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再入荷のおしらせ

未分類

完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月25日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

saqui 丸衿プルオーバー

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ブラック、ネイビーが入荷します。

「首や手首の出るバランスが絶妙なプルオーバー。

おしりがかくれるか、かくれないかの丈も

またいいかんじなのです。
同素材のパンツと合わせてセットアップにしても。

写真のように前身頃の裾を少しだけパンツに入れると

表情が豊かになります。」
(伊藤まさこさん)

saqui テーパードリボンパンツ

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ブラック、ネイビーが入荷します。

「ウェストがゴムなので、
はいていて楽なのですが、
きちんとして見える計算されたパターン。
とにかくシルエットがきれいなのです。
コーディネートによって、
カジュアルにも、ちょっとおめかし風にもなるので、
1枚持っているととても重宝します。」

(伊藤まさこさん)

小ひきだし

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2月、6月と入荷するたびに人気の小ひきだし。
今回も抽選販売で限られた数にはなりますが、
再入荷いたします。
ぜひこの機会にご応募ください。

「この小ひきだしを使い始めてしばらく経ちますが、
リビングに置いて、
いろいろなものを入れてはいいなぁ、
使いやすいなぁと思う毎日です。
そして、美しいなぁとも思う。
置いてある姿も、
また、ひきだしの中の様子までも。

小さなひきだしですが、
これがあるのとないのとでは大ちがい。
身の回りのこまごましたものが、
気持ちいいほどすっきり片づきます。

いつも、あれない、これない、どこいっちゃった?
なんて探しものをしているとしたら、
時間が少しもったいないと思う。
ものの置き場所をきちんと決めて、
こまごましたものをひきだしにおさめたら、
ものだけでなく、
気持ちの整理整頓にもなるはず。

入れるものは、あなたの自由。
使い方も自由です。
小さいけれど、大きな役割をしてくれる、
このひきだしはきっと暮らしの役に立つはず。」

(伊藤まさこさん)

 違う場所へ。

未分類

伊藤
いろんなところに連れて行ってくれるのが、
本というもので、
河野さんはそれをつくる、
そしてつくる人(作家)たちと
出会う仕事に就かれた。
中央公論社に就職して、どんな感じでしたか?
河野
先輩から最初に
「本は、読んでるのが一番いいよ」
って言われました。
「作家とつきあうとがっかりしちゃうよ」って。
でも、僕は、作家にそういう幻滅を感じることは、
あまりなかったんです。
あまりにも偶像視してる場合は
そうだったのかもしれませんが、
学生のときに実際の物書きと出会う場面もあったので、
こういう作品を書く人が実際はこうなんだと、
わかっていたところがありました。
そうした中で、本当に縁のある人が、
また人を紹介してくれたりして、
そこには著名な作家もいたりして、
いろいろな人を知ることができた。
そういう下地ができていたんです。
伊藤
「出会う」人だったんですね、河野さんは。
河野
伊藤さんも、きっと、おありでしょう?
自分の進路をパッと照らしてくれた人。
その出会いが若いときにあったから、
いまの自分がある、というような人。
アイスクリームから、次の何かに
連れて行ってくれた人。
伊藤
はい。いつも20ぐらい年上の大先輩がいました。
それが、いまは糸井さんや河野さんなのかな。
最初は20歳くらいのとき、
文学者でもあり、さるミュージシャンの研究家でもある方。
河野
はい。
伊藤
自宅をサロンみたいにしてらしたんです。
河野
ああ、あの家ですね?
伊藤
そうです。行かれたことあります?
河野
あります、あります。
伊藤
ミュージシャンのかたや、女優の卵とか、
いつも15人ぐらいが彼を慕って集まり、
だらだらとお酒を飲みながらいろんな話をするんです。
まだ若かった私は、
何なんだろうここは? と不思議に思いながらも、
すぐに馴染んで、大きなキッチンをお借りして、
ベトナム風揚げ春巻きをつくったり。
そこでは本当にいろんな出会いがありました。
河野
そういうことですよ。
利害に関係なく、
ちょっと変なやつが集まってる場が、
おもしろいと思うしね。
やっぱり、僕もね、年上の人が多かったかな。
お手本にするっていうよりも、
社会的な縁をつくってくれた人。
伊藤
そのときに誰かに言われたのが、
あなたは、決断が早いから、
分かれ道があったときにいろいろ考えるより、
パッと、こっち! って思ったほうを信じなさい、と。
それ、結構いまも守っているんです。
河野
なるほど。
伊藤
演出家の串田和美さんとは、
私が松本に住んでいた時に、よくお会いしていましたが、
「まさこさん、こんなおもしろい人がいるんだけどね」
なんて話をしてくださる。
その後、偶然その人にお会いできたりすると、
あのとき串田さんがおっしゃってたことって
こういうことだったんだなって思ったり。
おもしろいですよね。
河野
うん、うん。
伊藤
それから、娘が尾山台の
「オーボンヴュータン」のケーキが好きで、
ちっちゃいころからよく2人で行っていたんですね。
そこにはわたしの尊敬する
河田勝彦さんっていうシェフパティシエがいて、
ふと、こんなことをおっしゃったんです。
「うちのお菓子ばっかりじゃなくて、
いろんなお菓子を食べさせたほうがいいよ。
世の中にはいろんな味があるっていうことを、
絶対に、知ったほうがいいから」と。
なるほどな、と思いました。
河野
そういうふうに言ってくれる人がいるということ、
すばらしいですよ。
僕も感謝しているんです、
年上の人から、すごく親切にしてもらえたなって。
そして、なぜかはわからないけれど、
その仲間に紛れ込めたっていうこと。
たぶん伊藤さんも、
すごいそこでヒントをもらってると思うし、
逆にいうと、人に見られる自分を
発見するようなことも、
すごくあったと思いますね。
その揚げ春巻きも、
喜ばれることってこういうことなんだなとか、
何気なく放った言葉が
こういうふうに響いちゃうんだとか。
そういうことを若いときにやれてるっていうのは、
すごくいいですよ。
いまは、伊藤さんが
そういうことをやってらっしゃるんですよ。
伊藤
だんだん、年下の友だちが増えてきて、
そういう年になってきたのかな。
何かするつもりはないんですけれど。
河野
そんなふうに触媒になってくれる人っていうか、
ハブになってくれる人っていうのは、
とっても貴重だなと思っているんです。
僕も、さっき言った出版社に入って、
僕が編集者になろうと思った
きっかけをつくった編集長は、
入れ違いで辞めちゃうんですよ。
僕は、あてが外れたんで、
その方の家を訪ねて行ったんですね。
そしたら、その人の家にはいろんな作家や、
彼に世話になった書き手が、次々に来る。
なぜか僕は
「大学の勉強がおもしろくなくてグレたやつ」
「下宿でミステリーばっかり読んでたやつ」
っていう紹介のされ方で、
学生時代まじめに本を読んでいたのになあ、
と思いながら、何度もそこに呼ばれるようになり、
出版社の1年生が絶対に会えないような書き手に
次々とお会いするんですよ。
僕はその会社に入ってるんだけど、
その人は辞めているから、
そこで聞かされるのって、会社の悪口もあるんです。
そんな話を聞いているから、
新入社員にして客観的、っていう感じになる。
と同時に、やっぱりそこで話されてることは
おもしろいんですよね。
とってもレベルの高い話だし。
そういうところに居合わせるっていう
幸せ感がありました。
だからさっきの、伊藤さんがおっしゃっていた
「友人の家からとにかく5冊借りて来る」話、
それは半分以上直感だし、
偶然に身を任せるみたいなところがあるんだけど、
それがいいんだと思うんです。
僕もわりと、“仕事だから”誰を紹介するとか、
あまりそういうことじゃなくて、
誰かと誰かは気が合うんじゃないか、とか、
会ったらおもしろい話になるんじゃないか、と、
あまり考えないで、無責任に紹介しちゃう。
責任を感じたら、そんなこと、できないんですよ。
伊藤
紹介して、気が合わなかったら、
それでいいんですものね。
河野
それで終わりだし、それもアリだなと。
本もね、
「この本、君、絶対読んどいたほうがいいよ」
なんて言うのは、すごい押しつけがましいし、
もらったほうも窮屈だけど、
「この人に会ってみたら?」みたいな感じで、
どこまで本気かわからないけど、言われたら‥‥。
伊藤
すなおに受け取ることができますよね。
今回の企画も、買った人に
どの本が届くかわからないので、
「あなたのために」ではないんです。
偶然来ちゃったから、ちょっと読んでみようって、
そのくらいの気持ちでいてくださるといいな。
そのとき、ふーんとか思っても、
ずっと本棚にあって、何年かぐらいしてから、
しっくりくる本かもしれないし。
河野
伊藤さんは、ありますか、
ずっと本棚にあるような本。
伊藤
その人自体がすごく好きなのが、向田邦子さん。
きっぷのいい女の人が好きなんです。
高峰秀子さんも好きです。
上辺だけじゃなくて、気取ってないし、カッコいいし。
カッコいい女の人が好きなのかもしれません。
河野さんはずっと本棚にある本がありますか?
年に5、600冊古書店に行くなかで。
河野
あります、あります。
手放せないし、大事にいつか読むだろうと思いながら、
背中だけを見てる本っていうのもありますよ。
本当に読みたくなる時期が来るだろうなって、
予感をしている本が、いまも、ありますよ。
伊藤
出版社を辞められて、
いま、校長先生をなさっているわけですが、
そこに心境の変化はありましたか?
河野
あまりね、そこに大きな変化はないんです。
僕の中ではそのまんま来てる感じなんですよ。
紙の世界で本をつくるっていうことと、
紙ではないけど、ある空間に講座を開いて、
読者ならぬ受講生を迎え入れて授業をやる。
本質的には変わらないなと。
だから講座のラインナップを考えたり、
誰に講師として来てもらって、
どういう演出で話してもらおうかというのは‥‥。
伊藤
それが紙になるか、本になるか、
イベントか、コンテンツになるか、
その違いということなんですね。
河野
どうやって言葉を届けるか、でしょう。
読者がその言葉を受け取って、
どういうふうにそこから感じ取って、
その人の生き方に反映していくか。
学校のほうがダイレクトだから、
よりおもしろいよと。
出版は、最近また本が売れなくなっているので、
この企画じゃ売れないよとか、
常に数字に脅かされていますが、
学校は、すごくダイレクトに反応が返って来て、
こうやったらいいんだなと、
日々呼吸しながら常におもしろいことに
チャレンジできるという意味で、
非常にエキサイティングですよ。
伊藤
すぐ声が届くんですね。
河野
「届く」っていうよりね‥‥、
受講生、全然遠慮しないんですよ。
今度来てください。
伊藤
もじもじしないんですか?
トークイベントで、質問がある方、と訊くと、
みんなもじもじしちゃうんですよね。
学校にも、そういう感じの空気が
流れてるのかなと思いきや‥‥。
河野
違うんです。
シェイクスピアをやったときには
講師には大学の先生もいるし、
串田和美さんみたいな演出家もいて、
またアマチュアでありながら、
シェイクスピアを語る熱においては
専門家に負けないぞっていう人も入れたんですよ。
松岡和子さんって、シェイクスピアの全集を
まもなく完訳しようという翻訳家にも来てもらって。
すると、ほかのカルチャーセンターとか、
大学で教えてるときと
まったく違うって言うんですよね。
大学では学生からの反応はない、
みんな何を考えてるんだと思うところで
授業をしていると。
カルチャーセンターで教えていても、
もちろん勉強しに来ましたという高齢のかたが
静かに聞いてくれるわけだけれど、
「ほぼ日の学校」は受講生から圧を受けるっていうか、
熱気がすごくて、ついつい乗せられて
しゃべっちゃうんだと。
伊藤
嬉しいですよね。
河野
嬉しいですね、そういうふうに言ってもらったら。
講師の方からメールで、
「ほぼ日の学校」にはホスピタリティの空気があって、
すごく温かく迎えられて、
それは運営してるスタッフもそうだけど、
受講生もそうで、すごく楽しかった、
こんな思いを味わったことはなかった、
っていうふうにおっしゃってくださって。
雑誌ではね、そういう感じはないんです。
伊藤
そうですね、わりといま、SNS、
インスタグラムなどで行き来できるとはいえ、
一方通行のところが多いですよね。
河野
多いですよね。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

100冊の古書[2]

未分類

19『有元葉子の台所術』有元葉子

「これ以上ないくらい簡単なものだけれど、
きちんと手間はかけている。」
本に紹介されるのは、
有元さんがふだん作る料理についての工夫や考え方。

冷蔵庫の中は見通しよく。
箸の先に神経を集中させて、
その料理がいちばんおいしく見えるように器に盛りつける。

いつもきりりとしていて美しい人は、
なぜそうなのかの理由がちゃんとあるのです。

20『THE OUTLINE』深澤直人/藤井保

深澤さんがデザインしたものを、
藤井さんが撮る。
ぱらぱらとめくっていると、
あっという間にふたりの世界に引き込まれてしまって、
そんな自分にびっくりするのでした。

写真は一枚の風景のよう。
落ち着くかというとそうではなく、
本から何かものすごい「引力」を感じます。

21『小さな森の家 軽井沢山荘物語』吉村順三/さとうつねお

幸運にも、吉村順三さんが建築した家を
いくつか訪れたことがあります。
いつもなぜだか親しい人の家を訪れたような、
そんな温かな錯覚に陥るのが不思議でたまりません。

「暖炉右手のベンチは、
この山荘を建てる時に切り倒したニレの木でつくった。
緑色のおりたたみ椅子も僕のデザインだよ。」
第1章の「山荘案内」では、
こんな風に語りかけてくるのですが、
それが私だけに話してくれているような気分になって、
なんだかうれしい。

22『普段に生かすにほんの台所道具』吉田揚子/佐野絵里子

竹ざる、すり鉢、おろし具、せいろ、
シュロのたわしに曲げわっぱの弁当箱‥‥。
昔から日本の人々に使われてきた道具には、
料理をおいしくする「何か」があるのです。

それぞれの道具に合った料理や、
あつかい方、手入れの方法なども載っていて、
読みごたえあり。

久しぶりに巻きすを出して、
海苔巻きでも作ろうかしら? なんて思いました。

23『海苔と卵と朝めし』向田邦子

「日本に帰って、
いちばん先に作ったのは海苔弁である。」
この一文にそうだそうだ、
それがいちばん食べたいものだと膝を打って以来、
私も旅から帰ってすぐのごはんは海苔弁一辺倒。

思えば、向田さんの本からは
たくさんの「おいしい」を教えてもらった気がします。
「海苔と卵と朝めし」
「幻のソース」
「海苔巻きの端っこ」‥‥。
目次に並ぶ文字を追うだけで、
お腹がグゥと鳴ってきます。

24『地平線の相談』細野晴臣/星野源

クーラーが壊れてどうしよう? とか、
ベッド・シーンどうしよう? とか、
かけ算おしえてほしーの! とか。
細野さんと星野さんは、
自由にたのしそうにこの本の中で会話をしているけれど、
読者をけしておいてけぼりにはしない。
喫茶店に偶然隣に居合わせた、
おもしろいおじさんとお兄さんの話をこっそり聞いて、
思わず忍び笑いしてしまうようなたのしさが
この本にはあるのです。

25『しない。』群ようこ

群さんのエッセイには、
共感する部分がたくさんあって、
いつも本を手にしながら、
そうそう、
うんうんとうなづく自分がいます。

化粧、後回し、必要のない付き合い、
それから最後は、
自分だけは大丈夫と思うこと。

いろいろ「しない」と決めたら、
目の前がすっきり、さっぱり、
気持ちいい。

「しない」をする、きっかけになります。

26『おいしい人間』高峰秀子

「性格およそぶっきら棒、人づきあいは大の苦手で
『お前さんは変人です』と夫に言われる私──。」
という高峰さん。
それでも、
「筆を持てばやはり『人間に関することしか書けない』と、
自分でもこっけいになる。」

気風がよくて歯に衣着せず。
高峰さんの文章を読んでいると、
こちらもなんだかスカッとしてくるのです。

中の「おいしい人間」というエッセイに出てくるのは、
私も知る中華の店。
つつましやかな、あの店を
「よい」と思う高峰さんの舌のセンスのよさに、
舌をまくのでした。

27『つるとはな 創刊号』岡戸絹枝/松家仁之(編集)

ページを開くと、
川上弘美さんのエッセイ。
次のページは海辺に建つ、小さな家のこと。
小澤征爾さんへのインタビュー、
アイルランドの老姉妹のおはなし、
姿勢の正し方、
須賀敦子の直筆の手紙、
それからそれから‥‥。

ぜんぜん「雑」じゃない、
ていねいに編まれた「雑誌」が『つるとはな』なのです。
これは記念すべき創刊号。

28『夢で会いましょう』村上春樹/糸井重里

糸井さんと村上さんの対談集ではありません。
「短編集でもなく、エッセイ集でもないし、
かといって雑多な原稿の寄せ集めでもない」
そして、
「とにかくフシギな本だ」と村上さんは言うのです。

「ア」は、アスパラガス、アンチテーゼ、
「エ」はエリート、エチケット‥‥。と、
文字にちなんだエッセイが綴られます。
そして最後の「ワ」は、ワン(犬の鳴き声)でおしまい。
途中の「シ」のシティ・ボーイの糸井さんの文が、
洒落ていていいんですよ。

29『バウムクーヘン』谷川俊太郎/ディック・ブルーナ

白い小さな本は、
角の部分がまあるくしあげられていて、
読む人にやさしい。

見開きごとに、
書かれた詩は、
すべてひらがなと時々カタカナで
綴られていて、
これもまた読む人にやさしい。

バウムクーヘンってタイトルだって、
なんだかあまい匂いがただよってきそうで、
うれしい。

色とか手触りとか、
いろいろなものがやさしい。

30『パリのすてきなおじさん』金井真紀/広岡裕児

おじさんが67人いれば、
67通りの生き方があります。
もちろん、おじさんになるまでに、
いろいろなことがあったにちがいないのだけれど、
「それが人生さ」とばかりに、
自分の人生を軽やかにたのしんでいて、
なんだかいいのです。

「ほとんどの問題は、
他者を尊重しないことから起こる。」
「2分考えれば済むことを、
みんな大げさに考えすぎだよ。」

なるほど、なるほど。

31『アホになる修行 横尾忠則言葉集』横尾忠則

「まかせよう、運命に!」

「他人を信じる前に
自分を信じることができないと、
他人さえ信じることが
できないのではないか」

どこを開いても、
素晴らしい言葉が飛び出してくる。
まったく押しつけがましくない、
横尾さんによる人生の教科書。

32『開口閉口』開高健

「とれたての山菜にあるホロ苦さは
まことに気品高いもので、
だらけたり、ほころびたりした舌を
一滴の清流のようにひきしめて洗ってくれる。」

長い冬が明け、
やっと芽吹いた山菜を味わう時の気持ちを
どうあらわすのが
一番ふさわしいだろうと思っていたけれど、
この本のこの一文がそれを解決してくれました。

33『にょっ記』穂村弘

穂村さんの本を読んでいるといつも、
なぜこの人は、こんなにおもしろいことに
遭遇するのだろう? と思うのですが、
それは穂村さんが、おもしろいことに目を向け、
耳を傾けているから。
時間はだれにでも平等に与えられているのだから、
こんな風にキョロキョロして、
おもしろいことを見つけた方が、
ぜったいにたのしいにちがいない。

34『江戸切絵図散歩』池波正太郎

地域別に作られ、携帯に便利な「切り絵図」。
中で池波正太郎は、
「私のような江戸期を舞台にした
時代小説を書いている者にとっては、
欠かせないものだ。」
と語っています。

上野、築地、日本橋、渋谷、青山‥‥。
渋谷は新開地で、発展途上の街。
駒場の辺りは田園風景。
そこには私の知らない東京があるのでした。

35『恋愛について、話しました。』岡本敏子/よしもとばなな

よしもとばななさんと、岡本敏子さんの対談集。

「とにかく、変な枝ぶりの植木は
それなりにおもしろいのよ。」
これは、男性を植木に例えた岡本さんの名言。

名言は本のそこかしこに飛び出しますが、
それをばななさんが、うまい具合に受け止めて、
そのふたりのやりとりが、すごくいいのです。

36『へたも絵のうち』熊谷守一

「地面に頬杖をつきながら、
蟻の歩き方を幾年も見ていてわかったんですが、
蟻は左の二つの足から歩き出すんです。」

30年もの間、
家からほとんど出ず、
庭の植物や虫を観察し、
奥さんと碁を打ち、
絵を描いた熊谷守一さん。

この本では、その前、
子どもの頃や美術学校時代のことにも
触れられているのですが、
全編にわたって聞き書きだったというから驚き。
魅力的な「話し手」と、
それを引き出す「聞き手」によって、
こんな本ができあがるんだ!
と感嘆せずにはいられません。
だってまるで、すぐそばで熊谷さんが
話しているかのような、
自然な文体なのだから。

(伊藤まさこ)

 本とアイスクリーム。

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伊藤
もともと本がお好きでいらしたから、
下宿にこもって本を読む生活は、
さぞやおもしろかったでしょうね。
河野
おもしろかったですよ。
伊藤
でも、読む本の中には、
馴染めないものもありますよね。
河野
もちろんありました。
入院してる間に夏目漱石と出会ったんですけど、
これは馴染みすぎて、サッカーに戻れなくなりました。
逆に、ある時代の女性作家の作品は、
ちょっと苦手だったかな。
いまの女性作家と違い、
昔の人たちが苦しんでいるテーマ、戦ってることが、
あまりにも自分と違うものだから、
理解はできるんだけど、感情移入したり、
好きな小説として愛読するっていうものじゃなかったな。
かといって、三島由紀夫ならどうかというと、
うーん? と思いながら、
それでも、とにかく読みました。
伊藤
とにかく、読むんですね。
河野
全集主義だったんですよ。
その作家の全部を読む。
そうすると、わかってくることがあるんです。
伊藤
くだらない話をしてもいいですか?
わたしは高校生のときに、
自由が丘のアイスクリーム屋さんを、
全部制覇しました。
お店ごとに、全種類食べるんです、とにかく。
そのときに知ったのは、
「食べ込まないとわからないことがある」
ということでした。
河野
同じく!
伊藤
すみません、くだらなくて‥‥。
河野
いや、そのとおりだと思います。
心としてはまったく同じ。
小林秀雄が言っていますよ、全集を読め、
その人と徹底してつき合えと。
それから、いいものを選べ。
おいしいものもそうでしょう?
おいしいものを食べていないと、
おいしくないものとのちがいもわからないしね。
器だって何だって、そうだし。
伊藤
そうですね!
河野
全部に通じるところがあります。
「全集を読め」。
だから、そういう意味で、
全集が出ているぐらいの作家っていうのは、
世の中で評価をされているわけで、
そういう人をとにかく、徹底して読めと。
伊藤
さっき、神保町の古書店を
河野さんといっしょに回ったら、
全集が安くなってるとおっしゃっていましたね。
かつての10分の1ぐらいの価格だと。
全集ってなかなか手を出せずにいましたが、
なるほどって思いました。
それで──、6年間、
ひたすら読むわけですか?
専攻に関する本も?
河野
僕は露文(ロシア文学)だったので、
それはもちろん読みました。
伊藤
原文で?
河野
僕に、ロシア語のことは聞かないでね(笑)。
ロシア語って難しいんですよ。
しかも、ドストエフスキーとか、厚いし、
でも学部の学生は、ロシア語を習いながら、
原文を1日数ページとか、
苦労しながら読んでいるわけです。
僕はそういうのが我慢できなくて、
サッサ、サッサ、ページをめくっていきたい。
だから、ロシア文学は全部翻訳で読んでいます。
しかもみんなより先に読んじゃうわけだから、
早々と生意気なことを言うわけですよ。
「『悪霊』? 先週とっくに読んじゃったよ」
なんて。ドストエフスキーを制覇して、
ドストエフスキーという作家について語りたいのに、
みんなは原文にかじりついて、
はぁはぁ言っているわけです。
伊藤
(笑)小学校のころの読書感想文に始まり、
いつもすごく俯瞰したところから
「読むこと」を見てらっしゃいますよね。
河野
そういえばサッカーもそうですね。
僕は最初から監督志望なんです、選手じゃなく。
これも不思議だと思います。
選手としては一流には絶対届かないと思ってた。
伊藤
最初から編集長だし、
「ほぼ日」では校長先生。
飛び級みたいな?
河野
押しつけやすいんじゃないかな?
僕にそういう能力があるっていうことじゃなくて。
だって、編集者になろうと思ったのも、
中央公論編集長の日記を読んで、
こういうのがおもしろいんだなと、
お手本を真似たわけです。
大学のサークルで雑誌をつくったのも真似事ですし。
伊藤
そんなふうになにごとも俯瞰する河野さんが、
安部公房の小説は
熱に浮かされたように読んだということは、
それだけは心にズドーンと来たわけですか。
河野
うん、結構、ズドーン! だったかな。
全然日本的じゃなくて、じめじめもしてないし、
SF的なつくりで、驚いちゃった。
男が突然箱をかぶって生活し始めたりとか、
砂丘で生活する女がいて、
男がそこから出られなくなってしまうとか。
最初の伊藤さんの話につながるけれど、
ポーンとあっち側に飛んじゃう感覚ですよ。
絶対に日常の自分が考えもしないところに追い込まれて、
いろんなことを考えさせられるのが
おもしろいと思ったんです。
生活とべったり地続きの私小説が多い、
そんな日本の文学風土のなかで、
安部公房は思い切って違うことをやっていたわけです。
とはいうものの、私小説作家の“情痴小説”も
大好きだったりするけれど(笑)。
伊藤
同じものでも、読む年齢によって違いますよね。
河野
違いますよね。
伊藤
でも、小説家になろうとは
思わなかったんですね。
河野
自分が作家になろうとは思わなかったです。
ああいう才能はない。
いろんな作家を読んでいたり、
“動物園”みたいなクラスで、
さまざまな個性を見ていると、
ますます俯瞰するような感じで見るようになりました。
伊藤
そっか、だから、まさに編集者。
河野
ずっとそういう感じかな。
人とつき合ってて、好き嫌いも、もちろんあるんだけど、
個性の違いをおもしろがるっていうか。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

100冊の古書[1]

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1『コーヒーと恋愛』獅子文六

主人公のモエ子が入れるコーヒーは、
一度飲んだら飛び上がる味。
「こんなおいしいコーヒーは東京中歩いたって
飲めるものではない」
と無類のコーヒー好きの勉君は言います。

モエ子と勉君はコーヒーがきっかけとなって
いい仲になりますが‥‥。

さてこの先は読んだ人だけのおたのしみ。

物語の舞台は昭和30年代。
「獅子文六」という著者名を伏せ、
文中に今時のツール(携帯電話とか)を足したら、
令和の恋物語と思う人もいるんじゃないかな。
なんて感じさせる、
軽やかで生き生きしたラブストーリー。

2『ラオスにいったい何があるというんですか?』村上春樹

季節外れのギリシャ、
夏の盛りの(でも寒い)フィンランド、
「ほとんど何も知らない」ラオス‥‥。

旅する数だけ、
今まで見えなかったものが見えてくる。
旅する数だけ知らない景色に出会える。

その先に何があるのかは、
旅した人でなければ分からない。
だから人は旅に出るのかもね。

3『贅沢貧乏のお洒落帖』森茉莉

森茉莉さんの文章を読んでいるといつも、
永遠に手がとどかない、
とどかないからこその憧れのようなものを感じます。

「贅沢はお金では買えない。
幼い時からの食物、体を洗ってきた石鹸の類、
わずかの間着ては捨ててきた下着の数、
嗅いで育った煙草がどんな煙草か、見た絵本の種類。
(中略)
それらの条件で贅沢ができる人か、
しようと思ってもできない人か定る。」

はい、そうですと頭を垂れるばかりです。

4『夢について』吉本ばなな

夢についてのエッセイをまとめたこの本を読んで、
そういえば最近まったく
夢を見ていないことに気がつきました。
夢はいつだって唐突で辻褄が合わなくて、
とんちんかんなことばかり起こるけれど、
目が覚めた時の「???」の感じは嫌いじゃない。

今は夢が見られるくらい、
睡眠にゆとりができることが、私の夢。

5『ジーノの家』内田洋子

本のいいところは、開いただけで、
行ったことがない場所に自分を連れて行ってくれたり、
会ったことのない人に会ったような気分に
させてくれるところではないでしょうか?
私はこの本を読んで、
菜の花のパスタを食べたり、
胸の広く開いたブラウスを着た、
ルンバの歌い手に会い(ような気になった)ました。

そして、無性にイタリアに行ってみたくなりました。

6『蚊がいる』穂村弘

表紙のインパクトに手を取ったら、
穂村弘さんの随筆集でした。
クレジットを見ると、
装丁は横尾忠則さん。

穂村さんの文が読めるだけでなく、
横尾さんのデザインまでたのしめるなんて!と
勝手に得した気分でにこにこ。

中の紙の質感もいいんです。

7『夜明けのブランデー』池波正太郎

「あれ、これ絵も池波さんが書いているの?」
と表紙を見た娘。

ブルターニュ地方の婦人の民族衣装、
お祝いにいただいた万年筆、
東北地方を旅して集めたこけし‥‥。
どの絵も、いい感じに肩の力が抜けていて、
眺めていてなんだか心地いいのです。

エッセイの名手は、絵の才能にも長けていて、
「天は二物を与えず」という言葉は、
池波さんには当てはまらないのだなぁと、
この本を見るたびしみじみするのでした。

8『ミナを着て旅に出よう』皆川明

ただ「かわいい」だけじゃ、
こうもみんなの心をつかむ服は作れないと思うのです。
この本の中には、
ミナの服ができあがるまでの
皆川さんの心の中の様子が書かれていて、
なるほどなぁと思ったり、
そうだったのかと感心したり。

本が出版されたのは2003年。
もしかしたら今のミナファンは、
知らないことも潜んでいるかもしれませんよ。

9『礼儀作法入門』山口瞳

人生のセンパイからは
学ぶべきことがたくさんあって、
それが一冊の本にまとまっているのは、
なんともありがたい。
本棚から時々、取り出して読み返したい本です。

「マナーに関しては、
美しく見えることが正しいことなのである。
ミットモナイことは悪である」

ほんと、その通り!

10『文学ときどき酒』丸谷才一

一人称で語られるエッセイとはまた別に、
対談形式の場合は相手がいるものだから、
話しが思わぬ方向に
いったりきたりすることがあるものです。
ましてや丸谷さんの話し相手は、
ただものならない作家や評論家。
おもしろくないわけがないではありませんか。

会話の途中に入ってくる本を、
読んでみたくもなったりして‥‥。
こうして読書の幅が広がっていくのですねぇ。

11『私の小さなたからもの』石井好子

石井さんのエッセイは、
たいてい読んだつもりになっていたけれど、
知らない話しがまだまだたくさん潜んでいました。

「小さなたからもの」は、ものだけにあらず。
胸を打つ手紙、
古くからの友人と過ごす時間、
汽車の旅‥‥。

自分の中の小さなたからものを、
探すきっかけになる本です。

12『猫語の教科書』ポール・ギャリコ

まず、この本のたたずまいがいい。
黄色をベースにした装丁はちょっと洒落ているし、
タイプに向かった知的そうな猫の写真も
興味をそそられるではありませんか。

第1章は人間の家を乗っ取る方法、
第7章は魅惑の表情をつくる、
第15章は別宅を持ってしまったら。

頭がよくてちょっとシニカル、
観察力がするどく、策略家。
猫の視線ってこうなのねぇ、
ちょっとモテる女の人みたい。

13『私の釣魚大全』開高健

その昔、冬の湖の
ワカサギ釣りに誘ってくれた人がいました。
その時私は、
じっとしていられないタチだから
きっと向かないだろうし、
だいいち寒いじゃない!
と断ってしまったのです。

あの時、
「ワカサギ釣りは冬のお花見であること」
の章を読んでいたら、
きっと喜び勇んで出かけたことでしょう。
だってなんだか楽しそう。
なんていったって「お花見」なのですから。

14『新しい分かり方』佐藤雅彦

分かっているつもりになっていても、
分からないことは山ほどあるものです。
ものごとは、ひとつの側から見てばかりいると、
おもしろくないし、広がらない。
この本の中には、なるほどねぇと思うことが
散りばめられていて、
読み終えると、なんだかいつもの毎日が
新鮮に思えてくるのです。
佐藤さんの無駄がなく温かい文とともに、
写真やイラストもたくさん載っていて
ページをめくるのが楽しい。
親子でたのしめそうな本でもあります。

15『毎日っていいな』吉本ばなな

必死になって文字を追い、
ページをめくる(終わるまで、寝つけもしない)
推理小説とはちがい、
どこから読んでも、ほのぼのあったかい気持ちになる、
こんなエッセイ集はありがたいものです。
毎日っていいなと思うとともに、
家族っていいな、
友だちっていいなとも思わせてくれる、
そんな本。

16『私の住まい考』有元葉子

家の下見に来た時に、そこを借りようと決めたのは
ピアノとバイオリンの音が聞こえてきたから。

いつだって自分に正直で、
自由に生きる有元さんの「住まい」の考え方。
押しつけがましさなんて1ミリもなく、
読むと自分まで風通しがよくなるのです。

17『ゆるい生活』群ようこ

体の不調から、漢方の薬局に通いはじめた群さん。
「みんな食べる物に
興味がなさすぎると先生はいつもいう。
何が流行か何が安いのか、
どの店が人気あるのかには興味あるのに、
その食べ物の質までは考えていない。」
先生とのやり取りの中から、
毎日、口にするものに気をつけ、
自分の体の声に耳を傾けて‥‥。
微妙な年頃にさしかかった人も、
またそうでない人にも読んでほしい。
だって自分の体は自分で作るしかないのだから。

18『こうちゃん』須賀敦子/酒井駒子

文と絵が、交互に、時には合わさって。
大事に作られた本ということがよく分かる、
すてきな一冊です。

「なんだ、きいろのぷちぷちはおかしいだろう。
おみなえしだよ。」

21ページ目のこんな一文を読んでいたら、
本の間からきいろの何かが落ちてきました。
前の持ち主を感じさせるのが、
古い本のいいところ。
そのままお届けしますね。

(伊藤まさこ)

 サッカー少年の挫折。

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伊藤
大学を卒業されてから
編集者になられたわけですが、
10代のうちから、そうなりたいと
思っていらしたんですか?
河野
そのゴールは、決めていなかったですね。
大学のときに、改めて本と出会ったわけですが、
それをどういうふうに職業として具体化していくか、
というイメージはなくて。
大学‥‥6年いたんですよ。
伊藤
あら?!
河野
勉強が好きだったので‥‥本当ですよ。
それに、長くいたからといって怒られるところでもない、
とわかったので、ちょっと長めにいたんです。
でも、将来の選択肢は、そんなに多くなくて。
文学部だったし、学者になる道も考えました。
でも学者というのは、ひとつのことを、
コツコツ、コツコツやっていく仕事ですから、
向いてないと、ハッキリ思ったんです。
ではどういう仕事がいいのかな? と考えていたときに、
たまたまある雑誌で、中央公論の編集長が
仕事日記を連載しているのを読みました。
そこには彼の日常が書いてあって、
おもしろい本に出会うと、
著者を訪ねてあちこちへ行くんです。
うらやましくてね。
そこで話をしたことが翌月のプランに生きて、
会った人の著作にも反映されていくんだと知り、
そういう職業があるんだ、それが編集者なんだ、
ピーン! と思ったんです。
それで中央公論社っていうところに入りました。
伊藤
いきなり、編集者に?
大学のときは‥‥。
河野
サークルみたいなところで、
雑誌をつくってはいました。
何も知らないのに、最初から編集長で。
というのも、先輩がいなかったからなんですけれど。
伊藤
先輩がいないということは、
サークルを立ち上げたんですか。
河野
芥川賞作家も輩出していた由緒ある文学研究会が、
大学紛争で休眠状態になっていたんです。
でも、部室もあるし、名称も残っていた。
だから、それを復活させれば、誰かと集まって、
ダベったりするのに部室を使えていいな、と、
そんな考えで大学に申請したら、通ってしまった。
けれども
「有名無実じゃ困るので、
部としての活動を示してください」
って言われたんです。
「何をすればいいですか」
「たとえば同人誌をつくるとか?」
「じゃあ、つくります!」
みたいな形で、いきなり雑誌をつくることになりました。
どうやってつくるんだって、誰もわからないんです。
「誰か原稿書けよ!」
「書くやつ、いないよ」
「じゃあ、俺が書くか」
って。
伊藤
どんなものを書かれていたんですか。
小説を?
河野
小説を書く自信はなかったですよ。
エッセイとも評論ともつかないものかな。
伊藤
河野さんは、大学紛争の世代よりは‥‥。
河野
ちょっと下です。
なので文化系サークルも紛争でほぼ休眠状態。
僕よりちょっとあとに、野田秀樹さんたちが出てきて、
あらたに演劇活動を始めます。
僕の頃は、学生紛争の名残で、
内ゲバなんかもあったり、陰惨な感じがありました。
伊藤
その状態をどう思われたんですか。
河野
「何をやってるんだ?」と思ってました。
学生運動そのものが形骸化して、
セクト対セクトの憎しみだけが
残っているみたいでしたから。
いっぽうで、僕の属していた語学クラスは、
吹き溜まり中の吹き溜まりみたいなところで、
そっちのほうが、おもしろかった。
伊藤
吹き溜まりって‥‥、東京大学ですよね。
河野
そうなんですけどね、同級生20人で、
10人が女性なんですよ。これも珍しい。
しかもそれぞれが、かなりの個性派ぞろい。
10人の男も、僕が最年少。
大学に現役で入って来て
何も知らないっていうのは僕だけでした。
一番すごかった人は、昭和5年生まれで、
僕が28年生まれですから、23歳年上でした。
彼は中学を出て炭鉱で働いて、
そのうちいろんなことがあって
炭鉱の仕事に見切りをつけ、
そこから調理師をめざすんですよ。
調理師免許を取って、調理人になって、
料理本を出そうとしたのだけれど、
いくら自分ががんばっても、
人においしいところを持っていかれたりして、
そのことに彼はすごく憤ったんです。
そして、自分に学歴がないからだ、悔しい、と、
検定で高校卒の資格を取って、受験勉強をして
入って来たっていう人でした。
伊藤
すごい‥‥。
河野
日活ロマンポルノの俳優をやっていた、
っていう男もいたんですよ。
伊藤
!!!
そんな刺激は、高校を卒業したばかりの
十代の男の子には‥‥。
河野
もう、目が点になるわけですよ。
それから、もう、とにかくね、
見てくれからしてすごいやつがいて、
風体はミック・ジャガーみたいなんだけど、
小さいときに病気をして、足に障害がありました。
そいつがギターをかき鳴らして、
吉田拓郎の「人間なんて」なんかを歌うと、
もう誰も文句の言えない迫力だったんです。
さらに、1年、2年上の学年から
落っこちてきているのもいる。
そういうのが、ひしめいてるクラスでした。
そんな中にいるとね、
タテカン(立て看板)の前でがなってるやつらのコトバが、
本当に子どもっぽくて空々しく聞こえてしまうんです。
伊藤
その時代、河野さんが、
本をまた読もうと思ったきっかけは
何だったんですか?
河野
一番のきっかけは──、
そもそも、僕は高校に入ったとき、
将来就きたい職業は全日本サッカーチームの監督、
って書いたぐらいのサッカー少年だったんです。
それから高校3年になる昭和46年かな、春休みに、
当時の全日本のサッカーチーム、いまでいう日本代表が、
海外チームとの対戦を前に合宿をやります。
それを見たいと思ったんだけれども、
いまみたいに、インターネットも何もないから、
どこでやっているのかもわからない。
そうだ『サッカーマガジン』の編集部に
行けばわかるだろうと、
岡山から東京に出てきて、
神保町の近くにあった
ベースボール・マガジン社を訪ねるんです。
これが世に聞く神保町かと思って歩いたのを覚えています。
そして、練習場所を教わって、
その足で久我山にあったNHKグラウンドで、
代表チームの練習を見ます。
そこで当時の全日本のコーチや監督と
はじめて話をするんですよ。
それから、まだ
原宿と渋谷の間の岸記念体育館にあった
日本蹴球協会を訪ねて、
いろいろ資料をもらったりして帰ります。
そういう青春期なんですよ。
そうして大学に入ると、
僕の1年上の高校時代の先輩が
サッカー部に入っていたので、
有無を言わさず練習に来いって言われて。
伊藤
ええ。
河野
岡山県大会で優勝してインターハイに出たこともあって、
最初からきつい練習メニューでした。
たちまち入学後の健康診断で血尿、
要再検査といわれたんですが、
その頃は血の小便が出て一人前、みたいな、
そういう時代です。
こんなもんだと思いながら、やっていたんですね。
ところが、さすがにからだの調子を悪くして、
1カ月、入院しちゃうんですよ。
さらに悪いことに医療ミスが起きて、
七転八倒してるところに
高校のときのサッカー部のマネージャーが来て、
僕のあまりの苦しみように
「河野君が死んじゃう!」って大騒ぎして、
高校サッカー部のみんなが順番に
見舞いに来たぐらいだったんです。
伊藤
そんなドラマが‥‥。
河野
病院から出たときはフラフラ。
幽霊のようになって、
みんながサッカーをやってるのを見て、
どうしてもそこに戻ろうっていう気持ちが
自分の中に湧いてきませんでした。
ああ、自分は、そこまでサッカーを好きじゃないんだな、
これが才能の限界だなって、思ったんです。
それで、いずれ読もうと思っていた本の世界へ、
よしっ‥‥、と。
切り替えたら、今度はそっちに一直線。
そこからはね、もう、下宿にこもって、
夜じゅう起きて本を読んで、朝になって寝る、
そんな生活が始まりました。
伊藤
何を熱中してお読みになったんですか。
河野
そうだな‥‥最初に熱中して読んだのは
『安部公房全集』でしたね。
同時に日本の近代文学は
ちゃんと読んでおかなきゃと、
主だった作家の全集を順番に読んだんです。
だから、安部公房のような現代文学、
それから外国文学、3本立てでどんどん読みました。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

 深呼吸をするように。

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伊藤
今回「weeksdays」で紹介するのが、
SHOZO COFFEEの瓶詰の、
シロップ入りコーヒーエッセンスなんです。
牛乳で3倍に割ると、甘みのあるカフェオレ、
大人っぽいコーヒー牛乳ができます。
もうすぐ夏休みに入ることですし、
そんなおいしい飲み物と一緒に、
ゆたかな時間を提供するようなことをしたくって、
いっしょに古書を売ることにしたんです。
「たのしむ時間」ごとお届けするコンテンツにしたくて。
河野
なるほど。
伊藤
それで、長野県上田市にある古書店、
バリューブックスさんに協力していただいて、
本をあつめて、一緒に届けようということになりました。
以前「生活のたのしみ展」で河野さんがなさった、
「河野書店」
「出会う古本X(エックス)」という
企画がありましたよね。
包装して中身が見えないまま、
それがどんな本なのかはわからない状態で
短い解説文つきで販売をするという。
それに近いことを、100冊、やろうと思うんです。
河野
もしかして、100冊の解説文を、
伊藤さんが書かれるの?
伊藤
はい、1冊につき、200文字ぐらいですけれど。
河野
それはすごい。
ひとことでも、書くのは大変ですよ。
伊藤
でも、楽しいですよ?
河野
楽しいけど‥‥。
ひとつずつどんどん書いていくんですか。
それとも、ためらって、ちょっと脇に置いたり?
伊藤
ためらってる暇はありません(笑)!
河野
じゃあ、パッパ、パッパ、次から次へ。
それもすごい。
伊藤
本を読み終えた時、一番心に残ったことを
書き留めていきました。
仕事柄、献本いただくこともありますが、
お返事は全て、その第一印象を書きます。
河野
いやいや、短いひとことの感想って、
簡単なことではないですよ。
僕は本を頂いたら、とにかく早く
返礼を出すようにしていますが、
「本日貴著落掌」とか、そういう感じで、
感想を書くには至らないなあ。
伊藤
日々送っていただくから、
だんだんそれに慣れていき、
お礼をしなくなるのが嫌だなと思って、
とにかく、すぐ読んで、
すぐ返すようにしているんです。
河野
でも、それ以外の本もお読みになるわけでしょう?
伊藤
はい。本が好きです。
本のいいところって、急に知らない世界に、
ポイッ! って入れるところですよね。
魔法使いになったり、昔の世界に行ったり、
人の家に入って、食卓に加わらせてもらったり。
本を読むとそういうことができるのが、
すごくおもしろいなと思っていて。
世界には、それが無限に、
本の数だけあるわけじゃないですか。
河野
いま何気なくおっしゃってるけど、
本好きじゃない人って、その
「何にでもなれる」っていうところに、
最初の高いハードルがあるんです。
日常が重くあるから、
なかなか本の世界に飛び込めない。
それが本に対する苦手意識のひとつです。
伊藤さんは本の世界は無限にあるっておっしゃるけど、
飛び込みやすい世界はこれぐらい、っていうことを
決めている人が、多いんですよ。
本を読む人が減っているなか、
無限にどこにでもポンポン入って行けるっていう人が
さらに少なくなっているから、
伊藤さんはマイノリティ×マイノリティです。
伊藤
(笑)わたしが最近おもしろいなと思っているのは、
友だちの家に行って、
ヒョイって5冊ほど、本を借りてくることなんです。
えらばず、無差別に。
読んでいる本は人をあらわすなぁと思うと同時に、
本棚を見るのもたのしい。
予め、ちゃんと背表紙も揃えて、
見られてもいい本棚をつくっている人もいて、
性格が出るなぁと。
河野
並べる本の高さや色まで揃っていたりしてね。
伊藤
そう、誰に見られても胸を張っていられる本棚を
つくっている人もいますし、
本当に適当だなぁっていう人もいて、
本棚の設えひとつとっても、すごくおもしろい。
そんな人たちから借りる5冊は、
思いも寄らない、
知らない世界に連れて行ってくれるんです。
河野
それ、おもしろいね。
やったことなかったな、
人の家で5冊、バッと、っていうのは。
人の本棚には、興味がありますけどね、たしかに。
伊藤
ありますよね、やっぱり。
でも見られたくない人もいますよね。
その人の性格も、あるでしょうし。
河野
そのへん、どうですか? ご自身の本棚を、
訪ねて来た人に見られるのは?
伊藤
本棚は全然恥ずかしくないです。
というか、うちは、
どの扉を開けてもいいようにしています。
もちろん食器棚も大丈夫ですし。
河野
なるほど。本の入れ替えは
どれぐらいされてるんですか?
伊藤
本棚に入らなくなると、近しい人に
さしあげるようにしています。
洋服、食器、雑貨、ぜんぶそうしているんです。
河野
誰からも嫌がられない趣味ですね。
古本屋さんに来てもらうのではなく、
そうやってこまめに整理していく。
伊藤
「いったんあの人の手にわたったんだ」って思うと、
行き先がわかってうれしいんです。
河野さんもきっと、ご自宅の本の量、すごいですよね。
あふれた本はどうなさっているんですか。
河野
僕は20代から、決まった古本屋さんに
来てもらっているんですよ。
年に1回、年末に、5~600冊かな。
伊藤
えっ、1年に?!
河野
それを40年やってます。
伊藤
ご自身で買われる本も多いですよね。
河野
はい、新刊も古本も。
伊藤
読む時間はどうなさっているんですか。
河野
なんだろうな、
朝、深呼吸をするように。
伊藤
「深呼吸をするように」! わぁ!
河野
そんなカッコいい話じゃないですよ。
伊藤
その「深呼吸」は、
ちっちゃいころからされてたんですか?
河野
小学生のころは、夏休みなら、
早起きして、ラジオ体操に行く前に読むとか、
ラジオ体操から帰って来て読むとか、
そういう時間は持っていました。
でも午後は遊びに行っちゃって、
本なんか全然読まないし、
夜は疲れて8時半を回ると寝ちゃう。
ヘトヘトになるまで遊んでいましたよ。
男の子ですから。
伊藤
子どものころって、夏休みの宿題に
読書感想文がありましたよね。
それは得意でしたか?
河野
書き方が決まったものは好きじゃなくて。
読書感想文はこういうふうに書けば通りがいい、
っていうのがわかった時点で、嫌になったんです。
中学、高校のころは、
本当に本を読まなかったんですよ。
読みたい、という気持ちはありながら、
サッカーに明け暮れる毎日で、
本からは遠く離れていました。
だから夏休みは、とにかく一番薄い本を選んで、
読書に時間をなるべく割かないようにして、
適当な感想文を書いて提出していたんです。
でもね、いつか自分は本をすごく読むだろうな、
っていうことは、思い続けていました。
それで大学へ入ってからすこしして、
本ばかり読むようになったんです。
先日インタビューを受けて、
中高生のころのことを話したら、
「そのころは、まだ見ぬ恋人だったんですね、本が」
と言われました。
たしかに、そういうふうに言われれば、そうだなって。

撮影協力:
神田伯剌西爾
magnif

上田の古書店、VALUE BOOKSのこと。

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今回「weeksdays」で「こんな本がいいな」という
伊藤まさこさんのリクエストを受けて、
100冊の本をあつめてくださったのが
上田の古書店、VALUE BOOKS。
彼らの倉庫は、巨大な図書館なみで、
その蔵書数は、なんと183万冊。
ほんとうに「ありとあらゆる」本が
集まってくるのです。

インターネットで本を売買する、
その仕組みごと開発をしたのが、
VALUE BOOKSの若き社長である中村大樹さん。
中村さんはなによりも本が好きで、
「人と、本が、出会う機会をつくりたい」
と考えたことが、起業のきっかけだったといいます。
本を通してくらしが豊かになることを、
まっすぐに信じているのですね。

古書に定価はなく、「市場価値」で取引されます。
みんながほしいのに数が少ない本には高値がつき、
とても有名なベストセラーでも、
あまりに流通している数が多いと安く、
ときには「古書としての価値がない」と判断されることも。
その価格は、本の内容や文化的な価値とは、
ほとんど関係がない。
なんともふしぎなことですが、
中村さんは、市場価値がつかなくても、
それが「いい本」であれば、廃棄をせず、
きっと読み手がいることを信じて、
老人ホームなどの施設や学校に無償でとどけたり、
上田市内の直営店で、うんと安い価格でおすそわけを
したりしています。

そんなVALUE BOOKSに、「選書」の仕事をしてきた
編集者の飯田光平さんが参加したことから、
「本のある暮らし」の提案は、
VALUE BOOKSの得意科目のひとつになりました。
上田市内にオープンしたカフェ併設の古書店「NABO」(ネイボ)は、
おいしいコーヒーやお菓子をたのしみながら、
テーマごとにつくられた棚をめぐって、
本をさがすことができるお店です。

▲飯田光平さん


今回、伊藤まさこさんのリクエストに
応えてくださったのも、飯田さん。
「夏休みに、おいしいカフェオレといっしょに
時間をすごす本」というテーマ、
そして伊藤さんの読書の傾向をみて、
「えっ、そんな本があったの?」
「知っていたけど、読み逃していた!」
そんな本があつまりました。

ラインナップは、すべて、「weeksdays」の
コンテンツで、伊藤まさこさんのコメントといっしょに
紹介をします。
どうぞ、おたのしみに!

SHOZO COFFEEのカフェオレベースのこと。

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カフェオレベースは、
2年前ぐらいから展開しています。
お家でもおいしいカフェオレを
たくさん飲んでいただきたいなと、
つくったアイテムなんです。

カフェオレに使うコーヒーは、
濃いほうがおいしいのですが、
ふつうにお家でドリップコーヒーを淹れると、
牛乳で割ったとき、コーヒーがうすくなってしまう。
フランスやイタリアのように
機械で圧力をかけて抽出した濃いコーヒーを
たっぷりのミルクで割ればおいしいのですが、
それを家庭で再現するのは難しいですよね。
やっぱり気軽にお家で
おいしいカフェオレを飲んでほしいという思いが
ずっとあって、その一つの答えが、このアイテムです。
もともとSHOZO COFFEEが
カフェオレで出している斉藤珈琲の豆を使って、
お店の味を再現できるよう、開発したものです。

ちょっとお砂糖が入ってるほうが
カフェオレはおいしいという思いがあって、
3倍の牛乳で割ったとき、甘すぎず、
ちょうどいい按配になるように
砂糖の分量を調整しています。
「小っちゃいころ好きだったコーヒー牛乳の、
大人っぽい感じ」と言ってくださるかたもいます。

ミルクを替えると、味も変わりますから、
脂肪分の濃い牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、豆乳、
いろいろ試していただけたらと思います。
ちなみにSHOZO COFFEE STOREでは
市販の乳製品メーカーの無調整の牛乳を使っています。

容量は、275ミリリットル。
3倍の牛乳で割るので、
できあがる総量は1100ミリリットルという計算です。
でも、コーヒーをほんのちょっとにして、
ほんのりコーヒーの香る
アイスミルクにしてもいいですよね。

アイスカフェオレだけじゃなく、
ホットカフェオレにも、もちろん使えます。
少ない量だったら常温のコーヒーに
温かいミルクを入れて、
ちょっと多めに作りたいときは、
最初から混ぜて温めてもいいですよ。

お水で割って甘いアイスコーヒーにしたり、
そこにアイスクリームをいれて
コーヒーフロートにしたり、
コーヒーゼリーやコーヒー寒天にも。
コーヒーゼリーなら生クリーム、
コーヒー寒天ならこの原液を黒蜜がわりにかけるとか。
もちろん、アイスクリームにかけてもおいしいですよ。

(談)

SHOZO COFFEEのカフェオレベース

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本とカフェオレ

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夏休みにしたいこと。

ちょっと手の込んだ料理を作ってみる。
昼寝をする。
食器棚を片づける。
手紙を書く。

書き出してみたら、
家の中でしたいことばかり。
「家でのんびり」って、
時間がある時じゃないとなかなかできないものだから。

中でも一番したいこと、
それは本を読むこと。

あの人に借りた本、
買っておいたのになかなか読んでいない本、
読むといいよとすすめられた本、
久しぶりに読み返したい本もあるなぁ。

ソファで、
時にはベッドの上でごろごろしながら。
日がな一日、本と向かい合っていたい。
そこにひんやり冷たいカフェオレがあったら、
最高です。

今週のweeksdaysは、
SHOZO COFFEEのカフェオレベースと、
1冊ずつえらんだ古書をセットにしてお届けします。

コンテンツは
ほぼ日の学校長、
河野さんとの本談義と、
100冊の本の解説を毎日少しずつ。

あなたの夏休みのおともにぜひ。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月11日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

ma.to.wa キャミソール


▶︎商品詳細ページへ

パリのオペラ座の衣裳室出身という
ユニークな経歴をもつデザイナーの惠谷太香子さんが、
この素材と出会って立ち上げた下着ブランド
ma.to.wa(マトワ)の製品です。
シルク100%素材を、糸の段階で
家庭で洗濯のできるウォッシャブル加工をほどこし、
リブ素材をつくって立体縫製したキャミソールです。

「着心地のよさはもちろんですが、
なんともいえない上品な色合いも気に入っています。
weeksdaysのオリジナルカラーは、
ピンク寄りのパープル『モーブ』。
モカ、ネイビー、モーブ。
繊細な色合いは日本人の私たちの肌に馴染みます。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa キャミチュニック


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脇に縫い目のない、丸胴仕上げ。
縫い目が肌に当たらず、
ストレスフリーで着用いただけます。
胸元はスッキリ見せるVライン。
そこにシンプルでやわらかな
ポリエステルのストレッチレースをほどこしました。

「このキャミチュニックは、
かなり深めのVネックなので、
胸元から下着がちらりと見えてしまう心配がいらず、
安心して身につけることができます。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa Vネック長袖


▶︎商品詳細ページへ

脇に縫い目のない、丸胴仕上げ。
縫い目が肌に当たらず、
ストレスフリーで着用いただける、
シルク100%のVネックの長袖下着です。
袖のパターンも、体型を気にせず、
ぴたりとやさしくなじんで着用いただけるかたちです。

「薄手なので表に響かない。
襟ぐりが広いので、服の下から下着がのぞいてしまう、
そんなこともありません。」
(伊藤まさこさん)

ma.to.wa ショーツ


▶︎商品詳細ページへ

脇に縫い目のない丸胴仕上げで、
ヒップをすっぽりつつむ安心丈。
縫い目が肌に当たりませんから、
ほんとうにストレスフリーで穿きやすい。
足口にゴムを入れていないので、
鼠径部、リンパを圧迫しません。
ショーツの内側のマチもシルク100%です。
この重ね部分は、フライス素材を使っています。

「歩いたり、座ったり、横になったり。
毎日、私たちはいろんな体勢ですごしますが、
そんな時に体に窮屈なショーツを履いていると、
とてもつらいものです。
今回のマトワの下着は、横に縫い目がないので、
肌への負担がとても少ない。
身につけると、はいていることを感じさせず、
一言で言うと、
まるで空気のような存在。
また、着る人の年代を問わないデザインもいいところ。
80代の母や、年頃の娘にも、喜んでもらえそうです。」
(伊藤まさこさん)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

全アイテム、サイズは「M」と「L」の2種類。
製品の性質上、お客様都合での返品ができませんので、
各ページのサイズ目安表を参考にお選びください。

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期間中配送手数料無料! 「weeksdays」は
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6月30日(日)午前11時から
7月16日(火)午前11時まで開催している
ほぼ日ストアお買い物応援キャンペーン。
この期間中にご注文いただいた商品について、
配送手数料(通常:756円税込)、
代引き手数料(通常:216円税込)、
ラッピング手数料(通常:500円税込)が無料になります。
「weeksdays」のアイテムについても
適用となりますので、
ぜひこの機会をご活用くださいね。
くわしくは、特設ページをごらんください。

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かごの使い方

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かごに花を生け、
部屋の片隅に。
浅めのガラスの鉢などに水を張れば、
かごや花の色をじゃませず、すっきりします。

花器の代わりに、
かごを使うと、
軽やかそして涼やかに。

きちんとした着物姿にも似合うかごですが、
ほらこの通り、ワンピースとの相性だっていいんです。

ハンカチとお財布と、電話。
必要なものをぽいと入れて、
ちょっと買いものへ、なんて時にぴったりでしょう?

少し藍を感じさせる深めのネイビーのワンピースに、
サンダル。
夏にはこんな姿もいいものです。

深めのかごには、季節のフルーツや野菜を入れます。
なんといっても風通しがいいし、
床に置けば、中に入れたものが一目瞭然。
今日は柑橘とそれに似た色合いのメロンをひとつ。
かごは外から見た目も大切ですが、
内側の風景だって大切なのです。

平たいかごはタオルと着替えを入れて
いざ温泉へ!なんて時にも重宝します。
雑誌とお財布入れて喫茶店、とか
ワインとチーズ入れて友だちの家へ、
なんて夢が広がります。

(伊藤まさこ)

別府のかご

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繊維が緻密で曲げに強いとか、
水切れがよく弾力があるとか。
育った地域によって、竹の個性はいろいろ。
それぞれの素材の持ち味を生かした
ひごの取り方や編み方はそれこそ千差万別です。
作る人の工夫と知恵のかたまりのような竹細工は、
知れば知るほど奥が深いのです。

そんなに好きならばと、
いつだったか通い始めたのが竹細工教室。
好きが高じて‥‥とはよくも言ったものですが、
自分で編めば編むほど、
手強く、難しい。
職人さんがいかにすごいかを思い知った経験でもありました。

竹には根曲がり竹や篠竹
(こちらは寒さの厳しい土地で育ちます)、
真竹などいくつか種類がありますが、
私が通っていたのは、真竹を使って編む教室。
質実剛健なイメージの根曲がり竹とはちがい、
その姿はすらりと端正。
お茶の道具などはもちろんのこと、
ざるやかごなどの暮らしの道具までもが
すっきりきれいなのです。

▲別府で出会った真竹細工。

さて、その「真竹」ですが、大分県別府市が
有名な産地のひとつです。
そもそもは日本書記の昔から伝えられ、室町時代に産業化、
江戸時代には別府温泉にやってくる湯治客の土産物として
広がったのだそう。
別府で作られる竹細工は、
国から伝統工芸品として指定を受けている
技術としても知られています。

▲別名「白竹」とも呼ばれる真竹。
 こちらは、職人さんの手によってていねいに整えられたひご。
 これから様々な竹細工が作られていきます。

街を歩いていると、
あ、あそこ、あれ? ここにも! といった具合に、
竹細工を並べるお店が見つかります。

日本では唯一の竹工芸の訓練支援センターがあり、
今ではずいぶん減ってしまったと言いますが、
真竹を細工するため、
白竹に加工する「製竹所」もある別府の街。
その製竹所の方に、
「竹ってどんな存在ですか?」とうかがった時、
「いつも身近にあるから空気みたいな存在だねぇ」
そうおっしゃっていたのがとても印象的でした。

今回ご紹介するのは、
熟練した職人さんの手によって作られた別府のかご5種類。
きちんと編まれた白竹細工は、
何十年も長持ちし、
使えば使うほど、
いっそうつややかに、
いい味わいに変化していくそうですよ。

(伊藤まさこ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『白いもの』(マガジンハウス)、
およびその前身である「ほぼ日」の連載
「白いもの」の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

戸隠のかご

未分類

慶長7年、戸隠村の徳武利左衛門という人が、
根曲がり竹の伐採を許可され武細工を始めた‥‥
そんな言い伝えが残る、戸隠の竹細工。
400年以上も前から作られ続ける、
戸隠を代表する工芸品です。

寒さの厳しい戸隠の山奥に自生する根曲がり竹は、
繊維が緻密で曲げに強く、かごなどを編むのに適した素材。
さらに、水に強く水切れもよいことから、
土地の名産品でもある戸隠そばを盛る蕎麦ざるが
多く編まれてきたのだとか。

私がはじめて戸隠をおとずれたのは、10年以上も前の夏。
野尻湖に遊びに行った帰り道、
「ちょっと寄ってみようか」ということになったのでした。

戸隠神社を背に、坂を下って行くと
そう広くはない道の両側に、
かごを売る店が立ち並んでいます。
蕎麦ざるはもちろん、
信州の郷土料理の「とうじそば」に使う
とうじかごと呼ばれる持ち手のついた小さなかごや、
茶碗かご、手さげかごなど、
根曲竹を使った竹細工がたくさん。
かご好きの血が騒いだのは、
言うまでもありません。

▲我が家のざる。丈夫で長持ち。10年ほど使っていますがへこたれません。

道をはさんで、
あっちへうろうろ、こっちへうろうろするうちに、
見つけたのが、手力屋という店。

そこで長年にわたって竹細工を編んでいるのが、
中川綱昌さんです。

中川さんの編むものは、
どれもかぎりなくシンプルで、
使い勝手がよく、
今の私たちの暮らしにちょうどよい。
なんだかいいなぁ。
そう思ったのがきっかけで、
まずはざる、次はかご‥‥
という具合に増えていったのでした。

今回weeksdaysで売る手つきのかごもそのうちのひとつ。
細長いめずらしい形ですが、
書類を入れたり、パソコンを入れたり、
新聞を入れたりと、なかなかに使い勝手がいい。

じつは同じ形のかごを持っている知人がいるのですが、
(なんと今から50年も前、
中川さんのお父様が編まれたかごらしい)
今でも現役とか。
その話をすると中川さん、
「根曲竹はとても丈夫なので、
大事に使えば長持ちしますよ」
とにっこり。

使えば使うほど、味わいが出る。
育てがいのあるかごなのです。

(伊藤まさこ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
[編集部より]
今回のレポートは、伊藤まさこさんが自著
『信州ハンドクラフト手帖』(信濃毎日新聞社)
『松本十二か月』(文化出版局)2冊の製作時に
取材した内容をもとに、構成しています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

日本のかご

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美人ぞろい

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ああ今日はからりと晴れたなぁ。
そんな日には、風通しのよい場所に
持っているかごをすべて並べて、
深呼吸させます。
風が通ったかごは、
清々しくて気持ちいい。

時々こんな風に虫干ししては、また使って。
毎日の暮らしに、
または出かける時も、
かごは私にとってなくてはならないものになっています。

こうして一緒に過ごしてきた我が家のかごは、
どれもこれもなかなかいい味わい。
かごがある分だけ、
思い出もつまっていて、
愛着もひとしお、というわけ。

たくさんあるからもういらないんじゃない?
なんて言われそうだけれど、
いいかごを見るとついつい欲しくなっちゃう。
今週のweeksdaysは、
そんな魅力的な竹のかごをご紹介。

どれもこれも、
ていねいに編まれた美人ぞろい。
使って、時々手入れして、また使って‥‥
少しずつ変化するかごの様子ごと
おたのしみください。

再入荷のおしらせ

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完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
7月4日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。

サロペット(ネイビー)

サロペット(ブラック)

今回の入荷分から、肩紐の長さと着丈を若干短くして、
小柄な方にも着やすい丈に調節できるよう、改良しました。

▶商品詳細ページへ

こちらは、他のアイテム同様、
fog linen workの店舗で試着いただけるようになりました。
詳しくは店舗までお問い合わせください。
[お問い合わせ先]
■fog linen work ☎︎03-5432-5610 公式サイト

※こちらは、weeksdays限定商品となりますので、
店舗ではお買い上げいただけません。
※2019年9月末ごろまでの期間を予定しています。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

今回のサロペットは、
発売の前に「生活のたのしみ展」にて、
多くの方にご試着いただける機会に恵まれました。

「気持ちいい」とか
「らくちん」とか、
「軽いですね!」とか。
みなさまに、
たくさんの感想をいただきました。

中でも一番うれしかったのは、
「気になるアイテムだったのですが、
なかなか勇気が出なくて。
でもこれなら大人も着られますね」
とおっしゃるお客様がとても多かったこと。

そう。
パンツ部分に生地をたっぷりとったので、
一見、キャミソール型のロングドレスのようにも見える。
ネイビーと黒というシックな色合いも、
「大人が着るサロペット」になった
理由のひとつかもしれません。

もちろん大人だけのものではなく、
「親子で着ますね」という方もたくさん。
大人には大人の、
若い人には若い人なりの、
リネンのサロペットの着こなしを、
どうぞおたのしみください。

(伊藤まさこさん)

家の中に居場所をつくる。

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伊藤
この消火器は、
どういうところに置かれることを
推奨しているんですか? 家の中で。
北里
今回、新しい取説でも提案をしてるんですが、
家の中で、みんなが共通で生活する場所ですね。
伊藤
つまり、おとうさんの部屋にあればいい、
じゃなくて、全員が行き交い、
目にする場所に置きましょうという提案ですね。
北里
よく言うのは、リビング。
そして玄関です。
伊藤
絶対に全員が通る場所。
北里
みんなすぐに取りに行けますし。
伊藤
へぇー。
そういったことも含め、
取説も充実していますね。
北里
普段はもっと文字ばかりの事務的な取説なんですけど、
今回、今城が1からリニューアルしてくれたんです。
いま、この取説になってるのは、
この消火器だけなんですよ。
ほかは文字しかない。
──
すごいことですね、それは。
読む気になるか、ならないか、
大きいですよね。
今城
いままで「置いてはいけない場所」は
書いていたんですけど、
「どこに置けばいいのか」は書いていなかったんです。
きっとみなさん、あまりイメージできないだろうなと、
おすすめの場所を載せることにしました。
伊藤
なるほど。
北里
リビングとか玄関に置いて、
家族みんながあそこにあるって
知っていてもらうことがすごく重要です。
お母さんが勝手に隠しちゃうって、
けっこうリスクなんですよ。
お母さんがいなかったときにボヤが起きて
消火器どこだっけ、ってなっても遅いので。
伊藤
発売されてどれくらい経つんでしたっけ。
北里
2019年1月の発売ですから、
まだ半年ですね。
伊藤
買われたお客様からは
なにか反応がありましたか。
北里
ぼくらもうれしかったのが、
私はこうやって置いてます、みたいな写真を
インスタグラム出してくださったり、
友だちの新築祝いであげた、
という人がいたりしたことです。
やっぱりこの消火器にしたからこそ
出てきたアクションなので、
すごくうれしいなと思いました。
伊藤
消火器って一般家庭に
どのくらい普及しているものなんですか。
北里
業界調べで言うと、
だいたい4割ぐらいの家庭が
持ってるということになっています。
伊藤
そんなに?
北里
その中で、期限があることを知らずに、
備え続けているものもあるんだと思います。
そういう期限切れのものも合わせて41%ぐらい、
それを抜いたら3割弱ぐらいと言われています。
そう考えると、消火器を持っていない家庭が
まだまだ多いですね。
ある程度、きちんと家の中の火災を予防しようと思ったら、
消火器を置いてほしい、というのは、
メーカーとしての姿勢なんですけれども。
伊藤
何も起こらないのがいちばんだけれども、
何かのためにというのが安心ですもんね。
地震とか多い国ですし。
北里
おっしゃるとおり、ほんとに。
最近増えてるのは電気の火災です。
タバコ吸わなくなりました、とか、
オール電化だから安全だと
安心してもいられないんですよ。
最近、ガスコンロの火災よりも増えているのが、
タコ足の配線に起因する火災ですから。
伊藤
埃がたまりがちですものね。
北里
電気しか使ってなくても、火はおこるんです。
そのための備えってやっぱり必要です。
伊藤
ほんとですね。
火災なんて、みんな自分とは
関係ないと思っているかもしれませんけれど。
北里
関係ないと思っていても、
この消火器だったら、まぁ、置いてみてもいいかな?
って考えてくれる人が増えるといいのですが。
あとは、さっき言ったように、
期限切れのものをそのまま置いている人たちが多いので、
この消火器は、購入日と、使用期限を、
お客さん自身が書けるように、
アクセントとしての
使用期限は本体のラベルの下のところに
書いてはあるんですけど、
タグにして、ちょっと目に入るようにすることで、
最初に意識付けをしていただこうと。
デザインのアクセントでもあるし、機能でもある。
いままで業界的にもやったことがない
取り組みの一つです。
今城
こういうのを付けるという感覚は
これまでの消火器の中になく、
工場のラインもそういうふうにはなってなかったので、
このタグ1つ付けるだけでも、
生産の工程にけっこう影響が出るため、
立ち上げるときは大変でしたけど、
結構アクセントになって、
これの応用も、これからいろいろしていきたいなと
思っているんです。
伊藤
へぇ!
北里
こういうものが付いてることも、一つの特徴ですし、
これだったら買ってみようと
能動的になってもらえる仕組みになれば
すごくいいなぁと思っています。
それこそ、プレゼントとして、
消火器をあげるということを
ひとつの文化にできたらすごくいいな、
ということも思っています。
これだったら可能性があるんじゃないかと、
少しずつ模索しながら広げていくという感じです。
伊藤
なにをあげていいか迷う人いますよね。
なんでも持ってるし、
いいもの知ってるし、みたいな。
そういうときに、すごくいいと思います。
北里
たしかに、さっきおっしゃったように、
2本来たり、3本来たり、
流行って3本来ちゃったら大変だなってなるんですけど、
それだったら、1部屋に1本ずつ置いといてもらえたら
いいだけなんですけど。
──
ペイ・フォワードの考え方で、
持っている人は持っていない人に
渡すというのもいいですよね。
北里
持ってないんだったら、どうぞって。
白って挑戦だけど、
そういう意味でも、
いちばん象徴的になるだろうなと
思ってはいたんですね。
それをほんとに、
すごくうまくデザインに落とし込んでくれた。
ぼく含めて3人のチームで
このプロジェクトを立ち上げたんですが、
残り2人は女性なんですけれど、
彼女たちも、やっぱり、
消火器というものを家の中に置くということを、
一緒に考えてきた仲間なんです。
うちの会社は、こういう住宅用消火器以外は、
一般のご家庭向けの商材をあまり作っていないので、
これから、ぼくらがこのブランドで
次に展開していくようなものもふくめ、
もっとやっていきたいなと思っています。
伊藤
次はどんなことを考えてるんですか?
北里
防災の製品って、家の中で
居場所がなかなかつくれないし、
買ったあとも追いやられてしまうケースが多いので、
今回の消火器と同じように、
防災の居場所をつくるということを
やっていきたいと思っています。
それは、物かもしれないし、
どういうところに置いたら、
どうやって運用したら、
家の中で防災を取り入れやすいか、
っていう提案かもしれません。
伊藤
これさえ持って出れば安心みたいな防災セットとか?
北里
よく言われますよね、防災セット。
あれも、買って安心というわけでもなく、
どういうところに置くのか、何を入れるのか、
自分の家族にそれは適しているのか‥‥。
お子さんがいるのに、
大人のものしか入ってないとか、けっこうあるので、
そういうことをぼくらの視点で
デザインしていけたらいいなと思っています。
でもやっぱりね、まずはこの消火器を成功させないと!
伊藤
まだ成功とまでは言えない?
北里
まだまだこれから、という感じだと思います。
伊藤
まだ半年ぐらいですもんね。
知ってもらうのが大事ですよね。
北里
そうなんです。
なので、ほんとにありがとうございます、今日は。
伊藤
いえいえ、こちらこそありがとうございました。
知っているようで知らないことばかりでした。

デザインのトライ&エラー。

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北里
実は、モリタ宮田工業の「宮田」は、
もともと消火器以外に自転車もつくっていた会社なんです。
つまり塗装技術が会社にあったので、
いろいろな試作ができたんですね。
前身の住宅用消火器・キッチンアイをつくっていた時期は、
それこそ、アップル社がカラフルなコンピュータや
デバイスを出していた時期と近かった。
そんな時代背景もあって、
カラフルな消火器になったんだと思います。
そのあと、「+maffs」というブランドをつくるにあたり、
いまのライフスタイルに合ったものは?
と改めて考えたときに、
いま自分が使いたいデザイン家電のような
イメージがいいな、と思ったんですよ。
いま、家電製品はどんどんデザインが
よくなっていますよね。
伊藤
なるほど!
北里
そういう家電のデザインが好きだったというのもあって、
やっぱり、白いものをつくりたい。
さらに、白ならラメよりはマットがいい。
ツヤッとした塗装で塗るほうが
社内的には得意なんですけど、
わがままを言って、マットな塗装にしてもらいました。
伊藤
試作は何度も?
北里
試作、しまくりました。
今城
もうほんとうに何回も!
この塗料が粉体塗装、粉の塗装、
粉を吹き付けて焼いて、
塗っていくものなんです。
そういった塗装のほうが、
有機溶剤などの有害なものを使わないという意味で、
社内的にも、環境を配慮して選んでいるんですね。
ところがその粉体塗装でのマット塗装が
けっこう難しいんです。
つや消しの度合いにも何分艶(なんぶづや)とか、
けっこう段階があるんですが、
このようにほんとに艶なしっていう状態にするには、
むらなく均一にやっていかなきゃいけない。
そのためには工場のラインの整頓も大事だし、
焼き付け温度なども調整しなきゃいけない。
それで何回もトライしたんです。
北里
何回も、この色じゃないって。
色あいもそうだし、質感もそうだし、
というところの大変さがありつつ‥‥。
ぼくら、白いものって、
つくったことがなかったので。
伊藤
そうだったんですね。
北里
だから、うちの工場は。
単純に白っていうワードが出ただけで、
「えっ?」ってなる人が、いっぱいいました。
ぼくはそのとき、無邪気に白がいい、
マットがいいとか言ってましたけど、
実際に工場のラインを見て、
そこでどうつくられてるかを見ると、
いかにたいへんなことかを理解したんです。
たとえば汚れが付いたときに生産効率が悪くなる。
艶があれば、さっと拭いたら消えた汚れが、
こういうマットの塗装だと消えないんです。
でもぼくも譲らなくて‥‥。
ほんとに工場の皆さんごめんなさいと思うんですが、
「世の中に、マットのものが
こんなにいっぱいあるんだから、
できないわけないですよね」
みたいに言っていました。
でも、ほんとに現場でしっかり調整してくれました。
伊藤
ある方向から見ると完全に真っ白なんですよね。
じつはその反対側は、必要な説明書きがたくさん。
北里
そうなんです。ふつうの消火器って、
前から見たときに、必ず、
何かしらのグラフィックが載ってるものなんですよ。
それは今城が、最終的に提案してくれたんです。
消火器ってすごく厳密に規格が決まってるんですよ。
それをクリアしつつ「真っ白」という印象にできたのは
ひとえにデザインの力です。
伊藤
ここの色はこれじゃなきゃダメとか、
ここの表示がなきゃダメとか、ですよね。
北里
そうなんです。正面のゲージを基準に、
そこから何度までのところに説明を
書かなきゃいけないっていう決まりがあって。
でもこれほんと必要な表示事項を全て載せた上で、
一番ぎりぎりのラインを狙って、
後ろに配置するように、してくれて。
伊藤
それでも読みにくいということはなく、
必要なことがきちんと書かれているので、
使うときに困らないように思います。
安全栓のピンを外してレバーを握れば噴射、
というシンプルなことですもんね。
北里
そうですそうです。
伊藤
ピンがあると抜きたくなっちゃうんですけど、
使わないのに、抜いちゃ、ダメですよね。
北里
はい、ダメです(笑)。
たしかに抜いちゃダメって言われると
抜きたくなっちゃうんですよね(笑)。
安全栓のピンが刺さっていれば
どれだけ握っても消火剤は出ないんですけど、
ピンが抜けた瞬間に、
指2本でかるく握っただけで出るんですよ。
伊藤
押してる間だけ消火剤が出て、
手を放せば止まるんですか。
北里
そうなんですよ、
ゲージがついてる消火器は、
放せば止まるという仕組みが付いてます。
ゲージがついてない消火器は、
一回握ったら、放しても止まらないです。
ちなみに10年ぐらい前につくられてる消火器って、
1回握ると止まらないという仕組みのものが多いです。
伊藤
ちょっとしたボヤで、すこしだけ使ったと。
で、まだ残ってるとしたら、
また使っていいんですか。
北里
これはですね、使えないです!
なぜかというと、
タンクの中に圧力が入ってるんですね。
スプレーと同じように。
で、1回握ってしまうと、
どうしても気体って抜けやすいので、
どんどん抜けちゃう。
液体は出なくても、気体だけが
少しずつ出ていってしまう可能性があって、
そうすると、いざというときに使えなくなってしまう。
だから、1回抜いたら、全量使ってください、
もしも途中で残った状態になったら、
とっておかずに、交換してください、
というのが原則なんです。
伊藤
白い消火器って、新居祝いとかにもいいですよね。
北里
ありがとうございます。
そうなんですよ。
そうしたいんです。
母の日とかもいいと思いますし。
──
これ、パリで、泊まったアパートの写真です。
白い消火器があって。
北里
あ、かわいいですね。
伊藤
かわいいー!
──
古い木や石のインテリアに、
すごくきれいに合っていました。
これが赤だったらやっぱり違いますよね。
北里
海外の消火器は規定がちがうので、
デザインが比較的自由度が高いんですよね。
伊藤
日本でも、消火器のカバーをくふうして、
インテリアになじむようにしていた
ホテルがありました。

▲ふだん伊藤さんは、キッチンのかたすみに置いているそう。

北里
消火器って、新しいビルだと、
壁の中に隠してしまうことが多いんです。
ポンと外に消火器を置くと、
存在感がどうしても出るので、
こういう工夫をされているんですね。
ぼくらもぜんぶの消火器が白になればいいと
思ってるわけじゃないんですよ。
伊藤
そうですよね。そこは規制で赤のままがいいと思います。
たとえば、マンションの廊下に
白や青の消火器があっても、
おばあちゃん、わからないかもしれないし。
「見慣れてるもの」かつ「目立つもの」でないと。
北里
アイコンとしての赤、黄色いピン。
日本の業務用消火器は、ぜんぶその色なんです。
使い勝手にも共通の決まりがあるから、
メーカーによって変わることはありません。
どのメーカーの消火器を使っても、基本的には同じ性能。
それは安全をみんなで均等にするためという意味では
すごくいいんですけど、
それじゃあ家の中には置きたくない、ってなったら、
逆に言うと、何も火を消す手立てがなくなる。
それよりは置いてもらうということを優先したいよね、
見えるところに置いてもらえるようにしたいよね、
──この消火器をつくるにあたり、
そのことを強く思っていました。

家庭用であるために。

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伊藤
「防災をライフスタイルに。」
という「+maffs」(マフス)の
ブランドコンセプト、すばらしいですよね。
北里
ありがとうございます。
でも、いまから防災をライフスタイルにしてください、
っていうことは難しいですよね。
みなさん、好きなライフスタイルが、
それぞれあるわけですから。
でもライフスタイルと防災の、
気づかないような接点をぼくらが提案して、
防災というものに少しずつ興味を持っていただけるような
取り組みをしたいよね、っていうのが、
「+maffs」というブランドのコンセプトです。
インテリアに好みのスタイルがあるかた、
自分の中に好きなものしか置かれてないかたがたが、
安全のためだから、って言って、
赤い消火器をドンと置くのかっていったら、難しい。
自分たちが住み、大切にしている生活の空間に
マッチングする消火器だったら、と。
伊藤
たとえば、電気炊飯器のかわりに
鍋を使うことはできますけれど、
消火器のかわりは、ないですものね。
北里
はい、そうですね。
天ぷら鍋に火柱が上がったら
マヨネーズのチューブをそのまま入れると
火が消えるという都市伝説がありますが‥‥。
伊藤
マヨネーズ?
北里
もちろんやっちゃダメですよ!
ただ、そう言われている理論はあって、
天ぷら油って360℃ぐらいで自然に火が点き、
温度が下がると火が消えるわけです。
だからマヨネーズをボトルごと天ぷら油に入れると、
熱でまわりの容器が溶けて中身が出て、
油自体の温度が下がって、火が消えます、
っていうのが理論なんですね。
伊藤
それは有名な話なんですか?
北里
はい、広く言われているんじゃないかと思います。
でも、みなさんのおうちのご家庭のマヨネーズが、
常にフルでパンパンな状態なわけではありませんよね。
伊藤
じゃあ、そういうのをつくったら‥‥?
マヨネーズ型のポイッって入れるだけの、
天ぷら鍋用の住宅用消火器。
北里
そのまま鍋に入れられるサイズの消火剤ですね。
でも思うのは、燃え上がる火柱に近づいて、
チャポンって入れられるのだろうか‥‥。
伊藤
たしかに怖いですよね。
いざ火災が起きたとき、
誰もがその冷静さを持っているわけではない。
火柱が上がって天井に延焼していたりしたら、
それを見てパニックを起こしたり、
投げたら火の向こう側に行っちゃって
どうしようもなくなったり‥‥。
考えると、こわいですね。
北里
そうなったときに、やっぱり、
消火器メーカーとしては、
消火器をきちんと備えていただいて、
使っていただくのがいいと思うんです。
ちゃんと飛ぶので、離れていても大丈夫ですし。
熱を感じづらいところまで下がって消せる。
そこでパニックになるか、落ち着いて消せるかで、
被害の大きさが違いますから、
距離がとれるというのは大事なんです。
伊藤
そうですよね。
北里
機能的な説明ばっかりしちゃってますけど、
この消火器は12秒ぐらい出るので、
しっかり消火できます。
──
そういえばこの消火器には
「投げないでください」という
注意書きがありますね。
北里
消火器だと投げても火は消えないと
みんなわかっていると思いますが、
人は、パニックを起こすと、
何をするか予想がつかないので、
そういう注意書きを入れているんですね。
住宅用消火器は、
業務用消火器にくらべたら、
かなり扱いやすいんですよ。
だいたい赤い消火器って、
ホースが付いていますよね。
伊藤
たしかに!
でも住宅用は、ついていない?
北里
そうなんです。
業務用消火器って大きくて重いので、
本体を持って、ホースを火に向けて消すんです。
みなさんそれをイメージしないで、
安全栓のピンを外したら、
とりあえず噴霧レバーを握ってしまう。
ホースを持たないと、圧力で
くるくるくるって回っちゃったりするんです。
そうすると粉が部屋全体に飛び散る。
伊藤
ますますパニックを起こしそうです。
北里
そうなんです。そういうパニックって、
消火のときに起きやすいんです。
気が動転してしまう。
でも住宅用消火器は、安全栓を外し、
ノズルを火元に向けて噴霧レバーを握れば、
そこからまっすぐに消火剤が出ますから、
目標に向けて消火がしやすいんですね。
ただ、さっき言ったみたいに、
押入れの中に消火器を探しに行って、
持ってきて消す、という時間をかけたら、
火災は広がってしまいますね。
伊藤
それでいつも「そこに」置いて
いやじゃないものを、と考えられたんですね。
北里
はい。自分の生活と防災というものの居場所を
近くしてあげるための一つの方法論として、
消火器にもデザインとか、
調和性というものを求めていいんじゃないかって。
伊藤
なんで白だったんでしょう?
今城(デザイナー)
じつは、いろんな色を考えていました。
最初の展示会ではカラフルなものもあったんです。
伊藤
へぇー!
今城
ターゲットを30代の女性としていたので、
それを意識した色を選定したんですね。
そんななか、人気だったのがモノトーンでした。
そして「赤とはぜんぜん違う色合いにしたい」
というデザイン側からの思いもあって、
結果、モノトーンに抑えたんです。
北里
今回、伊藤さんが気に入ってくださったのは白ですが、
ぼくら、黒も出しているんです。
もうちょっと前からの歴史で言うと、
これの前身の住宅用消火器に
キッチンアイという商品があって、
10年前ぐらい前に出したんですが、
それは、ゴールド、シルバー、
レッド、グリーン、そんな色が
主力商品としてあったんですよ。
伊藤
戦隊ヒーローみたい。
北里
そうなんですよ(笑)。

押し入れにしまわれちゃった。

未分類

伊藤
「+maffs」(マフス)の白い消火器を知ったのは、
ライターの藤井志織さんのインスタグラムでした。
すぐに「これは、ほしい!」と思って。
北里
ありがとうございます。
それこそ、藤井さんには、
「+maffs」を立ち上げたときに、
インタビューをしていただいたんです。

伊藤
そうなんですね。
それで購入してみようと思い、
大手通販サイトで探してみたんです。
北里
すみません、扱っていないですよね。
ぼくらがやってるブランドサイト
もしくは、もともと弊社の住宅用消火器を
販売してくださってた会社を通じて購入できますが、
なかなかネットで検索しても、
ここです、って出てくるようなところは、
多くはなかったりするんです。
伊藤
「もっと広まればいいのにな」
というのが、今回、
「weeksdays」で紹介させていただきたいと
考えたいちばんの理由なんです。
それでわたしもインスタグラムに載せて‥‥。
そういえばスタイリストの山本康一郎さんも
紹介なさっていましたね。
北里
伊藤さんや山本さんが紹介くださって、
ばっと広がったという実感があります。
伊藤
よかった!
私、ふだん紹介するものって、
自分が使ってるものにしているんですが、
この消火器は実際に「使った」わけではないんです。
部屋には置いていますけれど。
でも消火器って、そういうものですよね。
北里
そうですよね、
ボヤでも起こさなければ使わないですよね。
伊藤
でもだからこそ「大丈夫です」っていう
品質への信頼がたいせつですよね。
いざというときに使えるという安心感。
この前、母の話を聞いて改めて思ったんですけど、
消火器には使用期限があると。
だから町内会の防災訓練には
使用期限が近いものを使うんだそうですね。
なるほど、と思って。
北里
そうですね。これは使用期限が5年です。
消火器って、使われないで戻ってくることが、
ほんとに多いんです。
伊藤
ん? 「戻ってくる」んですか。
北里
はい、使用期限が来たものは、
メーカーが回収をしてるんですよ、
この消火器は消火剤が液体なんですけれど、
粉を使っているものは、
国内だとあまり採れない成分を使っているため、
リユースするために、回収しているんです。
リユースと言っても、
そのまま詰め替えるわけではなく、
ちゃんと使えるよう、一回きれいにしています。
伊藤
へぇー!
成分はお酢なんですよね?
北里
そうなんですよ。
お酢の成分を主原料に、
食品原料で作られているので、
非常に安全性は高いんです。
伊藤
噴霧すると酸っぱい匂いがするんですか。
北里
します。
でも部屋に置いて匂うことはありません。
業務用は粉を使うんですが、
うんと細かい粉なので、
最初ばーっと舞って、
だんだん積もるみたいな感じになるんですね。
家の中で噴霧すると、広がりすぎて、
片づけがまたたいへんになるんです。
お酢が主成分の液体は、
基本的には、中性の薬剤なので、
拭いていただければ除去できますし、
そもそも飛び散りにくいです。
火もピンポイントで消せる。
だから家の中だと、液体のほうが向いています。
伊藤
名前の「+maffs」というのは‥‥。
北里
もともと防災って、
プラスのマークが象徴的ですよね。
伊藤
赤十字もプラスですね。
北里
意味でいうと、
自分の生活にこの消火器の居場所をつくってほしい、
プラスしてほしい、ということですね。
だからロゴデザインは、クリップ。
みんなの生活に防災をちょこんと留めてもらいたい。
そして+maffs(マフス)っていうのは、
マザーズ・アンド・ファーザーズ、
ファミリーズ、シングルスの頭文字です。
すべての人に防災というものを
身近にしてもらいたいという思いを込めています。
伊藤
基本的な質問ですが、
そもそも、どうして
「白い」「消火器」を
つくろうと思ったんですか。
北里
もともと、消火器って赤いもの、
というイメージがありますよね。
赤い理由もちゃんとあって、
目立つようにという、わかりやすい話なんです。
消防車が赤いとか、ポストが赤いとか、
公共の場所で目立つ存在でいる必要性があった。
伊藤
はい。
北里
そういう認識が徹底されてるから、
日本の国ってけっこう
安全が担保されているんですよね。
伊藤
どの国も赤なんですか?
北里
だいたい赤いんですけど、
中には緑色のものがあったりします。
でもやっぱり赤が多いですね。
ぼくは13年ぐらい前に
「+maffs」の母体であるモリタ宮田工業に
入社したんですが、入ってすぐ、
消火器を自分の家の中に備えるって思ったときに、
「もうちょっとかわいいやつ、ほしいよなぁ」
って、思ったんです。ごく単純に。
消火器だって、自分が思い入れがあるものを、
能動的に選びたいな、って。
伊藤
北里さんは、デザイナーとして入ったんですか?
北里
いえ、ぼくはマーケティングとか、
プランニングの担当です。
デザイナーはチームの中にいます。
でもうちは住宅用消火器よりも業務用消火器のほうが
生産数はかなり多いんです。
伊藤
消火器って、住宅にも
置かなきゃいけないんでしたっけ。
北里
一般のご家庭は設置義務がないんです。
もともと消火器って法律に従って備えるもので、
なぜ赤いのか、置かなきゃいけないのかというと、
消防法という法律があるからなんですね。
消防法という法律は、
一般のご家庭以外のところに介在していて、
たとえば、オフィスだとか、店舗、
というところには置かなきゃいけない。
そして赤い色でなくてはならない。
伊藤
私も消火器の印象は赤でした。
北里
赤って、不特定多数の人が
いるところだったらいいんですけど、
家の中にも置こう、って思ったときに、
ちょっと目立ちすぎますよね。
じつは、入社してすぐに
母に赤い消火器をプレゼントしたんです。
伊藤
お母様に。
北里
最初、息子がくれた消火器だとよろこんでくれて、
家族やお客様の見えやすいところに
置いてあったんですけど、
そもそもおっきいんですよ。
業務用の消火器って。
伊藤
たしかに大きいですよね。
北里
それで、たぶん、
だんだん邪魔になってきたんでしょう、
リビングに置いておくと大きくて赤いのが目立つ。
だから、気がついたら、
見えるところからはなくなっていたんです。
伊藤
片隅においやられて?
北里
そうなんです、冷蔵庫の横とかに
置かれてたりとかしたんですけど、
そのうち、開けるときに邪魔だからと言って、
そこからもなくなって、
最終的には、押入れの中にしまわれてしまいました。
伊藤
(笑)なるほど。
北里
けれども、いざというときに、
消火器が押入れの中にあるって、
防災にとって、すごいリスクだなと。
伊藤
それがどこにあるか、忘れちゃいそうですし、
覚えていても、出すのに手間取ったりしますものね。
北里
そうなんです。火災は、初期消火が大事ですから、
やはりすぐに手が届く場所にあってほしいんです。
伊藤
誰かのうちではドアストッパーみたいにしてました。
北里
ちょうどいい重さなんですよね、
ドアがちょうど閉まらないぐらいの。
でも倒すとよくないので、
ドアストッパーにしちゃ、ダメなんですよ。
伊藤
そうですよね。
北里
それで、防災のことを考えたら
家に消火器は置いてほしいけれど、
赤くて大きくて目立つものを
「押し付けられて」も、
押し入れにしまわれちゃうことになるんだなあと。
じゃあ消火器が、自分で買いに行くものに
なればいいんじゃないいかな?
と思ったんです。
伊藤
なるほど。
北里
単純に、ほんとに一番最初は、
そういう状況になったらうれしい、
ということが出発でした。
でも、そんなことを思いながらも、
そこから10年ぐらい
赤い消火器を売る仕事をして、
やっといろんな状況が整って、
一般家庭向けのブランドを社内で立ち上げました。
そこで最初にプロダクトとして出すものとして何がいいか、
と考えたとき、やっぱり、消火器のメーカーである
自分たちの歴史と価値をいちばん伝えられるのは
消火器だよね、と。
そこで最初からなんとなく思っていた
「白い消火器がつくりたい」ということや、
「防災をライフスタイルに。」という
ブランドのコンセプトを、
社内のデザイナーに伝えました。

白い消火器

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毎日のくらしに必要な道具や、器、家具など、
時間をかけてひとつひとつそろえてきました。

家の中はもちろん、
引き出しを開けても、
収納の扉を開けても、
いつも気に入りのものが並んでいるようにと。

その中で、
必要ではあるけれど、
でもなんとなく家の中に合わないもの、
それがまっ赤な消火器でした。

もちろん緊急時に使うものですから、
目立つことは大切。
家族の目の届くところに置いておく必要もある。
でもどことなく存在感がありすぎてしっくりこない、
私にとって消火器とはそんな存在なのでした。

今週のweeksdaysは、
まっ白な消火器を紹介します。
部屋においても違和感なく、
ちょっと愛おしくもあるかわいい姿。
これなら置いてみたい、と思える
消火器に出会える日がくるなんて。

自分に、そして大切なあの人へ。
毎日の安心をささえてくれる、
白い消火器。
あなたの家にひとついかがですか?

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