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何度も来ちゃうセールのお店 [2]SUNSPEL
季節ごとに出番の多い部屋着を、
引き出しの特等席(一番手に届きやすいところ)に
入れるのですが、
今の季節、ルームパンツがそこにずらり。
「今日は無地にしようかな、それともチェック?」
などと日替わりで楽しんでいます。
じつはルームパンツは娘と共有。
若い子がメンズライクな素材の
ルームパンツを履いている姿は、
それはかわいく、見ていて新鮮。
娘も「これ、いいね!」と、
かなり気に入っている様子です。
このルームパンツ、
かわいいだけじゃない、
とても涼しく、履き心地も最高。
これからの季節にとてもおすすめのアイテムです。
(伊藤まさこ)
weeksdaysを担当している太田です。
これからの夏にピッタリの
ルームパンツをおすすめします!
夏の部屋着は、暑いせいで、
そうしたいわけじゃないのに、
ちょっとだらしない感じに
なってしまいがちですよね。
その点、このルームパンツは、
シャツのような雰囲気もあって、 清潔感がある感じ。
すごくリラックスできるんですが、
着ていて気持ちがダラッとしすぎないのがいいんです。
着心地がいいので、真夏になったら、
上にTシャツをあわせて、
パジャマとしても使っています。
私はWINDOW CHECKを着ているので、
ネイビー系のTシャツとあわせると、
バランスがいいかなと思っています。
正直、ちょっと丈が短いかなと思ったんですが、
すごく涼しいし、
お部屋のなかだったら、
これぐらい思いっきり足を出して過ごすのも
いい意味で、緊張感が保てるような気がしています。
やっぱり見えるって大事なことですね。
あと、お買い得なこの機会に、
気になる柄を複数そろえるのもおすすめです。
引き出しの中で並んでいる姿が、
とってもかわいいんです!
(ほぼ日・太田)
何度も来ちゃうセールのお店 [1]SAYAKA DAVIS
発売してすぐに、
オープンカラーシャツドレス(ホワイト)と、
Vネックジャンプスーツ(インディゴ)と、
フレアードドレス(ブラック)を買いました。
ちょっと見はとてもシンプルなのですが、
パターンの美しさや、生地えらび、
ちょっとしたディティールの加減が絶妙。
きちんと見えるのに、
リラックスできるのが
SAYAKAさんの服の素晴らしいところ。
着ていると「どこの?」と聞かれる確率が
とても高いブランドです。
じつはVネックジャンプスーツは
あまりにも気に入ったので、
その後、ブラックを買い足したほど。
オープンカラーシャツドレスとフレアードドレスは、
このセールの機会に
色違いを買い足そうと思っているのですが、
もちろんお客様が最優先です。
一度着たら必ずやファンになってしまう、
SAYAKA DAVIS。
彼女の世界のファンが
もっと増えたらいいなぁと思っています。
(伊藤まさこ)
weeksdays担当の山川です。
プロジェクト開始当初から関わっていますが、
weeksdaysの商品は毎週発売日があるので
つぎつぎに欲しくなるものが出てきて、
担当者は、もう大変なんです。
そんな中、SAYAKA DAVISの洋服は
大人ぽいデザインだし、価格もちょこっと大人だったので
「わー、素敵だな、さすがだな。」と
すこし、一歩ひいてみていたんです。
でも、ロケ撮影に立ちあって、
現物を間近でみたら、
「そりゃ、安くなかったわけだ…!」と
服の質感に驚いたんです。
ハンガーにかかった状態でみていたのとまるでちがって
モデルさんが動くたびに、
生地の上質感、カフスやボタンの仕上げのディテールが
美しすぎて、ドキドキしてきちゃいました。
そんな様子を他のスタッフにあっさり見抜かれ、
背中を押されて買ったのが
「Flared Dress(Indigo)」です。
生地の上質さゆえ、着心地がほんとに
「するん」と気持ちがよくて、
1枚着ているだけで
とてもおしゃれしている気分になれます。
ちょっと上質なものがお得に購入できる機会なので
キャンペーン中にぜひ買って体験してみてください。
いろんな身長、体型、年齢の方が着られるパターンなので、
同居している家族とシェアするのもいいかもですよ。
(ほぼ日・山川)
赤い展示室。
パリのオルセー美術館に行くと
とっさに足が向く展示室がある。
巨大な時計を見上げる入り口を入って右手の展示室には
ビビットなカドミウムレッド色のウォールに、
エドゥアール・マネの「オランピア」が
豪華な真鍮色をした木彫りのフレームに
収まって掛けられている。
(現在はどうか分からない。)
私はこの真っ赤な部屋に掛けられている
オランピアを初めて見た時、
目の覚めるような衝撃を受けた。
真っ赤なウォール込みで、
なんておしゃれな絵なんだろう!!
という気持ちだった。
この上質で真っ白なシーツと
刺繍が入ったシルクの布に横たわる裸のオランピアを、
深緑の重厚なカーテンと茶色の背景、
女中さんの肌や逆毛を立てる黒猫が引き締め、
彼女の美しさを引き立てている。
彼女の首にかかる黒い紐の簡素な首飾りが
なんとも都会的だ。
マネは、それまでの宗教や神話の主題にからめて
描かれていた裸婦画と違って、
ただモデルという仕事に徹して淡々とポーズを取っている
スレンダーな高級娼婦オランピアを描いた。
私はきっと西洋美術の見過ぎで
眼にうっすら蓄積してしまったセピア色のフィルターが
スコーンと晴れた気がしたのだろう。
私はマネの色彩感覚がとても好きだ。
例えば「笛を吹く少年の絵」では
縦に黒いラインが走った赤いズボン、
原色に近いような明快な色で描かれた
制服が少年の溌剌とした若さを引き立てている。
彼の描く絵の具の使い方には、
洗練された都会的な色のバランス感覚が表れている。
漆黒のシルクハットと
ノリがパリッと掛かった正装を身につけて
颯爽と社交界に出没している
上品な絵描きさんというイメージだ。
過度な装飾とコルセットを排除した
解放的かつ洗練された洋服をデザインし、
真珠とノワール色を愛した
シャネルの精神に通じるものを感じている。
ベラスケスを愛し、アカデミーを継承する
保守的なポジションに拘り、
印象派と付き合いはするが、
やや距離をとるというスタイルに感銘を受けている。
私はここを通るたびに、同室に陳列されているカバネルの
「ヴィーナスの誕生」もチェックしている。
当時マネとしばしば比較されてきたサロンの優等生の、
マカロンをちりばめたような生ぬるい裸体画を観て、
当時の評価に思いを巡らせ、
近代美術の幕が開けようとしている美術界の喧騒を
妄想している。
オルセー美術館の赤い展示室に掛けられていた
この一枚の作品をきっかけに
私は、美術館で作品を観る度に
展示室の空間も一緒に観て楽しむようになった。
ここに画集を見いるだけでは味わうことのできない
醍醐味があると思う。
それだけにコロナショックで
世界中の名だたる美術館が閉館中という
未曾有の危機に胸が痛む。
私はコロナへの恐怖を煽るニュースを聞く度に、
鬱になるどころか創作意欲が湧いている。
もしかしたら明日は描けないかもしれない。
毎晩眠りにつくときに、
今日も家族が皆おだやかに健康に過ごし、
絵も描けたことに感謝する日々だ。
わたしの、赤。
赤いもの、いろいろ。
陽の光を見ない生白い脚がちらりと覗く、花魁の襦袢。
京劇のあでやかなお化粧。
マリリン・モンローのくちびる。
さくらんぼの艶やかさ。
ドラマチックなベッドカバー。
旧い教会のステンドグラス。
聖人の胸から流れる厳かな戒め。
憧れの靴の裏側。
「南の島のフローネ」が川の中で拾った石。
ずっと欲しい、高崎のだるまさんの土鍋。
台湾の刺繍の鞄。
祖父が飲んでいた、光を通す綺麗なお薬。
宝石の粉を集めて熱を加えてつくる、
アンティークリングの甘い輝き。
初めて塗ったマニキュアのときめき。
怒りや煽情、愛から派生するそれら。
まぶたの裏に見る、自分の生命の色。
わたしの、赤。
朱のお椀。
私が漆を始めたきっかけは、
20代の頃旅行した盛岡で
岩手のぬりものを見たことでした。
当時生活雑貨の店に勤めていて、
パリやロンドン行ってみたいわー、
という感じに過ごしていて
(実際その岩手旅行は予定していた
ロンドン旅行の代わりに行ったんだった)
漆器にはさほど興味が無かった私は、
漆ってこんなにきれいなものなの? と驚いた。
溜塗りは一見黒に見えるけど
縁のあたり、下に塗ってある弁柄漆がほんのり透けてる。
朱塗りはかなり落ち着いた深い赤。
どちらもツヤは控えめで加飾は一切無い。
特に朱の独特な色味に釘付けになった。
東京に帰っても気になって、
あのお椀を売る店で働きたいと思い、
お店に求人があるか問い合わせたけど無かった。
パリでもロンドンでも無く岩手に行きたくなったけど、
そのお店では働けない。
残念、凄く残念と落ち込んでいたら、
そのお店を教えてくれた知人が、
私が見たお椀を作ってるのは岩手にある漆の研修所で、
一度行ってみるといいよと教えてくれました。
研修所ということは作ることを習うところで、
私は自分で作れる気が全くしなかったけど、
あのお椀に近付けるならばと
その研修所に見学に行ってみることに。
2月の、今思えば岩手にしたら全然寒くない日でした。
盛岡から在来線で1時間ちょっとのところで、
電車のドアが自動じゃないことや
街にコンビニがないことに驚きつつも、
研修所にはあのお椀が沢山あって
遠かったけど来て良かったと思っていたら、
先生が「うちに来たらお椀作れるようになるよ。
ちょうど4月からひとり入ってくる予定だから
一緒にどう?」と言うので、
もう嬉しくなっちゃってその場で申し込みをしてしまった。
そこは冬にマイナス20度になる日もあることとか、
信じられないくらい自分が漆にかぶれることとか、
漆の仕事で食べていくのは楽じゃないこととか、
何にも想像もしなかった。
漆のことも何も知らなかったくせに、若いって怖い。
研修所に入って少し経った頃、
家で使ってみろと先生がくれたのは朱のお椀でした。
あの! お椀。
使ってみると手触りや口触りにうっとり。
それと使い出して面白かったのは経年変化。
漆は新品のときはセミマットだけど
使って洗って拭くことで少しずつ磨かれて、
段々ツヤツヤになっていく。
そして時間が経つと漆が透けてくるから奥行きが出てくる。
まるで薄い寒天の膜でおおわれているようなかんじ。
自分で使ってみてますます漆が好きになった。
でも好きと技術の習得は別の話で、
とにかく私は雑で不器用で要領悪くて、
研修生時代から今までずっと塗るのには苦労してます。
漆にも弱くていつもどこかかぶれてて痒い。
あの時赤いお椀を見ていなかったら?
と思うこともあるけど、
天日で干したり温風をかけても乾かなくて
ジメジメしたところにおくと乾く、
木に塗れば防水になる、接着剤にもなる
ミラクル樹液である漆は知れば知るほど面白い。
好きこそ物の上手なれでいいじゃんと開き直って
漆の仕事をしています。
あなたには赤が似合わない。
「あなたには赤が似合わない」
むかし付き合っていた恋人にそう言われて以来、
赤という色がどうも苦手だ。
タンスにしまっていた赤いセーターも、
ロンドンで買った赤いタータンチェックのシャツも
速攻捨てた。
赤い車に乗ってる人とは多分友達になれないし
(ラーダニーヴァを除く)、
歩いているときはよく赤信号を無視する
(だって車走ってないんだもの)。
だけど赤い食べものは大好き。
今の季節、私の住んでいる熊本で赤い食べ物といえば、
トマトとスイカが真っ先に思い浮かぶ。
私が東京から熊本に移住してきて間もない頃、
県民の友人が
「ここでは梅雨が明けてから
スイカ食べてる人なんて一人もいないよ」
と得意げに教えてくれた。
真夏の日差しが燦燦と降り注ぐなか、
うちわ片手にタンクトップで食べるスイカのイメージは
ここにはない。
最初は夏目前の6月までに
スイカを食べ納めるということに違和感があった。
けれど、移住してから3年も経つと郷に従って、
夏が来る前に沢山食べておかなきゃと
ソワソワしているのだから、
私が他県の人に向かって
「梅雨が明けてからスイカ食べてる人なんて
熊本に一人もいないよ」
と得意げに話す日もそう遠くないだろう。
とはいえ、くる日もくる日もスイカばかり食べていると
流石に飽きる。
そこで大人の皆さまに
ちょっとしたスイカのアレンジをご紹介したい。
1. スイカを冷蔵庫でキンキンに冷やす。
2. 大きめの一口大に切って、ジンをかけて食べる。
以上。
私はよく果物に合わせて
「MONKEY 47」というドライ・ジンを使う。
フルーティで華やかなのにキリッとしているから、
初夏の雰囲気にもぴったりだ。
ポイントはスイカをよく冷やしておくこと。
ぬる~いスイカは、
玉ねぎを切ったまな板でカットするリンゴと同じで、
気分が滅入る。
スイカはこの食べ方の他に、
ミントやフェタチーズとサラダにしたり、
甘いココナッツタピオカに浮かせたりして楽しむ。
イタリアに住んでいた友人が
器用にテーブルナイフを使ってスイカを食べる様を見て、
かっこいい~! と感化され、
家でこっそり真似したこともあった。
冷たいスイカにかじりつくのはご存知の通り最高だけど、
カトラリーを使って食べてみると
また印象が変わって面白い。
名残の時期になって
八百屋で安いスイカを見つけたら、
ジュースにしたり、
果汁を煮詰めてスイカ糖を作ったりして、
シーズンを余すところなく満喫するのだ。
同じ季節の赤い果物で、
赤肉メロンもよく食べる。
スイカとはうって変わって
艶かしい夜の色気を感じる赤肉メロンは、
お酒を合わせるならブランデー。
コニャックやアルマニャックでも良い。
丁度良く食べごろになった赤肉メロンを
スパーンと半分に切り、
種の周りの果汁をザルで漉して真ん中の穴に戻す。
あとは気の済むまでブランデーを注ぐだけ。
旦那さんやお父さんの秘蔵コレクションから
美味しそうなブランデーを拝借してドバドバとかけよう。
もちろん自分で買っても良い。
赤い食べ物、というか調味料だが、
S&Bのテーブルコショーも忘れてはならない。
仕事柄、美味しい胡椒は色々と探して試してきたけれど、
最近になって、SBのコショーにしか出せない
味ってのがあるんだな、と気付いた。
野菜炒めや唐揚げを作るとき、
マダガスカルの高級胡椒だと
格好がつかないこともあるのだ。
台所に安心をもたらす赤いパッケージ。
伊藤まさこのお家で
SBのテーブルコショーを見つけた時は、
やけに嬉しくなって彼女に握手を求めた。
いちご、さくらんぼ、牛肉、コカコーラ、
プラム、トマトスパゲッティ‥‥
思い返してみると赤い食べ物は、
私の気持ちを明るく元気にしてくれるものばかりだ。
赤い色だって、別に嫌いってわけじゃない。
タータンチェックのシャツも、赤いセーターも、
かつて自分が気に入って買ったものだった。
なんだか人に言われて赤が苦手になるなんて馬鹿みたい。
気を取り直して、また赤い服を着てみようかな。
赤い車に乗る人のことは当分理解できそうにないけれど。
夏が少し好きになったのは。
家にいることが多い今、
いつもよりずっと、
着心地や肌ざわりのよいものに
気持ちが動きます。
蒸し暑くなってくるこれからの季節はなおのこと。
洗い上がりはさらり。
着ているうちに、体にやさしく馴染んでくるリネンの
気持ちよさったらない。
ずっと苦手だった夏が、
少し好きになったのは、
もしかしたらリネンのおかげなのかもしれないな、
部屋の片隅、ハンガーにかかった服を見ながら、
そんなことを思うのでした。
今週のweeksdaysは、
去年発売して好評をいただいたサロペットをご紹介します。
新色は気持ちをぱっと上向きにさせてくれそうな赤。
「赤」にまつわる、
4人のエッセイもどうぞおたのしみに。
CI-VAの使い方。 伊藤まさこさんと「ほぼ日」乗組員編[2]
2個持ちで。
阿部瑛美
両手が自由に使える
ショルダーバッグが好きなのですが
このNUVORAは
ひもを自分好みの長さに調整できるのが魅力です。
持ちものをいつでもサッと取り出しやすいことが
自分の中で重要なので、ここはうれしいポイントですね。
ちょんと結んだひもの先もかわいいです。
荷物の多いリュックを背負っている時なども
このバッグと2個持ちにして
すぐ取り出したいケータイ、お財布、定期などは
CI-VAのほうに、という使い方もしたりしています。
よく入れているバッグの中身は
お財布、ケータイ、ハンカチ、ポーチ、定期入れ、
イヤホン、家の鍵、エコバッグなど。
見た目以上に収納力があります。
私は持ちものが厚みのあるものが多いのですが
写真のものくらいだとまだ少し余裕があるくらい。
また、ネイビーの色が
どんなコーディネートにもなじみやすく、
かばんに迷ったらついついこれを選んでしまいます。
上質な革が使われているところも
大人のバッグ、という感じがして素敵です。
長く愛用して育てていきたいな、と思っています。
(あべ・えいみ/もと「ほぼ日」乗組員)
通勤用に。
篠田睦美
通勤のときはいつもこのバッグです。
革なのできちんとした感じもありますし、
細めのストラップやすっきりしたシルエットは
どんな洋服にもあわせやすいので、
出掛けの「バッグが洋服とあわない!」という悩みからも
開放されて助かっています。
また、見た目はスリムなのに
物がけっこう入るところも気に入っています。
財布やハンカチに加えて、
500mlのペットボトル、
折りたたみ傘、定期入れ、手帳、
筆記用具などをいれています。
書類などを持ち歩くときは、
A4サイズのトートバッグを一緒に使いますが、
使わないときはそれもたたんで入れておけます。
近頃は、外出は近所を歩く程度なので、
荷物はもうすこし少なめです。
財布、携帯電話、ハンカチ、メモ帳、
サングラス、ハンドジェルなどを入れています。
使うシーンは変わっても、
いつも一緒に過ごしている、このバッグ。
最近は少しつやが出てきて、
いい感じに革が育ってきました。
これからも長くつきあっていきたいです。
(しのだ・むつみ/「ほぼ日」商品事業部)
「ほぼ日ストア お買いもの応援キャンペーン2020 SPECIAL!!」に 「weeksdays」も参加します。
「ほぼ日ストア
お買いもの応援キャンペーン2020 SPECIAL!!」に
「weeksdays」も参加します。
5月31日(日)午前11時から
6月19日(金)午前11時まで開催する、
「ほぼ日ストア
お買いもの応援キャンペーン2020 SPECIAL!!」。
キャンペーン期間限定
「何度も来ちゃうセールのお店」がオープンします。
「weeksdays」の一部商品も、こちらのお店に並びます。
期間中は、対象商品が
30%~50%割引価格でお求めいただけます。
割引対象商品は、
特設ページでのみご購入いただけますので、
通常の「weeksdays」ページではご購入いただけません。
なにとぞ、ご了承ください。
割引対象商品ラインナップについては、
5月29日(金)午前11時に公開しますので、
特設ページをご確認くださいね。
また、キャンペーン中、ほぼ日ストアで
5,000円(税込)以上お買い求めいただくと、
配送手数料(通常:税込770円)が無料となります。
「weeksdays」のすべての商品も対象です。
ぜひこの機会をご活用くださいね。
くわしくは、特設ページをごらんください。
▶︎ほぼ日ストアお買いもの応援キャンペーン2020 SPECIAL!!
CI-VAの使い方。 伊藤まさこさんと「ほぼ日」乗組員編[1]
1年を通して。
伊藤まさこ
肩がけできるので、手ぶらでらくちん。
ぺたんこで体に沿うので、
コートの下に斜めがけもできます(だから旅にも重宝)。
1年を通して、持つ頻度のとても高いバッグです。
私は持ちものがとても少ない方で、
ふだんはこんな風。
電話、お財布、眼鏡に文庫本、
ハンカチとグロス、以上。
この基本の持ち物にプラスして、
小さな水筒や、夏ならハンドタオルなどの
ちょっとかさばるものでも、
案外するすると入ってしまうのがすごいところ。
一度持った人ならそのよさがわかる、
そして一度持つとやめられないバッグなのです。
旅のおともに。
斉藤里香
「これは、旅行中のバッグに最適!」と
見るなり購入を決めました。
旅行先では、防犯もかねて
上着の下に斜めがけしています。
革が柔らかいので、上着のシルエットに
ぜんぜん影響がありません。
飛行機などの座席でも、
体の横や膝の上においていて、
安心だし、すぐにものが取り出せます。
おおきな内ポケットに、
パスポートやエアチケット
(プリントしたネット予約の紙でも!)も
入れて。
そしてあまりにも使いやすいので、
ふだんにもヘビーローテーションしています。
両手があくので買いものの荷物が増えても
大丈夫。
見た目以上に物が入るので、
たためるショッピングバッグも入れています。
(さいとう・りか/「ほぼ日」カスタマーリレーションズチーム)
ベトナムのかごの使い方。 伊藤まさこさんと「ほぼ日」乗組員編[2]
ストック食材入れ、
そしてキャンプ道具入れに。
加納めぐみ
わが家のキッチンは
扉付きの収納棚がすくないので
常温保存の食材やキッチン小物は
いろいろなかごに入れて、
見えるところにおいています。
ベトナムのかごの小さいほうには、
おもに乾麺や缶詰、海苔など
ストックの食材を。
▲ベトナムのかご(白・ミニ)
わたしは料理の途中で、
あ、あれ使おう! と
ばたばた探すことが多いので
浅すぎず、深すぎず
入れたものが一目瞭然で
取り出しやすくてありがたいんです。
ふだんは中身が見えないように
食材のうえにリネンのクロスをかけて
目隠ししています。
茶色いかごが並ぶなかで
白はほかのかごとも馴染みつつ
ちょっとアクセントにもなっていて
とってもお気に入りです。
▲ベトナムのかご(白・ミニ)
そして、大きいかごはキャンプの時に
こまごました荷物を入れるのに
とても重宝しています。
寝袋とかランタンとか、ブランケットとか、
バラバラになってしまいがちな道具を
かごの中にひとまとめにしておき、
普段はそのまま家のクローゼットの中へ。
▲ベトナムのかご(白・小)
キャンプに行くときは
クローゼットからかごごと運び出して
そのまま車に乗せます。
今は車ごとテントサイトへ入れる
キャンプ場がほとんどですが、
車から荷物をおろすちょっと面倒な作業も
かなり楽になりました。
荷物を全部だしたあとは
テントやタープの収納袋などを
まとめて入れておいたり、
お皿やお鍋を洗うときは
かごにぜんぶまとめて
炊事場までもっていったり。
持ち手にビニールカバーがついているので
たくさん入れても手が痛くならないんです。
とにかくキャンプのあいだ
ずっと活躍しています。
丈夫なので重いものを入れてもいいし
汚れても水洗いできるし
キャンプ用にあと2つくらいほしいです。
(かのう・めぐみ/「ほぼ日」総務チーム)
車といっしょに。
趙啓子
決まった使い方があるわけではないのですが、
ときどきたくさんのものを
車で運んだりするときの入れものとして
ベトナムのカゴが活躍してくれています。
▲ベトナムのかご(シルバー・大)
一番多いのは
ベットカバーやシーツを
コインランドリーに持っていくときでしょうか。
4人家族なので
結構かさばる量になるのですが、
大きいサイズのカゴだと1つで十分入るし
(少しぎゅっと押し込みますけれど)
いれた感じもかっこよくすっきりするので
コインランドリーに持ち込むときに
生活感が薄れるような気がして満足しています。
▲ベトナムのかご(シルバー・大)
最近だと、少年野球をやってた息子の
卒団セレモニーのときに
お世話になった監督やコーチたちに渡す
プレゼントを運び込むのにとっても重宝しました。
これもとってもかさばる量だったのですが、
量も引き受けてくれるし、
そのまま置いてても
なんというか、その佇まいが気持ちよくて、
「いい子だな、カゴ」と思いながら眺めてました。
(ちょう・けいこ/「ほぼ日」人事企画室)
ベトナムのかごの使い方。 伊藤まさこさんと「ほぼ日」乗組員編[1]
整理整頓の味方。
伊藤まさこ
買い物かごにしたり、
撮影で使う器を入れて、
車で運んだりと、
何かと出番の多いベトナムのかご。
軽くて丈夫、
汚れたら気兼ねなく水洗いができるところもいいんです。
仕事が立て込んでいる時は、
本の校正紙の束やペンケース、
仕事の資料などをばさっと入れることも。
こうするだけで、
乱雑になりがちなテーブルの上もすっきりさっぱりです。
今、とりかかっているのは、
娘の小さな頃の写真の整理。
いろんなファイルやアルバムに入っていたのを、
1種類におさめようと思い立ったのですが、
なつかしい写真が出てくると、
見入ってしまって作業がなかなか進まない。
とうてい1日では終わらなそうなので、
かごにすべてをおさめて、
時間のある時に、よいしょと運び出して整理しています。
間口が広いので、見やすく取り出しやすい。
「大きな引き出し」代わりとでも言ったらいのかな。
▲ベトナムのかご(白・ミニ)(シルバー・大)
キャンプやピクニックの道具入れに。
平野さゆり
ベトナムのかごは、
おもにキャンプやピクニックの道具をいれています。
最近は、家のベランダでのんびり過ごしたいときや、
外の風にあたりながらキャンプ気分を味わいたいときに、
さっと出して使っています。
▲ベトナムのかご(シルバー・小)(シルバー・ミニ)
[小]には、
折りたたみの椅子とグローブ、野球ボール。
[ミニ]には、
クーラーボックス、
ミニフライパン、バーナー、クッカー、
コップ、コーヒーミル、フィルターなど
ちょっとしたものが作れる
キッチンセットを。
このかご、
ほどよく柔軟性があるので、
入れる物に合わせて
かたちが変わってくれるので、
ぴったりはまりきらなくてもいいですし、
そんな柔らかさもありながら
自立するので、物の出し入れもしやすい。
押入れの天袋にそのまま入れているのですが、
つかうときも、ただそこからずるっと出して
持っていくだけなので、とっても便利です。
そしてちょっと泥で汚れても、拭けばいい、
というのがまた、頼りがいのある道具です。
(ひらの・さゆり/「ほぼ日」商品事業部)
保存食入れとして。
樋口理恵
雑然としがちな缶詰やレトルト食品、
カップ麺などの
保存食入れとして使っています。
去年の台風以降、いつ何があるかわからないので、
ある程度食品を備蓄するようにしているのですが、
何でも入れておける
ちょうどいいスペースとして重宝しています。
▲ベトナムのかご(白・ミニ)
キッチンの棚にうまく収まり、
缶詰で重くなっていても
取っ手があるので取り出しやすく、
中に入っているものが見えないのですっきり見えます。
▲ベトナムのかご(白・ミニ)
(ひぐち・りえ/「ほぼ日」財務経理チーム)
たくさんのボランティア、 迅速な決断と補償、 家庭菜園と漬物。
- 伊藤
- 私がスウェーデンを旅して思ったのは、
人々がみんな優しいということ。
車を運転していても、
スピードを出す人はひとりもおらず、
いたってマイペース。
それを見て
「穏やかな人たちなんだな」って。
- 明知
- そうですね、運転が荒い人はそんなにいない。
ヨーロッパの都会としては
珍しいかもしれないですね。
- 伊藤
- トラムでも、自分より弱い立場の人、
たとえばお年寄りや赤ちゃんを連れてる人を見たら、
サッと助けてあげる。
それが身についてて、しかも穏やか。
そうされることによって優しくなれるし、
人にそうしてあげたいと思うようになるんですよね。
私、「ずっとここにいたい」と思いましたよ。
- 明知
- いろんな移民が入っているっていう背景もあって、
他人に対して、寛容な国ですよね。
このコロナの危機が迫ってきて、
ボランティアもいっそう活発になったんです。
インターネットでも、大手スーパーだったり、
要らないものを売り買いするようなサイトだったり、
賃貸物件のサイトだったり、いろんな所で、
ボランティアの募集が立ち上がって。
人を助けたい人がすごく多い。
- 伊藤
- どんなボランティアがあるんですか。
- 明知
- リスクグループの人のための買い物代行とか、
お年寄りの話し相手になってあげるとか。
知人も、ビニールシートから簡単に防護服をつくる
プロジェクトをたちあげました。
- 伊藤
- 特別な技術を持っていなくても
できることがたくさんあるんですね。
- 明知
- そうなんです。この危機が来て、
人のいいところが見えた。
それはすごくよかったと思うんですね。
ロックダウンをしていないから、
いろいろ動けるっていうこともあると思います。
- 伊藤
- そうかもしれないですね。
- 明知
- ロックダウンはしていないといっても、
政府からの禁止事項は出ているんですよ。
「50人以上の集会は禁止」
「高齢者施設への面会は禁止」。
それとは別に、「病気の症状が出たら、家にいること」
「手をよく洗うこと」「人との距離を室内でも
室外でも取ること」が推奨されています。
- 伊藤
- うんうん。
- 明知
- それは、3月の初めの頃から
今まであまり変わってないです。
- 伊藤
- みんなが守ってるっていうことですよね。
- 明知
- 守ってる人が多いと、私の周りでは思います。
でも、最近問題になっているのは、
暖かくなってきて、結構人が街に出て、
レストランとかカフェとかで、
ちょっと人の密集してしまう場所が出始めたことが
懸念されてましたね。
お客さんとの距離を取っていれば営業してもいいし、
お客さんも店を利用してもいいので。
- 伊藤
- 明知さんのお仕事はどうですか。
- 明知
- 今は暇になりました。
スウェーデンの仕事は撮影や通訳、
日本との仕事は
ロケのコーディネーションが多いんですが、
そのロケがキャンセルになりましたから。
いまは自分のペースで執筆をしています。
- 伊藤
- どんなものを書いてるんですか。
- 明知
- スウェーデンの、すごく好きな写真家の記事です。
いつもだったら、時間がなくて、
資料も本当に必要なものだけ読んでいたのが、
今はじっくり取り組めています。
- 伊藤
- そうですよね。
こんなに時間があることって、ないですから。
ああ、今回、いろんな方と話してて、
すごくうらやましい気持ちになります。
みんな、すごく自分の住んでいる国のことを信じてる。
補償も、充実しているんでしょうね。
- 明知
- そうですね。経済への影響も大きく、
いろんな形の支援が出ています。
一番身近なものだと、この危機で
たくさんの人が失業してしまうだろうからと、
政府は、雇用主が従業員を、
コロナ危機で辞めさせなくてもいいような
補償を設けました。
仕事が少なくなると、人が要らなくなってくる。
そうすると、辞めさせなければいけなくなる。
それを防ぐための短時間労働の方法で、
まず、会社は従業員の労働時間を
20%、40%、60%短縮します。
たとえば20%の場合、
普通だと20%お給料カットになってしまうんですが、
国がその20%のうちの3/4にあたる15%を補填し、
1%を雇用主が負担します。
結果的には若干お給料が減る(4%)のですが、
解雇を防ぐことが出来る、というものです。
- 伊藤
- すごい!
- 明知
- パーセンテージが段階的に分かれているのは、
会社によって、人によって状況が違うからですね。
その人にどれくらいの仕事をやってもらいたいか、
会社側が判断して決められる。
- 伊藤
- へぇ!
- 明知
- だから、労働時間短縮で、40パーセント、時間が余り、
その分家にいて、日曜大工だったりとか、
今までできなかったこととかをやっていても、
受け取るお金はフルタイム勤務のときと、
そんなに変わらないわけです。
- 伊藤
- 予測できない事態に、
こう対処するみたいなことは、
最初からスウェーデンの政策にあったんでしょうか。
コロナって、突然降って湧いてきたことですよね。
こうなってから決めたことなのかなぁ‥‥。
- 明知
- 3月中旬に発表された対応策で、
4月初旬から申請出来ました。
80%まで短縮出来るように、
途中で法改正もありました。
- 伊藤
- スピーディですね。
- 明知
- ただ、もともと、たとえば病気になって
働けなくなった時には、
社会保険として、給料の8割くらいが出ます。
子どもが病気になって、家にいなきゃいけないときは、
両親が使える休業保険もありますし。
しかも、自営業、会社員、関係なく、
所得の8割が支払われるんです。
- 伊藤
- なんということ!
日本はこんなに混乱しているのに‥‥。
もともと社会保障の国って言いますもんね。
お買い物は不自由なく?
食材や日用品は普通に買えるんですか。
- 明知
- はい。3月下旬くらいまではすこし混乱していましたが、
今はもう普通に、トイレットペーパーや
パスタなどの保存食も普通に買えます。
何も変化はないですね。
生イーストや粉類がすごく売れているらしいですけれど。
- 伊藤
- それ、日本もそうです! イーストと小麦粉。
- 明知
- 私のママ友の旦那さんも、
在宅勤務でお家にいる時間が増えて、
自然酵母のパン作りにハマってます。
自分で菌を作って、
週に何回も朝からパンを焼いているそうです。
- 伊藤
- 私も、久しぶりにやってみようかなと思って、
買いに行ったら、なかったんです。
みんな考えること一緒なんだなぁって思いました。
- 明知
- みんな家で楽しく過ごしたいですものね。
- 伊藤
- そうですよね。発酵を待つ、
そういう時間もなかったから(笑)。
でも、そうこうするうちに、
もうすぐ夏じゃないですか。
そうしたら、みんな、
サマーハウスに行きたいでしょうに。
- 明知
- 今の段階では、夏になっても、
旅行を控えるように言われていて。
夏のバカンス、長い人は5週間くらい取るので、
旅行に行けなかったり、
自分の持っているサマーハウスに
行けなかったりすると、やっぱり辛いですよね。
- 伊藤
- ということは、ホテルとか、
困ってる業種の人とかもたくさんいるだろうけれど、
それでも、国からは保障がされてるから、
心はわりと穏やかに‥‥。
- 明知
- 観光業は深刻な影響を受けてますね。
大手のホテルチェーンやSASがこの制度を利用したと
ニュースになりました。
他の国と比べてどうかはわからないんですけど、
それを利用してる会社は多いと思います。
- 伊藤
- お金のことって困りますものね。
- 明知
- 日々の暮らしでも、
テイクアウトの料理は
お店側が無料配達をしていたり、
リスクグループの人や医療関係者には
50パーセントオフをしますよとか、
そういうことを、それぞれの店がやっています。
とても助かりますよね。
地元を守ろうと、
なるべくお店を利用しようとする人も多いです。
- 伊藤
- それ、本当すごいです。
- 明知
- コロナの後、
どういう世界になってくるかわからないんですけれども、
政府のこの姿を見られたことは、よかったです。
「人がもってる善良さに気づいた」、
「助け合う心とか、素晴らしいっていうことがわかった」
って言ってる、私の周りのお友達も何人かいました。
- 伊藤
- すばらしいですね。
リーダーがいいっていうのは、素敵なことだなぁ。
私、最近、関西で多店舗経営をしている
オーナーをしている女性に連絡をしたんです。
彼女は、パートさんを含めると、
100人近い人を抱えているんですね。
そうしたら、
「もうね、なるようにしかならへんから、元気よ!」
って元気におっしゃって、
すごいなぁって思ったところでした。
やっぱり社長って腹の括り方が違うなぁって(笑)。
- 明知
- 周りの人も救われますね、そういう人のそばにいると。
- 伊藤
- そうなんですよね。
そういう人についていきたいと思うし、
トップが不安がっていたら、
みんなが不安になっちゃうっていうことを
わかっているんでしょうね。
明知さんは、写真家についての執筆のほかに、
この状況になったから始めたことは
なにかありますか。
- 明知
- 個人的には、庭仕事を始めました。
家庭菜園をやってみようかなと思って。
- 伊藤
- わぁ!
- 明知
- あと、乳酸菌発酵の漬物を作ったりしてます。
伊藤さんは?
- 伊藤
- 私はもう家を掃除しまくってます。
今日はごみ箱を洗いました。
すっきりした!
でも、もう掃除するところがないかも(笑)。
この有り余るパワーを何かに使いたいな。
- 明知
- そういう人、多いですよね。
スウェーデンにもいっぱいいますよ。
DIYのお店や園芸ショップ、人気ですもん。
- 伊藤
- でも、元気そうでよかったです。
- 明知
- おかげさまで、リラックスして過ごせてます。
- 伊藤
- ありがとうございました!
いろんなことがわかって、よかったです。
では、また会える日をたのしみに。
- 明知
- はい、お元気で!
ありがとうございました。
「これ、いいですね!」
この数ヶ月で、
私たちの暮らしはずいぶん変化しました。
「変わったこと」を挙げたらキリがないけれど、
最近、私がよく感じるのは、
買いものをした時に、
店の人とのやりとりが少なくなったなぁということ。
たとえば、はしりの野菜を見かけた時に、
「もうこんな季節なんですねぇ」
なんていう、
八百屋のおじさんとの、ちょっとしたやりとり。
ついおしゃべりしたくなってしまうけれど、
今はがまんがまん。
そんなことを思いながら店を後にするのです。
うれしかったのは、
顔なじみのスーパーの定員さんが、
weeksdaysのベトナムのかごを一目見るなり、
「これ、いいですね!」と
身振り手振りで褒めてくれたこと。
「そう! すごくいいんです」
という気持ちを込めた笑顔で返事をした時に、
そうか、話さなくても心は通じ合うものなのだ、
と思ったのでした。
今週のコンテンツは、
ベトナムのかごと、水着とCI-VAのバッグ。
かつて販売し、
多くのお客様に好評をいただいた、
自信を持っておすすめするアイテムです。
完売しておりましたアイテムの、 再入荷のおしらせです。
5月28日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
ベトナムのかご
いろいろな用途に使える
プラスチックのかごが、再入荷します。
色は白、シルバー、赤の3色、
サイズは大、小、ミニの3サイズです。
「間口が広く、
入れたものは一目瞭然。
丈夫なので、本や器など重いものを入れてもいいし、
大きな方には、かさばるブランケットなどを入れても。
買いものに、ピクニックに。
‥‥あらゆる場面で活躍してくれます。」
(伊藤まさこさん)
CI-VA 2189 NUVOLA (NAVY)
ショルダーバッグとしてもクラッチバッグとしても使える
シンプルで便利なバッグです。
カラーはweeksdaysオリジナルのネイビーです。
お届けは6月中旬頃になります。
「フラットな作りの、
これ以上にないくらいシンプルなバッグです。
ヒモが長いので、
斜めがけしたり、またはヒモを結んで肩にかけたりと、
持ち方によって印象が変わるところも魅力のひとつ。
使ううちに革がだんだんとやわらかくなり、
体にそうように。
育っていくたのしみがあるのが、
「CI-VA」のバッグのよいところなのです。」
(伊藤まさこさん)
cohan 水着(ワンピース)
パリ・オペラ座の衣裳室出身で、
立体裁断を得意とするデザイナーの
惠谷太香子さんといっしょにつくった水着は、
シンプルでありながら、
デコルテ、スタイル、後ろ姿を美しくみせる
工夫が詰まっています。
「サンドレスを短くしたようなデザインなので、
ふだん水着を着るのに抵抗のある方でも、
すんなり受け入れられるのではないかな。
お尻をさりげなくかくしたところと、
ウエスト部分が美しく見えるようにと、
2重になった内側部分の布に、
ストレッチを効かせたところが、
この水着のポイント。
これなら
パレオを巻いたり、
パンツを重ねたりする必要もなく、
堂々とプールサイドやビーチを歩けます。
色はシックな黒。
大人にこそ着てほしい特別な一枚です。」
(伊藤まさこさん)
独自の対策、 開いている保育園、 7割の支持。
「独自のコロナ対策」と報道されているスウェーデン。
それはいったいどういうことなんだろう? と、
首都・ストックホルムに暮らす明知直子さんに、
伊藤まさこさんがききました。
ストックホルムとの時差は7時間。
日本の午後5時は、現地では朝10時。
最低気温はまだ4度だそうですが、最高気温は13度。
北欧のひとたちが大好きな
夏がだんだん近づいてくるこの季節、
スウェーデンの人たちはいま、
どんな風に過ごしているんでしょう?
- 明知
- まさこさん! どうぞよろしくお願いします。
- 伊藤
- 明知さん、お元気そう!
後ろに映ってるお家がすごく素敵ですね。
- 明知
- もともとサマーハウス(別荘)として
作られた家に住んでいるんです。
小っちゃい家なんですよ。
- 伊藤
- どうですか、今、そちらは?
- 明知
- 結構、落ち着いている感じです。
日常はあんまり変わっていませんね。
- 伊藤
- スウェーデンは、
独自のコロナ対策をしていることで
世界中から注目されていますよね。
厳しい封鎖をせずに、
集団免疫獲得を目指す、
と、日本でも報道されていました。
けれども、それがどんなことなのか、わからなくて。
- 明知
- そうですよね。日本の友達からも
「スウェーデンはどうなの?」
って連絡を貰います。
けれど、そもそも、集団免疫を獲得することを
声高に目標に掲げているわけではないんですよ。
集団免疫は、結果的に獲得しつつある、
っていうことなんですけど、
「リスクグループを守る」っていうことや、
「医療を守る」っていうこと、
そういうシンプルなメッセージを、
政府と公衆衛生局は、最初から今までずっと、
わかりやすく言い続けていて、
私たちは、推奨されていることを、
各自の責任で守るように努力しているってことですね。
リスクグループというのは
高齢者や、心臓病などの疾患を持つ人たちです。
その人たちをどうやって守り、
医療崩壊をどう防ぐか。
具体的には、たとえば、
リスクグループに会いに行かないこと、
そしてリスクグループの人は
人に会うのを控える、
症状のある人は家にいること、
などがあります。
- 伊藤
- なるほど。
死亡者や感染者の数がわりと多いから、
心配に思われるんでしょうね。
- 明知
- 日本のメディアでも報道されていると思いますが、
たしかに死亡者と感染者の数は
北欧の中で一番高いです。
それは、高齢者の介護施設、
そして移民の方が多く住む地域で
感染が広まってしまったことが、
高い数字につながってしまっている、
というふうに言われています。
- 伊藤
- スウェーデンの人たちは、
そういう数字も理由も理解している。
- 明知
- はい。そもそも、スウェーデンは分析やデータなど
科学的根拠に信頼を置く国と言われています。
そしてコロナの情報は、毎日午後2時から
政府機関が記者会見をして発表をしています。
国民の関心も高く、
ピークの時のテレビやラジオの視聴者は、
人口1000万人に対して
150万人だったそうです。
使っているデータは、
こういうパンデミックが起こったときに対応する
公衆衛生局のエキスパート集団が解析したもので、
信頼をおいている人は多いですね。
- 伊藤
- どんなことが報告されるんですか。
- 明知
- 感染者の数の増加傾向や、死亡者数、
ICUに何人が新しく入ったとか、
今こういう状態で、どうなっているか、
この1日で起こったことがすべてわかります。
昨日も見ていたんですけど、
スウェーデンだけじゃなく、
ヨーロッパの感染者、死亡者もわかりますし、
その数字にはどういう背景があると思われるのか、
専門家の意見も聞けます。
もちろん一番基本的な「手を洗いましょう」や、
「外に出るときは、1.5メートルから
2メートル、人と距離を置きましょう」、
それをみんなが守ることによって、
感染者の急激な増加を抑えられるんですよと、
みんなにしてもらいたいことを
毎日わかりやすく説明してくれるんです。
- 伊藤
- じゃあ、そのテレビを見てる人は、
「よし!」って思うわけですね、きっとね。
なるほど。私たちが、スウェーデンのコロナ対策として
持っていたイメージとちょっと違うかも。
それだったら、日本の対策と近い感じですよね。
集団免疫を獲得するために、
普通に暮らしてるんだと思っていたんです、勝手に。
不勉強でした。
じゃ、たとえばマスクをする、しないとかは‥‥。
- 明知
- マスクは、スウェーデンでは
効果が大きくないと言われているんです。
ウイルスを持っている場合は、
マスクをすることによって
人にうつしてしまう可能性を減らすことは
できるかもしれないけれども、と。
それでも最近はしている人が増えてきたんですけど、
外出先で何人か見かけるくらいで、
多くはありません。
- 伊藤
- そうなんですね。
ふだんは通勤している
会社勤めの人たちは、
普通に働きに行ってるってことですか?
- 明知
- いえ、家で働いていますね。
リモートワークは、
政府から推奨されていることのひとつですから。
- 伊藤
- なるほど、なるほど。
- 明知
- スポーツも、大会は延期や中止になっていますし、
コンサートも同じですね。
でも、スウェーデンは、
「ロックダウン」はしていないんですよ。
だから、たとえば学校も、
義務教育である小学校、中学校、
そして保育園はやっています。
高校以上は、遠隔授業が推奨されていますけれど。
- 伊藤
- 明知さんのお子さんも保育園に?
- 明知
- はい。子どもは重症化しないという説明もありましたし、
保育園は閉めないという決断をしたことが、
すごくありがたいです。
小さいから、パパかママかどっちかは
絶対に遊んであげないとだめですから。
けれども、感染が予想以上に
拡大してしまった場合には、
保育園をどうするかということもふくめ、
いつでもロックダウンができるように、
政府は準備をしていました。
警察だったり、医療系だったり、
食品関係だったり、
そういった職業が12のカテゴリーであって。
その人たちの子どもは、万が一、
保育園、小学校、中学校が閉まっても、
どこかで預かってもらえるように、
仕組みをつくっているということでした。
- 伊藤
- いざ、というときにも、
エッセンシャルワーカーの人たちが
ちゃんと働けるように。
- 明知
- そうなんです。だから保育士は、
社会が回っていく上で
重要な職業のひとつなんです。
- 伊藤
- あぁ。やっぱりすごいです。
- 明知
- スウェーデンは、いろんな意味において、
準備が早かったんですよ。
ヨーロッパの国々がロックダウンする中、
スウェーデンは独自の対応をしましたが、
同時に非常事態に備えていました。
- 伊藤
- それは安心できますね、本当に。
守られていることが実感できる。
だから国が言うことも守りたいっていう気になる。
明知さんの身近な方で、感染した方はいますか。
- 明知
- 感染したかどうかっていうのはわからないんです。
スウェーデンは基本的に、
症状が出て、病院に行く必要があって、
そこで重症と診断された人が
テストを受けることになっています。
つまり重症化していないと、
テストを受けられないので、
軽症だと、わからないんです。
私の周りでも、
「あの時、コロナだったんじゃないかな?」
って言ってる人が多いんですけれど‥‥。
つまり熱が出たり、咳が出るという症状の人はいる。
けれども、よくわからない。
- 伊藤
- それは日本も同じですね。
- 明知
- ストックホルムでは、
20パーセントから25パーセントくらいの人が
すでに罹ったんじゃないかと言われています。
- 伊藤
- それはどうやってわかるんですか。
- 明知
- 公衆衛生局が無作為に選んだ人に検査キットを送り、
得た結果などから統計的に判断されているそうです。
- 伊藤
- 「私たち、それで大丈夫なの?」みたい焦りは?
「これでいいんだろうか」ということはないでしょうか。
あるいは、すごくふさぎこんでいるとか。
- 明知
- もちろん、このゆるいと言われる政策に対して、
いろんな意見があり、それをメディアも報道しています。
けれども、ふさぎ込んでいる人は、
私の周りにはいないですね。
恐怖を感じている人も、
多くないというふうに見えます。
大体の人が本当に、同じように日常を過ごしている。
それは「政府が提供する情報」への信頼、
そして彼らがちゃんとリーダーシップを取ってくれている
ことへの信頼だと思います。
今週の初めの世論調査で、
政府の方針の舵取りをする疫学者を支持しているのは、
だいたい7割くらいでした。
(註:対談は5/7に行われました。)
- 伊藤
- 7割!
すごいことですね。
政府の方針が最初からブレず、
しかも何かあったときは手を差し伸べられるよう、
ちゃんと準備してくれている。
だからこその支持率なんでしょうね。
- 明知
- 3月の初めくらいにコロナウイルスが入ってきた時、
やっぱり心配や不安が
みんなの中にあったと思うんですね。
なんだかわからないウイルスであるということとか、
他の国が厳しい対応をする中、
スウェーデンはこれで大丈夫なのかという不安があって
混乱していた3月下旬くらいまでは。
- 伊藤
- うんうん。
- 明知
- 私もちょうど具合が悪くなって、
咳が出たり、熱が出たり、
コロナじゃないかなと思いつつ、
病院に連絡をしたりとか、
どんな状況だろうって、
家にいるからパソコンばっかり見て。
アジア系の外見の人が嫌な思いをしたり‥‥。
市内に住む日本人の友人も、
電車の中でくしゃみをしたら、
あからさまに嫌な顔をされたと言っていました。
でも印象的だったのが、ストックホルム市の、
危機災害心理学の専門家が、
国民に動画でこんなことを伝えたんです。
「みんな不安に思うのは普通のことなんですよ。
ウィルスは見ることができないし、匂いもない。
存在が不確かで、みんな不安になります。
不安になるのが当たり前です。
けれども心配をしすぎると、
こういう症状が出ます」
と、具体的な注意喚起をして、
非常時のメンタルをフォローしてくれた。(*)
それを見たとき、すごく安心したんです。
この状況では不安になるものですよ、
ということまで、インフォメーションを
与えてくれるんだということに。
- 伊藤
- なるほど。やっぱり、心の安定っていうのが
一番大切ですもんね。
▲明知さんが撮影したトラムからの街中の様子。
-
(*)この動画でどんなことが話されているか、
明知さんが訳してくださいました。
●不安について。
私たちはいろいろな物事に反応し、
多かれ少なかれ不安を感じます。
それは自然で普通の反応なんです。●どうしてウィルスは不安を呼ぶのですか?
ウィルスは見ることも、匂いを嗅ぐことも
感じることも出来ません。
そのため手に負えないと感じ
特に怖く感じてしまうのです。
まだ危険かどうかもよくわからないからです。
その存在は自分たちの中に恐怖を生み出します。
この恐怖は妥当なものなんだと思うことは大切なことです。
かつて、そして今でも
この反応は私たちを守ってくれるもので
予期せぬ事態に備える気持ちを高めてくれるものなのです。●どんな反応が出ますか。
神経質になったり不安になります。
腹痛や頭痛など体に影響が出る場合もあります。
饒舌になったり、家の中に閉じこもって
外に出たくなくなったりもします。●どのように助け合えばよいでしょうか。
気持ちや恐怖や不安を共有することは
大切なことです。
話すことは怖いことではありません。
共有することで、自分だけが
不安に打ちのめされているわけじゃないことがわかります。●コロナについて、
子どもにはどんな風に話したらいいでしょうか。子どもや若者のことを忘れてはいけませんね。
彼らは私たちと同じように
情報や安心を得る権利があります。
子どもたちの質問に耳を傾けることは大切なことです。
テレビやインターネットなどで見たもの、
または学校でお友達が話しているのを
聞いたことについてどう思うのか。
子どもたちと向き合って、
彼らの疑問に思っていることを聞いてあげてください。
子どもはみんな質問してくるのではなく、
遊びや書いて表現することもあります。
表現の仕方は様々なのです。●どうやって自分自身の不安を和らげ、
子どもが抱く不安に
向き合うことが出来ますか。ウィルスやバクテリアについては、
信用のおける安心な情報源があります。
簡潔に書かれ正しく事実に基づいた情報は、
恐怖を落ち着かせてくれる力があります。
保護者として子どもが抱くかもしれない
不安と恐怖に向き合うのに必要なことです。
自分たちがとても不安でも、
子どもたちも同じように
不安を感じるとは限りません。
逆に全く不安を感じていないかもれない。
あなたがもし今このことで頭がいっぱいだとしても、です。
子どもたちは次の水泳の時間に泳げないことは
不安かもしれませんが。
スティルモーダの コーディネート。 伊藤まさこ
[3]服はシンプル、小物は同系色で。(SILVER編)
シルバーのStilmodaに、
明るめのペパーミントグリーンの靴下を合わせてみました。
春先や秋、素足ではちょっと心もとない、
なんて時にいいのです。
この薄手の靴下、
他にうすい紫も持っているのですが、
紫もペパーミントグリーンも
どちらもシルバーとの相性よし。
服と足元の間に色を持ってくると、
ちょっとかわいげのあるスタイルになります。
黒いスカートに合わせたのは
weeksdaysのシルバーのバッグ。
はっと気づけば、
今回の3コーディネートは、
すべて靴とバッグが同じ色。
「服はシンプル、小物は同系色」は、
私のスタイルの定番。
色数をひかえて、すっきり見せるのが好きなのです。
スティルモーダの コーディネート。 伊藤まさこ
[2]いつものシンプルスタイル。(BLACK編)
モスグリーンのコットンのオールインワンと、
小さなバッグで、
いつもの私のシンプルスタイルにしてみました。
やわらかい革なので、
素足に履くことができるのもうれしいポイント。
「ちょっとそこまで」のお出かけにも、
気軽に履けます。
サブバッグをかごにすれば、
初夏にぴったり。
春夏秋冬、一年を通して履けるなんて、
うれしいなぁ。
色合いがシックなので、
オレンジや赤のリップをつけたり、
アクセサリーで少し華やかさを足して。
黒のStilmodaは
一足持っていると、とても重宝しそう。
かさばらないので旅にもどうぞ。
10ページの訃報、 「フェイズ2」、 コロナと共に生きていく。
- 小林
- 医療のボランティアの数もすごくて、
それもイタリアってすごいなと思った出来事でした。
- 伊藤
- ボランティアが?
- 小林
- 市民保護局の呼びかけで
2万人近くの人がボランティアとして
検査現場や集中治療室の設営に携わっていると、
毎日夕方6時の記者会見で発表されていました。
また、医師や看護師が
足りなくなるとわかってきたとき、
引退したお医者さまにも声をかけたんです。
実は、医療関係者の方、お医者さまが
150人以上、亡くなっているんですね。
そのうちの、いちばん数が多いのは、
感染で戦っている現場ではなく、
ファミリードクターの方々だったんです。
イタリアはまずファミリードクターに行き、
処方箋を書いてもらったり、
大きい病院に行く相談をするんですが、
初めのころ、状況がわからず、
無防備だったファミリードクターの方々が罹り、
亡くなった方が出ました。
それと、その、引退していたけれど、
現場がたいへんだということで
復帰してくださったお医者様が、
ご高齢と過労で亡くなったり。
- 伊藤
- うん‥‥。
- 小林
- そんな中で、いつもの夕方6時の会見で、
タスクフォースを必要としている、と。
タスクフォースというのは、緊急医師団ですね。
300人、被害がひどい所に派遣する
お医者様が必要だと募集をしたんです。
そうしたら、なんと
7,900人の応募があったんですよ。
あっという間に。
- 伊藤
- えぇーっ。
- 小林
- そのころ、みんな、本当に傷ついて、
もうどこまで傷つくかわからないくらい、
メタメタにやられてる感じだったんですよ。
なのに、イタリアには、
まだこれだけの愛と力があるんだって。
私は、心細くなっていたこともあって、
初めてそこで泣きました。
テレビを見て泣きながら拍手しちゃった(笑)。
- 伊藤
- 本当ですね。すごいですね。
- 小林
- それがすごく励みになって。
「よし、こっちだって、1人だけど頑張るぞ!」
みたいな気持ちになれました。
何かの記事にも書いてあったんですけど、
「イタリアでは不思議なことが起きている。
みんな家に閉じこもっているのに、
団結力が生まれている」って。
本当にみんなそう感じてるんじゃないかな、
って思いました。
その後、看護士さんを500人募集したときは、
10,000人を超える応募がありました。
そういうことに、すごく救われました。
イタリア人がですよ、
あの、人の言うことをきかないイタリア人が!
自分のためだけだったら
できなかったと思うんです。
やっぱり、社会のためとか、患者さんのためとか、
おじいちゃん、おばあちゃん、
社会の弱者の命を守るためとか、
お医者さんの仕事、医療システムを守るためとか、
だからみんなが家にいられたんですよね。
「自分のためにいろ」って言われたら、できない。
- 伊藤
- 家族のためっていうのもありますよね。
- 小林
- そうですよね。
自分自身、考えたことも、
実感したこともなかった辛い経験です。
まだ今、続いてますよね。
数週間、あるいは1か月闘病してから
亡くなる方も多いので、
まだまだ続くという覚悟をしていますが、
この辛い経験から、イタリアっていう国が
どういう国かっていうことがわかって、
強く安心感を覚えました。
リーダーの人たちの顔が見えること、
その人たちの言葉、
隠されている情報がないと感じられること。
もちろん、失敗もたくさんあると思うんですね。
こんな状況で、逆に失敗せずに
できるなんてことはもうあり得ないわけで。
でも、ふだん文句ばっかり言うイタリア人たちが、
73パーセント、政府の対応に
満足してるって出ているんです。
- 伊藤
- すごい‥‥。
- 小林
- 犠牲者のご家族も、
「お医者様には感謝しかない」
っていうコメントが多いと聞きました。
お別れできずに、
いきなり家族が奪われてしまう状況の中で。
- 伊藤
- そうですよね。
- 小林
- この家族愛に満ちた国の人にとって、
それがどれだけ辛いことか。
それでも「お医者様には感謝しかない」
って言っているのを聞いたとき、
辛いけど、でも、私もその時は、
同じように思うんじゃないかなって。
- 伊藤
- このごろ思うんです。
会わなくても、人とのつながりは途絶えないし、
逆にもっと深くなる。
- 小林
- 私はひとり暮らしなので、
みんながやたら心配して
電話してきてくれたりしますよ。
- 伊藤
- もりみさんは、食材の生産者さんと
直接やり取りして、
食材を選ばれたりしてるじゃないですか。
そのみなさんは、
今どういうふうに過ごしているんですか。
たとえば、オリーブオイルとか。
- 小林
- オリーブオイルはもう収穫が済んでいて、
今は畑仕事なんですね。
発注すると、真空タンクに貯蔵してあるものを
瓶詰して出してくれるんですけど、
幸いなことに、食品の分野は
生活必需品なので、動いてるんです。
でも3月は、1か月くらい
生きた心地がしなかったです。
イタリア全土が封鎖になると発表された夜は
さすがに眠れませんでした。
「カーサ・モリミは、もう売るものがなくなるのか」
と思って、次の日、電話しまくったんです。
南のほうの生産者のみんなに。
そうしたら、「普段10人でやってるけど、
ソーシャルディスタンスを取って
仕事をしないといけないので、
今は4人でやってるよ」とか、
パスタ屋さんも「夫婦2人でやってるよ」とか。
むずかしい状況の中で、一所懸命、
できることをやっているんですね。
- 伊藤
- へぇ。じゃあ、忙しくなさっていたんですね。
- 小林
- はい。コンテナが中国で止まり、
なかなか来なくなっていると聞いて、
もうとにかく電話しまくりました。
私の分野は、本当に幸運に、
すごくスローでしたけど、
「なんとか届けるよ」と生産者さんが言ってくれて、
泣かされました。
私の分野は何にしても時間がかかるんですけど、
やっと昨日船が出て、日本に届けられそうです。
恵まれていると思います。
モーダ(MODA)、ファッション業界ですね、
そこに勤めている友達や、音楽関係の人は、
先が見えないと言っていますから。
- 伊藤
- そうですよね。それは、食べることの
次の次、とかになっちゃいますもんね。
- 小林
- だからプラダもマスクを作って納めたりとか、
アルマーニも、使い捨て防護服を作って
寄付したり。
本当、イタリア中で、
できることで貢献していく姿勢がありますね。
- 伊藤
- すばらしいですね。
じゃあ、もりみさんの心の安定は、
いまは大丈夫ですね。
- 小林
- はい。ミラノの近郊で
お米を作っているっていうことも、
心の安定に役立ってます。
冷蔵庫にちゃんとおいしいお味噌があることとか。
イタリア人のパンやパスタは、
私にとってのお米やお味噌ですから。
- 伊藤
- そういえば、私も、
熊本でひとり暮らしをしてる、
パティシエのお友達が
誰にも会えないし、
かといって実家のある東京に
戻ることもできないと言っていたので、
イタリアの米を送りましたよ。
「こういうときは米かな!」って。
マンガも添えてね。
すごく喜んでくれました。
- 小林
- こういうときって、
本当にそういう気持ちがうれしいですよ。
私も、大阪の友人が、
おいしい梅干しと本と
明るい色のシャツを国際便で送ってくれたり、
お医者さんのお友達が、
すごくおいしいお煎餅を、
「We Shall Overcome.(乗り越えられるよ)」
っていう言葉と共に送ってくださったり。
今は、毎日1枚だけ、
お茶をおいしく淹れて、食べてます。
そういうことがほんとうに力になります。
- 伊藤
- うんうん。
- 小林
- 外がすごく悲しいことになっていても、
仕事が忙しかったことと、
そういう人の気持ち、
そして生産者さんたちのあったかい気持ちが
救いになりました。
「なんとか日本には荷物を出すからね!」って。
- 伊藤
- 「イタリア、大変だよね」って、
みんなで言っていたんです。
本当によかった、お元気そうで。
みんなからも質問はありますか?
- ──
- はい、ぜひ。
さっき、「スーパーレジの方も亡くなっている」と
おっしゃっていたのに驚いてしまって。
やはり感染者数、死者数の多さゆえか、
「死」というものを、イタリアにお住まいだと、
ずいぶん身近に感じておられるように思ったんです。
- 小林
- そうですね。
私がいちばんそのことを思ったのは、
ベルガモという、深刻な事態に陥った
北イタリアの町があるんですが、
その地元紙の訃報欄を見たときです。
ある日の新聞に、
訃報が10ページくらい載りました。
亡くなった方を、写真と共に掲載していたんです。
- 伊藤
- 訃報が10ページ‥‥。
- 小林
- 私たちって、数字だけ見ていると、
そこに、1人1人の暮らす人生や、
そこに、たくさんのご家族がいるっていうことを
想像してもしきれないですよね。
けれども、お顔を見ると、
ほとんどが高齢者の方だったんですけど、
深く刺さるものがあって。
- 伊藤
- 今まで数として認識していたのが、
実際、亡くなった方のお顔を見ることで‥‥。
- 小林
- そうなんです。
レジの方が亡くなったと知ったときも、
自分に何ができるんだろうと考えて。
本当すごくかわいそうだなと思うんです。
みんな怖いじゃないですか。
マスクだって完全にウィルスを防ぐことが
できるかどうかわからないわけですし、
毎日、たくさんの人と接触するわけですから
リスクは高いわけですし、
対面しても、世間話もできないし
お礼だって言いづらくなっているし。
やっぱり、できることは、
できるだけ行かないことだと思って。
- 伊藤
- うんうんうん。
- 小林
- だから、なるべくスーパーに行く回数を減らして、
行った時は「ありがとう」の気持ちを、
目を思いきり開いて(笑)、
表情で伝えることにしているんです。
- 伊藤
- なるほど!
- 小林
- あとは、友達のお兄さんが感染したり、
パリの友人が感染したりしています。
もう回復したんですが、
2週間くらい熱が下がらず、味覚がなく、
嗅覚もない状態で、すごく辛かったと、
SNSで発信なさっていたりして。
- 伊藤
- いま発表されている、
これからのイタリアのコロナ対策は
どうなっているんでしょう。
- 小林
- 5月の4日から
(註:対談は5/1に行われました)、
「フェイズ2(ツー)」という
新たな段階に入るんです。
それは「コロナと共に生きていく」ということで、
段階的な解除になっていくんですよ。
- 伊藤
- 「コロナと共に生きていく」。
- 小林
- コロナがなくなった、終わったのではなく、
コロナと共に生きていく、
暮らしていく時期だということです。
イタリアの集団免疫を調べると、
まだ10パーセント台しかないんですって。
私もこれからスマートフォンのアプリを
入れなきゃいけないんですけど、
州がつくった情報のアプリを活用して、
社会の情報と、
自分がどういう状況かをシェアすることで、
安全に暮らそうという動きが生まれています。
それが「フェイズ2」なんですね。
お店は18日から、だったかな。
私がルンルンなのは、
5月4日からお散歩ができること!
- 伊藤
- おぉ。それすらも、できなかったんですものね。
- 小林
- パリやニューヨークだとできることが、
イタリアはだめだったんですね。
「フェイズ2」で、少しずつ社会が、
「仕事に戻ろう」とか、
そういうふうになるんだけれども、
ウイルスはいなくなったわけじゃないんだから、
共生するためにしっかりルールを守って、
再発を防がなきゃいけないということですね。
だからお散歩も慎重に!
でも「できる」と思うだけで、
ほんとうにうれしいです。
- 伊藤
- うんうん、ありがとうございました。
今回、いろんな方と話をして、
逆に私たちが元気を貰っています。
イタリアを見直した、
っていうお話、素敵でした。
- 小林
- そうですか!
そういえば、うちの大家さんからも
ちょっと泣かされたんですよ。
大家さん、おばあさんなんですけれど、
親しくしているわけではなかったんです。
それが、突然電話がかかってきて、
「え、私、家賃滞納でもしてるのかな?」と思ったら(笑)、
「もりみ、なにか私にできることはある?」って。
- 伊藤
- ええっ! それは嬉しいですね。
- 小林
- びっくりしてしまって。
「むしろ、私があなたのために
何かできることありますか」ですよね。
その翌々日がイースターだったんですが、
管理人さんが、大家さんからですよって、
大きな卵のかたちのチョコレートを
届けてくださって。
マンションの下には、
「ご高齢の方々へ。
買い物をする必要があったり、
困っていることがあったら、
ここまで電話をどうぞ。何でもします。
何階の何々より」という張り紙があったり。
そういうことが、
すごく心をあたたかくしてくれるし、
「あぁ、きっと私たちは大丈夫、乗り越えられる!」
みたいな気持ちにしてくれる。
そういうことが、一番重要なんだなと思いました。
こういうときって。
- 伊藤
- 本当ですね。まず自分からですね。
- 小林
- そういうことが少しずつ拡がっていくと、
大河の一滴が社会を変えていくと思います。
‥‥そうだ! 私のほうから、
まさこさんにお礼を言わなくちゃ。
- 伊藤
- えっ? なんだろう?
- 小林
- 3月の真ん中くらいに、
ミラノでもマスクをしないと外に出ちゃいけない、
っていうルールになったとき、困ったんです。
手作りをすればいいんですが、
私「ブッキー」というあだ名が付いてたくらい、
学生時代から不器用なんですよ。
そうしたら、伊藤さんの、
ハンカチマスクの簡単な作り方が載っていて!
あれでいくつかマスクを作りましたよ!
イタリア人たちにも、リンクを送りましたし、
あのおかげで、私はマスクに困りません。
ハンカチを折って、チクチク。
あれだったら、私もできました。
- 伊藤
- わぁ、うれしい(拍手)!
ありがとうございます。
- 小林
- こちらこそ。
また元気にお目にかかりましょう。
- 伊藤
- ぜひ! ありがとうございました。
スティルモーダの コーディネート。 伊藤まさこ
[1]靴にポイントを。(GOLD編)
ワンピースを一枚さらりと、
またはブラウスとパンツ、
Tシャツとデニム‥‥。
重ね着はせず、
アクセサリーもつけるとしたら
ピアスとリングひとつくらいの、
あっさり、シンプルなコーディネートが好きです。
だから、形や質感がとても重要。
ことに足元に何を持ってくるかは、
よくよく考えなくてはいけません。
私がよくするのは、
靴にポイントを持ってくるコーディネート。
赤やグリーンなど、服だったら少々派手かな?
と、ためらう色でも靴なら冒険できる。
自分の目から、ちょっと離れたところにあるからかな。
面積がそう大きくないから、というのも
あるのかもしれません。
ニットのワンピースに合わせたのは、
Stilmodaのゴールド。
大人っぽく、シックに見せてくれるのがうれしい。
バッグもまた靴と似た色合いのものを。
ベージュのニットワンピースを、
少し華やかに見せてくれるのはゴールドだからこそ。
黒い麦わら帽子をかぶったら、
夏のお出かけにもぴったりです。
夕方6時の記者会見、 たっぷりのいい食材、 最初からあった安心感。
5/1、東京は夕方5時、
イタリアのミラノは朝10時。
世界の都市のなかでもかなり厳しい状況と言われるミラノで、
ひとりぐらしをしている小林もりみさんと対談をしました。
その3日後から「フェイズ2」という段階に入ることが
決まったイタリアの人々は、
いま、どんなふうに暮らしているんでしょう?
- 伊藤
- もりみさん、
ご無沙汰しています。
- 小林
- ずいぶんご無沙汰しています。
今回は誘ってくださって
ありがとうございます。
- 伊藤
- 今、ミラノですよね。
- 小林
- はい。ちょうどこの4月で
10年経ちました。
- 伊藤
- NHKの『世界はほしいモノにあふれてる』
に出られていましたね。
- 小林
- 撮影、ぎりぎりだったんですよ。
シチリアでの撮影が終わって
ミラノに帰った日に、
北イタリアで感染者第1号が
見つかったんです。
- 伊藤
- そのときまでは、
アジアの向こうのほうのことだと
いう感じでしたか?
- 小林
- はい。ローマでは、
武漢から来たご夫婦ともう1人が
感染しているという情報はありましたが、
まだ遠い出来事だったんですよ。
ところが、ミラノの郊外で1人見つかってからは、
これは本当に現実なんだろうか、
っていう日々が始まりました。
2月21日のニュースから1週間もしないうちに
その地域が封鎖になって、
3月の8日には、ミラノも制限がかかりました。
- 伊藤
- 都市が封鎖されたときに、もりみさんも含めて、
周りの方はどんな反応だったんですか。
- 小林
- 事態は深刻だったんですけれども、
最初から安心感、信頼感はあったんです。
- 伊藤
- えっ? それはなぜ?
- 小林
- イタリアの首相はコンテさん
(ジュゼッペ・コンテ)っていう
50代の男性なんですけれど、
彼はもともと弁護士で、
大学で教えたりもしていた人なんですね。
正直、政治家としては頼りないと思っていたし、
カリスマ性も足りないという印象だった。
そのコンテさんの首相会見がTVで放送され、
そこでの説明や呼びかけが、
すごく明確だったんです。
「国民の健康がなによりも第一。
今は議論するときではなく、
とにかくみんなで協力して危機を乗り越えていく」
と熱く語っていて、
20分くらい吸い込まれて見ていました。
その国民第一の明確なメッセージを聞いたことが
安心につながったんです。
「きっと大丈夫だ」って。
もちろん「えぇっ? 封鎖?」と思ったんですけど。
- 伊藤
- なるほど、
いちばん最初がそうだったんですね。
- 小林
- はい。その後、イタリアの市民保護局、
プロテツィオーネ・チヴィーレ(Protezione Civile)
という機関があるんですけど、
そのリーダーであるボレッリさん
(アンジェロ・ボレッリ)という人が、
毎日18時に、保険機構のトップの人たちや、
専門家と記者会見をして、
毎日、何件陽性反応が出て、
集中治療室に何人いて、犠牲者は何人だと、
日々アップデートをして、
透明性高く発信をしたことも、
信頼につながりました。
なにもかも、明快だったんです。
その後もあたらしい措置が取られるたびに、
コンテさんの熱いメッセージがテレビで流れました。
「イタリアを救うために、僕は政治的責任を負う。
だから、国民1人1人が責任を持って
自分たちの愛する人のために行動してくれ。
それぞれが、自分の役割を果たしてくれ。
誰ひとりとして、置き去りにしない!」
- 伊藤
- もりみさんだけじゃなくて、
イタリアの皆さんがみんな、
「よし、ついていこう」
と思った、という感じですか。
- 小林
- そうですね。
イタリアって、皆さんもご想像のとおり、
1人1人の意見がすごく強いんですね。
政治も右と左を行ったり来たりですし、
与党と野党の対立も激しい。
ジャーナリズムは体制に対して
強く説いていくことが任務だと思っているから、
首相への質問も厳しいんです。
でも今回はみんな協力姿勢をみせていました。
野党も「今はとにかくイタリアのために、
自分たちの国を取り戻すために、
傷を早く癒すために、1つになって頑張るぞ」
っていうメッセージがはっきりしていたんです。
人の命の前で、こんなに団結するんだ、
そのことに、イタリアに住んで、
初めてびっくりしたんです。
- 伊藤
- イタリアは、コロナを前に、
ひとつになって向かおう、
みたいな感じなんですね。
- 小林
- 私も、たぶん他のイタリア人も一緒だと思いますが、
毎日、夕方6時の記者会見を軸に
1日が回っていたような感じです。
そこで、今どうなっているか、
みんなが固唾を飲んで見守るみたいな。
- 伊藤
- きっと数字を発表する以上の
メッセージがあるんでしょうね。
- 小林
- そうですね。
でも、数字もとても重要だと思っていて。
毎日、市民保護局のホームページに
すべてのデータが載るんです。
検査数も、症状が軽い自宅待機の人の数も、
1日も欠かさず毎日アップデートされています。
私がいつも追っているのは新聞のサイトで、
それをさらにわかりやすい表にしてくれるものです。
たとえば、昨日は68,000件検査をしていますが、
3月あたりまでは
陽性反応者数が20%くらいだったのが、
4月に入ってから6パーセントくらいになり、
昨日(4/30)のデータだと、
2.7パーセントなんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 小林
- 68,000人に対して2.7%ですから、
1,800人以上の人が新たに感染してるんですけど、
それでも下がってきていることが把握できる。
集中治療室に入っている方も、
何月何日にピークで4,000人まで行ったけれど、
今はこうです、ということが表になって、
しかもそのデザインが美しいのが、
イタリア的だなって思います。
これがページなんです。見えますか。
- 伊藤
- 見えてます! なるほど、デザインが。
- 小林
- 昨日は345人亡くなっているわけなので、
本当にまだまだ先は長いと思います。
ほかにも「どれくらい緊急電話を受けたか」を
都市別に示していたり、
感染者数の州ごとの推移、
感染者、死亡者の年齢も。
さらに、イタリア国内だけではなく、
各国の感染者数を
ぱっとわかるグラフにしていたり。
感染が始まってからの日数で、
国ごとの推移がわかったり。
- 伊藤
- 数字をつぶさに読まずとも、
すぐにわかるようにデザインされているんですね。
- 小林
- だいたい何が起こっているか把握できるんです。
ただ、国によっての違いはありますよね。
イタリアは、日本の政策とは全然違って、
初めのうちからものすごく検査をしているので、
その数に応じて感染者数もすごく多いんですよね。
どの国の対策が正解かは終わってみないと
わからないと思うんですけれども。
- 伊藤
- 今回のことについて、
イタリア特有だと思う現象はありますか。
- 小林
- イタリアのライフスタイルって、
世代を超えて、家族愛が満ちているので、
ものすごく交流が多いんですよね。
会ったら、ハグしたり、
ほっぺにキスしたりっていうのが当たり前なので、
そういうライフスタイルが、
わからないうちに感染を拡げていたと、
後になってわかったんです。
老人介護施設に孫が会いに行ったら、
じつはその子が陽性で
症状が出ていなかっただけだった。
それでその施設で感染が広まってしまったとか。
- 伊藤
- 今はどうしてるんですか。
ハグは、きっと、しないですよね。
- 小林
- 2月の末くらいに、首相が言ったんです。
「私たちが今まで慣れてきた習慣を
手放す必要がある」って。
「再び、もっと強く抱擁できるように、
今は遠くからお互いを励まし合おう」って。
それもイタリア的だなぁと思いました。
そのときはまだ友達に会えていたので、
いつもだったらほっぺにキスするのを、
「私たち、今、できないよね」みたいな。
最近、ニュースで見たら、首相が、
どなたかに会うのに、肘と肘を合わせてました。
- 伊藤
- 肘!
- 小林
- スーツのおじさんたちが(笑)。
やっぱり何かをしないと、
落ち着かないんだぁと。
- 伊藤
- かわいい(笑)。
レストランに行かなくなって、
どうされてるんですか、皆さん。
食いしん坊の人たちは。
- 小林
- 本当に幸いなことに、
食べ物は全然困らないんですよ。
それも首相が言っているんです。
「一番重要なのは、パニックを起こさないことだ。
私たちの国には、食べ物がしっかりあるから、
安心しろ」と。
それでも最初の頃は、
郊外のスーパーに人が殺到して、
パスタの棚が空になったりしましたけれど、
私は列もほとんど作ったことがないですし、
食材は何でも買えています。
私の住まいは道を渡ると大型食材店があって、
おいしいものには事欠かないんです。
入場制限をしているので
とても空いていますし、
レジに並んで待っているとき、もし列ができても、
1メートルずつ空けているので安心できます。
それに、こういうことになると、
「いつもよりいいものを買って、楽しく過ごそう」
と思うんですね。
友人が言っていておもしろいなぁと思ったのは、
レストランが閉まっちゃってるから、
魚屋さんに行くと、いつもよりいいものがあると。
レストランに行く分が回ってきてるんですよ。
だから「魚を食べる機会が増えた」と言ってました。
- 伊藤
- へぇ!
- 小林
- 最初、トンネルの出口が見えなくて、
どこまで悪くなっちゃうんだろう? って、
みんなが思っていたときからそうでしたが、
本当においしいものが食べられたり、
おいしいワインが飲めたりとか、
そういうことが
すごく心を安定させてくれていると思うんです。
イタリアでいい食材が手に入らなくなったら、
すごく惨めな気分になるでしょうね。
- 伊藤
- そうですね。それはすごく重要ですね。
食べるものって。
- 小林
- オンラインで友達と同じ時間に
ディナーをすることがあるんですけれど、
みんなしっかりご飯を作っているんですよ、
おいしそうなものを。
パンや手打ちパスタを
自分でつくる人が増えているらしく、
スーパーでよく品切れになるのが
小麦粉と酵母です。
私は10日に1回くらいしか
買い物に行かないので、
食材が尽きるころに誘われると、
粗食が映っちゃうんですけれど、
友人は、ドーンと旬のアスパラガスを盛ったり、
ドーンとお魚一尾を調理したりしていて、
「あ、しまった!」って(笑)。
でも、そうだよね、みんな、
おいしいものを食べたいんだなって思います。
- 伊藤
- なるほど~!
10日に1回くらいなんですね、買い出し。
- 小林
- はい。スーパーレジの方も亡くなっているので、
私たちは負担をかけないように、
「できるだけ控えましょう」みたいな感じです。
でも1回で持って帰ることのできる量には
限りがありますから、
毎日おいしく食べるためには工夫をしないと。
初めのうちは葉物、
長持ちするキャベツは最後、
これはピクルスにして、とか、
カタクチイワシのおいしそうなのが買えたら、
アンチョビ(塩漬け)にしておこう、などと考えます。
私は食材屋なんですけれど、
そうか、冷蔵庫がなかった時代には、
たとえばコラトゥーラ(魚醤)って
必然だし、重要だったんだななんて実感したり、
いろんな発見があって楽しいです。
いま外で起きている出来事を思うと
不謹慎なんですけど、
ロックダウンってなったとき
「楽しんでやる!」と思って。
毎日をどれだけ楽しく過ごすか考えてます。
- 伊藤
- 「こうしなさい」って決まってることだから、
それをどう楽しく乗り切るかっていうふうに
気持ちを切り替えたほうがいいですよね。
- 小林
- そうなんですよ。
私は、自分でやれることをやるだけだ、と。
首相もそうですけれど、
市民保護局のリーダーが、
毎日、記者からの質問に、
全然ひるむことなくパンパン答えている姿を
TVで見ると、思うんですよ。
「もうとにかく、この人たちについて行けば
大丈夫だから、あとは
自分でやれることをやるだけだ」って。
記者会見では、経済について
文句を言う人もいますが、ハッキリと、
「経済で人の命は奪われないけれど、
コロナでは奪われますから」みたいに、
毅然と反論していて。
社会が思ったよりも健全で、
当たり前に「人の命」っていうものを
経済人も大事に思っていて、
だからこんなにひどい状況なのに、
安心感があるんです。
- 伊藤
- それは、すごいです。
だって今欲しいのって
「安心感」ですもん。
私たちも安心したい。
- 小林
- こういうことになって、
全然知らなかったイタリアの
いい面をいろいろと知れましたよ。
わりとみんなちゃんと仕事してるんだ!
みたいな(笑)。
- 伊藤
- (笑)
- 小林
- こんなにちゃんとできたの? って(笑)。
本当に感謝してます。
Stilmodaのフラットシューズ
靴のスタンダード。
もしも家を建てるのだったら、
絵本「ちいさいおうち」に出てくるような、
切妻屋根がいい。
子どもの頃から、それはずっと変わることのない私の夢。
そういえば、
マグカップも、ティーポットも、
テーブルや椅子も、
いつも、いいなぁと思うのは、
子どもが描くような、
シンプル極まりない形。
これ以上、足しも引きもいらない、
みんなの頭の中に、
しっかり「スタンダード」として、
刷り込まれた形が、好きなのです。
今週のweeksdaysは、
Stilmodaの靴を紹介します。
むだな装飾は一切なし。
スッと履きやすく、
どの角度から見ても美しい。
これも、みんなが思う、
靴のスタンダードな形ではないかなぁと思うのです。
色はシルバー、ゴールド、ブラックの3色。
明日のlookbookをどうぞおたのしみに。
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
5月21日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
chisaki ENRIE
日本製の和紙を使用した、柔らかな被り心地の帽子です。
お届けは7月下旬頃になります。
「持つとしなやか、
かぶると額や頭に、やさしくフィットしてくれる帽子です。
つばの表情のつけ方で、
印象が変わるので、ヘアスタイルや合わせる服によって、
いろいろとたのしんでください。
色は6色。
どれもニュアンスのある色合いで、
どれにしようか迷うところ。
私は、色違いでいくつか買って、
夏のおしゃれを満喫しようと思っています
外のリボンも絶妙な色合いですが、
帽子を取ると、内側に見えるテープの色もまたすてき。
自分だけにしか分からないおしゃれって、
なんだかいいなと思うのです。」
(伊藤まさこさん)
見えない部分まで、とことん。
- 伊藤
- 撮影に立ち合って思ったんですが、
苣木さんの帽子は、深く折り返してもいいし、
前だけ折ってもいいし、折らずに被ってもいい。
1個の帽子でいろんな表情になるんですよ。
髪形によってもいろいろ楽しめる。
すっごい面白かったです。
- 苣木
- すっごく嬉しいです!
写真もたのしみです。
- 伊藤
- 私が苣木さんの帽子を知ったのは、
友人が被っていたのを見てでした。
「それいいね!」って。
私のまわり、結構、持っているんですよ。
- 苣木
- えー?! なんと! 本当ですか?!
- 伊藤
- ほんとです。編集やライターのお友達。
「知らなかったの私だけ?」みたいな。
それで、今回の帽子のことなんですが、
最初に言ったように、
麦藁帽子っていうと、割とほっこりするじゃないですか。
だからそういうタイプの帽子を敬遠していたんです。
- 苣木
- 分かります。私もそういう感じでした。
- 伊藤
- でもこれは本当にエレガントだし、
ぺちゃんこにして持ち歩けるのもいいですよね。
麦藁帽子を旅行に持って行くのに、
スーツケースに入らないとしたら、
被って行くしかなかったから。
しかも網棚に忘れるとかして‥‥。
- 苣木
- そうですよね。
- 伊藤
- そして絶妙な色合い。
しかも、裏が全部かわいいです。
男性がかぶってもおかしくはないですよね。
男性は、リボンだけ、もしかしたら結ばないで、
縫っちゃってもいいのかもしれないけれど。
- 苣木
- そうですね、縫ってあげると、
メンズの帽子ぽくなりますね。
私も「ナチュラルにかわいい麦藁帽子」が
似合う年齢ではないというか、
ちょっとくすぐったいので、
あえて、大人っぽく、
凛とした雰囲気に仕上げたいと思って
デザインをしています。
- 伊藤
- いつから作られているものなんですか?
- 苣木
- この形になったのは、独立して2年目ですね。
それまでも、こういう雰囲気のものを
作ってはいたんですけど、
つばが真っ直ぐで定着されてるものでした。
これは丸みがあるけれど、中折れになっていることで、
ちょっとマニッシュな感じを出しています。
最初、丸い木型を使ってクラウン
(帽子のリボンから上、頭にかぶる部分)
を成形するんですが、
そのあと、手で中折れの形にしているんですよ。
- 伊藤
- サイズ調節紐にビーズがついているので、
ここが後ろになるんだなとわかりやすいです。
- 苣木
- はい、よく、私の作る帽子は「どっちが後ろ?」って
聞かれることも多いのですが、
サイズ調整ができるものは
基本的にはビーズが後ろになっています。
額に当たる部分には*のマークが
ハンドステッチで入れられています。
「第3の目」って誰かが言ってました。(笑)。
- 伊藤
- 確かに! ビーズはどちらのものですか。
- 苣木
- これはアフリカのガーナで、
リサイクルガラスで作られているビーズなんです。
- 伊藤
- じゃあ、1点ものなんですね、全部ね。
- 苣木
- そうですね、全部1点ものです。
どんなビーズのものが届くかは、
ぜひ「おたのしみ」とお考えいただけたら。
- 伊藤
- かわいいです。
- 苣木
- すごく細かいんですけど、
ゴム紐がエメラルドグリーンですが、
オリジナルで作った色なんです。
敢えて言うことではないかもしれませんが。
ありものだと、ちょっと可愛すぎたりしたので。
- 伊藤
- 内側にぐるりとついている
「すべり」というのかな、
この色の組み合わせはどうやって決めるんですか。
- 苣木
- それはもう、感覚ですね。
- 伊藤
- いい色ですよね。
全然見えないじゃないですか、被ってしまうと。
でも、自分には嬉しい。
着物の八掛(はっかけ)みたいな感覚ですね。
そして、熟練の職人さんにしか
できないとおっしゃっていた、
ブレードを縫うという作業。
原料が紙だとお聞きしましたけれど。
- 苣木
- はい、ブレードは細く裁断した和紙を使って、
専用の機械で作られています。
その原料は染め分けをしていて、たとえばグレーだと、
チャコールグレーとライトグレーの濃淡2色。
それを組んで行くので、
ちょっと杢っぽい、ジラジラした色味が出ているんです。
和紙といっても、100%ではなく、素材が安定するように、
よこ糸にポリエステルを使っています。
コットンではなくポリエステルを使うのは、
コットンは経年変化していくと切れやすいから。
よこ糸をポリにして和紙を編んでいくと、
強度も増すし、しなやかさも増すので、
この独特なコシと軟らかさが出るんです。
もちろん縫製も糸調子などで風合いを調整しています。
- 伊藤
- 紐は渦巻き状にミシンで縫っていくんですか?
- 苣木
- そうなんです、ブレードの端同士を
重ねて縫っていくんです。ミリ単位で。
- 伊藤
- すごい!
- 苣木
- 最初の、まんなかに来る丸が、
いかにきれいにできるかが、
職人さんの熟練の技なんですよ。
逆に言うと、
丸がいかにきれいかで、
職人さんの腕がわかるから、
麦藁帽子を見るときはそこを見るといいそうです。
- 伊藤
- 1個できるのに、どれぐらいの時間を要するんですか。
- 苣木
- 19歳から始めて、今83歳の熟練の職人さんは
一人で全部の工程をされるのですが、
1時間に2〜3個作られます。
通常はなかなかできないことで、
経験がなせる技だと思います。
感覚もすごくって。
- 伊藤
- そうですよねえ。
この微妙なカーブの調整、腕ですよね。
- 苣木
- そうなんです。
このごろ若手の職人さんもぐんぐん腕を上げて、
頼もしく思っているんですよ。
- 伊藤
- 若い方がいらっしゃるのはいいですね。
私もやってみたい!
ミシンがけとか、好きでしたから。
- 苣木
- ぜひぜひやっていただきたい!
気持ちのいいものですよ、
ミシンで帽子ができていくのは。
- 伊藤
- ケアはどうしたらいいですか?
- 苣木
- 家庭でのお洗濯はできないんですが、
ドライクリーニングは可能です。
ふだんのお手入れとしては、
「すべり」の部分が汗を吸うし、
ファンデーションとかで汚れて気になりますよね。
そんなときは硬く絞ったタオルで
トントントントンって叩いて汚れを移してあげる。
何年も被って、どうしようもなくなったら、
「すべり」を交換することもできますよ。
- 伊藤
- 雨のときはどうですか?
- 苣木
- 土砂降り以外は、私は平気で被っちゃいます。
乾かしていただければ大丈夫です。
でも「雨のときに積極的に被ってください」
と言ってはいませんけれど。
あとは、埃が付くのは、
帽子用のブラシはお持ちじゃないと思うので、
お洋服のブラシで叩いてください。
そして被らないときは、風通しのいいところに。
- 伊藤
- ありがとうございます。
たくさんお話が聞けてよかったです。
- 苣木
- こちらこそありがとうございました!
たのしかったです!
私、帽子作りを続けていいんだ。
- 伊藤
- ブランドのデザイナーになり、
販路も広がっていくと、
ひとりで作っていたときのように
ぜんぶ自分で縫うわけにはいかないと思うんです。
職人さんや工場に依頼しなきゃいけないですよね。
- 苣木
- はい。ただ、システムは変わったとはいえ、
サンプルを作って、パターンを起こすのが
自分の仕事なのは変わりませんでした。
それを職人さんに渡す、ということが変化でしたね。
すばらしいことに、職人さんが、テイストを変えずに、
ちゃんと引き継いで、作って下さった。
ただやっぱりどうしても量産となると、
効率を求められることが最初は多くて、
「そんなの手間がかかり過ぎてできない」
って言われたりもしました。
その悩みを社長に相談すると、
「本当に自分がやりたいんだったら、
職人さんなり工場の人たちを納得させるぐらい
頑張れ、粘れ」っていうふうに言われて。
- 伊藤
- なるほど。ほんとうにスパルタ!
- 苣木
- そうですね(笑)。
今思えば、それがよかったなと思います。
- 伊藤
- デザインは、好きにさせてくれてたんですか。
「こういうのは駄目だ」みたいなことはなく。
- 苣木
- そうなんです。
展示会の前に社長のチェックが
あることはあるんですけど、
「やるんだったらちゃんと結果を残せ」っていう、
ただそれだけだったと思います。
「これが君がやりたいことなんだね。
俺はちょっとこれは分かんないけど、
ちゃんとオーダーが取れるって思ってるんだろ?」
と。
- 伊藤
- なるほど。
当時は、どういうものがお好きだったんですか。
- 苣木
- そのときは、今よりも
ハンドクラフト的なものが好きでした。
たとえば、ニットは手編みですし、
ネーム1つ付けるのも、
普通はミシンで正確に縫い付けるのを、
ランダムにステッチを入れて付けたり。
パーツも業者に頼むわけですが、
型で抜いてもらえばいいものを、
揺らぎみたいなものを残すために、
全部手で切ってもらったり。
本当に細かいところなんですけれどね。
会社の先輩からは、
「それをやることで、売り上げが100個、
200個変わるのか?」と言われながら。
- 伊藤
- 「趣味じゃないんだからね?」
というようなニュアンスですよね、きっと。
- 苣木
- そうですね。
もともと量産の会社なので、
効率が悪そうなものが実際売れるのか、
判断のしようがないわけですよね。
だから先輩が言われることも「その通りだな」と。
- 伊藤
- そう言われても、へっちゃらでしたか?
- 苣木
- いや、すっごく悔しくてですね(笑)、
「絶対結果を出してやる!」と、やり続けました。
12年。
- 伊藤
- じゃ、その間に、
帽子作りの基本どころか、
なにもかもを習得して?
- 苣木
- もちろん、熟練の職人さんにしか
できないこともあるんですよ。
たとえば今回のように、
1本の紐をグルグル巻いて縫っていく
「ブレードを縫う」という作業は、
特殊なので、私にはできません。
だからそこは任せて、
私は他にないもののアイディアを出すことが仕事になる。
そんなふうに職人さんとコンビを組んで、
やってきたという感じです。
- 伊藤
- そうですよね。
その会社でブランドを担当して、12年、
そこで独立をなさったんですね。
そこで最初に作ったのは、
どういう帽子だったんですか。
- 苣木
- 独立して最初に作った帽子も、
担当していたブランドと、
大きくテイストは変わっていません。
ただ、辞めた以上、既存のお客様に私から
「新しいブランドを始めたので展示会に来て下さい」
なんていう営業はできません。
最初、とても不安で、独立したのはいいけれど、
「実際、私はご飯を食べていけるのか」と。
- 伊藤
- どうやって広めたんですか?
- 苣木
- すごく不思議なんですけど、
それまでのお客さんたちのあいだで
「あたらしいブランドを始めたらしいよ」と噂になり、
たくさんの方が来てくださったんです。
「私、帽子作りを続けていいんだ」って、
そのとき思いました。
頑張ろうって思った。
そうして今、5年目です。
忘れもしない、中目黒の川沿いにある展示会場でした。
お金もそんなにないし、と思ったら、
元々取引先だった社長さんが安く貸して下さって。
1人きりでは接客も満足にできないと思ったら、
友達が2人来てくれて、
展示会の設営も全部手伝ってくれて。
‥‥本当に、そうです、
そんなことがありました。
- 伊藤
- よかった!
じゃあ、オーダーもたくさん?
- 苣木
- そうなんです。
- 伊藤
- すごいですね。
- 苣木
- 本当ありがたいです。
前の会社からのお客様は、
もうかれこれ17年のお付き合いですし、
海外のお客様も、1年ほどは余裕がなかったんですけど、
自分の「chisaki」っていうブランドで、
もう1回パリに挑戦したときに、
たまたまお客さんがブースにいらして、
「え、名前が違う! どうしたの?」みたいに、
またお客さんとして戻って来て下さって。
- 伊藤
- なるほど。不思議ですね。
- 苣木
- 不思議ですね。ありがたいです。
- 伊藤
- 最初にベレー帽の作り方を教えてくださった方が、
原点ですよね。そこからして、縁に恵まれている!
- 苣木
- (笑)そうですよね。その方にお礼が言いたいんですが、
どこにいらっしゃるか、分からなくて。
すごく残念なんです。
中野にいらっしゃった
「ナオさん」っていう名前だけは覚えているんですけど。
- 伊藤
- またお目にかかれるといいですよね。
海外のバイヤーの方の反応はどうですか。
「また日本と違うなあ」とか思われますか。
- 苣木
- そうですね。反応が早いというか、ダイレクトで、
好き嫌いがすごくはっきりされている。
「これどうですか?」って営業しても、
「それはいりません。うちっぽくないから」って。
- 伊藤
- 日本は違うんですね。
- 苣木
- そうですね、その方の判断というよりも、
気になるものはお写真を撮って行かれて検討。
- 伊藤
- 日本のお客様は、
迷う時間ごと楽しまれていると思います。
- 苣木
- それは多いですね。
個人ではなくチームでいらっしゃることが多いので、
ワイワイと、被ってもらって。
- 伊藤
- 今回「weeksdays」で扱わせていただくのは
女性向けのものとして作られたと思いますが、
ユニセックスで使えるものも、
作られていますよね、
- 苣木
- はい、サイズさえ合えばどうぞ、と考えています。
ブランド自体はユニセックスとは
言っていないんですけども、
木型とかパターンによっては、
性別が関係ないものもあるので。
- 伊藤
- 木型は男性、女性が別なんですね。
- 苣木
- そうなんですよ。
すごくトラッドに言えば、の話なんですけど、
メンズは中折れのエッジがすごくきいていたり、
レディースはちょっと丸かったり。
ほんの少しの違いですけれど、
昔の木型は男女別でしたね。
- 伊藤
- サイズの違いだけじゃないんですね。
- 苣木
- それだけじゃないですね。ただまあ、
そこは緩やかに「サイズが合えばどうぞ」と。
- 伊藤
- 今、ビジネスマンが帽子を被らなくなりましたし、
若い男の子は、顔がちっちゃいですし、
どんどんユニセックスになっていますよね。
磯野波平さんは通勤に帽子を被っていますけれど。
- 苣木
- (笑)波平さん、確かに!
青空市場、 お花の安売り、 きれいな空気。
- 伊藤
- ところで、市場も閉まっているでしょうに、
食材はどう調達しているんですか。
- 田中
- それが、市場は閉まっていて真っ暗なんだけど、
食品のところだけは営業をしているんです。
- 伊藤
- そうなんだ! じゃ、食品は普通に売っている。
- 田中
- うん。青空市場もやってるし、
スーパーと薬局、花屋さんもやっています。
お花って、すごく大きい農園で、
一年中計画的に栽培をしているので、
余ってしまうんですね。
向こう3カ月ぐらいはお花も安売りで、
ちょっとかわいそう。
- 伊藤
- でもね、家にいる時間が長いと、
花を飾るのもいいと思う!
- 田中
- そう。いいです。
- 田中
- あとはね、精油をいっぱい持っているので、
気分で部屋をいろんな香りに変えて。
- 伊藤
- 確かに、香りっていいですよね。
私も毎日朝掃除して、
精油を玄関に置いている小皿に垂らしてます。
- 田中
- 香りがあるとやっぱり全然違いますよね。
- 伊藤
- 情報はどうですか。テレビや新聞、
ネット、いろんなところから入ってくる?
- 田中
- はい。ベトナムは社会主義なので、
一時はアクセスできないこともあった
インスタやフェイスブックも
今は自由にできるようになっていますし、
情報はちゃんと入ってきます。
でも今回、こういうことになって思ったのは、
ベトナム語を勉強しておいて良かったって。
なんでかっていうと、3月の後半、
自分が登録してるアプリからも、
毎日のように政府からのお知らせが
ジャンジャン届いたんです。
それに目を通し、
本当にザーッと、ポイントだけ読んで、
こうなってるんだ、っていうのを理解して。
大事な情報は、日本領事館も訳して、
数時間後に送ってくれたりするんですが、
刻一刻状況が変化していくなかで、
いちはやく自分で読めて良かったなと。
- 伊藤
- どういう内容のメッセージが送られてくるんですか。
- 田中
- 今日はどこそこでこういうことがあって、
どこで何人感染者が出ただとか、
飛行機の何便に乗ってきた人に出たから、
同じ便に乗ってた座席番号何番の人を探してますとか。
- 伊藤
- たしかにそういう情報は、急ぎますよね。
- 田中
- それから、電車もバスも減便ですとか、
配車アプリを使って呼べる、
バイクタクシーとバイク便だけはいいですよとか。
そういうことが箇条書きで来るんです。
政府からの「外に出てはいけない、
ということではないけれど、家にいてください」
というお達しも、もちろん。
- 伊藤
- みんなそれをちゃんと守っているっていうのがすごい。
だって、歩道までバイクで乗り上げて
通行するあの人たちが!
- 田中
- ほんとう!
ふだん、交通ルールがあんななのに(笑)。
でもいまは、そのバイクも走ってないですよ。
▲4月21日午前、大通りに抜ける並木道を
動画で撮ってみました。
一旦、小さな集団が取り抜けると、次がやって来ない。
普段はひっきりなしなんですけどね。(田中さん)
- 伊藤
- じゃ、空気がきれいになっていそう。
- 田中
- そうなの! すごくきれいになってます。
- 伊藤
- 身をもって感じる?
- 田中
- スマートフォンのアプリでもわかるんですが、
なにしろパッと見てきれいですよ、やっぱり。
- 伊藤
- そっか!
心配だというご高齢の大家さんご夫婦も、
いまはお元気なんですよね。
- 田中
- 元気! 朝からビール飲んでますよ、
おばあちゃん(笑)。
- 伊藤
- それは良かった。強い。
- 田中
- そう、やっぱり強いんだと思う。
- 伊藤
- いいですね。
強い人を見ると、こっちもホッとする。
- 田中
- 騒ぎが起きはじめた頃、
工場に行かなくちゃいけなくて
出かける時におばあちゃんに
ガシッて手をつかまれて。
「こういうときだから」と、
目をじっと見て言うんです。
「本当にいいときではない、いまだから、
本当に気をつけなさいね」って。
- 伊藤
- 伝わりますよね。
- 田中
- あと、私の心配は、大家さんの猫ですよ~。
- 伊藤
- あ、猫ちゃん飼ってるんですよね。
- 田中
- そう。私の猫じゃないんですけれど、
大家さん、まったく面倒を見ないので、
私が面倒を見ているんです。
ハッて気づいて、「あれ? 猫のカリカリの
ストックがないんじゃない?」って。
2匹いるんですけど。
猫のために朝6時20分に起きてます。
ますます生活リズムが変わらない。
猫がいなかったら、
もうちょっと寝てると思うんだけれど。
- 伊藤
- でも、ずっとうちにいると
メリハリがなくなるから、いいのかも?(笑)
- 田中
- そうそう。決めた方がいいですよね。
私は寝てていいって言われたら、
本当にずーっといくらでも寝られるので(笑)。
そうならないように、
大家さんの猫がいて良かったかな。
- 伊藤
- 逆にこの機会になにかしようと
思ったことってありますか?
- 田中
- それこそベトナム語をちゃんとやろうって。
ニュースも、ポイントはわかっても、
細かいわからない単語もあるんです。
この仕事も先が見えない状況ですから、
通訳の仕事ができるくらいに
語学を鍛えておこうかなって。
いろいろ考えるんですよ、
そろそろ日本に帰った方がいいのかなとか。
いよいよ真剣に考えるときが来ましたね。
- 伊藤
- うんうん、そっか。
- 田中
- でも、今年は私、もう帰れないと思って
生活したほうがよさそうです。
飛行機が飛ぶのはまだまだ先でしょうし、
飛び始めても、すぐには帰らないと思います。
- 伊藤
- じゃあ、いまそこでできることを、
毎日おうちの中でやっているということですね。
それにしても、なんだか不思議。
街が人でいっぱいで活気があるっていうのが
ホーチミンの印象だから。
そうだ、インスタに載っていた
子犬はどうなっているの?
- 田中
- 子犬! 工場の犬なので、
会えてないんですよ~。
番犬が2匹いて、
そこに6匹赤ちゃんが生まれて、
もうかわいくって。
片手にのるくらいの小ささだったの。
でも次に行けるときが来たら、
きっと、もうほとんど貰われていった後だろうな。
- 伊藤
- そっかあ。
- 田中
- 癒しでした、あの犬は。
- 伊藤
- これから、解除のプランは発表されているんですか。
- 田中
- 3段階に分けて解除していくっていうことで、
ハイリスクの都市である
ハノイ、ホーチミン、ダナン、
ラオカイっていう中国国境の町、
タイニンっていうカンボジア国境の町、
あといくつか指定されていてるところは、
最後になると思います。
最初に解除されるのは全く感染者がいないところ。
既に少しずつ行動制限解除の動きがでているみたいです。
2番目はそんなに感染者がいないところ。
一気に全部解除とはしないんですね。
私の住んでいるホーチミンは、
一番最後まで行動制限があると思います。
- 伊藤
- 地方の実家に帰ってはいけません、
みたいなこともあるんですか。
- 田中
- はい。ニュースになっていたのは、
実家に帰って、ホーチミンに戻ってきた人が、
警察に怒られたって。
1人でもそういう例を出しておくと、
みんな一気にやらなくなるので、
大きな問題にはなっていないですね。
- 伊藤
- そっか。
ベトナムの人たち、職を失わないといいなあ。
手仕事が減っていると
田中さん、以前おっしゃっていたけれど、
こういうときこそ、手仕事って強いですよね。
- 田中
- そうなんです。このあと、きっと、
社会が変わっていくじゃないですか。
元通りにはならないだろうし、
絶対に会社に行く必要性があるかっていうと、
必ずしもそうではないっていうことになってきたし。
そうなるとなおさら、
手仕事って変わらない、強いなあと思って。
仕事さえあれば、家でできる。
明るい時間にやればいい話だもの。
太陽のサイクルで働ける。
すごいな、手仕事の人たち、って、
改めて思っています。
- 伊藤
- 田中さんも強いですよ、
あんまり変わらない。
自分のしたいことを仕事にしてるっていう
強さもあるのかもしれないし、
やっぱり外国に住んでるって、
母国語じゃない、文化も違うわけで、
私たちのように日本にいるのとは
またひと段階身構えが、心構えが違う。
だからこういう
「えっ?」っていう事態になったときでも、
強い感じがします。
- 田中
- 普段、いろんなことが降りかかってくるので、
ちょっとやそっとではびっくりしませんよ!
確かに今回はちょっと
「これは参ったな」っていう感じですけれど、
こればっかりは本当、ベトナム人が
「受け入れろ」っていうように、
「はい、わかりました」って。
社会主義も、こういうとき、すごいなって思いますよ。
政府がことを決めるのも早いですしね。
首相は今回のことで相当株が上がったんじゃないかな。
- 伊藤
- なるほど。
社会主義ということもあるとは思うけれど、
みんな素直に家から出ないのは偉いな。
- 田中
- この状況なら、人に会わないのが普通ですよ~。
- 伊藤
- ですよねえ。
でも考え方の違うひとが多いと、
日本にいると感じるんです。
夫婦間でも違うし、
自分の近い人でも自分じゃないから。
田中さん、ありがとうございました。
どうかお気を付けて。
お家での仕事が進みますように。
- 田中
- 伊藤さんもどうぞお気をつけて。
ありがとうございました。
- 伊藤
- 久しぶりに話せて良かった!
- 田中
- 私も良かったです!
- 伊藤
- 早く会えますように。
ベトナムでも日本でも!
ある日突然、帽子に魅かれて。
- 伊藤
- とてもかわいい帽子をつくってくださって、
ありがとうございます。
かわいいだけじゃなくて、実用的で、
麦藁帽子なのに「ほっこりしていない」、ですよね。
- 苣木
- とっても嬉しいです。
これはずっと作り続けて来た、愛着のある形で、
特に凝ったデザインではありませんし、
デコラティブなものでもなく、むしろシンプルですが、
そこを「いい」と言って頂けるのは、すごく嬉しいです。
ちょっとした工夫が、実はいっぱい入っているんですよ。
- 伊藤
- そうですよね!
昨日撮影でモデルさんに被ってもらったんですけど、
「サイズ調節ができる帽子は、
その調整する紐が痛いことが多いのに、
chisakiさんのは、全然大丈夫です」って。
- 苣木
- 気づいていただけて嬉しいです。
実は自分でも何回か
いろんな素材で試してみたことがあるんですが、
最終的に、ストレッチする素材がいいと考え、
ゴム紐になりました。
最初は伸びない紐にしていたんですけれど、
紐は最初はフィット感が出ていいのですが、
締めつける部分が痛くなってしまうんです。
きつく締めたときは、半日も被っていると、
頭が痛くなってくるほどで‥‥。
- 伊藤
- ゴム紐の太さも、絶妙ですよね。
- 苣木
- 1ミリだと弱すぎるし、
1.5~2ミリだとちょっと太すぎて跡が付くので、
1.2ミリに行き着きました。
- 伊藤
- シンプルとおっしゃるけれど、
すみずみまで工夫が行き届いているのがわかります。
苣木さんのこと、御存じないというかたも
いらっしゃると思うので、
「そもそも」からお話しいただいてもいいでしょうか。
なぜ、帽子デザイナーになったのか。
- 苣木
- 「すごく帽子が好きだったから」
‥‥というわけでもないんです。
帽子を被る習慣も、小さい頃から、多くはなかった。
なのに帽子をつくりはじめたきっかけは、
最初の結婚をして会社を辞めたときに遡るんです。
夫と2人暮らしだったので、
家にいても、そんなにすることがなく、
「誰の役にも立てていないな‥‥」みたいに、
気持ちのふさぐ時期があったんです。
そのときにたまたま当時の夫の知り合いの方に
会う機会があって、
「そんなに落ち込んでいて、しかも暇なんだったら、
帽子を教えてくれる人がいるから、習ってみれば?」と。
それがきっかけでした。
- 伊藤
- 教室に通われたんですね。
- 苣木
- といっても、たった半日なんですよ。
「ベレー帽を作る」というテーマで教えて下さって。
ところがそのベレー帽にはまってしまったんです。
- 伊藤
- ベレーひとつから、始まった。
- 苣木
- そうなんです。
帽子に出会う以前に、
洋服の専門学校に通ったんですけど、
洋服はパターンを引いて、
トワルをくんで‥‥と工程が多く、
1日で完成させることも難しく、
私にとっては長い時間がかかりました。
けれども帽子はすごくちっちゃい世界で、
作ろうと思えば1日に何個も作れる。
その手早さみたいなのも魅力でした。
- 伊藤
- 私も学校でベレー帽の作り方を習いました。
蒸気を当てながら木型にはめて。
- 苣木
- そうです! 蒸気でかたちを作ります。
結構、力のいる作業ですけれど、面白いですよね。
- 伊藤
- はい、面白かった記憶があります。
- 苣木
- 元々全く違う形なのに、
蒸気で伸ばしてギュって木型に入れれば、
自分が思った形になるっていうことが楽しくて。
- 伊藤
- じゃあ、まさか専業になるとは
思っていなかったんですね。
- 苣木
- 全く思っていなかったですね。
ただ何か「すごく楽しいな」っていう思いだけで。
そのベレー帽は8枚はぎだったので、
1ミリパターンが違うだけで、
その差がすごく大きいシルエットの違いになったり。
- 伊藤
- じゃあ「被るのが楽しい」というより、
「作るのが楽しい」。
- 苣木
- そうですね。
「作って誰かにあげる」っていうのが楽しかったです。
そこまでがワンセットでした。
- 伊藤
- どなたかにプレゼントを?
- 苣木
- そうなんです。
欲されてたかどうかも分かりませんが、
「どう、どう?」みたいな感じで送ったりしていました。
- 伊藤
- ベレーと他の帽子は
随分作り方が違うように思うんですけれど、
そこからはあらためて勉強を?
- 苣木
- そこからは独学です。
帽子を買って来て、分解して、
どういう作りになっているのかを見ました。
「あ、この硬さはこういう芯を貼ってるんだ!」とか、
分解していくと、わかることが多いんです。
- 伊藤
- すごい!
- 苣木
- すごくハマッちゃったんです。
もうそれまでが暗黒過ぎて(笑)。
- 伊藤
- あら、そうなんですか?
20代ですよね。
- 苣木
- そうですね、それが28のときかな。
元々アパレルに勤めていたんですが、
辞めて、1年間、エスモード・ジャポンに1年通って。
本来ならそこから洋服の道に進むのが筋なんですけど、
「何かちょっと違うな」と思っていたとき、
そういう出会いがあったんです。
独学‥‥学ぶっていうよりも、遊んでいる感覚でした。
つばの形だけを1日中、引いて縫って付けて、
角度の違いでどう印象が変わるか、研究したり。
- 伊藤
- 元々「ハマる」タイプなんですか。
- 苣木
- そうみたいです、はい。
興味ないことは「んー?」で終わります(笑)。
- 伊藤
- プレゼントしていた帽子を、
「売ろう」って決めたのはなにかきっかけが?
- 苣木
- たまたま自分が作った帽子を被って、
知り合いが主催していた
アパレルの展示会に遊びに行ったんです。
そしたら、そこの社長さんが
「その帽子かわいいね」って言って下さった。
「自分で作ったんです」と伝えたら、
「デザイナーを探している帽子のメーカーがあるから、
面接を受けに行ってみれば?」と勧めてくださいました。
それで、サンプルを10個作って、面接に行ったんです。
そしたら、その会社の社長面接で
「ブランドをやってみる?」と。
- 伊藤
- うん、うん。
- 苣木
- その時の私には、
その意味がよく分からなかったんですけど、
「何もしていないという状況から抜けたい」、
「誰かの役に立ちたい」「働きたい」
という気持ちが大きかったから、
「はい、やります」って言ってしまいました。
そこでそのメーカーに就職したんです。
- 伊藤
- 帽子のメーカーに。
- 苣木
- そうなんです、はい。
- 伊藤
- そこで自分のブランドを。
「chisaki」はそのとき生まれたんですか?
- 苣木
- いえ、その会社で
暫く活動していなかったブランドがあったのを、
「自分のブランドとしてやってみる?」と
社長が言って下さったんです。
- 伊藤
- なるほど、もともとあったブランドの
デザイナーに就任したんですね。
- 苣木
- そうなんです。
しかも、以前のコレクションは気にせず、
自由にやってよい、というお話でした。
ところがその「自由」がわからない。
そもそも帽子を何型作って、どういうお客さんに売って、
ということも全然分からなかったんですが、
「とりあえずやってみなさい。自分で考えながら」と。
それがスパルタ帽子業界のスタートでした(笑)。
- 伊藤
- スパルタ!(笑)
- 苣木
- さらに「出してみたい展示会はあるか」
って言われたんです。そのとき、
「プルミエール(Premiere Classe)っていう
パリの展示会にいつか出してみたいです!」
って言ってみたんですね。
そしたら、もう次のシーズンから出すことになって。
- 伊藤
- なんていう社長さん!
バイク便が大活躍、 強いベトナムの人たち、 バックパッカーたち。
田中さんの住むホーチミンは、
この日、午後1時の気温が
なんと37度だったそう!
(ちなみに東京は午後3時、16度でした。)
「weeksdays」のアイテムも手がけ、
ふだんは工場や工房をとびまわっている田中さんに、
ホーチミンでの今の暮らしをおききしました。
- 田中
- こんにちは、伊藤さん。
- 伊藤
- こんにちは!
ホーチミン、すごく暑いんだそうですね。
- 田中
- そうなんです。このあと午後2時くらいまで、
結構暑い時間が続きます。
- 伊藤
- ご自宅ですよね。
元気そうでよかった!
おうちにずっと?
- 田中
- そうなんです。買い物以外はずっと。
こうしてオンラインでも、会えて嬉しいです!
- 伊藤
- 本当に私たちも、嬉しくて。
こうして話せるのが。
- 田中
- 手帳を見たら、この間日本でお会いしたのが
1月22日で、こんなことになるとは
思っていなかった頃でしたね。
- 伊藤
- あっという間でした。
ホーチミンはロックダウンしてから
どれぐらい経ちますか。
- 田中
- 1カ月‥‥経たないくらいですね。
(註:対談は4/18に行われました。)
- 田中
- 3月の末に向かって、感染者数のグラフが、
今日は何人、今日は何人みたいな感じで
ギューッて急に上がっていって。
私はその頃、ちょうど
郊外の工場に検品に通っていたんです。
近くで感染者が出たら、
あたりが封鎖されちゃうので、
はやいうちにと思って。
- 伊藤
- 封鎖!
- 田中
- そう。厳しいんですよ。
工場の向かいに大きなマンションがあって、
そこでもし1人でも感染者が出たら、
その通りごと、入れなくなるんです。
- 伊藤
- 入れなくなったとして、
そのマンションや、地区の住人の
生活はどうなるんですか?
- 田中
- 家から出られません。
すごく徹底しています。
それが2週間続くんですよ。
- 伊藤
- 買い物にも出られない?
- 田中
- 出られないんです。
全部運んでもらうしかない。
- 伊藤
- 食料を運んでくれる
政府のシステムみたいなのはある?
- 田中
- いえ、自分で、配車アプリを使って、
頼んで持ってきてもらうんです。
友人が感染者が出たアパートに住んでいて、
出られなくなっちゃったんですね。
でも、その友人が住んでいる
マンションの管理会社がすごく良かったみたいで、
お水を1ケース、インスタントラーメン1ケース、
その他、当座必要なものを1ケース、
各家庭に配り歩いてくれたんですって。
でも毎日インスタント麺ってわけにもいかない、
とは言っていたけれど。
- 伊藤
- ホーチミンは、市場の活気もすごいし、
路上でも、フォーが食べられたりとかしたけれど。
- 田中
- あ、もう、屋台は一切ダメです。
- 伊藤
- 町にもちょっとお腹がすいたねって、
気軽に安く食べられるお店が多いし、
ふだんの食生活、外食する人が多いでしょう?
だからお店の人も、市民も、
どっちも困ってるんじゃないかと思っていて。
- 田中
- そう、みんな困っていて。
レストランは営業停止中なんだけれど、
半シャッターにしている店もあって。
中も暗いので、やっていない体なんだけれど、
厨房には最小限の人がいて、
営業をつづけているところもありましたよ。
もう諦めて閉めちゃってる店も多いと思うけれど。
- 伊藤
- 外食ができなくなって、
みんな困っていないかしら。
- 田中
- テイクアウトの営業をしている店が多いですね。
- 田中
- 毎朝6時45分ぐらいに、
自転車でパンを売りに来る人はいるんですよ。
もしかしたら町でも、
路上のパン屋ぐらいはやってるかもしれない。
- 伊藤
- そっか。パンはおうちで焼けないし。
- 田中
- 私は、サワードウのパンを売る店に
週1ぐらいで買いに行って、
薄く切って冷凍庫に入れてます。
食べるものと言えばね、
ドキッとした出来事は、
政府が「お米の輸出を禁止します」
っていう宣言をしたことがあったんです。
食料がなくなったら国民が不安だからと、
輸出するためだったものを止めた。
でも、そこまでするのって、
よほど、行く先が不安だからじゃないのかな、
このあと大丈夫かな、って思って。
でも結局解除されました。
やっぱりお米の農家は、
輸出できないと食べていけないので。
日本もそうだと思うんですけど、
ベトナム政府は経済活動をできるだけ止めないという
政策を取っていて、
輸出に関わる工場は開いているんです。
それで私も検品に行けたんです。
- 伊藤
- 輸送は?
- 田中
- 一応、貨物は全部出てるんです。
- 伊藤
- そんななかで、動いている工場は、緊張しますね。
- 田中
- 1人でも感染者が出たら閉めなきゃいけないから、
工員さんを集めて
国からのレクチャーを受けて稼働しています。
手を洗いましょう、
間隔は2メーター空けましょう、
マスクを必ずしましょう、って。
- 伊藤
- それも政府が派遣して?
- 田中
- オンラインレクチャーだったそうですよ。
街にそういうポスターもあります。
- 伊藤
- 休業することになったお店などは、
国からの補償はどうなんですか。
- 田中
- 多少、あるとは思うけれど、
一律全員にとか、
そういうのはないはずです。
- 伊藤
- そっか。じゃあやっぱり、
仕事ができない人は本当に困る。
- 田中
- もう倒産している会社が出ているし、
倒産の手続きをしているところもたくさん。
- 伊藤
- そうなんだ‥‥。
田中さんは、どういう感じですか? いま。
- 田中
- 忙しくしているんです。
こうなる前に、工場から
山のようにものを運びこみました。
家で検品などの仕事が出来るように
整えていたんですよ。
いまそれをこなしている感じです。
- 伊藤
- じゃあやることがなくて、っていうよりは、
ちょっとは気が紛れますね。
- 田中
- そうですね。ただ外に出られない。
友達にも会いに行けないですし‥‥。
この厳しさのなかにいると、
日本のニュースを見て
ちょっと心配になることもあります。
意外とみんな、動いているようだから。
- 伊藤
- 普通に会社に行っている人もいますしね。
友人に、やめなよって言っても、
それはできないって‥‥。
- 田中
- 都内に勤めている妹も、
しばらく会社に通っていました。
つい最近です、行かなくていいようになったのは。
- 伊藤
- 会社が決めてくれないと、
どうしようもないですよね。
「じゃあ辞めます」とも言えない状況だし。
- 田中
- 妹には私が怒ったんです。
「そんな会社辞めてしまいなさい」
「こんなときに会社に来させるなんて、
ちょっとどうかしてるよ」って。
妹は、毎日電車に乗って都内に行っていたから、
精神的に厳しかったみたいで、
私の言葉をうけてか、会社に言ったそうです。
「このまま続くようだったら
会社を辞めることも考えています」って。
でも、通わなくていいようになってよかったです。
- 伊藤
- そんなふうに会社に言える人は
少ないかもしれないですね‥‥。
来月の家賃どうしよう、って思ったら、
その決断はしづらいですし。
こちらは、そこまで考えている人もいれば、
すごくのんきな人もいて、
外でマスクをせず雑談してる人もいる。
「えっ?」って思っちゃう。
私のほうががおかしいの? って。
- 田中
- 広い通りから小道に入ったところに
住んでるんですけど、
その突き当りが幼稚園だったんです。
その幼稚園を壊して小学校に建て替えて、
この旧正月の休暇が終わってから
小学校が始まる予定だったんだけど、
休みのまま、開校していないんですね。
家で検品をしてたら大家さんから連絡が入って、
そこが隔離施設になるって。
検疫隔離だから発症してる人ではなく、
濃厚接触のあった人や、
海外から帰国した人が飛行機を降りたら
有無を言わさずそこに連れて来られて
2週間いてもらうための施設です。
もし、そこで発症したら病院に搬送するための。
- 田中
- 心配なのは、
大家さんのおじいちゃんとおばあちゃんが
94歳だってことです。
- 伊藤
- ああ、それは心配。
- 田中
- 私が検品先の工場から
ウィルスを持って帰っちゃったら大変でしょう。
だから、早いうちに商品を家に運んでもらって、
家でできるようにしていたんですけれど。
- 伊藤
- そっか。
田中さんは、仕事先の人とのやりとりは?
- 田中
- ふだんは製品づくりの指示書を書いて
持っていって話すんですが、
いまは家で仕様書に詳細に書き込み、
服だったら、パターンと布をセットして、
工場までバイク便に運んでもらっています。
わからないところは
Zaloというコミュニケーションツールで
連絡を取り合って確認します。
- 伊藤
- いまは、写真もメモも、
すぐに撮れるし書いて送れるからいいですね。
- 田中
- ない時代は大変でしたよね。
電話でずっとしゃべらなきゃいけなかった。
でもまあ、普段よりちょっと
やることが多いねっていうぐらいで、
そんなに基本的に変わらない生活をしてます。
ふだんの生活より、
ちょっと作り置きするものが増えたくらいで。
家中の保存容器を総動員(笑)。
- 伊藤
- 私も確かにそう!
作ったものをおすそ分けするときのための
ジップロックを、とうとう家で使い始めました。
- 田中
- でもね、たいへんだたいへんだって言っても、
戦争のときって、
もっとすごかったんだろうなと思うんです。
それを考えたら、楽ですよ。
爆弾が降ってくるわけじゃないから。
- 伊藤
- 確かにそうかも。食べるものもあるし、
家にいれば安全なんだから。
- 田中
- ベトナム人は強いから。
ベトナム戦争が終わったのが
1975年ですから。
- 伊藤
- 戦争が記憶に新しい人もいますものね。
- 田中
- みんなたくましいですよ。
- 伊藤
- どういうふうなときに、
そのたくましさを感じる?
- 田中
- 慌てずにすぐ受け入れるところですね。
言われたらマスクはみんなするし、
規律も守る。
最初の頃、私が慌てているふうに見えたのか、
「起きたことはどうにもできないから、
受け入れて、ヒロコ!」って言われましたよ。
- 伊藤
- すごい。すごいなあ。
「受け入れて!」かぁ。
考えても仕方のないことでイライラしたり
怒ったりするんじゃなくてね。
- 田中
- 検品してる間じゅう、
毎日言われてました(笑)。
- 伊藤
- 外国から来てひとりで仕事をしているから
心配してくれたんですね、きっと。
それは年上の方がおっしゃるの?
関係なく、みんなそういう感じ?
- 田中
- 若い子たちもそう言ってます。
- 伊藤
- それはすごいなあ。
- 田中
- スマートフォンをみんな持ってるから、
ニュースもちゃんとチェックして、
教えてくれるんです。
- 伊藤
- SNSでデマが回ったりはしませんか。
- 田中
- 何回かあったけれど、
捕まった人が出て、おさまりました。
1人捕まると、次は出ないんです。
マスクを高く売ったら罰金とか、そういうのもあるし。
- 伊藤
- なるほど。
- 田中
- そうそう、先日、工場帰りにバスに乗ったとき、
停留所にバスが来たのに扉を開けてくれなくて。
「え?」と思ってたら、
窓からおじさんが「手を出せ!手を!」と叫んでいて、
手を出したら、
そこにポトンってアルコールジェルを乗せてくれて、
ゴシゴシしたら、バッて扉が開きました(笑)。
- 伊藤
- へえ~!
- 田中
- それをしないと、乗せないみたい。
- 伊藤
- 東京でもね、今日、食材を買いに出たら、
スーパーの入口にレーンができていて、
人が立って、距離を空けるように指示してました。
手のアルコール消毒はもちろん、
カートも全部消毒していて、
こんなに徹底しているスーパーもあるんだ、
って思いました。
みんなひとりで来ていましたし。
- 田中
- こっちは検温もされますよ。
今日、銀行に行ったら、
入り口でおでこにピッとされました。
37度以上の人は帰らせるって。
そんなに感染者は多くないんですけれどね。
今日(4/18)までに、ベトナム全土で
感染者が268人です。
- 伊藤
- えっ、すごい。
それでもロックダウンをしたんですね。
だからこそ少なく抑えられているんだと思う。
- 田中
- そうですね。本当に厳しい。
うちの奥の検疫隔離所も、
最高で14人くらい入ってたときがあったけれど、
みんな問題ないから徐々に出て行きました。
昨日ちょっと騒がしかったから、
どうしたのかなと思ったら、
外国人が4人入ったと。
ホーチミンに、バックパッカー街があるんですよ。
そこから。
- 伊藤
- そっか! そういう人たちって、
どうしているのかなって思っていたんです。
帰国できなかったりもしますよね。
- 田中
- 帰れなくなっちゃった人もいますよね。
結構早い段階で空港が閉鎖され、
国際線があっという間に飛ばなくなったので。
そのバックパッカー街にも隔離施設があるんですが、
そっちがいっぱいだからこっちに来たって。
「え、そっちがいっぱいって何人いるの?」
と思いましたけれど。
- 伊藤
- 確かにねえ。
外国でこの事態を迎えて、
帰国もできないと想像すると‥‥。
バックパッキングの旅は、
予算も潤沢ではないだろうし。
FinFamiのヒント、 「ご近所さんを知っておこう」アプリ、 オンラインズンバ。
- 森下
- 昨日、仕事で日本の精神科関係の人たちと
オンラインで話をしていたんです。
精神的にちょっと苦しい、
もともとそういうところがある人の家族が、
このコロナのなかで
どうすればいいのかという話題が出て。
- 伊藤
- ええ。
- 森下
- フィンランドでは、FinFamiという、
精神疾患のある家族がいる人のための組織が、
この危機に際してどんなことが必要か、
発表しているんですね。
その中に「ゲーム」ってあるんですよ。
ほかにも、ユーモアは欠かせないとか、
おいしい料理を作ってみるとか、
掃除をするとか、
伊藤さんの世界につながりそうなものが
いっぱいありました。
FinFami
経験専門家たちからのヒント。(抜粋)
(森下圭子訳)飛行機の緊急時もそうですが、
酸素マスク装着にサポートが必要な人といる場合、
まず最初に自分の酸素マスクを装着してから
サポートします。
まずは自分のことが守れてこそです。
どんな感情がわいてきてもいい、
それを自覚できていることの方が大切なのです。
コロナのこの状況にあっては、
様々な感情を抱くかもしれませんが、
あれこれと感じていいのです。
そしてそれらの感情を怖がらないほうがいいのです。
精神疾患のある人の家族のかた、
まずは自分を大切にしてください。1. 近所の助け(善き隣人)
2. 食事の助け(スーパーまたはレストラン・カフェで買ったものをドアの前まで届けてもらうなど)
3. ユーモアやコロナを題材としたミーム
4. ビデオ電話やネットコミュニケーションで気持ちの共有
5. ルーティンや明確な一日の時間割を作り、時間の過ごし方を楽にする
6. 外へ。森の散歩、自然観察や写真撮影
7. 読書
8. ネット上でグループを作る
9. 自分の感情を受け入れる
10. 手芸やアート:手を動かしたり、音楽、美術、文章を書くなど
11. 他者を助けること(おつかいなど)は、他者の喜びであるだけでなく、喜んでもらえることで自分にとっても嬉しいことになる
12. 十分な睡眠
13. 食事のプラン、料理、ケーキやパンなどのベーキング、健康的な食生活
14. ゲーム
15. 掃除
16. 自分の庭の庭仕事
17. テレビ鑑賞
18. ラジオを聴く
- 伊藤
- わぁ。
- 森下
- ね。ほんとうにシンプルなんです。
最初のメンタルヘルス・フィンランドの
16項目もそうですが、
自分の中の苦しさや不確かな感情を受け入れることも
大事だってわかったのもよかったです。
不安は隠しとこう、で終わっちゃうけれど、
受け入れていいんだよって書いてあったら、
あ、別にいいんだなって思うし。
一回自分の中で受け入れてるっていうのは、
我慢することとは違いますしね。
我慢しないっていうのも大きいでしょうね。
- 伊藤
- うん、我慢しない。
- 森下
- 言われたから我慢して外出をやめます、
ってなってしまうと、
どこかでバーッと突っかかりたくなる。
だけど、自発的だったら、
いろんなものに寛容になれるというか。
- 伊藤
- そう思います。
ほんとうに気の持ちようですよ。
さっきも言ったけれど、
こんなふうに世界中で同じ時間を過ごして、
それを突破したあと、
よくなってたい、自分が。
- 森下
- いや、ほんと、そうですよね。
自分でそう信じていくしかないです。
よくなってる未来を想像するには、
やっぱり日々、前向きに生きていかないと。
- 伊藤
- こうしてオンラインでお話しをしていると、
毎回、私が元気を貰っているんです。
森下さんにもいっぱい元気を貰っちゃった。
- 森下
- 私もそうですよ!
このごろ、友達とオンラインで
顔を見て話す機会が増えたんですよ。
これって、すごく新しい
コミュニケーションが生まれている気がします。
- 伊藤
- うんうんうん。
- 森下
- 直に会ったり、文字だけだったときと違って、
今まで触れてなかったことを
素直に一緒に話し合える。
たとえばちょっと心にモヤモヤがあるときに、
「なんかこう、釈然としないものがあるんだよね」
って説明抜きで話を始めることができたり。
「このモヤモヤって何なんだろうね」
みたいなことを。
明確な理由なんてないことも多いから、
答えなんて出てこないんだけれども、
そういうことってあまり話してこなかった。
- 伊藤
- おお、なるほど。
だって、今までにない事態ですもん。
会いたい人に会えない。近くにいても会えない。
- 森下
- 会えない、そうなんです。そう、近くにいても。
- 伊藤
- コミュニケーションの仕方が変わりますよね。
- 森下
- ほんとう、変わりましたね。
最初、散歩のときも、
2メートルぐらい離れて歩いてくださいって言われて。
ヘルシンキも人が少ないとはいえ首都です。
どうしたって人とすれ違う。
2メートル離れようって意識すると、
なぜだか知らないけれども、
目線をそらすんですよ。
それまでなら目を合わせてたはずなのに、
わざと会わなかったふりをして、
ちょっと離れていくみたいな‥‥。
- 伊藤
- へぇー(笑)。
- 森下
- でも、行動制限が始まって4週目ぐらいかな、
やっとお互いがちゃんと
目を合わせられるようになって。
- 伊藤
- 距離を保ちつつも、目は合わせる。
- 森下
- 人ってやっぱりそれを欲してるんだろうなって。
この前、散歩中、
立ち止まって空をじっと見上げてたら、
1人のおばさんが4、5メートルぐらい
離れたところから言うんです。
「このあたり、サギがいるのよ、サギ!」って。
「いるのよ。サギの声、聞こえる?」
- 伊藤
- (笑)鳥のサギですね。
- 森下
- そう突然言われて(笑)。
で、耳を澄ませるんだけど、
鳥はいっぱい鳴いているから、
どれがサギの声なのか全然わかんなくて。
- 伊藤
- (笑)
- 森下
- 「サギがいるせいでね、カモメが驚いて、
飛び跳ねていくのを見たりしたことがあるのよ!」
みたいなことを5メートル離れたところから
おばちゃんが話しかけてきて、
そのあいだをカップルが通っていく。
何、この状況? って(笑)。
- 伊藤
- その距離の取り方も
だんだん慣れてきそう(笑)。
- 森下
- そうなんです。
こんな状況でも、人って、
ちゃんとコミュニケーションを
取りたくなってくるものなんだなって。
楽しいですよね。
そうそう、大半のジムが休みになっていて、
行くのも怖くなってる人たちのあいだで、
森の中にあるジム器具を使うのが人気で。
- 伊藤
- えっ、えっ。森の中に?
ちょっと待ってください。
ヘルシンキの街中から
歩いて行けるところに森があるんですか。
- 森下
- そうなんですよ。
私も、中央駅へ行くのに
歩いて30分ぐらいのところに住んでるんですけど、
うちから歩いて15分ぐらいのところにもう森があって。
- 伊藤
- そうなんだ!
まさかそこでブルーベリーとか
摘めないですよね。
- 森下
- あ、摘めますよ!
でも、街の近くの森はライバルが多いです(笑)。
- 森下
- それで、森の中にポツンポツンと
ジムのトレーニングができるような設備があるんです。
腹筋とかできる。
そういうところでトレーニングしてる人たち同士、
やっぱり2メートルぐらい距離を取りながら
話してる人がいたりとか、
前の人が終わるまでちょっと離れて
立って待ってる人とか。
言葉を交わさなくても、
人はなんとなくコミュニケーションを取るんですね。
- 伊藤
- 森の話でいうと、
大好きな法律がフィンランドにあって。
どこの森に入ってブルーベリー取ってもいい、って。
- 森下
- そうなんですよ(笑)。
誰の所有でもいいんです。
でもね、ここもやっぱり信頼がベースにあって、
法律で禁止はされていないんだけれど、
フィンランドの人たちは、そこに家が見えたら、
そこから先のブルーベリーは摘まないんです。
家の人たちが夏の朝、
外の森でささっとブルーベリーを摘んで
朝ご飯にできたらいいじゃないですか。
だから、バカンスを過ごすサマーハウスでも、
森でブルーベリーを摘んでいて、
視界に家が入ったらもうそこから先に進まない。
それは、そこのおうちの人たちの
ブルーベリーだからね、って。
- 伊藤
- すごく素敵!
やっぱり自立してますよね。
- 森下
- そうかもしれない。
最初にコロナの感染者が出て、
すぐさま自宅隔離あるいは自宅待機を
言い渡された濃厚接触者たち、
それから外国から帰ってきた人たちは
なるべく外に出ないでくださいと言われた時、
もし食べ物に困って、
スーパーとかご近所さんの助けが
得られないようだったら、
市からちゃんとワーカーさんを派遣しますと。
家の玄関前に物資を置いておくので心配要りません、
みたいな発表がすぐにあったんですね。
でも、それと同時期にフィンランドでは
あるアプリが立ち上がって。
それはご近所お助けアプリみたいなものなんです。
- 伊藤
- うんうんうん。
- 森下
- たとえば、私はここに住んでます、
ここの地区からこの地区ぐらいのあいだだったら
おつかいとか犬の散歩ができるので、
いつでも言ってください、
ということが登録できるんです。
- 伊藤
- へぇ!
- 森下
- 一応セキュリティはきちんと、
フェイスブックで連携して、
怪しいものじゃないですよと、
ちゃんと身元が割れるような形で登録して、
助けが必要な人がお願いをするんです。
市からも援助するという発表があったけれど、
自分たちも自発的にお手伝いするようなサイトが
同時に上がったというのは、大人ですよね。
自発的に自分たちのできることを、と。
- 伊藤
- うんうん。やっぱり自立してるから
人にも優しいというのがあると思う。
自分がちゃんとあるから、人に優しくできる。
自分に不安があったら、ねえ、やっぱり‥‥。
- 森下
- 自分のことで精一杯ですもんね。
- 伊藤
- そのサイトを立ち上げたのは
どういう人たちなんですか。
- 森下
- 「ご近所さんを知っておこうアプリ」
みたいなのをもともと作ってた人たちが、
その仕組みを使って即・立ち上げたみたいです。
私が住んでるところって
高齢者が多いエリアなんですけど、
チェーン展開しているスーパーのオーナーも、
すぐさま自発的に、オープン前の時間を
高齢者のために開けようと。
だからこの時間からこの時間は
70歳以上の人のみの入店にします、
みたいなのをやったりとか。
レストランとかカフェも大変なんですが、
ミシュランの星を獲ってるレストランがつくった
フィンランドの家庭料理や、お寿司なんかを、
スーパーと協力しあってスーパーに置いたりとか。
そういうことを、みんな自分たちで工夫しながら
やってますね。
- 伊藤
- なるほど。
私たちも、やれることはまだありそう。
そのお話を聞くと。
- 森下
- フィンランドも、もっといろいろ
アイデアを出してくるような気がします。
ここに来て想像力って言葉が
私の中で大きな価値になっています。
- 伊藤
- 想像するっていくらでもできますもんね。
- 森下
- そうなんですよね。
いいなと思ったら、失敗を考えなくても、
こんなときなんだから「やってみようよ」、
うまくいかなかったら、
「うまくいきませんでした」でいいんだなって。
- 伊藤
- じゃ、私は手芸に挑戦してみますよ、ひさびさに!
‥‥でもでも、最近、目が。
森下さん、私たち同い年なんですよね。
- 森下
- そうなの!
- 伊藤
- 最近針仕事がつらくって。
- 森下
- 今までと違いますよね、作業の進み方がね(笑)。
- 伊藤
- そう。もう夜の針仕事なんかできないし(笑)。
- 森下
- 夜の読書もつらい(笑)!
- 伊藤
- だから、明るいうちに、ね。
これを読んでくれた人が、
自分だったら何できるかなって
考えるきっかけになってくれたら、
すごいうれしいですね。
いつもよりきれいにごはんを盛り付けるとか、
ちょっとしたことからでもいいし。
- 森下
- 使ったことのなかった調味料を使ってみるとか!
- 伊藤
- 森下さん、ありがとうございました。
あっという間に1時間!
そうだ、最後に、森下さん、
いまもズンバはやってらっしゃるのかなあ。
みんなでダンスするエクササイズの。
- 森下
- やってますよ! オンラインズンバ。
もう何が楽しみって、
私は、1週間に何回でもズンバができるぐらい
ズンバが好きだったんですよ。
でも10人以上の集会がダメになった段階で、
ジムのグループレッスンもなくなって、
どうしようと思ってたら、
オンラインでズンバができると知って。
インストラクターとZoomでつないで、
レッスンを受けられるんです。
やってます。
- 伊藤
- 楽しそう!
- 森下
- フィンランドってやっぱり
ITを使い慣れてるんだと思ったのが、
けっこう高めの年齢層のみなさんが、
ほとんどトラブルなしに
オンラインズンバに参加できてるのですが、
これも各国のズンバを体験すると、まちまち。
参加してる人たちで助け合うところもあるし、
ああ、場合によっては
次々と問題発生をコメントしてくるんだけれど、
放置みたいな。
でもそんなZoom使用におけるカオス状態も含めて、
面白くって仕方ないんです。
- 伊藤
- ハプニングが!
- 森下
- 私も散歩とジョギングだけだと吐き出せなかった
ストレスがあったんでしょうね、
オンラインズンバで
音楽を聞いてガーッと踊ることで、
ずいぶん気分が楽になりました。
- 伊藤
- いいですね~。
よかった、元気なお顔が見られて、
ほんとうに元気になりました!
森下さん、ありがとうございました。
またぜひお目にかかりましょう。
- 森下
- ありがとうございました、こちらこそ。
対談のあと、送ってくださった
森下さんのメールそうだ、忘れてました!
テレワークで、衝撃的にぶっ飛んでいながらにして、
かつ最高に人を幸せにさせる方法を
編み出した人がいました。
フィンランド国税庁のインスタアカウント!
@verohallintoです。ここが平日毎日犬の赤ちゃんの
インスタライブをやってくれるのです。
テレワークのなせるわざ! ですね。
自分ちの犬の赤ちゃんたちを映してるという、
ただそれだけなのですが、これが大人気。
私はほぼ毎日チェックしています。そして行動制限がはじまって5週目。
ついに犬の赤ちゃんの名前募集大会がはじまりました。
皆がコメントで犬の名前を応募して、
そこからさらに2つに絞り、
みんなの投票で名前を決めるのです。話を戻しますが、これ、
フィンランドの国税庁のインスタです。
ただ、このインスタアカウント、
もともとから斜め上をいっていて、
Veromeditaatio(税瞑想)なる、
不思議な動画も流しています。
たとえば移動費に関する減税の案内とか、
税金に関するものを、
瞑想の「吸って~吐いて~」みたいに語るのです。
日本だと炎上案件になりかねないこの世界が、
大いにウケているという。
まだインスタライブを見ている人が
それほど多くなかった頃は、
こちらがハート目のメッセージを送ると
犬とハートのスタンプを
送り返してくれたりしていました。
国税庁ですが。(森下圭子)