未分類カテゴリー記事の一覧です

額装のすすめ。

未分類

美術館のショップやギャラリー、
古書店で、
なんとなく買い集めていた
リトグラフや絵。

気に入っているけれど、
もともとついていた額が
部屋に合わなかったり、
額装されていないのもあって、
どうしたものかと思っていました。

その都度、額装をしておけば
こんなにももて余さなかったのになぁ‥‥
とは思うけれど、
なんとなく日々の忙しさにかまけて、
先延ばしにしていたのです。

そうだ、こんな時こそ、
額装をお願いしに行こう! 
と思いたったのは、
ステイホーム中のある日のこと。

縁は木で統一し、
絵とマットのバランスを考えて‥‥。
オーダーしてから、
3週間ほどでできあがると聞き、
その日をたのしみに待ちました。

さて、
仕上がった額の一部がこちら。


▲古書店で手に入れたマチスの画集の1ページ。


▲50年くらい前の日本の型染め作家の作品。
雪のようなモチーフが今の季節にぴったり。


▲もともとついていた白いフレームを木に。
動物柄がたのしげな猪熊弦一郎の版画は玄関に飾ることに。

うれしくなって、
全部かけたくなってしまうけれど、
それは欲張りすぎというもの。
季節や天気、
その時の自分の気分に合わせて、
1枚1枚、ぴったりなものを飾りたいな、
と思っています。

そこに絵があるだけで、
部屋の景色はずいぶん変わるものだから。

(伊藤まさこ)

フックをつける。

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今の家に越してすぐ、
バスルームの壁に、
フックをみっつつけました。

じつは、
そこにはタオルハンガーが取りつけてあったのですが、
存在感がありすぎて、
どうも気持ちにしっくりこなかったのです。

タオルハンガー、
いいのないかな? 

いろいろ探しましたが、
素材はいいけれど、サイズが合わない。
サイズは合うけれど、素材がいまいち‥‥
と、どれも帯に短し襷に長し。
そこでフックに白羽の矢を立てた(大げさ?)
というわけです。

フックにしたことで、
見た目はすっきり、
ドライヤーを入れた巾着袋をかけることだってできる。
これってなかなかいいじゃない? 

それに気をよくした私は、
今年の初秋、
ベッドルームの改装をした時に、
ベッドルームと、
台所にそれぞれ3つずつ、
フックを取りつけることにしました。

ベッドルームにはバッグや服を、
台所には掃除道具をかけて。

これが一目瞭然でなかなかいい。
空いている壁って、
収納の有効利用になるのだなぁと、
しみじみしたのでした。

我が家は、
部屋のドアはどこも開けっ放しなことが
多いのですが、
普段見えていないドアの裏側にも、
フックを取りつけたらどうだろう?
今は、そんなことを考えています。

家のことをあれこれ考えるのは、
たのしいものですね。

(伊藤まさこ)

見せたくないもの。

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家の改装をしていると、
ハタと気づくことがあります。
それは、
ドアノブや扉の取っ手、
コンセントカバーなどのこまごましたパーツが、
気軽に見つけられないということ。

ドアノブと取っ手は、
真鍮の古いものを見つけてやれやれ。
今の懸念事項は、
コンセントカバーをどうするかということ。

間に合わせでは買いたくないなぁと思いつつ、
今の家に越して早2年。
気になるものは、ひとまず隠すことにしています。

リビングの窓辺に取りつけた
ライトのコンセントは、
本を置いて目隠し。
これだけですっきり見えるものです。

その他、コンセントの差し込み口の前に、
絵を置いたり大きなかごを置いたり。
コンセントって、
必要ではあるけれど、
なにも家の中にこんなにいらないんじゃないか? 
とも思う。
いつか一から家を作る機会があったら、
この問題は、
家の間取りや、
壁の質感を決めるくらいの重要案件です。

さて、
それ以外に気になるものといえば、コードの類。

ダイニングに置いた丸い木のボックスは、
背面に穴を開けて、中にWi-Fiルーターを入れました。
(穴にコードをさして、
後ろのコンセントにつなげています。)
時々使う延長コードもこの中に。

古いかごの中には、
パソコンのコードやスマートフォンの充電器を
入れています。

電気関係のものは、
必需品ではあるのだけれど、
それが目に見えるところにあると、
どうにも落ち着かない。

それらを隠してくれる、
かごや木のボックスには、
日々、本当にお世話になっているのです。

みんなはこの問題、
どうしているのかな。
こんなに気にするのは私だけなのかしら?

(伊藤まさこ)

木にもうるおいを。

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乾燥が気になる冬。
顔の保湿はもちろん、
朝晩、全身にボディクリームを塗って、
せっせとケアをしています。

すると目につくのが、
椅子やテーブルなどの木製品の乾き。

ちょっと放っておいたら、
あら大変。
自分にばっかりかまけてごめんね、
と思わずにはいられないほど、
カサカサになっているではありませんか! 

古びたシーツをジョキジョキ切って作ったウェスと、
オイルを出して、いざオイル塗り開始。


▲私が使っているのは、
ドイツ製のケンドリンガーの、
木製品用ポリッシュとワックス。
ラベルのデザインとナチュラルな香りが気に入り。

まずはダイニングから。
テーブル、椅子、木の箱‥‥。
見回してみると意外にあるんです。
木のものがいろいろと。


▲缶の中は、こんなかんじのクラシックなワックス。
フローリングの艶出しにもいいそう。

うれしいことに、
肌の手入れと一緒で、
手をかけた分だけ、きれいになる。
きれいになると、張り合いが出る。

ダイニングのあとは、
リビング、ベッドルーム‥‥と進んで、
気がつけば家中の家具がピカピカ。
一心不乱で作業に集中するから、
気分転換にもなって一石二鳥です。

窓を開けて、半日ほど風通しのよい場所に置いたら、
定位置へ。
今日からまたどうぞよろしくね。

(伊藤まさこ)

テーブルの上には。

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数日、忙しくしていたら、
ふだん何も置かないぞと
心に決めているテーブルの上が、
読みかけの本や、
レシート、郵便物などでいっぱい。
あっという間に雑然としてしまいました。

レシートは箱にしまう。
郵便物はいるものといらないものに仕分けして、
いらないものはゴミ箱へ。
パソコンは1日の終わりに閉じて棚にしまう。

時間に余裕のある時だったら、
すんなりとできるそれらのことが、
なかなかできない。
その雑然とした光景を横目に見ながら、
数日間過ごした時の、
居心地の悪さといったら!

時間に余裕を持つことは、
心のゆとりにも関係してくるものなのだということを
痛感したできごとでした。

ふだん何かと忙しい12月。
今年は、
「予定を詰め込み過ぎない」と心に決めて、
家にいる時間を増やしました。

時間に余裕のある今、
テーブルの上はすっきり、さっぱり。
この光景を見ては、
同じことは繰り返さないぞ、と肝に銘じています。

レシートや領収証、
ポストカードや切手、
麻ヒモやリボンなどは、
それぞれ仕分けして、
このグレーの箱に入れています。

「コシャー箱」と呼ばれるこの箱は、
フランスの公的機関や公立の図書館で、
公文書を保管するために使われているものとか。

シックで美しく、
さらには用途もすぐれた箱を見るたび、
「さすがフランス」と思わずにはいられません。

箱が重なった姿も、きれいでしょう?

(伊藤まさこ)

寝室の改装、その2。

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ペンキがすっかり乾いたら、
ベッドや椅子を置いて部屋作り。
待ちに待った瞬間です。

壁ができた分、
眠る場所はせまくなったけれど、
気になる箇所がなくなったからか、
かえって広くなった感じ。

「あの棚がなくなるだけで、
ずいぶん部屋の印象って変わるんだね」
とは娘の感想。

棚の中に、
ものがたくさん入っていたからというのもあるけれど、
白と木の色だけになった今は、
すっきりしていて気分がいい。
目覚めもいいし、
寝つきもいい。
もっと早く改装すればよかった! 

壁の奥には、
ラックをふたつ置いて服をかけています。

ふだん、部屋の入り口からは、
その様子はほとんど見えないのですが、
ちょっとのぞき込むと、
奥のラックにかけた服がちらりと見える。

いろんな色の服が見えると、
煩雑な印象になるから、
見える側には、
白いシャツをかけることにしました。

そういえば、と思い出したのが、
積み重ねた雑誌や本の一番上に、
気に入った装丁の本を置く、
という人生の大先輩のお話。
「そうするだけで、すっきりきれいに見えるでしょ」
と涼しい顔でおっしゃっていましたが、
なるほど! 

ほんの少しの工夫で家はもっと過ごしやすくなる。
ほかの誰のためでもなく、
自分のためにする、
「小さな工夫」、
まだまだありそうだなぁ。

(伊藤まさこ)

寝室の改装、その1。

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我が家はリビングとダイニングのほかに、
ふたつのベッドルームがあります。

私のベッドルームは東向きで、
朝は燦々と日が差し込む、
光の具合でいうとなかなか感じのいい部屋。

‥‥なのですが、
3方の壁(部屋は不思議な形をしています)に、
以前住んでいた人が作った棚があって、
それがどうにも気持ちにしっくりこない。
棚のせいで圧迫感があるし、
A4サイズがぎりぎり入らないという
微妙なサイズ感が
ずっと気になっていたのでした。

「改装しよう」

そう思い立ったのは、
秋の晴れた日のこと。

思い立ったが吉日です。
すぐにいつも改装をお願いしている友人に相談し、
棚を取り、
壁を白いペンキで塗ることにしました。


▲このさい思い切って片づけ。
中に入っていた本は、友人知人の元へ。

そこでぜひともしたかったのが、
部屋に目隠しになる仕切りの壁を作ること。
クローゼットにぎゅうぎゅうに入っていた服を、
その壁の奥に持っていき、
見通しよくしたかったのでした。


▲本棚が取り払われ、壁ができた状態。
右側はこの奥に1.5畳ほどのスペースがあります。
パテ埋めして、乾いたらペンキ塗りの工程へ。

壁に使ったペンキは、
ほかのどこにもない、微妙なニュアンスをもつ
イギリスF&B社(FARROW&BALL)のもの。

色は白。
そう、決めていましたが、
このF&Bのペンキ、
白にもグレーがかったものや、
きなり色に近いものなど、
たくさんある。
うーむ、どうしようかなぁとしばし迷って、
No.59のNEW WHITEという、
あたたかみのある白にしました。

このNEW WHITE、
いざ塗ってみると、とってもいい!
朝は、光をやさしく取り込み、
夜はライトの明かりをおだやかに包み込む。

1日のはじまりと終わりを過ごす部屋に、
ぴったりなのでした。

さて、できあがった部屋の様子はまた明日。

(伊藤まさこ)

トイレットペーパー問題。

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欲しいものってなかなかないよね? 
そういう時は、どうしたらいいんだろ。

そんなことを、
かつてweeksdaysのコンテンツで
鼎談したことがありました

私がずっと抱えていたのは、
「トイレットペーパーの包装、
もっとすてきにならない?」
という問題。

買って帰る時、
どこかしらかっこ悪さがつきまとう、
この問題は、
ずっと悩みのタネだったのでした。

ある日、
「この手があったのか!」
と膝を打ったのが、
友人のインスタのポスト

「プラフリー目指して、
トイレットペーパーを見直しました。
箱入り、芯なし、プラフリー、
再生紙のトイレットペーパー」

そうか、これなら持ち歩かないでもいいではないか。
大量なので、
置き場所の問題はあるけれど、
まあそれはどうにかなるさ、と
販売元である春日製紙工業のウェブサイト
さっそく買ってみたのでした。


▲段ボールから出して、9個ずつに小分け。

使い始めて1ヶ月あまり。
芯が出ないので取り替えもらくちんだし、
48ロールあるから
「ああ、もうなくなっちゃうから買いに行かないと!」
と焦ることもない。
何より、あの持ち歩く時の
居心地の悪さがなくなったのが、
うれしいではありませんか。


▲紙袋に分けたら、上部はテープで留めます。

さらにうれしいのは、
1ロール、170メートルあるので、
取り替える回数が減ったこと。

トイレットペーパーに関する、
あらゆるストレスが一気に解消されて、
めでたしめでたし、となりました。

(伊藤まさこ)

台所には何も置かない。

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「うちでごはんでもどう?」
なんて、友だちに誘われても、
席に座って、じーっと出てくる料理を待つ、
ということはあまりなくて、
お手伝いをすることがほとんど。

一緒になって料理をすると、
だんだんと、
その人の台所の流儀というか、
作法がわかるとでもいったらいいのかな。
果ては、食べものとの向き合い方まで
垣間見ることができて、
なかなかに興味深いのです。

料理上手な友人は、
掃除や整理整頓もさすがに上手。
感心することも多くって、
いうならば我が家の台所は、
そんな友人たちのお手本の結集という感じ。

先日、いつもお世話になっている、
年上の友人夫婦の台所で
洗いものの手伝いをした時のこと。
食器の水切りかごがないことに気づきました。

食洗機も使わないというし、
どうしているのか尋ねたところ、
水切りマットを使っているとのこと。

「場所をとらないから広々使えていいわよ」
と聞き、なるほど!

洗った器は、洗い上げたままにせず、すぐに拭き、
マットもすぐに乾すのだとか。
わー、これだったらじめっとせずに済む。
気持ちいいではありませんか! 

思い立ったが吉日とばかりに、
帰ってすぐに買ったのが、
このグレーのマット。


▲水切りかごにする前は、
玉ねぎやじゃがいもなどの
根菜入れとして使っていました。

それと同時に、水切りかごを廃止して、
食洗機に入る小さなかごを
流しの中に置くことにしました。
水切りかごの間にたまる水垢が
気になってしょうがなかったのですが、
これでそのモヤモヤも解消です。


▲置いているのは、リネンのキッチンクロスだけ。

このさいだからと、
壁面のタイルに取り付けていた、
ステンレスのナイフラックもやめて、
流しの下の扉にナイフホルダーを取りつけ、
ガス台まわりに出していた塩や木ベラ、
菜箸、やかんも引き出しにしまいました。

我が家を初めて訪ねてきた人から、
「ほんとにここで料理をしているんですか?」
と不思議がられるほど、
なーんにもない台所になりましたが、
これが本当に気持ちいい。

食事の後片づけが終わったら、
作業台と壁、シンクの中など、
拭けるところはすべて拭き、
これで台所仕事は終了。

どこをさわっても、
さらっとした清々しい台所になりました。

(伊藤まさこ)

冷蔵庫の中は?

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娘が小さかった頃や、
お弁当作りをしていた時は、
時間のある時に、ひじきの煮物やおひたし、
和えものなどを作りおきしていたものでした。

毎回、いちから作るほど、
時間にも、
心にも余裕がなかったのです。

ああ、冷蔵庫の中の景色が変わったな。
そう感じたのは娘が20歳を過ぎた頃。

おたがい、それぞれのペースができてきて、
毎度のごはんを家で食べることが
ずいぶん減ったことがきっかけです。

食材の買いおきも作りおきをすることも
すっかり減って、
今では、ほらごらんの通り、
すっきりさっぱり。


▲一目で何がどこにあるか分かるのが理想。

下段には、
ゆで鶏を作った時にあまったスープを入れた鍋と、
ラーパーツァイ(多めに作った方がおいしいものは
作りおきしています)を入れた保存容器と卵。

野菜室にはレタス半分、
かぶ3個、長ネギ1本、玉ネギが2個、
じゃがいもひとつ、しょうがひとかけら。

扉のポケットに入れるものもごくわずか。
上段は五穀米や押し麦。
2段目は味噌と梅干しと漬けもの。
下段は豆乳と料理に使う日本酒など。

買いおきがないと、
不便なこともありますが、
そこは冷凍庫に入っている食材や
乾物を駆使して乗り切る。
おかげで食材をむだにすることは
すっかりなくなりました。

今日は、鶏のスープを使ったレタスのスープ煮と、
冷凍庫の五穀米とじゃこを使った
チャーハン(卵も入れます)に、
ラーパーツァイを添えて、晩ごはんに。
おかげで、野菜室以外の食材が
すっかり無くなってさらにすっきり。

ところで、よく聞かれるのが、
「冷蔵庫のポケットは
どうしてごちゃごちゃしていないの?」という質問。
これらはすべてワインセラーに入れています。
豆板醤、カレー粉、グリーンカレーペースト、
粒マスタード、スパイス‥‥と、
いろいろなものが入っていますが、
こちらも冷蔵庫同様、時々目を光らせて、
むだを出さないようにしています。

冷蔵庫の中を拭いたら、
外側も拭いて、さっぱり。

さぁ、明日は買いものに行かないとね。

(伊藤まさこ)

朝の習慣。

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窓を開け、やかんに火をかける。

もう何年も続いている朝の習慣に、
この夏から床の拭き掃除と
ストレッチがくわわりました。

きっかけは、ステイホーム。
旅に出ることもなく、
出かけることもほとんどなくなった毎日。
パソコンを通じて打ち合わせをしたり、
原稿書きなどの仕事はしているものの、
とりとめもなく時間が過ぎていき、
あっという間に1日が終わってしまう。
これではまずいぞ、
意識的にメリハリをつけないと。
‥‥そう思い立ってのことでした。

どうせはじめるのならよい道具があった方がいい。
まずは、スウェーデン製のモップを買いました。
形から入るのはいつものことです。

じつはモップにはどうもよい印象がなかった私。
だって、あのもさもさした部分がしだいに薄汚れて
見た目に美しくないし、
しぼるのにも一苦労でしょう? 

でも、このモップは一味違う。
マイクロファイバーという繊維が
よごれをすっきり拭き取ってくれて、
しぼるのも簡単。
おまけにすぐに乾くのです。

まずとりかかるのはリビング。
はしっこから始めていき、
椅子やソファを少しずつずらしながら、
全体を拭き掃除。



▲扉の奥もキュッキュと水拭き。

その後、
ダイニング、台所、洗面所、
ベッドルーム、廊下という順に、
進めていくのですが、
拭き掃除が終わったところから、
気がよくなっている‥‥ような気がする。


▲拭き掃除は「廊下に朝日が差し込んでいる間に
終わらせる」が自分の中の決まり。

水拭きをしたところが、
ただ「きれいになる」のではなく、
そのまわり、
やがては部屋全体が気持ちのいい空気になって、
その日1日、気分がいいのです。

さて、そのすがすがしくなった部屋に、
マットとポールを持ち出して、
いざストレッチ。

ハードな運動は性に合わないし、
続かないだろうから、
肩甲骨を伸ばし股関節をまわす、
というらくちんなものが中心だけれど、
するとしないのとでは大違い。
家のメンテナンスだけでなく、
自分のメンテナンスもしてあげないとね、
なんて思う今日この頃なのです。

拭き掃除とストレッチをしはじめて、
掃除機をかける回数が減り、
肩が凝るから‥‥と
整体に駆け込むこともなくなりました。
「まさこ百景」に、
「Clean up⤴︎ではなくKeep→です」
という項目を作りましたが、
掃除もストレッチもまさにそれ。
何か起こってからではなく、
つねに「いい状態」をキープしていたいものだなぁ、
と思っているのです。

(伊藤まさこ)

あたらしいこと。

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12月もあっという間に半ばをすぎて、
今年も残りわずかになりました。

旅に出ることも、
友だちと会うことも、
ほとんどなかったと言っていいくらい、
ひっそりと過ごした1年でしたが、
だからといって、
物足りなさや寂しさを感じることは
不思議なくらいありませんでした。

ベランダに、
鳥がよく遊びに来ること。

家の中に差し込む光が、
1日のうちで、いろいろな表情を見せること。

歩ける範囲に、
気になる小径や、
おいしい店、
見晴らしのいい公園があること。

家にいる時間が長かった分、
今まで気がつかなかったいろいろなことに、
気づけたのが一番の収穫。

外に向かずとも、
身近なところに、
たのしいことや、新鮮な発見はあるものだなぁ。

そうそう、
夏には「まさこ百景」の展示もありました。
これは私にとって、
今年一番の大仕事。

今までしてきた仕事や暮らしを、
見返すことができて、
とてもよかった。
会場に足を運んでくださったお客様と
お話しできたことも、
励みになりました。
ありがとうございました。

今日から大晦日までの2週間は、
「まさこ百景」で紹介しきれなかった、
つづきの「まさこ百景」。

ふだんしていることにくわえ、
新しくできた習慣や、
部屋の模様替えなどを、
文と写真で綴ります。

「まさこ百景」の展示の時に作った、
weeksdaysオリジナルの、
かわいいエコバッグの販売もありますよ。
どうぞおたのしみに。

100点のドローイング。

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伊藤
創形で版画を学んで、パリに行くまでの間は、
どんなふうに過ごされていたんですか。
まさか会社勤めをしていたということは‥‥。
松林
ないです。
卒業後は、高知に帰らず、
東京でしばらくアルバイトをしながら
絵を描いていました。
高知に帰ったのは30歳になる直前ぐらい。
伊藤
アルバイトは、どういうことを?
松林
一番稼いでいたのが、
モザイクで壁画をつくる会社の仕事です。
壁画の仕事と、パチンコ屋さんの
内装のカッティングシートを貼る仕事。
どちらにせよ現場が多かったです。
そんな美術に関係するアルバイトを
情報誌で探しては、行ってました。
なぜそういうことをしていたかというと、
ぼくはアルバイトでお金を貯めて、
外国に行くつもりでいたんです。
スペインに行って絵を描こうかなと思っていた。
でも、東京でアルバイトをしているうちに、
そういう生活に疲れてきたりして、
高知に帰ってみよう、って。
ネガティブな時期だったと思いますが、
それでも、やっぱり絵で食べていきたかった。
それで『イラストレーション』っていう雑誌の
公募にずっと出していたんです。
そこで最終的に大賞をもらって、
イラストの仕事が来るようになりました。
伊藤
じゃあ、30代はイラストの仕事を、
フリーランスで。
松林
そうですね。
伊藤
そこから、アートへと進まれたわけですけれど、
「よしっ!」という手応えがあったのは、
いつ頃のことでしたか。
松林
やっぱり一番大きいのは
セブンデイズホテルの川上絹子さんとの出会いです。
たまたま展覧会を見に来てくださって、
ぼくの絵を気に入ってくれた。
川上さんがいまの本館をつくられた頃かな。
ぼくは、高知からパリに行く直前で、
1年間滞在するのに経済的な不安があったんです。
留学が決まったけど、貯金もあんまりなくて、
ふたりで行くことを決めたものの、
どうしようかなって思っていた。
そうしたら川上さんとたまたま知り合って、
うちに来て、絵をドーンと買ってくださったんです。
伊藤
川上さん、絵を買うときはインスピレーションだと
おっしゃってました。まさしく!
松林
それが、のちに、セブンデイズホテルプラスの
客室の版画や、ロビーの絵につながっていくんです。
パリ滞在中は、日本の料理の月刊専門誌の
表紙の仕事も来て、
贅沢をしなければじゅうぶん過ごすことができました。
1年して、高知に帰ってきたら、
川上さんから、もうひとつホテルをつくるからと、
部屋に飾る版画を依頼してくださった。
伊藤
すごーい!
松林
そして、その絵をもとに
『Room』っていう本をつくってくださって、
その本がいろいろな人のところに渡ったんです。
たとえば皆川明さんから電話かかってきて、
白金のミナ・ペルホネンで個展を開く機会をいただいたり。
伊藤
やっぱり、人とのつながりが、
人をいかしていくんですね。
松林
そうかもしれませんね。
ところで、伊藤さん、
100枚を描いているなかで気がついたんですけど、
最初に出していただいた絵のための言葉のなかに、
かぶっているのがありました。
それゆえ、同じ言葉で2つの絵があるんです。
そういうものは、逆に、
ぼくの絵を見て別の言葉をつけてほしいと思って。
伊藤
えっ、えっ。
何回も見ても間違うんです。
なんでだろ。なぜ? 
松林
ひらがなとカタカナで同じ言葉があったり。
伊藤
そういう気分だったのかなぁ。
松林
あの言葉はタイトルとして
最後まで残るんですか?
伊藤
どうしよう? どうかな。
──
絵を選ぶときに、
ことばがあると、わかりやすいですよ。
その過程もふくめて、この絵だと思うので、
残していただけたら嬉しいです。
松林
そうですよね。
「1」「2」みたいな数字より、
いいかもしれません。
伊藤
わかりました。じゃあ、
かぶっている言葉は、その絵を見て、
あたらしい言葉をつけますね。
今回、額を、松林さんが用意してくださって、
絵をひとつひとつセットしてくださることになって。
これがサンプル? いいですね、
ちょっと絵が浮いてる!
松林
下に、スチロールみたいな素材をかませて、
ちょこんとまるめたテープで
絵を台紙にとめています。
だからちょっと浮いたようになるんです。
伊藤
絵を描かれた紙の縁が、機械的に切った
鋭利な線ではないのがいいですね。
松林
ぼくが手でカットしました。
定規をあてて、シャッて裂くみたいにして。
伊藤
なるほど! 
並べてみましょうか。
どの絵も、とってもかわいいです‥‥。
そっか、わたしの思いつきの言葉が、
こんなふうに絵になるんですね。
しみじみ。
あれ? 紙はどれも同じじゃ‥‥ない?
松林
はい、いろんな紙があります。
洋紙に描いたものもあるし、
和紙に描いたりもしていますよ。
とくに説明はしませんけれど。
伊藤
そうなんですね。
ああ、やっぱり、
1点ずつ描いていただいて、よかった! 
こういうものを買うのって、
なんていうのかな、
“人に自慢できるものにお金をかける”
こととは違うでしょう。
アクセサリーやファッションには、
そういう部分があるような気がするんですけれど、
今年、コロナ禍で、
消費に対するみんなの考え方が、
ちょっと変化したように思うんです。
そのひとつが、家の中に目を向けようということ。
そして、好きな絵を1枚買ったら、
周りのことを考えると思うんですよ。
ここを片付けようとか、
この光をどうコントロールしよう、とか。
そういうきっかけになってくれたらいいな。
松林
ほんと、そうなってくれたら、いいですね。
そして、ぼくの絵でみなさんが
元気になってもらえたら嬉しいです。
伊藤
松林さん、ありがとうございました。
松林
こちらこそありがとうございました。
楽しい時間でした。

スケッチブックとパリ。

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伊藤
自粛中の、高知での暮らしはいかがでしたか? 
ものづくりをされている方って、
ふだんとあんまり変わらなかったよ、
とおっしゃるんです。
松林
そう、ほんとに変わらなかったです。
絵を描いて、ごはんを食べて、って、
いつもどおりの生活をしていました。
ただ、展覧会の機会が減りましたし、
あっても、自分が行くわけにいかなかったのが残念です。
8月に台湾で個展があって、
行く気満々で楽しみにしていたのだけれど‥‥。
伊藤
台湾の「小器(しょうき)」ですね。
松林
はい。でも、100号‥‥つまり、
160センチ×130センチくらいの
大きい絵が売れました! 
外国の人にもわかってもらえてうれしかったな。
伊藤
日々、絵を描いている松林さんは、
そういった個展を開くとき、
やっぱり特別なモードになるんでしょうか。
どうやって気持ちを持っていくんだろう。
気持ちと準備。
松林
やっぱり展覧会の日程が決まると、
それに向けて作品を描いたり、
テーマに沿っていままで描いた絵を集めたりしますよ。
伊藤
おうちにお伺いしたとき、
日々描かれているという
スケッチブックを拝見しました。
すごい! って思いました。
アイデアが、あふれ出すのを、
どうにか記しておこうというような。
あれは「作品」というよりも‥‥。
松林
そう、日記みたいなものですね。
あとで、そのスケッチブックを見ながら
絵の構成を決めたりもします。
だから、あのスケッチブックは、
とくに個展などで
お見せするようなものではないんですよ。
伊藤
松林さんの頭の中みたいなことですね。
松林
そうですね。
伊藤
奥さまが、教職で美術を教えていると
おききしましたが、
創作について、相談はなさるんでしょうか。
松林
展覧会に関しては、すごく相談をします。
会場構成をどうしようか、というようなことですね。
でも、絵を描くときは、ひとりです。
ずっと描いてる。
伊藤
ほんとうの意味で「ずっと」?
松林
はい、ずっとです。
妻にもそう思われているんじゃないかな。
伊藤
ずっと! ちなみに、どういう子ども時代でしたか。
やっぱり、ずっと描いていたんでしょうか。
松林
そうですね。漫画がすごく好きで、
絵というより落書きみたいなものですが、
それで教科書が鉛筆で描いた絵で
ほんとに真っ黒になっていました。
伊藤
子どものことからずっと、なんですね。
『考える人』や『芸術新潮』の編集長を歴任なさって、
いまは「ほぼ日の學校」の校長の
河野通和さんという方がいらっしゃるんですが、
本を読むのは、
朝、深呼吸をするのと同じだとおっしゃっていて。
でも読書については、
自分がしていることの延長として想像できるんですが、
そんなふうにずっと描くのって、
いったいどういう感じなんだろう? 
人に見せるためじゃない絵もあるわけですよね。
松林さんには「あのとき、こうだったから、
いま、こうなったんだな」みたいなことってありますか。
いまにいたる流れというか‥‥。
松林
うーん?
伊藤
松林さん、パリに行かれた時期もありましたよね。
松林
はい、2000年、1年間まるまるパリに行きました。
シテ・デザール(Cité internationale des arts)
っていう、アーティスト・イン・レジデンスが、
マレの近くとモンマルトルにあるんです。
そこでは写真をやったりダンスや音楽をやったり、
いろんなアーティストが暮らしながら
制作しているんですよ。
そういうところにぼくが版画を学んだ
創形美術学校という専門学校が
部屋を持っていたんです。
そこの卒業生が面接を受けて、
合格すると1年間滞在できる。
その時、ぼくは40歳を前にしていて、
「そろそろ行かなくちゃ」って決意したんですが、
でも、まわりからは、なぜパリ? って言われたかな。
当時はアートならニューヨーク、ロンドンだったから、
ファッションならともかく、絵を描くのにパリって? 
って言われました。
伊藤
そうだったんですね。でも憧れます! 
その時代にパリで1年過ごしたのは、
きっと楽しかったでしょう? 
松林
4区で、シテ島のすぐ北側で、
最寄り駅は7号線の
ポン・マリー(Pont Marie)でした。
マレの繁華街が近かったから、よく飲みに行き、
‥‥そうそう、夜のルーブル美術館が開いている日は、
夕食後の散歩をかねて館内をぶらぶらする
“ルーブラ”、最高でした。
伊藤
1年まるごと、っていいですね。
四季をひと通り経験できて、
季節のあいだもあるし。
しかも、その場所だったら、
ちょっと歩けば美術館がいくらでもある!
写真美術館(Maison Européenne de la Photographie)も、
ピカソ美術館(Musée Picasso Paris)も。
松林
そう! ちょうどポンピドーセンター
(Centre Pompidou)が休館から開け、
久しぶりにリニューアルオープンした年で、
すごくよかった。
伊藤
人形博物館(Musée de la Poupée)もありますね。
それこそポンピドーの裏のあたりに。
松林
うんうん、ジュモーのハガキを買ったとこだ。
伊藤
うわー。そのシテ・デザールでは
なにか課題があるんですか?
松林
なにもないんです。
ただ、シテ・デザールの建物と別に
版画の工房があって、
そこに毎日通って版画をつくったりしていました。
一応向こうで最後に個展をしてきました。

言葉をヒントに。

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松林
最初、話をいただいたとき、
100枚という数をつくるには版画がいいのかなって
ぼくは思っていたんですよ。
それで「版画にしましょう」って提案して。
セブンデイズホテルプラスの部屋の作品は、
80点を全部版画でつくっているんですけれど、
あれも正方形なんですね。
版画の方が自分らしさや、作品のクオリティ、
ほかとは違う質感なんかが表現できるという思いが
すごくあって、できたら版画で
やってみたいなって思っていたんです。
エディションと言うんですが、
同じ絵柄で、複数枚をつくるやりかたですね。
10枚ずつ10の版画がある、というような。
伊藤
でもわたしが
「いや、1枚ずつ描いてください!」
と言い張った。
松林さんの版画はとても素敵で、
わたしも大好きなんですけれど、
今回は「自分だけのもの」がいいなって。
わたしはわたしで、
松林さんから個展の案内のDMをいただくと、
松林さんがちょっと言葉を添えてくださるのが
とっても好きで。
だから、そんな気持ちで、
100枚、つくってくださったらなあって、
なかなか、譲らなかった(笑)。
いっそ「言葉」を描くとか、
「言葉を絵にする」というようなことも、
いいのかも? って。
松林
そんなふうに、ぼくの文字を
伊藤さんが好きでいてくださっているのは
とっても嬉しかったんですけれど、
ぼくは詩人じゃないから、
言葉を生むことができないなあと。
伊藤さんが言葉をくださったら、
それを絵にしましょうか、って。
言葉からヒントをもらった絵を描こう、
ということになりましたね。
あるいは僕が自由に描いた絵を見て、
伊藤さんがなにか言葉をつけるとか。
伊藤
そのやりとりがあって、
結局言葉が先がいいっていうことになりましたね。
松林
そんなやりとりを、何度も、メールでして、
伊藤さんに「言葉をください」って言ったんです。
伊藤
わたしが?! と、びっくり。
でも、わたしも詩人ではないのだから、
考えすぎないようにして、
オノマトペ的な言葉にしました。
「フルフル」とか、
そういう言葉ですね。
意味があるような、ないような、そんな言葉です。
歩いていて、思いつくと、
iPhoneのメモに書いて、それを送って。
これは「weeksdays」のチームのみんなにも
ナイショにして、松林さんとだけ、直接、
やりとりをしていたんです。
松林
そうだったですか? 
じゃあ、みんな、今日が初見?
伊藤
そうなんですよ。
そのほうが、面白いかなって。
そうして言葉が決まって、
描くのにどのくらい時間が
かかるんだろうと思っていたら。
松林さん、描き始めたら、
一気に集中なさって。
松林
描き始めたら結構描けました。
大きさも正方形って決めていたから、
すごく描きやすかったですよ。
伊藤
最初は、松林さんの提案は、
色をピンク系で統一して、
強い印象の絵にしたいということでした。
それはとても素敵な絵だったんですけれど、
全部をそうするのはどうなんだろう、って。
結局、ピンクを筆頭に、
いろいろなものを混ぜていただきましたが、
なぜピンクを使いたいという気持ちになったんでしょう?
松林
やっぱりコロナでちょっと暗い気持ちというか、
家に閉じ込められることが続きましたから、
明るいピンクで、
ワーッ! ていう気持ちになれたら楽しいかなって。
伊藤
たしかに、その考え、いいですね。
松林
それで、最初は、
ピンクの絵をたくさん描いたんです。
それで一度見ていただいて、
ピンクだけじゃなく、
例えばベージュだとか白、
グレーや黒などを入れたらどうですか、
っておっしゃって。
結果的に、とてもバランスのいい感じに、
色味がふえました。
伊藤
はじめてアートを買うとしたら、
ピンクだけが並んでいるなかから選ぶのは、
ハードルが高いかな? 
っていう気持ちもちょっとあったんです。
ちっちゃいから大丈夫かなぁ? とも思いつつ。
松林
横で見ていた妻が言うには、
ぼくがピンクの絵を元気そうに描いてるのを見て、
なんだか力が湧くって。
販売は冬になるから、
こういう元気なピンクもいいねと、
そんなふうに話していたんです。
伊藤
松林さんのピンクの小さな絵だったら、
壁に複数、ずらりと並べてもかわいいでしょうね。
ただ、今回は、抽選での販売なので、
なかなかそういうそろえ方が
できないと思うんです。
そのお気持ちはとってもよくわかりますが、
やっぱり今回は「はじめてのアート」で、
いろいろなタイプがあっていいなと。
わがままを言ってすみません。
それに、そもそも松林さんは
気持ちが沈む絵を描く人じゃないから、
絶対大丈夫だと思っていました。

松林誠さんの100枚の絵

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ちっちゃな絵がほしい。

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伊藤
松林さん、こんにちは。
ちょうど東京にいらっしゃるお仕事がある、
というタイミングで、
こうしてお目にかかれてとても嬉しいです。
松林さんの高知のおうちにも、
以前お伺いさせていただきましたね。
あのおうち、
光の入り方がちょうどいい感じでした。
松林
そうですね。古い日本家屋なので、
あんまり日が入ってこないんです。
高知の夏の暑さでも耐えられる、
冷房のない時代の工夫ですよね。
でもね、生活するぶんにはいいのだけれど、
じつは、昼間、絵を描くときは、
灯をつけないと、色が見えにくいんです。
絵描きとして、それもどうかな? って
思うんですけれど。
伊藤
あら(笑)。
2015年に「やさしいタオル」のロケで
松林さんのところに遊びに行かせていただいて、
いつかなにかご一緒できたらいいですねという
お話をしました。
「weeksdays」をスタートさせてからは、
2019年に、セブンデイズホテルのオーナーの
川上絹子さんのお話をうかがいに行ったとき、
松林さんのお話にもなって、
あらためて「一緒になにか」をスタートさせました。
松林
そうでしたね。
「weeksdays」でぼくの作品を
販売したいとおっしゃってくださって。
伊藤
そこから1年半、いろいろありましたけれど、
こうして実現したことが、とてもうれしいです。
松林さんとは、はじめてのお仕事になりますね。
松林
そうですよ、知り合ってからは長いけれど。
伊藤
以前から思っていたことなんですけれど、
ことしのステイホーム中、あらためて、
やっぱりおうちに絵が必要だ! と思いましたよ。
わたしもそうですし、みんなが、
家のことにさらに関心を寄せているいまは、
そのことが、伝わりやすいかもしれません。
松林
伊藤さんはもともと、
アートを飾っていますね。
伊藤
はい。いいな、と思うと、
チョコチョコと買って。
絵を飾ると気分が変わるから、
よく、移動させたり、
つけかえたりしています。
松林
壁面に、シンプルに、余白をたっぷりとって、
一枚の絵を飾る。
伊藤さんの絵のかけかたには、
そんな印象があります。
伊藤
そうですね。
外国のかたのインテリアで、
壁面にたくさんの絵や
写真を飾っているのを見ますが、
あれもいいな、と思いつつ、
わたしは、やっぱり、ひとつかな。
もし、壁を絵で埋めよう! と思ったら、
それ全体がひとつの展示になるように
コーディネートをするでしょうけれど‥‥。
わたしがひとつだけ飾るのは、
「かけかえたいから」という理由もありますね。
わたしは、家具の配置もしょっちゅう替えるし、
壁の色もそろそろ変えようかなとか、
いつも考えているんです。
引っ越しも大好きだし。
でも、いちばん簡単で気分転換になる
部屋の模様替えは、絵を替えることなんです。
松林
今回、ドローイングだけじゃなく、
額までまるごと、お任せくださって。
伊藤
絵だけ届いても、
どうしたらいいのかわからない、
という方がいらっしゃると思ったんです。
絵を手にして「額装を考える」というのは、
ハードルが高い。
松林さんは、額込みで
作品として販売なさることも多いので、
これはお任せしよう! と。
松林
もともとはエッチング(銅版画)で
作品を発表していたのが関係すると思います。
版画ってマット(台紙)とフレーム(枠)が
合わさって完成する世界なんですね。
だから、ギャラリーでの展示にしろ、
家の壁面に飾るにしろ、
作品は額込みで考えることが多いんです。
伊藤
わたしも、松林さんの絵を買うときは
額まで相談できるので、楽なんです。
マットの幅ひとつ考えるのも、たいへんで。
松林
今回は、絵のサイズを正方形にしましょう、
ということを伊藤さんと決めてから、
それに合うマットと額のサイズを考えました。
フレームを数種類試作したんですが、
これじゃ絵を邪魔するなとか、なかなか微妙で、
そうしたら、いろいろ探すなかに、
駆け出しの頃からつきあいのある
高知の額縁屋さんで、
絵によくあうフレームを見つけたんです。
伊藤
よかった!
松林
フレームは受注生産です。
絵をセットして、
みなさんのところにお届けするのは
年が明けて少ししてからになります。
伊藤
たしか、最初にわたしが言ったのが、
「ちっちゃな絵がほしい」ということでしたね。
松林
ええ。それで、ポストカードサイズかな? 
という話も出たんですが、
ポストカードサイズだと、
ほんとうにポストカードを
飾っているようにも見えるから、
絵を飾るのがはじめて、というかたのためにも、
ちょっと馴染みのない形がいいなと。
それで、正方形はどうですかって。
伊藤
最初の1枚として絵を買うとしたら、
ちっちゃい方がいいし、
正方形、賛成! と思って。
ぜひ100枚おねがいします、って、
リクエストをしましたね。

ことばが絵になる。

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るるる

ひょこひょこ

ららら

きょときょと

ジュージュー

ふりふり‥‥

頭に浮かんだ音を伝えると、
松林さんが絵にしてくれる。

クスクス

ゆらゆら

ふるふる

そよそよ‥‥

わぁ、この音は、
こんな絵になったんだ! 
わぁ、かわいい! 

送られてくる
絵を見るのが、
毎回楽しみで仕方がなかった、
100枚の絵。

どれひとつとして、
同じものはなく、
どれもこれも、
あるとうれしくなっちゃう。

絵の持つ力って、
すごいんです。

今週のweeksdaysは、
松林誠さんの描く100枚の絵。
それとともに、
松林さんのイラストをモチーフにした、
冬のあったか小物もご紹介します。
どうぞおたのしみに。

4人、それぞれの老眼鏡。 [2]

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さんにんめ
料理家 なかしましほさん

料理家のなかしましほさんは、
ふだんから、遠近両用のメガネをかけています。
もともと近視がとても強かったなか、
老眼がちょっと入ってきて、
遠近両用のメガネにしたそう。
それまでは近視用のコンタクトレンズだったのを、
メガネ生活に変更しました。
それまでメガネをかけなかったのは、
おもに仕事上の理由から。
料理の仕事は、うつむくとメガネが落ちたり、
蒸気でメガネが曇ることがストレスに。
だから、コンタクトの方が良かったんだそう。
でも、老眼の進行とともに
メガネにすることを決めるとき、
ちょっとよぎったのが、おしゃれのことでした。

「私のまわりでは、
それまでコンタクトをしていた方が、
年齢とともにめがねに変えることが多くて。
おしゃれへのきもちの変化もあるのかなって思ってました。
そして私は、その年頃になったらどうするか、
すごく興味がありました。
実際、自分がそうなった時わかったのは、
老眼が入り始めると、
目がものすごく疲れるんです。
それも、今までとは違う疲れ方。
あまりにも疲れるので、
コンタクトからメガネにかえるんだなって」

小学校のころは近視でメガネ、
年ごろになってからずっとコンタクト。
最近かけるようになったメガネですが、
いまやすっかりなかしまさんのイメージになっています。

近視や乱視をコンタクトで矯正し、
老眼は、必要なときにメガネで調整する、
というひともいますが、
なかしまさんは、まだ老眼が本格的ではなく、
視力が安定していないのだそう。
だから今は様子見の期間としての「遠近両用」。
もうちょっと落ち着いてから、
老眼鏡を作りたいなと思っているんですって。
車の運転用には、遠近+サングラス、
というメガネも持っているそうです。

なかしまさんの、メガネ選びのポイントはなんでしょう? 

「かけて、自分がしっくりくるかというところです。
私も形をひと通り試すんですけれど、
結局、丸い形になるのは、
しっくりきているからだと思います。
あとは、洋服との兼ね合い。
おしゃれな人は何本も持っているとは思うんですが、
私は洋服にあわせて付け替えるということを
そんなにしないので、
どっちにも合うものをと考えて、
金色系か黒を選んでいます。
自分がいつもよく着る服の色を基準にします。
でも、わたしは1日中かける遠近両用だから、
という選び方。
老眼鏡だけの場合、一日中はかけないので、
ぱっとかけたときに、
疲れないものを選ぶといいと思いますよ」

大丈夫! 今回の「weeksdays」の老眼鏡は、
そのあたり、ちゃんと疲れにくさを考えていますから。
なかしまさん、今回のなかでは
どれか好みのものはありますか? 

「自分の持っていないものを、と思うので、
ひと目見たときから決めていました。
ゴールドのこちら!」

おお、チタンフレームの「ゴールド」。


▲こちらはサンプルです。フィッティングを行うと、つるの部分は調整されます。

「かたちがきれいで軽い。
かけてみて、私は耳が痛くならないです。
レンズも、丸じゃなくて楕円。
私は、遠近のレンズを入れて、使いたいな。
セリート(眼鏡ふき)もかわいいです」

ありがとうございます!
いいところ、ぜんぶ言ってくださいました。

ところで、なかしまさんが
教えてくださったことがもうひとつ。
眼鏡をかけるときのメイクです。

「ヘアメイクの草場妙子さんから、
メイクレッスンを受けたことがあるんです。
そのときに教わったのが、
メガネの人がフルメイクをすると、
作りすぎている感じが出ちゃう。
少しキャラっぽくなるというか。
だからメガネをしている日のメイクは、
眉かマスカラ、どちらかでもいいですよと言われました。
私の顔の場合、というのもあるかもしれませんが。
だから、私も今日は眉だけにしています」

なるほど! メガネ女子のみなさん、
ぜひ参考になさってみてください。
なかしまさん、ありがとうございました!


よにんめ
BonBonStore 井部祐子さん

傘ブランドBonBonStoreを主宰する井部さん。
パソコン仕事で数字を扱う時のため、
老眼鏡を使っています。
かけないと、「6」と「8」の区別がつかない!
これ、老眼の人は経験があると思います。

「もともと、視力があんまり良くなくて、
0.7と0.4、ちっちゃいときからそのままなんです。
乱視も激しくて、でも、レンズで矯正すると、
自分の見慣れた視界と違うから
気持ち悪くなっちゃうんですよね。
だから、普段は裸眼です」

今は、自分が老眼だと認めたという井部さん、
40代後半ぐらいまでは、
それが飲み込めなかったんですって。
まだ「全然見える!」と強がったり。

「それが、青山のメガネ屋さんと知り合いになり、
そのお店にきちんと上手に測れる男性がいて、
彼が老眼ということばを使わない人だったんです。
それは当たり前に起こる現象だからって。
それを聞いて、なるほどねって思いました。
そっか、生きていれば普通に起こりうることで、
特別なことではない。
その人の成長にあわせた目の使い方なんだって。
そのメガネ屋さんが教えてくれたのが、
メガネを選ぶときは
いつ必要なのかを考えることだと。
それでわたしは、
パソコンを見るときだけでいい、と答えました。
間違えてはいけないテキストや数字を確認できればいいと。
そこで、その距離感にちょうどいいものを
作ってもらったのが、最初の老眼鏡でした」

それが、いまから3年ほど前のこと。
いま、老眼鏡として使っているのはひとつだけで、
伊達メガネもあわせると
いくつかのメガネを使っているそうです。

「長い時間使うことを考えると、
軽いタイプのものを選びますね。
太いフレームは、夏になると汗をかいて滑る。
だから重くないほうがいいなと思っています」

井部さん、「weeksdays」のものから選ぶとしたら、
どれがお好きですか?

「チタンフレーム系の方が好みですね。
形が丸いのがいいし、軽いし、
老眼チックでもないし。
ちょうど、近視用の持っている眼鏡が、
チタンフレームの丸なので、違和感もありません。
眉毛とアーチが似てる感じのフレームを選んでいるんです」

色は「なんとなく」カーキ。
顔の印象を色で締めようと、
シルバーとかゴールドより濃い色がいいそうです。

「わっ、やっぱり、軽いですねー!」

そうなんです、軽くて丈夫。チタンのいいところですよね。
ところで、眼鏡にあわせる
アクセサリーはどうしましょうか。

「ピアスが好きなんですが、
眼鏡のフレームとピアスの組み合わせは、
本当に悩みますね。
丸いかたちが好きだからといっても、
丸い眼鏡のときに、
丸いフープピアスはつけません。
だから半円のピアスでしょうか」

わあ、ピアスと眼鏡がいい感じです。
いまつけているチェーンも素敵ですね。

「このチェーンはヴィンテージのものです。
ソフィア・コッポラの映画に出てくる
ある女性のゴールドのチェーンの使いこなし方が
新鮮だねって、友達と盛り上がって、
それを真似してみたんです。
老眼鏡にもこんなチェーンがあったらいいですよね。
そうだ、わたし、考えてみようかな?」

わあ、ぜひ、井部さん、おねがいします!
そのときは、ぜひ「weeksdays」で
紹介させてくださいねー。
井部さん、ありがとうございました!

▲セルフレームの「カーキ・ササ」もかけてもらいました。お似合いです。

4人、それぞれの老眼鏡。 [1]

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ひとりめ
COWBOOKS 吉田茂さん

「実は、いつもメガネはかけていないんです」
という吉田さん。
なぜならいまは基本、コンタクトレンズだから。
「子供の頃から高校生ぐらいまで、ずっとメガネ」
だったのが、社会人になってから、
コンタクト生活になったんですって。

それでも「たまに欲しいな」と思うのがメガネ。
メガネ歴が長い人がコンタクトになっても、
メガネがきらいになるわけではなさそうです。
でも、メガネ屋さんに行かなくなるから、
ためしにかけてみたりする機会もなくなる。
また、コンタクトを外したら家ではメガネ、
というひともいるなか、
吉田さんはお家では裸眼で過ごしているのだそうです。

そんな吉田さんに、
今回、久しぶりにメガネを選んでいただきました。
いかがですか?

「そう、久しぶりにメガネを選びました!(笑)
なるほど、幅広く、いろんな方に似合いそうですね」

吉田さんが選んだのは、
チタンフレームの「フォレスト・ブラック」と、
セルフレームの「カーキ・ササ」。

▲チタンフレームの「フォレスト・ブラック」

▲セルフレームの「カーキ・ササ」

「壊れにくそうで、いいですね!」

メガネ歴が長いからか、
割と適当にしてしまったりもして、
金属のフレームはうっかり曲げちゃったり
したこともあったそうです。

「緑色が入っているのがいいですね。
じつは緑色は、COWBOOKSの
テーマカラーでもあるんですよ。
本棚なども緑なんです。
落ち着いていて、かつ、暗すぎない。
本が並んでいるときに背景として映える色なんです」

COWBOOKSは、東京・中目黒にある
セレクトブックストア。
和洋古書を中心に、松浦弥太郎さんがセレクト、
蔵書数は約2000冊という人気の本屋さんです。

吉田さん、メガネをかけたり外したりしながら、
ちょっと思い出話も。

「子供の時って、メガネを選ぶ、なんてできなくて、
持っているものをかけるしかなかった。
ほんとうは“服に合わせて”なんてできたら
素敵だったんでしょうけれど、
そんなわけにはいきませんでした。
だから、こうして大人になってから選ぶなら、
何個か持って、服に合わせたいなあと思います。
老眼鏡も、こんなかたちで、
違うタイプのものを持っているといいのかな」

お店に行くと、色や形もたくさんあるから、
迷うのはたのしいけれど、選ぶのはたいへん。
おまかせください、そんなときのための
「weeksdays」ですから。
吉田さん、ありがとうございました!


ふたりめ
MOJITO 山下裕文さん

「weeksdays」でもおなじみの
メンズウェアのブランドMOJITO(モヒート)を主宰する
山下裕文さん。
文豪ヘミングウェイをイメージした、
かっこいい大人の男のための服をつくっています。

「老眼鏡、すごく使っていますよ。
もともと目がすごく良くて、
両目2.0、駅で向かいのホームの時刻表が読めるくらい。
でも34、5歳ぐらいかな、
わりと早くに老眼がはじまりました。
今は0.7と1.5で、老眼と乱視です」

老眼鏡を初めてかけたときは、
世界ががらっと変わったのだそう。
それまで本や新聞を読むとき視力がおいつかなくて、
億劫になっていたといいます。
仕事をする上でも、細かいチェックをするときに
すごく見えにくく、困っていたのが、
老眼鏡をかけたら、
こんなにクリアに見えるんだ! と感動したのだそうです。
それから、メガネは、いいものと出会ったら買う! 
という感じになっているとか。

「いろいろ持っていますよ。
いま老眼鏡で主に使っているのは、
黒、そしてグリーン系のセルフレーム。
家とオフィス、それぞれに置いています」

そんな山下さん、
「weeksdays」の老眼鏡を選ぶとしたら、
どれがいいですか?

「まず、これ。
チタンフレームのフォレスト・ブラックかな。
金や銀じゃなく、素敵な落ち着いた感じで、
すごくきれいだなと思いました」

そしてセルフレームからは、茶色。

「茶色って、僕自身、すごく好きな色です。
今回の中だったら、これがいちばん好みです」

MOJITOのシャツで、それぞれの老眼鏡に合わせて
コーディネートしてくださった山下さん。
さすがだなあ、大人の男だ!
ところで、アドバイスをしていただきたいんですが、
老眼鏡選びって、やっぱり持っている服を考えたほうが
いいんでしょうか?

「それもいいと思いますが、
普段、メガネをしておらず、必要な時だけかけるなら、
服に合わせるというよりも、
メガネ本体のデザインがきれいだとか、
これが好きだなあ、ということを
選ぶポイントにして、いいかもしれないですね。
ちなみに、重さが気になる方もいるでしょうが、
チタンもセルも、
両方とも軽くて疲れにくそうですよ」

山下さん、ありがとうございました!

「weeksdays」が 老眼鏡をつくりました。 その2 はじめての老眼鏡の選び方。

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伊藤まさこさんのプロデュースで、
JINSがつくる「weeksdays」の老眼鏡。
販売は「weeksdays」つまりネットで行ないます。

みなさんが(とくに「はじめての老眼鏡」をと
考えてくださっているかたが)疑問に思うだろうことは、
以下の点かと思います。

【1】度数は合うのかな?
遠近両用や、近視用のメガネはないの?

【2】かたちや色の似合う・似合わない、が知りたい。
【3】かけ心地が不安、痛くなったらどうしよう。

では順番に解説をしていきますね。

【1】度数は合うのかな?
遠近両用や、近視用のメガネはないの?

「weeksdays」のメガネは、
最初からレンズが組み込みになっていて、
あとから変更ができない老眼鏡
(JINSではリーディンググラスと呼んでいます)を、
2種類の度数で用意しています。
その度数は「+1.00」と「+1.50」。
一般的に、レンズ組み込み型の老眼鏡には
さらに度のつよい「+2.00」と「+2.50」がありますが、
「weeksdays」では初心者用として
弱いほうの2度数を用意しました。

老眼の症状には、
●薄暗いところで、新聞や本などの文字が読みにくくなった
●スマホの画面が見えづらくて、遠ざけてしまう
●以前にくらべて、ピントが合いにくくなった
●パソコンを使ったあと、目が疲れる
●目が疲れて、肩こりや頭痛がする
などがあります。
とくに薄暗いところでの小さな文字が読みづらくなります。

そんなときのための老眼鏡ですけれど、
度数のめやすはというと。

+1.00‥‥近くが見にくくなってきた
+1.50‥‥文字を読むとき、40~50cm程度遠ざける
+2.00‥‥文字を読むとき、50~60cm程度遠ざける
+2.50‥‥文字を読むとき、60cm以上遠ざける

となっています。
すでに老眼鏡をお使いのかたなら、
いまお使いの度数でどうぞ。

(JINSの「初めての老眼鏡の選び方」というコンテンツも
どうぞ参考になさってください。)

でも、「度数が決められない」ということもありますよね。
「もしかしたら+1.50かもしれない」と感じたり、
「いま+1.50だけれど、それでいいのかわからない」、
あるいは「まったく判断がつかない」と。
そんなかたのために、「weeksdays」の老眼鏡は、
もうひとつ選択肢を用意しました。

それは「レンズ交換券つき」のフレーム。
最寄りのJINS店舗に、
商品に同梱する「レンズ交換券」とフレーム本体、
「ほぼ日ストア」からお送りする出荷のおしらせメールを
お持ちいただければ、度数を測定し、最適なレンズを入れ、
快適につけられるよう、フィッティングを行ないます。
ちなみに、このレンズ交換券をご利用いただく場合には、
度数に制限はなく、
老眼用にかぎらず、近眼用のレンズも含め、
レンズをお選びいただけます。
ただし、遠近両用や、ブルーライトカット効果レンズなど、
オプションレンズの場合は別途料金がかかります。

●最寄りのJINSの店舗をしらべる

【2】かたちや色の似合う・似合わない、が知りたい。

「weeksdays」の老眼鏡は、
楕円型のチタンフレームが3色
(シルバー、ゴールド、フォレスト・ブラック)、
スクエア型のセルフレームが3色
(ブラウン、ライトブラウン、カーキ・ササ)です。
伊藤まさこさんが、「みんなに似合うように」と
えらんだかたちと色ですから、
服の色の傾向や髪の色、
好みで選んでいただければと思いますが、
メガネそのものがはじめて、という方も
いらっしゃるかもしれません。
ことばで説明するのはとても難しいのですが、
まずはこちらのJINSのサイト
「メガネの選び方」を参考にしてみてください。
あるいは、お近くのJINSの店舗で、
フレームや色の近いものをためしてみてくださいね。

ちなみに、老眼鏡は「ずっとかけっぱなし」にすることは
あまりないタイプのメガネ。
近視や遠近両用のメガネにくらべて、
「ちょっと派手なもの」や
「ユニークなかたち」を選ぶ人もいます。

【3】かけ心地が不安、痛くなったらどうしよう。

こちらも、最寄りのJINSの店舗で対応します。
お出かけいただいて、
フィッティングの調整をしてもらってくださいね。
(調整は、無料です。)

「weeksdays」が 老眼鏡をつくりました。 その1 鯖江に行きました。

未分類

伊藤まさこさんといっしょに
福井県鯖江市のメガネ工場を訪れたのは、
2019年3月のことでした。

それまでは、東京のJINS本社で、
「こんな老眼鏡がつくりたい」と、
伊藤さんがイメージしている
フレームの色や素材について話し合ったり、
「こんなケースがいいんじゃないかな」
「付属のメガネふきをオリジナルなものにしたいな」
など、いろいろな相談をしてきました。

さらにさかのぼると、スタートは2017年。
「第2回 生活のたのしみ展」で、
「ほぼ日」とJINSとで企画した
「かわいい老眼鏡の店」がきっかけで、
「次は、伊藤さんバージョンをつくりましょう」
と話しはじめていたんです。

フレームは、金属? それともセル?
どんな色がいいんだろう、
どんなかたちがいいんだろう。

大きくみんなのイメージをひとつにしたのが、
伊藤さんが発したこんなことばでした。

「かけているとき、だけじゃなく、
そこに置いたときにも、
風景になるようなフレームがいいなぁ」

また、「ひとつだけ」を選ぶのではなく、
老眼鏡を複数もって、
持ち歩くほかにも、
家の中ですぐに手に取れる場所においておく、
という人が多いことから、
「これがベスト!」をつくるのではなく、
あるていど、選びようのあるラインナップにしましょう、
ということも、決めました。

そうして、チタンフレームと
セルフレームの両方でデザインを詰めてゆき、
3Dプリンターでサンプルをつくり‥‥、と、
その経緯のこまかいことを言うときりがないくらい、
こまかな調整をして、
「このかたち」を決めたあとの、鯖江訪問でした。

さて、鯖江でなにをしたのかというと、
「メガネ工場で、ずばり! の
セルフレームの素材となるアセテートの色えらび」。
なにしろアセテートは色のサンプル数が膨大なため、
東京でそれを行なうことはむずかしい。
すでに、チタンは、シルバーとゴールド、
フォレスト・ブラックという3色を決めていたのですが、
アセテートはじっさいに色を見ないとわからない。
さらに「ぜひ鯖江のメガネづくりを見たい」と、
出かけることになったのです。
(おっと、画像のなかで
みんながマスクをしていないのは、
コロナ以前だったからですよ。)

ちなみに、訪れたのは、海外むけのフレームが約半分、
それも「メイドインジャパン」の高品質を求める
欧米のメガネブランドからの発注が多い、腕のよい工場。
ちなみに鯖江へは海外からの注文が多く、
全体では6~7割にものぼるんだそうです。
鯖江の技術力を信頼して、最近では、
金属とアセテートの両方をつかったものなど、
より複雑なフレームが求められているのだとか。

また、鯖江のすごいところは、メガネづくりの工程が
分業制になっていること。
最初から最後まで1社ですべての工程を
こなせるところはなく、
作業、パーツごとに、大小さまざまな工場があって、
その物づくりが鯖江でできるんです。
つまり、鯖江のまち全体が、
大きなメガネ工場だとも言えるのですね。

さて、膨大なサンプルを前にした伊藤さん、
まずえらびはじめたのはアセテートの茶色です。

「やっぱり最初は、すごくベーシックで、
わたしたちみんなが似合うような茶色が、
ひとつ欲しいと思うんです」

茶色とひとくちに言っても、
明るめの茶色と暗めの茶色、
赤っぽい茶色もあれば、くすんだ茶色も。
フレームが二層、三層になっている
複雑な色味のものもありました。

「うーん? でも、単色がいいですね。
よし、決めた! この、かわいい茶色にします」

うん、はっきりとした色で、きりりと顔をひきしめますね。
そして、伊藤さんから、もうひとつのコンセプトが。

「もう一個の方には、若干のニュアンスで、
かわいいおばあちゃんっぽさを残したいんです」

そうして選んだのが、こんなライトブラウン。
なるほど! とってもおだやかで、品のある印象です。

さらに伊藤さんが気になっていたのが「カーキ系」。
これは、ずらりと並んだサンプルから、
ぱっと気になったものを選んでのことでした。
「四つ葉のクローバーを見つけたときのように、
目立っていたんです」
と伊藤さん。
JINSのみなさんからは
「これを選ばれるとは!」と、感嘆の声があがりました。
(こういった組みかたで、こういう色をえらぶのは、
めずらしいことなんですって。)
でも、むずかしい色かといえば、そんなことはありません。
かけてみると、いろんな人に似合う!

こうしてセルフレームの3色が決まりました。

さて、ここはアセテートの素材倉庫。
さきほど選んだフレームの素材もありました。

厚みがあると、うんと濃く見えます。
アセテートは、ほかのプラスチックに比べると、
比較的軟らかい素材。パルプからできています。
メガネのフレームは、熱を加えて曲げたり、
切削をしたりするので、
アセテートの硬さがちょうどいいのだそう。
そして、アセテートは吸水性が高いので、
そのぶん、かけたときに、肌に優しいんです。
ただし、汗をかいたり、水洗いをしたまま
拭かずにおくのはNGです。
(拭き取っておけば、だいじょうぶです。)
ちなみに、このアセテートは、
兵庫県の網干でつくられています。

メガネをつくる工程はとても多く、
メタルフレームだと300工程ともいわれます。
それに比べてセルフレームは工程数が減りますが、
素材を曲げて、切削しある程度の形状にして、
柄をつけ、鼻パッドをつけ、丁番をつけ、組み立てる、
その過程はメタルもアセテートもおなじこと。
それぞれのパーツにもたくさんの工程がありますし、
メタルではメッキなど、また異なる工程が加わります。
こまかい作業は、分業化され、
なかには個人でなさっているところもあるのだとか。
見学をさせていただいた工場は、撮影不可、
専門的な技術のことは社外秘だそうです。

というわけで、「こうやってつくっています」
というレポートは、できないのですけれど、
これだけは伝えておかなくちゃ、ということがひとつ。
それは、どの工程も「人」がかかわっているということ! 
工場、というと、オートメーションで、
片方から素材を淹れたら、もう片方から製品が出てくる、
なんてイメージをもってしまいそうですけれど、
メガネづくりは、どの部分も、
人がいなくちゃできないことでした。
なかには危険な仕事もありますし、
かなりの集中を要する仕事もたくさん。
世界がなぜ「鯖江クオリティ」を求めるのか、
わかる気がする工場見学でしたよ!

さて後編では、「老眼鏡の選び方」をお伝えします!

JINSの老眼鏡

未分類

この年齢だから、のたのしみを。

未分類

食べるもの、
人づき合い、
ものとのつきあい方、
仕事の仕方、
時間の使い方‥‥。

これは自分にとって必要、
これは必要ではない。

50代に入って、
その分け方が、はっきりしたといったらいいのかな。
どんどんシンプルになってきたように思います。

これは、若い頃だったら、
けしてできないことでした。
なにが自分にとって必要か不必要かなんて、
考える余裕もなかったから。

そう思うと、
今は、ずいぶん楽ちんになったし、
軽やかにもなった。
年をとるって、なかなかいいじゃん!
なんて思っています。

そりゃあ、シミも増えたし、
小さな字も読みづらくなったけれど、
それはそれでしょうがない。
受け入れようではありませんか。

今週のweeksdaysは、
構想から3年かかって、
ついに形になったJINSの老眼鏡。

年をとったからこそ、
できるおしゃれに、
わくわくしています。

つけている時も、
また部屋に置いている時も、
佇まいのよい老眼鏡。

明日からのコンテンツをどうぞおたのしみに。

再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月10日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。


2189 NUVOLA(NAVY)

▶商品詳細ページへ

販売するたびに人気のバッグ、
CI-VAの2189 NUVOLA(ネイビー)が再入荷します。
マチがなくすっきりスリムな形ですが、
収納力の高さも魅力です。
紐をはずしてクラッチバッグとして使ったり、
洋服にあわせていろいろな使い方をどうぞ。

「フラットな作りの、
これ以上にないくらいシンプルなバッグです。
ヒモが長くなっているので、
斜めがけしたり、またはヒモを結んで肩にかけたりと、
持ち方によって印象が変わるところも魅力のひとつ。
使ううちに革がだんだんとやわらかくなり、
体にそうように。
育っていくたのしみがあるのが、
『CI-VA』のバッグのよいところなのです。」
(伊藤まさこさん)

漆の器の使い方。 伊藤まさこ [すぎ椀 編]

未分類

めいめいに、おひたしを。

すっとした形のすぎ椀に、
ほうれん草としいたけのおひたしを。
おひたしは、
大ぶりの器にどーんと盛ることもありますが、
こんな風にめいめいに盛ると、
品よくなるのがうれしい。

盛る時は、
盛りつけ箸を使ってていねいに。
ちょっと高さを出すときれいです。
仕上げにはちょこんとゆずの皮を置いてできあがり。


シンプルなお味噌汁。

平日、ひとりのお昼ごはん。
あり合せのおかずをつめて、
朝、お弁当を作っておくことが多いのですが、
温かい何かが欲しくなることがあるんです。

そんな時に、
私がお弁当にそえるのが、お味噌汁。
今日は、作りおきのだし汁に味噌を溶いて、
万能ネギのみじん切りをぱらり。
とても簡単ですが、
これがあるのとないのとでは満足度が違う。
あったかいものって、しみじみありがたいなぁ‥‥。

ネギだけ、お麩だけ、わかめだけ、
なんていう、
具のシンプルなお味噌汁に、
すぎ椀はぴったり。

あるのとないのとでは大違いなのは、
お腹の満足度だけでなく、
テーブルの上の景色も同じこと。
お椀があると、すごく幸せな気分になるのです。


おやつの時間にも。

柿とマスカットのマチェドニアや、
りんごのコンポート、
アイスクリームなどなど、
すぎ椀は、おやつの時間にも。
今日は、豆かんを盛ってみました。

じつは、そのまま食べられる容器に入って
売られていたのですが、
どうにも味気ない。
すぎ椀に移し替えて、
リネンのナプキンの上におき、
緑茶をそえたらいいかんじ。

漆器だからとかしこまらず、
どんどん使って、盛ってみて。
テーブルの上が、
きっとたのしく豊かになるはずだから。

漆の器の使い方。 伊藤まさこ [ひら椀 編]

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朝がゆを、豆皿と。

朝食によく作るのがおかゆ。
白がゆの時もあれば、
雑穀を混ぜたおかゆの時もあるのですが、
えらぶのはいつも、このひら椀です。

漆の朱が、
ふくよかに炊き上がったおかゆを
ひきたたせてくれて、美しいでしょう?

おかゆと、
あとはお漬けものを小皿に並べた
簡単な食事ではありますが、
漆器のおかげで、
とても豊かな時間にさせてくれるのです。

今日は、しば漬けと梅干し、高菜を、
日本の各地で手に入れた古い豆皿に。
豆皿の質感はそれぞれ違うのですが、
漆器がきりりとまとめあげてくれる。
漆の器が持つ力のすごさを、
こういう時、感じるのです。


中華風のおかずの取り皿に。

「漆器」と聞くと、
和のイメージがつきまとう、
という方も多いかもしれませんが、
私はあまり気にせず、
中華風のごはんにも合わせます。
今日は、豚肉たっぷりのシュウマイを作ったので、
ひら椀を取り皿にしました。

とかく茶色くなりがちな
私の地味ごはんに漆器の朱が
華やかさを添えてくれるところがうれしい。

蒸篭との相性もいいところも、
気に入っているポイントです。

いまのニッポンの生活にこそ。

未分類

伊藤
今回の「ひら椀」「すぎ椀」は、
桐本さんがデザインを?
桐本
そうです。
今はテーブルにつく生活で、
漆器も、正座してお膳にのせて
真上から見るのではなく、
斜め横から見るようになったわけだから、
従来のお椀の形よりも
横のラインがスーっと見えるようにって。
これはどちらも「小」なんですけど、
キリモトでは大、中、小と片口で展開しています。
ずっとデザインは変えていません。
伊藤
そういえば、桐本さんが輪島に戻ってきて、
一番最初につくったものはなんだったんですか?
桐本
テーブルとサイドボードです。
家具ですね。器じゃなかった。
でも、そんなの、いきなり作ったって、
すぐ売れないじゃないですか。
それでもテーブルは2台売れたんですが、
サイドボードは、デザインがツンツンしてたから、
まだあるんです(笑)。
伊藤
デザインがツンツンしてた(笑)。
桐本
ツンツンしてました!
伊藤
じゃあ、ツンツンしてないデザインになったのは?
桐本
それから、やっぱり器をするべきだっていうことで、
もともと料理をするのが好きだったので、
ごはんをつくりながら考えたんです。
やっぱりこういうツンツンした意匠はいらないよな、
形はこうだよなって。
サイズも絞って、でもこのサイズは足りないからと、
またつくったり。
料理をつくりながら、
器の種類を増やしていったんです。
伊藤
たしかに、器は、
料理が盛られて完成ですもんね。
桐本
ぼくが帰った頃の輪島は、
使うというよりも、所有することで満足する、
極端に言えば買って満足、持ってて安心というのが
漆器だったんです。
人が来た時にさりげなく出して、
「あっ!」って驚かれることにホッとする。
そういうのが、輪島塗りであると。
伊藤
きらびやかなタイプのものですよね。
桐本
そうですね。
赤木さんが憧れた
角偉三郎さんという方がいるんですが。
伊藤
わたし、持っています。すばらしいですよね。
桐本
彼の豪快な気持ちが入っていますよね。
パッと見、豪快、でも実用的なんです。
その角偉三郎さんのものの考え方とか、つくりを、
いろんな人たちが憧れて、
力強い作品をつくる人が出てきて。
桐本
角さんは、木地の職人さんに、こう言うんですって。
「手のひらに豆腐を乗せるやろ。
豆腐を包丁でスーっと切って、スッと乗せると、
真っすぐじゃねぇ(ない)やんか、
そんな線を出してくれ」
そういうラインを
お椀でひいてくれって。
伊藤
難しい!
桐本
無茶なことを言いますよね。
お盆に使う下地の布も、
「ああ、そんなキレイにせんで、いいわいね」と。
キレイに貼っちゃいけないって。
亡くなられたとき、倉庫に、
きれいすぎるからとボツにした作品が
たくさんあったといわれています。
角さんには生前、
ほんとうに勉強をさせていただきました。
「お前、大変やなぁ」っておっしゃってくださって。
「輪島の塗師屋の中にどっぷり浸かって、
ようそんなことしとるな。お前は偉いな、
ずっと町の中で、しんどうないか?」
って言われたこともありますよ。
「いや、しんどいですよ。じゃあ、輪島で、
僕のついたてになってくださいよ」って言ったら、
「嫌だ!」って(笑)。
伊藤
(笑)
桐本
輪島というか、漆の世界、伝統工芸のなかでも
角さんの存在というのは、非常に貴重でした。
だから、65で亡くなったのは、痛いです。
伊藤
そうですよね。
桐本
ご存命であればいま77か78やと思います。
もったいなかったです。
伊藤
角さん、一説によると、お椀を口につけた時、
「おなごの唇のように」が最上であると、
そんなふうにおっしゃってたと(笑)。
桐本
そうそうそう(笑)!
伊藤
たしかにしっとりとした、
磁器や陶器とはまた違う
漆の質感ってありますね。
桐本
漆は湿度を持ち続けているので。
キリモトに上縁の厚い「うるう」っていう
コップがあるんですけど、
そのコンセプトは、キスをしている感覚、なんです。
それを当時小学校5年生の娘に話したら、
「お父さん、キモッ!」
その例え、あんまりよくないと思う、って。
伊藤
そんなこと言ってくるお父さん、
いいじゃないですか、ね? 
日本の器は、口をつける、手に取る、
そういうところが大事ですから。
桐本
手のひらはすごいですよ。
何ミクロンの凹凸とか、しっとり感を、
手のひらが感じ取りますから。
とくに日本人はそういうところが
敏感になってるといわれています。
ただ、イベントなどで
売り場に立たせていただいて、
ここ30年ほどお客様と直接お話をしますけど、
なかなか広がらないです、漆の良さ。
伊藤
そうですか‥‥。
桐本
でも、最近思うのは、
むしろ20代半ばぐらいから
30代前半ぐらいの人たちのほうが、
漆の話を素直に聞いてくれて、
「じゃあ、1個からはじめてみる」と
買ってくださることが多いんです。
そのうち、結婚のお祝いを漆にしたいとか、
お父さんの還暦のお祝いに漆を買いたいとか、
言ってくれたり。
そんなふうに、まっすぐと、
ピューンっと跳ね返ってくる感覚がある。
それが励みになってます。
伊藤
赤ちゃんにもいいでしょうね。
桐本
スプーンとか。
伊藤
キリモトの器は、洋食器の多い生活に
混ざってもおかしくないですよね。
全部を漆で揃えないといけない、
という感覚ではないから。
桐本
それ、意識してます!
伊藤
お手入れ的なことも教えてください。
桐本
はい。使っていくと色が明るくなるんですが、
それは剥げてくるわけじゃなくて、
透けてくるんです。
それを上塗り用の漆に混ぜてある
本朱の顔料というのは比重が大きくて、
つまり「重い」んですね。
そのために、漆と合わせたとき、
顔料の重さが何ミクロン単位で、
ちょっとばらける。
漆のなかには、ウルシウォールっていう主成分と、
ゴムと水分があって、それがフニャフニャフニャって、
動いています。エマルジョン状っていうんですけど、
そうなってるうちは、液体なんですよ。
ところが、風呂の室温25度・湿度70%に入れると、
高分子結合体を作って固まる。
分子が、「みんな、集まる? 集まろう!」
って集まって、固まっていくんですね。
そのとき顔料だけが下がってしまうので、
なるべく均一にするため、
風呂のなかで乾かしながら、
何度か回転をさせるんですよ。
伊藤
えっ? 回転?
桐本
そうなんです。
ずっとぐるぐる回すわけではなく、
約五分ごとに上下を変えていくということですね。
あとでかんたんにはがせる
特殊な接着剤で固定して、
なんども、角度を180度、変えていきます。
ちなみに、高分子結合体の網の目状の間には、
水分が閉じこめられているんですよ。
だから、20年経っても、触ると、
明らかにしっとりするんです。
伊藤
漆の質感がいつまでもしっとりな理由は、
そういうことなんですね。
桐本
はい。そしてそれは、
現代の技術でも再現できないわけです。
伊藤
すごい!
桐本
そして、表面が透けてくる理由は、
何ミクロンかのいちばん上のところに
透明度が出てくるからなんです。
そして中に潜んでいる顔料が
透明の膜ごしに、見える。
それが漆の透け感なんです。
伊藤
透明度が増してくるんですね。
黒い漆のお椀も、ほんとに古いものを見ると、
縁がこげ茶色に透けてきますよね。
桐本
黒い漆というのは、
黒の顔料を入れてるわけじゃなくて、
上塗り用のものに酸化第二鉄を入れて熱を加え、
撹拌すると、酵素反応が起こって、真っ黒になるんです。
それが時間が経ってくると、透明度が増してきて、
黒の度合いが落ちてくる。
伊藤さんがお持ちの古い漆のお盆も、
上縁が透けていますね。
よく見ると、こげ茶になっている。
伊藤
おもしろいですね。
漆の器は、すごく熱いものを
入れちゃいけないんですよね。
でも、お味噌汁なんかでも、
けっこう熱いと思うんですけど。
桐本
100度の沸騰したものだけを避けてください。
鍋でつくったお味噌汁なら、
そもそも沸騰をさせませんし、
そそぐ間に温度も下がります。
ただ、漆の器で直接、
インスタントのものを溶こうと、
グラグラ煮え立ったお湯を注ぐのはやめてくださいね。
ポットの90度保温のお湯なら大丈夫ですけれど。
料亭の黒い漆のお椀の中が、
下のほうがグレーになっているのは、
黒が色落ちしているからなんです。
理由は、広い料亭だと厨房からお座敷まで遠いので、
すごく熱い状態でおつゆを張るからなんでしょうね。
伊藤
わぁ、気がつかなかったです。
そこまで見ているのは、
桐本さんが漆のプロフェッショナルだからかも。
桐本
いや、だいたい、お吸い物が出る頃って、
したたか酔っぱらっているから、
気にしないだけですよ(笑)。
伊藤
洗い方はいかがですか。
桐本
何も特別なことはありませんよ。
普通に、やわらかな食器用のスポンジを使って、
中性洗剤を水やぬるま湯で薄めて洗ってもらえれば。
硬いスポンジでゴシゴシこすったりすると、
傷がついてしまいますけれど。
伊藤
そして、すぐ拭く?
桐本
そうです。そのまま自然乾燥させずに拭いてください。
その理由は、水道水にあるんです。
浄水だったら自然乾燥でもいいんですが、
水道水は、そのまま乾かすと、カルキが目立つんですね。
ほんとは、陶磁器やガラスも拭いたほうがいいんですが、
あんまり目立たないですよね。
漆は真っ黒だったり、真っ赤だったりするので、
どうしても、白く浮いたカルキが目立つ。
だから、洗ったら、乾いた布で拭いてください、
と言っているんです。
食洗機を使わないでくださいね、というのも、
同じ理由です。
むずかしくないでしょう?
伊藤
はい、漆って実は使いやすいですよね。
桐本
漆というと、
手入れが難しいと思われがちですよね。
それは、輪島の側もね、
漆のステージを上げすぎたというか、
「いいものですよ、職人が丹精込めて、
時間をかけてつくりました」
と強調しすぎてきたせいかもしれません。
じつは使いやすく実用的なものだということを、
伝え切れずにいた。
ぼくは、漆を、
もっとカジュアルに使っていただきたいです。
伊藤
私が「そっか!」と思ったのは、
赤木明登さんの奥さまの智子さんが
おっしゃった一言でした。
「手と同じだと思えばいいの」って。
桐本
ああ、そうですね!
──
手を洗うのと一緒。
伊藤
「濡れっぱなしは嫌だし、熱々は嫌でしょう」って。
「手を洗ったら、すぐ拭くでしょう?」。
桐本
そういうことがお客様の心に響くんですよね。
伝統工芸であっても、
つくり手の自分たちが、
生活をしっかりして、
なにがいちばん気持ちよくて、
なにがホッとさせるのか、伝えていかないと。
伊藤
米とみそ汁って日本人の基本ですよね。
その器は、生活において、
最初に揃えたいものだと思うんです。
そうだ、漆器にごはんをよそってもいいわけですし。
桐本
そうですよね。
「え? ご飯を漆によそって大丈夫なの?」
と言われますよ。
こびりつくっていうイメージがあるんでしょうね。
むしろ汚れ落ちもいいし、洗いやすいんですけど。
たとえば卵かけご飯や納豆ごはんなどは、
漆の器って食べやすいです。
今回でいうと「ひら椀」がいいですね。
伊藤
「ひら椀」は、ごはんでも、おつゆでも、
どちらも映えますよね。
おつゆだと、具が多めのものもいい。
逆に、シュッとした「すぎ椀」は、
赤だしに山椒の葉っぱだけ、のように、
具の少ないおつゆのときに使ったりします。
桐本
ああ!
伊藤
デザートに、白玉とか。
桐本
そう! デザート、いいですよね。
伊藤
「こっちはこれ専用」と考えず、
今日はこっちにしようかな、と、
そういう感じで使っています。
桐本
そういうことなんですよ。
ありがたいです。
ほんとうに今回、お声掛けいただいたのが嬉しくて。
どうしてぼくらに?! って驚きました。
職人たちも、とても喜んでいました。
伊藤
何人ぐらいいらっしゃるんですか。
桐本
うちは、6人です。
木地の職人が3人、漆専門が3人。
木地の職人は、2人は漆も塗れるので、
拭き漆をやったりもします。
うち以外で椀木地をひいてくれるのは、3工房、
曲げわっぱは1工房、
うちの下地をしてくれてるのが3工房、
上塗りは2工房です。
蒔絵が1工房、
純金は1工房、
呂色(ロイロ)という艶を出す仕事が1工房。
キリモトに関わってくださるかたを全部合わせて、
30人ぐらいの規模ですね。
伊藤
みなさんのおかげで、
すてきな漆器を紹介することができました。
桐本さん、ありがとうございました。
知っているようで知らなかった漆のことも、
より、理解することができました。
桐本
こちらこそありがとうございました。
伊藤
また、漆を買いに伺いたいです。
桐本
ぜひ、いらしてください!

漆の世界を変えてゆく。

未分類

伊藤
そもそも、桐本さんは、どうして漆の世界に? 
代々、漆を扱っていたんでしょうか。
桐本
祖父の持っていた家系図をひもとくと、
初代の1700年代後半から、昭和の頭まで、
漆器業をやってました。
そのあと、木地(きじ)業を始めて、
そこから数えて、ぼくが3代目になります。
つまりぼくの父は漆ではなく、木を扱っていました。
いっぽう、ぼくは、金沢美術工芸大学に行って、
工芸科で漆をやろうと思っていたんです。
高校の時は、
漆のことしか考えてなかったんですよ。実は。
伊藤
そうなんですか!
桐本
ところが、思い立ったのが遅かったのか、
絶対にそこには受からないと言われました。
それで高校の先生が推薦枠を用意してくれて、
筑波大学に行くことになったんですね。
ところが、当時の筑波は、
国立大で唯一の推薦があったところだから、
そんな難関に合格するなんて
誰も思っていなかった。
だからあいつが合格するなんておかしい、
えこひいきだ、と噂になってしまって。
くやしくてね、そのくやしい一心で
再度基礎勉強をして、
金沢美工も受けて、合格したんです。
伊藤
わぁ。
桐本
それからあらためて「自分に問うて」
推薦していただいた筑波大学に進みました。
筑波では工業デザインを習ったんですが、
いちばん最初の授業で、教授がこう言うんです。
「今のあなたたちが4年間学ぶ
デザインっていうのはね、
今を暮らすこの世の中の人々が、
今よりももうちょっとホッとする、
もうちょっと気持ちよく、
もうちょっと便利な生活を送るには
どうしたらいいか、
っていうことを考える学問です。
それが工業デザインなんですよ」と。
「キレイな色だね、キレイな形だねっていうことは、
デザインとしては、狭義です。
君たちはもっとそれに対して、なにをすべきか、
つまりHowではなくて、Whatを常に考えなさい。
なにをすると、人々のためになるかを
考えるようにしなさい」
そう言われたんです。
で、その時に、
「え? じゃあ、やっぱり、
漆を広げりゃいいじゃん!」
って単純に思って。
伊藤
ほんとですね。
桐本
それからも、良かったのは、
たまたまその先生たちに、
「こいつは、伝統工芸を志しているのに、
工業デザインに来たやつだ」というので、
面白いと思ってくださったんでしょうね、
いろいろなことを教えてくださった。
ほんとうに、手取り足取り、4年間。
たしかに、ぼくの同級生はみんな、
カメラ、車、電車、飛行機、
そういうのをつくりたいと思っているわけですよ。
漆に行こうなんてのは、珍しかったです。
伊藤
それはよかったですね。
桐本
授業が終わったあと、先生の宿舎に行っては、
議論をふっかけたりして。
先生が酒の好きな人ばっかりだったので、
酔っぱらった先生によく怒られましたよ。
全然なんの経験もないのに、
ぼくがいろいろ生意気なことを言うから、
あっという間に論破されて。
伊藤
大学進学の経緯もそうですが、
桐本さん、負けん気が強いですね(笑)。
桐本
そう。「負けてたまるか!」って。
でもやっぱり最初の、
教授の言葉に感動した瞬間に戻り、
漆は、便利とは言わない。でも、気持ちよく、
ホッとさせる道具の一つではないかっていうことを、
どんどん信じられるようになったんです。
漆っていうものを世の中に広めることが、
人のためになるって。
だから、ぼくが輪島で漆を始めたのは、
自分がやりたいことが
たまたま故郷にあったということです。
そんななか、家はもう漆をやっていなかったけれど、
明治44年に三代目の桐本久太郎がつくった夜食膳が
輪島のある家の蔵から、
揃いで40人分、出てきたんですね。
お通夜の時に使う「御膳揃い」です。
今、うちでも汁椀にしたり、
アイスクリームを入れたりして使ってますが、
きれいでしたよ。
そういうことを考えると、
今から自分が漆をやることも、
おかしくないぞ、と。
伊藤
でも、大学を出てすぐには
漆に行かなかったんですよね。
桐本
はい。図面を引く勉強をしたので、
大阪で大手のオフィス家具メーカーに就職して
オフィスプランニングの設計をしていました。
当時、日本がいよいよバブルやぞ、っていう時で、
今すぐぼくが帰らなくても、家は大丈夫。
1回、人の釜の飯を食べて、
世の中のお金の動きと人の動きってどうなんだろうと
勉強をしたくて、企業を探したんです。
意匠設計という部署だったので、
家具のデザインをさせてもらえるのかなと思っていたら、
オフィスプランニングだったんですね。
大きなビルが建ったとき、
そこを使う企業のためのフロアをつくる仕事です。
ぼくは現場に放り込まれて、
在籍していたのは2年半ですが、
6年分働いた、というくらい、働きました。
伊藤
バブル期で多忙だったことでしょう。
桐本
若いからこそ、乗り切れたんですね。
大きなプロジェクトが終わったのを区切りに退社し、
輪島に戻りました。
その頃に培ったことで、
今でもためになっているのは、
建築内装の中にも漆があったらいいのに、
という感覚です。
オフィスって温かみがないな、
そこを、天然の漆で何かできないかな、
っていう想いを秘められたことが良かったです。
伊藤
ご実家では漆はやっていなかったなか、
どうやってそれを始められたんですか。
桐本
それがですね、木地屋というのは、
たとえば重箱をつくりますよね。
その底板を、漆で接着するんです。
伊藤
ええー! 接着剤として?
桐本
そうです。漆の中に、米糊から煮込んだ糊と、
ケヤキの粉末を混ぜて充填剤にし、接着剤として使う。
だから木地屋にも漆があるんですよ。
忙しいときは
「重箱四段蓋2枚、高台つき100個」
なんて注文が来る。
そんな時はすさまじい量の漆を使います。
伊藤
じゃあ、桐本さんの仕事は、
新しい漆の使い方を家業の中で提案していくこと?
桐本
まさしくそうですね。
伊藤
お父様はなにかおっしゃいましたか。
桐本
父親は、なにも言わなかった。
いいとも、悪いとも言わない。
やれとも、やめろとも言わない。
ただ父が死ぬ間際、妻は
「もう大変だったのよ」って言ってました。
ぼくには言わず、家族に言っていたんですね。
というか、ぼくには
言いようがなかったんだと思います。
なぜかというと、木地屋としての仕事をしながら
漆塗りのことを始めたわけですが、
そこに会社のお金を使わず、
自分がもらってる給料でまかなっていた。
そこから木地代を出して、下地のお願いをして、
何か月かかけて品物をためて、企画展で発表して、
売り上げ上がったら、また木地を出して、と。
社内の工場の経理も自分でやっていたから、
工場のお金に手をつけちゃダメだっていう想いがあって。
だから父も文句の言いようがなかったんでしょう。
伊藤
とはいえ、伝統工芸って大変な世界じゃないですか。
「生意気だ」みたいなことも、
きっと、言われたでしょう。
桐本
そりゃもう。
「桐本、なにしとるん」。
伊藤
分業ですものね。
桐本
輪島にも、赤木明登さんという、
雑誌編集者から転身して
あたらしい漆に挑戦した人がちゃんといるんです。
ぼくは同じ歳で、同じようにやってるのに、
あちらは
「ああ、たいしたもんやな、素晴らしい」
ってすごく褒められて、
ぼくは「なにしとんねん」。
ガンガン責められる!(笑) 
そして、ぼくはこらえたけれど、
他産地では同じような下請けの力のある人が
潰れていくのも見たし、
ちょっとした心ない言葉一つで病んでしまい、
辞めていく人たちもいた。
また、若い人が自由なことがしたいという思いを、
つぶそうとするような風潮もあります。
輪島ではぼくが若い人をたぶらかしているという噂も出て。
そんなことしていないのにね。
でもね、漆をやるなら
輪島にいたほうがものづくりはできる。
木地屋もある。道具もある。
「この漆、こんだけ売ってください」って、
少量でもいい漆が買える。
先輩に分からないことが聞ける。
つくるには、一番いい環境なんです。
伊藤
そうですよね。
桐本
だから若い人たちを集めて、人を輪島に迎える
「わじま工迎参道」というグループを作りました。
年に2回、若い人たちの作品を発表しましょうと。
そこには観光客をはじめ
各地のバイヤーさんも来ますから、
彼らの世界が拡がるでしょう? 
じっさい、阪急と伊勢丹からも声が掛かりました。
そういうようなことで、
「輪島にいて良かった」と
実感してもらえるような場をつくってます。
うれしいのはね、そういうなかから、結婚をして、
輪島に居を構えるわかい人も出てきたこと。
いいですよね、そういうのって。
伊藤
ほんと。すばらしいですね。
わたしがキリモトさんの器を知ったのは、
それこそ取材で赤木明登さんのところに行ったとき、
ギャラリーに連れて行っていただいたんです。
「わいち」というお店でした。
20年ほど前です。
桐本
2000年にギャラリー「わいち」をオープンしてるので、
間違いないと思います。
赤木さんと9人で始めたギャラリーでした。
いまはもうないですけれど。
うちの漆器を伊藤さんが
『LEE(リー)』っていう雑誌に
紹介してくださったんですよ。
それが2004年か、2005年。
伊藤
そうでしたか! 
器の特集だったかな。
こういうデザインの漆って、なかったんですよ。

昔ながらの方法で。

未分類

伊藤
今回、新しい「すぎ椀」「ひら椀」を見て、
わたしが20年間使ってきたものは、
ずいぶん「育った」んだとわかりました。
長く使うと、色合いに深みが出て、
肌もツルツルになっていくんですね。
桐本
「使い艶」っていうんです。
とくに内側に艶が出てくるんですよ。
伊藤
わたしはふつうに洗って、
拭いて仕舞う、それだけなんです。
桐本
そうやって日々お使いくださることがいいんです。
伊藤さんの手入れは、完璧ですよ。とてもきれいです。
伊藤
良かったです! 
娘も、漆から作法を教わっています。
たとえば「陶磁器と重ねない」とか。
陶磁器には、高台(うしろがわ)に釉薬がなく、
ガサガサしているものがありますよね。
そうじゃなくても硬いものは、
漆と重ねてしまうと、漆のほうに傷がつく。
だから漆は漆だけで運びます。
桐本
漆器同士は大丈夫ですからね。
もし擦れて傷がついても、
輪島の漆器は修理がしやすいですよ。
伊藤
桐本さんに教えていただきたいことがあるんですが、
漆って、そもそも、どうやって集めるんですか。
桐本
僕の年代だと、漆の木の生えている裏山には行くな、
と言われて育っています。それくらい漆の木がある。
でも行くんです。とくに9月や10月くらいになると、
キレイな葉っぱがたくさんあるから、楽しくてね。
漆の葉っぱって、紅葉する葉の中でも、
だんとつにキレイなんですよ。もう非常にキレイ。
でも家に帰ると「お前、今日、山、行っただろ!」。
なぜかっていうと、あちこちが赤くかぶれているから。
伊藤
たいへん!
その漆の木から、樹液がとれるんですよね。
桐本
植林をして10年~15年経った6月に
「よし、今年は、君と君と君を掻く(かく)よ」と。
伊藤
「掻く」。
桐本
幹に、ちょっと傷をつけると、
樹皮の周りに漆が集まってくるんです。
それは人間が皮膚に傷をつけた時、
体液を出してかさぶたを作ろうとするのと同じで、
傷を埋めようとして、
樹液である漆が木の幹と皮の間に集まってくるんですね。
それを、6月から11月まで、
半年かけて順番に取ります。
そうやって漆の液を溜めるんです。
伊藤
「今年は君」っていうのは、順繰りなんですか? 
状態を見ながら。
桐本
そうです。
同じ土地に同じように植えても、育ちが違って。
輪島だと、休墾田っていうか、
山の中にある田んぼとか畑の中にある
使っていない場所に植えるんですね。
そういう土地には、
水はけがいいところと悪いところがある。
いいところはバァーっと太るんですよ。
ところが水はけが悪いと、幹が細いままで、
成長が遅いんですね。
伊藤
10年から15年かけて育てて、漆をいただいて。
そのあとは? 
桐本
漆を取ったら、切り倒すんです。
「掻きころし」っていう言い方をするんですけどね。
伊藤
えっ!
桐本
樹液を取ったあとの漆の木は、
植えておいても葉っぱが出なくなるんですよ。
伊藤
切り倒したあと、材木として、
なにかに利用できるんですか。
桐本
構造材にはなりませんが、
雰囲気があるので、化粧材として、
インテリアに使ったり、
床柱にすることもありますよ。
伊藤
そうやって集めた漆を使っているんですね。
今、漆はほとんど中国産だと聞きますが、
桐本さんのところでは、100%、国産?
桐本
上塗りは国産を中心にしています。
下地塗り、中塗りは中国産の良質なものも使っていますよ。
日本産の漆だけを使う人も確かにいますが、
それだけだと乾きにくいんですよ。
化学的な話になりますけど、
主成分のウルシオールというものがあって、
その濃度によって乾きかたが変わるんですね。
国産と中国産ではその濃度が異なります。
漆は温度25度、湿度70%の空間で乾かすんですが、
塗る環境を考慮して混ぜてあげたほうが
乾きやすくなるんです。
だから、下塗りには、そうやって混ぜた漆を使います。
けれども、上塗りには国産の漆を多く使います。
なぜかというと、そのほうが、
使い込んでいったときの奥行きが深くなるからです。
伊藤
温度や湿度は管理なさっていると思いますが、
こう気候変動が激しいと、
いろいろ不具合も出るでしょうね。
桐本
そうなんですよ。今回も、最初は順調だったんです。
ところが昨年の9月は、全国的に暑くなったでしょう。
そのときに、ちょうど下地塗後半を塗っていたので、
進行が少し遅くなったんです。
伊藤
そんな影響が。
桐本
作業場は冷房を使いますが、
それでも漆の固まる速度が遅くなりました。
なんとか間に合ってよかったです。
伊藤
漆を乾かす場所を
「室(むろ)」というんでしたっけ。
桐本
はい。でも、ぼくらのほうでは
「風呂(ふろ)」といいますね。
現在の塗りの工房は、こんなふうになっています。
伊藤
美しいですね!
桐本
塗りの工房は広さがあり、
輪島の塗師でのなかでも広いほうです。
このなかに、風呂が4つあります。
ひとつの風呂は、押し入れの幅(一間)ぐらい。
奥行きは、押し入れの1.5倍くらいかな。
伊藤
湿度はどうやって管理をするんですか。
桐本
「湿(し)めをかける」と言いますが、
木で組んだ風呂のなかに、
濡れタオルをひいたり。
伊藤
昔ながらの方法なんですね。
てっきり、最新技術で、
適切な水蒸気が出るのかなって思ってました。
桐本
それをやった人がいるんですよ。
こうガラスと機械とアルミニウムで、
温度と湿度を完璧にコントロールできる
機械式の風呂をつくった。
ところが、大失敗してしまったんですよ。
不思議なものですね、
昔ながらのやりかたでなければ、
うまくいかないのですね。

▲下地済みのものを落ち着かせている棚。

伊藤
どれくらい前から漆ってつくられているんでしょう?
桐本
人類が漆というものを発見したと言われているのは、
狩猟時代だそうです。
ハチが樹液を接着剤にして
巣を樹木につけているのを発見したんだそうです。
それが漆だったんですね。
伊藤
石器に漆がついていた、
と聞いたことがあります。
桐本
そのとおりです。
狩猟時代の人間が、割れて鋭くとがった石を、
ハチが使っていた接着剤で柄につけた。
柄と石を植物のツルで縛って、
そこに漆を接着剤として塗ったんです。
すると狩猟の命中率がグッと上がった。
その時代の、石に漆が螺旋状に残っているものが、
輪島の町からいくつも出土しているんですよ。
伊藤
そっか、接着剤として。
金継ぎも漆ですもんね。
桐本
そうです、そうです。
いちばん最初は接着剤として見つけたんです。
あとは、『以呂波字類抄』(いろはじるいしょう)に
引用されている「本朝事始」(ほんちょうことはじめ)。
倭武皇子が、ある木から滲み出てる
黒いキレイな樹液を部下に命じて器に塗ると、
なんとも美しいものになったという記述があります。
伊藤
へぇ‥‥!
桐本
輪島で、記録のある古いものは、室町時代のものですね。
重蔵神社というところに室町時代の扉が残っていて、
漆を塗っていたのが読み取れる。
けれども、輪島全体としては、
あまり歴史的な資料が残っていないんです。
というのも、明治43年に町の半分を焼く大火があり、
戦後も、昭和30年代の大洪水など
幾度かの災害に見舞われた。
貴重なものが焼失していて、
よく分からないところがあるんです。
金継ぎといえば、うちの長男は、
うちから金継ぎをお願いしている蒔絵師に
師事をしています。
技術をなんとか手で覚えたいっていうことで、
金継ぎ、乾漆素地、漆と布の形づくり、蒔絵を
習い始めているんですよ。
伊藤
そのまま跡を継ぐのではなく。
桐本
私と違うところに行こうとしてるんじゃないかな。
伊藤
金継ぎっていいですよね。
継いで直すことができると知っていると、
陶磁器を割ってしまっても、
「大丈夫、金継ぎがある」と、
気持ちが楽になります。
桐本
戦国時代のものでも、金継ぎだったら、
いま、ふたたび修理をすることができますからね。
伊藤
風呂を機械化しようとして
大失敗してしまった方の例でもわかるのは、
昔からの方法じゃないとダメってことですよね。
桐本
この「水分を与えて固まる」漆が、
100年経っても同じように
保湿成分を抱えているということは、
世界中の塗料メーカーが解明しようとしても、
まだ解明できていないことなんです。
ただ、よく似ているのが、
カシューポリマーという日本のメーカーが、
カシューナッツから抽出する液体を使って、
漆によく似たものをつくることに成功をしています。
ただ、独特の香りが抜けないんですね。
使い込んでもなにしても抜けないっていうことで、
通産省(現在の経済産業省)からのお達しで、
口に入れるお椀や箸に塗っちゃいけませんっていうふうに、
家庭用品表示法で定められています。
ですから、飾り皿とか、お盆とか、
口をつけないものに塗られてます。

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