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Half Round Table あのひとのつかいかた 6・川畑朋子さん

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川畑朋子さんのプロフィール

かわばた・ともこ
社会福祉士、精神保健福祉士。
長崎県生まれ、幼少期から福祉に関心があり、
鹿児島県の大学卒業後、
医療機関や行政機関での仕事を経て、現在に至る。
「特別養子縁組に関することを、
こどもからおとなまで、
ご相談、お話をきかせてもらっています」

現在、娘と2人暮らし。
「娘と心地よく楽しい時間をすごすことを考えて
昨年家を建てました。
写真を撮ること、
自分の好きなものにふれること
(テーブルやほぼ日など)が好きです」

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「昨年の5月に自宅を建てるとき、
このハーフラウンドテーブルを置くことを前提に
設計を依頼したんですよ」

という川畑さん。

ええっ?! なんと、
そこまで惚れ込んでくださったのですか! 
ほんとうにありがとうございます。

川畑さんが「これだ!」と思われた
一番のポイントは、大きさと形だったのだそう。
この日は、テーブルの上にお花を飾られていましたが、
とくに使いみちは考えていなかったのだそう。

「この大きさがいいんです。
小さすぎず、書き物をしたいときも使えますし、
コーヒーテーブルにもなりますよね。
わが家は娘と2人なので、
2人で足りる大きさのテーブルが
欲しいと思っていました。
でも申し込んだ時は使いみちを想定せず、
届いてから、どう使おうかなと考えたんです。
最初は、パソコンを置いて、
ちょっとしたデスクのようにと思ったんですが、
なんだか違うなと感じて‥‥。
結局、『まだ見ておきたい!』と、
あまりものを置かずに眺めています。
これからまた、使い方が変わるかもしれませんが、
今は、こうして見て満足している感じです」

そうなんですよね、このテーブルって、
「そこにあるだけで嬉しい」、
そんな存在感があります。

川畑さんの新居には、これまで少しずつ揃えた
お気に入りの家具のほか、
この家のために設計を依頼した家具が。

「家事をする作業台や、
洋服をしまうスペースなどは、
大工さんにつくってもらったんです」

そんな中、
このテーブルを選んでいただいたこと、
光栄です。

左に玄関スペース、右はキッチンスペース、
ふたつの空間をつなぐちいさな壁にそって、
このハーフラウンドテーブルは置かれています。
ふたつの出入口は、
壁をくりぬいたかのようなデザインで、
天井側の角はまるいR(アール)に。
それがテーブルの印象ととてもよく合っていますね。

「そうなんです。このRのデザインは、
テーブルの大きさに合わせて、
設計の方が考えてくださったんです」

すごい! 
見た目のうつくしさだけでなく、
玄関からキッチンに食材を持って行くときなど、
ここに半円のテーブルがあることで、
動線を邪魔しないのかもしれません。
実際に、使い勝手はいかがですか? 

「とってもいいですよ。
お友達が来たときも、
ここにサクッと荷物が置けるのも便利です。
何を置いても、見ていて絵になる感じがします」

なるほど、実際に使えもするし、
見ていてもきれい。

ブラックとナチュラル、
ふたつの色がありますが、
ナチュラルを選ばれた理由は、
「木の色を生かした感じが好きだから」とのこと。
たしかにお家の雰囲気ともよく合っています。

「weeksdays」の使い方のコンテンツは、
参考になさいましたか?

「はい、すごく! 
真似してるんじゃないかっていうぐらい、
参考にしています。
ベトナムのかごが好きで、
赤と黒を持ってるんですけど、
本を入れてこのテーブルの下に置いて、
とか、いろいろやってみています」

今、ベストな場所に置かれているとは思いますが、
ここ以外に置くとしたら、どこに、
という候補はありますか? 

「そうですね。玄関にも置きたいなと思って、
じつはいちど、移動をしてみたんです。
けれどもまだちょっと存在感がおっきいなって思いました。
あとは、奥にちいさな自分の部屋があるんですけど、
本とか書類がいっぱいなので、
そこがもう少し片付いたら、
そこに贅沢にボンッて置きたいなと思います」

ご自分のお部屋に置くのもすてきそうですね。
今、お話しなさっている横に見える白い壁のところにも、
テーブル、似合うかもしれません。

「この壁、いまは真っ白なんですけれど、
子供がちっちゃくて、絵を描いたりするので、
あけておいて『絵を描いていい壁』にしているんです。
彼女がもうちょっとおっきくなってきたら、
贅沢にこちら側に置いて、
それこそプロジェクターを置いて映画鑑賞、
というのもよさそうですよね」

すてきですね! 
そして川畑家の間取りには、
「扉がない」というお話にも。
なぜ、扉をつけずに?

「今までの生活の中で、
ドアの開け閉めが面倒だったので、
扉はトイレとお風呂の脱衣所だけでいい、と」

わかります。
扉の奥のホコリが気になったりしますよね。
その、扉をつけないことって、
以前からずっと心に決めていたんですか。

「いえ、ここを建てるときに考えていたのは、
ハーフラウンドテーブルを置きたいということと、
『絵が描ける家』ということぐらいでした。
設計者のかたと話す中で、
扉は要らないとか、ここはRにしようとか、
相談しながら一緒に決めたんです」

思い描いたことを形にしてくださる工務店さんとの
よい出会いがあったんですね。

「そうなんです。同級生なんですよ。
なので、自由にものが言えて」

そうだったんですね! 
ところで、テーブルの重さはいかがですか。
ちょっと動かしたりするときに。

「重いと感じたことはありません。
持ち運びやすい中でも安定感があり、
子供がまわりで遊んでいても安心です。
だからこうして今は花瓶を置いています」

▲この照明は『三ッ葉屋家具店』のものだそう。「こういったものも、一所懸命調べて、探しました」と川畑さん。

よかった。
川畑さん、さいごにお聞きしたいんですが、
weeksdaysに「こんなものがあったらいいのに」と
思うことって、ありますか? 

「なんだろう? いつもふと思ったりするんですよ。
こうして話すと思い出せないものですね」

急に訊いてしまってごめんなさい。
思い出されましたら、ぜひ、メールをくださいね。
参考にさせていただきます。
川畑さん、ほんとうにありがとうございました。

「私もうれしかったです。
ありがとうございました」

あらためて「家を建てる時に、
このテーブルが置けるように設計を考えた」
というお話、とっても嬉しかった、
川畑さんのお話でした。

Half Round Table あのひとのつかいかた 5・横山有美さん

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横山有美さんのプロフィール

よこやま・ゆみ
大学卒業後、外資系企業の秘書を経て
友人の紹介で研究機関(事務職)にて長年勤務。
欧米出張土産の美味しい紅茶や
宝石のようなトリュフ(チョコレート)の虜になり、
沼にハマる。
退職後は幼少期から弾いていたピアノの稽古を再開。
コンサート、バレエやオペラを観るために
旅行に行くことも楽しんでいる。


「一目ぼれでした。
でも一回目は、申し込まなかったんです」

とおっしゃる横山さん。
迷った理由は? とお訊ねしたら、色だったそう。
じつは横山家の家具は色が濃いめの楢(ナラ)材が多く、
ハーフラウンドテーブルの「北海道産ミズナラ」の
ナチュラルカラーとは、
ちょっとだけ違和感があると感じていたのだそうです。

「けれども2回目の申し込みのときに、
玄関の建て付けの色と似ていることに気づいたんです。
そっか、玄関だったら似合う! と思って、
注文することにしました」

そうして横山家の玄関にやってきた
ハーフラウンドテーブル、
どんな使い方をなさっているんでしょう?

「コロナ禍のときは消毒用アルコールや
マスクなどを置いていました。
ちょっと落ち着いた今は、
ぬいぐるみなど趣味のものを置いているんです」

なるほど、万能ですね! 

「ちなみに、これからの季節は
チョコレートの保管場所になります。
部屋だとあったかいし、
冷蔵庫だと冷えすぎるし……。
冬の玄関ってチョコレートを置くのに
温度が完璧なんですよ」

バレンタインを前に、
玄関にチョコレートを?! 
素敵です。
「行ってらっしゃい」や
「ただいま」の時間が楽しくなりそうです。

玄関にあるこのテーブル、
横山さんがちょっとした家事の合間に
本を読むための場所にもなるんですって。

「というのも、主人が在宅勤務の日、
居間と食堂を占拠してしまうので、
私のスペースがなくなっちゃうんです。
それで玄関を、ちっちゃいリビングに
早変わりさせて」

なんと、いいアイデア。
ハーフラウンドテーブルの天板って、
ちょっとした書き物をしたり、
読書をしたり、お茶をしたり、
編み物など趣味のことをするのにも、
ちょうどいい大きさですよね。

ところで横山さん、
買う決め手になったのは色とおっしゃいましたが、
ほかにも「ここがいいな」
というポイント、ありましたか?

「形と大きさですね。
ちょうど玄関の幅に、
オーダーしたようにピッタリなんです。
家具を運んで来られた方がびっくりしてました」

よかったです! 
通販で家具を購入するということには
躊躇はありませんでしたか。

「大丈夫ですよ。家具のいいものって、
このぐらいのお値段はしますし、
ほぼ日さんのご推薦だったら間違いないかなと。
実際、素敵なものが届いて喜んでいます」

そんなふうにおっしゃってくださって、
私たちも嬉しいです。

玄関先で梱包がはずされた瞬間、
画面で見て想像していたものそのものだった、
という横山さん。
開梱した時に木の香りがしたのに感激なさったそう。
ナチュラルは、
ミズナラのいい香りがしますよね。

「もうそれがすごく癒しになって! 
合板物にはない香りですよね。
玄関に森がやって来た、っていう感じでした」

なんて嬉しい言葉! 
ありがとうございます。

PAS Stoolと一緒に頼んだんです。
スツールは主人や娘も使いますから、
それぞれの部屋や洗面所など、
けっこう家のあちこちに持って行くんですよ。
そうすると持って行った先で、
いい木の香りがするんですよね。
テーブルはもちろん、
スツールは座ると体温で香りが立つ。
ああ、素晴らしいなと思いました。
それはやっぱり使ってみないと
わからないことでしたね」

天然木の家具を使うって、そういうことなんですよね。
ところで、テーブルが丸いということについては、
違和感、ありませんでしたか?

「大丈夫です。じつはうち、食堂のテーブルも
30年以上前にオーダーしたんですけど、
天板が120センチの正円なんです。
その当時、そういうテーブルがなかったので、
オーダーして作ってもらったんですよ。
なぜ丸だったかというと、
子どもがケガをしないっていうのが一番で。
成長してきて、
ちょうど天板が目の高さになる時期ってありますよね。
そのときに角がないのは安心だなって思ったんです。
また、私ぐらいの年齢になってくると、
足元を見ていないことが増えるので、
角にゴンっとやっちゃうこともあるんですよ。
このハーフラウンドテーブルは、
壁につけて置けば角がなくなりますから、
誰もケガをしません。
よく考えられて作ってらっしゃるなと、
ほんとに感心します」

使ってくださっているからこその感想、嬉しいです。
ところでスツールは移動して使われると
おっしゃっていましたが、
ハーフラウンドテーブルはどうでしょう。
玄関に据え置きですか?

「はい、基本的には、玄関にぴったりなので。
でも、私でも運びやすい重さなので、
お客さまがいらっしゃる時に、
サイドテーブルとして、
リビングに移すこともあるんですよ。
それこそグラスを置いたり、
ちょっとしたおつまみを置いて」

わぁ、それも素敵な使い方ですね。
それでは、もっとこうだったらいいのにな、
ということはありますか。

「やっぱり色のトーンでしょうか。
もう少し濃いめのがあるとうれしいなと思います。
ブラックとナチュラルの二択しかなかったので、
その間ぐらいのブラウンがあればいいなと思いました」

そうですね。
お使いの家具とか床材も、
濃いめ色のものという方も多いですものね。
でも使ってるうちに
ちょっとずつ濃くなっていくと思いますよ。

「そうですよね。
1年近く経つんですけど、
だいぶ濃くなってきました。
最初は、玄関が明るくなるぐらい
白っぽかったんですけれど、
これからもいい具合に経年変化をしていきそうです」

お手入れも、されていますか。

「はい、お手入れの冊子をいただいたので、
それにならって、時々オイルで磨いてます」

素晴らしいです! 
最後に、テーブルに限らず、
「weeksdays」にこんなものがあったらいいな、
というものがあったら、教えてください。

「アートに興味があるので、
そんなに値段が張らないアート系のものを
出していただけたらうれしいなと思います」

なんと! じつはいまweeksdaysチームでも
そのことを考えているんです。
以前、アーティストの松林誠さんの絵
抽選販売したことがあるのですが、
また異なるアートの取り組みができたらと思っています。
そういえば、いま、オンラインの画面で
横山さんのうしろに見えているのは、
どなたかの絵画でしょうか。

「そうなんです。
もう亡くなられた作家さんになりますけど、
社会人になりたてのときに、一目ぼれをして。
そんな私でも買えるくらいのお値段のものでした。
そしてこれが私の蒐集のはじまりなんですよ。
けれども、働いている時って忙しいから
こういう絵も掛けっぱなし。
今はすこし余裕ができたので、
季節季節で『しつらい』を変えてみたり、
雰囲気を変えてみたいと思っているんです」

はい、ご期待に応えられるよう、
考えていきますね。
ハーフラウンドテーブル、
使っていただきうれしいです、
取材をお受けいただきありがとうございました。
また何か機会がありましたら、
ご意見を聞かせてくださいね。

Half Round Table あのひとのつかいかた 4・柳本郁子さん

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柳本郁子さんのプロフィール

やなぎもと・いくこ
コンサルタント。
企業経営や社会課題の解決を
支援する仕事をしている。
大学院修士課程を修了後、
現勤務先のコンサルティングファームに就職。

夫と2人の娘との4人暮らし。
「仕事と育児に追われ、
ひとりでゆっくり過ごす時間はあまり持てていませんが、
就職と同時期に始めた茶道のお稽古に今も通っています」

オーケストラやバレエを観たり、
美術館に行ったりするのも好き。
ちょうど今のウィンターシーズンは
家族でスキーを楽しみ、
月に1度は雪山へ赴いているそう。


「ほぼ日手帳からはじまって、
その次はハラマキ。
それからSHIGUSA MIRROR‥‥ 
夫からは『ほぼ日信者だね』なんて
言われているんですよ!」

と柳本さん。

ハーフラウンドテーブルの取材で、
ご自宅におじゃますると‥‥

PAS StoolにSAITO WOODのBASKETも!

指にはSatomi Kawakita Jewelryのリング、
耳元にはhimieのイヤカフ‥‥と、
weeksdaysのアイテムもたくさんお持ち。
そしてとってもよくお似合いです。

なんとBASKETは、
同じ部屋にふたつ。

「ここは私の仕事場ですが、
娘たちのピアノも置いているんです」
グレーのバスケットの中に入っているのは、
ピアノのペダル。
棚にちょどおさまってすっきり。
バスケットのお手本のような使い方をされている。

ハーフラウンドテーブルは、
サイトを眺めている時に、
目にとまったそう。

「半円のこの形、見たことないなって。
部屋に置いたイメージがパッと浮かんだんです」

テーブルが届いてからは、
花や絵を飾っているとか。
「仕事をする私の横で、
ここで娘たちが絵本を読んだり、
宿題をすることもあるんですよ」

また、収納が少ないので、
ちょっと何かを置く時にも重宝しているのだとか。

玄関のタイルにはじまり、
階段の手すりやステップも黒。
白を基調としつつ、
ところどころ黒で引き締めている柳本家。

「色は迷わず黒」
だったというのにもうなずけます。

「家具はナチュラルな色より、
黒やグレーなどのシックな色合いが好み」という柳本さん。
この部屋にはピアノもあるので、
同じ黒にした、というのも
えらんだ理由のひとつなんですって。

壁はきれいな水色。
窓枠や、巾木は白。
「このテーブルがきて、
部屋のおしゃれ度が高まった感じがしてます」
なんて、うれしい感想をいただきました。

また、
「そんなに大きい家具ではないので、
自分でも移動できるかなと思って。
夫の仕事部屋や玄関などに置いてもいいな、
なんて思っているんですよ」

白を基調としつつ、
それぞれの部屋ごとに壁の色が違うという柳本さんの家。
模様替えされたときはまたぜひ、
拝見させてくださいね。

みんなの定番

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テーパードリボンパンツは、
色違い、サイズ違いで全部で7本。
ストレートスカートに、
ノーカラーロングジャケット、
スリークォータースリーブジャケット。
あとは‥‥と指折り数えたら、
自分でも驚くくらい、
Faliero Sarti(ファリエロ サルティ)社の生地で作った
saquiの服が増えていました。

着心地がよく、上質。
シワになりづらいので、
立ったり座ったりが多い仕事の時や、
旅にも重宝。

合わせるアイテムによって、
「きちんと」はもちろん、
カジュアルにもなる‥‥といいことづくめ。

私にとってあまりに身近な素材になったため、
街で身につけている人を見かけると、
すぐに分かるようにもなりました。
あ、Sartiの生地だって。

weeksdaysのお客さまにもファンが多く、
とくにテーパードリボンパンツは、
「みんなの定番」のようになっています。
こんな服って、ほかにないんじゃないかな? 
なんて思っています。

ブランドが誕生して8年
今年の春は、パリで小さなショーを開くそう。
これからますます楽しみなsaquiなのです。

台北で

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台北の友人の茶藝館を、
訪れた時のこと。

この3年余りの間に、
少しずつ改装したそうで、
店の手前には、息子さんセレクトの
器のギャラリーができていました。

「この母にして、この子あり」
といった感じの、
洗練されたその空間でお茶をいただいている時に、
ふと目に入ったのが、
入り口脇に置かれた半円の木のテーブル。

おそらく古いものなのでしょう。
3本足のそのテーブル、
あれ‥‥? 
なんだか見たことがある!

そう。
大きさといい、形といい、
weeksdaysのハーフラウンドテーブルと
そっくりなのでした。
以前エッセイに、
「しっくり馴染む」と書きましたが、
そのテーブルもまさに。

ちょっとものを置いたり、
座って書きものをしたり。
丸いテーブルでもなく、四角いのでもなく。
半円だからこその馴染み方。

「こういうの、あるといいよね」
という思いが、
海を超えたこの場所にもある。
なんだかうれしいできごとなのでした。

きっとまだまだ私の知らない半円テーブルが、
世界のいろんなところにあるんだろうな。

今週のweeksdaysは、
北の住まい設計社のハーフラウンドテーブルの再販売です。
コンテンツは、以前買ってくださった方に、
使い心地をうかがいましたよ。

小ひきだし、あの人の使い方 その2 半径1mの景色を 和田泰次郎さん

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和田泰次郎さんのプロフィール

わだ・たいじろう
編集者。
1985年生まれ。
編集プロダクション、学研、マガジンハウスを経て、
2023年春よりダイヤモンド社 書籍編集局に所属。
レシピ本を中心に、家事、健康など
生活実用全般の書籍を企画。
料理レシピ本大賞を5度受賞。

「weeksdays」では
「あのひととコンバース。2022」にも登場。

最近の担当書は『落合式イタリアン』(落合務著)、
『平野レミの自炊ごはん』(平野レミ著)。


伊藤さんの「まさこ百景」の展覧会にお邪魔して
「小ひきだし」をはじめて目にしたとき、
一生共にする家具だな、となんとなく感じました。

家具にはベッドや棚、テーブルなどいろいろありますが、
「愛着」という視点で見てみると、発見が。

うちの棚はどーんと鎮座しているので可愛いわけではなく、
テーブルは自分以外のお客さんも使う公共性がある。
ソファはくたってしまって去年買い替えたし、
ベッドは愛着を超えているような‥‥。

家の広さや間取り、ライフステージに合わせて、
意外と買い替えることが少なくない家具。

そう考えると、サイズ感といい、
実用性といい、距離感といい、
小ひきだし、なんて素敵な相棒なんだろうと! 

そんな思いでうちに迎え入れて半年以上経ちますが、
引き出しを引くたびに(心で)にやにやするほど、
飽きのこなさに静かに驚いています。

超スムーズな引き心地、スベスベ木肌、
絶妙な高さの収納力、
そして半径1mの景色をほっこりさせる佇まい。

今は玄関の台に置いて使っていて、
外出にまつわる段が3つ。薬の段が1つです。

1の段 ハンカチ・腕時計など
家を出るときにさっと取り出せるように。
腕時計は毎日しないので、2つだけ。
サングラスやハンドクリームも置いています。

2の段 カード・領収書
財布は身軽に持ち歩きたいので、その日に使わない
カードは家に置くようにしています(身分証も含め)。
仕事で精算する領収書の一次置きにしていて、
月末にリビングのテーブルに引き出しを移動して整理を。

3の段 文庫本
ちょっと時間がありそうな日に持ち歩く用。
ぴったり4冊並ぶので(重ねれば16冊くらい収納可)、
併読しているものを気分で選びます。新書も置けました。

4の段 薬
無印良品のカードケースを置いて、
薬の仕分けに(普段はふたをしめています)。
常備薬、葛根湯、胃薬、ばんそこう。
軟膏、アルコールスプレー、体温計、マスクもここに。

頂上
忘れないようにするものを置きます。
受け取り待ちの不在票や配送伝票、翌日ポストに出す手紙、
近々使えそうなクーポン、マンションのお知らせ‥‥。
地味に大事な場所に。

小ひきだしのまわりには、猫村さんカレンダー、
骨董市で見つけた置き物、手袋、除菌スプレー、
Yuki & Daughtersのクッキーなどなど。
好きなものを集めてみたら、
家に帰るのが嬉しくなりました。
(ときどき模様替えするのも楽しい。)

今後の課題としては‥‥。

有元葉子先生のエッセイ
『使いきる』がバイブルなのですが、
家の中に気持ちのいい景色をつくるうえで、
少しでもプラスチックのものを
家の中から減らすことに努めています。
(そう簡単にはいかないのですが。)
引き出しの中ももっとシンプルにしていきたいです。

あとめちゃくちゃ丈夫なので、
どうしたらさらに味が出るものか考え中です。

小ひきだし、あの人の使い方 その1 指定席 古川ゆかさん

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古川ゆかさんのプロフィール

ふるかわ・ゆか

国際薬膳師。
大学卒業後、出版社で料理本など
実用書の編集に携わる。
退職後、薬膳を学び、現在は自宅で薬膳教室を主宰。
家事をしているおだやかな時間が大好き。
最近はしなやかな体づくりを目指して
パーソナルトレーニングを受けている。


小ひきだしは、
前から気になるアイテムだったという古川さん。

古道具屋さんに行くと、
ついつい目がいくけれど、
つまみのデザインがちょっと、とか、
形がもう少し違ったらな、とか。
カタカタしたり、
手触りがざらっとしていたり。
何かがちょっと足りなくて、
買うにはいたらなかったのだとか。

weeksdaysのサイトを眺めている時に、
見つけたのがこの小ひきだし。
「これだ!!」とピンときたんですって。

届いた日は、
小箱を中に入れては、
「きゃー、ぴったり」
なでなでしては、
「きゃー、すべすべ」
とひとり、喜びを噛み締めていたそう。

小ひきだしは一階のリビングが定位置。

「どこでも自由に見てね」というので、
遠慮なく開けてみると‥‥

上段ふたつがアクセサリー入れ。

「小引き出しがくる前、
アクセサリーを2階の寝室に置いていたときは、
身支度を整えて、玄関で、
あ! あれつけたかったな‥‥と思っても、
面倒でそのまま出かけてしまったり。
ここに置くことでグンと出番が増えました」

3段目には、爪切りや体温計、ハンドクリームなどなど。

4段目は文房具。

‥‥と、ものの見事にすっきり。
どこになにが入っているかが一目瞭然です。

ふと、家の中を見回してみると、
キッチンクロスはここ、
空き瓶はここ、読み終わった新聞はここ、
とグループごとに仕分けがされている。

毎日届く郵便も来たらすぐに開けて、
いるものといらないものに仕分けするんですって。

必要なものは、
気に入りのかごや箱に収納。
好きなものだけしかないからこその、
この統一感。

小ひきだしは、
まるで前からここにあったみたいに馴染んでいました。

子どもの頃から整理整頓が身についていたのですか? 
と尋ねると、
「20代の頃、取材で訪れた家事評論家の方の、
『すべてのものに”指定席”を』
という言葉に感銘を受け、
家に帰ってすぐに実践したのがきっかけ」
そんな答えが返ってきました。

とくに「小さなものほど指定席を」
と言われて、なるほど! と思ったのだそう。

「かねてから、
爪切りどこだっけ? ホッチキスは? なんて、
探しものをするのがいやだなぁと思っていたんです」

じっさい片づけてみると気持ちがいいし、
探しものをする時間もなくなって一石二鳥だったとか。

「余計な買いものもしなくなったし、
ものも還る場所があってうれしそう」

たしかに。

自称「手触りフェチ」という古川さん。

「この小ひきだし、外側だけでなく、
引き出しの中も触り心地がいいでしょう?
届いた日は、夫もすーっと撫でてうっとりしてた。
気持ちいいねって」

ものの指定席がある古川家では、
「使ったら戻す」が身についているそう。
家中が淀みなくすっきりしている理由は、
こんなところにあるのでした。

「見た目よし、触ってよし、使ってよし、
の3拍子揃った小ひきだし。一生ものです」

なんてうれしい言葉をいただきました。

キューブスツール、あのひとの使いかた 5・鶴見昂さん

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鶴見 昂さんのプロフィール

つるみ・たかし
1986年神奈川県生まれ。パティシエ。
石川県〈TEATON〉、駒澤大学〈POPPY〉などの
メニューを監修。
2022年より菓子教室「ツルミ製菓」を主宰。
著作に『Café Lisetteのお菓子』
(エンターブレイン)がある。
「weeksdays」ではエッセイ
「あなたには赤が似合わない。」
「神棚とケーキ」を寄稿。

■Instagram


ある日わが家に
weeksdaysのキューブスツールがやってきた。
わくわくして早速段ボールを開け、
立方体の木の箱を触ってみるとスベスベ~! 
赤ちゃんの肌みたいだ! 
真っ新(まっさら)な無垢の木に触れたら
なんとなく神聖な気持ちになって、
思わずそっと頬擦りしてしまった。
さて、どうやって使おうかな。

まずはリビングの窓際に運んで、
キューブスツールの開口部を手前にして置いてみた。
無垢材の色調もパーケットフローリングと
ぴったりマッチしていい感じ。
よく手にとるお菓子の本を詰め込んで、
花瓶を重ねて、好きなものを適当に並べて
暫く眺めてみると、余計なものに邪魔されず、
美しくデザインされた本の装丁や
色とりどりの花がパッと目に入ってくる。
一見そっけないようなデザインも
かえってちょうどいいみたい。
どんな奇抜な花も花瓶も受け入れてくれる懐の深い箱。
日々そうやって使っていると、
キューブスツールから本を取り出すたび
手に触れる木肌の滑らかな感触にいちいち癒されて、
私はすっかりこの触り心地の虜になってしまった。

しばらくリビングに置いていたら、
昔からそこにあったみたいに
すっかりわが家に馴染んで
そのまま何日も過ぎてしまったけれど、
折角なら色々な場所に置いてみようと思い立ち、
こんどはスツールとして使うために
キッチンへ移動してみた。

一人暮らしの小さなキッチンには少し大きいかな? 
と懸念したものの、そんな心配はなんのその。
買い物をしてきた野菜を一旦置いたり、
調理台がいっぱいになった時に
ボウルを避難させるスペースに使ったりと大活躍。
レシピブックを読みながら何を作ろうかな~と悩むときも、
鍋を火にかけてフゥと休憩する時にも、
気づいたらキッチンの角に置いた
キューブスツールの上が私の定位置になっていた。

その後も大人数の来客で椅子が足りないときに使ったり、
高さがあるから逆さまにして
ヨガマットやストレッチポールを収納したりと、
家の中のあらゆる場所に移動させて愛用した。
気軽に移動して家の景色を変えられるところも
気に入っている。

このすべすべの無垢材を
キレイなままに大事に使いたいけれど、
何年も使っていくうちにキズがついたり、
乱雑に置いた熱いヤカンの跡がついたりして
風合いが変わっていく姿も素敵なんだろうな。
私はカバンをボロボロにしてしまうから
きっといつかそうなる。
これから何十年も一緒に過ごしていくであろう
運命の人に出会った時みたいに、
皺くちゃになった自分が
傷だらけのキューブスツールに腰掛けて
共に過ごす姿が頭をよぎった。

これからもよろしくね。

少しずつ

未分類

久しぶりにロールキャベツを作ろうと思って、
キャベツを買ったら、
あれ? なんだかやわらかくなっている。

冬の間、
硬く身を寄せ合っていた葉っぱが、
ふわっとゆるやかになっていて、
ああ、春が少しずつ近づいてきているんだなぁ‥‥
なんて思ったのでした。

八百屋の棚をのぞいてみると、
おや、新玉ねぎも出ているではありませんか。
あれ? 菜の花も。
蕗の薹も! 

まだまだ寒い日は続いているけれど、
季節は少しずつ進んでる。
冬好きを公言している私ですが、
今年の冬は早く終わって欲しいと思っています。

皆んながあたたかく過ごせる日が、
やってきますように。

今週のweeksdaysは、
キューブスツールと小ひきだしの再販売。

リビングで、
キッチンで。
家のどこに置いても、きっと役に立つ、
weeksdaysでは定番となっている人気のアイテムですよ。

リベコのよさ、リネンのよさ

未分類

伊藤
生地、リベコを選ばれた理由って、
なぜだったのでしょう? 
渡邊
リネンの糸のクオリティの高さと質感ですね。
いろんなものを海外から取り寄せてもみたんです。
以前、イタリアにもいいリネンのメーカーが
あったんですけど、やっぱりリベコになりましたね。
織り幅も広いものがあるんですよ、
ベッドリネンもあるメーカーですから。
あとカラーバリエーションを持っていた。
北の住まい設計社では、
椅子の張り地もリベコを使っていたことがあるんです。
出会ってからは長いですね。
伊藤
わたし、20年くらい前に、
取材でリベコの本社に行きました。
渡邊
ええー! すごい。
伊藤
マスターズオブリネン(Masters of Linen™)
という、ヨーロッパの厳しい認証を
クリアしているんですよね。
渡邊
そうですね。
ほんとにクオリティーの高いものには
その認証がついていますよね。
伊藤
取材をしてみて、
「あ、やっぱりいいものなんだ!」って
思ったのをおぼえています。
渡邊
そうですね。
ただ椅子の張り地にするには、
乾燥と摩耗にちょっと弱いんですよ。
伊藤
わたしは薄いリネンを
カーテンにしていた時がありました。
摩耗の弱さは感じなかったですけど、
たしかに乾燥には弱い。
渡邊
大事にするあまり、
日当たりのいいところで、
何年もかけっぱなしにしていたかたが、
破いてしまったことがありましたが、
クッションに使うくらいは全然大丈夫ですよ。
適当にお洗濯もするでしょうし。
うちも、いまは椅子などの張り地にはせず、
リベコはクッションとベッドリネンに使っています。
伊藤
そうですね。
このクッションカバーは
お洗濯の注意点ってありますか。
リネンでカーテンをつくって洗濯をした時に、
「あれ、ちょっと短くなった?」
ということもあったりして、
それはそれで生きてるものの感じがして、
すごくかわいいんですけれど。
渡邊
まず高温のお湯で洗うのは避けること。
それから脱水に弱いんですよ。
洗濯機でも、毛糸洗いのような感じで、
脱水をゆるくすれば問題はないんですけど、
勢い良くグルグル回しちゃうと、
3%ぐらい、縮むんじゃないでしょうか。
そして乾燥機は使わないでくださいね。
伊藤
自然乾燥で。
ところで雅美さんのご自宅では、
どんなクッションを使われていますか。
渡邊
ソファが無地なので、
リネンのプリントものをゴロゴロ置いてます。
伊藤
そっか、プリントもかわいいですよね。
渡邊
プリントやりたいですよね。
伊藤
ねー。
渡邊
でも、なかなかいいプリントがなくて。
伊藤
リベコにはプリントって‥‥?
渡邊
リベコにはプリントはないですね。
柄ものは、ストライプなど、
糸で染色して織ったものになるんです。
伊藤
スウェーデンのスヴェンスクト・テン
(Svenskt Tenn)
のように、
すごく派手なテキスタイルもいいですよね。
高価になっちゃうかもしれないけれども、
絵を置くくらいの感じで、
一個、部屋に置いたらすてきかも。
渡邊
はい。あとは、ユンバリ(Ljungbergs)という
プリントのファブリックをやっているところが
スウェーデンにあるんですけど、
そこのプリントは機械じゃなくて、
ハンドプリントなので、
ものすごく色もいいですよ。
ここのものは、小さくポンって
置くぐらいのものがかわいいと思うんですよ。
伊藤
そうかもしれませんね。
ところで雅美さん、
クッションの中身についてもお聞かせいただけたら。
北の住まいさん仕様のふかふか度合いが絶妙なんです。
ここにも家具のような安心感があるんですよ。
渡邊
ふかふか度合いは、羽毛の工房に、
何センチの中に何グラム入れてもらうかっていう
注文をこちらからするんですが、
‥‥基準を決めた当時、どうだったかな? 
沈みすぎては嫌だなと思ったので、
ある程度のボリュームが必要だと考えたんだと思います。
「このくらい?」
「うーん、このくらい!」
みたいにやり取りした記憶があります。
伊藤
クッションらしく沈むけれども、
ちゃんと跳ね返るっていうか。
渡邊
はい、その、かたさ加減。
伊藤
お客さまにはカバーとクッションを別々にお届けし、
おうちで入れていただく仕様になりますね。
すごくよいものができて、うれしいです。
わたしたちも、いちど抱えて持つと、
とりこになってしまって。
渡邊
嬉しいです。ありがとうございます。
伊藤
また、ご一緒したいです。
ありがとうございました!

ソファにプラスして

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伊藤
わたしが「クッションがほしいな」と思った理由が
じつはもうひとつあって、
それは年上の女性の友人から、
「いいクッションない? まさこさん」
と訊かれたことなんです。
というのも、もう家には決まった家具があって、
それを変えるわけにもいかないけれど、
ちょっと気分転換もしたい。
だったらクッションが
いいんじゃないかしらって思ったと。
それで、このクッションのサンプルが出来上がった時、
サンプルの写真をお送りしたら、
「いいじゃない!」と言ってくださいました。
そういうお客様って多いんじゃないかな、
って感じますよ。
家具の買い替えはお金もかかるし、場所もとるし、
シンプルで、他の家具とも合うクッション、
いいかもって。
渡邊
なるほど。
伊藤
デイベッドにも合いますよ、
片側に積んで足を伸ばす座り方もできて、
くつろげるんです。
渡邊
デイベッドもそうですし、
輸入のソファはとくにそうなんですけど、
奥行きがありますよね。
伊藤
そう!
渡邊
だから、かなり厚みのクッションを置かないと、
私たちには心地よくないというか、
リラックスできないソファが多いんです。
でもこのぐらいあると、大丈夫。
伊藤
大と小をつくったのもよかったんですよ。
自分の体型に合わせて、
大と小をうまく置くと、
腰にちょうどフィットしたり。
渡邊
なるほど。
今のお話を聞いていたら、
ソファに合わせるクッションの重要性が
しみじみわかります。
伊藤
かならずしも、
自分の家にあるソファが
身体に合うとは限らないですものね。
その補助の役割をするんですよね、クッションって。
わたしは最初、すてきだな、
という気持ちだったんですけど、
いざ使ってみると、
いろんな役割を発見したっていう感じでした。
渡邊
まさにそうですね。
伊藤
この写真は、ニーチェアなんですけれど、
大きいのを後ろに敷いて、
小っちゃいのを抱っこして、
オットマンに足をかけると、
もうほんとに、なんていうんだろう‥‥。
渡邊
別物みたい。いいですね。
伊藤
体をあっちこっちに動かすことなく、
じっと映画を見ていられる、
みたいな感じでした。
渡邊
素敵。ありがとうございます。
伊藤
わたし、思ったんですけど、
この生地で、デイベッドを覆うくらいの
大きい布があったら、
すごくいい模様替えになるなって。 
渡邊
2メートル80センチの幅があるんですよね。
こんな織り機は日本にはないので、
ベッドカバーにもできるんです。
リベコの商品としてもあるかもしれないですけど、
ベッドにかけるとものすごく映えますね。
ちょっと重いので、
寝る時は外したくなると思うけれど。
この機会にリネンの魅力を伝えるような商品を、
伊藤さん、考えていただければ! 
伊藤
ほんと、そうですよね。
‥‥なんだろう。
渡邊
エプロンとかそういうものもいいんですが、
ほんとにリネンの魅力を生かせるのって
インテリアの中だと思いますよね。

存在感は家具といっしょ

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伊藤
渡邊さん、こんにちは! 
クッション、ありがとうございました。
とってもすてきなものができて、
うれしいです。
渡邊
こんにちは、
よろしくお願いします。
このクッション、生地が入手できずに、
生産を諦めていたものだったんですよ。
伊藤
最初、時間のある時に
「また一緒にできるものはないかな」って思いながら、
北の住まい設計社のウェブサイトを見ていたんです。
そうしたら、ちょうど欲しかったクッション、
まさしく、このかたち! というものがあって、
それで「こういうものが欲しいです」
と雅美さんに連絡をしたら、
「今、リベコ(LIBECO)のこの生地が入手できないので、
生産ができないんです」
というお返事だったんですよね。
渡邊
そうなんですよ、
以前、展開していた生地の
カラーバリエーションがなくなって、
もう廃番かなと思っていたんです。
そうしたら生地をまさこさんが見つけてくださって。
伊藤
以前、渡邊さんたちは、
生地を直接ベルギーから輸入なさっていたんそうですね。
わたしはたまたま、
生地を日本に輸入しているかたを存じ上げていたので、
「そうだ、そのかたに聞いてみよう」と訊ねてみたら、
別の生地でしたが、
ぴったりのサンプルを送ってくださって。
渡邊
以前、私たちが使っていたものとは違うんですけれど、
ちょうどよかったんですよね。
伊藤
そうなんです。
最初のクッションは、
何年位前からつくられていたんですか?
渡邊
ずいぶん‥‥もう20年近くなるのかな。
つくったきっかけは、大きなソファをつくった時に、
マチのある、ちゃんと支えてくれるような
クッションが欲しいなと考えたことです。
ウレタンの普通のクッションだと、
長く使ううちに、存在感がなくなってくる。
背に当てると沈んでいっちゃうんですよね。
クッションって、中身は羽毛がいいと思っているので。
伊藤
じゃあこの形は、ずっと変わっていない? 
渡邊
変えてないですね。
伊藤
すごい! 
渡邊
そもそもそんなに大量につくろうとは
思っていなかったものなんですよ。
どちらかというと、
ソファに合わせてつくっていたので。
言ってみれば、これって、
家具の意識でつくったクッションなんです。
伊藤
じゃあ、ソファと一緒にご注文くださる
お客さまがほとんどだった? 
渡邊
そうですね。
あるいは、家具に関心のある方が、
このクッションを単品で
選んでくださってましたね。
雑貨を見にいらした方じゃなくて。
‥‥想い出してきました、
私、この形にしようと考えたきっかけは、
どこか海外の雑誌で見たんだと思います。
「あ、この形なら沈まなくていいかも」と。
伊藤
このマチがいいんですよね。
我が家のリビングのソファは、
デンマークのデザイナーのものですが、
エリザベス女王がデンマークを訪れた時に、
気に入ったことがきっかけで、
エリザベスチェアっていう
名前がついたらしいんです。
すごくすてきなんですけど、
さすが女王陛下が座るだけあって、
背筋をのばしてきちんと、
という印象の座り心地なんですよ。
渡邊
ちょっとそういうふうに見えますね。
伊藤
はい、きちんと座るのにはいいんですが、
のんびりするのには向いていなくて。
なので、クッションがあったらいいのにな、
と考えていたんです。
渡邊
そういうときにピッタリですよ、
このクッション。
伊藤
そうなんです! 
そして、使ってみて思ったんですが、
すごくしっかりしてるから、
インテリアの小物、雑貨を買うっていうよりは、
家具を一つ買うぐらいの存在感がありました。
渡邊
わあ、うれしい表現です。
伊藤
ほんとそう思ったんですよ。
それでこんな写真を撮ってみました。
大小、組み合わせてみたんですけど。
こういう使い方もできるなと思って。
渡邊
かわいい! 
ほんとですね、
もう、家具ですね。

しっかり、しっくり

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先日、久しぶりに友人宅をたずねたら、
ソファがひとつ増えていました。

さっそく座ってみると、
これがね、なんだかとっても座りやすいんです。

聞くと、そのソファは日本製。
なるほど、
だからか奥行きとか、
背もたれの角度とか、
座面の高さがしっくりくる。

年上の友人ご夫妻のえらんだものは、
今のご自分たちに、
ちょうどいいものなんだ。
かっこいいけど、
その追求よりもまずは「無理しない」。
それってこれからの私のものえらびの指針になりそうです。

我が家のソファは、
北欧のもの。
ソファの横にはこれまた北欧製のデイベッドがあって、
休日などはそのどちらかで、
ごろごろしながら、
本を読んだり映画を観たり。

ソファもデイベッドもとっても気に入ってはいるのですが、
「しっくり」とまではじつはいってない。
それがじつはちょっとなぁ‥‥
とずっと思っていたのでした。

今週のweeksdaysは、
北の住まい設計社のクッション。

羽がぎゅうっと詰まっているから、
しっかり。
ソファに座った時に腰に当てると、
あら、しっくり、
そしてぴたっとくる。

並べた姿も感じよく、
居心地は2倍、いや3倍よくなりました。
(けして大げさではなく。)

コンテンツは、久しぶりに北の住まい設計社の、
渡邊雅美さんとお話ししました。
対談の中では、私の家での使い方もご紹介していますよ。
どうぞおたのしみに。

「生活の道具」として

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一柳
私たち「藤栄」は
1945年、焼け野原になってしまった名古屋で、
先代の伊藤正二が創業しました。
名古屋は飛騨高山も近いので、
木製の流し台や、物産だったサワラの桶や飯びつを
仕入れて売っていたんです。
伊藤
わたしたちの暮らしに必要なものがないなら、
扱おう、みたいな?
一柳
はい、そういう木製の道具を仕入れて、
リヤカーを引いて売り歩いていたようです。
その次に売り出した、
アケビの手提げカゴは買い物カゴとして、
とても人気があったと聞きました。
伊藤
ということはつまり、
セレクトショップの先駆けじゃないですか。
ライフスタイルショップの走りですよね。
一柳
光栄です! これからその表現、使います(笑)。
それを名古屋の先代の自宅の軒先で売っていたら、
地元の大手百貨店さんが、
いい品物を扱っているから
うちにも卸してくれないかっていうことで、
卸売りを始めたんです。
そこから、素材がプラスチックにかわり、
百貨店からGMS(総合スーパー)に広がるという
変化はありましたが、
一貫して生活に必要なものを仕入れて販売をしてきました。
伊藤
そうだったんですね。
その「生活道具」のなかに
ニーチェアがあったわけですね。
一柳
そういうことなんです。
伊藤さんは今回、
ニーチェアに注目されたきっかけって、
なにかおありだったんですか。
伊藤
買うきっかけになったのは、
小さな森の家を購入したことなんです。
キッチンや水まわりを含め、
居住面積が55平米なので、
リビングも広くはなく、
ソファは置けないなと思ったんですが、
そのかわりにニーチェアを置こうと考えました。
今、改修中なんですが、
完成するまで東京の家で使おうと1脚購入したら、
「ここにも必要でしょ!」みたいな気持ちになって、
じゃぁもう1脚買おう、次は何色にしよう? って。
畳んで仕舞うことができるので邪魔にならないし、
買い足しやすい価格でもあるしと。
一柳
営業トークになっちゃいますが、
今そんな方がたが次に購入を検討してくださるのが、
この「ニーチェアエックス80」です。
伊藤
そう! 次はそれにしようかなぁと思っていました。
これも新居さんの設計ですよね。
一柳
そうですね。新居さんは「エックス80」を
1980年に発表なさいました。
畳みのある和室と洋室が同居する
和洋折衷の住宅が一般的になり、
クッション入りのソファや椅子が
多く見られるようになった時代です。
背もたれが起きていて、
立ち座りするのにちょうどよい座面の高さで、
人との談話やちょっとした作業が
しやすいのが特徴です。
そして、なんと背のフレームも
内側に折り込めるんです。
伊藤
すごい!! こんなにコンパクトに。
これならラクに車で運べますね。
ヘッドレストがないんですが、
ひじ掛けの位置や座り心地が、
本を読むのにちょうどいいんですよ。
一柳
はい、ニーチェアの座り心地はそのままに、
少しアクティブな使い方ができますから、
ニーチェアをすでにお持ちのかたが
追加で購入されるケースが多いんですよ。
伊藤
今回、お話をきき、
新居 猛さんという人にとても興味をもちました。
どんなお人柄の方だったのだろうと。
一柳
私もお会いしたことがないんですけど、
身長は高く、
当時の日本人としては大柄の方だったそうです。
1974年発行の雑誌『室内』で
昔の対談記事を見つけたんですが、
ご自身のことを
「僕は“ツベクソつけ”なんです」とありました。
それは徳島の方言で
「いちゃもんをつける」というような意味で、
気に入らないことがあるとすぐに文句を言う、
そういう性格だとおっしゃられていました。
きっと、すぐになにかに気がつく、
アイデアマンだったんだと思いますよ。
伊藤
きっとそうですよね。
それにしても、新居さんにしろ、藤栄さんにしろ、
「必要だからつくる」、
その姿勢がすばらしいと思います。
一柳
ありがとうございます。
先ほど伊藤さんがお使いだとおっしゃった
「味わい鍋」ですが、
あれも1985年につくられたもので、
その後、メーカーが廃業してしまったんです。
一時、別の会社が引き継がれたんですけど、そこも廃業。
そうしたらずっとその鍋の製造を請けおっていた
埼玉県の川口市にある鋳物工場さんが、
こんなに良い鍋をここで途絶えさせてはいけないと
販売も引き継がれたんです。
それでもやはり、時代の変遷や国際情勢による
原材料の高騰などもあって、
製造が続けられないかもしれないというお話しを、
人づてに知りまして。
ご縁もあり、じゃぁ、うち(藤栄)が
販売をやってみようと。
ヨーロッパなどの鋳鉄琺瑯鍋に比べて3分の1の軽さで、
アルミですが厚みがあるから保温、蓄熱性も高い、
日本人の考えた「コトコト煮込む鍋」なんです。
ごはんをよそいやすい底のR(アール)や、
こびりつかない工夫など、
これも日本の暮らしと
日本人の感性から生まれたものでしたから、
ニーチェアと同じように、
続けていきたいなって思います。
伊藤
そうだったんですね、そんな経緯が。
一柳
良品質のものづくりを日本で続けていき、
残していけたらという思いは、
どの取扱い製品にも感じるようになりました。
伊藤
ほんとですね。
‥‥そうそう、オットマンの話もお聞きしないと。
これは1970年の発売当時からあったんですか? 
一柳
これは1972年に発売されました。
ニーチェア本体と組み合わせて使うことで、
よりリラックスしていただけます。
新居さんは、椅子としても使えるように設計しましたので、
耐荷重もニーチェアと同じように95キロあります。
トレーを置いていただければ、
簡易的にサイドテーブルのような使い方もできます。
伊藤
スーツケースを広げるのにもいいですよね。
ホテルで採用してくれればいいのに。
一柳
そういうふうに使われたら嬉しいですね。
靴屋さんやアパレルショップからも、
声がかかったりするんです。
伊藤
そっか、ちょっと低めなこの座面は、
腰かけて靴を履くのにもいいですね。
一柳
新居さんが、「道具」のように役に立ってこそ
椅子だとおっしゃっていたことが
ジワジワと伝わっているようで、嬉しいです。
ちなみに、いま、ニーチェアのシリーズで
人気があるのがゆらゆら揺れる
ロッキングタイプなんですよ。
伊藤
これもいいですよね。
一柳
エックスよりも座面の前が8センチぐらい高く、
身体の動きに合わせて揺れるので
立ち上がりがスムーズなんです。
また、揺れることで体圧が分散して、
ラクだとおっしゃる方もいらっしゃいますね。
脚のストレートなところを曲げて角度をつける、
つまりパイプの形状を変えるだけで
ロッキングを成立させているのは、
新居さんの“出来るだけ”のアイデアだと思います。
伊藤
ほんとうにそうですね。
ロッキングは前後の揺れが楽しめますが、
そもそもニーチェアってエックス構造ゆえに
座っていると身体の動きにそって
ちょっとした揺れが感じられる、
それがいいんですよね。
新居さんは、ニーチェア以外に
つくられたものはあるんですか。
一柳
一時期、折り畳めるテーブルをつくられていましたが、
もう現在はつくっていません。
椅子一筋だと言っていいと思います。
伊藤
ご自宅では、他のデザイナーさんの椅子を
集めたりとか、してなかったんでしょうか。
一柳
工場に行ったことがありますが、
そういう雰囲気はなかったですね。
伊藤
すごいですね。
これだけのアイデアマンでありながら、
折り畳み椅子をつくり続けた、
というのがかっこいいです。
一柳
ほんとうにそうですね。
伊藤
一柳さん、ありがとうございました。
ニーチェアと新居さんのことを
たくさん知ることができてよかったです。
一柳
こちらこそありがとうございました。
どうぞお手持ちのニーチェアを末永くお使いください。

日本の技術が詰まってる

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一柳
私たちがニーチェアの
人気の要因だと考えることのひとつに、
座り心地があります。
新居さんが考え抜いた脚部のエックス構造って、
座った時にクッション性を高めているんですよ。
エックス字状の脚に、パイプフレームを付けて
生地を横に張っているので、
開いて座るとテンションがかかり、
それがクッションとなるんです。
伊藤
構造的にはバネがないけれど、
座った時にクッション性を感じるのは、
このエックス構造のおかげなんですね。
座ったときにキャンバスの布が
自分の体に馴染む感じがあります。
一柳
そうですね。そこが新居さんの発見です。
ハンモックに似ているのではと
勘違いされるんですが、じつは逆なんですよ。
ハンモックは吊るすことで縦方向に引っ張られながら
寝転がると身体が包まれる感じが得られるんですけれど、
ニーチェアは座ることによって、
自分の体重でパイプフレームが開いて
キャンバスに張力が生まれ、そのテンションが、
生地全体がクッションになる。
座る人に合った座り心地が得られるんです。
この生地も大きな機能、構造に関わるんですよ。
伊藤
座ってみると「わぁ!」ってわかりますよね。
この生地は当時から変わっていないんですか?
一柳
いや、変わってはいますね。
これもお話していいですか?
伊藤
はい、ぜひ教えてください。
一柳
当時、いわゆる帆布(はんぷ)は
新居さんの地元徳島に近い
岡山や大阪、京都が産地だったと聞きました。
戦後には建築資材やトラックの幌、
学生服なんかにも使われて栄えていたようです。
いっぽう徳島は綿花の生産、繊維製品や染色業が
発展していたようです。
だから徳島にはこういった
厚手の帆布をつくる環境がありました。
ニーチェアの生地はその技術をいかして
つくられたんだと想像します。
今では低コストな海外での生産や
新しい素材や製造技術により、
厚織帆布に代わる素材も登場して需要が減ってしまい、
国内ではすごく厚手の重い生地をつくれるところが
どんどんなくなっていったんです。
きっと新居さんの「ニーファニチア」さんも、
晩年はシート生地づくりに
ずいぶん苦労されたんじゃないでしょうか。
ちなみに今は岡山の倉敷帆布と、
滋賀の高島帆布の2ヶ所でつくっています。
伊藤
織機が、もう、そこにしかないんでしょうね。
一柳
そうなんです。最初に倉敷帆布さんへ相談したとき、
「これはむずかしいよ」と言われました。
手持ちのシャトル織機でこれだけの強度を出して
厚手の生地をつくり、
さらに柔らかい風合いに仕上げるのは
無理だと言われてしまったんです。
それから何回か足をはこび、
最終的に「やってみましょう」となりました。
でも新しいシャトル織機はつくられていないので、
古い織機を使い、壊れたらそれを解体して部品にし、
別の古い機械のメンテナンス用にする。
このシート生地が織れる機械は、減るいっぽうなんです。
伊藤
‥‥なくなっちゃったら、どうなるんでしょう? 
一柳
そこが現在のニーチェアの抱える課題です。
昔は徳島で「ニーファニチア」さんが、
生地、肘木など部材を手配して、
縫製や金属パイプの加工、
そしてアッセンブリ(一ヶ所に集めて)までを
ご自身の工場でつくられていました。
ちなみに、事業を継承したときには
手元に設計図はありませんでした。
現物を解体して図面をつくり、
シート生地、肘木、金属パイプ、ネジそれぞれを
つくれるところを日本各地で探しました。
「ニーファニチア」さんでは、
新居さんご本人はもちろん、
熟練の職人さんもいたでしょうから、
一つひとつの部材は単純に見えるんですけど、
ものすごく工夫されていて、
とても高い技術でつくられていました。
完璧に再現するのには、
各地の工場の方たちにとても苦労をかけました。
伊藤
全部、国内で?
一柳
はい、全て国内です。
ニーチェアに限らず、昔のいいものを
日本でつくり続けていくっていうのは、
すごく難しくなってきています。
伊藤
レコード針についても同じような話を聞きますね。
一柳
そうですよね。あちこちでそういう話が出ていますね。
‥‥ちょっと話が戻りますが、この生地、
触っていただければ分かるんですけれど、
すごく触り心地がいいでしょう? 
キャンバスってゴワッとしてると思うんですけど、
これ厳密には帆布(平織)ではなく、
ニーチェア専用に開発した生地なんです。
綾織で、デニムと同じ構造なので、
伸縮性があるんですよ。
伊藤
しかも、ちょっとあたたかい感じがするんですよね。
一柳
はい、最初から肌ざわりがいいようにと、
当初から起毛加工をされていたんです。
新居さんがそこまで徹底的に考え抜かれたことなので、
僕らが引き受けてからもそれを続けたいと、
織物工場でつくった生地を、
大阪で染め、起毛は京都でやっています。
伊藤
「ニーファニチア」さんが
徳島でつくっていた時代にくらべて、
コストがかかるでしょうね。
仕方のないことですけれど。
一柳
そうなんですよ。新居さんが目指していた
「とにかく安く」っていうことを、
引き継いだ僕らも決して忘れてはいないんですけれど、
今の品質でニーチェアの製造を、
すべて日本国内で続けていくためには、
どうしてもコストを製品の価格に
反映するほかありませんでした。
かなり「手」の部分も多い作業について、
それぞれの生産者の方たちも守らなければ
ニーチェアをつくり続けることができませんから。
伊藤
そうですよね。
でも逆に「いいもの」だという安心感がありますよ。
一柳
ありがとうございます。
新居さんの想いにプラスして
日本で変わらずに
しっかりとつくられていることが再評価され、
今またニーチェアに愛着をもっていただける機会が
増えてきたと思います。
伊藤
30代の若い友達は、ニーチェアを知らないんです。
でも、「そういえば、
この前どこどこのカフェで見た」って。
そしていちど座り心地を覚えると、
それが頭の片隅にあるみたいで、
「やっぱり買おうかな?」と。
ひとり暮らしで、ソファを買うのはためらうけど、
ニーチェアだったらいいな、って。
一柳
まさしくそういう使い方をなさる方も増えてきました。
ソファを買ってしまうと、
ライフステージが変わり、
引っ越しのときにいらなくなってしまったりする。
ソファは家の中で占める割合が大きいけれど、
ニーチェアを2脚、ソファの代わりに
使うという方も増えてきました。
畳めて運べるニーチェアだったら、
引っ越しがあってもずっと寄り添っていけます。
それも新しい役割として
評価いただいているところかなと思います。
伊藤
昨日、うちの娘と3時間ほど
「テレビを見よう」となったとき、
娘はちっちゃいソファにゴロゴロしたいと。
「じゃぁわたしはこれを出してくる」と、
ニーチェアを置き、
湯たんぽにお湯を入れ、ブランケットを広げ、
お茶をたっぷり淹れて横に置いて、
動かなくていいようにしてテレビを見たんです。
もう最高でしたよ。
一柳
ありがとうございます。
コロナ禍のとき、郊外に移住された方から、
ニーチェアを昼はウッドデッキに出して本を読んだり、
夜には、部屋の薪ストーブの前で使っていると聞きました。
二拠点生活の方も、車で持っていけるので、
「座り心地ごと移動できる」と。
伊藤
そういう声、うれしいですね。
いま、一柳さんたちはこうして
ニーチェアの製造販売を
新居さんのところから引き継いだわけですが、
もともとどんな商品を扱っていらしたんですか。
わたし「味わい鍋」を使っているんですが、
御社の製品なんですよね。
ガス火でごはんを3合炊くのにとてもいいんです。
また、友人からいただいた洗濯洗剤が
こちらのものだったり‥‥。
一柳
そうなんですか、驚きです。ありがとうございます。
洗剤はベルリン生まれの
FREDDY LECK(フレディ レック)ですね。
実は、この洗剤も国内、大阪でつくっているんですよ。
伊藤
どちらも使ってみて、とてもよくて、
こういった「人に薦めたい」ものを、
どういう観点でセレクトされているのか、
藤栄さんにも、とても興味をもちました。

お気に入りのマグカップのように

未分類

伊藤
いまは金属のパイプでつくられている部分ですが、
試作の「木製折り畳み小椅子」は木。
金属を使ったのは、
どんな経緯があったんでしょう。
一柳
木だと構造上の限界を感じられたようで、
ずい分早い時期から
自由に曲げられる金属パイプを使われています。
新居さんご自身の工場にも
パイプを加工する機械を導入されて、
座り心地のよい角度などを生みだしていたようです。
伊藤
パイプって、その当時、
軽量で安く、加工がしやすいものとして
ポピュラーなものだったんですか。
一柳
そうですね。1970年には、
こういった金属加工は普及していましたね。
そして、「組み立て式で折り畳みにする」ことを
新居さんは生涯追い続けるんです。
「出来るだけ・7則」という
新居さんの信念のような言葉があるんですよ。
伊藤
「出来るだけ・7則」?
一柳
はい。
新居さんが椅子づくりで心がけていた7つの信条です。
「出来るだけ少ない部材で」
「出来るだけ簡易な構造で」
「出来るだけ丈夫で」
「出来るだけ少ない梱包費で」
「出来るだけ少ない輸送費で」
「出来るだけ安い価格で」そして最後に、
「出来るだけよい座り心地で」です。
伊藤
なぜ、そんなに削ぎ落とした考え方ができたんでしょう。
デザインがかっこよく、
値段の高いものに目が行きそうですけれど。
一柳
当時の日本のたくさんの人たちに、
ご自身の想い、
新しい暮らしを提案したいっていうところで、
出来るだけ削ぎ落としていくのが
必然だったのかなって思います。
「カレーライスみたいな椅子をつくりたい」
ていう気持ちが、ぶれなかったんでしょうね。
伊藤
すごいことです。
多分うちの父も、
そういうところにグッときたんでしょう。
それにすごくシンプルだから、
壊れづらいのではないでしょうか。
一柳
そうですね。
そんなに壊れるところはないですけれど、
家具でもあり道具でもあるので、
畳んだり開いたり移動したりすることで、
徐々にネジが緩んできます。
ご自身で増し締めをしていただくことで、
安全に、長くお使いいただけます。
また、長くお使いいただくと生地は劣化してきます。
でも交換していただけるので大丈夫です。
伊藤
ニーチェアは、発売されてから
ずっと人気商品だったんですか。
一柳
いえ、今でこそ再評価をされていますが、
一時、生産が落ち込んだ時期もあります。
遡ると発売当初の1970年は、
キャンバスと金属パイプに
木の肘掛でできた折り畳み椅子は、
家具の世界では異質なものとして扱われ、
雑貨の椅子として見られることも少なくなかったようです。
また、かなり安い価格で売られていたこともあり、
利幅が少ないと家具店さんなどでは、
取扱いを渋るケースもあったようです。
潮目が変わったのは、全国版の新聞に写真で紹介され、
ようやく国内の都市部で売れるようになったようです。
それから評価が高まり、海外、そして世界でも
売られるようになったようですが、
そのキッカケは、残念ながら分からないんですよ。
伊藤
「世界」というのは‥‥。
一柳
輸出先で一番多かったのは、
アメリカだったようです。
次にフランス、イギリス、ドイツといったヨーロッパ。
当時の日本の家具が、これだけの国に輸出されるのは
めずらしかったんじゃないでしょうか。
伊藤
おもしろいですね、
畳の暮らしから生まれた椅子が、世界に。
一柳
そうですね。
でも評価をいただくと同時に
国内はもちろん、
海外でも模倣品がいっぱい出ることにもなるんです。
伊藤
ええっ?! 
一柳
そうなんですよ。
でも新居さん自身は、
コピーが得意だと言われていた当時の日本で、
いやな気分ではあったようですが、
それほど怒ってはおらず、ご自身のデザインが
世界で認められたように思われていたようです。
伊藤
悔しさのいっぽうで、
ちょっぴり誇らしい気持ちもおありだったのかな。
一柳
そうだと思います。
そしてニーチェアは70年代中ごろから、
80年代にかけて一番売れていたと思うんですが、
90年代になって、
いろんな意味で日本のくらしが変わったとき、
この椅子の役割みたいなものが
終わってしまったようなところがあるというか。
そんな時代背景もあって、新居さんのご生家でもある
徳島の「ニーファニチア」さんは、
2013年に椅子の生産を中止してしまうんです。
きっと、椅子の製造が続けられなくなるようなことが、
色々と、たくさん重なったんだと思います。
伊藤
いちど、辞められているんですね‥‥。
一柳
はい。新居さんが2007年に他界されてしまったことも、
色々のひとつかもしれませんね。

うち(藤栄)は、1945年創業の
生活用品・インテリア・家具の総合商社なんですが、
1972年から、ニーチェアを仕入れて
販売をしていたんです。
そして2005年にはライセンス商品の「ニーチェアF」を
つくらせていただいたという経緯もありました。
そして2013年、「ニーファニチア」さんから
「椅子製造中止のお知らせ」
という連絡が来たとき、
世界に誇る日本の椅子がここで途絶えてはいけない、
なんとかできないかと、
製造から販売まで全てを引き受けようという
プロジェクトが立ち上がりました。
それで1年間、準備をして事業を継承し、
2014年からニーチェアの正規製造・販売元になったんです。
伊藤
そういうつながりがあったんですね。
すごいですね。
一柳
でもすぐにはうまくいかなかったんですよ。
そもそも、家具専門店さんが減っていたり、
百貨店の家具売り場も縮小されたりして、
今までのニーチェアの売り場がなくなっていたんです。
いっぽう大規模で、価格の安い自社製家具を揃えた
SPA(製造小売業)型のお店は盛況だったりと。
伊藤
あぁ、なるほど、そうでしたか。
‥‥でも、ひょっとして、その頃から、
生活提案型のショップが増えてきて、
家具を扱うようになったのでは? 
わたしも見かけたことがあります、
生活雑貨店で「あれ? ニーチェアだ!」って。
一柳
そうなんです。
2016年あたりから、生活雑貨のお店が
取り扱ってくださるようになりました。
やっと新居さんの
「良い暮らしの道具」として
新たな役割に気付いてくれたといいますか、
和室で使い、同時にコストを下げるためにと
考えられた折り畳むというスタイルが、
「ソファのような座り心地を持ち運べる」
という軽やかさとして受け取られ、
暮らしの道具としての評価をいただいたんです。
新居さんが当たり前のようになさってきた、
無駄のないものづくりも、
サステナブルであると再評価され、
取り扱いが広がっていったんですよ。
伊藤
うれしいですね。そういえば
軽井沢のSHOZO COFFEEの入っている
施設の中庭に、
いろんな色のニーチェアがありますよね。
天気のいい秋の日に行ったら、
みんなが座り比べをしてましたよ。
ちょっと移動させて、気持ちのいい場所を探したり。
一柳
Karuizawa Commongroundsの中ですね。
軽井沢書店さん
ニーチェアを扱ってくださっているんです。
伊藤
書店さんが! 
以前は考えられないことだったでしょうね。
そういえば、昔は応接セットとか、
ダイニングセットとか、
そういう感じで用途ごとに
家具を買っていました。
今は──、規模感は違うけれど、
お気に入りのマグカップを買う、
みたいな感覚の延長で
ニーチェアの購入を考えるのかもしれません。
一柳
きっと、そうなんでしょうね。

再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
2月1日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

saquiのフォーマルバッグ

▶︎商品詳細ページへ

フォーマルな時に持つバッグえらび、
じつはずっと悩みの種でした。
なので、以前販売したフォーマルな服に合わせて
バッグも作って欲しいと
岸山さんにお願い。
様々なサンプルの中から、
これ! とえらんでくれたのは、
フランス製の「DENTELLES ANDRÉ LAUDE」の
レースの生地。
つつましくも、美しい
クラッチバッグができあがりました。

このフォーマルバッグ、
「フォーマル」のシーンだけにしておくのはもったいない。
私はふだんのコーディネートにも持っています。
詳しくは、 こちらのコンテンツをどうぞ!
(伊藤まさこさん)

なお、材料費高騰のため、
2024年2月1日再入荷分から、
販売価格が変更になります。

わたしたちの暮らしに合わせて

未分類

伊藤
こちらのショールームには
歴代のニーチェアがあるんですね。
実家にあったのは、
まさしくこの色でした。
一柳
それは発売当初、1970年代のものです。
生地が、藍色ですね。
伊藤
わたし、ニーチェアと同い年です。
一柳
私もなんですよ! 
今日はどうぞよろしくおねがいします。
伊藤
こちらこそよろしくお願いします。
だからでしょうか、
ニーチェアには親近感を感じるんです。
一柳
いまもご実家では
使われているんですか?
伊藤
それが行方が分からないんです。
購入した父はもう何年も前に亡くなりましたし、
母もわからないと言うんですよ。
ひょっとして建て替えの時に住んだ家に
そのまま置いてきてしまったのかもしれないし、
いつのまにかガレージセールで
どなたかのお宅にもらわれて行ったのかもしれません。
姉たちにも訊いてみたんですが、
「あったね~!」と懐かしそうに言うものの、
やっぱりわからなくて、
「今あったら、座面のキャンバスも
交換して使えたんだよ」なんて話しました。
一柳
そうなんです。
古いものであっても、
生地が交換できるんですよ。
新居 猛(にい・たけし)さんという方が、
ニーチェアの生みの親なんですが、
この製品をつくられてから、
「カレーライスのような椅子」であるとか、
「自転車のように使われてこそ椅子」、
とおっしゃっていたそうです。
大衆の為に作られたんですね。
カレーライスが、どの家庭でも手軽に作れて、
家族のみんなに好かれる料理となったように。
また自転車は、世界中の人々が移動や運搬など便利に使い、
自分で修理やメンテナンスをしながら、
ずっと使い続けることができ愛される道具になったように。
そういう新居さんの願いが
ニーチェアの魅力なんじゃないでしょうか
伊藤
このすっきりしたデザインと
独特な名前から、
海外製品だと思っている方も多いんですよね。
「ニー」というのは、新居さんから? 
一柳
そう思われますよね。
これ、じつはデンマーク語からの由来もあるんです。
新居さんが椅子をつくりはじめたとき、
島崎信(しまざき・まこと)さんと出会いました。
島崎さんは東京藝大から
デンマーク王立芸術アカデミー建築科を出て
日本人で初めてそのアカデミーの研究員になった方で、
北欧の家具やデザインを日本に伝えた第一人者です。
その島崎さんが新居さんのつくる椅子を見て
「日本にもこういうデザインができる人がいるのか」と
驚いたそうなんです。
そして新居さんは島崎さんに
新しい椅子の名前を相談しました。
そこで「ニーチェア」と命名されたんですよ。
新居さんは、ご自分の名前をつけるのはおこがましい、
めっそうもないと言われたそうで、
それでは新居さんの「にい」ではなく、
デンマーク語で「新しい」を意味する
「Ny(ニュイ)」としてはどうだろう、
「新しい椅子」ってことで世の中に出していこうと、
「Nychair(ニーチェア)という名前になったそうです。
伊藤
そういう経緯だったんですね。
この椅子は見たことがあるけど名前がわからないとか、
日本の方がデザインされた日本製の椅子だとは
知らない方もいらっしゃると思います。
わたしも「新居 猛さん」のことを、
あまり知らずにいます。
一柳
新居さんご自身、
自分はデザイナーとは言わず、
「家具職」と言っていたそうです。
それに、1970年ぐらいの日本の製品って、
デザイナーの名前が前に出ることは
少なかったんじゃないでしょうか。
ですから新居 猛さんの名前よりも、
また「ニーチェア」の名前よりも、
“このかたちの新しい椅子”として
覚えられたんだと思います。
伊藤
出始めた頃、どういうところが
みんなの心をつかんだのかな‥‥。
ニーチェアの歴史を、
くわしく教えていただけますか。
一柳
もちろんです。
新居さんって元々、
徳島の古物商の息子さんだったようです。
そこへ、婿に来たお父さんが、
剣道具店を始められたんですね。
お父さんの家業は藍商だったようですが、
化学染料の普及でうまく行かなくなり、
戦前に、いちどアメリカに渡ったそうです。
そこでは、鉄道施設の仕事なんかをやられていて、
合理的精神のようなものを覚えられ帰ってきた。
それで剣道具店も、工夫をして
安く丈夫につくることを心がけたそうです。
伊藤
そこから、新居さんに通じるものがありますね。
一柳
はい。物を見る目、物をつくる技術や知識を
養ったのかもしれませんね。
けれども1945年の敗戦で
GHQが日本に来たときに、
剣道具は武器になるというので
「つくってはいけません」となった。
そこに、兵隊になられていた
新居さんが帰ってきたんですが、
家は焼けて商売は禁じられ、
ご自身も肋膜炎で臥せってしまうんです。
それが治ったのが27、28歳頃のことで、
そこから新居さん、徳島県の職業補導所の
木工コースに通ったそうなんですよ。
卒業して建具屋に勤めたら、
戦後の復興で木工の需要はすさまじく高く、
とても忙しい毎日を過ごしたそうです。
いっぽうお父さんは、
どうやって生計立てていこうと考えて、
「便利屋」を始めるんです。
伊藤
便利屋さんって、その頃からあったんですね。
一柳
そうなんですよね。便利屋といっても、
木工でなんでもつくります、
という商売だったようです。
それで新居さんもそこを手伝うようになる。
建具から家具、その修理までなんでもつくるなかで、
新居さんは「椅子がつくりたい」と
考えるようになったんだそうです。
ここからは私の想像も入るんですが、
ニーチェアの材料のなかに、
キャンバス生地がありますよね。
これは、当時とても身近な生地でしたし、
剣道具にも馴染みの深い素材です。
床几(しょうぎ/胡床[こしょう]とも)っていう、
武道全般や神社で使う折り畳みの椅子、
あれもキャンバスと木でできています。
そういうとこからインスピレーションを得て、
キャンバスを使った折り畳みの椅子を
つくり始めて、後々のニーチェアに
つながっていったんじゃないかと思います。
ちなみにこれが1955、56年に
新居さんが初めてつくった椅子なんですが、
最初はわりと普通の形なんですよ。
伊藤
ほんとうですね。
でもこういう脚だと、
畳の部屋では凹んでしまいますよね。
一柳
そうなんです。
ここから「畳ずり」
(和室で畳を傷つけないようにする椅子の脚の横木)
のような発想を取り入れていったんだと思います。
伊藤
そっか、ニーチェアは、
パイプ全体で支えるので、
重みが分散される。
畳の部屋でも使えますね。
一柳
そうですね。
そして「畳める、移動できる、仕舞える」
というのも大きな特徴です。
当時の日本の家って、
ダイニングやリビング、ベッドルームなんて少なく
まだ畳の部屋に、
ちゃぶ台を出して食事や団らんの場とし、
仕舞って、布団を敷けば寝室となり、
襖を外せば隣の部屋とひと続きになるという、
そういう暮らしをしてきたんですよね。
そして椅子でのくらしを
日本にもっと広めたいと思われていた新居さんは、
畳の部屋でも使えるように、
椅子も折り畳めて、移動して仕舞えることを、
ごく自然に考えられていたんじゃないでしょうか。
伊藤
考えてみると、和室ってすごいですね。
そして「畳む」という文化。
一柳
ちょうちんや、扇子もそうですね。
折り畳むって、、
日本人がすごく得意とすることです。
伊藤
イサム・ノグチの「AKARI」もそうですね。
一柳
そうかもしれませんね。
ニーチェアは、そういう日本の暮らしと
日本人ならではの感性から生まれたんだと思います。
座面がちょっと低いように感じるのも、
畳に正座で座った方と目線が合うようにと、
新居さんが設計されたのではないでしょうか。
伊藤
この低さは、そういうことだったんですね。
一柳
そして忘れてはいけないのが、
1970年の発売時、価格のことを
新居さんはいろいろと考えられていたことです。
というのも1960年代、
海外から家具も輸入されるようになり、
デンマークから北欧デザインの椅子が入ってきたんですが、
その価格に加えて、
輸送費や保管料といったコストもかかり、
日本での販売価格がものすごく高くなっていた。
ですから自分の椅子は、折り畳めて、組み立て式と、
できるだけコストを下げてつくり、
大衆のために、どの家庭でも手軽に、世界中の人々が
買えるようにしたいと考えていたことです。
伊藤
コストのことまで!

新居さんの椅子

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子どもの頃の椅子の記憶は3つあって、
ひとつは、
座面と背もたれが赤い、子ども椅子。
(今でも実家の屋根裏部屋に)

ふたつめは、
小学一年生の時に買ってもらった、
ダイニングチェア。
(大人の仲間入りができたようで、
すごくうれしかったなぁ)

最後のひとつは、
テレビを観たり漫画を読む時に最高! な、
一人がけのチェア。
(父から拝借してました。)

その椅子が「ニーチェア」と
呼ばれていることを知ったのは、
ずいぶん経ってからのこと。

デザインしたのは、
新居 猛。

生涯にわたって、
組み立て式の折り畳み椅子を作った新居さんですが、
そこには、
「出来るだけ・7則」という、
心がけがあったとか。

「出来るだけ少ない部材で」

「出来るだけ簡易な構造で」

「出来るだけ丈夫に」

「出来るだけ少ない梱包材で」

「出来るだけ少ない輸送費で」

「出来るだけ安い価格で」

「出来るだけよい座り心地で」

なんと、この椅子に、
そんな想いがたくされていたとは!

この椅子との出会いから、
40年あまり。
長く愛される秘訣って、
やっぱりあるのだなぁ……というのは、
使ってみるとよく分かる。
座り心地だけでなく、
折り畳まれた様子も美しいんですよ。

Lueのスプーン、わたしの使い方 伊藤まさこ

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次の日のおみそ汁

娘が「一番好きなお味噌汁」というのが、
ごま油でさっと炒めた豚バラとごぼうの赤だし。
お味噌汁は煮えばなが命、と思っている私ですが、
これと豚汁だけは別。
多めに作った翌日の朝は、
白いごはんの上にかけていただくのが
我が家の定番になっています。

さっと食べられるし、温まる。
おまけに洗いものも少ないし、と
いいことづくしなのですが、
気軽な分、器えらびや盛りつけを雑にすると、
ちょっと悲しい見た目に。

大振りの漆器の椀に盛ったり、
お盆を組み合わせたりして
「ちょっと品よく」を目指します。

沖縄の大嶺實清(おおみね じっせい)さんの
高台のついた黒い器に盛り、
韓国のお盆を合わせました。

添えたのはLueのスプーン。
木のお盆と黒い陶器に真鍮が加わると、
ちょっと洒落た感じになる。

タートルニットとデニムの耳元に、
ゴールドのピアスをつけると、
それだけで「いつもの自分」がちょっと変わる。
そんな感じでしょうか。


ロールキャベツ

ロールキャベツは島るり子さんの器に。
この日は、ほかにひじきの煮物や白和えなど、
和のおかずを中心にしたため、
メインのロールキャベツもスープ皿ではなく、
和食器に。
こんな時にそえるのもLueのスプーンなのです。


春雨サラダ

和えもののサーバー代わりに、
Lueのスプーン(大)と黒檀の24cmを。
取り箸だけ、また、スプーンだけより、
取りやすさは格段にアップ。
この日は春雨サラダに合わせました。


母のチャーハン

「チャーハンにはこれ」と断言するのは母。
私がプレゼントしたLueのスプーンが
すっかり気に入ったようです。
あまり手入れがいらないのもいいみたい。
ふだん使うものは、
「気軽に使える」というところも
えらぶポイントになります。

このチャーハン、一見ふつうなのですが、
とてもおいしくて、
実家に行くたびに作って! とお願いしています。
どうやら炒める時に
ちょっとラードを入れるのがコツのよう‥‥。


鮭チャーハン

バターで炒めたごはんに焼いた鮭を入れ、
仕上げに黒胡椒をたっぷり。
簡単にできて大満足。
お弁当にもよく登場したのが、母のレシピの鮭炒飯。

そのままお皿に盛ることがほとんどですが、
休日のお昼など、心に余裕のあるときは、
こんな風に型取って、
スプーンを添えます。
食べやすく、そしてすくいやすい。
やっぱり「チャーハンにはこれ」なのです。


栗きんとんのデザート

スプーンの小さいサイズは、
デザートに。
お正月に作った栗きんとんのペーストに、
ゆるくホイップした生クリームをのせて。
粉引きのお湯呑みに、栗の木のお盆。
漆のスプーンもいいけれど、
真鍮を合わせると意外な組み合わせに。
コーヒーと一緒にいただきます。

このサイズ、今年迎えたばかりで、
まだピカピカ。
使っていくうちに、
いい味わいに変わっていく。
そんな様子も楽しみたいと思っています。

真鍮ならではの良さ、ハンドクラフトの良さ

未分類

伊藤
菊地さんのカトラリーのシリーズは、
つくり始めてから、ちょっとずつアイテムを
増やしていかれたのでしょうか。
コーヒーをすくうのが欲しいなと思ったら
コーヒーサーバーを、とか、
紅茶や緑茶を飲むのにティーサーバーが要るとか?
菊地
そうですね。自分でっていうものも
半分ぐらいはあると思うんですけど、
あとの半分ぐらいは、自分からというより、
お客さまの要望で増えていきました。
たとえばピザサーバーは京都の
monk(モンク)っていうピザ屋さんの店舗を
設計した方が知り合いで、
オリジナルでつくって欲しいって言われ、
そのまんまうちの商品としても出そう、
っていうパターンでした。
伊藤
なるほど、そうなんですね。
お一人で制作されているわけじゃないですよね?
菊地
今は自分のほかにスタッフが1人、
あとアルバイトが2人来ています。
基本、ハンドクラフトは
僕ともう1人で作っていて、
アルバイトの2人には
比較的簡単な作業をしてもらっています。
伊藤
Lueはハンドクラフトがメインだと思うんですけれど、
今はインダストリアルライン(工場生産)も
手がけていらっしゃるんですよね。
菊地
はい、インダストリアルのシリーズは
新潟の燕の工場でつくっています。
富山県の高岡あたりの工場にも手伝っていただいて。
伊藤
じゃあデザインをして、素材を決めて、あちらで?
菊地
そうです。
ちなみに今回のはすべてハンドクラフトです。
伊藤
はい。どちらにも良さがありますよね。
工場ものには、工場もののよさが。
菊地
そうですね。
インダストリアルで最初につくったのが
「スポーク」っていう、柄の片側がスプーン、
もう片側にフォークがついている
一体型のものでした。
インダストリアルものは
スタッキング(重ねて収納)できるように
つくっているんです。
それを考えると、手でつくるより
絶対工場でつくったほうがきれいにできるし、
効率的なんですよ。
あと、ずっと工場にこもって
ハンドクラフトをしていると、
人と関わってつくるような仕事もしてみたいなと思って。
そういう流れで新潟の工場の人たちと
コンタクトをとってつくり始めたんです。
伊藤
なるほど。
スタッキングができる良さ、よくわかります。
けれども今回わたしたちが扱わせていただく
ハンドクラフトの製品って、
端正なんだけれど手づくりの揺らぎみたいなのがあって、
わたしはそれがすごい良いなと思っているんです。
菊地
やっぱり手づくりの良さっていうか、
これを工場でつくったらもうちょっと無骨になるし、
そもそも、多分、つくれないんですよ。
基本、柄の部分とか、
全部手でハンマーで叩いてるんですが、
叩くと曲がったりきれいな形にならなかったり、
それを手で微調整しながら整えていくのって、
工場よりは手でつくったほうが
形がきれいになるんです。
手でしか出せない繊細さがあると思っています。
伊藤
そうですね。
普段、ご自宅でも使われていると思うんですが、
例えば「大スプーン(栗型)」は‥‥。
菊地
カレーとかチャーハンを食べるときに使いますね。
深さがないからスープカレーだと
ちょっと難しいかもしれないですが、
うちでは使ってますよ。
伊藤
カレーなどごはんものをすくい上げるときに、
ソースもライスも余すことなく
サッとスプーンにのせられるのが気持ちいいんです。
菊地
薄くつくれるっていう金属の利点ですね。
伊藤
そうですよね。
だから口に入ったときも違和感がなくて。
真鍮の良さみたいなところって、
いろいろあると思うんですが、
菊地さんからすると、どんなことでしょうか。
菊地
つくる側から言えば
硬すぎず柔らかすぎずという感じで
加工のしやすい金属だということですね。
あと使っていくと、
最初はギラギラしている印象が
どんどん落ち着いていく、
その色味がすごく良いと思ってます。
もちろん金属磨きを使えば
ピカピカになるんですが、
経年変化を楽しんでもらう方が
僕としては健全かなと思います。
結構大変なので、磨くの(笑)。
伊藤
シルバーだとたまにちゃんと磨かないと嫌だけど、
真鍮は平気ですよね。
わたしも一回も磨いたことがありません。
あと、真鍮という素材が食卓にのると、いいんですよ。
木のテーブルに陶磁器があって、
ガラスのコップがあって、
木や竹のお箸があって、
そこに真鍮が入る。
そのようすが、とてもいいんです。
菊地
真鍮が、アクセントになりますよね。
伊藤
そうなんですよ。
同じ金属でも和食器にシルバーを合わせるのは難しくて。
やっぱり真鍮っていう素材の良さなんだろうな、
って思って使ってます。
お手入れとか、どうですか。
わたし、なんにもしてなくて、
時々食洗機に入れちゃってるんですけど、
それは駄目‥‥でしょうか。
菊地
全然いいと思います。
食洗機に入れても
気になるような変色はしないと思いますよ。
伊藤
良かった。
菊地
ただ、食品が残ったままほったらかしておくと
その部分に跡がついちゃったりするので、
最初の綺麗なうちは気をつかっていただけたら。
あとは‥‥、なんて言うのかな、
使う人の性格が
そのまま反映されるっていう感じ。
丁寧に使ってると丁寧な色になるんです。
伊藤
へえ! でも、なるほど、
そうかもしれないですね。
菊地
とはいえ、気にせずにガシガシ使ってもらうと
いい色になっていくんじゃないかな。
どんどん使っていけば
全体がきれいに変わっていくので
そのまま使い続けてください。
ただ緑青(ろくしょう。銅の錆)が出ちゃったり、
一部だけ黒ずんでしまったら、金属磨きで磨けば
もとに戻してもらうこともできます。
伊藤
でも、あんまり出た記憶がないです。
菊地
塩とか、食材に触れっ放しにすると
出ちゃうことがあるんです。
銅そのものよりは出づらいですけれど。
伊藤
とにかく使ったらきれいにして
よく拭いておけば、
だんだん自分ならではの味わいになっていく、
っていうことですよね。
菊地
そうですね。
伊藤
これからつくってみたいものであるとか、
これからしてみたいお仕事はありますか。
菊地
人と話をする中から生まれるものが多いので、
そちらを拡げていきたいなって思います。
今はニューヨークの会社といっしょに
日本の工場で
ステンレスのディナーセットをつくっています。
僕は仲介者のような役割ですけれど。
伊藤
デザインは向こうが?
菊地
そうですね、デザインもほとんど向こうですが、
うちが入って、日本の工場とうまくいくように
落とし込むっていう感じの仕事をしています。
やりたいことが工場に伝わりづらい部分を、
僕が中間に入ることで
伝わるように言葉を変えてみたり。
伊藤
そういうお仕事もあるんですね。
ディナーセットというのは、
カトラリーですよね。
どういう形なんですか?
菊地
昔のヨーロッパのような、
スプーン・ナイフ・フォークのセットです。
伊藤
とっても楽しみです! 
菊地さん、今日はありがとうございました。
今回はお伺いできませんでしたが、
いつか工房にお邪魔させてくださいね。
菊地
ありがとうございます。
ぜひいらっしゃってください。

岡山でものづくり

未分類

伊藤
菊地さんはじめまして、伊藤です。
どうぞよろしくお願いします。
この度はありがとうございます。
菊地
はじめまして、菊地です。
こちらこそです。
伊藤
わたしが菊地さんの「Lue」のスプーンを
初めて買ったのは、10年ほど前のことでした。
高松の「まちのシューレ963」で見つけたんです。
菊地
ありがとうございます。
シューレさん、いまも置いてくださってます。
ちょうど10年ぐらいになると思います。
伊藤
そうなんですね。
そうしたらとても使いやすくて、
実家の母にもプレゼントし、母も
「チャーハンを食べるときはあれじゃないと」
って、言っているんですよ。
菊地
ありがとうございます。
嬉しいです。
伊藤
どういう経緯で今のような
ものづくりの道へ入ったのか、
「そもそも」のお話から
聞かせていただいてもいいでしょうか。
菊地
そもそも、を言いますと、
父が真鍮でアクセサリーをつくっていたんです。
伊藤
じゃあ小さなころから
真鍮という素材は身近だった?
菊地
はい、とても身近なものでした。
17か18ぐらいから
ずっと父親の手伝いを始めて、
23か24ぐらいの時、
父も病気だったことがあったりとか、
自分が結婚するタイミングでもあったりして、
独立して何かしないとなってことになったとき、
料理をつくるのも好きだったので、
アクセサリーよりはスプーンや食器をつくってみたいな、
っていう気持ちがあって、
カトラリーをつくり始めたんです。
伊藤
アクセサリーから、
暮らしの道具の方向へ。
そのとき最初につくったのは?
菊地
父のアドバイスをもらいながら、
最初にできたのが「ティースプーン」です。
伊藤
あの形は、最初からだったんですね。
菊地
はい、溶接をするタイプのものですね。
それを倉敷にある
融民藝店(とをるみんげいてん)っていう
昔からあるお店に持っていき、販売を始めました。
そこからもうちょっと
韓国料理で使うスッカラ(*)っぽい
形のものが欲しいという要望を
融民藝店からいただいて、
「大スプーン(栗型)」などのカトラリーを
つくるようになっていったんですよ。
(*)スッカラは、ビビンパなどを混ぜるのに使う、
くぼみが浅い朝鮮のスプーン。
伊藤
そういうことだったんですね。
もともとスッカラを
お使いだったりしたんですか。
菊地
いえいえ、民芸屋さんに行くまでは
スッカラ、知らなかったんです。
伊藤
そうだったんですね。
韓国の食卓で使うスッカラって、
シンプルで掬(すく)いやすくて混ぜやすく、
すごい道具だなって思っているんです。
でも菊地さんの「大スプーン(栗型)」は、
スッカラそのものではなく、丸みがあります。
あの形になるまでに、試行錯誤はありましたか。
菊地
そうですね。
まず洋食器のスプーンって、
くぼみの深いものが多いですよね。
スープをいただくにはいいんですが、
私たちのふだんの食生活でスプーンを使う時は、
カレーライスやチャーハンですよね。
そういう料理をスプーンですくって口に運んでも、
くぼみの底に食材が残ってしまうんです。
だから浅い方が使いやすいなと思っていました。
あと柄(え)の部分も、なんて言うのかな、
作家ものって、山なりに反ってるものが多いんですが、
それだと丸まっていて、使いづらいなあと、
そんなことを考えながら、
形、深さ、柄のカーブなど、
使いやすさ、食べやすさ、洗いやすさなどを考えて、
あの形をつくりました。
伊藤
初代から今に至るまで試行錯誤があったというよりは、
割と最初から「これ」っていう形だったのでしょうか。
菊地
基本は一緒ですが、
だんだんと整っていったと思います。
最初の頃は「柄が細すぎる」と
言われることがよくあったので、
なるべく太くしてみようと叩いたんですが、
形が崩れちゃって、アンバランスになってしまったり。
スプーンのあの形には、
柄が細い方が綺麗だなと思います。
今も手でつくっているなかでの
多少の変化はあるとは思うんですけどね。
伊藤
その細いとおっしゃった方は
持ちづらいとか頼りないとか、
そういう意味合いだったんでしょうか。
菊地
そうです、そういう意味合いで言われてました。
伊藤
スッカラも柄が細めですけれど、
わたしたち、洋物の比較的太い柄の
スプーンしか知らないから、
はじめて手にしたとき、
細いと感じるんでしょうね。
菊地
そうかもしれませんね。
そのときいろいろ考えたんです。
人の意見を聞くのも大事だけれど、
100パーセント全員の意見を
すくい上げるのって難しいなと。
それよりは自分がいいと思った形を
つくっていく方が健全だなと思って、
そこからは今の形でつくっています。
伊藤
万人に合うものってないんですよね。
わたしたちは作家さんが
「これが好きだ」と言ってくださると
逆に安心感があるっていうか、
ブレがないっていうか。
そういえば、先日、
LIVING MOTIF(六本木の生活雑貨店)に行ったら
Lueのラインナップが並んでいました。
大人気ですね。
友人宅でも使っているのを見ますし、
使いやすいからもう一組買いたいとか、
誰かにプレゼントするとか、
そういう感じでじわじわ広がっている印象ですよ。
菊地
いえいえ、おかげさまで、です。
広がりで言えば、
ストッキストっていう展示会が
ひとつのきっかけでした。
10何年前だったと思うんですが。
伊藤
そこが、出会いの場だったんですね。
菊地
僕もずっと岡山にいるので、
その時ぐらいしか人と会うことがなくて。
そこで知り合った方を通じて
ちょっとずつ広がっていったんです。
伊藤
Lueのウェブサイトもとても素敵だと感じます。
写真やデザインは、全部菊地さんがプロデュースを?
菊地
写真は、さきほどお話しした
融民藝店を継いだ
山本尚意さんっていう若い方が、
写真も撮るかたで、
彼にお願いしているんです。
僕は、こうやって撮って欲しい、
っていうリクエストをするほうですね。
枯れた草とかと一緒に撮ったりするんですけど、
それはうちの近くでむしってきて
一緒に撮ったりとか、そういう感じですよ。
伊藤
つまり、スタイリングは菊地さんということですね。
菊地
そうですね、今のところ。
伊藤
作品の見せ方を大切になさっていると思ったんです。
統一感があって。
菊地さん、ずっと岡山でいらっしゃるんですか?
菊地
そうです、僕は生まれが倉敷で、
育ったのは総社っていう隣町です。
父が、倉敷の美観地区の川沿いの道端で
物売りしてるヒッピーの一人だったんですよ。
伊藤
えっ? お父様が?
菊地
そうなんです。
ヒッピーだったので
各地を転々としてたみたいなんですけど、
最終的に倉敷に落ち着いて工房を開いたんです。
生きていれば70歳になります。
伊藤
お父さまが20歳くらいだったとして、
ということは今から半世紀前の倉敷は、
ものづくりの方が集まる、
そういう土地だったんでしょうね。
いまも、わたしたちの付き合いで言うと
陶芸家の伊藤環さんや木工の山本美文さんが
岡山にいらっしゃいます。
岡山って作家さんが多い印象があります。
菊地
倉敷って民藝が強いし、備前焼もあるので、
ものづくりの人が多いイメージ、ありますよね。
岡山に移住するものづくりの方も多いんですよ。

しっくり

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料理に欠かすことのできない道具といえば、
まず思い浮かべるのが、
京都の盛りつけ箸や菜箸。
私の手の延長のような存在です。

食べる時は、
煤竹と青黒檀のお箸が我が家の定番。
箸先がすぅっと細く、
米粒一粒もらくらくつまめる。

ふだん、あたりまえのように身近にあるものだから、
気に留めていないけれど、
外での食事で違う箸を使うこともあって、
そんな時に、
ああ、ふだんとてもお世話になっているんだな、
ということに気がつく。

自分にしっくりくるものを使うって、
私にとってはとても大切なことなんです。

今週のweeksdaysは、
Lueのカトラリーとキッチンツール。
使いはじめてから10年くらい経つかな。
チャーハン、カレー、チキンライス……
今や「これがないと」と思う、
お箸と同じくらい必要な道具。

コーヒーサーバーやティーサーバーなども、
合わせてご紹介します。
「すくう」のが楽しくなる道具たちですよ。

事務所でアーカイブ探訪

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伊藤
藤枝の工場から移動して、
静岡市内の事務所にお邪魔しています。
‥‥わぁ、すごいですね、
かわいいものがたくさん! 
ミュージアムの一室のようです。
齊藤
こうして昔のものが並んでいると、
たしかにミュージアムみたいですね。
といっても過去の製品を
すべて網羅しているわけでもないんですが。
伊藤
それでも、こんなにいっぱい。
卓上のくずかご、アイスペール‥‥
こういったものは、
いまはつくられていないそうですね。
齊藤
はい、需要がなくなって
廃盤になったものがたくさんあります。
また、金属部材が必要なものは、
それをつくるメーカーさんがなくなって。
昔は金具のメーカーもいっぱいあったし、
手作業をしてくれるところも多かったんです。
いまも、やってできないことはないでしょうが、
コストがかかってしまうと思います。
伊藤
傘立てもそうですか。
とてもいいデザインだと思うんですが。
齊藤
やはり脚やトレイなど金属の加工が難しくなったことと、
何度も何度も水にふれるという使い方に
成型合板が向いていなかったんですね。
1年、2年、ハードに使っているとボロボロになる。
実用品とはいえ、1年や2年では早いということで
つくるのをやめてしまいました。
伊藤
そうなんですね。
すてきなデザインなんだけれどな。
このマガジンラックも、
すごく形に惹かれます。
齊藤
このマガジンラックは現在も生産しています。
ショップやブランドとの
コラボレーションもあるんですよ。
伊藤
そうなんですね。
ほかにもコラボレーションは多いんですか。
齊藤
はい、やっています。ここにあるものでは、
子供用のままごとの容れ物や靴べらなどがそうですね。
メーカーやブランド、ショップのかたがたから
依頼をいただいてつくるんです。
海外のかたから依頼を受けて
オリジナルでつくることもあります。
ぼくらの発想にない、
「何に使うんだろう?」と思うような
かたちや色のものがあったりして、面白いです。
でも商品化しなかった試作も山ほど。
伊藤
スツールもありますね。
齊藤
これもサンプルで終わりましたね。
耐荷重を考えて丈夫につくるため、
二重構造にしたんですが、
それがコストにはねかえり、
実現しませんでした。
伊藤
北欧的というか、
日本的ではないデザインも多く見られます。
外国のふるいホームドラマに出てきそうな
アイテムもたくさん。
齊藤
そういったものは、祖父の時代、
輸出の全盛期のものです。
1960年代くらいまでは、
こういうものが多かったように思います。
‥‥これ、むかしの輸出用のカタログです。
伊藤
わぁ、どれも素敵ですね! 
おじいさまの時代は、どれぐらいの割合で
輸出をなさっていたんですか。
齊藤
100%が輸出でした、
世界中に出していたんです。
勢いのある時代ですよね。
とにかく作って売って。
伊藤
ほんとうにいろいろなものを
つくられてたんですね。
齊藤
祖父が開発好きだったんですよ。
建築部材、たとえば家のドアも
成型合板でつくろうとして、
そのための高い機械を導入したんですが、
結局、製品化せずに無駄に終わっちゃいました。
それでも許されていた時代だったんですね。
伊藤
今回のバスケット、新色の黒は、
サイトーウッドさんの定番色の黒とは
違う仕上げなんですよね。
齊藤
はい、だいぶ違います。
いちばんの違いは、「weeksdays」版は
木地が出ていないということですね。
伊藤
ほんとうですね、
こちらは木目がわからないくらい。

左がSAITO WOODブランドのブラック、右がSAITO
WOOD×weeksdaysのブラック。

齊藤
表面の材料も違うんです。
定番のものはアユース材ですが、
「weeksdays」ではシナ材です。
塗料もグレーと黒では違うんです。
グレーは顔料を混ぜていますが、
黒い染料なんです。
顔料のグレーは1回で塗りつぶしみたいな感じに
仕上がるんですけれど、
染料の黒は何回か塗らないと
真っ黒にはならないんです。
1回だと透けた感じになっちゃう。
ですから、仕上げまでに3回塗っています。
伊藤
乾かすのって、どのくらいかかるんですか。
齊藤
乾かすのは、すぐです。
10分とか20分ぐらい放っておけば、
さぁーっと乾いていくんです。
伊藤
お客さまって、
どういう風に色を選ばれることが多いんですか?
もう好み? ご自宅のインテリアに合わせるとか。
齊藤
そうですね。
インテリアに合わせる、というかたが多いですね。
ちなみに黒のバスケットは一時期売れなくて、
染料も高価ですし、
廃番にしようかと思ったこともあるんです。
でも2、3年ぐらい前からかな、
海外も含めて、黒が動くようになって。
伊藤
何がきっかけというのはわからない? 
齊藤
まったくわからないんです。
みなさんのインテリアの好みが変わったのかと。
ちょっと前までナチュラル系が
主流だったんですけれど。
白っぽいものや、濃いこげ茶系ですね。
最近それに加えて、
黒も動くようになってきました。
伊藤
わたしが黒がいいなと思ったのは、
インテリアとの関係です。
今、ちっちゃい小屋を改装してるんですが、
黒いタイルを敷いたので、
それに合うんじゃないかなと思って。
齊藤
そうなんですね。
かっこいいですね、きっと。
伊藤
くずかごとしてじゃない使い方を
されてる方っているんですか?
齊藤
うーん? やっぱりくずかごとして使うかたが
ほとんどだとは思います。
そうじゃない使い方の提案を
伊藤さんがコンテンツ
紹介されているのを見て、
「ああ、そうか!」と思いました。
伊藤さんのまわりでは
くずかご以外の使い方をするかたも
いらっしゃるんですね。
伊藤
布入れにするとか、
ストレッチポールを入れている人もいますし、
コロコロ(粘着テープ)や静電気防止スプレーなど
よく使うけれど目立たせたくないものを入れる、
という人もいますね。
齊藤
なるほど、なるほど。
伊藤
使っていて飽きない、という声も多いですよ。
わたしたちが紹介する前から
持っているという人も、
ずっと使っていると。
齊藤
経年変化でちょっと色が取れてくると、
また、いい感じになってくるんですよ。
伊藤
和室に置くのに、
旅館のようなくずかごじゃないものをと
探していた方が、
これを見つけたという声も。
たしかに和室にも合いますよね。
齊藤
嬉しいです。
うちでは、蓋付きが、和室に好まれます。
中が見えないからでしょうね。
伊藤
こうして工場を見せていただくと、
また、愛着が増す気がします。
齊藤さん、ありがとうございました。
成型合板でつくりたい製品が思いついたら、
またいろいろとご相談させてくださいね。
齊藤
こちらこそありがとうございました。
どうぞよろしくおねがいします。

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