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「生活の道具」として
- 一柳
- 私たち「藤栄」は
1945年、焼け野原になってしまった名古屋で、
先代の伊藤正二が創業しました。
名古屋は飛騨高山も近いので、
木製の流し台や、物産だったサワラの桶や飯びつを
仕入れて売っていたんです。
- 伊藤
- わたしたちの暮らしに必要なものがないなら、
扱おう、みたいな?
- 一柳
- はい、そういう木製の道具を仕入れて、
リヤカーを引いて売り歩いていたようです。
その次に売り出した、
アケビの手提げカゴは買い物カゴとして、
とても人気があったと聞きました。
- 伊藤
- ということはつまり、
セレクトショップの先駆けじゃないですか。
ライフスタイルショップの走りですよね。
- 一柳
- 光栄です! これからその表現、使います(笑)。
それを名古屋の先代の自宅の軒先で売っていたら、
地元の大手百貨店さんが、
いい品物を扱っているから
うちにも卸してくれないかっていうことで、
卸売りを始めたんです。
そこから、素材がプラスチックにかわり、
百貨店からGMS(総合スーパー)に広がるという
変化はありましたが、
一貫して生活に必要なものを仕入れて販売をしてきました。
- 伊藤
- そうだったんですね。
その「生活道具」のなかに
ニーチェアがあったわけですね。
- 一柳
- そういうことなんです。
伊藤さんは今回、
ニーチェアに注目されたきっかけって、
なにかおありだったんですか。
- 伊藤
- 買うきっかけになったのは、
小さな森の家を購入したことなんです。
キッチンや水まわりを含め、
居住面積が55平米なので、
リビングも広くはなく、
ソファは置けないなと思ったんですが、
そのかわりにニーチェアを置こうと考えました。
今、改修中なんですが、
完成するまで東京の家で使おうと1脚購入したら、
「ここにも必要でしょ!」みたいな気持ちになって、
じゃぁもう1脚買おう、次は何色にしよう? って。
畳んで仕舞うことができるので邪魔にならないし、
買い足しやすい価格でもあるしと。
- 一柳
- 営業トークになっちゃいますが、
今そんな方がたが次に購入を検討してくださるのが、
この「ニーチェアエックス80」です。
- 伊藤
- そう! 次はそれにしようかなぁと思っていました。
これも新居さんの設計ですよね。
- 一柳
- そうですね。新居さんは「エックス80」を
1980年に発表なさいました。
畳みのある和室と洋室が同居する
和洋折衷の住宅が一般的になり、
クッション入りのソファや椅子が
多く見られるようになった時代です。
背もたれが起きていて、
立ち座りするのにちょうどよい座面の高さで、
人との談話やちょっとした作業が
しやすいのが特徴です。
そして、なんと背のフレームも
内側に折り込めるんです。
- 伊藤
- すごい!! こんなにコンパクトに。
これならラクに車で運べますね。
ヘッドレストがないんですが、
ひじ掛けの位置や座り心地が、
本を読むのにちょうどいいんですよ。
- 一柳
- はい、ニーチェアの座り心地はそのままに、
少しアクティブな使い方ができますから、
ニーチェアをすでにお持ちのかたが
追加で購入されるケースが多いんですよ。
- 伊藤
- 今回、お話をきき、
新居 猛さんという人にとても興味をもちました。
どんなお人柄の方だったのだろうと。
- 一柳
- 私もお会いしたことがないんですけど、
身長は高く、
当時の日本人としては大柄の方だったそうです。
1974年発行の雑誌『室内』で
昔の対談記事を見つけたんですが、
ご自身のことを
「僕は“ツベクソつけ”なんです」とありました。
それは徳島の方言で
「いちゃもんをつける」というような意味で、
気に入らないことがあるとすぐに文句を言う、
そういう性格だとおっしゃられていました。
きっと、すぐになにかに気がつく、
アイデアマンだったんだと思いますよ。
- 伊藤
- きっとそうですよね。
それにしても、新居さんにしろ、藤栄さんにしろ、
「必要だからつくる」、
その姿勢がすばらしいと思います。
- 一柳
- ありがとうございます。
先ほど伊藤さんがお使いだとおっしゃった
「味わい鍋」ですが、
あれも1985年につくられたもので、
その後、メーカーが廃業してしまったんです。
一時、別の会社が引き継がれたんですけど、そこも廃業。
そうしたらずっとその鍋の製造を請けおっていた
埼玉県の川口市にある鋳物工場さんが、
こんなに良い鍋をここで途絶えさせてはいけないと
販売も引き継がれたんです。
それでもやはり、時代の変遷や国際情勢による
原材料の高騰などもあって、
製造が続けられないかもしれないというお話しを、
人づてに知りまして。
ご縁もあり、じゃぁ、うち(藤栄)が
販売をやってみようと。
ヨーロッパなどの鋳鉄琺瑯鍋に比べて3分の1の軽さで、
アルミですが厚みがあるから保温、蓄熱性も高い、
日本人の考えた「コトコト煮込む鍋」なんです。
ごはんをよそいやすい底のR(アール)や、
こびりつかない工夫など、
これも日本の暮らしと
日本人の感性から生まれたものでしたから、
ニーチェアと同じように、
続けていきたいなって思います。
- 伊藤
- そうだったんですね、そんな経緯が。
- 一柳
- 良品質のものづくりを日本で続けていき、
残していけたらという思いは、
どの取扱い製品にも感じるようになりました。
- 伊藤
- ほんとですね。
‥‥そうそう、オットマンの話もお聞きしないと。
これは1970年の発売当時からあったんですか?
- 一柳
- これは1972年に発売されました。
ニーチェア本体と組み合わせて使うことで、
よりリラックスしていただけます。
新居さんは、椅子としても使えるように設計しましたので、
耐荷重もニーチェアと同じように95キロあります。
トレーを置いていただければ、
簡易的にサイドテーブルのような使い方もできます。
- 伊藤
- スーツケースを広げるのにもいいですよね。
ホテルで採用してくれればいいのに。
- 一柳
- そういうふうに使われたら嬉しいですね。
靴屋さんやアパレルショップからも、
声がかかったりするんです。
- 伊藤
- そっか、ちょっと低めなこの座面は、
腰かけて靴を履くのにもいいですね。
- 一柳
- 新居さんが、「道具」のように役に立ってこそ
椅子だとおっしゃっていたことが
ジワジワと伝わっているようで、嬉しいです。
ちなみに、いま、ニーチェアのシリーズで
人気があるのがゆらゆら揺れる
ロッキングタイプなんですよ。
- 伊藤
- これもいいですよね。
- 一柳
- エックスよりも座面の前が8センチぐらい高く、
身体の動きに合わせて揺れるので
立ち上がりがスムーズなんです。
また、揺れることで体圧が分散して、
ラクだとおっしゃる方もいらっしゃいますね。
脚のストレートなところを曲げて角度をつける、
つまりパイプの形状を変えるだけで
ロッキングを成立させているのは、
新居さんの“出来るだけ”のアイデアだと思います。
- 伊藤
- ほんとうにそうですね。
ロッキングは前後の揺れが楽しめますが、
そもそもニーチェアってエックス構造ゆえに
座っていると身体の動きにそって
ちょっとした揺れが感じられる、
それがいいんですよね。
新居さんは、ニーチェア以外に
つくられたものはあるんですか。
- 一柳
- 一時期、折り畳めるテーブルをつくられていましたが、
もう現在はつくっていません。
椅子一筋だと言っていいと思います。
- 伊藤
- ご自宅では、他のデザイナーさんの椅子を
集めたりとか、してなかったんでしょうか。
- 一柳
- 工場に行ったことがありますが、
そういう雰囲気はなかったですね。
- 伊藤
- すごいですね。
これだけのアイデアマンでありながら、
折り畳み椅子をつくり続けた、
というのがかっこいいです。
- 一柳
- ほんとうにそうですね。
- 伊藤
- 一柳さん、ありがとうございました。
ニーチェアと新居さんのことを
たくさん知ることができてよかったです。
- 一柳
- こちらこそありがとうございました。
どうぞお手持ちのニーチェアを末永くお使いください。
日本の技術が詰まってる
- 一柳
- 私たちがニーチェアの
人気の要因だと考えることのひとつに、
座り心地があります。
新居さんが考え抜いた脚部のエックス構造って、
座った時にクッション性を高めているんですよ。
エックス字状の脚に、パイプフレームを付けて
生地を横に張っているので、
開いて座るとテンションがかかり、
それがクッションとなるんです。
- 伊藤
- 構造的にはバネがないけれど、
座った時にクッション性を感じるのは、
このエックス構造のおかげなんですね。
座ったときにキャンバスの布が
自分の体に馴染む感じがあります。
- 一柳
- そうですね。そこが新居さんの発見です。
ハンモックに似ているのではと
勘違いされるんですが、じつは逆なんですよ。
ハンモックは吊るすことで縦方向に引っ張られながら
寝転がると身体が包まれる感じが得られるんですけれど、
ニーチェアは座ることによって、
自分の体重でパイプフレームが開いて
キャンバスに張力が生まれ、そのテンションが、
生地全体がクッションになる。
座る人に合った座り心地が得られるんです。
この生地も大きな機能、構造に関わるんですよ。
- 伊藤
- 座ってみると「わぁ!」ってわかりますよね。
この生地は当時から変わっていないんですか?
- 一柳
- いや、変わってはいますね。
これもお話していいですか?
- 伊藤
- はい、ぜひ教えてください。
- 一柳
- 当時、いわゆる帆布(はんぷ)は
新居さんの地元徳島に近い
岡山や大阪、京都が産地だったと聞きました。
戦後には建築資材やトラックの幌、
学生服なんかにも使われて栄えていたようです。
いっぽう徳島は綿花の生産、繊維製品や染色業が
発展していたようです。
だから徳島にはこういった
厚手の帆布をつくる環境がありました。
ニーチェアの生地はその技術をいかして
つくられたんだと想像します。
今では低コストな海外での生産や
新しい素材や製造技術により、
厚織帆布に代わる素材も登場して需要が減ってしまい、
国内ではすごく厚手の重い生地をつくれるところが
どんどんなくなっていったんです。
きっと新居さんの「ニーファニチア」さんも、
晩年はシート生地づくりに
ずいぶん苦労されたんじゃないでしょうか。
ちなみに今は岡山の倉敷帆布と、
滋賀の高島帆布の2ヶ所でつくっています。
- 伊藤
- 織機が、もう、そこにしかないんでしょうね。
- 一柳
- そうなんです。最初に倉敷帆布さんへ相談したとき、
「これはむずかしいよ」と言われました。
手持ちのシャトル織機でこれだけの強度を出して
厚手の生地をつくり、
さらに柔らかい風合いに仕上げるのは
無理だと言われてしまったんです。
それから何回か足をはこび、
最終的に「やってみましょう」となりました。
でも新しいシャトル織機はつくられていないので、
古い織機を使い、壊れたらそれを解体して部品にし、
別の古い機械のメンテナンス用にする。
このシート生地が織れる機械は、減るいっぽうなんです。
- 伊藤
- ‥‥なくなっちゃったら、どうなるんでしょう?
- 一柳
- そこが現在のニーチェアの抱える課題です。
昔は徳島で「ニーファニチア」さんが、
生地、肘木など部材を手配して、
縫製や金属パイプの加工、
そしてアッセンブリ(一ヶ所に集めて)までを
ご自身の工場でつくられていました。
ちなみに、事業を継承したときには
手元に設計図はありませんでした。
現物を解体して図面をつくり、
シート生地、肘木、金属パイプ、ネジそれぞれを
つくれるところを日本各地で探しました。
「ニーファニチア」さんでは、
新居さんご本人はもちろん、
熟練の職人さんもいたでしょうから、
一つひとつの部材は単純に見えるんですけど、
ものすごく工夫されていて、
とても高い技術でつくられていました。
完璧に再現するのには、
各地の工場の方たちにとても苦労をかけました。
- 伊藤
- 全部、国内で?
- 一柳
- はい、全て国内です。
ニーチェアに限らず、昔のいいものを
日本でつくり続けていくっていうのは、
すごく難しくなってきています。
- 伊藤
- レコード針についても同じような話を聞きますね。
- 一柳
- そうですよね。あちこちでそういう話が出ていますね。
‥‥ちょっと話が戻りますが、この生地、
触っていただければ分かるんですけれど、
すごく触り心地がいいでしょう?
キャンバスってゴワッとしてると思うんですけど、
これ厳密には帆布(平織)ではなく、
ニーチェア専用に開発した生地なんです。
綾織で、デニムと同じ構造なので、
伸縮性があるんですよ。
- 伊藤
- しかも、ちょっとあたたかい感じがするんですよね。
- 一柳
- はい、最初から肌ざわりがいいようにと、
当初から起毛加工をされていたんです。
新居さんがそこまで徹底的に考え抜かれたことなので、
僕らが引き受けてからもそれを続けたいと、
織物工場でつくった生地を、
大阪で染め、起毛は京都でやっています。
- 伊藤
- 「ニーファニチア」さんが
徳島でつくっていた時代にくらべて、
コストがかかるでしょうね。
仕方のないことですけれど。
- 一柳
- そうなんですよ。新居さんが目指していた
「とにかく安く」っていうことを、
引き継いだ僕らも決して忘れてはいないんですけれど、
今の品質でニーチェアの製造を、
すべて日本国内で続けていくためには、
どうしてもコストを製品の価格に
反映するほかありませんでした。
かなり「手」の部分も多い作業について、
それぞれの生産者の方たちも守らなければ
ニーチェアをつくり続けることができませんから。
- 伊藤
- そうですよね。
でも逆に「いいもの」だという安心感がありますよ。
- 一柳
- ありがとうございます。
新居さんの想いにプラスして
日本で変わらずに
しっかりとつくられていることが再評価され、
今またニーチェアに愛着をもっていただける機会が
増えてきたと思います。
- 伊藤
- 30代の若い友達は、ニーチェアを知らないんです。
でも、「そういえば、
この前どこどこのカフェで見た」って。
そしていちど座り心地を覚えると、
それが頭の片隅にあるみたいで、
「やっぱり買おうかな?」と。
ひとり暮らしで、ソファを買うのはためらうけど、
ニーチェアだったらいいな、って。
- 一柳
- まさしくそういう使い方をなさる方も増えてきました。
ソファを買ってしまうと、
ライフステージが変わり、
引っ越しのときにいらなくなってしまったりする。
ソファは家の中で占める割合が大きいけれど、
ニーチェアを2脚、ソファの代わりに
使うという方も増えてきました。
畳めて運べるニーチェアだったら、
引っ越しがあってもずっと寄り添っていけます。
それも新しい役割として
評価いただいているところかなと思います。
- 伊藤
- 昨日、うちの娘と3時間ほど
「テレビを見よう」となったとき、
娘はちっちゃいソファにゴロゴロしたいと。
「じゃぁわたしはこれを出してくる」と、
ニーチェアを置き、
湯たんぽにお湯を入れ、ブランケットを広げ、
お茶をたっぷり淹れて横に置いて、
動かなくていいようにしてテレビを見たんです。
もう最高でしたよ。
- 一柳
- ありがとうございます。
コロナ禍のとき、郊外に移住された方から、
ニーチェアを昼はウッドデッキに出して本を読んだり、
夜には、部屋の薪ストーブの前で使っていると聞きました。
二拠点生活の方も、車で持っていけるので、
「座り心地ごと移動できる」と。
- 伊藤
- そういう声、うれしいですね。
いま、一柳さんたちはこうして
ニーチェアの製造販売を
新居さんのところから引き継いだわけですが、
もともとどんな商品を扱っていらしたんですか。
わたし「味わい鍋」を使っているんですが、
御社の製品なんですよね。
ガス火でごはんを3合炊くのにとてもいいんです。
また、友人からいただいた洗濯洗剤が
こちらのものだったり‥‥。
- 一柳
- そうなんですか、驚きです。ありがとうございます。
洗剤はベルリン生まれの
FREDDY LECK(フレディ レック)ですね。
実は、この洗剤も国内、大阪でつくっているんですよ。
- 伊藤
- どちらも使ってみて、とてもよくて、
こういった「人に薦めたい」ものを、
どういう観点でセレクトされているのか、
藤栄さんにも、とても興味をもちました。
お気に入りのマグカップのように
- 伊藤
- いまは金属のパイプでつくられている部分ですが、
試作の「木製折り畳み小椅子」は木。
金属を使ったのは、
どんな経緯があったんでしょう。
- 一柳
- 木だと構造上の限界を感じられたようで、
ずい分早い時期から
自由に曲げられる金属パイプを使われています。
新居さんご自身の工場にも
パイプを加工する機械を導入されて、
座り心地のよい角度などを生みだしていたようです。
- 伊藤
- パイプって、その当時、
軽量で安く、加工がしやすいものとして
ポピュラーなものだったんですか。
- 一柳
- そうですね。1970年には、
こういった金属加工は普及していましたね。
そして、「組み立て式で折り畳みにする」ことを
新居さんは生涯追い続けるんです。
「出来るだけ・7則」という
新居さんの信念のような言葉があるんですよ。
- 伊藤
- 「出来るだけ・7則」?
- 一柳
- はい。
新居さんが椅子づくりで心がけていた7つの信条です。
「出来るだけ少ない部材で」
「出来るだけ簡易な構造で」
「出来るだけ丈夫で」
「出来るだけ少ない梱包費で」
「出来るだけ少ない輸送費で」
「出来るだけ安い価格で」そして最後に、
「出来るだけよい座り心地で」です。
- 伊藤
- なぜ、そんなに削ぎ落とした考え方ができたんでしょう。
デザインがかっこよく、
値段の高いものに目が行きそうですけれど。
- 一柳
- 当時の日本のたくさんの人たちに、
ご自身の想い、
新しい暮らしを提案したいっていうところで、
出来るだけ削ぎ落としていくのが
必然だったのかなって思います。
「カレーライスみたいな椅子をつくりたい」
ていう気持ちが、ぶれなかったんでしょうね。
- 伊藤
- すごいことです。
多分うちの父も、
そういうところにグッときたんでしょう。
それにすごくシンプルだから、
壊れづらいのではないでしょうか。
- 一柳
- そうですね。
そんなに壊れるところはないですけれど、
家具でもあり道具でもあるので、
畳んだり開いたり移動したりすることで、
徐々にネジが緩んできます。
ご自身で増し締めをしていただくことで、
安全に、長くお使いいただけます。
また、長くお使いいただくと生地は劣化してきます。
でも交換していただけるので大丈夫です。
- 伊藤
- ニーチェアは、発売されてから
ずっと人気商品だったんですか。
- 一柳
- いえ、今でこそ再評価をされていますが、
一時、生産が落ち込んだ時期もあります。
遡ると発売当初の1970年は、
キャンバスと金属パイプに
木の肘掛でできた折り畳み椅子は、
家具の世界では異質なものとして扱われ、
雑貨の椅子として見られることも少なくなかったようです。
また、かなり安い価格で売られていたこともあり、
利幅が少ないと家具店さんなどでは、
取扱いを渋るケースもあったようです。
潮目が変わったのは、全国版の新聞に写真で紹介され、
ようやく国内の都市部で売れるようになったようです。
それから評価が高まり、海外、そして世界でも
売られるようになったようですが、
そのキッカケは、残念ながら分からないんですよ。
- 伊藤
- 「世界」というのは‥‥。
- 一柳
- 輸出先で一番多かったのは、
アメリカだったようです。
次にフランス、イギリス、ドイツといったヨーロッパ。
当時の日本の家具が、これだけの国に輸出されるのは
めずらしかったんじゃないでしょうか。
- 伊藤
- おもしろいですね、
畳の暮らしから生まれた椅子が、世界に。
- 一柳
- そうですね。
でも評価をいただくと同時に
国内はもちろん、
海外でも模倣品がいっぱい出ることにもなるんです。
- 伊藤
- ええっ?!
- 一柳
- そうなんですよ。
でも新居さん自身は、
コピーが得意だと言われていた当時の日本で、
いやな気分ではあったようですが、
それほど怒ってはおらず、ご自身のデザインが
世界で認められたように思われていたようです。
- 伊藤
- 悔しさのいっぽうで、
ちょっぴり誇らしい気持ちもおありだったのかな。
- 一柳
- そうだと思います。
そしてニーチェアは70年代中ごろから、
80年代にかけて一番売れていたと思うんですが、
90年代になって、
いろんな意味で日本のくらしが変わったとき、
この椅子の役割みたいなものが
終わってしまったようなところがあるというか。
そんな時代背景もあって、新居さんのご生家でもある
徳島の「ニーファニチア」さんは、
2013年に椅子の生産を中止してしまうんです。
きっと、椅子の製造が続けられなくなるようなことが、
色々と、たくさん重なったんだと思います。
- 伊藤
- いちど、辞められているんですね‥‥。
- 一柳
- はい。新居さんが2007年に他界されてしまったことも、
色々のひとつかもしれませんね。
うち(藤栄)は、1945年創業の
生活用品・インテリア・家具の総合商社なんですが、
1972年から、ニーチェアを仕入れて
販売をしていたんです。
そして2005年にはライセンス商品の「ニーチェアF」を
つくらせていただいたという経緯もありました。
そして2013年、「ニーファニチア」さんから
「椅子製造中止のお知らせ」
という連絡が来たとき、
世界に誇る日本の椅子がここで途絶えてはいけない、
なんとかできないかと、
製造から販売まで全てを引き受けようという
プロジェクトが立ち上がりました。
それで1年間、準備をして事業を継承し、
2014年からニーチェアの正規製造・販売元になったんです。
- 伊藤
- そういうつながりがあったんですね。
すごいですね。
- 一柳
- でもすぐにはうまくいかなかったんですよ。
そもそも、家具専門店さんが減っていたり、
百貨店の家具売り場も縮小されたりして、
今までのニーチェアの売り場がなくなっていたんです。
いっぽう大規模で、価格の安い自社製家具を揃えた
SPA(製造小売業)型のお店は盛況だったりと。
- 伊藤
- あぁ、なるほど、そうでしたか。
‥‥でも、ひょっとして、その頃から、
生活提案型のショップが増えてきて、
家具を扱うようになったのでは?
わたしも見かけたことがあります、
生活雑貨店で「あれ? ニーチェアだ!」って。
- 一柳
- そうなんです。
2016年あたりから、生活雑貨のお店が
取り扱ってくださるようになりました。
やっと新居さんの
「良い暮らしの道具」として
新たな役割に気付いてくれたといいますか、
和室で使い、同時にコストを下げるためにと
考えられた折り畳むというスタイルが、
「ソファのような座り心地を持ち運べる」
という軽やかさとして受け取られ、
暮らしの道具としての評価をいただいたんです。
新居さんが当たり前のようになさってきた、
無駄のないものづくりも、
サステナブルであると再評価され、
取り扱いが広がっていったんですよ。
- 伊藤
- うれしいですね。そういえば
軽井沢のSHOZO COFFEEの入っている
施設の中庭に、
いろんな色のニーチェアがありますよね。
天気のいい秋の日に行ったら、
みんなが座り比べをしてましたよ。
ちょっと移動させて、気持ちのいい場所を探したり。
- 一柳
- Karuizawa Commongroundsの中ですね。
軽井沢書店さんが
ニーチェアを扱ってくださっているんです。
- 伊藤
- 書店さんが!
以前は考えられないことだったでしょうね。
そういえば、昔は応接セットとか、
ダイニングセットとか、
そういう感じで用途ごとに
家具を買っていました。
今は──、規模感は違うけれど、
お気に入りのマグカップを買う、
みたいな感覚の延長で
ニーチェアの購入を考えるのかもしれません。
- 一柳
- きっと、そうなんでしょうね。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
2月1日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
saquiのフォーマルバッグ
フォーマルな時に持つバッグえらび、
じつはずっと悩みの種でした。
なので、以前販売したフォーマルな服に合わせて
バッグも作って欲しいと
岸山さんにお願い。
様々なサンプルの中から、
これ! とえらんでくれたのは、
フランス製の「DENTELLES ANDRÉ LAUDE」の
レースの生地。
つつましくも、美しい
クラッチバッグができあがりました。
このフォーマルバッグ、
「フォーマル」のシーンだけにしておくのはもったいない。
私はふだんのコーディネートにも持っています。
詳しくは、 こちらのコンテンツをどうぞ!
(伊藤まさこさん)
なお、材料費高騰のため、
2024年2月1日再入荷分から、
販売価格が変更になります。
わたしたちの暮らしに合わせて
- 伊藤
- こちらのショールームには
歴代のニーチェアがあるんですね。
実家にあったのは、
まさしくこの色でした。
- 一柳
- それは発売当初、1970年代のものです。
生地が、藍色ですね。
- 伊藤
- わたし、ニーチェアと同い年です。
- 一柳
- 私もなんですよ!
今日はどうぞよろしくおねがいします。
- 伊藤
- こちらこそよろしくお願いします。
だからでしょうか、
ニーチェアには親近感を感じるんです。
- 一柳
- いまもご実家では
使われているんですか?
- 伊藤
- それが行方が分からないんです。
購入した父はもう何年も前に亡くなりましたし、
母もわからないと言うんですよ。
ひょっとして建て替えの時に住んだ家に
そのまま置いてきてしまったのかもしれないし、
いつのまにかガレージセールで
どなたかのお宅にもらわれて行ったのかもしれません。
姉たちにも訊いてみたんですが、
「あったね~!」と懐かしそうに言うものの、
やっぱりわからなくて、
「今あったら、座面のキャンバスも
交換して使えたんだよ」なんて話しました。
- 一柳
- そうなんです。
古いものであっても、
生地が交換できるんですよ。
新居 猛(にい・たけし)さんという方が、
ニーチェアの生みの親なんですが、
この製品をつくられてから、
「カレーライスのような椅子」であるとか、
「自転車のように使われてこそ椅子」、
とおっしゃっていたそうです。
大衆の為に作られたんですね。
カレーライスが、どの家庭でも手軽に作れて、
家族のみんなに好かれる料理となったように。
また自転車は、世界中の人々が移動や運搬など便利に使い、
自分で修理やメンテナンスをしながら、
ずっと使い続けることができ愛される道具になったように。
そういう新居さんの願いが
ニーチェアの魅力なんじゃないでしょうか
- 伊藤
- このすっきりしたデザインと
独特な名前から、
海外製品だと思っている方も多いんですよね。
「ニー」というのは、新居さんから?
- 一柳
- そう思われますよね。
これ、じつはデンマーク語からの由来もあるんです。
新居さんが椅子をつくりはじめたとき、
島崎信(しまざき・まこと)さんと出会いました。
島崎さんは東京藝大から
デンマーク王立芸術アカデミー建築科を出て
日本人で初めてそのアカデミーの研究員になった方で、
北欧の家具やデザインを日本に伝えた第一人者です。
その島崎さんが新居さんのつくる椅子を見て
「日本にもこういうデザインができる人がいるのか」と
驚いたそうなんです。
そして新居さんは島崎さんに
新しい椅子の名前を相談しました。
そこで「ニーチェア」と命名されたんですよ。
新居さんは、ご自分の名前をつけるのはおこがましい、
めっそうもないと言われたそうで、
それでは新居さんの「にい」ではなく、
デンマーク語で「新しい」を意味する
「Ny(ニュイ)」としてはどうだろう、
「新しい椅子」ってことで世の中に出していこうと、
「Nychair(ニーチェア)という名前になったそうです。
- 伊藤
- そういう経緯だったんですね。
この椅子は見たことがあるけど名前がわからないとか、
日本の方がデザインされた日本製の椅子だとは
知らない方もいらっしゃると思います。
わたしも「新居 猛さん」のことを、
あまり知らずにいます。
- 一柳
- 新居さんご自身、
自分はデザイナーとは言わず、
「家具職」と言っていたそうです。
それに、1970年ぐらいの日本の製品って、
デザイナーの名前が前に出ることは
少なかったんじゃないでしょうか。
ですから新居 猛さんの名前よりも、
また「ニーチェア」の名前よりも、
“このかたちの新しい椅子”として
覚えられたんだと思います。
- 伊藤
- 出始めた頃、どういうところが
みんなの心をつかんだのかな‥‥。
ニーチェアの歴史を、
くわしく教えていただけますか。
- 一柳
- もちろんです。
新居さんって元々、
徳島の古物商の息子さんだったようです。
そこへ、婿に来たお父さんが、
剣道具店を始められたんですね。
お父さんの家業は藍商だったようですが、
化学染料の普及でうまく行かなくなり、
戦前に、いちどアメリカに渡ったそうです。
そこでは、鉄道施設の仕事なんかをやられていて、
合理的精神のようなものを覚えられ帰ってきた。
それで剣道具店も、工夫をして
安く丈夫につくることを心がけたそうです。
- 伊藤
- そこから、新居さんに通じるものがありますね。
- 一柳
- はい。物を見る目、物をつくる技術や知識を
養ったのかもしれませんね。
けれども1945年の敗戦で
GHQが日本に来たときに、
剣道具は武器になるというので
「つくってはいけません」となった。
そこに、兵隊になられていた
新居さんが帰ってきたんですが、
家は焼けて商売は禁じられ、
ご自身も肋膜炎で臥せってしまうんです。
それが治ったのが27、28歳頃のことで、
そこから新居さん、徳島県の職業補導所の
木工コースに通ったそうなんですよ。
卒業して建具屋に勤めたら、
戦後の復興で木工の需要はすさまじく高く、
とても忙しい毎日を過ごしたそうです。
いっぽうお父さんは、
どうやって生計立てていこうと考えて、
「便利屋」を始めるんです。
- 伊藤
- 便利屋さんって、その頃からあったんですね。
- 一柳
- そうなんですよね。便利屋といっても、
木工でなんでもつくります、
という商売だったようです。
それで新居さんもそこを手伝うようになる。
建具から家具、その修理までなんでもつくるなかで、
新居さんは「椅子がつくりたい」と
考えるようになったんだそうです。
ここからは私の想像も入るんですが、
ニーチェアの材料のなかに、
キャンバス生地がありますよね。
これは、当時とても身近な生地でしたし、
剣道具にも馴染みの深い素材です。
床几(しょうぎ/胡床[こしょう]とも)っていう、
武道全般や神社で使う折り畳みの椅子、
あれもキャンバスと木でできています。
そういうとこからインスピレーションを得て、
キャンバスを使った折り畳みの椅子を
つくり始めて、後々のニーチェアに
つながっていったんじゃないかと思います。
ちなみにこれが1955、56年に
新居さんが初めてつくった椅子なんですが、
最初はわりと普通の形なんですよ。
- 伊藤
- ほんとうですね。
でもこういう脚だと、
畳の部屋では凹んでしまいますよね。
- 一柳
- そうなんです。
ここから「畳ずり」
(和室で畳を傷つけないようにする椅子の脚の横木)
のような発想を取り入れていったんだと思います。
- 伊藤
- そっか、ニーチェアは、
パイプ全体で支えるので、
重みが分散される。
畳の部屋でも使えますね。
- 一柳
- そうですね。
そして「畳める、移動できる、仕舞える」
というのも大きな特徴です。
当時の日本の家って、
ダイニングやリビング、ベッドルームなんて少なく
まだ畳の部屋に、
ちゃぶ台を出して食事や団らんの場とし、
仕舞って、布団を敷けば寝室となり、
襖を外せば隣の部屋とひと続きになるという、
そういう暮らしをしてきたんですよね。
そして椅子でのくらしを
日本にもっと広めたいと思われていた新居さんは、
畳の部屋でも使えるように、
椅子も折り畳めて、移動して仕舞えることを、
ごく自然に考えられていたんじゃないでしょうか。
- 伊藤
- 考えてみると、和室ってすごいですね。
そして「畳む」という文化。
- 一柳
- ちょうちんや、扇子もそうですね。
折り畳むって、、
日本人がすごく得意とすることです。
- 伊藤
- イサム・ノグチの「AKARI」もそうですね。
- 一柳
- そうかもしれませんね。
ニーチェアは、そういう日本の暮らしと
日本人ならではの感性から生まれたんだと思います。
座面がちょっと低いように感じるのも、
畳に正座で座った方と目線が合うようにと、
新居さんが設計されたのではないでしょうか。
- 伊藤
- この低さは、そういうことだったんですね。
- 一柳
- そして忘れてはいけないのが、
1970年の発売時、価格のことを
新居さんはいろいろと考えられていたことです。
というのも1960年代、
海外から家具も輸入されるようになり、
デンマークから北欧デザインの椅子が入ってきたんですが、
その価格に加えて、
輸送費や保管料といったコストもかかり、
日本での販売価格がものすごく高くなっていた。
ですから自分の椅子は、折り畳めて、組み立て式と、
できるだけコストを下げてつくり、
大衆のために、どの家庭でも手軽に、世界中の人々が
買えるようにしたいと考えていたことです。
- 伊藤
- コストのことまで!
新居さんの椅子
子どもの頃の椅子の記憶は3つあって、
ひとつは、
座面と背もたれが赤い、子ども椅子。
(今でも実家の屋根裏部屋に)
ふたつめは、
小学一年生の時に買ってもらった、
ダイニングチェア。
(大人の仲間入りができたようで、
すごくうれしかったなぁ)
最後のひとつは、
テレビを観たり漫画を読む時に最高! な、
一人がけのチェア。
(父から拝借してました。)
その椅子が「ニーチェア」と
呼ばれていることを知ったのは、
ずいぶん経ってからのこと。
デザインしたのは、
新居 猛。
生涯にわたって、
組み立て式の折り畳み椅子を作った新居さんですが、
そこには、
「出来るだけ・7則」という、
心がけがあったとか。
「出来るだけ少ない部材で」
「出来るだけ簡易な構造で」
「出来るだけ丈夫に」
「出来るだけ少ない梱包材で」
「出来るだけ少ない輸送費で」
「出来るだけ安い価格で」
「出来るだけよい座り心地で」
なんと、この椅子に、
そんな想いがたくされていたとは!
この椅子との出会いから、
40年あまり。
長く愛される秘訣って、
やっぱりあるのだなぁ……というのは、
使ってみるとよく分かる。
座り心地だけでなく、
折り畳まれた様子も美しいんですよ。
Lueのスプーン、わたしの使い方 伊藤まさこ
次の日のおみそ汁
娘が「一番好きなお味噌汁」というのが、
ごま油でさっと炒めた豚バラとごぼうの赤だし。
お味噌汁は煮えばなが命、と思っている私ですが、
これと豚汁だけは別。
多めに作った翌日の朝は、
白いごはんの上にかけていただくのが
我が家の定番になっています。
さっと食べられるし、温まる。
おまけに洗いものも少ないし、と
いいことづくしなのですが、
気軽な分、器えらびや盛りつけを雑にすると、
ちょっと悲しい見た目に。
大振りの漆器の椀に盛ったり、
お盆を組み合わせたりして
「ちょっと品よく」を目指します。
沖縄の大嶺實清(おおみね じっせい)さんの
高台のついた黒い器に盛り、
韓国のお盆を合わせました。
添えたのはLueのスプーン。
木のお盆と黒い陶器に真鍮が加わると、
ちょっと洒落た感じになる。
タートルニットとデニムの耳元に、
ゴールドのピアスをつけると、
それだけで「いつもの自分」がちょっと変わる。
そんな感じでしょうか。
ロールキャベツ
ロールキャベツは島るり子さんの器に。
この日は、ほかにひじきの煮物や白和えなど、
和のおかずを中心にしたため、
メインのロールキャベツもスープ皿ではなく、
和食器に。
こんな時にそえるのもLueのスプーンなのです。
春雨サラダ
和えもののサーバー代わりに、
Lueのスプーン(大)と黒檀の24cmを。
取り箸だけ、また、スプーンだけより、
取りやすさは格段にアップ。
この日は春雨サラダに合わせました。
母のチャーハン
「チャーハンにはこれ」と断言するのは母。
私がプレゼントしたLueのスプーンが
すっかり気に入ったようです。
あまり手入れがいらないのもいいみたい。
ふだん使うものは、
「気軽に使える」というところも
えらぶポイントになります。
このチャーハン、一見ふつうなのですが、
とてもおいしくて、
実家に行くたびに作って! とお願いしています。
どうやら炒める時に
ちょっとラードを入れるのがコツのよう‥‥。
鮭チャーハン
バターで炒めたごはんに焼いた鮭を入れ、
仕上げに黒胡椒をたっぷり。
簡単にできて大満足。
お弁当にもよく登場したのが、母のレシピの鮭炒飯。
そのままお皿に盛ることがほとんどですが、
休日のお昼など、心に余裕のあるときは、
こんな風に型取って、
スプーンを添えます。
食べやすく、そしてすくいやすい。
やっぱり「チャーハンにはこれ」なのです。
栗きんとんのデザート
スプーンの小さいサイズは、
デザートに。
お正月に作った栗きんとんのペーストに、
ゆるくホイップした生クリームをのせて。
粉引きのお湯呑みに、栗の木のお盆。
漆のスプーンもいいけれど、
真鍮を合わせると意外な組み合わせに。
コーヒーと一緒にいただきます。
このサイズ、今年迎えたばかりで、
まだピカピカ。
使っていくうちに、
いい味わいに変わっていく。
そんな様子も楽しみたいと思っています。
真鍮ならではの良さ、ハンドクラフトの良さ
- 伊藤
- 菊地さんのカトラリーのシリーズは、
つくり始めてから、ちょっとずつアイテムを
増やしていかれたのでしょうか。
コーヒーをすくうのが欲しいなと思ったら
コーヒーサーバーを、とか、
紅茶や緑茶を飲むのにティーサーバーが要るとか?
- 菊地
- そうですね。自分でっていうものも
半分ぐらいはあると思うんですけど、
あとの半分ぐらいは、自分からというより、
お客さまの要望で増えていきました。
たとえばピザサーバーは京都の
monk(モンク)っていうピザ屋さんの店舗を
設計した方が知り合いで、
オリジナルでつくって欲しいって言われ、
そのまんまうちの商品としても出そう、
っていうパターンでした。
- 伊藤
- なるほど、そうなんですね。
お一人で制作されているわけじゃないですよね?
- 菊地
- 今は自分のほかにスタッフが1人、
あとアルバイトが2人来ています。
基本、ハンドクラフトは
僕ともう1人で作っていて、
アルバイトの2人には
比較的簡単な作業をしてもらっています。
- 伊藤
- Lueはハンドクラフトがメインだと思うんですけれど、
今はインダストリアルライン(工場生産)も
手がけていらっしゃるんですよね。
- 菊地
- はい、インダストリアルのシリーズは
新潟の燕の工場でつくっています。
富山県の高岡あたりの工場にも手伝っていただいて。
- 伊藤
- じゃあデザインをして、素材を決めて、あちらで?
- 菊地
- そうです。
ちなみに今回のはすべてハンドクラフトです。
- 伊藤
- はい。どちらにも良さがありますよね。
工場ものには、工場もののよさが。
- 菊地
- そうですね。
インダストリアルで最初につくったのが
「スポーク」っていう、柄の片側がスプーン、
もう片側にフォークがついている
一体型のものでした。
インダストリアルものは
スタッキング(重ねて収納)できるように
つくっているんです。
それを考えると、手でつくるより
絶対工場でつくったほうがきれいにできるし、
効率的なんですよ。
あと、ずっと工場にこもって
ハンドクラフトをしていると、
人と関わってつくるような仕事もしてみたいなと思って。
そういう流れで新潟の工場の人たちと
コンタクトをとってつくり始めたんです。
- 伊藤
- なるほど。
スタッキングができる良さ、よくわかります。
けれども今回わたしたちが扱わせていただく
ハンドクラフトの製品って、
端正なんだけれど手づくりの揺らぎみたいなのがあって、
わたしはそれがすごい良いなと思っているんです。
- 菊地
- やっぱり手づくりの良さっていうか、
これを工場でつくったらもうちょっと無骨になるし、
そもそも、多分、つくれないんですよ。
基本、柄の部分とか、
全部手でハンマーで叩いてるんですが、
叩くと曲がったりきれいな形にならなかったり、
それを手で微調整しながら整えていくのって、
工場よりは手でつくったほうが
形がきれいになるんです。
手でしか出せない繊細さがあると思っています。
- 伊藤
- そうですね。
普段、ご自宅でも使われていると思うんですが、
例えば「大スプーン(栗型)」は‥‥。
- 菊地
- カレーとかチャーハンを食べるときに使いますね。
深さがないからスープカレーだと
ちょっと難しいかもしれないですが、
うちでは使ってますよ。
- 伊藤
- カレーなどごはんものをすくい上げるときに、
ソースもライスも余すことなく
サッとスプーンにのせられるのが気持ちいいんです。
- 菊地
- 薄くつくれるっていう金属の利点ですね。
- 伊藤
- そうですよね。
だから口に入ったときも違和感がなくて。
真鍮の良さみたいなところって、
いろいろあると思うんですが、
菊地さんからすると、どんなことでしょうか。
- 菊地
- つくる側から言えば
硬すぎず柔らかすぎずという感じで
加工のしやすい金属だということですね。
あと使っていくと、
最初はギラギラしている印象が
どんどん落ち着いていく、
その色味がすごく良いと思ってます。
もちろん金属磨きを使えば
ピカピカになるんですが、
経年変化を楽しんでもらう方が
僕としては健全かなと思います。
結構大変なので、磨くの(笑)。
- 伊藤
- シルバーだとたまにちゃんと磨かないと嫌だけど、
真鍮は平気ですよね。
わたしも一回も磨いたことがありません。
あと、真鍮という素材が食卓にのると、いいんですよ。
木のテーブルに陶磁器があって、
ガラスのコップがあって、
木や竹のお箸があって、
そこに真鍮が入る。
そのようすが、とてもいいんです。
- 菊地
- 真鍮が、アクセントになりますよね。
- 伊藤
- そうなんですよ。
同じ金属でも和食器にシルバーを合わせるのは難しくて。
やっぱり真鍮っていう素材の良さなんだろうな、
って思って使ってます。
お手入れとか、どうですか。
わたし、なんにもしてなくて、
時々食洗機に入れちゃってるんですけど、
それは駄目‥‥でしょうか。
- 菊地
- 全然いいと思います。
食洗機に入れても
気になるような変色はしないと思いますよ。
- 伊藤
- 良かった。
- 菊地
- ただ、食品が残ったままほったらかしておくと
その部分に跡がついちゃったりするので、
最初の綺麗なうちは気をつかっていただけたら。
あとは‥‥、なんて言うのかな、
使う人の性格が
そのまま反映されるっていう感じ。
丁寧に使ってると丁寧な色になるんです。
- 伊藤
- へえ! でも、なるほど、
そうかもしれないですね。
- 菊地
- とはいえ、気にせずにガシガシ使ってもらうと
いい色になっていくんじゃないかな。
どんどん使っていけば
全体がきれいに変わっていくので
そのまま使い続けてください。
ただ緑青(ろくしょう。銅の錆)が出ちゃったり、
一部だけ黒ずんでしまったら、金属磨きで磨けば
もとに戻してもらうこともできます。
- 伊藤
- でも、あんまり出た記憶がないです。
- 菊地
- 塩とか、食材に触れっ放しにすると
出ちゃうことがあるんです。
銅そのものよりは出づらいですけれど。
- 伊藤
- とにかく使ったらきれいにして
よく拭いておけば、
だんだん自分ならではの味わいになっていく、
っていうことですよね。
- 菊地
- そうですね。
- 伊藤
- これからつくってみたいものであるとか、
これからしてみたいお仕事はありますか。
- 菊地
- 人と話をする中から生まれるものが多いので、
そちらを拡げていきたいなって思います。
今はニューヨークの会社といっしょに
日本の工場で
ステンレスのディナーセットをつくっています。
僕は仲介者のような役割ですけれど。
- 伊藤
- デザインは向こうが?
- 菊地
- そうですね、デザインもほとんど向こうですが、
うちが入って、日本の工場とうまくいくように
落とし込むっていう感じの仕事をしています。
やりたいことが工場に伝わりづらい部分を、
僕が中間に入ることで
伝わるように言葉を変えてみたり。
- 伊藤
- そういうお仕事もあるんですね。
ディナーセットというのは、
カトラリーですよね。
どういう形なんですか?
- 菊地
- 昔のヨーロッパのような、
スプーン・ナイフ・フォークのセットです。
- 伊藤
- とっても楽しみです!
菊地さん、今日はありがとうございました。
今回はお伺いできませんでしたが、
いつか工房にお邪魔させてくださいね。
- 菊地
- ありがとうございます。
ぜひいらっしゃってください。
岡山でものづくり
- 伊藤
- 菊地さんはじめまして、伊藤です。
どうぞよろしくお願いします。
この度はありがとうございます。
- 菊地
- はじめまして、菊地です。
こちらこそです。
- 伊藤
- わたしが菊地さんの「Lue」のスプーンを
初めて買ったのは、10年ほど前のことでした。
高松の「まちのシューレ963」で見つけたんです。
- 菊地
- ありがとうございます。
シューレさん、いまも置いてくださってます。
ちょうど10年ぐらいになると思います。
- 伊藤
- そうなんですね。
そうしたらとても使いやすくて、
実家の母にもプレゼントし、母も
「チャーハンを食べるときはあれじゃないと」
って、言っているんですよ。
- 菊地
- ありがとうございます。
嬉しいです。
- 伊藤
- どういう経緯で今のような
ものづくりの道へ入ったのか、
「そもそも」のお話から
聞かせていただいてもいいでしょうか。
- 菊地
- そもそも、を言いますと、
父が真鍮でアクセサリーをつくっていたんです。
- 伊藤
- じゃあ小さなころから
真鍮という素材は身近だった?
- 菊地
- はい、とても身近なものでした。
17か18ぐらいから
ずっと父親の手伝いを始めて、
23か24ぐらいの時、
父も病気だったことがあったりとか、
自分が結婚するタイミングでもあったりして、
独立して何かしないとなってことになったとき、
料理をつくるのも好きだったので、
アクセサリーよりはスプーンや食器をつくってみたいな、
っていう気持ちがあって、
カトラリーをつくり始めたんです。
- 伊藤
- アクセサリーから、
暮らしの道具の方向へ。
そのとき最初につくったのは?
- 菊地
- 父のアドバイスをもらいながら、
最初にできたのが「ティースプーン」です。
- 伊藤
- あの形は、最初からだったんですね。
- 菊地
- はい、溶接をするタイプのものですね。
それを倉敷にある
融民藝店(とをるみんげいてん)っていう
昔からあるお店に持っていき、販売を始めました。
そこからもうちょっと
韓国料理で使うスッカラ(*)っぽい
形のものが欲しいという要望を
融民藝店からいただいて、
「大スプーン(栗型)」などのカトラリーを
つくるようになっていったんですよ。
(*)スッカラは、ビビンパなどを混ぜるのに使う、
くぼみが浅い朝鮮のスプーン。
- 伊藤
- そういうことだったんですね。
もともとスッカラを
お使いだったりしたんですか。
- 菊地
- いえいえ、民芸屋さんに行くまでは
スッカラ、知らなかったんです。
- 伊藤
- そうだったんですね。
韓国の食卓で使うスッカラって、
シンプルで掬(すく)いやすくて混ぜやすく、
すごい道具だなって思っているんです。
でも菊地さんの「大スプーン(栗型)」は、
スッカラそのものではなく、丸みがあります。
あの形になるまでに、試行錯誤はありましたか。
- 菊地
- そうですね。
まず洋食器のスプーンって、
くぼみの深いものが多いですよね。
スープをいただくにはいいんですが、
私たちのふだんの食生活でスプーンを使う時は、
カレーライスやチャーハンですよね。
そういう料理をスプーンですくって口に運んでも、
くぼみの底に食材が残ってしまうんです。
だから浅い方が使いやすいなと思っていました。
あと柄(え)の部分も、なんて言うのかな、
作家ものって、山なりに反ってるものが多いんですが、
それだと丸まっていて、使いづらいなあと、
そんなことを考えながら、
形、深さ、柄のカーブなど、
使いやすさ、食べやすさ、洗いやすさなどを考えて、
あの形をつくりました。
- 伊藤
- 初代から今に至るまで試行錯誤があったというよりは、
割と最初から「これ」っていう形だったのでしょうか。
- 菊地
- 基本は一緒ですが、
だんだんと整っていったと思います。
最初の頃は「柄が細すぎる」と
言われることがよくあったので、
なるべく太くしてみようと叩いたんですが、
形が崩れちゃって、アンバランスになってしまったり。
スプーンのあの形には、
柄が細い方が綺麗だなと思います。
今も手でつくっているなかでの
多少の変化はあるとは思うんですけどね。
- 伊藤
- その細いとおっしゃった方は
持ちづらいとか頼りないとか、
そういう意味合いだったんでしょうか。
- 菊地
- そうです、そういう意味合いで言われてました。
- 伊藤
- スッカラも柄が細めですけれど、
わたしたち、洋物の比較的太い柄の
スプーンしか知らないから、
はじめて手にしたとき、
細いと感じるんでしょうね。
- 菊地
- そうかもしれませんね。
そのときいろいろ考えたんです。
人の意見を聞くのも大事だけれど、
100パーセント全員の意見を
すくい上げるのって難しいなと。
それよりは自分がいいと思った形を
つくっていく方が健全だなと思って、
そこからは今の形でつくっています。
- 伊藤
- 万人に合うものってないんですよね。
わたしたちは作家さんが
「これが好きだ」と言ってくださると
逆に安心感があるっていうか、
ブレがないっていうか。
そういえば、先日、
LIVING MOTIF(六本木の生活雑貨店)に行ったら
Lueのラインナップが並んでいました。
大人気ですね。
友人宅でも使っているのを見ますし、
使いやすいからもう一組買いたいとか、
誰かにプレゼントするとか、
そういう感じでじわじわ広がっている印象ですよ。
- 菊地
- いえいえ、おかげさまで、です。
広がりで言えば、
ストッキストっていう展示会が
ひとつのきっかけでした。
10何年前だったと思うんですが。
- 伊藤
- そこが、出会いの場だったんですね。
- 菊地
- 僕もずっと岡山にいるので、
その時ぐらいしか人と会うことがなくて。
そこで知り合った方を通じて
ちょっとずつ広がっていったんです。
- 伊藤
- Lueのウェブサイトもとても素敵だと感じます。
写真やデザインは、全部菊地さんがプロデュースを?
- 菊地
- 写真は、さきほどお話しした
融民藝店を継いだ
山本尚意さんっていう若い方が、
写真も撮るかたで、
彼にお願いしているんです。
僕は、こうやって撮って欲しい、
っていうリクエストをするほうですね。
枯れた草とかと一緒に撮ったりするんですけど、
それはうちの近くでむしってきて
一緒に撮ったりとか、そういう感じですよ。
- 伊藤
- つまり、スタイリングは菊地さんということですね。
- 菊地
- そうですね、今のところ。
- 伊藤
- 作品の見せ方を大切になさっていると思ったんです。
統一感があって。
菊地さん、ずっと岡山でいらっしゃるんですか?
- 菊地
- そうです、僕は生まれが倉敷で、
育ったのは総社っていう隣町です。
父が、倉敷の美観地区の川沿いの道端で
物売りしてるヒッピーの一人だったんですよ。
- 伊藤
- えっ? お父様が?
- 菊地
- そうなんです。
ヒッピーだったので
各地を転々としてたみたいなんですけど、
最終的に倉敷に落ち着いて工房を開いたんです。
生きていれば70歳になります。
- 伊藤
- お父さまが20歳くらいだったとして、
ということは今から半世紀前の倉敷は、
ものづくりの方が集まる、
そういう土地だったんでしょうね。
いまも、わたしたちの付き合いで言うと
陶芸家の伊藤環さんや木工の山本美文さんが
岡山にいらっしゃいます。
岡山って作家さんが多い印象があります。
- 菊地
- 倉敷って民藝が強いし、備前焼もあるので、
ものづくりの人が多いイメージ、ありますよね。
岡山に移住するものづくりの方も多いんですよ。
しっくり
料理に欠かすことのできない道具といえば、
まず思い浮かべるのが、
京都の盛りつけ箸や菜箸。
私の手の延長のような存在です。
食べる時は、
煤竹と青黒檀のお箸が我が家の定番。
箸先がすぅっと細く、
米粒一粒もらくらくつまめる。
ふだん、あたりまえのように身近にあるものだから、
気に留めていないけれど、
外での食事で違う箸を使うこともあって、
そんな時に、
ああ、ふだんとてもお世話になっているんだな、
ということに気がつく。
自分にしっくりくるものを使うって、
私にとってはとても大切なことなんです。
今週のweeksdaysは、
Lueのカトラリーとキッチンツール。
使いはじめてから10年くらい経つかな。
チャーハン、カレー、チキンライス……
今や「これがないと」と思う、
お箸と同じくらい必要な道具。
コーヒーサーバーやティーサーバーなども、
合わせてご紹介します。
「すくう」のが楽しくなる道具たちですよ。
事務所でアーカイブ探訪
- 伊藤
- 藤枝の工場から移動して、
静岡市内の事務所にお邪魔しています。
‥‥わぁ、すごいですね、
かわいいものがたくさん!
ミュージアムの一室のようです。
- 齊藤
- こうして昔のものが並んでいると、
たしかにミュージアムみたいですね。
といっても過去の製品を
すべて網羅しているわけでもないんですが。
- 伊藤
- それでも、こんなにいっぱい。
卓上のくずかご、アイスペール‥‥
こういったものは、
いまはつくられていないそうですね。
- 齊藤
- はい、需要がなくなって
廃盤になったものがたくさんあります。
また、金属部材が必要なものは、
それをつくるメーカーさんがなくなって。
昔は金具のメーカーもいっぱいあったし、
手作業をしてくれるところも多かったんです。
いまも、やってできないことはないでしょうが、
コストがかかってしまうと思います。
- 伊藤
- 傘立てもそうですか。
とてもいいデザインだと思うんですが。
- 齊藤
- やはり脚やトレイなど金属の加工が難しくなったことと、
何度も何度も水にふれるという使い方に
成型合板が向いていなかったんですね。
1年、2年、ハードに使っているとボロボロになる。
実用品とはいえ、1年や2年では早いということで
つくるのをやめてしまいました。
- 伊藤
- そうなんですね。
すてきなデザインなんだけれどな。
このマガジンラックも、
すごく形に惹かれます。
- 齊藤
- このマガジンラックは現在も生産しています。
ショップやブランドとの
コラボレーションもあるんですよ。
- 伊藤
- そうなんですね。
ほかにもコラボレーションは多いんですか。
- 齊藤
- はい、やっています。ここにあるものでは、
子供用のままごとの容れ物や靴べらなどがそうですね。
メーカーやブランド、ショップのかたがたから
依頼をいただいてつくるんです。
海外のかたから依頼を受けて
オリジナルでつくることもあります。
ぼくらの発想にない、
「何に使うんだろう?」と思うような
かたちや色のものがあったりして、面白いです。
でも商品化しなかった試作も山ほど。
- 伊藤
- スツールもありますね。
- 齊藤
- これもサンプルで終わりましたね。
耐荷重を考えて丈夫につくるため、
二重構造にしたんですが、
それがコストにはねかえり、
実現しませんでした。
- 伊藤
- 北欧的というか、
日本的ではないデザインも多く見られます。
外国のふるいホームドラマに出てきそうな
アイテムもたくさん。
- 齊藤
- そういったものは、祖父の時代、
輸出の全盛期のものです。
1960年代くらいまでは、
こういうものが多かったように思います。
‥‥これ、むかしの輸出用のカタログです。
- 伊藤
- わぁ、どれも素敵ですね!
おじいさまの時代は、どれぐらいの割合で
輸出をなさっていたんですか。
- 齊藤
- 100%が輸出でした、
世界中に出していたんです。
勢いのある時代ですよね。
とにかく作って売って。
- 伊藤
- ほんとうにいろいろなものを
つくられてたんですね。
- 齊藤
- 祖父が開発好きだったんですよ。
建築部材、たとえば家のドアも
成型合板でつくろうとして、
そのための高い機械を導入したんですが、
結局、製品化せずに無駄に終わっちゃいました。
それでも許されていた時代だったんですね。
- 伊藤
- 今回のバスケット、新色の黒は、
サイトーウッドさんの定番色の黒とは
違う仕上げなんですよね。
- 齊藤
- はい、だいぶ違います。
いちばんの違いは、「weeksdays」版は
木地が出ていないということですね。
- 伊藤
- ほんとうですね、
こちらは木目がわからないくらい。
- 齊藤
- 表面の材料も違うんです。
定番のものはアユース材ですが、
「weeksdays」ではシナ材です。
塗料もグレーと黒では違うんです。
グレーは顔料を混ぜていますが、
黒い染料なんです。
顔料のグレーは1回で塗りつぶしみたいな感じに
仕上がるんですけれど、
染料の黒は何回か塗らないと
真っ黒にはならないんです。
1回だと透けた感じになっちゃう。
ですから、仕上げまでに3回塗っています。
- 伊藤
- 乾かすのって、どのくらいかかるんですか。
- 齊藤
- 乾かすのは、すぐです。
10分とか20分ぐらい放っておけば、
さぁーっと乾いていくんです。
- 伊藤
- お客さまって、
どういう風に色を選ばれることが多いんですか?
もう好み? ご自宅のインテリアに合わせるとか。
- 齊藤
- そうですね。
インテリアに合わせる、というかたが多いですね。
ちなみに黒のバスケットは一時期売れなくて、
染料も高価ですし、
廃番にしようかと思ったこともあるんです。
でも2、3年ぐらい前からかな、
海外も含めて、黒が動くようになって。
- 伊藤
- 何がきっかけというのはわからない?
- 齊藤
- まったくわからないんです。
みなさんのインテリアの好みが変わったのかと。
ちょっと前までナチュラル系が
主流だったんですけれど。
白っぽいものや、濃いこげ茶系ですね。
最近それに加えて、
黒も動くようになってきました。
- 伊藤
- わたしが黒がいいなと思ったのは、
インテリアとの関係です。
今、ちっちゃい小屋を改装してるんですが、
黒いタイルを敷いたので、
それに合うんじゃないかなと思って。
- 齊藤
- そうなんですね。
かっこいいですね、きっと。
- 伊藤
- くずかごとしてじゃない使い方を
されてる方っているんですか?
- 齊藤
- うーん? やっぱりくずかごとして使うかたが
ほとんどだとは思います。
そうじゃない使い方の提案を
伊藤さんがコンテンツで
紹介されているのを見て、
「ああ、そうか!」と思いました。
伊藤さんのまわりでは
くずかご以外の使い方をするかたも
いらっしゃるんですね。
- 伊藤
- 布入れにするとか、
ストレッチポールを入れている人もいますし、
コロコロ(粘着テープ)や静電気防止スプレーなど
よく使うけれど目立たせたくないものを入れる、
という人もいますね。
- 齊藤
- なるほど、なるほど。
- 伊藤
- 使っていて飽きない、という声も多いですよ。
わたしたちが紹介する前から
持っているという人も、
ずっと使っていると。
- 齊藤
- 経年変化でちょっと色が取れてくると、
また、いい感じになってくるんですよ。
- 伊藤
- 和室に置くのに、
旅館のようなくずかごじゃないものをと
探していた方が、
これを見つけたという声も。
たしかに和室にも合いますよね。
- 齊藤
- 嬉しいです。
うちでは、蓋付きが、和室に好まれます。
中が見えないからでしょうね。
- 伊藤
- こうして工場を見せていただくと、
また、愛着が増す気がします。
齊藤さん、ありがとうございました。
成型合板でつくりたい製品が思いついたら、
またいろいろとご相談させてくださいね。
- 齊藤
- こちらこそありがとうございました。
どうぞよろしくおねがいします。
工場・2階へ
- 伊藤
- こんにちは、お邪魔します。
- 齊藤
- 1階で合板したものを、
2階ではカットしたり、底を入れたり、
塗装をして完成させるまでの作業をします。
- 伊藤
- 今日は2階に人が多くないのは、
いま1階の作業に
ほとんどのかたが取り組んでいらっしゃるから?
- 齊藤
- そうなんです。そういうシフトなんですよ。
それで途中になっているものが、
そのままここにあるのがおわかりかと思います。
ここでは色塗り前までの工程ですね。
- 伊藤
- 成型する過程で、部分的に壊れたり、
ささくれのようになってしまったものは、
2階で回復ができるんですか。
- 齊藤
- 直せるものは直していますけれど、
製品にならないものも出てしまいますね。
- 伊藤
- 端だったらカットすれば使えるのにと思いますが、
そうしたらサイズが変わってしまいますものね。
イレギュラーなことは、
工場では対応しづらいでしょうし。
いろいろたいへんですね。
- 齊藤
- そうなんです。
あ、これが底板です。
端に接着剤を塗り、台に置いて、
バスケットに叩き込んで位置を決めます。
- 伊藤
- ちょうど、はまるようにサイズがつくられている。
こういうことなんですね。
- 齊藤
- つくりはシンプルなので、もし外れても、
もう1回、接着剤でつけてもらえれば大丈夫です。
- 伊藤
- サイトーウッドさんのバスケット、
底板が外れることは、あまりなさそうですね。
そもそもくずかごとしてつくられていますから、
重いものを入れることはほとんどないでしょうし。
- 齊藤
- そうですね。
底に向かってすぼまっているので、
外れにくい構造になっています。
でも逆に、底から上に向かって抜けることは、
なくはないんですよ。
- 伊藤
- えっ、どんな場合にですか?
- 齊藤
- ごみ箱にしているかたが、
逆さにしてごみを出そうと、
思いっきり底を叩く場合です。
かんたんには外れないとはいえ、
何度も強く叩いていたら、
いつかは外れるかもしれない。
まあ、あるとすればそういうことです。
- 伊藤
- なるほど。
- 齊藤
- あ、きょう、2階で作業をしているのは彼だけです。
ちょうどいま蓋付きのバスケット用の
回転する蓋をつくっています。
- 伊藤
- ヘの字型になっている円形の回転蓋ですね。
先に合板を四角いまま曲げてから
円のかたちに切るんですね。
- 齊藤
- そうです。
のこぎりで粗く切ったあと、
端の処理をします。
地道というか、地味というか、
こうしたアナログな工程が多いんですよ。
そして‥‥。
- ──
- 広い場所に出ました。
ここで塗装を?
- 齊藤
- そうです。塗料が揮発するので、
ほかの作業場とは隔離し、
排気を強くしているんです。
- 伊藤
- そうですよね、
塗装のさいにほこりがついたりも
するでしょうし。
この工房の景色、素敵です。
- 齊藤
- 今日は作業をしていませんが、
バスケットは、ここに置いて塗装します。
こういうことは、先代のころから
変わっていないと思います。
同じようなやり方で、
逆に言えば、進歩のないままで。
- 伊藤
- いえ、デザインが変わらず、
つくりかたも変えずに
ずっと生産が続けられているというのは、
素晴らしいことだと思いますよ。
- 齊藤
- ありがとうございます。
この辺の作業台は、
お盆や蓋など平たいものを塗装します。
- 伊藤
- ありがとうございます。
お邪魔しました。
とっても広くて、作業の音もあるので、
自分の声が届いていないように思えますね。
- 齊藤
- はい、みんな大きな声で話さないと、
お互い聞こえないくらいです。
もともとは静岡市内に
もっと大きな工場がありました。
時代が経って生産量が減り、
大きい工場は必要がなくなったことと、
近隣の住宅地との関係もあって、
規模を縮小してここ(藤枝)に移転したんですが、
それでもじゅうぶん広いんです。
- 伊藤
- この近隣には、
いろいろな工場が集まっているようですね。
- 齊藤
- 藤枝って結構こういう木工場があるんです。
静岡市内から移転してきたところも多くて。
それでは、事務所に移動しましょうか。
工場見学スタート
- 伊藤
- 齊藤さん、この場所には、
プレスする前の木が保管されているんですか。
- 齊藤
- はい、そうです。
ここが材料置き場ですね。
- 伊藤
- 加工前の材木は、こんなに薄く、
削ぐように切られているんですね。
まるで経木(きょうぎ)のような薄さです。
- 齊藤
- 単板(タンパン)といいます。
厚さ、0.35ミリです。
いま、ごらんになっているのは、
アユースという南アフリカの木を、
人工的に白くしたもので、
成型合板の一番外側に使う
「突板(つきいた)」です。
天然木を薄くスライスすることを
「突く」というんですよ。
- 伊藤
- もうすこし、厚いものもありますね。
- 齊藤
- こちらは、内側に使うものです。
0.8ミリのものを3枚重ねて、
2.4ミリの厚さに加工したものです。
突板がかつお節を削るようなものだとすると、
こちらはバスケットの中に使っているシナ材で、
「ロータリー」という、
大根のかつら剥きみたいな方法でつくります。
これらを重ねて圧力をかけて、
「成型合板」をつくるんです。
- 伊藤
- こういった材料はすべて輸入なんですか。
- 齊藤
- はい、国産材はありません。
外側に使うために加工したものは中国、
ほかの材木は南アフリカのものが多いですね。
昔は外側には、チークやローズウッドなどを
使っていたんですけれど、
1990年代前半ぐらいからかな、高騰し、
やがて伐採が禁止されたり、
輸入が規制されて、手に入りにくくなりました。
- 伊藤
- なるほど、そんな背景が。
- 齊藤
- 今、天然木は、あっても高価ですし、
目が不揃いだったりするので、
ぼくらのように加工して
製品作りをするメーカーには使いづらいんです。
唯一、ウォルナットだけかな、
いまも天然木を使っているのは。
カナダに近い、
アメリカの北部から輸入しています。
- 伊藤
- そうなんですね。
‥‥この機械は?
とても古そうですね。
- 齊藤
- それは材料に穴を開けて、
大きな丸を取るための機械です。
うちは、どの機械も
みんな40年、50年、使ってますね。
木工の機械って基本的に
あまり変わらないんですよ。
だから技術革新も少ない。
全部自動という最新の機械も、
世の中にはもちろんあるんですけど、
うちの場合は、そんなに高度な機械を使わないので、
古くてもじゅうぶんなんですよ。
‥‥さて、それでは、
制作の現場をご案内します。
(別棟の工場へすすむ。)
- 伊藤
- うわぁ、とっても広い!
- 齊藤
- ここは材料をカットする場所です。
きょうは、カットするものがないんですけれど。
- 伊藤
- 「今日はカットの日」みたいになさっているんですか。
それとも、都度都度で?
- 齊藤
- なんとなく「カットする日」が決まっていますね。
- 伊藤
- 工場のみなさんには、担当があるんですか。
それとも、基本的に一連の作業が
すべてできるんでしょうか。
- 齊藤
- だいたい1人、2~3工程を担当します。
最初から最後まで1人で全部できる、
という人も、少ないけれど、いますよ。
忙しかった時代には、
材料を切るだけ、というふうに、
工程ごとに専任者がいて、
それで大量のものづくりをしていました。
いい時代でしたね(笑)。
- 伊藤
- 「weeksdays」で扱わせていただいている
バスケットの場合、
ひと月で、どのくらいの数を
生産することができるんですか。
- 齊藤
- 合板の作業のあとに
熱を加えて丸くする作業があり、
カットそして底板などの組み立てから、
塗装までを全部やって‥‥月産200個程度ですね。
いろんなアイテムがあるので、
なかなか効率よくはできないんです。
- 伊藤
- この、扇型に切り出された材木を丸めると、
バスケットの形になるんでしょうか。
- 齊藤
- そうです。
ここには901という番号が書いてあります。
「weeksdays」のものは903という、
もうひとまわり大きいサイズです。
- 伊藤
- こちらでは糊付けをなさっていますね。
- 齊藤
- そうです。成型合板をつくるため、
倉庫で見ていただいた薄い木材を
縦目、横目の順に重ねて、
外側に突板を合わせて糊付けをします。
- 伊藤
- それを、隣の工程で、プレスする?
- 齊藤
- そうです。
- 伊藤
- ‥‥なるほど、プレスというのは、
バスケット状の金型の枠に、
糊付けをして重ねた材料を丸めて入れ、
内側にきっちりと金属のブロックをはめて
固定させる、ということなんですね。
- 齊藤
- そうです。木づちで打ち込み、
しっかりと枠にはめます。
同じ型が6セットあって、
順番に熱い炉のなかに入れ、
20分ほどぐるりと回して成型・固定をするんです。
炉の中は、90度から100度ぐらいです。
バスケットのような製品には
この工程が必要ですが、
平面的な成型合板をつくるときは、
プレスして熱を架けて圧着させるので、
また機械が異なるんですよ。
‥‥さて、それでは工場の2階をご案内しますね。
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 09 雑貨
迷い甲斐のある小さなものたち
バッグもピアスも老眼鏡も。
「プラスするとちょっと洒落た雰囲気になる」
といううれしいものばかりを揃えました。
この機会に、買い足そうかな‥‥と、
気持ちはぐらぐら。
お買いものって迷う時間も含めて、
やっぱりたのしいものですね!
(伊藤まさこ)
-
MAISON N.H PARIS
RAJANTAN BIG Cutting Bag
BLACK×BROWN -
MAISON N.H PARIS
RAJANTAN BIG Cutting Bag
BLUE × NAVY -
MAISON N.H PARIS
RAJANTAN BIG Cutting Bag
TAWNY OLIVE × COFFEE LIQUEUR -
KARMAN LINE
コットンタイツ
カーディナルレッド -
JINS
セルフレーム
ライトブラウン -
JINS
セルフレーム
カーキ・ササ -
himie
輪なげピアス S
K18YG /シングル -
himie
輪なげピアス S
PT /シングル -
himie
輪なげピアス L
K18YG /シングル -
himie
輪なげピアス L
PT /シングル
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
1月18日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
SAITO WOOD
BASKET
ストーングレー
フローリングにも、またカーペットにも。
白い壁にも、
または我が家のような水色の壁にも
しっくりくる色合い。
控えめながらも、
部屋の片隅にあるとなんだかうれしい、
バスケットです。
このバスケットを使いはじめてから、
我が家はゴミのことを
今一度、考えるきっかけができて、
ゴミが減りました。
だって、せっかくの気に入り、
中に入れるものだって
「ぐちゃぐちゃ」はいやですもの。
さてこのバスケット、
その名の通り、中に入れるものはなんでもいいんです。
撥水加工もされているので
(とは言っても、水を直接入れることや、
湿ったものをずっと入れておくのはダメですが)、
お客様用の使い終わったタオルを入れたり、
子どものおもちゃを入れたり、
領収書の一時保管場所にしたりと、
用途はいろいろ。
(伊藤まさこ)
捨て方
「ゴミの捨て方にもセンスが必要だと思っているんです」
そう言ったのは、
料理家のウー・ウェンさん。
それを聞いた時、
うむーっと唸ったものでした。
すごい名言だなって。
以来、ゴミに対する私の考えは変わりました。
なんでもかんでも、
ポイポイ捨てればいいってもんじゃない。
どうしてこのゴミが出るんだろう?
減らすにはどうすればいい?
ゴミを捨てる時、
一旦立ち止まる。
そうすることで、
我が家のゴミはずいぶんと減ったのでした。
横姿も、上から見た姿も。
どこからみてもきれいなバスケットにふさわしいのは、
「センスのいい捨て方」。
今年最初のweeksdaysは、
サイトーウッドのウッドバスケット。
新たに、
黒が仲間入りしましたよ。
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 08 旅のアイテム
weeksdaysで旅支度
だんだんと旅に出る機会も多くなってきましたね。
この冬休み、私のまわりは南の島に行く人多数。
「weeksdaysで旅支度をしました」
なんて声もちらほら聞こえてきました。
帽子に水着にサンダル、それから夏気分を盛り上げる、
涼しげなバッグの数々。
旅支度はもちろん、
今年の夏に身につけたいアイテム多数です。
(伊藤まさこ)
-
cohan
水着 ワンピース -
chisaki
ENRIE
RAFFIA×Y.BEIGE -
chisaki
STRAW BAG
NATURAL × GREY -
chisaki
STRAW BAG
BLACK × GREY -
BARI
レザーサンダル
スネークベージュ -
BARI
レザーサンダル
クロコブラック -
MAISON N.H PARIS
LEILA ラフィア ショルダーバッグ
SUCRE BRUN -
MAISON N.H PARIS
LEILA ラフィア ショルダーバッグ
NOIR -
saqui
レースバッグ
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 07 アウター
肌寒い時には
アウターも豊富なweeksdays。
MOJITOのAL’S COATやパーカは、
私の暮らしにもはやなくてはならない
アイテムとなっています。
先日、取材に行ったらスタッフ4人全員が、
パーカを色違いで着ていた‥‥という
びっくりなできごともありましたっけ。
着心地抜群カシミヤのリバーシブルコート、
春に向けてあると重宝するデニムジャッケットなどなど、
この機会にいかがですか?
(伊藤まさこ)
-
HARRISS GRACE
カシミヤリバーシブル ノーカラーコート(ボタン)
ネイビー/グレー -
COG THEBIGSMOKE IMAN DOUBLE-BREAST COAT BLACK
-
COG THEBIGSMOKE IMAN DOUBLE-BREAST COAT TABACCO
-
COG THEBIGSMOKE PENTAGON COAT オリーブ
-
MOJITO PARKA,MAN’S, M-23 ベージュ
-
MOJITO PARKA,MAN’S, M-23 カーキ
-
MOJITO AL’S COAT
ベージュ -
MOJITO AL’S COAT
モスグリーン -
MOJITO AL’S COAT
ネイビー -
SEVEN BY SEVEN 3RD TYPE DENIM JACKET
-
SEVEN BY SEVEN STRAIGHT JEANS
-
BonBonStore
スタンダード長傘(雨傘)
チェック ブルー×レッド
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 06 ワンピース
冬にこそ
一枚着ればコーディネートは完成!
年中大活躍のワンピースは、
みんなの(私も)味方。
カップ付き、カシミヤ素材、
着心地抜群のツイストコットン‥‥
どれもシンプルなだけに、
着こなしの幅が広がること間違い無し。
重ね着やストールを巻いて、
冬のワンピースおしゃれをぜひ。
(伊藤まさこ)
-
cohan
カップ付ギャザーオールインワン
レーズン -
cohan
カップ付ギャザーオールインワン
ネイビー -
cohan
カップ付五分袖ワンピース
グレー -
cohan
カップ付五分袖ワンピース
ネイビー -
SLOANE
ツイストコットンワンピース
ボーダー -
SLOANE
ツイストコットンワンピース
ブラック -
SLOANE
ツイストコットンワンピース
グレー -
THE LIBRARY
シルキーダブルフェイス ワンピース
アイボリー -
miiThaaii
シルクコットンのワンピース
モーヴ -
miiThaaii
シルクコットンのワンピース
チョコレート -
Honnete
Tie Collar Dress
ホワイト -
weeksdays
Vネックのカシミアワンピース
グレー
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 05 家の中のもの
いくつあっても
家の中のものも充実しているweeksdays。
毎日のように使っている
オーバルプレートの大きなサイズや、
カッティングボード、ガラスの器などがセールに登場。
もうすでに持っている‥‥のですが、
これを機会に買い足そうかな、なんて思っています。
シンプルなものはいくつあっても困りませんから!
(伊藤まさこ)
-
松徳硝子
ガラスのうつわ 小 -
松徳硝子
ガラスのうつわ 中 -
松徳硝子
ガラスのうつわ 大 -
松徳硝子
ガラスのコップ -
松徳硝子
デキャンタ -
松徳硝子
かたくち -
東屋
オーバル皿 土灰釉・大 -
東屋
オーバル皿 石灰釉・大 -
東屋
折敷 胡桃油仕上
小 -
東屋
カッティングボード
#1 -
山口和宏
山口和宏さんのカッティングボード
180mm×180mm -
fog linen work
リネンコンフォーターケースシングル ホワイト(さらさら) -
DRESS HERSELF
シルクのピローケース -
DRESS HERSELF
シルクのシーツ
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 04 下着
プレゼントにも!
年始に下着を一新したい。
そう思っている方、
weeksdaysの下着はいかがでしょうか。
チュールのアイテムは速乾性があり旅にも重宝。
シルクのスリップはとかく揺らぎがちな今の季節の肌に、
やさしく寄り添ってくれます。
そうそう、寝る時の必需品ナイトパンツや、
松林誠さんのハラマキもお忘れなく。
プレゼントにもマル、ですよ。
(伊藤まさこ)
-
cohan
チュールアジャスターブラ
ブラック -
cohan
チュールアジャスターブラ
コーラル -
cohan
チュールハイウエストショーツ
ベージュ -
cohan
チュールハイウエストショーツ
ブラック -
cohan
チュールハイウエストショーツ
コーラル -
cohan
チュールネットショーツ
ブラック -
cohan
チュールネットショーツ
ベージュ -
cohan
チュールネットショーツ
ターコイズ -
cohan
チュールネットショーツ
グリーン -
cohan
シームレスバックシャンブラキャミ
グレージュ -
cohan
シームレスバックシャンブラキャミ
グリーン -
cohan
シームレスブラキャミ/ノーマルカップ
ブラック -
cohan
ナイトパンツ
ブラック -
cohan
ナイトパンツ
チャコール -
cohan
シームレスショーツ
ブラック -
cohan
シームレスショーツ
モカ -
DRESS HERSELF
シルクのキャミソールスリップ
グレー -
DRESS HERSELF
シルクのキャミソールスリップ
生成り -
松林誠
松林誠さんのハラマキ
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 03 ふわもこ
まるで、ぬいぐるみのように
ふわふわ、もこもこしているものが好きなんです。
寒い季節は、
身につけているだけで幸せな気分になるから。
もちろん「あったかい」というところもポイント。
まるでぬいぐるみのように、
よしよし、と触られることも多いのですが、
その触っている人の表情がやさしい。
ふわもこアイテムのいいところって、
「あったかい」だけじゃない。
人を幸せにする何かがあるのです。
(伊藤まさこ)
-
Harriss
エコファーベスト
ベージュ -
Harriss
エコファーベスト
ブラック -
RaPPELER
ムートントートバッグ
ブラック -
chisaki
MOMO -
Owen Barry HOLBORN CANELA WHITE
-
Owen Barry HOLBORN CROMITA
-
Owen Barry HOLBORN BLACK
-
trippen
RESCUE-MON
VERO -
trippen
LEHMANN-MON
NAVY -
trippen
LEHMANN-MON
PERLA -
ROROS TWEED
湯たんぽ
アップルレッド -
ROROS TWEED
湯たんぽ
フォレストグリーン -
Owen Barry
ポーチ
アイボリー -
P.H.DESIGNS
ダウンのキルトスカーフ
グレー
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 02 ニットとボトムス
動きやすさも自慢です
weeksdaysチームやスタッフが集う、
撮影現場では、
かなりの確率でだれかがweeksdaysのニットを着ている。
(いつも一人か二人はいるんです)
着心地よく、見た目にスマート。
動きやすいというのもえらぶ理由。
ニットもスカートもキュロットも、今買えば春まで、
いえいえ、その先も着られるものばかり。
この機会にどうぞ。
(伊藤まさこ)
-
nooy
レターニット
lemon -
nooy
レターニット
orange -
nooy
レターニット
black -
nooy
ラウンドネック/ウール
ネイビー -
nooy
ラウンドネック/ウール
ブラック -
SLOANE
2WAYプルオーバー
アイボリー -
SLOANE
シルクワイドフィット半袖モックネック
ブルーグレー -
SLOANE
シルクワイドフィット半袖モックネック
グレー -
MOJITO
RIVER FOREST C.NECK
オフホワイト -
MOJITO
RIVER FOREST C.NECK
ブルーグレー -
THE LIBRARY
オーガニックコットンプルオーバーニット
ブラック -
THE LIBRARY
オーガニックコットンプルオーバーニット
ネイビー -
THE LIBRARY
オーガニックコットンプルオーバーニット
ベージュ -
nooy
ポケットスカート
super120ウール・グレー -
nooy
ポケットスカート
ジャガード・ベージュ -
nooy
ポケットスカート
super120ウール・ネイビー -
SLOANE
キュロット
グレー -
SLOANE
キュロット
ネイビー -
MOJITO
GULF STREAM SHORTS
オリーブ -
MOJITO
GULF STREAM SHORTS
ホワイト
「ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy!」に「weeksdays」も参加します。
2024年1月14日(日)午前11時から
1月31日(水)午前11時まで開催する、
「ほぼ日ストア特別セール2024
Hello! Good Buy!」。
「weeksdays」の一部商品も、
こちらのセールに並びます。
期間中は、対象商品が
20%~50%ほどの割引価格でお求めいただけます。
割引対象商品は、
特設ページでのみご購入いただけますので、
通常の「weeksdays」ページではご購入いただけません。
なにとぞ、ご了承ください。
割引対象商品ラインナップについては、
1月12日(金)午前11時に公開しますので、
特設ページをご確認くださいね。
よい買いものをしよう! ~ほぼ日ストア特別セール2024 Hello! Good Buy! にむけて~ 01 トップス
ふだんは着ない色にもトライ
クローゼットにずらーっとかかった私のトップス、
ほぼweeksdaysのものなんです。
ウォーキングする時は体に寄り添い、
適度なゆとりがあるフィットネスTシャツ。
家でリラックスする時はnooyのTシャツ。
出かける時は、COGのカラフルトップス‥‥。
一枚で着るのはもちろん、
秋冬は重ね着して一年中たのしんでいます。
ふだんあまり着ない色にトライしやすいのも
セールのよいところ。
「意外にこの色、似合った!」
なーんて新しい発見があるかもしれませんよ。
(伊藤まさこ)
-
ALWEL
3/4 SLV HIGH NECK T
ブラック -
ALWEL
HALF SLEEVE LONG T
レッド -
cohan
フィットネス Tシャツ
ブラック -
THE LIBRARY
シルキーダブルフェイス プルオーバー
トマト -
COGTHEBIGSMOKE
FELICIA TOP
EMERALD -
COGTHEBIGSMOKE
FELICIA TOP
IMPERIAL RED -
COGTHEBIGSMOKE
FELICIA TOP
ROYAL BLUE -
STAMP AND DIARY
ノースリーブプルオーバー
レッド -
Honnete
New Crew Neck T
ホワイト -
Honnete
No Collar Chinese Shirt
White -
nooy
ロングドレープtee
ホワイト -
saqui
ビッグスリーブ ブラウス
よい買いもの
伊藤家のお正月の恒例行事は、
家族揃ってのトランプ大会。
それから横浜中華街へのお出かけ、
でした。
いつもの店の変わらぬ味。
今日もおいしかったね、
ああ、お腹いっぱい。
なんて口々に言い合いながら、
中華街での食事の後はきまって、
元町まで腹ごなしの散歩をします。
元町では、
父がなにか買ってくれる、というのも毎年の恒例。
私は元町ユニオンでお菓子?
(当時は外国のお菓子がめずらしかったんです。)
姉はMIHAMAで靴をえらんだのかな?
(ハマトラって知ってますか? 時代ですね。)
何を買ってもらったかは忘れてしまったけれど、
わくわくしながら石畳の商店街を歩いたのは覚えてる。
そうだ。
「買いものにわくわくする」という感覚、
きっとあの時がはじめてだったに違いない。
さてさて、年が明けました。
今年最初のweeksdaysは、
ほぼ日の「ほぼ日ストア特別セール
Hello! Good Buy!」にちなんで、
よい買いものをしよう! と名づけて、
セールのアイテムをご紹介します。
石畳を歩きながらウィンドーショッピング、
ではなくって、
家に居ながらにしてお買いものできちゃう。
子どもの頃は、
まさかそんな日が来るなんて、
思いも寄りませんでしたが、
「たのしい」のはどちらも同じ。
よいお買いもの、しようではありませんか!
一年のおわりに
秋に久しぶりに台湾を旅してきました。
4年ぶりの台北の街は、
変わらずやさしく、
そしてパワフルでした。
ああやっぱりいいなぁと思ったのは、
茶藝館でのお茶の時間。
シュンシュンというやかんの音を聞いているうちに、
気持ちがおだやかになっていく。
こんなの久しぶり‥‥
と思っているうちに、
ハタと気がついたのでした。
ふだんの私はやかんの音など、
気にも留めていなかったことに。
いかんいかん。
時々、立ち止まらないと。
お湯が沸く、このなんともいえないいい音も、
このままでは気づかずに歳をとってしまうぞってね。
さてさて、
今年で6年目を迎えたweeksdaysですが、
この年末からは時おりお休みをいただくことにしました。
気持ちのティータイムを取り、
身も心もさらに研ぎ澄まして、
さらによいものを見つけていこうではないか!
なーんて思っています。
年明けからはページも少しリニューアルするんですよ。
新しいweeksdaysをどうぞおたのしみに。
わたしたちの将来
- 伊藤
- お仕事のスペースを
スキップフロアにしたのには
どんな意図がおありだったんですか。
- 小林
- 住宅地の建築制限のなかで2階建てをつくると、
1階の天井がどうしても高くとれないんです。
けれども仕事場はちょっとでも高く感じたい。
ですから基礎の上に直接床を敷き、
フロアを下げることで天井高を出しました。
もちろん床には断熱材を入れ、床暖房も入れて、
寒くないようにしています。
- 伊藤
- 階段を数段下りただけなのに、
急に仕事モードになる。
すばらしい効果ですね。
- 小林
- キッチンからこちら側は配管の関係で
あんまりフロアを下げられない、
ということもありました。
- 伊藤
- でもご飯を食べるのは、
高すぎない天井、いいですよ。
- 小林
- そうなんです。
天井って高すぎても落ち着かない。
リラックスして食事をしたいダイニングは、
高くする必要はないなと思いました。
- 伊藤
- 天井の高いダイニングは、
それこそお店みたいな感じになりますね。
ちょっと緊張感が出る。
- 小林
- そうですね。
広いリビングや高い天井の部屋って、
なぜかみんなはじっこに集まったりして。
ふふふ。
- 伊藤
- うんうん(笑)。
マナさんのおうちは、
そこかしこに椅子が置かれていますね。
- 小林
- はい、椅子は好きで、
ちょこちょこ買ってしまうんです。
座るためだけじゃなく、
ちょっとした物置きにもなるし、
上の本を取るための踏み台にもなるし。
- 伊藤
- そっか、そっか。
2階ではリビングにクッションが置かれていて、
いわば「収まる場所」がありました。
そんなふうな、住まいのスペースのつくり方って
とっても興味があるんです。
- 小林
- はい、すっごくおもしろいです。
独立前、夫はインテリアデザイナーの
仕事をしていたんですが、
私はディスプレイの仕事をしていたので、
つくっては壊し、つくっては壊しが当たり前で、
ちょっとさみしい感じだったんですよ。
せっかく徹夜までして大変な思いをしてつくっても、
期間限定で終わっちゃう。
ところが旅行から帰ってきて、
彼の仕事を手伝うようになったら、
「あ、残るって、いいな」と思って。
店舗設計を始めたのも新鮮でした。
人がどう入ってくるのが自然かという
動線を考えることが楽しくて。
- 伊藤
- それがおうちにも生きているんですね。
- 小林
- まさしくそうですね。
このキッチンもそうです。
キッチンってだいたい間取りのなかで
どんつき(突き当たり)のところにあって、
そうなると複数人が入るとギューギューになって、
動きのとれない人が出てくるんですよ。
とくにここはひとりで使うわけじゃないので、
往き来がしやすいように。
- 伊藤
- たしかに、すれ違うのがきつい動線の
キッチンもありますよね。
ここだったら大丈夫ですね。
- 小林
- そう、調理中に、後ろも通れますし、
混んでいたら迂回もできます。
全体を回遊できるようにしたら、
老犬がグルグル回って、
運動になってちょうどよかったです(笑)。
- 伊藤
- そういえばお店でも、
広いけれど、なんとなく
動きに迷うところもありますね。
扱う品物によっても違いますよし。
- 小林
- そうですね。ただ日本人のメンタルで言うと、
レジが入り口の正面にあると入りにくい、
とか、そういう共通項はあるんですよ。
- 伊藤
- ああ、なるほど!
- 小林
- レジが目立つと、入り口から近い所だけを見て、
奥まで行かないで帰っちゃう。
最近はインバウンドの方も増えてきて、
そういう方たちは全然平気なので、
お店のつくり方も、ちょっと変わってきましたが。
- 伊藤
- へぇ、日本人ならではの
お買い物のメンタルがあるんですね。
日本人は、レジはどこがいいんですか?
- 小林
- ほかの人から見えづらい場所ですね。
お会計が人から見られていると思うと、
入りにくいって考えちゃうんです。
もちろん買いたいものがハッキリとある方は、
平気なんですけれどね。
あとは、手にとりやすいものが手前で、
落ち着いて見たいものは奥にあるとか。
- 伊藤
- いろいろ考えることがあるんですね。
マナさんのお仕事は考えるヒントが
日常のなかにたくさんおありだろうし、
夫婦で同じ仕事をなさっているうえ、
こうしてプライベートと仕事の場所が近いわけですが、
オンとオフの切り替えは‥‥、
やっぱりお酒だったりするんですか。
- 小林
- そうですね。お酒‥‥も、ありますね。
でもオン、オフ、けっこうはっきりしてますよ、
仕事が7時に終わったらみんなが帰るので。
残業は基本、なしです。
- 伊藤
- なるほど、ふたりになったら、
それが切り替えの合図。
- 小林
- そうですね。
「もうビール飲む?」って。
とはいえ、仕事の話もしますけど、
- 伊藤
- このおうちがきっかけになって
気づいたことや変化って他にありますか?
- 小林
- 1階で靴の生活をしだしたことで、
すぐテラスに出たり、
すぐお散歩に行ったりができて、
すっごくフットワークが軽くなりました。
前は「どうしよう、出かける? 出かけない?」
だったのが、その選択がなくなりました。
「空を見に行こう」というくらいの
きっかけで出かけたり。
というのも、ここから緑は見えますが、
あんまり空が見えないんです。
だから外がちょっとピンク色の気配に
なっていたりすると、
夕焼けがきれいにちがいないと、
公園にぱっと行っちゃいます。
そういうフットワークの軽さが、
すごくいいなと思ってます。
- 伊藤
- 靴を履くって、ワンアクションありますよね。
- 小林
- そうなんです。
- 伊藤
- でも逆に、2階に上がる階段はいいですね。
一回、靴を脱いで。
- 小林
- そうですね。上にいる時と、下にいる時で、
それが大きな違いですね。
上にいると静的、
下にいると動的になります。
- 伊藤
- わたしが「気に入った室内履きがないから、
家を土足にしたい」って言ったら、
娘に反対されました。
「落ち着かないから嫌だ」って。
- 小林
- あはは、すべてが靴だと、そうかもしれません。
あとは、テラスでご飯を食べるようになりました。
集合住宅だと、テラスやベランダ、バルコニーって
あってもなかなか使わないんです。
でもここでは活用しています。
- 伊藤
- さぞや、気持ちいいでしょうね。
夏の夕暮れとか、お酒がおいしいでしょう。
- 小林
- 最高です。
春先とか、新緑の頃とか。
- 伊藤
- こうして素敵なお宅にお邪魔すると、思うんです。
好きなものに囲まれたい気持ちは、
最初はうつわとか、毎日使うものではじまり、
次にテーブルなどの家具、
どんどん大きくなってきて、
結局、家がつくりたくなるって。
- 小林
- 伊藤さんにもぜひつくっていただきたいです。
- 伊藤
- これから年を重ねていっても、
快適に暮らせる家を考えたいですよね。
- 小林
- たとえば高齢者の暮らしに対応することを考えると
まず手すりをつけるんですが、
そこにいいデザインのもの、
あたたかみのあるものって、あんがいないんです。
でも、つくればいいんですよね。
- 伊藤
- マナさんたちにも考えてもらいたいな。
老人ホームや高齢者住宅の依頼はこれまでには?
- 小林
- 子ども園的な施設のデザインは
手がけたことがあるんですが、
高齢者向けの案件は、まだ、ないですね。
すごく、やりたいんですけどね。
身体に自由がきかなくなってきた人たちが
のびのびと住める小さめの集合住宅とか。
- 伊藤
- そうですね。
ちょっと助け合えるぐらいの距離感、
いいですよね。
段差がなく、ちゃんと手すりがあって、
温かくて風通しがよくって、気のいい家。
- 小林
- そうですね。
そして、すぐに出かけやすい家。
いま、私たちがしているように、
寝室だけ靴を脱いで入るという間取りも
考えられるんじゃないかなと思います。
- 伊藤
- 街の中にあるというのもいいかも。
自分で買い物に行け、
自立した生活が送れますから。
- 小林
- 最後まで自分で買い物して、みたいな暮らし、
憧れますよね。
やっぱり自分で動ける、
動きやすい家がよさそうです。
‥‥なんて、私たち、
何の話をしているんでしょう(笑)。
- 伊藤
- ふふふ、でもみんながほしがっていることですよね。
マナさん、またぜひ、いろいろとお話、させてください。
今日はほんとうにありがとうございました。
- 小林
- ぜひ、また、いらしてくださいね。
ありがとうございました!
旅と地続きの暮らし
- 伊藤
- お忙しく過ごされる中で、
旅もお好きだとお聞きしました。
- 小林
- はい、そうなんですが、
独立して仕事を始めてからは、
旅というより出張のほうが多いんです。
仕事で旅をしているという感じ。
あるいは仕事で行った先で時間をつくって、
近くにある建築を見に行ったりとか、
美術展を見に行ったりとか。
- 伊藤
- 旅も、仕事とプライベートが地続きなんですね。
そこで見たものからインスピレーションを受けて、
また仕事の形になったりもするでしょうし。
じゃあ、「ちょっとのんびりしていこう」というよりは、
「ついでに、あそこにも行ってみよう」という
行動的な感じ?
- 小林
- はい、夫が好きなんですよ、旅のこまかい計画が。
だから私たち、プライベートの旅でも移動が多くて、
たとえばリゾート地で3日間、
のんびりしたことなんてないんです(笑)。
- 伊藤
- そうなんですね!
マナさんもそれにお付き合いして?
- 小林
- そうですね。
「さすがに詰め込みすぎじゃない?」
とか言いながら、一緒に行動してます。
私もまあまあそういうのが好きなんですね。
でも、忙しいのが好きだなんて、
あんまり北欧的じゃないですね(笑)。
- 伊藤
- そういえば、おふたりで
何カ月も海外を旅されたことがあるとか。
- 小林
- はい、独立して仕事を始める前のことです。
私たち、同い年で、
新卒でそれぞれ7年くらい会社員をしていました。
結婚してから2人とも会社を辞め、
いっしょに事務所を立ち上げようと。
その時じゃないと長い旅には行けないと思ったので、
半年間、17カ国、70都市に行きました。
- 伊藤
- えっ! ヨーロッパ方面だけで?
- 小林
- はい、ヨーロッパです。
トルコから入って、ギリシャに行って、
北欧からヨーロッパ全土を回りました。
1日で3カ所、電車を降りて
回ったりもしたんですよ。
- 伊藤
- すごい!
そういった計画を立てるのは
やっぱりご主人?
- 小林
- そうなんですよ。
スマホがなかったから、時刻表を持って。
- 伊藤
- なんでしたっけ、トーマス‥‥。
- 小林
- トーマス・クック!(*)
伊藤さん、よくご存知。(*)トーマス・クックは英国の旅行会社。その出版部門が出していた時刻表『Thomas Cook European Timetable』は、1873年から2013年まで発行された。現在は『European Rail Timetable』に引き継がれている。
- 伊藤
- なぜ知っているかというと、
義理の兄が前職を辞めて、
独立開業をする間の数ヶ月間、
同じようにヨーロッパを旅したんです。
そのとき姉夫婦が頼りにしたのが
トーマス・クックの時刻表だったと、
聞いたことがあったんですよ。
- 小林
- うんうん。一緒です。
- 伊藤
- 当時はデジタルカメラもなかったですよね。
- 小林
- そう! 36枚撮りフィルムを100本、
持って行きました。
でもだんだん残り枚数がなくなるので、
「いや、ここは撮らなくていいだろう」とか。
- 伊藤
- 今みたいにとりあえず撮っておいて、
あとで削除とかできないですもんね。
でも逆に決めて撮ることが、
よかったのかもしれないですね。
その時の膨大な写真は、今は?
- 小林
- 選んでプリントアウトしたんですけど、
それも膨大な数になったので、
さらに選んでアルバムにしました。
- 伊藤
- いまでも、旅は多いですか?
- 小林
- そうですね。
国内では出張に行くついでに、2~3日とか。
仕事は全国的にやっているので。
- 伊藤
- 店舗、住宅、展覧会の会場構成まで
なさっているんですよね。
ずいぶん違うお仕事だと思うんですが、
どうやって気持ちを切り替えるんですか。
- 小林
- 気持ちは‥‥、切り替えないんです。
どんな仕事も同じで、
物件がきたときに、まずすごく調べます。
そして新しいアイデアが出るまで、みんなで話す。
昨日もそんなことがありました、
クライアントの方と3人でご飯を食べながら、
おもしろいアイデアが決まって、
それに発展させて、さらにずーっとしゃべって。
どの仕事も、そういう感じですね。
- 伊藤
- それはとってもおもしろそうですね。
でも切り替えをしないって、
住宅と展覧会と店舗では、
わたしからすると、
全然違うように思えるんです。
- 小林
- そうなのかもしれないんですが、
2人で独立した32歳の時から、
少なくても同時に5案件、
普通に10、15ぐらいが同時に動いているので、
切り替えていると逆に大変っていうか(笑)。
- 伊藤
- きっと、頭の中に、
いろんな引きだしがあるんですね。
たとえば住宅で使うテクニックや物が、
会場構成や店舗のヒントになることも?
- 小林
- そうですね。
たとえば、ですけど、
お店だったら居心地のいい、
家のようなお店を考えますし、
住宅の仕事だったら、
ちょっと非日常が出るように、
店舗の技術をちょっとだけ使ったりもします。
お客さまの目から隠すこととか、
バックヤードにストックの場所をつくるとか、
店舗から住宅にも応用できることってあるんですよ。
間接照明を住宅のキッチンの後ろに入れると、
キッチンとダイニングが温かな感じになる、
というのもそうですね。
ちなみにこの部屋(ダイニング)も、
今は全体的に明るい照明ですが、
夜、落ち着きたい時はスポット照明にして、
一瞬、暗いと感じるくらいまで光量を落とすんです。
‥‥スイッチを切り替えてみますね。
友人と集まるような時は、
夜ごはんはこういう感じで。
- 伊藤
- わぁ!
たしかに、落ち着きます。
住宅の設計っていうと、
まず「形」や「間取り」だけれど、
窓からの光の当たり方や、
照明ってすごく重要だと思うんです。
- 小林
- そうです。すごく重要です。
- 伊藤
- ところが、わりとみなさん、
照明のこと、後回しにされますよね。
- 小林
- そうなんですよ。
というのも「明るい」ことに慣れているんですよね。
昭和時代、私たちの親世代は、
もう隅々まで明るいのが正しかったんです。
- 伊藤
- そうですね。実家もそうでした。
でも、改めて思うんです、
「明るすぎない」って、居心地がいいですよね。
- 小林
- そう、すごく居心地がいい。
最近、夜、家々やマンションの
窓からこぼれる光を見ると、
だいぶ白く煌々とした照明のおうちが減りましたよ。
温かくて、明るすぎない光になってきました。
私、いつも見てるんです。
- 伊藤
- わかります。そうですね。
みんな、だんだんと、
それが気持ちいいっていうことがわかって。
マナさんたちは、施主さんにも、
照明の提案をされるんですか?
- 小林
- そうですね。
「リビングはそんなに明るくしなくてもいいけれど、
キッチンはこまかい作業をするから
明るくしましょう」とか、
そういう提案は常にしています。
- 伊藤
- 「やっぱりそうしてよかったです」と
おっしゃられるんじゃないですか。
- 小林
- はい、嬉しかったのは、
「キッチンで働く感じが、すごく美しく見えます」
と旦那様がおっしゃってくださったんです。
奥様を見た時に、すごく美しいと感じたんですって。
- 伊藤
- なんと! うれしいですね~。
- 小林
- そして、インテリアといっても、
表面的なものだけではないんです。
動線もそうですしね。
- 伊藤
- つい、テーブルをどうしようとか、
ソファは、とか、
家具のことばかりに目がいくけれども、
動線ってすごく大事です。
- 小林
- この家はキッチンが真ん中にあって
まわりをグルグル回れるっていうのが、
すごくいいんです。
- 伊藤
- そうですよね。
ものがあっても、ノイズはない
- 小林
- ここが、リビングルームです。
- 伊藤
- わぁ。マナさんのおうち、ほんとうに、
北欧みたいです。
天井の高さと光のまわり方と、
周辺の緑の多さ‥‥。
- 小林
- 実は大きな開口部は北側に面しているんです。
南側は、すぐそばにおうちが建っているので、
上だけオープンにしています。
北側の窓からの景色って、
南からの日が当たるのが見えるので、
緑がとてもきれいなんですよ。
- 伊藤
- 北側の開口部は、直射日光が入らないけれど、
室内に届く光が安定しているんですよね。
- 小林
- そうなんです。
事務所のほうも光が一定なのがよくて、
開けっ放しで過ごすことも多いんです。
- 伊藤
- ほんとうに、緑がいっぱい。
- 小林
- 紅葉の季節もきれいですよ。
しかも静かで、夜なんて、
最初の頃はちょっと怖いくらいでした。
最近は慣れましたけれど。
公園はいいですね、
枯れた木があると切ってくれるし、
ある程度、剪定もしてくれるし。
- 伊藤
- そして、ここにも、ロフトが!
- 小林
- そうなんです。ここも上はロフトになっていて、
お友達が来て泊まったりするときに使います。
リビングルームで寝てもらうことも多いですけど。
- 伊藤
- リビングルームはソファではなく、
クッションだけというのもいいですね。
- 小林
- そうです。このクッションは、
ミナ・ペルホネンさんの生地で、
生地自体がリバーシブルになっているので、
経年変化で反対側の色が出てくるはずなんですけど、
なかなか丈夫で、もう7年くらい経っているのに、
きれいなままなんですよ。
ネコが爪を研ぐ場所はボロボロになっちゃってますけど。
このクッション、お友達のお子さんが来る時は、
床ぜんぶに広げたりしますよ。
- 伊藤
- とても便利そう。
そして、飾り棚!
すごくすてきです。
刺し子の布が飾ってありますね。
- 小林
- これは、ミャンマーのものかな?
キルティングみたいな感じになっているんです。
この棚、本棚にするとか、
ほんとはもうちょっと普通に、
実用として使おうと思っていたんですよ。
けれども、ここにいろいろ詰まっていると、
ぎゅうぎゅうで圧迫感があったので、
やっぱりやめようって。
2人がオッケーなものだけを置くと決めたんです。
- 伊藤
- 時々入れ替えをなさるんですか。
- 小林
- そうですね、たまに。
でもいまの状態が気に入ってます。
- 伊藤
- ここにも、音楽の気配が。
お二人ともお好きなんですね。
- 小林
- 私は聞くだけ、
夫は(レコードを)探す、かけるばっかりですが、
共通のたのしみです。
夫は有線で選曲の仕事もしていて、
カフェ・アプレミディ(Café Apres-midi)っていう
チャンネルで土曜日の6時から10時までの
曲のセレクトをやっていたり、
それこそ人前でDJをやっていたり。
- 伊藤
- すごーい。
そういう楽しさが詰まっていますね。
(やってきた猫に向かって)あら、こんにちは。
今、犬と猫で2匹ですか?
- 小林
- そう、犬とネコで2匹。
以前は猫だけでも3匹いたんですよ。
当時からこの子だけは人前に出るのが平気で。
- 伊藤
- そうなんですね。
2階にはキッチンはないんですね。
- 小林
- はい、料理は1階ですね。
でもここの扉を開けると‥‥。
- 伊藤
- えっ、えっ?! シンクが出現!
- 小林
- 水屋っていうか、お酒をつくるための
ミニキッチンです。
私たち、すごくお酒を飲むので。
もうお恥ずかしいぐらいガブガブ飲むの。
- 伊藤
- なるほど! ふふふ。
扉を閉めると収納家具のようで、
開けるとお酒専用のキッチンが出現するなんて、
最高じゃないですか。
マナさんたち、「こういうのがいいな」と思ったら、
全部実現できちゃうのがすごい。
扉の持ち手もすてきですね。
- 小林
- ちょっとクラシックですよね。
これ、古くからある製品なんですけれど、
最近はあまり使われていないんですよ。
でも、いいでしょう。
- 伊藤
- キッチンが見えているのと見えていないので、
こんなに印象というか、
生活感のあるなしが変わるんですね。
- 小林
- そう、だから見せる部分と
見せない部分を考えてつくっています。
そうじゃないと、
やっぱりガチャガチャしちゃうっていうか、
ノイズになっちゃうので。
- 伊藤
- それにしても、やっぱり天井の高さ!
そして、窓外の景色のよさ。
この窓枠の素材は‥‥。
- 小林
- これ、アルミと樹脂の混合の
複合サッシというものです。
樹脂は熱伝導率が低く
冬に屋外の冷たさが室内に伝わりにくいんです。
最近は全部樹脂の窓枠もありますね。
- 伊藤
- いわゆる金属のサッシだと、
風景が、急に日本の家になるんですよね。
味気なくなっちゃうというか。
- 小林
- 窓に関しては、できるだけ仕切りの少ない
大きなガラス窓を入れたかったんですが、
建設計画をしていた頃、サッシの規格が変わり、
あんまり大きい窓がつくれなくて、
こういった普通のサイズのものになりました。
でもガラスも、建物自体も、
雪国でも大丈夫なくらいの断熱仕様なんですよ。
- 伊藤
- 冬、熱が逃げないから、あたたかいでしょうね。
おうちってしっかり断熱すると、
夏も外の暑さが入ってこないので、
一年を通して快適だとききました。
それにこのおうち、開口部の工夫で、
風が通り抜けるようになっていますよね。
- 小林
- そうなんです。
二ヶ所開けると、風が抜けます。
- 伊藤
- 引っ越される前は集合住宅だったんですか?
- 小林
- はい、都心の古いマンションでした。
それをリノベーションして暮らしていました。
- 伊藤
- ここに「よし!」って、
家を建てようと思ったきっかけは、
どんなことだったんですか。
- 小林
- 住んでいた古いマンションが建て替えになるというので、
出ることにしたんです。
そこも敷地や周辺に緑がいっぱいだったので
好きだったんですけど、
ここの緑とは全然違うなと思いました。
- 伊藤
- 暮らしは、だいぶ変わりました?
- 小林
- そうですね。
コロナのこともあってか、
よく歩くようになりました。
それまでは、できるだけ歩きたくなかったんですよ。
- 伊藤
- わたしもそうです。
今、まさに歩いてます。
- 小林
- あ、ほんとですか。
都心にいる時は、タクシーもよく使いましたし、
階段は嫌だ、エスカレーターがいいとか、
そういう感じだったのに、
これほど歩くようになるなんて自分でも驚きです。
1日1万歩歩きたいと思っていて、
ここから最寄り駅までが徒歩15分なんですけど、
15分歩くと1500歩、往復で3000歩、
それじゃ足りないので散歩もしています。
- 伊藤
- 前も住居とお住まいとお仕事場が
一緒だったんですか?
- 小林
- 前は別々でした。
それで一緒にできる場所をと探したんです。
緑が多いところに、って。
エリアは限定せず、広範囲に、
たとえば鎌倉なども探したんですよ。
北欧によく行っていたので、
「北欧みたいな暮らしがしたいよね」と。
- 伊藤
- 2階のプライベートスペースを拝見して、
こうしてあらためて1階に戻ると、
お仕事場なのに、
暮らしと近い感じがして、
とても居心地がいいと思いました。
- 小林
- そうですね。とくに最近、コロナ以後は、
私たちの気持ちも変化しましたね。
走り続けるような仕事の仕方ではなく、
「休みながら」と考えるようになったんですよ。
それまでは忙しいのが当たり前でしたから。
- 伊藤
- 忙しいのって、当たり前になっちゃうんですよね。