいい香りがするなぁと思って覗いてみると、
クレームブリュレを焼いている最中。
オーブンから出して、
カソナードをかけ、バーナーでキャラメリゼ。
耐熱皿が耐熱してる!
なかなか家では見ることのできない、
この光景に一同、大興奮です。
しばらく冷まして、
「はい、どうぞ」と出してくれたのがこちら。
大きな方のプレートを下皿にし、
ブリュレをのせ、
空いた部分にベルベーヌの葉をあしらってくれました。
耐熱皿をちょっと横にずらすのがポイント。
フレッシュなベルベーヌは、
飾りだけではないんです。
食べてびっくり、ブリュレの中の生地にも
ほんのりベルベーヌの香りが‥‥。
「牛乳に生の葉を入れて煮出し、風味をつけました」
一口食べると、鼻からそこはかとなく抜ける大人の香り。
ベルベーヌはお茶しか飲んだことがなかったけれど、
こんな使い方もあるんだ‥‥。
少し苦いキャラメリゼとも相まって奥深い味わい。
プロってすごいなぁ。
鋼正堂のうつわ
まいにちをおいしく。
まいにち、まいにち、料理をする。
まいにち、まいにち、器をえらぶ。
使うのは、
鋼正堂のプレートと耐熱皿。
我が家の食器棚に仲間入りして
もう3年が経つけれど、
ちっとも飽きない。
それどころか、
いまだに、ああいいなと思うんです。
ふつうで、丈夫。
やわらかい白の色合いも感じがいい。
何より、
主役の料理よりもでしゃばらないところがすごい。
こういう器って、
そうそうないんじゃないかな。
おやつにくだもの、
パンにスープ、
サラダにステーキと、なんでもござれの懐の深さ。
ぜひ一度、手に取って使ってみて欲しいなぁ。
あなたの毎日の料理がきっと、
おいしく、
楽しくなるはずだから。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月26日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
丸プレート・大
鋼正堂でまず一番初めに作りたかったのがこのプレート。
私が持っていた北欧の軍ものの
(と買った時にお店の方から説明を受けました)
プラスティックのプレートがベースになっています。
軍ものですから、軽く持ち運びしやすく、
余計なデザインがほどこされておらず….。
お皿の一番プリミティブな形とも言えるのではと、
見るたびにほれぼれしていたものです。
内田さんに、こういう形で毎日使える
陶器のお皿が欲しいと伝えると、
一言「分かった」と。
すぐにろくろを回して、原型となる型を作ってくれました。
できあがったプレートは、
一見とてもふつうなのですが、
使うごとに、よさがじわじわと伝わってくる。
料理の引き立て役になってくれるところがいい。
ほどよい重さがあり、手に馴染むところがいい。
こちらに気を使わせない、繊細すぎないところがいい。
一歩引いた感じのひかえめさが、
なんだかいいのです。
バゲットにバターとジャムをたっぷり塗って、
ひとり分の朝ごはんにしたり、
数人分のラムのソテーを盛って、
テーブルの真ん中にどんと置いたり、
数種類の料理を盛り合わせて、
1プレートにしてもいい。
お皿の上に絵を描くように
自由に料理を盛ってみてください。
どんなものでも受け止めてくれる、
ふところの深いお皿でもありますから!
(伊藤まさこさん)
オーバル耐熱皿・小
もともと質実剛健な業務用の耐熱皿が好きで、
海外の蚤の市や、
料理のプロが通う道具街で買っては家で使っていました。
ちょっと重いけれど、逆にそれが安心感につながる。
ついた焦げ目をガシガシと洗っても、へこたれない。
しょっちゅう使うものだからこそ
できあがった器や道具には、
なぜその形になったのかの理由があるように思います。
今回、作ったのはオーバルの耐熱皿。
おととし行ったパリの蚤の市で
「主婦歴ウン10年」みたいなおばさんから
1ユーロで買ったものが、
ベースになっています。
使い込まれて器としての味わいが増し、
それと同時に愛着も増していっている。
鋼正堂のオーバル耐熱皿も、使ってくださるみなさんが
そんな気持ちになるといいなぁと思っています。
白と言ってもいろいろな色合いや質感がありますが、
内田さんが提案したのはおだやかで落ち着いた白。
さくらんぼのクラフティやプリンなどの
見た目も愛らしいデザートから、
ズッキーニやとうもろこしを
まるごと一本のオーブン焼きなんていうシンプルな料理、
またはローストビーフなどのちょっと豪快な肉料理など、
なんでも受け止めてくれるところが気に入っています。
また、耐熱皿としてだけでなく、
「オーバルの形をした器」として使うと
より器としての広がりを感じることができます。
フムスなどのペーストや
にんじんサラダ、たことオリーブのマリネなど、
ワインに合う料理をちょこちょこ盛ると
楽しげな雰囲気になりますよ。
(伊藤まさこさん)
スープ皿
スープを飲む時に、
ほどよい大きさのスープ皿が欲しいな、
ずっとそう思っていました。
リムがついていて安定感があり、
内側の料理を盛る部分とスプーンの丸みの
相性のいいものを。
ビーツなどの色合いがきれいなポタージュも、
また、じゃがいもやにんじん、
ソーセージがごろごろ入った
ポトフなどの素朴な料理も相性がいいのは、
質感と色合いのおかげ。
立ちあがりがあるため、
パスタを盛ってもぴたっと決まります。
そう、「スープ皿」と決めつけず、
「ちょっと深さのある皿」と思うと、
盛る料理の幅も広がります。
サラダやフルーツのマチェドニアを入れてみようか?
お豆のペーストを盛って、
リムに薄く切ったパンを並べようかな、なんて。
器づかいは料理と同じ。
頭をくるくる働かせて、
いろいろな盛り方をたのしんでみてください。
(伊藤まさこさん)
saquiのサマーテーパードリボンパンツ
私の定番のひとつ、
saquiのテーパードパンツ。
シンプルな形なので、
Tシャツやニット、シャツなど、
どんな服と合わせてもしっくり。
もはやなくてはならない一枚となっています。
昨年の猛暑にふと、
「素材を変えて、夏バージョンがあったらいいのに‥‥」
と思い、さっそく岸山さんに相談。
試行錯誤の上に、できあがったのがこのパンツです。
さらりとした肌触りは、夏にぴったり。
薄手で、透けづらいのですが、
テーパードパンツの魅力の一つの深い黒は健在。
夏のパンツも、なくてはならない一枚になりそう。
下着のラインを拾わないよう、
腰回りを少しゆったりさせたり、
丈を少し短くして軽やかさを出したりと、
岸山さんの工夫が、そこかしこに凝らされています。
(伊藤まさこさん)
わたしの鏡のつかいかた。
ダイニングの壁面に、
もともとしつらえてあった
飾りのマントルピース。
すっきり、さっぱりが好きな私としては、
この、いかにも洋風なコーナーを、
住み始めた当初、少々持て余していました。
でもせっかくならば、
洋書の中にあるように、
額や本をたくさん並べた
コーナー作りもいいかもしれない。
ある日、そう思い立ち、
額や本と一緒に、
気に入りのオブジェや
古いフラワーベースを飾ってみることに。
時々、額を入れ替えたりして模様替えしている
このスペースに、
新たにくわわったのが杉工場のナラ材の鏡。
後ろに置いたフレームの材質との相性がよく、
かつ、鏡を置くことで空間に奥行きが出る。
少ししゃがまないと
見ることはできないのですが、
こういう鏡の使い方もいいのでは?
なんて思っています。
角度によっては、
手前に置いた蘭が鏡にのぞいて、
華やかさも倍増するんですよ。
ベッドルームの奥に作った、
ウォークインクローゼットの一角に、
ナラ材の鏡を置きました。
ある時は、横。
またある時は縦。
簡単に向きが変えられるし、
横と縦とでは気分も違う。
フレキシブルに変えられるのは、
使う身としてうれしい(今日は横向きに)。
部屋を出たすぐの廊下に
姿見があるので、
出かける前の引きのチェックはそこで。
おだやかな自然光が入るこちらでは、
メイクや髪型の最終チェックをします。
鏡を作りたい。
そう思ったきっかけは、
玄関に置く、ほどよい鏡がなかったから。
大きさや材質、
壁にかけた時の、感じのよさ。
玄関は家の顔ですもの、
妥協するわけにはいかなかったのです。
できあがった杉工場の鏡を見た時、
ああ! これでようやく‥‥、
と、うれしい気持ちでいっぱいに。
ここでかけたのは、
ウォールナット。
じつは、我が家はナラ材を使った家具が多いので、
当初、ナラ材にするつもりだったのですが、
玄関にはウォールナットがしっくり。
濃いめの色合いが、
空間の引きしめ役にもなるようで、
これはうれしい発見でした。
ナラとウォールナット。
家のあちらこちらに、
かけたり、置いたりしましたが、
フレームの存在感が控えめなので、
どちらも、どんな場所でも大丈夫。
第一印象で「これ!」と決めたら、
きっとそれがあなたの部屋に合う鏡なのでは?
なんて思っています。
あの人の鏡のつかいかた。
仁平綾さんのプロフィール
にへい・あや
1976年生まれ、編集者・ライター。
2012年、ニューヨーク・ブルックリンに移り、
9年を過ごしたのち、2021年に帰国、
京都に居を構える。
得意ジャンルは、食、猫、クラフト。
雑誌やウェブサイト等への執筆のほか、
著書に、ブルックリンのおすすめスポットを紹介する
私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』vol.01~03、
『ニューヨークおいしいものだけ!
朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、
『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』
(いずれもエクスナレッジ)、
『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?』
(朝日新聞出版)、
『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)、
伊藤まさこさん・坂田阿希子さんとの共著に
『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、
『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
だいぶ前のこと。
都内の某イタリアンレストランで、
編集者(男性)とランチミーティングをすることになった。
サラダやパスタ、コース仕立ての料理を、
お互い話もそこそこに片っ端から胃におさめ、
食後の甘いものを味わいながら、
仕事のアイデアを出し合って、わりと熱く、語った。
なかなか達成感のあるミーティングだったな。
と、ほくほく満足げに帰路につき、
自宅の洗面所で手を洗いながら、
にかっと笑って鏡を覗きこんだそこに、
まさかのアレを見つけたのである。
前歯に、青菜。
ぱっきり緑の、わりと大きめなやつ。
ピタッと歯に、誇らしげに密着している。
え‥‥。は? やだ。うそでしょ‥‥。ぎゃー!
恥ずかしいを通り越して、
なんていうか、自分のまぬけさにがっかり。
おかしいな、途中トイレで確認すればよかった。
そうすれば被害は最小で済んだはず。
いやいや、デザートが出る前にトイレに行った。
でも、あの店の狭いトイレには、鏡がなかったんだ!
きーーっ、鏡さえついていれば。
そんなふうに店を恨んだって、仕方ないのだけれど。
話は変わって、2021年6月。
美容師の夫が、京都でヘアサロンをオープンした。
たった8坪の、小さな2階建て。
1階部分にシャンプー台と、カット椅子2つをしつらえた、
夫がひとりで働く、プライベートサロンだ。
あまりに狭小物件のため、
トイレは外階段を登った2階に設置。
コンパクトなトイレ内に、
これ以上ないぐらい小さな洗面台を取り付け、
トイレが完成。
と思われたけれど、何かが足りない。
鏡だ。
「鏡なんて、1階に2つもあるからいいじゃない」
夫はそう言う。
いえいえいえ。
トイレという個な空間で、私だけの鏡を覗きこむ。
その行為は、レストランはもちろん、
ヘアサロンでだって必要だ。
前歯に青菜。じゃないけれど、
鼻の下に、切ったばかりの髪の毛が、
まるで鼻毛のようにくっついていたら、どうするんだい
(今はマスク着用で、その心配はないかもだけど)。
鼻毛を付けたまま帰ったら、
せっかくのヘアサロン体験が台無しである。
「ぜひ使ってみてください」と、
今回weeksdaysからお借りした杉工場の鏡、
さっそく、ヘアサロンのトイレの壁に取り付けてみた。
狭小トイレにも、すんなり収まるコンパクトなつくり。
それでいて、自分の顔をくまなく目視するには、
十分な大きさ。
縁の部分に使われているウォールナット材の渋い焦茶色が、
どことなくヴィンテージっぽくもあり、
味気ないトイレ空間が、
鏡ひとつで3割増しに見えるところがいい。
手鏡ほど小さくなく、かといって、
持ち上げるのに苦労するほど重くもないので、
たとえば、ヘアカットの最後に、お客さまに
バックサイドの仕上がりを確認してもらうときの
合わせ鏡にもよさそう。
使わないときは、床に、そのまま、
ぽん、と、置いておけば、
さりげなくインテリアになじんでくれる。
「こういう鏡って、案外、探してもないものだよねー」
夫と、そう口を揃えたのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
仁平さん、ありがとうございました!
仁平さんの夫である三輪敦士さんの京都のヘアサロン、
「DRESS HAIR SALON」についてはこちらをどうぞ。
■WEBSITE
■Instagram
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
あの人の鏡のつかいかた。
香菜子さんのプロフィール
かなこ。
1975年、栃木県足利市生まれ。
女子美術大学工芸科陶芸専攻卒業。
在学中にモデルを始める。
1998年、出産を機に引退、
2005年、第二子出産を機に
雑貨ブランド“LOTA PRODUCT
(ロタ プロダクト)” を設立。
母の立場から「こんなものほしい」をかたちにした
雑貨をデザインし、人気を集める。
2008年よりイラストレーターとしての活動もスタート。
モデル業にも復帰し、さらなる活躍の場を広げる。
モデルのかたわら2018年7月より
架空のホテルVILHELMS (ヴィルヘルムス)を
立ち上げ、備品などイメージしたプロダクトの制作を開始。
2015年、初めての書籍
『普段着BOOK』(主婦と生活社)を出版、
以後、多数の著作をもつ。
近著に自身のライフスタイルを紹介する
『毎日、無理なく、機嫌よく。』(すばる舎)がある。
最近ではキャラクター「おぱんつ君」も人気に。
●香菜子さんのインスタグラム
●おぱんつ君のインスタグラム
●香奈子さんの著作
20年近く住んだマンションの1階から、
見晴らしのよい5階へと引っ越したばかりの香菜子さん。
前の家も、すてきだったけれど、
ひろーいバルコニーがついた今の家は、
空が近くなってすごく気持ちがいい!
同じ建物でも、ずいぶんと印象が変わるものですねぇ。
「まだ引っ越して2ヶ月なので仮状態。
住みながら、この家をどうしようかなと
探っているところです」
杉工場の鏡はさてどこに?
とキョロキョロすると、
「こっちですー」と香菜子さん。
ベッドルームに案内してくれました。
「前の家で使っていたチェストは
大き過ぎて入らなかったので、
新たに買ったのがこれ」
チェストも鏡も、香菜子家のニューフェイス!
‥‥のはずなのに、
すっかり馴染んでいるのがさすがです。
「鏡の横には、香水とアクセサリーを置いて、
出かける前の仕上げをここで」
鏡の材質はナラ材とウォールナット材の2種。
「ウォールナット材はトイレにどうかな?」
‥‥と合わせてみると、
扉の色合いとぴったりではありませんか。
「トイレの中の白い壁につけようかな?
それともこっちがいいかな?」
と、なんだか楽しげ。
いいなぁ、新居!
床はナラ材、
扉はウォールナット材の鏡の色合いに近い香菜子さんの家。
今回、2種類どちらも合うかも!
といううれしい発見がありました。
「ちょっとしたスペースに置ける大きさもいいですね」。
じつは設計の段階ではなかったという、
玄関の扉横のスペース。
「でもやっぱり鍵を置いたりする場所も必要なのでは?」
と設計士さんにお願いして
作ってもらったとか。
「ここで、出かける前の最後のチェックをします」
まずはチェストの上の鏡でチェック。
そして出かける前の最後のチェックは玄関で。
美しい人がより美しくなるお手伝いに一役買えそうで
うれしいかぎりです。
ふたつの鏡をしげしげと見つめて、触って。
「本当によくできてる。
ほぞも、すっきりきれい。
裏の部分まで手抜かりなく仕上げてありますね」
と香菜子さん。
むむ、かなり本格的な‥‥と思っていると、
なんと、DIY好きとか。
このテーブルにできた欠けも
(ちょうど鏡と鏡の間の部分)、
自分で板を買ってきて
ヤスリをかけて色を塗ったのだそう!
テーブルや椅子などの木の部分に、
オイルを塗るのも大好きとか。
「この鏡も大切にオイルを塗って育てていきたいです」
ウォールナット材は和風の家にも合いそうとか、
引越し祝いにしたら喜ばれそうとか、
なるほど! と思う言葉をたくさん聞けた昼下がり。
なんだか愛着がいっそう沸いちゃった。
私も育てていきますね。
杉工場の鏡
ちょうどいいもの。
世の中に、ものはたくさん溢れているけれど、
「ちょうどいいもの」って、
じつはなかなか見つからない。
それでも、自分が使うものだもの、
妥協はしたくない、
そう思うのです。
だから私は、
時間をかけて、ひとつひとつ
気に入ったものを
えらんできました(時にはしつこいくらいに!)。
探してもない時は、
作ってもらう。
weeksdaysをはじめてから、
たくさんの方との出会いがあり、
そんな贅沢が叶うようになりました。
この鏡も、そのひとつ。
壁にかけたり、
チェストに置いたり。
自分の姿を、ちらりと確認したい時、
小さすぎず、大きすぎずのこのサイズが
なんともちょうどいいのです。
作ってくださったのは、
小引き出しでお馴染みの杉工場。
コンテンツは、京都と東京、
それぞれの家での鏡を置いた様子をご紹介。
どうぞお楽しみに。
すてられないもの。[3] 「いつか待ち」
幼い頃からこれまで
そして恐らくこれからもずっと片付けが苦手だ。
その結果、家中のあちらこちらに捨てられない
“いつか使うかも”が点在している。
掃除はそこまで嫌いじゃない。
しかしある程度片付いていないとスムーズに進められず、
文字通り四角な座敷を丸く掃く日々。
このままではいけない。
数年に一度、決死の思いで片付けに取り掛かるが、
毎度、なにから始めれば良いかがわからない。
物の本によると、まず第一段階として
全てを表に出し、捨てるか取っておくか仕分けるらしい。
全てを出す‥‥? いきなり躓く。
出さなくともすでに出ている大量の小間物に目をやり、
あれも要るな、これも要るな、なんだ全部要るじゃん‥‥。
ひとつひとつ眺めてはため息をつくを繰り返し、
気がつけばその状態のまま数日が経ち自己嫌悪。
頭じゃなく手を動かせよ! ようやく自分に鞭を打つ。
とりあえず捨てることは諦めて、
“いつか使うかも”と取っておいた箱に
種類別に詰めてみる。
NIKEとビルケンシュトックの靴箱には
学生時代授業中にまわしあった手紙やメモを。
高校の卒業式用に買ったバッグの箱には、
郵送で届いた手紙を詰め込んだ。
いつか読み返す日がくるとも思えなかったが、
なんとなく捨てられずにいた手紙類は
2017年、思わぬ形で“いつか”を迎えた。
長らく箱の中に眠っていたそれらを
シュレッダーにかけ、糊で繋げて糸状にして編んだり
フリンジ状にすることで展覧会用の作品に転じたのだ。
細切れの手紙は内容はわからなくとも、
見れば20年以上前の誰の文字かわかる不思議。
手紙から慎重に剥がされた数十枚の懐かしいシールは
クリアファイル1枚に収められ
空になった箱はついに処分された。
この時の展覧会では手紙だけではなく、
幼稚園の時の大胆な絵が溢れるお絵かき帳や、
小学生の時の写生大会で描いたレンガ造りの東京駅の絵、
中学校の授業で描いたCINZANOの瓶の絵も使用した。
過去の自分が現在の自分をこういった形で
助ける事になろうとは予想だにしていなかったが、
幾度の引越しの際にも捨てずにいてくれた
親と自分に感謝した。
2020年春の展示では
商品を入れてもらえるとすごくうれしいが
その後の使い道を見出せず、大量に仕舞い込んでいた
布製のショッピングバッグに手を加え作品を制作し、
2021年頭には
クリアファイルに挟んでおいた
ヨレヨレのシールを作品に転用した。
このように、片付け界において
来ることはないとされている
“いつか”がわたしの元には割と頻繁に訪れる。
だから仕方がない。
今日も中身の詰まったいくつかの箱と
まだ箱にすら入っていない大量の小間物に囲まれて、
次の“いつか”がやってくるのを
ただひたすらに待っている。
すてられないもの。[2] 「ルピー/紙屑と宝物」
小さな引き出しを開けると、
そこにはいつもルピーがある。
インドの紙幣だ。
通貨単位はルピーという。
日本円にして1,000円に満たないほどだけれど、
大事にしまっている。
インドへは毎年のように通っていて、
たいてい1年で最も涼しい1月から2月にかけて旅をする。
だからその紙幣はインドから帰国すると
次の出番まで1年ほどの間、眠っていることになる。
6,500ルピーほどをキープしていたこともあった。
1万円近くになるこの紙幣は
悲劇的な結末を迎えることになる。
ある年、インド政府が紙幣を刷新する政策を取った。
期日までに銀行で新しい紙幣に変えないと
旧紙幣は無効となる。
現地を訪れるチャンスを作れなかった僕に
容赦なく期日は迫り、通り過ぎていった。
次の渡航時、ムンバイの空港に降り立った僕は、
ダメ元で期限の切れた紙幣を出してみた。
あのときの女性スタッフの反応は忘れられない。
憐みの表情さえ浮かべず静かに目を閉じて、
冷たく首を横に振ったのだ。
それもそのはず、手にしているのは無効の紙幣なのだから。
わかっていても虚しさがこみ上げ、
カウンターに紙幣を置いたままその場を立ち去った。
まさかルピーとこんなふうに
お別れをすることになるなんて。
小さな引き出しの中には、実は別のルピーも眠っている。
こちらはニセサツである。
あ、いや、違う。
紙幣を模したカレー専門店のポイントチケットだ。
僕が生まれ育った静岡県浜松市に
かつて『ボンベイ』というインド料理専門店があった。
小学校にあがってすぐ両親に連れていかれ、
高校卒業まで足しげく通った。
“足しげく”なんて表現では言い表せないほど通い詰めた。
その店ではカレーを食べると金額に応じて
通称「ルピーチケット」がもらえた。
このチケットを集めると、
オーナーがインドから仕入れてきた雑貨類と交換ができる。
懸命に集めた。
集めに集めたせいで、
今度は雑貨と交換するのがもったいなくなって、
ルピーチケットだけがたまっていった。
やがて、『ボンベイ』は閉店し、
チケットの束が手元に残った。
店がないのだからこれだって紙屑のようなものだ。
でも、こっちの紙屑は僕にとって
通い詰めたあの店の思い出を今に残す宝物だ。
海外の紙幣に貨幣価値以上の愛着を持ったのは
幼いころである。
海外を旅することが多かった父親は、
帰国すると決まって旅の思い出とともに
その国の紙幣やコインをお土産にくれた。
まだ海外という概念がぼんやりとしている頃から、
見たことのない大小さまざまなコインにひきつけられた。
ジャラジャラと重たくなる財布が、
異国を旅することへの憧れを強めてくれていたんだと思う。
だから、自由に旅ができる大人になってからも、
次にいつチャンスを作れるかわからない国の紙幣を
割と大事にしまっている。
次にインドへ行くときには、
『ボンベイ』のルピーチケットを携えて行ってみようかな。
空港のカウンターに出してみる勇気はないけれど。
すてられないもの。[1] 「すてられない紙たち」
もともと、何事も捨てられないタイプです。
すぐに日常に影響がでてしまいますが、
周りのスタッフや家族に迷惑をかけ、
私が判断しきれない様々な山を、
鬼のように処分をしてくれているおかげで、
なんとか生きていますが、
私だけではすぐに本やものに埋もれてしまいます。
職業がそれに拍車をかけています。
家業である美術製本という珍しい仕事は、
手の込んだ上製本や和装本、特装本をつくる仕事です。
製本の技術はもちろんですが、
さまざまな素材や工具を幅広く使い、
既製品にないものは自分で作ったり、
工芸的な要素も多いのです。
お客様のご要望の時に、イメージに近い素材を
ぱっとご提案したいと常に思っています。
そのために紙や布をチェックしたり、
製本とはまったく別の道具も
「あの作業に使えそう」とホームセンターで
不思議な工具を買ってしまったりします。
数年に一度しかこないオーダーの工具も、
いざというときに使うので、やはり集めてしまいます。
製本業は常に新しい印刷物が製本所に届き、
本にかたちづくる仕事です。
印刷の周りの余白を断裁して、
毎日大量に処分していきます。
これは製本所のスタッフが日々行っていることですが、
私はすぐにこの裁ち落としの端切れを拾って
事務所に持ち帰ります。
小さなメモにしよう、お手紙の端に貼ろう。
などなど。仕事場は宝の山なのです。
仕事で使っている
A4サイズの弊社オリジナルノートには、
こうした紙も張り込みます。
そのほか、いただきものの包装紙やシール、
いただいた手紙、展示案内など。
毎日使うノートなので、
好きなものが常に目にふれると楽しいです。
ノートはすぐに販売されている厚みの
2倍3倍になってしまいます。
紙を整理する引き出しには一か所、
仕事ではつかえなくなった
細かく切った紙の救済スペースを作っています。
千代紙を使ってたくさん仕事をしたあとは、
細長い紙がたくさんのこりますので、
これで豆本をつくったり、栞をつくったり。
小さなかけらとなった紙を入れたその引き出しの中が
一番好きな場所かもしれません。
また自分で染めた紙は多少うまくいかなくても
捨てないようにしています。
エリック・カールは自分で染めた紙を切り抜いて
作品にしていたことを知り、
予定はないものの「何か」にするときのために、
染めた紙専用の缶に集めています。
紙以外にもいただいたお菓子の缶のかわいいものは
製本道具などをいれるものにしたいですし、
ワインのコルクや使い終わった化粧品パッケージの蓋、
使わなくなったフォーク、
櫛などは紙を染めるときに工具として使いたいです。
糸や布、ボタン、など
小さな好きなものがいっぱいありすぎて、困りますが、
好きなものでいっぱいの引き出しや缶をあけると
何をつくるともなく、わくわくします。
小ひきだし
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月12日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
小ひきだし
この小ひきだしを使い始めてしばらく経ちますが、
リビングに置いて、
いろいろなものを入れてはいいなぁ、
使いやすいなぁと思う毎日です。
そして、美しいなぁとも思う。
置いてある姿も、
また、ひきだしの中の様子までも。
小さなひきだしですが、
これがあるのとないのとでは大ちがい。
身の回りのこまごましたものが、
気持ちいいほどすっきり片づきます。
いつも、あれない、これない、どこいっちゃった?
なんて探しものをしているとしたら、
時間が少しもったいないと思う。
ものの置き場所をきちんと決めて、
こまごましたものをひきだしにおさめたら、
ものだけでなく、
気持ちの整理整頓にもなるはず。
入れるものは、あなたの自由。
使い方も自由です。
小さいけれど、大きな役割をしてくれる、
このひきだしはきっと暮らしの役に立つはず。
(伊藤まさこさん)
気持ちまですっきり。
この一年の間に、
家の中のものをずいぶんと片づけました。
そうだな、容量にしたら
3割くらいは減ったでしょうか。
とはいっても、
見た目はさほど変わっていないんです。
もともと収納にぎゅうぎゅうに入っていたものを、
「いる」と「いらない」、
「使う」と「使わない」に分けて、
「いらない」と「使わない」ものは、
友人知人の元へと旅立っていきました。
すると、家の中が前よりずっと風通しよくなったみたい。
なんだか気持ちまですっきりしたのです。
リビングの収納の中にあった小引き出しも、
まわりにものがなくなったからか、
いつもより清々しい表情をしている。
そうだ、せっかくならばと引き出しの中も
整理整頓して、
終わった頃には、自分まで清々しい表情になったのでした。
片づけって、すごい。
今週のweeksdaysは、
小引き出しの再販売。
身のまわりのこまごましたものを、
引き出しに収めて、
ちょっとすっきりしませんか?
きっとあなたの心も、
すっきり、清々しくなるはずだから。
母親として。
- 伊藤
- 子どもってすごいですよね。
- 坂井
- はい。おもしろいです。
でも41歳で産んだので、
もっと早く産んでたら、
ちょっと違ったんだろうなって思うことは、
いっぱいありました。
わりともうなんかこう、
いろんなことにドンとしてた感じ(笑)。
- 伊藤
- わたしは20代で産んだので、
最初、途方にくれちゃったんです。
だから坂井さんぐらいで生んだお友達を見ると、
「自分」ができてからだと、
落ち着いて子育てができるんだなと思って。
わたしは、娘が「イヤだーっ!」って泣いた時、
「ママもイヤだーっ!」って、一緒に号泣して。
そうしたら娘が「え?」って泣きやんじゃった。
- 坂井
- (笑)。
- 伊藤
- 逆に知り合いに
「いいお母さんにならなきゃ」
「いい妻でいなくちゃ」
ってずっと思っていたという、
60過ぎの方がいるんですが、
すごくストレスを溜めていたというんですね。
「わたし、なんであの時、
自分の機嫌を後回しにしてたんだろうって、
今になって思うのよ」って。
だから、「ママもイヤだーっ!」って
言った時代のわたしを肯定してくださったんです。
「同じ人間だから、それでいいのよ」って。
自分はあまりにも大人げなかったと思っていたけれど、
たしかに同じ人間なんだしね。
- 坂井
- うん。そう思います。
全然、私も、言いますよ、
「ママもイヤだーっ!」って。
- 伊藤
- 坂井さんも? 良かった!
- 坂井
- でも、あとで謝ります。
「ごめんね」って。
「さっき、ママもイヤになっちゃった、
って言ったけど」って。
- 伊藤
- このごろは、何をしてるんですか、二人の時。
お買い物とか行きますか?
- 坂井
- お買い物は、これからのたのしみかな。
まだ公園に行こうよっていう年齢ですね。
アクティブな遊びです。ボール投げだったり。
- 伊藤
- たしかに、そうですね。
これから、たのしみですよ。
きっとたいへんなこともあると思います。
友達関係のいざこざとか、
そういう、小さくて目が離せない大変さとはまた別の、
ややこしい問題が
起こったりするかもしれない。
でも、それもふくめて、
そばで見るたのしみが母親にはありますよ。
どんな買い物をするのかな、とかも!
それに、お母さんの周りに
刺激的な人がいっぱいいるから、
それをおもしろがってくれたらいいですね。
うちがそうなんです。
わたしの知り合いの70歳近い紳士と仲よくなって、
二人でお芝居に行ったりしてますよ。
坂井さん、
これから楽しいことがいっぱいありますよ。
いいなぁ!
- 坂井
- そうだといいな(笑)。
- 伊藤
- 10歳から20歳くらいまでって、
自分を離れて、趣味のものとかが
できていく期間っていう感じがします。
あ、こういうものに、自分の知らないところで
出会ったんだね、とか、
こういうことで興味を持って、
こういう性格になってくるんだ、って。
それを「ふ~ん」って見ている感じです。
- 坂井
- お母さんの影響、大きいのかな。
- 伊藤
- ううん、そんなに大きくないと思いますよ。
うちの場合、むしろ、考え方がずいぶん違う。
わたしの知り合いがね、
昔の恋人がくれたキーホルダーを
いまでも持っているというから、
「そんなの捨てちゃいなよ、早く!」って言ったら、
家に帰って娘に言われました。
「ママ、人には捨てたくないものがあるんだよ」
って(笑)。
「ママは、一か十か、みたいに、
捨てる、捨てない、どっち? って言うけど、
曖昧な時間をずっと持っていたい人もいるんだよ。
わたしはそのタイプだから」って。
「ママの意見が絶対なわけじゃないんだから、
そんな強い口調で言っちゃダメだよ」。
そんなふうに自分の意見を押し付けないでね、と(笑)。
- 坂井
- (笑)オトナ~! すごいな。
- 伊藤
- 娘がピンクのお弁当箱を買ってきたことがあるんです。
ずっと曲げわっぱだったのに。
きっと、坂井さんは受け入れるでしょう?
「そんなのダメよ!」みたいに
ガミガミ言わないと思う。
- 坂井
- そうですね。受け入れ‥‥ます。
今のところ、うちも曲げわっぱを使っているんですけど、
「みんながこういうのを使っている」っていう話も
だんだんし始めてくるので、
「お弁当箱、新しいの買う?」って訊いたら、
まだ、曲げわっぱがいいって言ってました。
服とかも、いまのところは、わたしの好みと合います。
でも、これからですよね。
じぶんと違うものを選ぶようになるのは。
その時は受け入れてあげようと思います。
好きなものは自由だから。
でも「お母さんはこっちのほうが好きだよ」
っていうのは、わたしも言う性格ですけれど。
ピンクのお弁当箱は、どうされたんですか?
- 伊藤
- 仕方ないな、受け入れようと思って、
半年ぐらいピンクのお弁当箱を続けたら、
「やっぱり曲げわっぱにする」って言い出して。
「なんで?」って聞いたら、
「ママが毎日、すごいイヤそうだし」(笑)。
- 坂井
- ふふ(笑)。
- 伊藤
- 「それに、曲げわっぱのほうが美味しそう」とも。
- 坂井
- よかった。
- 伊藤
- べつにそんな、イヤそうにしてたかなあ?
口角、下がっていたかなぁ。
- 坂井
- ははは。
でも、けっきょく、それって、
素敵な期間ですね。
使ってみて、自分の感覚と、
ママの様子も見ていて、決めたわけですもの。
- 伊藤
- 「やっぱり、美味しそうだから」は嬉しかったな。
ママの機嫌より、
そっちのほうがたぶん大きかったと思う。
そう思いたい(笑)。
(そろそろ時間ですよ、の声を聞いて)
‥‥えっ、もうそんな時間。
坂井さん、もうおしまいなんですって。
いくらでも話せそうなのに、ごめんなさい。
- 坂井
- いえいえ、こちらこそごめんなさい。
ありがとうございます。
- 伊藤
- えっと、まとめると、
あたらしいかごは、2サイズ、小さいもの。
よく考えて、ベトナムの方と相談しますね。
それからわたしたちの世代に似合うTシャツ、
ひきつづき、考えておきます。
- 坂井
- はい! ありがとうございます。
またぜひお目にかかれたらうれしいです。
- 伊藤
- ぜひ! ありがとうございました。
後にしようボックス。
- 坂井
- 伊藤さんは、インプットみたいなものって
どんなふうになさっているんですか。
- 伊藤
- 今です! 今、してますよ(笑)!
- 坂井
- (笑)対談のお仕事もインプット。
- 伊藤
- そうですよ! インプットです。
あとは本。好きで、自分でも買いますし、
仕事柄、いただくことも多いんです。
そういう時は、すぐに読んで、
感想のお手紙を出します。
読み終わったら、ともだちや仕事の仲間に
「これ読むといいよ?」って薦めたり。
- 坂井
- わたし、伊藤さんの秘密、分かっちゃった。
- 伊藤
- えっ、えっ?!
- 坂井
- 「後にしよう」は、ない。
そうじゃないですか?
- 伊藤
- うーん、ない。
今やっちゃう。
- 坂井
- わたしなんて「後にしよう」ばっかり(笑)!
- 伊藤
- それはそれで、その人の味わいだし、
かわいいところですよ?
- 坂井
- ううん、そんなことないです。
心の中に「後にしようボックス」
みたいなものがあって、
「これ、やんなきゃ」
っていうことを入れちゃうんです。
それが溜まっていっちゃう。
わたしが思うに、仕事が早い、できる方って、
「後にしようボックス」なんて
持っていないんですよ。
すぐやってしまうから。
だからそれこそ、
今年、わたし、決めたんですよ、
小っちゃなことだけれども、
領収書を溜めずに、その日のうちに分類する。
それを始めただけで、
自分がちょっとだけ
変われた気がしているんです(笑)。
- 伊藤
- そのことについて考えたことがあるんです。
あのね、「時間は同じ」なんですよ。
今やろうが、後でやろうが。
- 坂井
- そう、そう!
でもね、それができない‥‥。
本読むのが早いこともそうですが、
すぐにはマネできそうにないです。
本は、そんなふうに循環させることで
おそらく家の中を
すっきりさせているんだと思いますが、
自分の持ちものは、どういったサイクルなんですか。
いらなくなったとき、入れ替えは?
- 伊藤
- 激しいですよー。
- 坂井
- 激しいですか。
- 伊藤
- 服は気に入っていたけれど、
似合わないなと感じたら、
すぐに年下の友人たちにあげちゃう。
でもくやしいの、
みんながかわいく着てると、
「やっぱり、返して」みたいな気分になる。
冗談で言ったりもします、
「返して~」(笑)。
- 坂井
- (笑)。
- 伊藤
- 「weeksdays」を始めてからは、
ここで売る物は、全部自分で買って、
使ったり、着てみないと書けない。
そういう使命感があるので、
必然的に買い物が多くなるんです。
- 坂井
- 伊藤さんは、決断も早そうですね。
- 伊藤
- 早いかもしれない。
たとえば「weeksdays」のミーティングは、
みんなで集まる時間を週に1回、
1時間取っているんです。
日々、メールやLINEで確認したりもするけれど、
みんなで話したほうがいいことを持ち寄るんですね。
直近のことだけじゃなく、
商品開発は1年以上先までしてるので、
決めることも多いんですよ。
サンプルをひとつつくるのでも、
素材はどれに、色はどうしたい、
そういうことがリストになっていて、
1時間のあいだに、
たくさん決めないといけないことがある。
ただ、判断は早いんですけれど、
あまりにいっぱい案件があると、
あたまがショートするらしく、
「ごめん、もう考えられない」ってなる。
- 坂井
- どうするんですか。
- 伊藤
- 「いま冷静じゃないから、考えるのをやめて、
明日の朝、返事をするね」と。
- 坂井
- あはは! なるほど。
- 伊藤
- それで翌朝起きて、いちばんにメール。
- 坂井
- 素晴らしい。
- 伊藤
- そんな日は家に帰ってぼんやり考えたりもして、
娘に意見をもとめたりもしますよ。
そうすると「そっか!」と思えるような、
別のちょっとしたインプットがあって、
結論が出ることもあります。
娘の存在、ありがたいですよ。
- 坂井
- なるほど。
お酒もお好きと聞きましたが、
毎日飲まれますか?
- 伊藤
- 毎日飲みます。
- 坂井
- 飲んだら、もう、仕事をしませんよね?
- 伊藤
- 絶対、しない!
- 坂井
- さすが(笑)。
- 伊藤
- 坂井さんのインプットは?
- 坂井
- この10年くらいは、子育てがおもしろくて。
もう一回、自分の新たなもう一つの人生をやっている感じが
おもしろかった。それがインプットでしたが、
10歳になって、次の段階に入ったと感じ、
今は、映画を見たり、
本を読んだりする時間をつくってます。
ずっとその暇がなかったんです。
ちゃんと生きる。
- 伊藤
- そういえば、坂井さんはどうして女優さんを?
すごくたいへんな仕事じゃないですか。
- 坂井
- たしかにそうですよね。
この仕事を選ぶって、なんだか変だなって、
自分でやっていても、そう思います。
わたし、フランスの女優さんに憧れたんです。
おかしいですね、若い時って。
憧れたことを、やりたいことに結びつけちゃう。
- 伊藤
- フランスの女優さんに憧れるの、わかります。
姿かたちのきれいさだけじゃなくて、
ほんとに人間を見ている感じ、
そのままが映し出されている感じがしますから。
- 坂井
- そうですよね。
- 伊藤
- それは映画がきっかけ?
- 坂井
- はい、映画がきっかけです。
それこそ『Olive』の誌面で
紹介される女優さんたちが、
みなさんかわいくて。
でも‥‥娘がやりたいって言ったら、
やって欲しくないということがバレないように、
でも全力で止めますけどね。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 坂井
- ふふふふ。
- 伊藤
- 大変だから?
- 坂井
- はい。うん‥‥、不思議な仕事ですよ。
- 伊藤
- へぇぇ。
- 坂井
- 楽しいですけれども、変だな、って思います。
でもきっと、どんな職業も、
その人の生き方みたいなものが
出るものですよね。
- 伊藤
- そうだと思います。
そしてそれが一番多くの人の目に触れるのが、
お芝居の仕事かもしれませんね。
生き方がよくないと、
結果がよくならない職業だという気がします。
とくに舞台だと、生ものだから、
毎回違うじゃないですか。
- 坂井
- そうですよね。
芝居の仕事は、浮き沈みのある
厳しい世界ですし、
長く続けられてきたことが
ラッキーだなと思っています。
それだけに、いつでも辞められるっていう心を、
どこかで持っているんですよ。
- 伊藤
- へぇぇぇ! そうなんですね。
- 坂井
- 自分の意思さえあれば、
そして仕事さえあれば、
一生、続けられる仕事です。
けれども、
「絶対、ここじゃなきゃ」
って思ったらダメだ。
そういうふうに、思っています。
- 伊藤
- Tシャツが似合わなくなった、みたいに、
女優さんとしての転機もあったんですか。
- 坂井
- 正直、この10年は
子育てが中心になっていたので、
仕事をセーブしていたんですね。
そのこともあって、
「自分」を見ていなかったんですよ。
なんだろう、不器用なんでしょうね、
子育てに夢中だった。
けれども、たまに「出る」仕事をして、
パッと自分を客観的に見た時に、
「え?」って思ったんです。
それはTシャツが似合わなくなったのと近くて、
心持ちだったり、意識だという気がします。
この年齢になると、自分への意識があるかないか、
なにを選ぶか選ばないかみたいなことを
キチッとしていないと、
Tシャツが似合わなくなる、
それと同じことが仕事でも言えるんでしょうね。
けれども、それって、本当にちょっとしたことで、
変わる気がするんですよね。
なんだかすごく抽象的なんですけど。
- 伊藤
- そっか、女優さんとしての転機というよりも、
やっぱり、生きていくなかで、
いろんな転機があるんですね。
それが仕事に反映する。
- 坂井
- そう。生きていくほうが中心だと思います。
- 伊藤
- うんうん。そうですね。
- 坂井
- だから、ちゃんと生きていないと、
どんな仕事でも、伝わっていかない。
- 伊藤
- それは、きっと、
「ちゃんと食べる」ことにも繋がりますよね。
- 坂井
- そうですよ、ちゃんと食べなくちゃ!
- 伊藤
- ちゃんと食べている、
ちゃんと寝ている人って、
やっぱり元気ですよね。
すこやかだし。
- 坂井
- そうですよね(笑)。
- 伊藤
- わたしも時間をいとわずに
がむしゃらに仕事ができる時期があったけれど、
最近はもう、寝る時間を確保しないと、
無理な歳になりました。
そのかわり、朝、日の出とともに起きてね。
- 坂井
- そんなに早く?
- 伊藤
- 起きちゃうの。
今日は4時半ぐらい。
- 坂井
- 寝るのは何時ですか。
- 伊藤
- 9時半とか、10時とか。
その時間になると、
もう使い物にならなくなっちゃう。
- 坂井
- (笑)。
- 伊藤
- 以前、家に人がよく遊びに来ていたときは、
9時過ぎると、私がコックリコックリ。
みんなは元気に飲んでいるのに、
「そろそろ帰ろっか」って。
- 坂井
- (笑)じゃあ朝、4時半に起きて、
すぐお仕事を?
- 伊藤
- はい、夜のうちに来ていたメールに
返事をしてから、原稿を書きます。
その時間がいちばん書けるんですよ。
会社員のみんなが出社する頃には、
わたしの原稿仕事は終わっています。
それぞれの担当編集者の出社時間までには
わたしの原稿がメールで届いている、
というリズムにしたくて。
「伊藤さんの原稿は朝イチに来る」
って覚えてくれているんじゃないかな。
- 坂井
- ということは、
いろいろなお仕事を、
午前中にやってしまう?
- 伊藤
- そうですね、原稿を送ったら、
ストレッチをして、床の拭き掃除をします。
そうすると、ボチボチ返事が来はじめるので、
それに返信をすると、お昼くらいかな。
- 坂井
- すごい!
ジェーン・バーキンになれなくても。
- 伊藤
- いま、坂井さんは、
お洋服はどういう感じがお好きなんですか。
- 坂井
- それが、ユニセックスに着たいような
Tシャツがだんだん似合わなくなって(笑)。
今日は家からボーイッシュ感のある
Tシャツを着て来たんですけど、
「ああ、似合わないなぁ」と思いながら‥‥。
- 伊藤
- わたしもそう。
なんだか、応援チームの
おそろいのユニフォーム、
みたいになっちゃうんです。
- 坂井
- そういうTシャツが似合わなくなったのって、
ある日突然だったんですよ。
いつものことのように着たつもりが、
「え? なんか違う?」と。
変わってきているんですよね、確実に、昔とは。
これまで好きで、似合うと思って
着てきたものとは別に、また新たに
自分の似合うものがあるらしいって思いました。
- 伊藤
- 急にある日突然これが、っていうのは、
わたしも何回か経験しています。
「あれ? これ、去年まで平気だったのに、
今年、もう似合わない」とか。
素材とか形とかもそうだけど。‥‥なんだろう?
- 坂井
- 年を重ねるごとに
服はシンプルなものを着るようになりましたね。
目指すところは、なるべくきれいにいるということ。
“かまわない美しさ”を出すのは
どんどん困難になっていくんですよ。
汚いほうが際立っちゃうので(笑)。
- 伊藤
- そうなんですよー。水分もなくなっていくし。
ヘアメイクの草場妙子さんもおっしゃっていました、
私たち世代の女性も、
ちょっとオイルを足してあげれば、
もうちょっと艶っぽくなる、って。
- 坂井
- そういう努力が必要になってきますよね。
- 伊藤
- 坂井さんが、Tシャツについて、
ハッと思ったのは、今年ですか?
- 坂井
- 去年なんです。
- 伊藤
- なにが起こったんだろう。
「そういう歳」だったのかなぁ。
- 坂井
- そうだと思います。
やっぱり、形が変わってくるんですよね。
まず背中が変わってきます。
そうすると、首元が変わってくる。
だからTシャツが似合わなくなったんだと思うんです。
- 伊藤
- 坂井さんは、職業柄、ご自身を客観的に見ますよね。
私たちって、正面からしか見ないけど、
画面に映っているご自分を見てる。
だから「あれ?」っていうのも、
わたしたちより、
気づくのが早いのかもしれないですね。
- 坂井
- そうですか、でも、油断してましたよ。
だって、ジェーン・バーキンを見ていて、
「年齢をかさねても、Tシャツがずっと似合ってて、
カッコいいなぁ」なんて思って、
そうなるつもりでいたわけです。
そんなふうに歳をとりたいって。
ところが実際は、
「え? ちょっと待って、あれ?」
みたいになっていく(笑)。
- 伊藤
- わたしも30ぐらいの時、
50歳になったら、
樋口可南子さんになれると思ってました!
友達と、「ならなかったね~」(笑)。
- 坂井
- そういう「理想」がありましたよね。
- 伊藤
- ‥‥でも、当たり前ですよね。
なぜそんなふうに思ったのかなあ(笑)。
ところで、坂井さん!
- 坂井
- ハイ。
- 伊藤
- ビューティーの秘密を教えてほしい。
- 坂井
- ビューティー! 秘密ですか?
んーっ???
- 伊藤
- なにかしてますか。
ジムに行ったりとか。
- 坂井
- はい。ピラティスをしてます。
- 伊藤
- 週イチとか?
- 坂井
- できることならば、
毎日やったほうがいいんですって。
だから、行ける時はなるべく行く。
- 伊藤
- おうちでとかでもするの?
- 坂井
- そこを考えたんです。
ほんとうに毎日やることが大事ならば、
家ではさぼっちゃう、
でも遠出しないと行けない場所も行かなくなる。
だったら家の近所に
スタジオを見つけるべきだと。
それで、歩いて行けるところに通ってます。
- 伊藤
- ということは、毎日。
- 坂井
- はい、行ける時は。
- 伊藤
- こういうことが、聞きたかった!
- 坂井
- そんな(笑)。
- 伊藤
- でも、お忙しいですよね。
空き時間を見つけて?
- 坂井
- ほんとに徒歩1~2分の所なので、
子どもが塾に行っている間に、
パッと行って、帰ってくるんです。
そういうんじゃないと続かない。
そして、そういうふうにしたら、
わりと行きますね。
いままでは、先生を選んでとか、
紹介してもらってとかだったんですが、
ちょっと遠くだと時間が作れない。
- 伊藤
- ふむふむ。
- 坂井
- あとは、お水を飲むといいんですって。
パックも。
水分、大事です。
- 伊藤
- 水分を補うということですね。
- 坂井
- はい。わたしたちの年代は、
水分補給は、暇さえあれば
やったほうがいいみたいです。
でも、伊藤さん、お肌、きれいですよ。
逆に聞きたいです。エステは行かれてますか?
- 伊藤
- エステは、3週間に1回、
それこそ家から1~2分の所に行ってます。
でも、やっぱり日々の水分補給ですよ。
わたしも家のパソコンで仕事をするテーブルの
すぐそばに化粧水やら美容液やらを置いて、
「あ、なんだか乾いた」と思ったらすぐ肌に補給。
水も1日に2リットルくらい飲んでいます。
- 坂井
- そう、保湿、すごく大事みたいですよ。
テレビを見ながらでも、
常に横に置いて、やったほうがいいんですって。
伊藤さん、運動は?
- 伊藤
- わたしは、ジムに週2で行っています。
そうしたら、かかとがツルツルになったの!
- 坂井
- やり始めてから?!
- 伊藤
- はい。運動して筋肉が増えて血行が良くなると、
肌の生まれ変わるタームが変わるんですって。
運動したことで、
べつに痩せてはいないですけれど、
肌はちょっとよくなったかもしれない。
- 坂井
- 代謝が良くなるというか、巡りますよね。
わたしも運動するのとしないのとで、全然違います。
変わってきましたよ。
それこそそのピラティスを始めたのって、
ことしの春ぐらいからなんですけれど。
- 伊藤
- え? ついこの前?
- 坂井
- はい。
その前までは、ジムに行ったり、
加圧トレーニングが
時短でできるスタジオに通ったり。
- 伊藤
- ふむふむ。メモメモ。
ピラティスでしょ、
うちからと外からで水分補給。
マメですよね!
- 坂井
- 一応、表に出るからには、
最低限の努力はしないと、と。
いいんですよ、どんどんここから
いい感じに緩やかに老けていけたらと、
女優としても思っているので。
ただ、ちょっとの努力は必要なのかなって。
- 伊藤
- そっか、女優さんって、
セリフをしゃべるだけじゃなくて、
その人の人生を表現するみたいな、
そういう職業ですから、
いい感じに年をとっていくというのも
大事ですよね。
失敗しなくちゃ。
- 伊藤
- 25歳の甥っ子が言うんです、
「Tシャツの正解が知りたい」って。
男の子、言いがち?
- 坂井
- 伊藤さんは、その時、甥ごさんに
何とおっしゃったんですか。
- 伊藤
- 「失敗しなさい」。
- 坂井
- ああ、素敵!
でも、そうですよね。
- 伊藤
- たぶん甥っ子としては、
「ユニクロのこれを買いなさい」みたいに
スッキリとした答えが返ってくると
思っていたんですよ。
だから「えー」みたいな反応だったけれど。
- 坂井
- でも、訊いちゃうでしょうねえ。
叔母さまにまさこさんがいたら(笑)。
- 伊藤
- なのにこの叔母はキッパリ(笑)。
でも「正解」なんてないんですよ。
Tシャツひとつとっても、
肌の感じも違えば、体格も違うし、
いつ着るか、どう着るかの
状況だってあるわけだし、
なにが正解なのか、分からない。
- 坂井
- みんなが正解のものなんて、ないですよね。
- 伊藤
- そう。せめて鏡の前で合わせてみて、
自分で決めないとね。
自分のお金をつかって、
はじめてわかることがある。
- 坂井
- そうですよ。
やっぱり失敗はすべき。
けれども、そのなかから自分だけの正解を
見つけたかったりするときには、
店員さんの存在って大事ですよね。
プロレスでもいい解説が
すごく大事だったりするように。
- 伊藤
- プロレス(笑)!!!
- 坂井
- そう、プロレス(笑)。
店員さんも、ちょっとした一言とか、
着方のアドバイスとかって、
いいプロレスの解説のように、
本当に、重要だと思うんです。
- 伊藤
- そっか!
- 坂井
- 甥ごさんも、そこがスタートで、
けっきょく選ぶのは自分だ、
自分でキチッとしなきゃいけないなって
わかってくれたんじゃないかなって思います。
- 伊藤
- そうだといいなあ。
でもweeksdaysの商品は、
通販であるということもあり、
お客様に失敗してほしくないんです。
試着してもらうことができないので、
その分、わたしが買って、着て、
ここはこうだったっていうのがわかるよう、
原稿を書いて伝わるようにしているんです。
- 坂井
- それ、伝わってますよ!
- 伊藤
- そうだといいな。
同い年ぐらいの人には、
とくに伝わりやすいかもしれないなって思います。
坂井さんはそこにぴったりだったのかも。
- 坂井
- 着用レポートもすごく役に立ちますよ。
どこか自分に当てはまることがあれば、
「じゃあ、これを選ぼう」ってなる。
- 伊藤
- いまはいらないな、
という人に無理にすすめるつもりはないんですが、
ほしいな、と考えてくださっているお客様の背中を、
一押しするみたいなつもりで。
- 坂井
- 「誰でもいいから買って」ではないから、
キチッと売れるんじゃないかな。
- 伊藤
- そう、「誰でもいいから」では、売れないですよね。
坂井さんは、うんと若い頃、
どんなふうに買い物をしていましたか?
- 坂井
- すごく若い時で言うと、
『Olive』っていう雑誌がすごく好きで。
『Olive』が言うなら!
みたいなところで買い物をしていました。
- 伊藤
- そっか!
- 坂井
- すごく影響を受けました。
『Olive』が薦める映画は絶対観る、とか。
- 伊藤
- そうそう、ありましたね。
わたしも、映画はやっぱり『Olive』の
影響が大きかったな。
- 坂井
- はい、フランス映画、ヨーロッパの映画。
憧れました。
- 伊藤
- でも服にかんしては、
『Olive』のモデルさんはかわいいけど、
わたしにはちょっと無理かも? みたいな、
そういう感じで見ていたかも。
- 坂井
- すごい、すごく冷静ですね。
たしかに当時の『Olive』のスタイリングって、
今思えば、とても難しい。
- 伊藤
- ううん、坂井さん、ドンピシャですよ!
ぜったいに、かわいい!
- 坂井
- でも、ありましたよ、
欲しくて買ったけれど、
「あ、やっぱ、似合わないんだ」。
- 伊藤
- すっごくおっきいコサージュとか?
- 坂井
- そうそう(笑)!
誌面で見ているぶんにはかわいいのに。
- 伊藤
- 夢を見てるみたいな感じでしたよね。
だから「自分はちょっと」って思っちゃったのかな。
- 坂井
- それ、ちゃんと冷静だと思います。
私、そのお店を探しに原宿へ行ったりして、
買ったはいいけれど、
いざ、着てみると「あ、全然似合わない」。
- 伊藤
- ううん、絶対、当時の坂井さんだったら、
人から見たら似合っていたと思う。
自分に「しっくりこなかった」だけかも?
でも、考えたら、
わたしたちが若い頃は雑誌だったけど、
今の若い子って、インスタとかなのかな、
参考にするものって。
- 坂井
- そうだと思います。
そして憧れの対象は、有名だから、とかじゃなく、
ほんとに好きなものを発信している人。
ちゃんとみなさんアンテナを張って
見ているって思います。
なぜものを買うの?
- 坂井
- そうそう、このかご、飛行機の
機内持ち込み手荷物としても、
きっと、便利だと思いますよ。
ね、梅山さん? たしかそうおっしゃってた。
- 伊藤
- これで、飛行機に?
- 梅山
- 入りますよ!
「ミニ」なら前の座席の下に、
「小」は上の荷物棚に、持ち手を曲げて。
- 伊藤
- そっか! 持ち手を曲げれば、直方体に近いから、
荷物がいっぱい入ったまま収納できますね。
プラスチックだから
持ち手を曲ることに不安がないですし。
- 梅山
- わたしの家では、棚の高さが
「小」にぴったりなので、
持ち手を折って、タオル収納にして、
引き出しみたいに使っていますよ。
でも「持ち手がなくてもいい」ということじゃなく、
あったほうが、もちろんいいんです。
高さのあるスペースにはそのまま入れています。
それからね、これ、底が平らで、
安定感がばつぐんでしょう?
感激したのはケーキを買った時!
すごく、便利なんですよ。箱物の安定感。
- 伊藤
- たしかに、ケーキとかお弁当って、
横に倒れちゃうと悲しいですものね。
- 坂井
- そうですよ。
- 梅山
- やわらかいエコバッグだと、
けっきょくそうなっちゃうでしょう?
- 坂井
- 梅山さんの言うことは、
ほんとに説得力があります。
いっつも使っていますものね。
- 伊藤
- スタイリストって、
物の移動がすごく多いので、
運ぶ手段ごと気になるんですよ。
- 坂井
- 使ってみてわかったのは、
伊藤さんがすっごく考えられて
サイズを決めたんだろうなということでした。
やっぱり、です。
すごく、入れやすいんですよ。
- 伊藤
- そっか。良かった、ほんとうに。
でもあんまり褒めないでください(笑)。
- 坂井
- (笑)いえ、褒めます。
やっぱり物をつくるって、
「誰が」ということは大事だと思うんです。
生き方みたいなことに繋がるじゃないですか。
つくる人が、どういうふうに生きてるか。
伊藤さんのインスタからは、
食べることが好き、美味しいものが好きということが
伝わってきますよね。
ステイホーム中、拝見していて、
いつもご飯の写真を載せてくれていて、
それが「生きる力」に思えたんですよ。
わたしたちはこんな状況でも生きているぞ、
っていうことが発信されているように見えた。
食べている人はすごく信用ができるというか。
そういうところでも、ファンなんですよ。
‥‥って、ごめんなさい(笑)、
たくさん褒めちゃった。
- 伊藤
- ありがとうございます! 褒められちゃった(笑)。
それでね、同年代としてお聞きしたいんですが、
坂井さん、こんなものが欲しいな、
なのに、世の中にないなぁ、
って思うものってありますか?
- 坂井
- ‥‥うーん? どうでしょう。
- 伊藤
- じつは、わたし、発見したの。
マスクをしつつ、口角をあげる道具がほしい!
- 一同
- (笑)
- 坂井
- それ、すごい(笑)! 欲しい!
- 伊藤
- この機会に、マスクの下で
表情を若々しくトレーニングするの。
マスクを外す時期がきたら、
「あれ? なんか(口角)上がってない?」
みたいな。
‥‥って、そういうくだらないことでも
いいんですけど(笑)。
- 坂井
- そういう一石二鳥な感じ、面白いですね。
でも、すぐには思いつかないかも。
伊藤さんは「今は無理だけれど」、
でも、いつかつくりたいものってあるんですか。
- 伊藤
- 家。
- 坂井
- 家!
- 伊藤
- ゆくゆくは家を作って売ってみたいの。
- 坂井
- 家を?!
- 伊藤
- 今は言ってるだけ、なんですけど。
間取り、建材、建てかた、
設備機器、インテリア、
家電、食器や調理道具。
スタイリングのアドバイスもふくめて、
ぜんぶまるごとやってみたいんです。
- 坂井
- それは素晴らしいおうちができそう!
私たちの年代って、いろんなものを見てきたり、
買ったりしてきましたよね。ちょうど私は、
「じゃあこれから、なにを買うのかな?」っていう、
そんな頃に差し掛かっている気がしているんです。
でも余計なものは、もう物も増やしたくない。
良い物だけ、本当に自分が気に入ったものだけ欲しい、
っていうほうに行ってるんです。
だから、なんていうんだろうな、
物を買うことって、買うたのしみもあるけれど、
その物によって豊かになるという比重が大きくて。
しかも使いやすいっていうことがとても大事。
だから「欲しいものはありますか」という質問に
すぐ自分の答えが出てこないのは、
たぶん、自分が考えるよりも、
伊藤さんの提案が嬉しい、
って思っているからなんじゃないかなって思います。
- 伊藤
- ありがとうございます。
坂井さんも、これまで
いっぱい買い物をしてきたと思うんですが、
大きな失敗なんて、なさいましたか?
- 坂井
- わたし、たくさん失敗していますよ。
でもこの10年は、そもそも自分のための
お買い物が少なかったと思います。
というのも41歳で子どもを産んだので、
40代が子育ての期間だったんです。
自分のことよりも、子どもが中心。
今、子どもがちょうど10歳になって、
ここから先、もうちょっと、
いままでできなかった10年間のインプットをしようと、
やっと外を見始めたくらいかもしれません。
- 伊藤
- わかります!
わたしもそんな時期がありました。
娘が、今、22歳なんですけれど、
「ちょっと、ひと山、超えた感じ」が
10歳の年だったという気がします。
その頃は、買い物の失敗が多かった。
でも、その失敗は良かったと思っていて。
失敗して、悔しい思いをしないと、
次に行けないっていうか。
いい買い物をしたっていうのと同じくらい、
失敗も良かったって思うことにしています。
スタイリストをしてて、そう思います。
- 坂井
- 買ってみることが大事。
- 伊藤
- そう、その時は良かった買い物でも、
「今になると、この鍋は重かったな」とか。
もっと若い頃は平気だったから、
色違いで買っていたりして。
洋服もそう。「あ、これ、いい」と思って、
同じサイズだからと色違いのものを
試着せずに買ったら、
その色は似合わなかった、なんていうことも。
アイデア会議。
- 伊藤
- 坂井さんは「ベトナムのかご」の
どういうところを
気に入ってくださったんですか?
- 坂井
- 伊藤さんが高さや大きさを
考えられたっていうところですよ。
絶対、いいはず! と思って。
原型があったと聞きますが、
最初の出会いはどんなことだったんですか。
- 伊藤
- ベトナムに初めて行った25年ぐらい前、
市場でこれの原型のようなかごを見たんです。
それは余ったカラーテープを使って編んでいたので、
すっごくカラフルで、
同じ色の組み合わせがふたつとなかった。
わたしはその時、それには目もくれず、
自然素材のかごを探していたんですね。
ところが、ベトナムにはそういうかごを
全然売っていなくて。
聞くと、湿度が高過ぎて、
自然素材のものはすぐカビちゃうんですって。
だからプラスチックのかごは、
気候に合って生まれたものだとわかりました。
そこから愛着がわいたんです。
「weeksdays」のこのプロジェクトは、
ベトナムのホーチミンに住んで仕事をしている
田中博子さんにディレクションをお願いして、
進めることができました。
白のかごを最初に作ったんですが、
再発売のたびに色を足して、
だんだん増えていったんです。
- 坂井
- ふうむ。
- 伊藤
- 完売すると追加生産と新色を依頼するんですが。
ベトナムもどんどん変化をしていて。
外国資本が入ってきているから、
工場で働く人たちが
より良い条件のところに転職して、
人手が足りなくなり生産性がおちたり、
編み手を辞める人が出てきたり、
工場そのものがなくなってしまったり‥‥。
町に近い工場ほどその影響が大きくて、
そのたびに、田中さんが、
別の町に探しに行ってくれるんです。
再生産でつくる工場がかわることもあるので、
かたちは一緒でも、微妙に色が違うとか、
そういうことが起きます。
「赤」も、以前はくっきりした明るい赤でしたが、
今回の販売ではおちついた赤になりました。
- 坂井
- 最初につくるとき、
伊藤さんが大事にしたのは、
どんなことでしたか。
- 伊藤
- 自立して(倒れずにまっすぐ立つ)、
口も底も広く、使わないときは重ねて
入れ子で収納できることですね。
自分がスタイリストだということが
この形に影響していると思います。
物をたくさん持って移動するからですね。
- 坂井
- このかご、
おうちで収納として使うのもいいですよね。
- 伊藤
- そうそう!
坂井さんなら、どうやって使いますか?
- 坂井
- まず、タオル、でしょうか。
ブランケットも。
あとは、車でものを運ぶときですね。
今、子どもが小学生なので、
なんだかんだ車での移動が多いんです、
後ろの席にいろんな飲み物や着替えを積むのに、
このかごはとても便利です。
載せやすくて、取り出しやすく、
安定感もありますよね。
- 伊藤
- これがそのまま大きな
クローゼットの引き出しみたいな感じですよね。
引き出しをそのまま動かせるみたいな。
- 坂井
- そう!
スーパーマーケットに行くのにもいいですよ。
- 伊藤
- そうなんですよ!
けっこう重いものを入れても大丈夫。
- 坂井
- やっぱりベトナムの人も、
生活の一部分として使っているんですよね。
- 伊藤
- そうなんです。
おじちゃんとか、おばちゃんとか、
ボロボロになっても使っていますよ。
自然素材の国でも、たとえばフランスで、
おじさんがマルシェかごのボロボロのを
持っていたりしますが、
同じことなんじゃないかな。
生活の道具。
そうだ、使い方としては、オフィスでも。
- 坂井
- オフィス?
- 伊藤
- たとえば「ほぼ日」は今、フリーアドレスなんですって。
決まった机がないので、朝、自分のロッカーに行って
その日に使う仕事の道具を持って
「今日の居場所」まで運ぶんだそうです。
このかごは、社内の移動に便利だと、
使っている人が多いんですよ。
- 坂井
- そうなんですね!
- 伊藤
- そう。何が入っているの? って訊いたら、
ノートパソコンにケーブルやコネクタ類、
その日の資料、お財布とカードキーと携帯、
化粧ポーチ、そんな感じでした。
たしかに、わたしも外で仕事の時は、
パソコンや資料を入れて、車で移動します。
ほんと、机の大きな引き出しを
ひとつ持っていくみたいな感じ。
- 坂井
- へぇぇ。
- 伊藤
- 「ほぼ日」に行って、使っている人を見ると
「ありがとうございます」って言うんです。
「今度、黒も出ますから!」って営業したり(笑)。
「ほぼ日」社内で使ってくださっているのは
ほとんどが女性なんですけれど、
黒いのができたら男性にも持ってほしいな。
- 坂井
- ああ! たしかに、カッコイイですね。
これを持っている男子って。
- 伊藤
- ランドリーかごにしてもいいかなと思う。
- 坂井
- 持ってこいですね。
きっと、プレゼントにもいいですよね。
- 伊藤
- 男子にプレゼント? なるほど!
シャツとかを入れて
クリーニング屋さんに持って行ったりとか、
いいかもしれないですね。
ふふふ、そういう男性客も取り込もう!
- 坂井
- (笑)伊藤さんは、
おうちでは、どういうふうに置かれてるんですか。
なにも入れていないときは、重ねて?
- 伊藤
- はい。白も赤も持っているんですが、
使わない時は、重ねて、納戸に仕舞っています。
- 坂井
- そう、重ねられるのがいいんです。
このかごは、
さらに変化していく予定はあるんですか。
- 伊藤
- 色だけじゃなく、形ですよね。
いま、大・小・ミニの3つは、
いいバランスだと思うんですけれど、
逆に、坂井さん、使ってみて、
「こういうサイズがあったらいいのに」
と思ったりしましたか?
- 坂井
- 言ってもいいですか?!
あの‥‥もっとちっちゃいのが欲しいです。
- 伊藤
- どのくらい、ちっちゃいんだろう。
「ミニ」の内側にもう1個入るくらい?
もっとかなぁ?
- 坂井
- この子(「ミニ」)を仕事に行く時に持って、
その中に、さらに1個入れたいんですよ、
うんとちっちゃいのを。
そうですね‥‥ほんとに、
長財布と携帯が入ればいいんです。
それだけ持っていれば、
(楽屋を出て)買い物に行けるような。
- 伊藤
- それ、かわいいかも!
「真紀モデル」、できるかも?
- 坂井
- ほんとですか。
- 伊藤
- もしかしたら「ミニ」の短辺が、
長辺になるくらいでも
いいかもしれないですね。
- 坂井
- わぁ、それ、すごくいいかも!
- 伊藤
- で、深さは、もうちょっと浅くて。
このかごのヘビーユーザーである
梅山さん(坂井真紀さんのスタイリスト)は
ほかにどんなサイズがあったらいいと思いますか。
- 梅山
- 「現場バッグ」として
ガムテープやお裁縫箱を入れたいんです。
そうすると「ミニ」でもちょっと大きすぎて。
- 伊藤
- ああ、なるほど。
- 梅山
- 「ちょっと小さめ」があったら、
現場でも持ち歩くと思うんです。
- 伊藤
- 分かりました、
おふたりのリクエストは2サイズ、
「ミニ」のひとまわり小さいものと、
超スモールの「真紀モデル」ですね。
考えます!
ああ、こういうことなんですよね。
雑談の中からものが生まれる。
ステイホーム中、みんなで会っての
ミーティングができなかったんです。
ワイワイ、キャッキャ、みたいな、
ただのおしゃべりに見えるような中から、
生まれるものって、「weeksdays」は多いんです。
いろんなヒントが出てくる。
- 坂井
- そうなんですね。
参加できてうれしいな。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
8月5日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
ベトナムのかご
販売するたびに人気のベトナムのかご。
気軽に使えて、丈夫なところも好評です。
品切れしていた白、シルバー、赤に加えて、
新色の黒も登場します。
ベトナムではおなじみの
プラスティックのテープで編まれたかご。
市場や街で使い込まれた様子を見て
「いいなぁ」と思っていたのですが、
赤に黄色にネイビーと、
ひとつのかごの中にいろんな色のテープが使われていて、
とにかく派手。
現地で持つのなら、様になっていいのですが、
もう少し落ち着いた色合いがあったらと思い、
できたのがこちらです。
間口が広く、
入れたものは一目瞭然。
丈夫なので、本や器など重いものを入れてもいいし、
大きな方には、かさばるブランケットなどを入れても。
買いものに、ピクニックに。
‥‥あらゆる場面で活躍してくれます。
(伊藤まさこさん)
Stilmodaのフラットシューズ
シンプルな形で歩きやすいフラットシューズ。
ブラックとホワイトが再入荷します。
むだな装飾は一切なし。
スッと履きやすく、
どの角度から見ても美しい。
これぞ、靴のスタンダード。
カジュアルにも、
またちょっとおしゃれをしたい気分の時にも
コーディネートしやすいのはシンプルな形だからこそ。
革がやわらかく歩きやすいので、
足の負担を感じさせないところもうれしいのです。
(伊藤まさこさん)
uka beige study two 2/2
「ベージュは、繊細で上質という印象。
また、とても女性らしい色だなと思います」。
と草場さん。
なるほど、ベージュのネイルを塗った足元は、
たしかにいつもより女らしい。
今回、草場さんに取材をして、
「ベージュ色のネイル開眼」をした私。
一見、何も塗っていないような‥‥
でもよくよく見ると、美しい足元。
今年の夏は、ベージュのネイルが多くなりそうな予感です。
(伊藤まさこさん)