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自由が嫌だった。
- 内田
- 不登校といえば、母が生前、2015年に、
不登校の子どもたちや
親に向けたシンポジウムに参加したことがあるんです。
- 伊藤
- 9月1日が、子どもの自殺が最多ということについて、
メッセージを送ってらっしゃった。
- 内田
- そうなんです、9月1日。
昨年、2018年のその日は、母が入院中で、
まさしく死に向かっているなか、
今日は、ほとばしる未来がある子どもたちが、
学校でのいじめだったり、生きづらさだったりを理由に
自殺するっていうこの現実に
もうほんとに耐えられなくて、
涙を流しながら、
「死なないでね」っていうふうに言ったんですね。
それを受けて、
私もまったくそういうことを知らなかったし、
うちの子どもたちはそこまで学校行きたくないっていう
ふうになったことがなかったので、
そういうことが日本で大問題だっていうことさえも
知らなかった自分がとても恥ずかしかった。
- 伊藤
- 学校に行きたくないって言えない環境なのかな?
- 内田
- 不登校の子どもは、学校に戻れないということは、
社会にいつまで経っても戻れないのと同じだって、
想像を先に進めてしまって、
だからもう死ぬしかない、僕は死ぬしかないって‥‥。
「学校か、死か」っていうことになっちゃうんですね。
それはもちろん、一人ひとりに聞けてるわけじゃないから、
ざっくりしすぎなんですけど、どうやらそういうことだと。
しかも、いろんな先進国のなかでも
子どもの自殺率は、日本がかなりの上位なんですって。
じゃあ私たち大人が、
「学校に行かなくても全然生きる道はあるよ。
学校という機関に行かなくても
学びのチャンスはいくらでもあるよ」っていうことを、
当たり前のように提示してあげてないっていう現実が、
選択肢を狭めてるっていうか。
- 伊藤
- うん、うん。
- 内田
- もし急に自分の子どもが学校に行きたくないとなったときに、
伊藤さんのように半年間も、
「いいよ、いいよ」っていうふうにできるかって言ったら、
私はもしかしたらもっと早くに不安になって、
「こうしてみろ、ああしてみろ」って
言ってたかもしれないなっていうのは想像できる。
- 伊藤
- 私、ばかなのかも?
- 内田
- えっ、そんなことないですよ!
- 伊藤
- その時じつはちょっとうれしかったんです。
あの年頃の娘とずっと一緒にいれたのは、
今思うとすごくラッキーだった。
- 内田
- 財産ですよね。
- 伊藤
- そう。
- 内田
- 不登校の子どもをカウンセリングする人と
対談したときには、
そういう期間って、人から見たら
ただ闇の中で閉じこもって
なにも動いていないって見えるかもしれないけど、
熟成の期間だと思うようにって。
発酵期間っていうか、
のちに自分がおいしくなるためにっていうと変だけど、
自分がもっといろんな豊かさを持てる、
あるいはいろんな選択肢を
自分のなかで膨らませられるための
熟成期間だっていうように、
家族も本人も思えるようにって。
だから、追い込まない。
いつ? どうする? とは、
絶対言わないっていうのが鉄則だ、みたいな。
そういう話を専門家から聞いたりすると、
伊藤さんはそういうことを知らず知らずのうちに
感覚的にやってらしたっていうことが、
ほんとにすてきだなって思いました。
- 伊藤
- もともと私も学校が苦手なタイプだったんです。
- 内田
- 伊藤さんのご両親はどういう方でしたか。
子どもに対して。
- 伊藤
- 私はなんにも言われたことがないんです。
- 内田
- 勉強をしなさいもないし、
こういうことしちゃだめよもない?
- 伊藤
- なんにも言われなかった。
口は出さないけどお金は出すという。
- 内田
- でも、私もそうだったんですよ。
- 伊藤
- うん、うん。
- 内田
- だけど、それがすっごく嫌だったんですよ。
- 伊藤
- へえ‥‥。
- 内田
- そこがおもしろいなと思って。
「なんでもありだよ。なんでも自由にしなさい。
その代わり、責任は自分でとりなさい」っていう中で、
私はどこか、いつも
「これで大丈夫だろうか」っていう危機感を抱えてた。
- 伊藤
- 結局、自由ってそういうことなんですよね。
- 内田
- だから、小さいときから、
自由なんてなに一つおもしろくないし、
もっと「こうしろ、ああしろ」って
言ってほしいと思ってました。
そしたら考えなくて済むじゃないですか。
考えるのに疲れてました。子どものときから。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 内田
- だから、伊藤家の、
口は出さないけどもお金は出す、
つまりサポートしてくれるっていうことは、
いい親だったって思える。
その大らかさが羨ましいです。
- 伊藤
- うん。すっごいうれしかったです。
‥‥、やっぱり私がばかなのかも?
- 内田
- いやいやいやいや。
それは生命力が真っ当っていうことですよ。
ちゃんと、与えられた環境を、
おもしろがりながら生きてこられた。
じゃあ、反抗期もなく?
- 伊藤
- 反抗期もなかったですね。
- 内田
- いつも、お母さんとも仲良く、
なんでも話し合えて、みたいな?
- 伊藤
- そうですね。でも、父は、わりとこう、
近寄りがたいというか、「父」っていう存在でした。
うちの母もやっぱり立ててる感じはありましたね。
内田さんの「自由が嫌だった」というのは面白いな。
- 内田
- 嫌で嫌で。
友だちは、お母さんやお父さんに
「何時までに帰ってきなさい」
「ああいうエリアに行っちゃだめよ」って、
いろんなルールがあって、
それをいかにすり抜けようとしてるかっていう感じで、
羨ましかったですね。
- 伊藤
- それも言われなかったんですか?
- 内田
- はい。でも、お友だちは私を羨ましがる。
だって、門限もないし、
誰とどこに行ってもいいし。
だから、結局、
ないものねだりだったんだろうなとも
思うんですけどね。
がんじがらめだったら、
きっとそれを打ち破ろうとしただろうし、
もっと反抗しただろうし。
- 伊藤
- 娘が戻りたいと言った学校は、
人と比べない校風なんです。
「違って当たり前」っていうのが、
親にも先生にも、子どもたちにもある。
それが普通で育ってきたので、とつぜん
「同じで当たり前」っていう環境に「あれ?」って。
- 内田
- そんなに違うんだ。
- 伊藤
- そのあと、「一度、外に出なかったら
今の環境がいいって思えなかった」って。
なんか区切りになったみたいで、それについて
「ありがとね」って言われました。
- 内田
- ああ!
- 伊藤
- 私が勝手に振り回したわけだけれど、
「やだ、行きたくない」みたいのはあっても、
私の子に生まれちゃったし、って。
- 内田
- 伊藤さん、そんなに、
本能のおもむくままに、
っていう感じの性格なんですか?
- 伊藤
- うん。わりとそうです。
- 内田
- じゃあ、たとえば、この生活も、
がらっと変えられる?
- 伊藤
- はい。急に引っ越したくなるし。
そういえば、のちのち、娘が18歳ぐらいのときに、
「ママが自分の人生を生きてくれてるから、すごい楽」
みたいなことを言われました。
- 内田
- うんうんうん。
- 伊藤
- 「えー。ほんと、よかった。
ごめんね、こんな、いろいろなのにー」と。
それはすごくうれしかったことの一つです。
- 内田
- ほんとに心の奥のほうで
なにか細くつながってるっていうのを
勝手に感じちゃったんですけど、
ほんとにそれって、親子であっても、
幸福な出会いだと思います。
なかなか、自分の親でも、
自分の子でも、兄弟でも、
そこまでのシンパシーだったり思いやりだったり、
そういうものって得られないみたいですね。
- 伊藤
- 子どもができたとき、どう思いました?
うれしかった?
- 内田
- いや、えー‥‥、それ、考えたこともなかったです。
- 伊藤
- 私は、なんてことをしてしまったんだろうと思ったんです。
- 内田
- え、なんてことをしてしまっ‥‥た、って??
- 伊藤
- もう、取り返しつかないじゃない、って。
- 内田
- それは、負荷の意味で?
- 伊藤
- 「どうするんだろう」みたいな。
だって、一人、人間を育てるって、
やってみないとわからないし、
でも、産んだら、「やったけどだめだった」
ってことはできないので、
「よし、いちかばちかだ」みたいな気持ちになって。
- 内田
- ええ。
静かに強い。
- 内田
- そうして母と話をするようになって、
母がそもそも持っていた心の闇、
ブラックホールみたいなものを、
一緒に共有‥‥というか、
わかる、共感できるようになって。
母は1回結婚してるんですね。21歳とか、
けっこう早くに、文学座の同期の役者さんと。
5年ぐらい結婚していたのかな。
でも、とくに子どもも持たず、離婚して。
離婚の理由は、とにかく幸せな、
とてもいいお家の出のご主人で、穏やかで、
アーティスティックで、なに一つ文句も、
非の打ちどころもなかった人だったそうです。
その幸せで穏やかな空気を吸ったときに、
ブラックホールを見つけてしまったんです。
自分のなかに。
そしてなんとかしてこの幸せを壊したい、
っていう気持ちになった。
そういう、ある種の闇を自分のなかに持っているから
結婚っていうのは向いていないし、
再婚しようなんて思ってなかったところに、
30代になって、父みたいな、
母にとっては一種の異物と出会ったとき、
「あ、こういうわけのわからない人といれば、
私のブラックホールが埋まる」っていうふうに、
直感的に思ったんですって。
- 伊藤
- ブラックホール‥‥。
- 内田
- いつも母が言ってたのは、
「私が裕也を必要としてるんだ」。
世の中では、父が破天荒で被害を被ってる奥さん、
尻拭いばっかりしてる奥さんみたいな
イメージかもしれないけど、そうじゃなく、
父がいることで自分(母)がいられると。
本当に息をしてるのも苦しかった時期があったんです、
母は。
- 伊藤
- そういう話を、思春期の也哉子さんが
疑問を投げ掛けたときに、じっくりと‥‥。
- 内田
- はい、してくれました。
わからないかもしれないけども、
聞かれたときにはすべてを包み隠さず教えよう、
って思ったんでしょうね。
そのときに全部の理解は
もちろんできなかったけれど。
- 伊藤
- 今になって、「あ、こういうことなんだ」って
わかることも、ありますか。
- 内田
- はい、わかってきましたね。
- 伊藤
- 息子さんとかお嬢さんにも、
同じように接してますか?
また全然違う親子関係だと思うんですけど。
- 内田
- それぞれ全然違うタイプの子どもたちなので、
私が母としたような、
暗い部分も含めた心の話をする機会はそんなにないですね。
これからあるといいなぁ。
せっかく親子としてこの世に出会ったから、
いつかは自分の持っている悩みとか、
「私自身もこういうことを抱えてたんだよ」
みたいなことをちゃんと、
一対一で話したいなと思うけれども。
べつに親子としてのことだけじゃなくて。
- 伊藤
- うん。そんな時が来るといいですね。
- 内田
- 今はわりと、みんながそれぞれの青春を謳歌して‥‥。
- 伊藤
- 健やかなんでしょうね。
- 内田
- 私はわりと直球でなんでも聞いてしまう
タイプなんですけど、
上の2人はもうちょっとオブラートに包んでるっていうか、
自分のなかの考えをいろんな人に
言わないタイプではありますね。
たとえば、ニューヨークから連絡がきて、
娘と電話で話をしていたんです。
雑談をしていたんですが、
私も行かなきゃいけないから、
「ごめんね。もうそろそろ、
次行かなきゃいけないから切るね」って言ったら、
「あの、あのね‥‥」って引き留める。
「え、なに? なに? なにがあったの? どうしたの?」
って言ったら、
「べつにいいんだけどね‥‥」って、
ぽつぽつと話しはじめたのは、
初めてに近い失恋をしたということでした。
- 伊藤
- 言い出しづらかったのね。
- 内田
- 「じつは、ボーイフレンドとこうなって、ああなって‥‥」
と話しはじめて。
あ、初めて自分から悩みを言った、と思って、
ちょっとうれしくて。
失恋したのに嬉しいって、変ですけれど。
娘さんはオープンですか? いろんなことに。
- 伊藤
- 私は石橋を叩いて渡る前に渡って、
振り向いたら「あ、崩れた」
みたいなタイプなんですが‥‥。
- 内田
- お母さん!(笑)
- 伊藤
- 娘は、以前、学校の先生からの評価表に、
「静かに強いです」と。
先生、いいこと書くなあって思ったんです。
まさしくそんな感じなんですよ。
- 内田
- 静かに強い。素敵ですね。
- 伊藤
- いろんなことを、自分で決めますね。
進路のことも。
中学の時に、
学校に行かないと決めたことがあって、
私は「いいよ、いいよ行かなくて」と。
- 内田
- あ、言っちゃうタイプなんだ!
- 伊藤
- 「せっかくだから遊びに行こうよ」と、
ドライブしたり、温泉旅行に行ったり。
ところが半年ぐらい経ったときに、
それにも飽きたみたいで。
- 内田
- 半年、何も言わずにいられたんですね。
お母さんとしてすばらしいです。
- 伊藤
- 実は喉元まで何回か
「どうするの?」という言葉が出かかったんですけど、
ちょっと我慢しようと思って。
「今日さ、学校行ってみない?」とか。
- 内田
- 「ずうっとこういうわけにもいかないし」
っていうとこですよね。
- 伊藤
- そうなんですよ。
- 内田
- べつに正解はないけれども、
次の動きをどうしようかって
聞きたかったってことですよね。
- 伊藤
- そうなんですよね。でも言わずにいたんです。
そのうち、どうやら、
私と遊ぶのもちょっと飽きてるっぽいな、と。
それを見計らって「どうする?」って言ったら、
「前の学校に戻りたい」と。
それは、私の都合で、小学校の途中から
松本に引っ越しをしたからなんですけれど、
私が嬉しかったのは、
彼女は「行きたくない」じゃなくて、
「もう、あの学校には行かない」
って言ったことなんです。
- 内田
- すごい。
- 伊藤
- そのとき、周りの大人が、
うちの母も含めて「いいじゃないの」と。
「なんで?」とかじゃなくて、
「私もそうだった」みたいな人が多くて、
それにすごく助けられたと思います。
そういう大人に囲まれる環境を、
とてもありがたいことだなって、
そのとき思いました。
- 内田
- 安心ですね。そのあとは、もう、生き生きと?
- 伊藤
- すくすく、生き生きとまでは言い切れない、
「静かに強い」ところがあって、
その強さが今後どんな風に、出るのか
今、また見守っているところです。
それでね、その最初の「見守り時期」に、
ふーんと思ったことがあって。
それは、「学校、楽しい?」って、
行っていること、楽しいこと前提で聞く
大人も多いということでした。
- 内田
- 悪気はないんでしょうけれどね。
- 伊藤
- そうなんですよ。全然悪気はないんですよね。
娘はめんどくさいから「うん」って言って、
適当にやりすごしてたんですよね。
- 内田
- そういうところも、静かに強いですね。
- 伊藤
- あとで「あの人に説明する必要もないし」って。
それで、私は子どもに「楽しい?」って聞くのは、
それからやめたんです。
「学校、どう?」みたいなふうには聞くかもしれないけど。
- 内田
- うちは「学校、どう?」って聞くと、
「べつに」とか、「good.」とか、
そういうふうに話が終わってしまうから、たとえば
「今日の体育の授業はなにしたの?」とか、
ピンポイントで具体的に答えられるように
聞いたほうがいいって、
先生に言われたことがあります。
- 伊藤
- そうですよね。うん。
- 内田
- 私たちだってね、
「今日一日、どうだった?」って聞かれると、
「どっから話せばいいんだろう」って思うじゃないですか。
- 伊藤
- そうですよね。
「なんかおいしいもの食べた?」とか、
具体的に聞かれたほうが答えやすいですよね。
- 内田
- 興味のひけそうなとこから‥‥。
母が惚れた。
- 内田
- 15歳で父の食事会で本木さんにお目にかかり、
翌年から、私はスイスに留学したんですが、
その直前に、本木さんの事務所の社長と父が
仲がよかったことから、
英語が話せて、ちょっと身の周りの
アシスタントができる人を探してる、
っていう話が来たんです。
それはなにかっていうと、
ちょうど日本で初めてアメリカのアカデミー賞を
BSで生中継するっていう機会があって、
ナビゲーターを本木さんがやることになった。
そこで「バイトする?」って言われました。
もう、映画が大好きだったし、
高校1年生でそんな機会はないから、
もうふたつ返事で「ぜひ」って言ったんですね。
そうして「あ、そういえば、あのとき会った本木さん」
っていう感じで再会し、
1週間、本木さんの通訳としてお手伝いしたんです。
テレビの仕事は撮影に合間があるから、
いろんな話をしていくなかで、
もうすぐスイスに留学するということで、
住所交換をして、文通が始まりました。
- 伊藤
- へえ!
- 内田
- そんなに密にではなかったですよ。
忘れたころに届いたり、
私もスイスからちょっと小旅行に行ったりしたら
絵はがきを書くとか、そういうのがだんだん‥‥。
- 伊藤
- すてきですね。
- 内田
- 話だけ聞くとそうですよね(笑)。
その後、夏休みに帰国中、
東京で初めて2人でごはんを食べた席で、
こう言われたんです。
「もし、将来、結婚っていうことを考える時期がきたら、
私を選択肢に入れておいてください」って。
まったく、ちゃんとしたおつきあいをしないどころか、
きちんと自己紹介もしてないくらいなのに、
そういう感じで。
- 伊藤
- !!! お互い、そのやりとりや文通で
何か波長の合うものを感じ取ったんでしょうね。
- 内田
- ええ。ほんの断片なんですけど、
そうかもしれない。
- 伊藤
- そのとき也哉子さんはどう思ったんですか。
- 内田
- 私は正直、「あ、きっとこの人、頭がおかしい人で、
誰にでもそうやって言ってるんじゃないか」
って思いました。
- 伊藤
- そんな‥‥!
- 内田
- 母からは「ぜったいあの人、ゲイだから」
って言われていて。
- 伊藤
- 安心よって。
- 内田
- 「いいお友だちね」って。
- 伊藤
- そっか、なるほど。
本木さんって、女の人を口説くために
わざとそういうふうに言う、みたいな感じでもないし。
- 内田
- 雰囲気はそういう感じじゃなかったけど、
でも、違う意味で頭がおかしいんだろうなと思った。
勝手に思い込んじゃうっていうか、
あまりにもその飛躍が大きかったから。
文通から、結婚って。
- 伊藤
- その時、一般的に子どもじゃないですか、まだ。
也哉子さん。
- 内田
- だから、まったく結婚の「け」の字もないし、
それを言われて、びっくりして家に帰って、
母に「そんな突拍子もないこと言うんだよ」って言ったら、
なにも反応しないんですよ。
「ああ、そうなんだ? 女の人が好きなんだ‥‥」
みたいな。
- 伊藤
- そっちの驚き?
- 内田
- 「意外だわ〜」っていう感じでしたね。
- 伊藤
- ええー。
- 内田
- それに、母は、自分がこの業界に長くいるから、
「結婚相手はカタギの人にしてくれ」って
ずっと言ってたんです。
- 伊藤
- そうなんですか。カタギの人か‥‥。
- 内田
- まったく芸能界と関係ない人がいいと。
でもそのうち密になって、
スイスにはいたけど折にふれ会うようになっていくうちに、
こんなことがあったんです。
本木さんの実家は埼玉の16代続いてる農家なんですね。
敷地の中に、もう何百年前からの、
先祖代々のお墓があったり。
母はとってもそういうことにリスペクトがあるので、
「この子は、突然変異で芸能界で役者になっただけなんだ。
この本木家のすばらしい遺伝子を、
もし内田家におすそわけいただけるんなら‥‥」と、
すっかり前向きになってしまったんです。
母のほうが、本木さんの驚くべきギャップと、
お米を育てて何百年も続いている家系ということに、
強く尊敬を感じたんですね。
ただでさえ、3代で絶えるって言うじゃないですか。
- 伊藤
- たしかにね‥‥。
- 内田
- だけど、そこまで守り続けられた本木家。
役者って、よく根無し草の人たちって言われるけれど、
それこそ地に根がしっかり張って、ほんとに慎ましいし、
お父さんもお母さんもお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、
みんな、大切なものを見極めて
丁寧に日々を暮らして生きてらっしゃる。
それがどれだけすばらしいことかって、私も言われて。
- 伊藤
- ほんとですね。うん。確かに。
- 内田
- で、本木さんは3人の男兄弟で。
長男はもう結婚して子どももいて、実家に暮らしてたから、
「次男だから、なんとか、
うちにお婿さんに来てもらえないか」って。
だから、結婚の方法については、
私の気持ちがどうこうっていうよりも、先に母が‥‥。
- 伊藤
- 盛り上がったっていうか。
- 内田
- うん。「もし、本木さん‥‥」って母が言うんですって。
私は外国にいて、日本にいないとき、
本木はときどき仕事で母と一緒になったりして、
そのときに「たとえば‥‥」みたいな話で、
婿入りをお願いされたんだそうです。
- 伊藤
- おもしろいなあ。
- 内田
- 本当に結婚したいんだったら、って。
自分も「中谷」っていう姓から内田家に嫁いで、
主はいないんだけども、責任感が強く、
古風なマインドを持っているんです。
どうしてそこまで家というものにこだわったのか、
私もいまだにわからないけれども、
彼女のロジックのなかでは、内田家に嫁いだ女として
それがいちばん正しいと思ったんでしょうね。
- 伊藤
- そんな、外国に9歳の娘を置いてくるみたいな、
ちょっとハチャメチャなところもありつつ‥‥。
- 内田
- そうなんです。
- 伊藤
- でも、根を張るということについての覚悟や考えは、
そんなに古風なんですね。
- 内田
- そう。ものすごく激しい落差です。
間がちょっとないんじゃないかっていうか。
自分の信じてること、
大切にしてることについてはとても古風です。
私はよく母と揉めたんですけど、
男性はこういう性質、女性はこういう性質って。
男女差別っていうことではないんだけど、
母は「その性質を活かしなさい」っていうことを、
周りにも言ってた人で、
今の時代には珍しいような考え方をずっと持っていました。
- 伊藤
- ええ。
- 内田
- なのに父はああいう破天荒の代名詞みたいな人で、
家には一度も一緒に暮らしたことがない。
けれども、ずーっと私のなかで
「あの人が父親なんだ。尊敬しなきゃいけない存在なんだ」
っていうことが皮膚感覚で残ったのは、
母がそれを大事にしてきたからなんでしょうね。
- 伊藤
- うん、うん。
- 内田
- 小さいときから
いっさい父の悪口は聞いたこともないし、むしろ
「とても尊敬に値するすてきな人なんだ」
「普段はいないけれども」っていうふうに思っていました。
思春期になって、
私がいろんな疑問を投げかけるようになるまでは。
- 伊藤
- 日本の家庭だけじゃないかもしれないけど、
家父長的に、お父さんが「うちの愚妻が」と
家族を下に見るというようなことや、
逆に、不在がちなお父さんのことを、
お母さんが悪く言うみたいなことは、なかったんですね。
- 内田
- そういうことはいっさいなかったですね。
- 伊藤
- うん。そのほうが絶対すてき。
- 内田
- それが、思春期になって、
私が「やっぱりおかしいぞ」と。
父の日以外に会うときはだいたい酔っ払っていて、
夜中の2時、3時に来て、外でわめいて、
仕方がなく鍵を開けて入れて、
そうするともう家の中のものはひっくり返すし、
母にももう悪態をつくし、寝てても私を叩き起こして
「座って俺の話を聞け」っていう状態は、
どう見ても尊敬できないっていうか、
恐ろしい、嫌な、やっかいな対象でしかなかった。
そんな人を、なぜそこまで、母は、と。
- 伊藤
- うんうん。やっかいですね、ほんとに。
- 内田
- 「じゃあ結婚ってどういう意味があるわけ?」と。
籍だけを入れて、言ってみれば、
母がずっと父の衣食住を全部養って、
その父は私たちには1円も入れずに吸い取るだけっていう、
理不尽の象徴でした。
そこから私が母に「なぜ? 結婚とは何?
家族とは何? 夫婦とは何?」って。はい。
- 伊藤
- 大きくなるうちに、
今まで暮らしてきた環境が、
「あれ、なんか違うぞ」って、
ちょっとずつ、こう‥‥。
- 内田
- そうですね、感じてきたんでしょうね。
ただやっぱりインターナショナルスクールにいると、
みんな違って当たり前っていうところがあるから、
人との差をあまり濃く感じずに済んだのだけれど‥‥。
- 伊藤
- 半年ぐらい、日本の普通の学校に
行ったこともあるんですよね。
そのときにちょっとだけ
違和感を感じたとか‥‥。
- 内田
- そうですそうです。
初めてそこで違和感を知ったというか。
小学校6年生で日本語のために
日本の学校に転校したときから、
「あ、やっぱり『普通』ってある。
目に見えないけども、『これが普通』ってものが、
日本には、ほんとうは、あったんだな」って。
「うちは違うぞ」って。
そして、母がなにを守ろうとしてるのかっていうのが
やっぱり理解できなかったから、とても辛かったですね。
思春期のころは。
- 伊藤
- やさぐれたり、反抗したりする時期はありました?
- 内田
- うーん。家庭で母はすっごく怖い人だったので、
1回しか言わないっていうこともそうだし、
つねにある種、切れるナイフのようでしたから。
頭がいいからなんでも早いし、ロジカルだし、
一石二鳥も三鳥も同時に、時間もすごく有効に使うし。
だけれども、なんのために父と
こういう関係を結んでいるのかっていうのは、
ずーっと、私のなかでの、ま、ある種の反抗でした。
怒りっていうか。
で、そこをぶつけると、すごく丁寧に話をしてくれました。
- 伊藤
- そうなんですね。
覚悟はない。
- 内田
- ところで、今日はどうして私を
呼んでくださったんですか。
- 伊藤
- お話がしてみたかったんです。
- 内田
- はい。おおー。
- 伊藤
- 強い人なんじゃないかな、って思って。
- 内田
- 強いですか。強そう?
- 伊藤
- 強い‥‥強いといっても、
怖い強さじゃなくて、
也哉子さんって、
根がしっかり張ってる木みたいな印象で、
そこに繁ってるのは若葉っぽいイメージなんです。
- 内田
- うれしいです。
- 伊藤
- もし、バサッと急に伐られたりしても、
根がしっかりしてるから、
また葉が生えてくるみたいな。
- 内田
- しぶとい。
- 伊藤
- 私がそう思った理由を、
お目にかかって理解したいと思ったんですね。
それは言葉の選び方なのか、佇まいなのか、
その理由が知りたいって。
- 内田
- そんな、恥ずかしい。
なんにもないですよ。
- 伊藤
- なんだかそういう気がするんですよ。
子ども時代にはぐくまれたのかな。
- 内田
- 1歳半からプリスクールに預けられて、
その上の小学校に行き、
3年生の9歳のときにいちど、
ニューヨークのものすごい田舎に、
1年間、音信不通で預けられ。
- 伊藤
- ええっ?
- 内田
- アメリカ人の校長先生の紹介で、
先生の弟さんのところに行ったんです。
というのも、母はすごく忙しく、
いちおう夫婦ではあったけれど、仕事をしながら、
シングルマザーのように
何もかも一人でやっていたわけです。
お母さんを休ませてあげたいっていう気持ちと、
もしかしたらその弟さん家族も
ちょっとお金が入り用だったのかもしれません、
そして先に親と話したのかどうかは定かではないけれど、
私に学校で「兄弟欲しくない、也哉子?」って
突然、校長先生に話しかけられたんですよ。
そりゃあ欲しいから、「うん」って言ったら、
もう次の週には出発していました。
ニューヨークのJFK
(ジョン・F・ケネディ国際空港)から
また国内線に乗り継いで、
すごい北のほうのほんとに田舎の、
日本人なんかもちろん一人もいないようなところに、
母が連れてってくれた。
- 伊藤
- えーっ!
- 内田
- で、近所の子どもたちにあいさつしようねと言われて、
アメリカ人の家族といっしょに
30分ぐらい出かけて帰ってきたら、
母はもういなかったんです。
- 伊藤
- いろいろ激しい‥‥。
- 内田
- 「こんなスピードで帰るとは‥‥」って、
アメリカ人の家族のほうがビックリしちゃって。
今思えば、母は英語は話せないし、
コミュニケーションもとれないから、
いたたまれなくて早く帰ったのかもしれないですけれど。
- 伊藤
- 「じゃあね、がんばってね」みたいな、
そういうのもなく?
- 内田
- まったくなく。
- 伊藤
- そのとき、どう思われたんですか?
- 内田
- そのときは、
「母らしいな」と思いました。
母の洗礼は生まれたときから受けてますから。
- 伊藤
- そうか。
- 内田
- たぶん、お別れを言わないで置いてったほうが早い、
って思ったんじゃないですか。
吹っ切れるだろうと。
- 伊藤
- なるほどね。
- 内田
- でも、本人はそうは言わなかったですけど、
母の友だちにのちのち聞いたら、
あのとき、じつはすごく、
辛そう‥‥とは言わないけど、
「置いて来ちゃったのよね」っていうような、
ちょっと遠い目をしてたそうです。
「それは心配だったんじゃない?」って。
- 伊藤
- ああ、ちょっとホッとする気持ちです。
それで、アメリカにはきょうだいっぽい人が‥‥?
- 内田
- 3人いたんですよ。
お兄ちゃん、お姉ちゃんが。
もう、楽しくって楽しくって。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 内田
- 東京では、家へ帰ってくると鍵っ子で、
母も遅くまで仕事でいなかったりするから、
置いてあるご飯を温めて食べるという、
小学校低学年ぐらいからそういう生活でしたから。
インターナショナルスクールって、
お友だちを家に呼んだりとか
バースデイ・パーティをやったりとか、
すごく家族ぐるみのおつきあいが多いなか、
母はお見送り以外の行事で
学校に来たことは一度もないですよ。
6年プラス幼稚園の期間。
- 伊藤
- へえー。
- 内田
- そういうこともあるし、
私も変わってる印象がきっとあったんでしょう、
なにか異質な波動を出していたんだと思います。
お友だちもいなかった。ほとんど。
ほんとに数えるほどです。
それだけ長い間ひとつの学校に行っていたのに、
3人ぐらいかも。友だち。
いちばん大切だった友だちも、
アメリカから帰ってきたときにすぐにお葬式の話があって。
だから、とっても孤独な子ども時代で、
温かい記憶、ほとんどゼロです。
というか、記憶があんまりないんですよね、子ども時代の。
- 伊藤
- でも、逆に今は3人のお子さんを育てていて、
それってなんかこう、
「たくさん子どもがいたらいいな」とか、
そういう気持ちもあったんでしょうか。
結婚されたのも早かったですよね。
- 内田
- そうですね。19歳でした。
- 伊藤
- その覚悟って、なんでした? 結婚。
- 内田
- いやあ、覚悟は微塵もなかったです。はい。
10歳年上の人に、15歳で出会って。
- 伊藤
- えー!
- 内田
- たまたま父の紹介だったんです。
父には、年に1回、父の日に会っていたんですよ。
強制的に、嫌々。
ところが、15歳の父の日を、すっぽかされたんです。
待ち合わせに来なかった。
そうしたら次の日に「今、寿司食ってるから来い」。
行ったら、父がプロデュースしていた
『魚からダイオキシン!!』っいう
変わった映画のスタッフや共演者のみなさんがいて、
そのひとりが本木さんでした。
- 伊藤
- ええ。
- 内田
- あのとき、本木さんが25歳で、私は15歳で。
おっきなテーブルにみなさんがワイワイしてて。
私は「あっち座ってろ」って言われて、
一人で誰とも交わらず、小一時間ぐらい、
ご飯だけ食べさせてもらって、
「じゃあ、帰ります」って。
- 伊藤
- えー。
- 内田
- だから、そのときはごあいさつを
したっていう程度だったんです。
父も、気まずかったんでしょうね、
すっぽかしたことに気づいて。
それで罪償いをしたかったけれど、
一対一だと「ごめんな」から入らなきゃいけないから。
- 伊藤
- なるほど。
- 内田
- 謝りも入れずに済むように、どさくさにまぎれて
私を呼んだんでしょうね。
- 伊藤
- じゃあ、仕事仲間に会わせたいとかじゃなくて‥‥。
- 内田
- まったくそういうことじゃなかったです。
- 伊藤
- たまたま本木さんがいた。
そして、それから4年後に結婚。
- 内田
- そうですね。そこからどうしてそうなったのかは、
やっぱり、ご縁としか‥‥。
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はじめまして。
- 内田
- こんにちは、内田と申します。
今日はお会いできて光栄です。
- 伊藤
- こちらこそ、ありがとうございます。
よろしくお願いします。
- 内田
- こんな、いきなりお宅におじゃまして‥‥。
これ、おすそわけなんですけど、
山形のラ・フランスです。
もしよかったら。どうぞ。
- 伊藤
- えっ! うれしい!
ありがとうございます。
- 内田
- すてきなお部屋ですね。
伊藤さんのお好きなように
リノベーションしたんですか?
- 伊藤
- 模様替えはしましたけれど、
照明を換えたり、ペンキを塗ったり、
その程度なんですよ。
- 内田
- そうなんですね。
とても広い。
bedroomはいくつあるんですか?
Two-bedroom?
- 伊藤
- !(英語の発音の良さに驚く)
也哉子さんって、
インターナショナルスクールに通われて
いらっしゃったんでしたっけ。
- 内田
- はい、幼稚園から小学校6年生までと、
高校から大学まで。
だから日本語も英語もフランス語も
中途半端で‥‥お恥ずかしいです。
- 伊藤
- フランス語も?
- 内田
- フランス映画を見て、
「フランス語の響きがステキ」と思って、
中学から週1回習って。
- 伊藤
- フランス語が似合いそうな声をされてますよね。
- 内田
- 籠もってる感じですよね。
いまも、響きが好きなんですよ。
友だちには、もっと実用的な
中国語かスペイン語を習えば?
って言われましたけれど。
それにしても、壁の色、ほんとうに素敵。
- 伊藤
- イギリスのペンキで塗ったんです。
- 内田
- イギリス! たしかにイギリス的というのがわかります。
- 伊藤
- 最近まで、お住まいでしたものね。
- 内田
- はい。6年住んでいたんですよ。
お部屋の壁一面の収納は、
最初からあったんですか?
- 伊藤
- はい。クローゼットだったんですけれど、
ハンガーパイプを外して、棚板を入れて、
食器棚として使っています。
- 内田
- わあ、すてき。ぴったりですね。
伊藤さんらしい。
- 伊藤
- でも、ここは賃貸住宅なので、限界もあって。
やっぱり、自分で家をつくりたいなと
最近は思うようになりました。
内田さんのお家って、どういう感じですか?
- 内田
- 牢屋みたいなお家です。
テーマが牢屋なんです。
- 伊藤
- ‥‥ええっ? そんなテーマ‥‥。
- 内田
- 外側はなんにも窓がなくて、
威圧感のある、コンクリートのかたまりって感じで。
育った家は別の場所だったんですが、
結婚したとき、母の提案で、
「いい物件があるから、本木さん一緒に買わない?」
と移った土地なんです。
最初は日本家屋が建っていて、
そこにしばらく住んでいたんですよ。
最初に母が住んで、次に私たちが住んで、
でも子どもが生まれたときに、
和室って障子だけでプライバシーもなにもないので、
「建て直そうか」と。
- 伊藤
- なるほど。
お母様は不動産がお好きだったというのは、
有名な話ですよね。
- 内田
- そうなんです。
わたしの通っていたインターナショナルスクールも、
売りに出ていたのを母が聞きつけ、
買おうか悩んでいた知人に
「買いなさい」と勧めたりして。
シャーリー・マクレーンという女優さんが
日本にいたときに住んでいた建物だったそうです。
- 伊藤
- 「買いなさい」って。
- 内田
- 大好きなんです、物件!
誰かが楽しく暮らしていることを
想像するのが、この上なく好きで。
- 伊藤
- きっと、ピンとくるんですね、
これはあの人に合う、とか。
- 内田
- そうです。なぜその話をしたかというと、
母がこの伊藤さんの部屋を見たら、
一目惚れだと思ったんです。
きっと「買いなさい」って言いますよ。
(紅茶を飲んで)‥‥おいしい!
- 伊藤
- よかった。娘のです。
- 内田
- えっ?
- 伊藤
- 紅茶がすごく好きで、
お小遣いをはたいて茶葉を買うんです。
- 内田
- おいくつですか。
- 伊藤
- 20歳になったばかり。
- 内田
- うちの2番目と同い年だ。
- 伊藤
- どちらにお住まいなんですか?
- 内田
- 今はニューヨーク大学に行っています。
中高の6年をロンドンで過ごしたら、
「もうヨーロッパはいい。
アメリカに行きたい」って。
- 伊藤
- そういうものなんですね。
- 内田
- ほんとは、もうちょっといてほしかったけど。
- 伊藤
- 別れて暮らしているんですね。
- 内田
- といっても、イギリスでも、彼女は12歳から
ウィークデイをボーディングスクール
(全寮制寄宿学校)で過ごし、
週末、私たちの住んでるロンドンに戻ってくる、
という生活をしていました。
- 伊藤
- 日本に戻っていらしたのは‥‥。
- 内田
- 2年前、母が亡くなる1年前です。
下の子が当時7歳だったんですけど、
もう少し母との時間を過ごさせたいということで。
- 伊藤
- お子さんは3人?
- 内田
- 男、女、男です。
上の2人は成人していて、
下はまだ小学校4年生。
- 伊藤
- かわいいでしょう。
- 内田
- ちょっとかわいがりすぎちゃってて、
心配なくらいです。
もう、孫のように(笑)。
- 伊藤
- 30代で産んだっていうことですよね。
- 内田
- 最初は21で産んで、最後は34です。
伊藤さんは、娘さんと一緒に住んでいないんですか?
- 伊藤
- 一緒に住んでいますよ。
- 内田
- 一人暮らししたい、とか言いません?
うちもそうでしたけれど、
自分だけがマネージするスペースが欲しいって。
- 伊藤
- うちは、言わないかな。
でも、也哉子さん、
あれしなさい、これしなさいって言わなさそう。
「うるさいな、お母さん」みたいな感じには
ならない気がするんです。
- 内田
- うーん、そうでもないです。
私の母は一回しか注意しない人だから、
私は、聞き漏らしたら恐ろしいっていうぐらい、
神経を研ぎ澄ましていましたが、
「それに比べると、あなたはしつこい」って言われます。
たとえば靴下が置きっ放しになっているとしますよね。
でも子どもに「靴下、なんでここに置いてあるの?」
って言っても、だいたい一回目なんて聞こえてない。
で、1時間後もまだあるから、「ねぇ」って言う。
結局3回くらい言ってる。
- 伊藤
- なるほど。
お母様はどうだったんですか?
- 内田
- 一度言ったら、二度は言いません。
そうしたら、もう、永遠にそこに置いてある。
自分で気がつくまで‥‥。
- 伊藤
- 「一回言ったわよね」とかじゃなく?
- 内田
- うん、もう言わないし、捨てるわけでもない。
- 伊藤
- 捨てるっていうのは、
片付けるってことですもんね。
それもしない。
- 内田
- でも、よく、外国から帰ってくると
許可なく勝手に整理されていることはありました。
私のものが半分ぐらいなくなっていたりして、
気付くと友だちが私の服を着ていて、
「也哉子のお母さんにもらったんだよ」って。
- 伊藤
- おもしろーい!
- 内田
- なので私は極力、その対極を行ったというか‥‥。
逆転の発想というか、ないものねだりがあって、
普通のお母さんになりたいという理想はあったんですけど、
やっぱりちょっと、はみ出しちゃってますね。
わたしの旅じたく。[7] カシミヤ。
今日は何を着ようかな。
おしゃれはたのしいものだけれど、
ああでもないこうでもないと
なやむのがめんどうな日だってある。
そんな時、
私がえらぶのはweeksdaysのカシミヤワンピース。
そのままストンと着て、
気に入りのバッグと靴をえらべば、
はい、コーディネートのできあがり。
もちろん旅にも持って行きます。
時にはタイツ、
時にはパンツと重ね着。
肌寒い時は上にコートを羽織って。
長いパールのネックレスをすれば、
ちょっとしたレストランへも。
着ていてラクチンなのに、
きちんと見えるのは、
カシミヤだからこそ。
「あら、すてきな服ね。
すごく似合っているわよ」
信号待ちで、隣り合わせた品のいいマダムに
褒められた時はうれしかったなぁ。
▶︎Vネックのカシミアワンピース/weeksdays くわしく見る
(伊藤まさこ)
愛って何?
- 山本
- さっき、愛って言葉が出たけど、
日頃、そういうことを考える?
愛って何かなって。
- 伊藤
- 無償の愛ってあるんだなっていうのは、
娘を産んで思った。
若い頃とかは、
「私がこんなにしているのに、
なぜこの人は何もしてくれないんだろう」
とか勝手に思ってた。
- 岡宗
- 見返りを求めていたんですね。
- 伊藤
- そうそうそう。でも娘ができて、
「全然そんなのどうでもいいから、大好き」
って思えるのは、世界中で1人だけだと思った。
- 山本
- 娘か。ボーイフレンドには思わない?
- 伊藤
- 思わないですよ(笑)。
でも「看取れる」とは思う。
その時が来たらの話だけれど、
お尻とか拭けるもん。
- 岡宗
- それは愛ですね。
- 伊藤
- そうなのかな。
- 山本
- 「お尻とか拭けるもん」。
いい本のタイトルになりそうだね。
- 伊藤
- えっ?(笑)
- 山本
- その視点では、おそらく、
まだ書かれたものがないよ。
それにさ、介護から始まっちゃう愛だって、
あるかもしれないじゃない?
秀吾の愛ってどういうの?
- 岡宗
- 僕の愛ですか。
家族に対しては多分伊藤さんと
同じようなことだと思うんです。
でね、僕の愛について、
うまく説明できるかどうかわからないけど、
‥‥僕、『警察24時』を
ずっと録画しているんですね。
警察の追跡ドキュメンタリーです。
- 山本
- うんうん。
- 岡宗
- その、麻薬犯の回が好きなんですよ。
覚醒剤の前科がある子が、職質で引っかかるんです。
そもそも、すごく間抜けな動きをしているんですね、
デパートの中で。
- 伊藤
- 明らかに怪しいんですね。
- 岡宗
- 1回エレベータで上がって、
もう1回下りてきたり。
それで職質を受ける。
「ちょっとカバン見せてください」
「いやいや、いやいや、
任意だろ、これ」なんて、
いろいろ言ってごまかす。
そして、もうこれ逃げ切れないなっていうタイミングで、
1本だけ電話をさせろって言うんです。
東京の浅草で捕まったんですけど、
大阪の子なんですね、その子は。
- 山本
- 1本だけ電話していいんだ。
- 岡宗
- 電話の相手は、普通、弁護士とかね、
そういう兄貴分とかと思うでしょう?
ところがその子は、観念したんでしょうね、
彼女に電話するんです。
前科があることは、彼女も知ってるんですよ。
しかも執行猶予中なんですよね。
だから今度は実刑を長く打たれるぞってわかってた。
カバンを開けて薬が出てきた瞬間に、
俺は彼女ともう会えない。
‥‥そんなカッコいい子でもまったくないんですよ。
洋服のセンスがいいとか、そういうわけでもない。
で、彼女が電話に出る。
「あ、俺。ごめん、やってもた。ごめん」みたいな。
「いや、わかってるよ、わかってる。長くなるよ」って。
そして、
「会いに来てくれな。悪いな。悪いな」って何回も言う。
その時、その子が、まるで役者みたいな顔してるんです。
多分、すごい状況だと思うんですよ。
今から自分は仕事すらない。
収入の目途がもう崩れた。
彼女とも会えない。
実刑だ。
親に何て。
もうものすごい数の問題が、
さっきまでゼロのとこから、
もう2000みたいな感じで、立ったと思うんですよ。
さらに、テレビカメラまである。
- 伊藤
- テレビにうつるかもしれない。
- 岡宗
- 僕、テレビの仕事をしていて、
ドキュメンタリーの面白いところは、
カメラを回していると、
その人のいちばんカッコいい瞬間が
出ることがあることなんですよ。
多分、カメラを回してないときは出ないような。
だから、嘘っちゃ嘘なんですけど、
役者でも何でもない、カッコいいわけでも何でもない、
そんなことに慣れてるわけでもない素人でも、
カメラの対象になって
自分に本当の問題が降りかかったり、
あるいはコンテストなんかで成功したいという
気持ちがあったりするときに、
顔がすごい役者っぽくなる。
嘘と本当が混じった、
本当の“ヤバい顔”みたいなのがあって、
僕は、それをすごく見たいという気持ちがあるんです。
薬物犯の子にも、カッコいい瞬間がある、
その感じが見たくてしょうがなくて、
それが僕にとっての愛なんじゃないかって思うんです。
- 山本
- 秀吾はそれをファイリングしてるんだ。
- 岡宗
- そう、録画をまとめてるんです。
- 山本
- 名作が来ると、俺は家に呼ばれるわけ。
- 岡宗
- 見てくださいって(笑)。
もちろん自分がドキュメンタリーを撮るときも、
そういう瞬間が生まれるのがやっぱり好きだし、
ダメな人間のちょっとだけのいいところを、
「エモい」って思うんです。
- 山本
- そうそう、「エモい」。
- 岡宗
- ギューッて、こう、心が絞られる。
- 伊藤
- ‥‥私、あまり「エモらない」んです。
なんでかな。
- 山本
- でも、「エモらせて」いるよ。
人がメロメロになっていく瞬間があるもの。
で、本人はいたって無邪気なんだ。
これはもう、芸だね。
- 岡宗
- 伊藤さんは、ラッパーだったらすごいタイプですよ。
- 伊藤
- ん? どうしよう!
- 岡宗
- フロー、パンチラインっていう、
言葉の強さとその言い方。
同じ台詞でも、やっぱりその言い方と、
ワードセンスみたいなものがある。
伊藤さんはそれが強いですよ。
- 伊藤
- へぇー。そんな分析されたことない(笑)。
‥‥で、康一郎さんの愛は?
- 山本
- うーん。
- 伊藤
- ていうか私の愛の落としどころが
「お尻を拭く」になってるんだけど(笑)。
- 岡宗
- 最高の愛じゃないですか。
- 山本
- 最高だよ。
‥‥そうだ、おみやげのレモンパイ、食べましょう。
あっ、撮影しといたほうがいいよ。
テレコをちょっとなめて(画角に入れて)
撮るといいよ。
- 伊藤
- スタイリングしてる!(笑)
でも、そうしたら、
康一郎さんの手も入ったほうがいいよ。
- 山本
- それはやだよ~。
- 伊藤
- (笑)かわいいじゃない。
- 山本
- 次さ、開けたとこ撮るじゃん。
食べ残したとこ撮るじゃん。
そしたらもう時間が撮れるから。
‥‥ねえ、聞いてる?
- ──
- ハイ、聞いてます!
伊藤さん、開けてください。
- 山本
- もう俺も撮っちゃう。
包みを開けてる手とかいいから。
- 伊藤
- そんな撮らないで。
汗かいてきちゃう(笑)。
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- ねえ、そう思わない?
伊藤まさこがレモンパイの箱を
どんなふうに開けんのかなっていうさ。
- 伊藤
- わたし、いい加減ですよ。
- 山本
- いやいや、そのいい加減さがさ、いいんだよ。
- 伊藤
- レモンパイ、かわいいよね。
いろいろ考えたんだけど、
すごく似合わなそうでしょ、お2人に。
- 山本
- いや、意外に似合うよ。
- 伊藤
- そう、似合わなそうで、
すごく似合うなっていうチョイスでした。
- 山本
- まさこちゃんが洋菓子を開けてるとこ、
作法として勉強になるよ。
- 伊藤
- えっ?
- 山本
- その乱暴さなんだとか。
- 伊藤
- 乱暴さ?(笑)
まあたしかに、案外乱暴だからね。
- 山本
- そう。「安心した」って。
料理家の長尾智子さんにさ、
「伊藤まさこさんというのはどういう人なんですか」
って、機会があったから訊いたの。そしたら、
「始末のいい女よ」って言ってたよ。
- 伊藤
- そういうこと言う長尾さんが、
なんだかカッコいい。
- 山本
- その言い方だよね。
輩(やから)感を感じた。
輩女子っていうか。
- 伊藤
- 何それ!
輩って、悪い仲間みたいな意味じゃない?
- 山本
- そうじゃないんだけどさ(笑)、
そんな感じがするんだよ。
あっ、ちょっと待って、
その、パイを切る手、ストップ、ストップ。
寄せて、自然に自然に。
自然にっていうのが一番難しいけどね。
- 伊藤
- じゃあ、おやつを食べておひらきにしましょう。
今日はほんとうにありがとうございました。
- 岡宗
- ありがとうございました。
いつでも呼んでください。
- 山本
- 大丈夫なのかな。
これまとまるの? 心配(笑)。
わたしの旅じたく。[6] 着回しのきくパンツ。
昨秋、
娘と旅したパリで重宝したのが、
nooyのネイビーのパンツです。
はいた時の形がとてもきれいなこのパンツ、
シンプルなニットはもちろんのこと、
明るい色のブラウスや、
大きめのピアスなんかも受け止めてくれる。
あれもこれもと持ってはいけない旅先で、
着回しがきくこんな服は、
とっても助かる存在なのです。
娘と一緒のパリは6年ぶり。
今回の発見は、
服の貸し借りができたことでした。
同じパンツでも、
ハタチの娘のコーディネートは
私とはひとあじもふたあじも違う。
パリで新調したチェックのチェスターコート、
足元は黒のドクターマーチンと
ざっくりしたコットンの靴下。
たとえば、
ある日の1日はこんな風。
同じ服でも、
着る人によってずいぶん違う印象になるものだなぁと、
大きくなった娘の後ろ姿を見ながら、
思ったのでした。
ドクターマーチンとは、
思いもつかなかったもの!
でもね、
ひとつ問題が。
それは着たい服が重なってしまうこと。
「あー、それ今日着ようと思ってたのに!」
先を越されて、
コーディネートを一から考え直し。
でもまぁ、それもそれで楽しかった思い出のひとつとして、
心のすみっこに残すことにしましょう。
(伊藤まさこ)
おじさんについて。
- 山本
- それにしてもまさこちゃんが
「POPEYE」を読んでるって面白い。
- 伊藤
- いや、娘なの。
女性誌にあんまり興味がないみたいで。
- 岡宗
- へぇー。
- 山本
- すげえ面白い!
- 伊藤
- 「なんで?」って聞いたら、
人からどう見られるかを
気にしすぎているような気がするって。
たとえばモテメイクとか。
そういうことじゃなくて、
ありのままの自分を好きになってもらえば
いいんじゃないの? って言ってる。
なるほどなぁとは思ったけれど、
「その境地に達するまでに、ママは、
50歳近くまでかかったんだよ」(笑)。
- 岡宗
- (笑)
- 伊藤
- 「なんで気づいてるの? なんで?」って聞いたら、
呆れられちゃった。
そんな娘が一番好きな雑誌が「POPEYE」。
かっこよくてかわいいシティボーイが大好き。
- 岡宗
- へぇー。
- 伊藤
- その娘がいまいちばん会いたい人が岡宗さん。
- 岡宗
- いや、もういつでも行きます。
- 山本
- いろんな人に紹介していくじゃん?
そうするとさ、俺よりか、
みんな秀吾のほうに会うようになるんだ。
ちょっとそれ、焼きもち焼いてる。
- 岡宗
- そんな(笑)。
- 伊藤
- もう(笑)。
- 山本
- わかりやすいじゃん? 優しいし。
- 岡宗
- ボク優しいんです(笑)。
- 山本
- サイズ感。サイズ感があるじゃん。
- 岡宗
- あるんです(笑)。
- 山本
- こういう体型の人たちはね、
そのサイズ感が大事なんだ、みんな。
あんこ型というかさ。
まさこちゃんのタイプはどんな男なの?
- 伊藤
- 前まですごくスマートな人が好きだったって
言ってたけど‥‥。
- 山本
- 先にサッとお勘定済ませたりするスマートさ?
- 伊藤
- うーん、何て言ったらいいのかな、
ちょっとした物腰がスマートな人っているでしょう。
康一郎さんなんかは、タクシーをピッと停めて、
「乗りな」とかって軽く言うでしょ?
そういうことができる人ってあまりいない。
- 山本
- なんで先に乗せるか知ってる?
- 伊藤
- ううん。
- 山本
- 右(運転席の後ろ)のほうが安全なんだよ。
事故のときに。
- 伊藤
- なるほど。
- 山本
- それはカッコつけじゃなくて、
家族も絶対先に乗せるの。
心配性だから。
- 伊藤
- あとは、豪快な人が好き。
なぜかというと、うちの父がすごく豪快だったから。
- 山本
- どういうところが豪快だった?
- 伊藤
- もうほんとうに昔の話だというけれど、
母が言うには、
ワニを買ってきちゃったことがあるんだって。
- 岡宗
- ワニ?
- 伊藤
- 2匹も。
- 山本
- そっか、お母さんゆずりのまさこちゃんの肉料理は、
豪快なお父さんに食べさせたものってことか。
- 伊藤
- そうです!
- 山本
- だから豪快なんだ。
あのチャーミングさはそれだ。
- 伊藤
- 魚とか出てくると、
「今日はほかにないの?」って
いう家だったから。
パパが塊肉がないと嫌だって(笑)。
- 山本
- 納得した。
お父さんだ、やっぱ。
- 伊藤
- そのまま娘がその食欲を受け継いでるの。
だから、最近は豪快な人が好きだなと思ってる。
- 山本
- でも、難しいよね。
豪快って、乱暴になっちゃうからね、間違えちゃうと。
- 伊藤
- 豪快でスマートがいいな。
- 山本
- そりゃいないな、また。
- 岡宗
- (笑)
- 伊藤
- 最初に話した、
昨日のギャラリーのパーティだけど、
50歳前後が5人、
そこに72歳の人がいたのね。
その70代のおじさんを見ていて思うのは、
ある程度の年を超えると、
すごいわがままになるってこと(笑)。
沸点超えると無邪気にわがままになるの。
あれ何なのかなぁって思うんですよ。
立食のパーティで、ワインしかないのに、
急に「俺はウイスキーが飲みたい」とか言いだして。
オーナーに家までウイスキー持ってこさせたの。
それでも、持ってくる側の方は
しょうがないなぁなんて顔つきしてうれしそうで。
- 山本
- その人、たぶん、遊んでたっぽい人でしょう。
お金持ちで、若いときモテちゃった感じもあるでしょう。
そういうおじさんはね、
どんどん友達が死んでっちゃうから、
そういう気分になるの。
70いくつでそんなとこ来てんだったら、元気なわけでさ。
- 伊藤
- しかも、「最近女の子が安心してくれるから」って、
ちょっとくっついたり、手をつないだりしても、
俺は何も害はないぞ、みたいな感じなの。
おじいちゃんになっちゃったからって。
しかも、きれいな女の人が来たら、
きゅうに「シー」って、下ネタをやめるの。
わたしだっているんだけど? って(笑)。
- 山本
- 秀吾は‥‥でも、秀吾は女性を
そういう目で見てないもんな。
- 岡宗
- 僕は性的に見ないです。
- 山本
- なんかね、もっと本当に人として見るから。
全然エロ目線で見ないんだよ。
- 岡宗
- いや、ゼロじゃないですよ!
そりゃ、いや、チラッと見えたら見ちゃおうかな?
って思う瞬間もありますよ!
- 山本
- (笑)
- 岡宗
- あるけど‥‥、でも、まあ、
やっぱり人として見てるかな、うん。
- 山本
- ちゃんと修正するよね。
それ気付くもん。あ、修正したな、今、って。
俺、そんな瞬間を見るのが好きだなあ。
「おまえ、今行ったな、エロに!」って。
- 伊藤
- へぇー。なんで修正するの?
- 山本
- 娘がいるからじゃない?
女子が家の中に3人もいるから。
あると思うよ。
- 岡宗
- あるかもわかんないですね。
- 山本
- おじさんに対して「かわいい」って言う?
- 伊藤
- 言う。
かわいいよね。
- 山本
- 秀吾も言う? テレビは言うか。
- 岡宗
- テレビは言う(笑)。
でも、僕は普段あまり言わないです。
「カッコいい」はめちゃくちゃ言いますけど。
- 山本
- だって、「カッコいいファイル」あるもんね。
- 伊藤
- わぁ、見たい。
というか、康一郎さんのも見たい。
- 山本
- どこの男が世界でカッコいいと思う?
あそこはいい男の名産だなって。
俺、イギリスだと思うんですよ。
本当にカッコいい。
- 伊藤
- もう、話があちこち飛びすぎて楽しい。
優しくってちょっと怖い。
- 伊藤
- 康一郎さんって、今、とても優しいじゃない?
でも、そうじゃない時代もあったわけでしょう。
- 山本
- そうだね。
ある時期から、俺の目撃談が
俺の耳に入るようになったわけ。
その目撃談が明らかに“盛ってる”わけ。
どこかで誰かが盛ったんだよね。
それがものすごい許せるようになった。
前はね、それをたどっていって、
そいつの家とかまで行ったりしてたの。
「てめえ、知らねえ話言ってんな?」みたいに。
だけど、最近はもうね、
「最高だな、この盛り方」。
もう「ラッキー」みたいに思っちゃう。
- 伊藤
- (笑)そいつんちまで行ってたって!
岡宗さんが出会ったときも
「ややこし時代」だったって言うけれど、
どんな感じだったんですか。
- 岡宗
- たとえばケータイは絶対非通知。
番号を誰も知らなかったんです。
かつ、写真もNG。
- 山本
- そうそう(笑)。
- 伊藤
- え?
- 岡宗
- 毎日のように一緒にいるのに、
写真はほとんどないんです。
僕、もう24年ぐらいご一緒してますけど、
多分何年か前に「UOMO」で呼んでもらったときに撮った
2人の写真があるぐらいで。
- 伊藤
- なぜ?
- 岡宗
- 撮らせないんです。
- 山本
- 残したくないんだよね。
- ──
- でも、いまの50前後で「POPEYE」を読んでいた人は
康一郎さんの顔を知ってますよ。
以前は出ておられましたよね。
- 岡宗
- その時は出ていたんですよね。
そのあとの時期が、けっこうすっぽりないんですよ。
- 山本
- なんかすごいややこしくなっちゃって。
いろいろあってさ。
- ──
- たしかに、康一郎さんって、東京のお坊ちゃんで、
ちょっとグレててカッコいい人、みたいな、
ぼんやりしたイメージしかないというのは確かですね。
ファッション誌を読んでいたら、
名前は絶対見たことある人ですし。
- 伊藤
- うん。私はすごいシティボーイなんだろうなって
思ってました。
じっさい、慶應ボーイだし。
- 山本
- 子どものときは大変だったんだよ。
親が離婚して、父親が有名だから
(喜劇役者の伴淳三郎さん)、
小学生なのにワイドショーが学校まで来て
マイク向けられちゃったり。
だから、毎日逃げて帰ったりしてた。
小学1、2年だもん。
で、慶應幼稚舎ってさ、6年間クラス変わんないんだ。
すると、みんな、うちのそういう歴史、
知っちゃってるじゃん。
だから触らぬ神に祟りなしって感じで俺に接しだして。
たぶん母親とか父親から言われたんじゃない?
- 伊藤
- 「そのこと康一郎くんに言っちゃダメよ」みたいな。
- 山本
- でも、子どもって敏感にわかるんだ。
空気が変われば。
担任とかはけっこう熱く、いい先生で、
「元気か。頑張れよ!」って
いつも言ってくれてる人だったんだけど、
中学生ぐらいからグレだしちゃった。
で、離婚して大きな家から引っ越して、
しんどいなっていつも思っててさ。
良くしてくれたというか、
普通に接してくれたのは、
友人のお母さんひとりだけだった。
だから、俺、坊ちゃんなんだけど、
けっこうね、痛い思いしてんの。
- 伊藤
- 免許をなぜ持ってないかっていうと、
お母さんから教習所代もらったのに使っちゃって、
盗られたって言ってもう一回もらったのに、
また使っちゃったからだって。
ひどい。もう最低。
- 山本
- (笑)うちの母はよく知ってるんだ、秀吾のことを、
「秀吾君は面白いね、話が」って。
秀吾は古い芸能界のことも知ってるから。
- 岡宗
- 僕、よくお話を聞きました。
亡くなったとき棺桶も持たせてもらったし。
- 山本
- 秀吾の話が大好きだった。
2人で、俺も聞いたことない話とかしてるんだよ。
不良だったからさ、母の家。
- 伊藤
- え?
- 山本
- 愛宕で、母方のおじいちゃんは料亭やってて、
ひいじいちゃんは港湾労働者をまとめてた人。
言うこと聞かない荒くれ者に鞭打って、
彼らの通う賭場を取り仕切ってたの。
歌舞伎に「め組の喧嘩」ってあるでしょ。
「神明恵和合取組~め組の喧嘩」って。
そのモデルになった幾つかの家の一つなの。
相撲取りと喧嘩して、不良たちが、
こっぴどくやられるわけよ。
それで、火消しの金鳴らしちゃうんだ。
すると、江戸中の火消しが集まるの。
すごい時代だよね。
火の見櫓をカンカンカンってやると、
その鐘の音で集まっちゃうんだね。
- 伊藤
- 何それ?!
そんな物語が潜んでるの?
康一郎さんの中に。
- 山本
- だから、火消しであり、
ちょっとトラブルメーカーでもあるんだよね(笑)。
- 伊藤
- そこにお父様の芸の世界が入るわけですね。
- 山本
- そうそう。人を楽しませるってとこで、
変な入り込み方するのっていうのは、
やっぱり父親の血だと思う。
楽しいんだよね、人がワイワイやり出したり、笑ったり。
でも俺、芸能人じゃないから、その場がないし、
それがいやだなと思うこともある。
ちなみに父方のおじいちゃんは、南画家。
だから絵描きの家とやくざな家の子なの。
でね、母の再婚相手、俺の新しいパパが、
すごく厳しくてさ、
もう本当「寺内貫太郎一家」みたいになっちゃったの。
ものすごいバトルの家になっちゃって。
- 伊藤
- 毎回大げんかのシーンが出てくる
ホームドラマみたいな?
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- それでもう大変なことになるの。
狭い部屋でさ、いろんなものがぶっ壊れて。
母のお母さん、つまりおばあちゃんがいて、
新しいパパがいて、俺がいて、
さらに母との間に妹ができて。
ややこしいよね。
でも、大好きなの、お互い。
だから喧嘩になっちゃうの。
想いが強すぎて。
憎しみじゃないんだ。
- 伊藤
- 本当に、康一郎さん、すっごく、愛に溢れてるよ。
- 岡宗
- いや、本当にそうです。
というか、両方を持っている感じがします。
狂気と繊細さ、愛情深さ。
人をぶん殴ったあと仔猫を拾っちゃう、みたいな(笑)。
- 山本
- わりと安定した人から好かれるよ。
ちょっと不安定なものを覗きたいなっていうときに、
求められるのかも(笑)?
- 伊藤
- 不安定剤(笑)。
そうか。わたしが康一郎さんを面白いと思っているのは、
そういうことだったんだ。
「優しくってちょっと怖い」。
- 岡宗
- ね? 本当そうですよ。
- 山本
- けっこう大変だよ。
この人生をもう一回やるかっていわれたら、やんないね。
絶対やんないよ、大変だ。
だって心配性もさ、病気の一因になったと思う。
あ、俺、いっぱい病気やってるんです。
肝臓癌と心筋梗塞、
網膜剥離で右目はあまり見えてないし、
それから糖尿病も。
- 伊藤
- ウン。
- 山本
- だから病気のこと、だいたい知ってる。
わたしの旅じたく。[5] あたたかいもの。
くるくるくるとまとめて、
袋にぎゅーっと入れるだけで
びっくりするほどコンパクトになる。
袋から出せばひとつはコート、
ひとつはダウンのスカーフに。
シワだって気にしなくっていいから、
旅に持って行かないテはありません。
スーツケースの隙間に無理なくおさまる、
っていうのもいいでしょう?
何かと予測できない旅先の天気や気温。
変化に応じて対応できる、
服や小物があると、
旅も充実するというもの。
ああ、あれ持って来ればよかった、と後悔するより、
持ってきてよかったという安心感。
もしかしたら常備薬みたいな存在なのかもしれないな。
こちらの写真は、
秋のパリ旅行の時のもの。
時々小雨がぱらつくあいにくの天気でしたが、
モヒートのコートをさっと羽織ったら傘いらず。
着ているのを忘れるかのような着心地は、
足取りまで軽くしてくれたのでした。
▶︎ダウンのキルトスカーフ/P.H.DESIGNS くわしく見る
(伊藤まさこ)
わたしの旅じたく。[4] 毛糸のぱんつ。
出発当日の朝ぎりぎりまで仕事をして、
飛行機に乗ったとたん風邪をひいてしまった友人。
せっかくのレストランも、
たのしみにしていた美術館めぐりも、
ショッピングも、
あんまりたのしめなかったのだとか。
「でも、ホテルでゆっくりできたから
それはそれでよかったのかもね」
なんて冗談めかして言ってたけれど、
やっぱり元気な方がいいに決まってる。
そうか、旅の準備って
持ちものだけ気を配ればいいってものでもないんだ、
体調管理もちゃんとせねばと思った次第。
今回の旅の持ちものに入れたのは、
あったかくして使うアイピローと、
カシミヤマフラー、
それから毛糸のパンツ。
よく眠ることと、
冷えないこと。
このふたつをちゃーんと守れば、
旅の間はきっと元気。
「あとはワインを飲みすぎないように」
とは、
風邪をひいて散々だった友人からの伝言。
はい、こちらも心します。
(伊藤まさこ)
センチメンタルな男。
- 伊藤
- 岡宗さんの奥さまはどんな人なんですか。
本を読んで、すごく興味が出て。
- 山本
- 面白い人だよ。
- 岡宗
- もうめちゃくちゃ変わり者なんですよ。
でも、僕は本当に尊敬してます。
僕の文章は、
奥さんがリライトしてる部分があるんですよ。
一番最初に見せるんですが、
「これちょっと自慢ぽい」とか、
編集者には言いづらいことってあるじゃないですか。
よかれと思って書いてるとこが一番鼻につくみたいな。
- 伊藤
- わかる、わかる!
- 岡宗
- 大体そうなんですよね。
それを自分よりも強い感覚で言ってもらわないと、
僕も直せない。
しかも、相手に尊敬がないと、
腹が立つ原因になるじゃないですか。
「なにをー? いちばん書きたかったとこやないか」
って(笑)。
- 伊藤
- それをすごくフラットに見てくれるということですね。
歯に衣着せないし、家族だから。
- 岡宗
- そうですね。議論もできるし。
僕なんか下ネタもいっぱい書いてるし、
普通の奥さんが見たら、いやな気分になることだって
ゼロじゃないと思うんだけど、
そういうとこは、夫婦ってことを乗り越えてるどころか、
「そこをもっと行かんかい!」
って言われることもあるくらいです。
- 伊藤
- へぇー。
- 岡宗
- でも、女の人が見たらちょっといやかもな、
この表現は、というのを削ったりとかもする。
彼女の、そのバランスを信用してるんです。
- 伊藤
- たしかにバランスがいいの。
ちょっとどころか、
すごいこと書かれてるのに、
それが下品じゃない。
- 山本
- それはうれしいよね。センスがいいんだ。
- 伊藤
- そうなんですよ、本当に、
もう本当にひどいの!
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- でも、下品じゃない。
- 伊藤
- 娘が「岡宗さんの本だ」って読もうとしたから、
「それ見ちゃダメ!」って言ったくらい。
だってさ、あとがきに、
「この下品な本を最愛の娘たちが読まないことを願う」
って書いてあるくらいだもの(笑)。
(後日読んで、
「最高におもしろかった!」と言っていました)
- 山本
- ネットで「岡宗秀吾」って入れたら
「3P」って出てきたことがあったよ。
- 岡宗
- そうなんですよ。
阪神・淡路大震災が起きたとき、
僕が3Pをしてたっていう話ですね‥‥。
実家の母親がそのネット検索ワードに気付いて、
「あのインターネットのは消せないの?」
「グーグルとかどこかに頼めないの?」って(笑)。
- 伊藤
- 本にも書かれてましたよね。
- 岡宗
- はい。そもそもその話が広まったのには、
糸井さんが関係しているんですよ。
- 伊藤
- えっ、えっ?
- 岡宗
- ご本人、覚えてらっしゃるかわかんないですよ。
そもそもは映画監督の大根仁さんのラジオで
ぼくがしゃべっちゃったんです。
ラジオってブースに4人ぐらいしかいないから、
密室で友達としゃべってるような気持ちで、
ついついそんなことを。
そうしたらリスナーが何万人もいて、
そのなかに文字起こしとか音源を
アップする人がいて、
それを糸井さんが読んでくださった。
それで、「こりゃ面白い」みたいな感じで、
紹介してくれたんですね。
でね、糸井さん、影響力あるじゃないですか。
それが尋常じゃなく拡散されていって、
一時期、ネット検索で僕の名前を入れると、
そんなふうに表示されちゃってたんです。
でも結局、こうして単行本になったわけですから、
本が出たのは、糸井さんのおかげでもあるんです。
- 山本
- 自分も何か言われる?
- 伊藤
- ん?
- 山本
- SNS社会で言われる?
- 伊藤
- 知らない。一切見ないから。
- 山本
- 見ないんだ。
- 伊藤
- うん、見ない。
気にしないようにしてる。
- 山本
- 俺、まさこちゃんから本当に学びたいのは、
この図太さなんだよ。
- 岡宗
- どういうことですか。
- 山本
- もう図太くて!
- 伊藤
- それって褒め言葉なんだよね?
- 山本
- いや、本当に、うん。
俺には、もう、いちばんない部分だから。
繊細だからめっちゃ疲れるんですよ。
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- で、どう見られるだろうかってことを、
すごくエグい角度で考えちゃうの。
エグ掘りするの、自分を。
- 伊藤
- エグ掘り!(笑)
- 山本
- こういう取材があるとさ、
「これもう絶対俺の取材というより、
ちょっと夫婦として見られっからさ、
気をつけようぜ」なんて思っちゃうの。
奥さんにも「いつもどおりでいいんじゃない?」
って言われるよ(笑)。
なんか心配性なの、俺、異常な。
- 伊藤
- 前、和子さんが、たまたま携帯を持たずに出かけて、
戻ってきたら考えられないくらい大量の着信が
康一郎さんから入っていたって。
本当に心配性。
- 山本
- そりゃそうだよ。もう心配で心配で。
俺が生まれる前に、
母親が、飛行機事故に遭ったことがあってさ。
羽田・伊丹間のプロペラ機で、
落ちたんだけど、助かったんだよ。
田んぼに落っこって、夜だったから、
人のうめき声のなかに炎が見えて、
でも真っ暗だからわかんなくて、
遠くに光があるのを見つけて、
田んぼのなかを這いつくばって、たどり着いたら、
そこが伊丹空港だったんだって。
- 伊藤
- それは怖い‥‥。
- 山本
- 父親は京都でニュースを見て、
もう絶対無理だと思ったらしいよ。
それから数年して俺が生まれた。
そんなことを聞かされたことが、
心配性になっちゃった一因かもしれないね。
でもね、母は言ってたんだよ、
「そのときにいい着物持ってたのよね。でも燃えちゃった。
あれがあったら高く売れたのに」って(笑)。
- 伊藤
- 案外女の人ってそういうところ、ありますよ。
ケロッとしてるというか。
- 和子さん
- でも、義母はそれから飛行機に
乗らなくなっちゃった。
- 山本
- やっぱ母親っていうのはさ、
自分の女性のタイプに関係してるんだろうね。
母親みたいじゃないから好きってこともあるし、
なんとなく母親っぽいから好きってこともあるだろうし。
優しい人だったよ。
これが母です。(写真を見せる)
- 伊藤
- かわいい、きれい。
- 山本
- 下半身の安定してる感じが
まさこちゃんと近いでしょ。
- 伊藤
- そこ? あらー(笑)。
- 和子さん
- いつもショートカットでね。
お料理上手だったしね。
- 山本
- どうなのかな、男のこういうセンチメンタル。
母の写真を大事にしているって、
そういうセンチメンタルを持ってる男って。
- 伊藤
- いい写真で美しいママだから取ってるんでしょう?
- 山本
- 女の子だったら父親に
そういう想いを持つのわかるけどさ、
‥‥どうなんだろうね。
わたしの旅じたく。[3] 基礎化粧品。
機内には、
肩掛けバッグの他に、
パソコンが入るバッグも持って行きます。
その中にかならず入れるのが、
基礎化粧品のトラベルセットです。
1週間くらいの旅に必要なものを
キュキュッとつめたこのセット、
あれこれと準備する手間がはぶけて、
とっても重宝しているのです。
(だって基礎化粧品は、これひとつだけでいいのだから。)
ポーチの中には、
コットンを入れて。
飛行機が飛び立ち、
ひと段落したらメイクを落とし、
その後、洗顔。
席に戻ってからはトナーをコットンにひたして、
パタパタパタと、
じっくり顔にふくませます。
機内でメールをチェックしながら、
肌の手入れをするのはしょっちゅう。
weeksdaysのロゴが入ったポーチと
パソコンの相性もよく、
この光景を目にするたびに、
作ってよかったなぁと思っています。
冬の肌は乾燥が大敵。
旅の途中、トラブルにならないよう、
ケアにつとめたいものです。
(伊藤まさこ)
詳しくなるのをやめよう。
- 伊藤
- ふたりは、テレビの仕事を
ご一緒したことあるんですか。
- 岡宗
- それが、テレビどころか、
仕事で組んだことは、1回もないんです。
- 伊藤
- へぇー!
- 岡宗
- だから、プライベートで一緒にいるんです。
- 山本
- でも、仕事の話ばっかりしてるよね。
- 岡宗
- そういえばそうですね。仕事の話ですね。
こういう番組があったほうがいいとか。
「お宝探偵団」のカジュアル版が
あってもいいんじゃないかとか。
「お宝鑑定団」が面白いのはわかるんだけど‥‥。
- 山本
- 今、何百年前の壷とか言われても、わかんないよって。
掛け軸出てくるとテンション落ちるよねって。
だからKAWSとかバンクシーとか、
現代アートを持ってくれば、
ゲストもバラエティに富むよねって。
それで、「わっ、何、うちにある、こんなヤバいの!」
みたいに、価値がずれるでしょ?
- 伊藤
- (笑)
- 山本
- ほら、年寄りどんどんいなくなっていくから、
そういう番組やってもいいんじゃないかな?
‥‥みたいな話を、俺が始めるの。
裏の取り方とかも、
「確かに70何年の『POPEYE』に出てますね」
みたいなふうにできる。
その裏の取り方がちょっと今までと違うよね、もう。
- 岡宗
- 今って、60代はいわゆるお年寄りじゃないんですよね。
かつてのおじいちゃん、おばあちゃんの像とは
もう全然違う。だから、そこのアップデートは
されていくほうがいいいんじゃないかな、って。
- 山本
- あのさ、話が変わるけど、
深度(しんど)ってあるでしょう?
- 岡宗
- 深さ?
- 山本
- 深さ。人間関係において、
深く潜れるのにフラットな人っているでしょう。
糸井さんってそういう感じじゃないのかな。
お会いしたことがないのだけれど。
- 伊藤
- 康一郎さんもそうじゃない?
- 山本
- そうかな。
相手のところまで潜っていくのは気持ちがいいんだよ。
気を失いそうになる。
相手は、全然わかんない方法で何かやってる
新しい世代だったりするから、
食あたりみたいの、するよ。
- 伊藤
- 体に来ちゃう?
- 山本
- 来るよ。でも、好きなんだよ。
じっさい体調を悪くすることもある。
吐き気とか、お腹を壊したりとか。
同じように向こうも喰らってたりするし。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 山本
- モノの見方には望遠とマクロがあるでしょう?
カメラのレンズを換えるように。
深く潜って人と付き合うときも、
それが多分あるんだろうね。
まさこちゃんもそうだと思うよ。
- 伊藤
- そうなのかな。
あんまり考えたことがない。
- 山本
- でもフラットだよね。
秀吾もそうでね、彼を舎弟にしたいという、
権力を持った人たちがいっぱいいる。
言葉が悪いけど。
きっと何度も近寄られて、
「舎弟になれよ」みたいな誘いがあったと思う。
テレビの世界ってそういうところがあるでしょ?
- 岡宗
- (笑)ありますね。
- 伊藤
- そうなんだ!
- 山本
- だけど、秀吾は、面白くないと行かない。
お金がよくてもそうじゃなくても、
自分が学べることがなければやらない。
- 伊藤
- たしかに、面白くないことは、
仕事にできないですよね。
康一郎さんは、雑誌の「POPEYE」が
仕事を始めた最初だったんですよね。
- 山本
- 「POPEYE」編集部には、19のときにいました。
マガジンハウスという名前になる前の
「平凡出版」の時代で、
貸しビルの5階に編集部があって。
その頃、自分も少しはアメリカンカジュアルウエア、
いわゆるアメカジや古着に詳しいと思ってたの。
ちょっとファッションのことやなんかもね。
ところが、「POPEYE」編集部の先輩たちって、
そういうのがめっちゃ集まってた。
- 伊藤
- すごい人がたくさんいたんでしょうね。
- 山本
- うん、自分なんてまったく及ばないわけです。
もうその瞬間に、「詳しくなるのをやめよう」と。
この人たちと競い合っても、自分が削られるだけだから。
でも、「詳しい人に詳しくなろう」と思ったの。
つまり、そこにバイクに詳しい人が2人いて、
言ってることがちょっと違うとするでしょ。
どっちが言ってることが正しいだろうか、
どっちが深いところまで行けてるだろうか、
それが見極められる人になろう。
そして、俺に訊いてくれれば、
そういう人を紹介できるよ、
っていう人になろうって。
- 伊藤
- なるほど!
- 山本
- こういう仕事をしている人は、
会ったら見た目よりヤバいもん。
糸井さんなんかもヤバいに決まってる。
だから、避けてきたもの。
格闘技でいうと、名誉7段とかさ、
そういう感じがするから。
自分の中にね、糸井重里チルドレンだったり、
みうらじゅんチルドレンだったりするのがあって、
ああいう人たちを見たから、
それ以上詳しくなろうとするのを、
やめようと思ったんだもの。
- 伊藤
- 私は20歳ぐらい上の先輩みたいな人に、
「絶対その道で一流の人と付き合うんだよ」って言われて、
なるほどと思って、それをずっと守ってる。
例えばお芝居だったら串田和美さんとか、
言葉だったら糸井さんとか。
- 山本
- そういう意味ではまさこちゃんも
特有の世界に詳しい人だよね。
お皿見たってお菓子見たって、
どこのって大体わかるでしょ。
- 伊藤
- うん、ねえ。
- 山本
- ファイリングはする?
このワインが、とか、手土産とか。
- 伊藤
- ないですね。
でも、味に対する記憶力だけ異様に強くて、
たとえば包み紙を見ると、そのお菓子を思い出す。
ふわっとした得も言えぬ触感の、
マシュマロとも違う、
大徳寺納豆がビッて1個だけ入ってるお菓子の、
「こんなの食べたことない」という食感や
手に持ったときの重さまでよみがえって、
「これは、大宰府土産の、
御菓子而藤丸(おかしどころふじまる)の
『清香殿』ですね!」って言える。
- 山本
- え、どういうこと?
食の記憶力?
- 伊藤
- それだけしかないんだけれど。
- 岡宗
- それはすごいですね。
僕、覚えてないですもん。
- 山本
- 舌? 目も使ってるの?
- 伊藤
- いろいろかな。
ネットで情報を集めることはなくて、
ぜんぶ自分の足で探し、
探したものは舌と胃袋で覚える。
高校生の時は自由が丘のアイスクリーム屋全制覇、
20代の頃は毎夜、フランス料理食べ歩き。
そういう身体で覚えたデータが詰まってるんだと思う。
- 岡宗
- すごい。
- 山本
- そういう人の話は、本当に面白いんですよ。
ヒントが山ほどあるし。
まさこちゃんは「カッコいい女」を探したことある?
- 伊藤
- 探す、ということはないかな。
でも向田邦子さんが好き。
カッコいいなって思う。
そして身近だと樋口可南子さん。
- 岡宗
- うんうん。
- 山本
- 分かる。
- 伊藤
- 2人に共通するのは、気風のよさ。
そして、ちょっと色っぽいところ。
- 山本
- そういう個性から影響は受けても、
パクッてないよね。
- 伊藤
- だって、なれるわけないもの!
しょうがないですよね、
自分に生まれちゃったんだから。
- 山本
- 秀吾も影響受けてる人がいっぱいいると思う。
- 岡宗
- すごく大勢います。
小っちゃくでも大きくでも、
この人のこの部分というだけでもたくさんあります。
もう「カッコいい探し」ですもん。
この人のここがカッチョいいっていうのに興奮する。
もちろん人だから多面的で、
その人に実はしょうもないとこがあったり、
それ以外は全然ダメみたいなことがあっても、
それを含めて好きになります。
むしろ、そのダメが入ってるのが好きです。
まずいけど、1個だけおいしいなみたいな(笑)、
わかりづらいほうが見つけた喜びもあるし。
- 伊藤
- へぇー。
わたしの旅じたく。[2] ぺたんこバッグ。
旅に持っていくバッグ、
どうしてますか?
靴と同じで、
シチュエーションによって
バッグも変えたいところだけれど、
そんなには持ってはいけないしなぁ。
‥‥数年前まではそう思っていました。
それが今では、
3つ、時には4つ持っていくことも。
とはいっても旅のバッグはルールがひとつありまして、
それが何かというと、
「マチのないぺたんこになるタイプ」
をえらぶこと。
たとえいくつか持って行ったとしても、
全部合わせてニット1枚分くらい。
これならバッグの着替えも
可能でしょう?
最近、飛行機に乗る時に欠かせないのが、
CI-VAのバッグです。
ファスナーがついていて安心だし、
収納力もばつぐん。
しなやかなので、
ななめがけすると体に寄り添う。
‥‥といいところばかり。
冬はコートの下にななめがけすれば、
防犯対策もばっちり。
人の行き交う空港では、
気を引きしめていきたいものです。
パスポートとお財布と
電話を入れたら、
さあ出発。
今回はどんな旅になるかしら?
(伊藤まさこ)
終わらないジャンケン。
- 岡宗
- 僕、1995年、22歳のとき
東京に出てきたんですけど、
当時、康一郎さんの周りには
面白い人ばかりがいました。
- 伊藤
- その、小っちゃい部屋に集まって?
- 岡宗
- そう、みんなで集まって、
いろんな分野の面白い話をしてました。
ちょっと新しくて、まだ人がやっていなくて、
けれどもマニアックすぎなくて、
人にウケそうな気がすることを。
- 山本
- うん、そんなことばっかり話してた。
- 岡宗
- ずーっとそんな話をしてて、
あ、東京というのはこういうところなんだ、
って思ったんです。
- 伊藤
- それは一部だけだと思うな(笑)。
どんな人がいたんですか。
- 山本
- チェキ(インスタントカメラ)で写真を撮る
ヨネちゃんって面白い編集者とか、
スチャダラパーのANIくんとか‥‥。
そんなメンバーで
「おまえがいちばん詳しい世界の、
すげえやつ教えろ大会」で朝を迎えるんです。
ラップだったらANIが知ってるのを教える。
誰かが「あの映画いいっすよ」と言うと、
「どこが?」
「こういうパートが」
「それ来週持ってきてね」
それを翌週みんなで観て、
「おお、確かに、知らんジャンルだけど、
すごいな、これ」みたいな。
- 伊藤
- それを、男子だけで?
- 山本
- そうそう。出稽古っていうの?
自分の世界にいないで、外に出る感覚なんです。
- 伊藤
- 出稽古。
- 山本
- 自分の道場にずっといるとね、
そこのスターに気を遣って、厳しくできなくなるの。
だからそのチャンピオンやスターが
どんどん弱くなっていくのに、
誰も言えない。
そのときによその道場に行くと、やっぱりそこには
もっと知らない強さのやつがいる。
何人がかりで行ってもやられたりして、
そうやってやり込められることで、
知らないやり方がわかるから、
強くなって戻ってくる。
と、そういうことを繰り返すことを
出稽古っていってました。
だから自分の道場で「この先はないな」
っていうくらい強くなったときに、
いちばん必要だと思うのが出稽古なの。
- 伊藤
- その会は、なんで男子だけだったの?
- 山本
- そりゃね、女子が交じると絶対もう‥‥。
- 岡宗
- 邪心が。
全員に邪心が入って(笑)!
- 伊藤
- (笑)岡宗さんはどうして
そこに参加することになったの?
- 岡宗
- 僕、運がいいと思うんですけど、
関西にいた頃から、学生ながらに、
いろんな人との縁が組めていたんですね。
学生時代からつきあいのあった人が、
どんどん有名になっていったっていうか。
僕、もともと神戸の出身で、
阪神・淡路大震災が起きて
交通機関が麻痺しているなか、
22歳で東京に出てきたんです。
たとえばもともとスチャダラパーとのつきあいがあって、
東京に出てきたら、彼らの友達が康一郎さんであり、
ヨネちゃんであり、というふうに広がっていきました。
- 伊藤
- そのとき、康一郎さんは、
22歳の岡宗さんをどう思った?
- 山本
- まったくよくわかんないやつが来たなって思った。
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- たとえば土地勘がまったくないのに
へっちゃらで運転をするんだ。
それも、まったく東京のペース、
お構いなしの運転をして、
それでも妙に動じない。
どこに行くのにも
1回渋谷に行かないとわかんない、
っていうんだもの(笑)。
- 岡宗
- うん(笑)。
- 山本
- 俺、助手席専門なんだけど、
秀吾の運転する車に乗ると、
イライラもしたけど、すごく楽しくて。
「オリジナリティめちゃあるな!」って。
ラッパーの周りにいる、
アホだけどすごく面白い子、みたいな感じだった。
- 伊藤
- 何ですか、ラッパー周りって(笑)。
- 岡宗
- 実際、ラッパー周りの金魚の糞って感じでしたから。
- 山本
- ある時知ったんだけれど、
坊さんの世界では「道」って「方法」のことなんだって。
つまり柔道っていうのは柔の方法。
で、思ったのは、「道」は英語でストリートだよね。
ストリートってよく言うでしょ?
「ストリート出身だから」って。
日本でその最初は藤原ヒロシや
ネイバーフッドの滝沢伸介、
彼らがやってきたことって、
それまでの洋服屋とは違う方法を用いたでしょ。
展示会を決まった時期にやらないとかさ。
そういう新しい方法を持った子たちを
ストリートって言うようになった。
新しい方法を持ってそのジャンルに来る子たちを。
- 伊藤
- うん、うん。
- 山本
- 音楽の売り方も、
レコード会社と契約しない子たちが出てきた。
アートもそう。
違う方法でそこに挑んでくるのって、いいなって思うんだ。
でね、秀吾もそういう感じがした。
テレビという世界にいながら正義感たっぷり。
だから面白いんだ。
そうそう、『高校生RAP選手権』は
秀吾がつくったんだよ。
『BAZOOKA!!!』って番組で、
高校生だけど、ジャンルが不良だから、
いろいろややこしい子たちを集めて。
その前には名刺代わりに
「一気コールの大会」のDVDを
作ったっていうエピソードもあるよね。
- 伊藤
- 「それ一気、一気、一気!」の「一気」?
- 岡宗
- はい。それのいろんなバージョンを取材したんです。
僕、お酒が飲めないうえに、
高校を中退してるんで、
一気コールのカルチャーである大学の体育会や、
そこからつながる企業とかホストの、
飲み会のシーンを全く知らないんですよ。
- 伊藤
- じゃ、初めてそれを見たときに‥‥。
- 岡宗
- 「これはくだらなくて作品になる!」と思いました。
これはまとめなきゃいけないと。
- 伊藤
- そうなんだ。
- 岡宗
- でも、そういうやり方は、
康一郎さんやスチャダラから教わったんですよ。
そういうふうに、誰も触っていないものを
やることが、すごく大事だって。
人と同じことは絶対やるなって。
それで見つけたんです。
僕なんか技術もないし、お金もないし、
後ろ盾もないから、誰かが触ったものだと、
その人以下になっちゃうんですよ。
だから、誰も触ってないということを、
もうめっちゃ確認するんです、毎回。
- 伊藤
- うん、うん。
- 岡宗
- 逆に、世の中には、
「人が触っているから安心」という人も多いですよね。
「人がやっているということは、
すでに人気があるってことだろ。
それをさらに知らない人に伝えるというのが
テレビメディアだよ」って言う人もいるんですよね。
彼らに必要なのは第1次情報じゃないんですよ。
第2次、第3次。
「雑誌でいっぱい特集されてるだろ?
だから、テレビでやろうよ。それの何が悪いんだ?」
という人だらけです。
それがポピュラリティってものですよっていう
理屈があるんですね、その人にはその人たちの。
「そうでなければ、大きなパイを取る視聴率って
生まれないんだよ」
っていう説明も何回も受けました。
- 伊藤
- 世の中にはそういうものが多いですよね。
- 岡宗
- これも康一郎さんとかみんなに教わったことですけど、
いちばんカッコいいものって、
「新しくて、カッコよくて、かつ売れているもの」です。
2番目にカッコいいものは、
「カッコ悪いけど売れている」ものです。
3番目にカッコいいものは、
「カッコいいんだけど売れてない」ものです。
そして、4番目、いちばん下は
「カッコ悪いし売れてない」ものです。
多くの人がカッコいいこと原理主義だったら、
3が上に来てると思うんですよ。
でも、売れてないけどカッコいいことは良し、
って、僕は、思っていないんですよね。
2番目は少なくとも、
カッコ悪いけど売れてるだろうと思ってるんです。
でもやっぱり一番は「カッコよくて売れているもの」です。
そこを忘れちゃいけない。
多くの人は2番目でゴールだと思ってる。
そういう作り手の矜持みたいなものを
教わったような気がするんですよね。
- 山本
- カッコいい男を知りたいってさ、
もうずっと思っているんだよね。
知らない、見たことないカッコいい男を見てみたいって。
だから、俺は男物のスタイリングしかやらないのかも。
いるんだよ、知らないとこに、
自分が詳しくないジャンルにさ、
カッコいい男って。
- 伊藤
- 康一郎さんはいつも探していますよね。
この前は、ポカリスエットのCMの。
- 山本
- 柘植美咲さん。
- 伊藤
- そうそうそう。「いいねっ!」って。
本当、性別とか年齢、全然関係なく、
カッコいいものはカッコいいって。
そしていろんな人がいつも周りにいるような気がする。
- 岡宗
- 康一郎さんはファッションのプロなんだけれど、
洋服で人を判断しません。
その人が発してる魅力だけを見てますよね。
この人はこれぐらいの知識層で、
これぐらいのものが好きで、これぐらいの収入で、
こういう友達がいてってこと、
まったく気にしない。
- 伊藤
- 康一郎さんと岡宗さんは、
いまも当時のままの付き合いを続けているの?
- 山本
- うん。家に行って、
「最近よかった韓国映画ない?」とか言うとさ、
「ありますよ。仕入れてますよ」みたいに出すわけ。
- 伊藤
- 楽しそう(笑)。
- 山本
- それで、俺からも、
「じゃあこれ知ってる?」みたいな。
終わらないジャンケンをしてるんです。
そのうちちょっとグッタリしてきて、
どっちかがお腹痛くなっちゃったりして(笑)。
男子2人がさ。
- 伊藤
- え、2人だけで?
- 山本
- 前は、大勢だった。
だんだん2人になってきたね。
- 岡宗
- うん。
trippen SWIFT-ORIGINAL 販売のお知らせ
12月24日(火)11時から
trippenのブーツ「SWIFT」の
weeksdays特注モデルを販売します。
こちらは2019年11月、
trippn代官山店で4日間だけ開催したイベントに
出品したもの。
13色の色とりどりのブーツは、
冬服の差し色にもきれいです。
完売アイテムについては再入荷の予定はありませんので、
お早めにどうぞ。
わたしの旅じたく。[1] 靴3足。
履き慣れたスニーカー。
レストランに行くとき用のちょっと洒落た靴。
それからその中間とでもいったらいいかな、
街歩きもできて、
気軽なビストロくらいなら臆さず入れる靴。
訪れる場所によって多少のちがいはあるけれど、
旅に持っていくのはこんな風。
旅先ですてきな靴との出会いを期待して、
スニーカーだけで出発し、
結局欲しいものがなくて
所在ない思いをした過去の苦い経験があるからか、
「靴3足」は、いつからか私のきまりごとになりました。
さてその「中間の靴」ですが、
形がスマートなものをえらぶといいみたい。
スマートでいて、
でも歩きやすくて。
うーん、そんなのあるかしら?と、
首をかしげる人もいるかもしれないけれど、
迷ったら一度、自分の靴を見直してみてください。
夏だったら
サテン地のバレエシューズ、
秋だったら
エナメルのフラットシューズ、
今ならファーのブーツが気分。
実用本位ではけしてなく、
履くと、なんだかうれしくなっちゃう、
そんな靴が
きっと何足か見つかるはずだから。
さて。
ホテルに着いて荷ほどきしたら、
服はクローゼットへ、
靴は床にずらりと並べます。
これから数日、
旅先の少ないワードローブでやりくりするのは、
大変だけれど、
たのしくもある。
旅の間、気分よく過ごすための
「靴3足」。
次の旅にぜひおためしあれ。
▶︎SWIFT-ORIGINAL/trippen くわしく見る
*12/24(火)午前11時より販売を開始します。
(伊藤まさこ)
仔猫と男ども。
- 伊藤
- お久しぶりです、康一郎さん。
そして、はじめまして、岡宗さん。
ずっとお目にかかりたいと思っていたんです。
- 岡宗
- 岡宗です。どうぞよろしくおねがいします。
- 伊藤
- 岡宗さんの『煩悩ウォーク』、読みました。
とっても面白かったです。
- 岡宗
- ありがとうございます、すみません。
なんかお見合いみたいになってません?
- 伊藤
- 本当(笑)。
- 山本
- じゃ、俺は仲人?
- 岡宗
- 実は‥‥伊藤さんとは
「はじめまして」じゃないんですよ。
- 伊藤
- えっ、えっ?!
- 山本
- そうだ。俺らが一緒にいた時に、
「これから新宿のスナックに行くんだけど」
って連絡が来て、
「じゃあ行く」って。
そのとき秀吾もいたんだよ。
- 伊藤
- (絶句)‥‥!
お目にかかっていたんですね。
わたし、酔っ払っていて、
覚えていなかったです。
- 岡宗
- 僕がたまたま康一郎さんと一緒にいたんです。
僕はまったくお酒を飲まないので、
そういうことを覚えているんですが、
あの日の伊藤さんの様子からして、
きっと覚えていらっしゃらないだろうと(笑)。
- 伊藤
- たいへん失礼いたしました。
そういう男子の集まりって、
ちょっといいなと思うところがあって。
昨日も、私と同じぐらいの年の男子5名と、
70いくつのおじさんと飲んでいたんですが、
それだけ男子が集まると、わたしは蚊帳の外で、
どんな話題を振っても、
全部下ネタで返ってくるんですよ。
- 岡宗
- (笑)
- 山本
- 初めて会った人も?
- 伊藤
- そう、そのうち2人は初対面でした。
なのに、すっごいうれしそうに、
中2ぐらいの感じで盛り上がってるの。
- 岡宗
- ありますね、そういうこと(笑)。
- 伊藤
- いやだなあと思う反面、
「男子はいいなあ」とも思っていたところです。
すっごく楽しそうにしているから。
- 岡宗
- それで盛り上がれるぐらいの感じが、
楽しいですね。
どんな話でもすっごくレベルを下げて
しゃべるって(笑)。
- 山本
- そもそもさ、まさこちゃん、
なんで秀吾に興味持ったの?
- 伊藤
- 娘が、雑誌の「POPEYE」を持ってきて、
連載コラムのページを開いて、
「この人、面白いよ」って教えてくれた、
それが岡宗さんだったんです。
その号では「茨城ロック」を紹介していて。
- 岡宗
- ロカビリーの音楽とファッションで踊る
茨城のロックンロールな若者たちの話ですね。
- 伊藤
- びっくりしました。そしてその翌月は、
四つ葉のクローバーをあっという間に探し出せる
女の子を紹介していて。
- 岡宗
- 21、2ぐらいで練馬に住んでる女の子の話だ。
四つ葉のクローバーを10分間に
40個とか50個とか見つけるんですよ。
超能力とかじゃなくて、
「好き過ぎて、浮き出てくる」って言うんです。
でも、ほかのものを見つけることはできない。
- 伊藤
- その連載が面白いってうちで話題になりました。
「なんでそんなふうにすごい人が探し出せるの?!」
みたいに盛り上がっていたんです。
- 山本
- 秀吾はそれをどうやって探すの?
- 岡宗
- 好きだからです。
四つ葉のクローバーの女の子とおんなじです。
- 伊藤
- 好きだと、寄ってくるんだ。
- 山本
- まさこちゃんの世界のこと、詳しくないんだけど、
なにかいつも探していたり、
光がまだ当たってないようなとこに
フォーカスを当てようということだよね。
でも知っといたら得するよっていうか、
悪い感じにはならないよっていうことを教えてくれる。
- 伊藤
- でもね、私、わりと光が当たりがちな、
みんなが好きなものに目が行くんですよ。
みんなが好きなものが私も好きなもの、
っていう感じがしますよ。
- 岡宗
- ああ、なるほど。
- 伊藤
- だから四つ葉のクローバーには巡り合わない。
- 山本
- マニアックなのにね。
- 伊藤
- どうかなあ。
- 伊藤
- そうそう、岡宗さんの本に、
康一郎さんと出会ったときのことが書いてあって。
それが、もう、カッコよすぎる。
- 岡宗
- そうなんです。あの話、
めっちゃカッコいいでしょ?(笑)
- 山本
- 俺、読んだことないんだけどね。
- 岡宗
- 僕が22歳ぐらいの時のことです。
自転車に乗って、目黒郵便局の前を通って
友達の家に行ったんですね。
雨の日で、夜10時ぐらいでした。
すると、目黒通りに猫が出てきたんです。
まだ目が見えてなかった、仔猫が、
ニャア、ニャアとなきながら。
それを、拾ったんです。
そして当時付き合ってた彼女に電話して、
飼ってもいいかっつったら、
マンションの規約でダメって言われて、
どうしよう? って。
でも元の場所に置いてはいけない。
もう、生き物が手の中にいる感じがあって。
だからまず近くのコンビニで、
猫が食べるような缶詰とか、
あったかい牛乳とかを買って食べさせてたんですけど、
そうしたら目黒通りの交差点に交番があったので、
「猫拾ったんですけど」って届けたんですね。
ところが「明日の朝6時に自分が交代になるので、
そのときにはもう保健所に連れていくしかないんです」
と、おまわりさんが言うんです。
「保健所に行ったらどうなるんですか」
と訊いたら、けっこうなスピードで殺処分になる、と。
それでこれはどうにかしなくちゃって、
ひとまず仔猫を預けて、
友達のマンションに行ったんです。
そこには男どもがいっぱいいて。
6畳くらいの狭い部屋に7人ぐらいいて。
- 山本
- ほんとうに男ばっかりの集まりなの(笑)。
- 岡宗
- そんなところで、
「すみません、僕、今、猫拾ったんですけど、
誰か飼いませんか」って。
「いま夜の10時で、あしたの6時までだから、
8時間しかリミットがないんです」と。
そしたらそこにいた康一郎さんが、
「あ、じゃあ、俺、飼うわ」
ってすぐに言ったんですよ。
僕はその時康一郎さんと面識はあったけれど、
電話番号は知らないぐらいの感じで、
どんな人かよく知らないから、
ちょっと引いたんです。
そもそも、どんな猫かも見てないし。
なのに、悩むタイミングとかもないんですよ。
「拾ってきました」
「俺、飼うわ」までが4秒ぐらいなんですよ。
奥さんに電話で相談することもなくて。
- 伊藤
- そのとき康一郎さんは30歳ぐらい?
- 岡宗
- 34ぐらいでしたよね。
- 伊藤
- すごい。
- 岡宗
- 僕も、それがすげえなと思って。
- 伊藤
- ピンと来たの?
- 山本
- 何だろうね、悪くない感じがしたのかな。
(写真を見せて)この子なんですよ。
- 伊藤
- !!!(ため息)
- 岡宗
- ジジって名前がついて、
13年ぐらいでしたっけ、生きましたね。
- 伊藤
- 和子さん(奥さま)はどう思ったんですか。
- 山本
- 当時、子犬が来たばっかりだったんで、
心配してたけど、大丈夫でしたよ。
- 和子さん
- ちょっと天使みたいな子だったね。
- 山本
- うん、天使みたいな子だった。性格も。
- 和子さん
- 不思議な猫だった。
繊細な子で。
- 山本
- 繊細なのに、本当に俺が調子悪いときとか、
背中でさ、大の字になって温めるの。
もう手足を全部のばして、ずっと背中にいるの。
すごい小っちゃい子だった。
きっと、子どものとき、栄養がなかったからだね。
CI-VAのバッグを、あのひとに。その3 一緒に使える。 ともえさん&ミムケンさん
ともえさん&ミムケンさんの
プロフィール
雑誌や書籍、広告などでフード、
ファッションのスタイリングを手がける
スタイリストの妻・伊東朋惠さんと、
料理を中心に、暮らしまわりの撮影で活躍中の
フォトグラファーの夫・三村健二さんの夫婦。
6歳の息子と白猫と暮らしている。
■ともえさんのインスタグラム
@tomoeitoworks
■ミムケンさんのウェブサイト
http://mimurakenji.com/
スタイリストの伊東朋惠さんと
フォトグラファーの三村健二さんは、
お互いに「洋服の趣味は違う」と言いながらも、
いつも、どことなくお揃い感のある仲良し夫婦。
2人ともベーシックカラーが好きで、
ぴったりとしたシルエットは苦手。
上質な素材の着心地のよい服が好きという
共通した好みのせいでしょうか。
トップスとボトムスをワントーンで揃える
ワントーンコーデが好きな伊東さんが
いつも使っているのは布バッグ。
「仕事の資料や常備薬、メイクポーチ、文房具など、
とにかく荷物が多いので、
厚手で大きめサイズのエコバッグが必須。
さまざまな色柄のものをたくさん持っています」
両手を塞がないよう、バッグは肩掛けできることが条件。
CI-VAのポシェットは、その点、合格!
「NUVOLAは、意外とたっぷりものが入るし、
Tシャツ&パンツのようなカジュアルなときも
きれいめな装いにも似合うデザインがいい。
赤はワントーンコーデのアクセントにいいですね」
身長は153cmと小柄な伊東さん。
ワントーンコーデは、少しでも縦長に見えるようにという
スタイリストらしい工夫でもあるのだとか。
同じ理由で、ショルダーバッグを使うときは、
紐を少し短くして、バランスをとるようにしているそう。
「分厚いコートを着たときは紐を長くしたり、
薄着のときは短くしたり。
自分で結んで調整できるのもいいですね」
荷物が多いのはご主人の三村さんも同様。
「財布、携帯、リップクリーム、ハンカチ、のど飴、
使い捨てコンタクトレンズ、常備薬、目薬‥‥、
なんだかんだたくさん持ち歩いていますね、
夫婦で心配性なのかな(笑)」
バッグを持たないという男性は多いものですが、
三村さんも普段は手ぶら派なのだそう。
となると、たくさんの手荷物はいかに?
「冬はコートのポケットに分散させているんですが、
コートを着ないときは不便なので、
アウトドアブランドのサコッシュを使っています」
ナイロン地のサコッシュは、
汚れにくく軽くて便利とはいえ、
どうしてもラフになりがち。
「だから、シュッと見えるレザーを探していたんです。
LISCIOの立体的なデザインだと、
コンパクトカメラもすっぽり入る。
ナイロン地より、カメラをガードしてくれるから
かなり重宝しそうです」
ショルダーバッグを身につけたご主人を
「似合うね」と眺めながら、
「これなら私も一緒に使えるなあ」と伊東さん。
「私が唯一持っているレザーバッグはブラック。
こんなネイビーって珍しいし、
合わせる服を選ばなくて使いやすそうですね」
とご満悦。
夫婦で共有できるのもLISCIOのいいところなのです。
無駄な飾りのないシンプルなデザインは
コートを脱いだ春先の装いにも、
夏の爽やかな服装にも、しっくりなじむはず。
「淡いベージュのワントーンコーデに
赤いアクセントというのも可愛いな。
今までは赤い靴下をチラ見せしたりしてきましたが
バッグを主役にしたワントーンコーデも楽しいですね」
ほかにも、ネイビーやホワイトとも相性がよいから
赤は意外と汎用性の高いアクセントカラーだと
伊東さんが教えてくれました。
ちなみに三村さんの自転車は、
かごのない折りたたみタイプ。
リュックよりきれいめに使える
レザーのショルダーバッグは
ご近所サイクリングのときにも
活躍してくれそうです。
CI-VAのバッグを、あのひとに。その2 大人っぽく、色っぽく。 スタイリスト 川村繭美さん
川村繭美さんのプロフィール
かわむら・まゆみ
フリーのスタイリストとして、
CDジャケットやカタログ、手芸などに関する書籍、
広告などで活躍中。
個人的な活動として、
テーマを決めたスタイリングを撮影し、
まとめた小冊子を制作している。
アンティーク雑貨を扱う
「D+E MARKET TOKYO」で、
イベントディスプレイや企画などを手がけることも。
■川村繭美さんのウェブサイト
http://mayumikawamura.com/
ファッションが大好きな川村繭美さんにとって、
スタイリストという仕事は天職。
洋服もバッグもたくさん持っていて、
黄色やピンク、水色といった明るい色合いも大好き。
ピンク色の靴に水色のカーディガンというような
一見難しそうな色柄の組み合わせも、
なんなく着こなしているのはさすがです。
「可愛いなと思った色をつい買っちゃうんです。
着まわしとか考えない衝動買いが多くて(笑)」
そんな川村さんがCI-VAのバッグを初めて見たとき、
真っ先にいいなと思ったのは、ポーチ型のVOLA。
「コンパクトだけど、
マチのあるスクエア型が使いやすそう!
タッセルがポイントになっていて、可愛いし、
金具が落ち着いたゴールドなのもいいな」
フリルやフリンジ、リボン、レースといった
女の子らしいディテールが好きな川村さんらしい視点です。
「可愛いディテールは好きだけど、
いい大人なので、甘くなりすぎないように
心がけています。
レースはデニムでカジュアルダウンしたり、
フリルなら落ち着いた色を選ぶとか、
そういうバランス感が好きですね」
普段は、仕事の資料など、とにかく荷物が多いので、
ザクザク入れられる大きめの布バッグを愛用。
となると、財布や鍵など細かいものが
バッグ内で行方不明になりやすいので、
ショルダーバッグと2個持ちすることが多いとか。
「ポシェットというアイテムも好きで、
ハイブランドのものも
エコバッグのような布製の簡素なものも
刺繍や織りのトライバルなものも
たくさん持っています。
こんなシンプルなデザインのレザーバッグは
旅行のときも使いまわせて便利そう」
VOLAの片面にはポケットがあり、
パスモや携帯電話を入れられるのもポイントです。
「バッグのファスナーを開けなくても
ぱっと取り出せるのはありがたい!
バッグ自体もレザーなのに軽いから
荷物が多い私にはありがたいですね」
色もの好きとして、
赤いバッグにも惹かれるという川村さん。
「こんなモノトーンの格好に
1点だけ赤を入れるとか、
色っぽくていいですよね」
遠くからもパッと目を引く赤いバッグは
川村さんの華やかな雰囲気とぴったり。
「明るい色ではあるけれど、
洋服と合わせやすい
落ち着いた色合いだから気負わず使えそう。
革の質感も滑らかで高級感がありますね」
新しい洋服やバッグ、靴を手に入れたら
まずは手持ちのワードローブと合わせて
鏡の前であれこれ試してみるのだそう。
「ネイビーのバッグだったら黄色いスニーカーかなとか、
赤いバッグだったら全身白も可愛いなとか。
好きなコーディネートができると
しばらく繰り返します」
VOLAとNUVOLAとどちらを手に入れるか
真剣に悩みながら、コーディネートを考える川村さん。
その姿の楽しそうなこと!
本当におしゃれが好きなんですね。
CI-VAのバッグを、あのひとに。その1 子どもと手をつないで。 「CHIGO」ディレクター 紺谷ちぐささん
紺谷ちぐささんのプロフィール
こんたに・ちぐさ
オンラインショップ「CHIGO」(チゴ)を運営。
シンプルで着心地がよく、洗練されたデザインの
子ども服を中心に、大人の服や
作家とコラボしたデザイン雑貨、玩具などを
世界中からセレクトしている。
建築・内装デザインの仕事をしているご主人と
5歳の息子を育てながら、現在、第2子を妊娠中。
■CHIGOのウェブサイト
http://www.chigo.co.jp/
子どもが小さいうちは、おしゃれは二の次だと
思い込んでいませんか?
でも、好きな服を着たり買ったりすることで
日々の小さなストレスや育児疲れが解消できる。
だからお母さんだって、堂々とおしゃれを楽しみたいと
紺谷ちぐささんは考えています。
紺谷さんの仕事は、
子どものためのデザイングッズを販売する
オンラインショップ「CHIGO」のディレクター。
ちょっと珍しいのが、ユニセックスなテイストであること。
「女の子のための愛らしい洋服やおもちゃは
たくさんのショップで取り扱っていますが、
実は男の子のためのブランドってあんまりなくて。
量販店でロゴ入りのアメリカンテイストなものを
買う人が多いようです。
うちは息子がいることもあって、
男の子に似合うおしゃれなものをたくさん揃えています。
パターンがシンプルで、ベーシックな色のもの。
もちろん女の子が着ても、とても可愛い。
私自身、メンズライクなものを着るのが大好きです」
男女関係なく、好きなものを好きなように着ること。
カーキ色のスポーティーなTシャツを着る女の子も
くすんだピンク色のパンツを履く男の子も
少数派かもしれないけれど、とってもかわいい。
そんな気持ちを込めて
紺谷さんは子ども服や雑貨をセレクトしています。
今日着ているサロペットも、子ども服ブランドのもの。
「親子で同じブランドを着たりするのも
可愛いかなと思って仕入れています。
これはシンプルで洗練されたデザインだから、
さらっと1枚で着たり、
アクセサリーで女性らしくしたり、
タートルを重ねてワークウェアっぽく着たりと
自分らしく着こなせるんです。
こんなふうに小さなポシェットを
アクセサリーのように合わせてもいいですよね」
CHIGOのラインナップには
遊び心のあるものもたくさん並んでいます。
「ちょっと面白いような、
クスッと笑ってしまう要素があるものも好き。
ハンバーガーを刺繍した帽子とか
ロックミュージシャンの絵柄のTシャツとか」
ベーシックカラーのシンプル好みと思いきや
意外な一面もあるようです。
「ワードローブのほとんどは、
ブラック、ネイビー、ベージュと地味(笑)。
その反動なのか、急にびっくりするような
ショッキングピンクとか着たくなるんですよね」
もう5年以上愛用しているという
モヘアのざっくりニットと、
ワッフル地のカシミアニットパンツに
赤いNUVOLAを合わせて。
「特に秋冬は重い色の服が多いから、
赤いバッグはポイントになりますね。
今日みたいな
カーキ色に赤の色合わせは好きだし
カジュアルなニットパンツが
レザーバッグを合わせると
きれいめな印象になるのもうれしい」
ショルダー紐は、かるく結んで
短めにするのが紺谷さん流のバランス。
「ものを出し入れするときも
このくらいの位置のほうが手が届きやすい。
洋服に合わせて調節できるのもいいですね」
5歳の息子と一緒に出かけるときは、
大きなバッグとポシェットという
2個持ちが便利だそう。
「子どもがいると荷物は多くなりがち。
かさばるけれど、子どもと手をつなぐので、
片手はあけておきたい。
だから財布などをすぐに取り出せるように
ショルダーバッグは必須アイテムなんです」
いつもは布バッグがほとんどという紺谷さん。
「ハイブランドのレザーバッグに憧れもしますが
何十万円もするのに、
翌年には流行遅れになってしまう。
それは私には向いていないなと思うんです。
これはシンプルで上質だから、
飽きずにずっと永く使えそう。
そういう安心感がありますね」
CI-VAのショルダーバッグ
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月19日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
ロングカーディガンシルクコットン
DRESS HERSELFの
ロングカーディガンシルクコットン。
チャコールグレーとネイビーが再入荷します。
アウターとして羽織っても、
コートのインナーとしても活躍するので、
一年中着られますよ。
とっても肌触りのいいアイテムです。
「体にゆったりと寄り添う、
ロングカーディガン。
着ていてとてもリラックスするのに、
もたついた印象にならず、
全身をすっと見せてくれるところがうれしい。
また、横にスリットが入っているため、
脚さばきもよく、
歩くのがとてもラクちん。
家でも外でも。
出番が多くなりそう。」
(伊藤まさこさん)
ちいさな革のトートバッグ
販売するたびに、
あっという間に完売するバッグです。
あらゆる服やシーンに合うので、
冬のお出かけに、ぜひ連れて行ってくださいね。
「ファスナーがないので、
『中に入れるものが見えてしまうのでは?』
と思われる方もいるかもしれませんが、
そこは腕の見せどころ。
スカーフなどを目隠しにして、
コーディネートをたのしんでみてください」
(伊藤まさこ)
母の口紅。
実家の、
台所からお風呂場に行く途中の
ちょっとした間に、
母の鏡台がありました。
パタンパタンと鏡の扉を開くと、
あら不思議。
自分の横顔も斜め後ろの姿も見ることができる。
子どもだった私はそれがおもしろくて、
時おりのぞきこんでは変な顔をしたり、
ちょっと気取ってみたりして、
いろんな自分を眺めたものでした。
鏡台には小さな引き出しがいくつかありましたが、
とりわけ私が好きだったのが、
真ん中にしつらえられた広くて浅い引き出し。
なぜって?
それは口紅やおしろいが入っていたから。
時どきこっそりとその引き出しを開け、
おしろいをパタパタと頬にはたいたり、
紅を筆に取ってくちびるに塗ってみたり。
母に使ってもいい? と聞けば、
きっと「いいわよ」と応じてくれたはずなのに、
その「こっそり」という感じが、
どうやらよかったらしい。
つまみぐいの感覚と似ているからかな。
今週のweeksdaysは、
CI-VAのバッグをご紹介します。
色合いは、
大好きだった母の口紅にそっくりな、
洒落た赤。
(好評いただいたネイビーのバッグの再販もありますよ。)
持つと、子どもの頃のちょっとうれしい感じを思い出す、
なんだかうれしいバッグなのです。
ちいさな革のトートバッグ、6つのコーディネート。[3]
その5 生成りでまとめて。
ゴールドと相性のよい、
生成り色でまとめたコーディネート。
ただし足元は同系色にせず黒で引き締めてバランスよく。
バッグを主役にもってきたい場合は、
パールや華奢なゴールドのピアスにして
ほかはひかえめに。
上品で清楚な雰囲気にまとめるようにします。
その6 トレンチできちんと。
上のコーディネートに、
トレンチを重ねてみました。
足元は少しヒールのあるローファーを。
シルバーのバッグにまいたのは、
ネイビーの水玉スカーフ。
アクセントにもなるし、
先っぽを中に入れてバッグの目隠しにもできるので、
持っているとなにかと重宝するアイテム。
柄や色を変えてたのしんでみてくださいね。
ちいさな革のトートバッグ、6つのコーディネート。[2]
その3 ヒールで華やかに。
赤いプルオーバーに黒いパンツ、黒のヒール。
仕事帰りに、ちょっとレストランでも‥‥なんて時でも、
ゴールドのバッグがあれば大丈夫。
ものがたくさん入って、
きちんと見えて、
でも華やかさもあって‥‥と
欲張りな心を満足させてくれるのがうれしい。
その4 スニーカーでカジュアルに。
中にタートルネックのニットを着て、
足元はスニーカー、
手元はシルバーのバッグを持ちます。
シルバーもゴールドも、印象的な色?と思われがちですが、
意外にもいろんな服(そしていろんな色)と合うのです。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
12月19日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
2189 NUVOLA
販売後、すぐに完売となってしまった
CI-VAの2189 NUVOLAが再入荷します。
小さすぎず、大きすぎずのサイズ感は、
使い勝手がとてもいい優れもの。
紐をはずしてクラッチバッグとしても使えます。
「フラットな作りの、
これ以上にないくらいシンプルなバッグです。
ヒモが長くなっているので、
斜めがけしたり、またはヒモを結んで肩にかけたりと、
持ち方によって印象が変わるところも魅力のひとつ。
使ううちに革がだんだんとやわらかくなり、
体にそうように。
育っていくたのしみがあるのが、
『CI-VA』のバッグのよいところなのです。」
(伊藤まさこさん)