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岡山で気づいたこと
- 中川
- 私、もうやめちゃったんですけど、
ヒップホップダンスを習ったんですよ。
- 伊藤
- えーっ。
- 中川
- もうそれこそ超無駄ですよ。
いまだに全然踊れないし(笑)。
- 伊藤
- なぜヒップホップに?
- 中川
- もともとダンスを見るのが好きだし、
音楽のヒップホップも好きなので、
私も踊りたい、と思ったとき、
目の前にダンススクールがあったから
入ってみようって。
ところが先生も若いし、
生徒もそれこそ10代や20代で、
超・踊れる人ばかり。
「あの人誰だろ? なんでいるんだろう」
ってみんなが思っている中、
ちょっと遠巻きにされながら、やってました。
- 伊藤
- それは無駄というより、余裕?
- 中川
- たしかに無駄といっても
ネガティブな意味じゃなく、
ポジティブな意味での無駄なんです。
うまくはならなかったんだけれど、
もしうまくなったとしても、
みんなの前で踊りたいとかでもないし、
コンテストに出たいわけでもない。
もうただ踊れる自分をこっそり鏡の前で見て、
ニヤニヤしたい、ただそれだけなんです。
- 伊藤
- そっかぁ。
- 中川
- やっぱり、映画を見ても
本を読んでも、ステキなものを見ても、
仕事のためなんて思ってないのに、
やっぱり結構役に立っちゃうでしょう、
なんでも。
- 伊藤
- わかります。
- 中川
- そうじゃないことがしたいと思ったとき、
ヒップホップが一番象徴的だったんですよ、
この役に立たなさが、と思って(笑)。
- 伊藤
- それってわたしが帯を一反織ったのと似てるかも。
わたしは無駄というか、
無心になる時間が必要だった気がしたんです。
それこそほんとになんでも仕事になっちゃうというか、
すぐ仕事に結びつけて考えてしまう。
帯を織るのは、とにかく縦糸と横糸をずっと見て、
自分が手を動かしたぶんだけ成果が見える。
それがすごく楽しくて。
- 中川
- 結構トランスっぽく集中しそうですね。
- 伊藤
- そう、食べもせず飲みもせず、
気がついたらすっごいお腹を空かせてました。
- 中川
- いつのまにか布がすごく伸びてる。
- 伊藤
- 先生に「こんな人いないわよ」って言われました。
織り上げるのが速かったそうです。
- 中川
- ふふ、さすがです。
- 伊藤
- 糸を染めるのも、5秒ぐらいで、
きっぱり「全部赤にします!」みたいな。
- 中川
- 私、コロナ禍で編み物にはまったんですが、
ちょっと似たところがありました。
小学生以来の編み物だったんだけれども、
やるならちゃんとしたい、と、
編み物のエキスパートの知人に
オンラインで教えてもらいながら
いきなりセーターを編んだんです。
ほんとうに集中してずっと編んで、
4時間とか5時間とか連チャンでやってると、
肩も首もバキバキで。
気づいたら目の前にこんなに伸びた編地があり、
とうとう襟をつけたらセーターになったんですが、
その1カ月は取り憑かれてました。
歩きながら編んだりもして。
- 伊藤
- すごい。その「いい意味の無駄」は、
以前から思っていたことだったんですか。
それともコロナだったり、
お子さんがちょっと大きくなったとか、
そういうきっかけがあって?
- 中川
- たしかに20代後半から30代終わりぐらいまでは、
あまりにも多くの仕事をしていたし、
そこにフォーカスして成長したかった。
だから、いっぱい遊んでいたけれど、
役に立つ遊びをしていた気がします。
それがいったん落ち着いたということでしょうね。
- 伊藤
- 岡山に移り住んだことが影響をしていますか。
- 中川
- それは大きいかもしれません。
岡山に行って初めて、
専業主婦そして一般企業勤務の友達が
たくさんできたんです。
東京で写真家の仕事をしている中では
出会えなかった人がおおぜいいて、
そういう人たちが初めてのママ友、
パパ友になっていきました。
彼ら、土日の使い方がすごく上手で。
- 伊藤
- え、どんな?
- 中川
- 土日への熱量がすごいんです。
キャンプするとか、イベントに行くとか、
ちゃんと遊ぶの。
月~金、きっちり働いて。
- 伊藤
- メリハリがあるんですね。
- 中川
- そう、メリハリですね。
私、働いてるんだか遊んでるんだか
わからない感じだから、
土日ものんびり何もせず過ごししちゃったり。
でもみんなは無駄なく週末を使うんですよ。
たとえばキャンプギアをそろえて、
その2日間はキャンプに全集中、
みたいな友達が何人かできて、
その様子がカッコいいんです。
それから肩書では専業主婦でも、
アメリカの大学に行って美術を学んで、
世界一周自転車で回ったりした経験があって、
やたらクリエイティブに主婦をやってる友達とか。
東京にいると、
そういう人はつい仕事になってしまうけど、
彼女はそうじゃないんです。
編み物しても縫い物しても料理もなんでも上手だし、
DIYもしちゃうんだけど。
そういう人たちに会ったことで、
「私マジで仕事しかしてこなかったかも?」
って気づかされることになりました。
まるでみんなが北欧の人に見えるんですよ。
ライフをすごく楽しんでる。
私はワークの中にライフがいっぱい入ってるから
ちゃんと充実してるって思っていましたし、
実際そうなんですけど、
みんながライフに重きを置く感じに、
「ここは概念としての北欧だ、
すごくカッコいい!」って思えたんです。
- 伊藤
- 土地が東京から岡山に移って環境が変わった、
っていうだけでなく、
付き合う人に「おおーっ」て。
- 中川
- そうですね。
気づいてなかったけれど、
そこからやっぱり影響を受けていますね。
私ももっとちゃんと暮らしたいって思った。
ちゃんと洗濯物を干したいし、
収納もちゃんとしたいし、
“映え”なくていいから
普通のごはんをちゃんと作りたい。
そして、なんの役にも立たないことがしたいなって。
それは趣味とも違うんですよね。
“役に立たない楽しいことがしたい”、
そう言語化してたわけじゃないですけど、
気持ちとしてあったかな。
- 伊藤
- へえー。
- 中川
- それで山も登るようになったし、
サイクリングもめっちゃ行くし、
編み物もするし、ヒップホップも習うしと、
どれも、なんの役にも立たないんですけど、
超、楽しくて。
- 伊藤
- 写真というお仕事には
直接結びついていないかもしれないけれども、
正子さんの役には立ってますよね。
- 中川
- そうなんです。
- 伊藤
- わたしは、どうだろう?
そういえば。
- 中川
- まさこさんはライフをちゃんと楽しんでますよ。
仕事としてじゃなくて。
- 伊藤
- そうかなあ、楽しんでるかなあ。
- 中川
- まさこさんは
5時できっちり仕事を終わらせるでしょう?
私から見ると北欧の人びとと
同じようなライフスタイルに思えますよ。
- 伊藤
- すっごく集中して仕事をすると、
9時から5時までしか、
気持ちが、続かないんですよ。
- 中川
- そうですよね。
- ──
- 伊藤さんは、朝、
9時どころじゃない早さでは。
- 伊藤
- そういえばそうですね、
みんなに連絡をするのは9時から5時ぐらいまでって、
一応、なんとなく決めていて。
朝、日の出とともに起きるので、
9時前に原稿を書いたり校正をしたり、
メールを送ったりしています。
- ──
- 以前の「ほぼ日」は24時間態勢みたいに
いつでも連絡を取り合う文化で、
朝起きて読むだろうからと
夜中でも平気でLINEを送ったりしていたんですが、
でも伊藤さんにはしないようにしていますね。
- 中川
- 素晴らしいですね。
- 伊藤
- いまは、5年前の
「weeksdays」立ち上げの頃とはちがい、
そんなに緊急なことってないですし、
どこかで腹が据わった感じがしますね。
‥‥いつ腹が据わったんだろう?
- ──
- 伊藤さんは、ひょっとして若い頃から
そういうところがおありだったのでは。
- 伊藤
- そうかも。30代くらいからそうだったのかも。
- 中川
- 昔のスタイリストさんっていうと
結構無理して時間外まで働く
イメージがありますよね。
- 伊藤
- わたしの場合は、自然光での撮影が多いので、
夕方には終りになるんですよ。
そういうこともあって、
5時には仕事を終えるというスタイルが
生まれたのかもしれません。
- 中川
- 日が暮れたらおしまいみたいな。
- 伊藤
- もうできないんです。
朝から、あれして、これもして‥‥って段取って。
そして、夕方に電池が切れる。
- ──
- ロケで地方に行ってもそうですよ。
ちゃんと夕方に撮影を終えて、
いったん解散して、宿に戻って、
シャワーを浴びて、
小さなバッグだけで再集合して、
さあ飲みに行こう! みたいな。
- 中川
- へえー、ステキ。
いいですねえ。
再入荷のおしらせ
完売しておりましたアイテムの、再入荷のおしらせです。
11月16日(木)午前11時より、以下の商品について、
「weeksdays」にて追加販売をおこないます。
MOJITO キャップ
朝、散歩に出かける時に、
さっとかぶれるキャップがあったらいいのにな。
整える前の髪や、
メイクする前の顔が隠せるばかりか、
かぶるだけでちょっと洒落た感じにさせてくれる、
そんなキャップがあったら。
‥‥という不精な考えから思いついたにも関わらず、
街でも堂々とかぶれる、すてきなものができました。
形にしてくれたのはMOJITOの山下さん。
キャップを作るのならば、この人!
そう思ってお願いしたのでした。
素材やステッチの幅、サイズを調整するための金具‥‥
小さなものなのに、
いえ、小さなものだからこそ
こういったディテールが大事なのです。
一見ものすごくシンプルですが、
じつはツバがふつうより少し長め。
これ、小顔効果もあるし、日よけもできる。
男女問わず、いろいろな人にかぶってもらいましたが、
不思議とみんな似合うんです。
初夏から真夏はもちろん、
秋も冬も大活躍すること間違いなし。
ワンピースに合わせてもいいなぁなんて思っています。
(伊藤まさこ)
頼りになる娘たち
- 伊藤
- ちなみにこれから先、
髪の毛をどうしたいか、ってありますか。
グレーヘアにするとか?
すっごく似合いそうですよ、20年後とか。
- 中川
- まさに私、50になったところなんですけど。
- 伊藤
- わぁ(拍手)、おめでとうございます!
- 中川
- ありがとうございます。
それを機にだいぶ明るくしたんです。
ハイライトをバンバン入れました。
以前はダークブラウンで、
その前は真っ黒にしてたんですよ。
- 伊藤
- 50歳で気持ちが変わりましたか?
- 中川
- そうですね、50をきっかけに。
普通に白髪がめっちゃあるので、
2週間ごとに美容院にカラーに行っていたんです。
それが忙しいなって思ったのと、
隠すっていうのが
自分の性格にあんまり合ってないなって。
- 伊藤
- おぉ!
- 中川
- やっぱり10の位(くらい)が5、
という数字だということが、
自分の中でもインパクトがあって、
必死に白髪を隠すのはもういいっかって思って。
でも、いきなりグレーヘアはさすがにちょっと、
みんなもビックリしちゃうから。
- 伊藤
- 絶対カッコいいですよ。
似合うタイプですよ。
- 中川
- ありがとうございます。
徐々に行こうかなと。
まずは黒と白と、ハイライトに金を入れて、
黒・金・白のシマシマの髪形に
しようかなって思ってます。
- 伊藤
- 着実にいろいろと考えていてすごいなぁ。
わたし、50歳になったときのこと、覚えてないです。
- 中川
- えっ、ほんとですか(笑)。
- 伊藤
- 区切りをぼんやり過ごすタイプなんです。
- 中川
- それもステキですよ。
私も自分の中で、って話なんです。
20代から結構白髪があったから、
さすがに早いよなあと思ってずっと染めていたんです。
でも50歳ということで、
「もう、いいっしょ」みたいな感じになって、
フェーズを変えようかなあみたいな。
これから真っキンキンになっていくと思います。
- 伊藤
- それはまさにカッコいいタイプ、
まっしぐらじゃないですか。
- 中川
- そっか、ほんとですよね。
だからこそかわいいものを持ったり、
態度をかわいくしたりして、ちょっと。
- 伊藤
- でも髪の毛の色が変わったら、
小物とかも明るくなったりするかもしれないですよ。
- 中川
- そうかもしれないですね。
これから実験していこうかな。
- 伊藤
- 息子さんが中1っておっしゃったけど、
お母さんの装いや髪の色のことは、
チェックしてくれるんですか。
男子って、どうなんだろ?
- 中川
- 小さな頃から常にそういう話をしてきたんです。
「このピアスどう?」とか、あえて。
だから今では夫より先に変化に気づきますよ。
「その髪色、いいじゃん」とか。
- 伊藤
- すごい。それは育て方がよかったんですよ。
母と息子の関係がいいような気がします。
- 中川
- ウフフ。
インスタのリール(短い動画)で、
最近の若い子の細い前髪について、
どういうふうにスタイリングするかっていうものがあって。
どうやってあれをキープするのかなって
前から気になってたから、何度も見ていたんですよ。
そしたら息子が横から見て、
「ママ、それは20歳ぐらいの女の人の前髪だから、
やめた方がいいよ」って言ったの。
「べつにやらないよ!」って言い返しましたけど。
- 伊藤
- 正子さんは気になってただけなのにね。
- 中川
- そう、研究してただけ。
いろんなスタイリング剤を使ってつくるんだなぁって。
それを本気で心配してて。ありがたいです。
- 伊藤
- でも家族のそういう意見ってほんとに大切ですよ。
「似合わない」とかいうのも、
ほんとなんだなあと思うし、
わたしも娘の意見は参考にしてます。
- 中川
- 娘さんは頼りになるでしょ?
- 伊藤
- メイクとかね、してくれたり。
- 中川
- 「それ、ないわ」とかおっしゃいます?
- 伊藤
- すっごい厳しいです。
- 中川
- 厳しいの?(笑)
- 伊藤
- 厳しいんです。
プロデューサーぽいので
「P」(ピー)と呼んでます。
例えば、以前、TVの情報番組の出演依頼があって、
どうしようかなーとって言ってたら、
「見ない番組には出ない方がいいんじゃない」。
「そ、そうですよね‥‥」って。
- 中川
- 鋭い、P! 的確。
- 伊藤
- 家族ゆえの厳しさが。
- 中川
- ほんと、そうですよね。いいですよね。
- 伊藤
- こんなに脱線しまくってていいのかな。
話、ちょっと戻しましょうか。
- 中川
- そうですね。ふふふ。
このバッグについて
お話ししたいこと、たくさんあるんです。
- 伊藤
- 嬉しい! 話してみてください。
- 中川
- これ、素材はなんですか。
- 伊藤
- ムートンです。
これ、クラッチみたいに持っても
いいことに気づいたんです。
- 中川
- たしかに。モフモフなものって、
持ってるだけでかわいいですよね。
- 伊藤
- そうなんです、安心感があるというか。
- 中川
- 大きさとしては“ちびバッグ”ではなく‥‥。
- 伊藤
- これ、わたしにとっては入る方ですね。
例えばお財布とスマホも入ります。
正子さん、ちなみにお財布は
どんなものをお持ちですか。
- 中川
- キャッシュレス時代なので
お財布も私なりに小さくしたんです。
そんなお見せできるようなものじゃないですけど。
- 伊藤
- 小っちゃい、かわいい。
- 中川
- 小っちゃいですよ。
Aeta(アエタ)っていうブランドです。
日本の大阪のブランドかな。
旅先でのいろんな人との出会いを
コンセプトに「逢えた」という日本語から
名付けられたんですって。
- 伊藤
- これだったら、ピッタリじゃないですか。
- 中川
- それにリップとか入れて。
スマホと。
- 伊藤
- さすが、撮影慣れしていますね。
バランスが最高です。
- 中川
- 食事に行くなら、これでじゅうぶんですよね。
- 伊藤
- お財布につけているのは‥‥。
- 中川
- これ、めっちゃシュッとしたお財布なんですが、
大昔ですけど、私、元がギャルなので(笑)、
ちょっとこういうフサフサしたものを
つけたくなっちゃうんです。
- 伊藤
- ギャル?! ギャルだったんですね?
- 中川
- はい、25年前ぐらいの話ですけど。
ギャルは好きですよ、このテクスチャー(笑)。
- 伊藤
- なるほど。
- 中川
- 今もマインドだけがギャルなので、
こういうものを見ると
「かわいいー!」ってなっちゃう。
- 伊藤
- そっか、かわいげ、かぁ。
あんまり考えたことなかったかも。
ちなみにこのフサフサは、
どちらのものなんですか?
- 中川
- これは、“3”(sun)という、
東京から岡山に移住した友人のブランドの
フリンジキーホルダーなんです。
彼ら、BAILER(ベイラー)という、
船で使う、船底の水を汲み出す用の道具を
リモデルしたバッグが人気なんですが、
生産の過程で出た余材や、
デニムを織るときの経糸を使って、
こんなフリンジキーホルダーをつくっていて、
私はそれをお守り代わりにつけているんです。
かわいげとともに、
このバッグもそうですけど、
私の中で最近やっぱり
“無駄”が大事だなと思って。
- 伊藤
- 無駄?
- 中川
- とにかく実用的に、
飾りもそんなにいらないしってやってきたんですが、
あまりにも無駄がないなと思う、
「ちょっと余分なものっていうのがいいな」
っていうフェーズに来ているんです。
- 伊藤
- それはおうちの中とかも? 器とか。
- 中川
- はい、うちの中もそんな感じです。
- 伊藤
- おうちの中も「もう何もいらない」みたいな、
モノが多くて嫌だ、整理整頓!
みたいな時期もあったんですか?
- 中川
- 基本はモノが多いんですけど、
定期的にそれが嫌になって、
ミニマリストのマネをしてガッと減らすんです。
けど、なんか居心地悪くて、
使えない、面白いものをちょっと増やすんですよ。
そうするとなんかホッとする。
モノだけじゃなくて行為とか時間とかも
「この時間なに?」みたいな、
無駄が結構大事だなって。
これまで無駄がなかったから
そう思うのかもしれません。
- 伊藤
- 子育てのいちばん忙しい時期が
ひと段落したから、とか。
- 中川
- それもあるかも。
ちびバッグコレクション
- 伊藤
- 正子さんは、
ふだんの荷物はどんな感じなのかな。
荷物、多い方ですか?
- 中川
- そうですね、少なくはないです。
場合によるんですけど、
今日の荷物は「ありのまま」で、
小型のスーツケースに、
大きめのバッグをのっけてます。
- 伊藤
- お仕事もありますしね。
- 中川
- そう。カメラとその機材を持ち歩くと、
大きなサイズになっちゃうんです。
このバッグは春夏用と秋冬用があるんですが、
これは秋冬バージョンです。
マイフェイバリットバッグ、なんですけれど、
‥‥超絶、ボロすぎて、
今度リメイクしようと思ってるんです。
- 伊藤
- ふむ、ふむ。
- 中川
- それからこのエコバッグは、父からのプレゼントです。
父が今年82歳なんですけれど、
コロナ前に久しぶりに家族で海外旅行をした時、
お土産屋さんで5ユーロで買ってくれたんです。
「一緒に買ってあげる」って。
それが25年ぶりに父にものを買ってもらった思い出で、
「久しぶりにパパに買ってもらった!」と。
学生のときは、父の脛をゴリゴリにかじっていたので、
大人になってからは、ほんとに1円ももらわない
暮らしをしてきましたし、
旅行中も、若い頃のお詫びを兼ねて
私が払うっていうことを徹底してたから、
突然のことで、嬉しくって。
- 伊藤
- すごーい。それはいつの話ですか?
- 中川
- 2019年でした。コロナ禍の直前ですね。
それから嬉しくて使い続けているものだから、
「古着屋で買ったの?」って
聞かれるほどになってしまって。
新品だったんですけれど。
- 伊藤
- ステキさに安定感があります。さすが!
そっか、荷物の多さは、カメラ機材ゆえ。
- 中川
- もっとちゃんとした撮影のときは
もう1個カメラバッグを重ねるんですけど、
これは簡易バージョンって感じです。
バッグは汚れたら洗える素材です。
ザッツ(zattu)ってご存知ですか。
マイクロファイバーでできていて、
スエードっぽいけど洗えるんですよ。
- 伊藤
- 自立するかたちも、いいですね。
- 中川
- コロナ禍での生活でしたから、
ステキなバッグというよりは、
もう実用で。
- 伊藤
- お仕事を離れて、
お食事に行くときとかはどんな感じの?
- 中川
- かわいいものとか、小っちゃいものを持ちます。
クラッチも多いですよ。
それこそ「weeksdays」のゴールドのクラッチも。
- 伊藤
- ほんとに?
ありがとうございます。
- 中川
- ちびバッグって重宝しますよね。
ボストンの中に入れておくんですよ。
旅先でも便利なんですよ。
まさこさんの小さなバッグも見てみたいです。
- 伊藤
- わたしはね‥‥(準備する)、
こんな感じです。
なにも入らないんですよ。
- 中川
- ほんとだ、なにも入らないくらい小さい!
- 伊藤
- そうなんです。
カードと、リップしか入らない。
- 中川
- でも、かわいい。
超かわいいです。
- 伊藤
- このいちばん小さいバッグを持つのは、
さっき正子さんがおっしゃったように、
旅先で宿からレストランに行くとか、
そういうときですね。
東京でも、仕事を終えてあらためて出かけるとか。
そういうときは、お財布も持たず、
このちいさなバッグにカードだけを入れて、
スマホは服のポケットに入れて出かけるんです。
- 中川
- 今は、それでいいですよね。
カードとスマホがあれば。
- 伊藤
- (いくつかバッグをならべて)
こっちも、やっぱり何も入らない。
‥‥これも、何も入らない。
- 中川
- こういう小さくてかわいいバッグは、
無理に詰めて膨らませたくないですし。
- 伊藤
- たぶんわたしがこういう小さなバッグが好きなのは、
スタイリングが仕事で、撮影のときの荷物が多いので、
反動のような気がするんです。
- 中川
- “スタイリストバッグ”と呼ばれる、
巨大なものがありますよね。
- 伊藤
- そう、大きさでいうと、
IKEAのショッピングバッグの、
いちばん大きいタイプくらいあるんです。
スタイリストはとにかく荷物が多いですから‥‥。
反動で、ちっちゃいバッグが好きなのかも。
いくつ持っているんだろう‥‥、
1、2、‥‥10個もある。
- 中川
- すごーく、たくさん!
ちびバッグコレクション。
私も、テンションが上がります。
こういう、役に立たないかもしれないけれど、
うんと、かわいいものって‥‥。
- 伊藤
- そうなんです。
そして、ちびバッグに派手目のものが多いのは、
普段の格好がシンプルだからなんですよ。
だから小っちゃいバッグで質感とか色を足している。
- 中川
- それで、はっきりしたピンクのバッグも
お持ちなんですね。
かわいい!
- 伊藤
- かわいいですよね。
服でピンクはちょっと、という人も
いるかもしれないけれど、
もしかしたらバッグでピンクなら、
アリじゃないかな。
- 中川
- かわいげが出ますよね。
- 伊藤
- お似合いですよ!
- 中川
- 私は、この“かわいげのさじ加減”が
今後の課題だなと思っているんです。
すぐ“カッコいい系”になっちゃうから。
- 伊藤
- いいじゃないですか、カッコよくても。
- 中川
- うーん、悪くはないんですけど、
“カッコいい”と“コワイ”は背中合わせだから。
ふふふ。
- 伊藤
- なるほど! メモ、メモ。
- 中川
- まさこさんみたいな小柄なかわいい方はいいんです。
私、やっぱり背が高いし、疲れるとすぐ痩せちゃうし、
そうするとどんどん“コワイ”寄りになっていく。
だから、かわいげが大事だと思ってるんです。
- 伊藤
- そっか、疲れると痩せちゃうんですね。
- 中川
- そう、かわいい系の人たちって、
私から見ると、やっぱり得をしてるんだと思うんです。
- 伊藤
- でも、思われないですよ。
物腰がとても柔らかいですし。
- 中川
- 背が高いことと、
肌質とかもあるんですよ。
- 伊藤
- さすが、そこを見ている!
- ──
- 今日、パッて入ってこられた瞬間、
笑顔がとてもステキで、
一瞬で場がなごみましたよ。
- 中川
- あ、ほんとですか? うれしいな。
よかったぁ。
- 伊藤
- 正子さんは、口角が上がっているんですよね。
- 中川
- 真顔だとキリッとしちゃいますし、
ファッションでも、
リボン、フリル、細かい花柄とか
かわいいものが全部ダメなんです。
パフスリーブとかも。
- 伊藤
- そうかなあ?
- 中川
- 自分の苦手意識ゆえ、かもしれないですけどね。
だからすこしでもかわいげを出そうと、
小物でちょこっと、と、
ハート形のピアスとかを
最近取り入れているんです。
- 伊藤
- さきほど「肌質」とおっしゃったとき、
いつもお仕事でも普段でも
写真を撮ってらっしゃるからだろうなって感じました。
そういうのってプロの目ですよね、
- 中川
- それはあるかもしれないですね。
自分のことも、常にそう見ているんです。
- 伊藤
- 客観視できている?
- 中川
- そうかもしれない。
そんな大したものじゃないですけど、
絵になるものにピントが合う目になっているというか。
例えばレストランのイメージ撮影で、
実際にお客様を入れて撮るとき、
絵になる方に自然とピントを合わせているんです。
絵になるというのは、“その場が上がる存在”ですね。
すごくいいですよね。
自分がそんなふうに場を上げる人に
ならなくてもいいんですけれど、
下げる人間にはなりたくないなとは思っています。
ふさわしい、とか、明るくなる、とか、
自分のためというよりは、
みなさんのために“コワくない”ようにしたくって。
- 伊藤
- たしかに、口角が下がってる人と会うと、
なにかこちらがしてしまったかしら‥‥と、
不安に思ったりすることもありますよね。
やっぱりこの人に会って、せめて、
嫌だったなとは思われたくない気持ち、よくわかります。
「今日は楽しかった!」って思ってほしいですもの。
- 中川
- 装いもそうですよね。
「アタシ、ステキじゃない?」
っていうので服を着たいわけじゃなくて、
会った人がよかったなとか、
楽しかったなってなるといいなと思うんですよ。
いちいち話を戻しますけど、
そこにはかわいげが必要だなって思っているんです。
- 伊藤
- なるほど。
- 中川
- カッコいいはもういいわ、と思って。
Owen Barryのバッグ
きっかけはモップがけ
- 伊藤
- はじめまして、正子さん。伊藤です。
今日はどうぞよろしくおねがいします。
- 中川
- はじめまして、まさこさん。
中川です。
こちらこそよろしくお願いします。
- 伊藤
- 勝手に存じ上げていたんです。
- 中川
- 私も勝手に。ふふふ。
- 伊藤
- 「weeksdays」では、
エッセイを書いていただきましたね。
ありがとうございました。
- 中川
- そんなふうにお仕事をさせていただきながら、
お目にかかったことがないままでしたから、
今日、こうしてお会いできてうれしいです。
- 伊藤
- そうなんですよね。
なかなか機会がなくて‥‥。
それで今回、ぜひ対談をと思ったんです。
- 中川
- うれしいです。
- 伊藤
- 岡山にお住まいですよね。
今日、東京へは、ほかのお仕事もかねて?
- 中川
- 今回はもうこの対談のために参りました。
でも、友人との約束やら、なにやらあるので、
予定をいくつか組み合わせて。
- 伊藤
- お子さんは、中学生になられたとか。
- 中川
- そう、中1です。
まさこさんの娘さんは‥‥。
- 伊藤
- 24歳です。
- 中川
- そうなんですね。私は、
息子がもっと小っちゃいときの、
めっちゃ手がかかるフェーズが終わったから、
「子育てが終わった!」
ぐらいの感じになっていたんです。
でも気を抜いていたら、
急に熱を出したり、
この間も鼻を折ったり。もう‥‥。
- 伊藤
- そうなんですね。
でもこれからどんどん楽になりますよ。
- 中川
- そうだといいんですけれど。
- 伊藤
- 正子さんは、写真家でもあるし、
文章も書かれるし、
いろいろなことをなさっていますよね。
- 中川
- そうですね。
きっと、ほぼ日さんでは、
そういう働き方が
早くからあったように思うんですけど、
私は、世代的なことがあるのかもしれません、
「写真家一筋!」に憧れていた頃もあって。
写真家は賞をめざして黙して語らず、
文章は書かない、みたいな、
そういうのがカッコよさそうに見えていた時代が
長かったんです。
でも、いろいろやってるうちに、
今のようになっていきました。
- 伊藤
- その方が楽しいというか、
幅が広がるというか。
- 中川
- そうなんです。
- 伊藤
- わたしも自分が何をやっているのか、
わからないですもの、今。
- 中川
- 一応、スタイリストが肩書きですか?
- 伊藤
- そう‥‥、ですねえ。
肩書きって、どうしよう?
っていつも思うんです。
正子さんは「写真家」と
おっしゃっていますね。
- 中川
- 私は「写真家」にしてきました。
10年前くらいにそうしたのかな。
今思えば、フォトグラファーでも写真家でも
どちらでもいいんですけれど、
「家」ってつけることで、
自分を追い込んでみようかと思ったんです。
体育会系なので、自分を追い込むことが好きなんです。
全然「家」じゃないときに、
「家(か)」にふさわしいかどうかって
自分に問うために、見切り発車で、
「家」ってつけたんですよ。
- 伊藤
- それって大事かもしれない。
わたしの友人も「ライター」だったんですけれど、
エッセイストになると宣言し、
あえて肩書きを変えてから、
仕事が変わってきたと言っていました。
- 中川
- そうなんですよ。自称なのに、
写真家という肩書きに、
周りが合わせてくれました。
- 伊藤
- 肩書きを変えると、
いっぱい来ていた仕事が
ふるいにかけられるでしょうね。
わたしが正子さんのことでハッと思ったのが、
モップです。毎日とにかくモップをかける、
というお話。
- 中川
- コロナが始まった頃ですね。
たしかに、もう、とりつかれたように、
毎日、モップをかけていました。
- 伊藤
- 「わたしと同じ!」と思って。
- 中川
- お坊さんの雑巾がけと一緒です。
まずそれをすることで整う、みたいな。
- 伊藤
- それは朝?
- 中川
- 朝です。起きて、とりあえず全部ピッカピカにして。
そうすると、“一段上がり”ますよね。
- 伊藤
- そう、空気が変わる。
それは今も?
- 中川
- ところが、その後、ルンバを導入したら、
モップの出番が少なくなってしまったんです。
- 伊藤
- でもルンバが使えるってことは
床にモノがなにも置いてないということですよ。
- 中川
- そうです、もうルンバのために、
全部を上に上げる仕組みにして。
そうするとルンバが結構執拗にきれいにするから、
モップをかけたときならではの、
「わあ、いきなりベールが剥がれた!」
みたいな感覚がなくなっちゃったんです。
それで自宅は、ルンバに任せてもいいかなって。
でも最近、私、アトリエというか、
ちょっとギャラリーみたいな空間をつくったんですよ。
そこで、気分を一新したいなと考えて、
「そうだ、モップだ!」。
80平米ぐらいあるフロアを、
モップで往復しました。
何度も洗って絞りながら。
- 伊藤
- たいへん!
- 中川
- そうしたら、もう、すっごくきれいになって。
空気が清浄になったっていうか。
空間に残っていたいろいろな感情ごと、
すっきりときれいにしたいなと思ったので、
モップが役に立ったこと、立ったこと。
- 伊藤
- 掃除って偉大ですよね。
- 中川
- 偉大です。
- 伊藤
- それなんです、わたしが正子さんに
強くシンパシーを感じたのって。
- 中川
- そうですか、うれしい。
- 伊藤
- あとマサコが正しい子と書くのも。
わたし、本名がそうなんです。
あんまりいないんですよね、実は。
- 中川
- 同世代にはいないんですよね。
- 伊藤
- 子どもの頃、こんな名前ってちょっと、
と思ったんだけれど。
- 中川
- リサとかがよかったりしました(笑)。
- 伊藤
- 「子」がつかない名前がうらやましくて。
- 中川
- そうそうそう。
でも、大先輩に、白洲正子さん。
- 伊藤
- そうなんです。高校生ぐらいのときに
白洲正子という人の存在を知り、よしっ。
- 中川
- ひとり見つけたって感じですよね。
- 伊藤
- ところが、2人目が、いないの。
- 中川
- 調べたら、明治何年かの
一番人気の名前なんですって。
明治ですよ。
- 伊藤
- 古ーい。
- 中川
- 仲よしの同世代の女友達がいて、
私が正子で、もう一人が幸子で、
もう一人が文子(あやこ)。
幸子と文子はそれぞれ大正時代に
一番人気だった名前なんですって。
「私たち、昭和ですらない」って。
でも今正子ってつけたらものすごく目立ちますけどね。
- 伊藤
- カッコいいかも。
- 中川
- もうそろそろ来るんじゃないかと思うんですけど。
- 伊藤
- 来始めてるような気がする。
- 中川
- 桜子ちゃんとか、
ちょっとおしゃれですよね、
子がつくけれども、令和バージョンというか。
私は「まさこさん」として
ずっとひらがなで認識していたので、
まさか同名とは思わず、うれしかったです。
ぬいぐるみバッグ
枕をずいぶん買い替えていないことに気がついて、
あまり考えずに、
手触りだけで
(フカフカで、あまりに気持ちよかったものですから!)
買ってみたら、
どうも寝心地が悪い。
しまいには悪夢まで見る始末で、
3日を過ぎた朝に、
これはだめだと思って、
慌てて買いに走りました。
新しい枕は、
さすが枕マイスターの見立てだけあって、
私の頭と身体にぴたりと合う。
ああ、これで今夜からいい夢見られる‥‥
とホッとしたのでした。
手触りが気に入って買った枕の行方?
すぐに捨てるのはしのびなかったので、
新しい枕の横に、ぬいぐるみのように置いて、
かわいがってます。
時々、抱いたりして。
今週のweeksdaysは、
Owen Barryのバッグ。
あまり、ものは入らないけれど、
持っているだけでなんだかうれしい。
フカフカ枕じゃないけれど、
近くにあるだけで、
顔がほころんじゃう。
心の中で「ぬいぐるみバッグ」と呼んでいるのです。
nooyのレターニット、あのひとに着てもらいました・2 COOVA 瀬谷志歩さん
瀬谷志歩さんのプロフィール
せや・しほ
テキスタイルデザイナー。
各地の布や建造物のモチーフなどからヒントを得て
布を設計、工場での勤務経験を活かし、
多彩な織りの技法でかたちにしている。
織るのは国内の工場で、
「手織りと機械織りのあいだにあるような布づくり」
がコンセプト。
美大卒業後、東京・八王子の織物工場に就職。
アパレルメーカーの服地やストールなどの
企画、開発、生産、営業等に携わる。
工場の廃業に伴い、独立。
屋号の「COOVAコーバ」は
「工場(コウバ)」に由来する。
息抜きは、時間ができた隙にさっと行く旅行。
木陰が好きなので森林限界までの低山登山をする。
起きた瞬間から眠るまで、ほぼ終日ラジオをかける。
東洋・西洋を問わず。歴史劇の鑑賞も。
八王子にあった織物工場で働いていたという瀬谷さん。
仕事の内容は、
企画、図面の制作、素材えらび、
生産管理‥‥といろいろだったとか。
「自分の仕事以外の時間は、好きに使ったらいいよ」と
当時の社長さんに言われ、
早朝から夜遅くまで、織物に向き合う日々。
その時の経験が今もとっても役に立っているのだそうです。
nooyの若山さん、平山さんとは、
その頃からのおつき合い。
COOVA(コーバ)と、nooy(ヌーイ)、
響きがどことなく似ているけれど、
落ち着いて話す様子や、
揺らがない感じ(でも物腰はやわらかい)が、
nooyのおふたりとどことなく似ています。
こちら、その当時、一緒に作った布。
ここからシャツやワンピースなどができあがったとか。
「工場に突然電話がかかってきたんです。
布を見せてもらえませんか? って」
その工場は電話を取った人が担当になるというシステム。
「その時から、私がnooyさんの担当になりました」
10年前に独立し、今はご自身でオリジナルの布や、
ラグなどのデザインをする日々。
織物設計は、Excelソフトを使って。
合理的な要素で成り立っているという織物。
「足す、引く、掛ける、割るといった
たくさんの計算が行われるため、
算数的な側面でExcelがぴったり」なのだとか。
「独立してからも、展示会を合同でしませんか? とか、
ここに売り込みに行ったらいいよとか、
いろいろアドバイスいただいて。
おふたりに気にかけてもらっているんです」
nooyとCOOVAのいい関係は、
今も続いているみたい。
「nooyの服が好き」
という瀬谷さん。
「ちょっとした部分に、『らしさ』が出ていますよね」
そう。このニットも、後ろの襟足部分や、
脇に入ったスリットなど、
一見、「ふつう」に見えるけれどじつは、ふつうではない。
「nooyらしさ」がさりげなく潜んでいるのです。
えらんだのはブラック。
「秋冬はブラックを着ることが多い」と言うだけあって、
まるで前から持っていたかのように
しっくり着こなしています。
続きましてオレンジを。
ふんわりまとめた髪もすてきです。
ニットの後ろのぴょこんと飛び出た部分、
デザインでもあり、
じつは着ると、
「首元を守ってくれている」という安心感もあるんです。
合わせたのは、なんとも言えない
茄子紺色のスカート。
カーキのスカートとはまた違う表情。
色の対比や、素材の組み合わせ。
コーディネートは布の設計を考えるのと一緒なのかな。
建物の取り壊しにより、
今は物件探しの最中。
この近くで? と尋ねると、
「そうでもなくて、感じのいいところを」とのこと。
今度もきっと、
ご自分にぴったりの部屋にされるんだろうな。
nooyのレターニット、あのひとに着てもらいました・1 パーソナルトレーナー 馬場悠里花さん
馬場悠里花さんのプロフィール
パーソナルトレーナー。
1992年生まれ。
デザイン専門学校を卒業したのち、
グラフィックデザイナーとして
6年間デザイン事務所に勤務。
デザイナー時代から体型維持のために行なっていた
トレーニングを本格的に始めたきっかけは、
コンテストに出ようと決心したこと。
入賞し「筋トレで人生が変わった!」経験から、
大手フィットネスクラブのエクササイズスタッフに。
のち、パーソナルトレーナーして独立、
現在、三軒茶屋と駒沢大学にパーソナルトレーニングジム
「3T’s Fit」(スリーティーズフィット)をオープン、
地域密着型のジムを目指し活動中。
「健康的なダイエットへのヒントや
今まで学んできたボディメイクのノウハウを
個人個人の性格やライフスタイルに合わせ、
フィットできるようなセッションを心がけています」
趣味は、お客さまの影響で始めた登山。
休みの日は全力でアウトドアへ。
登山後のサウナや温泉も楽しみ。
仕事柄、ふだんの服装はスポーツ系だが、
ラフになりすぎないよう、
ニットやコートなどに、トレーニング中はつけない
アクセサリーでおしゃれを楽しんでいる。
●Instagram
●X
●3T’s Fit 駒沢大学店のInstagram
●3T’s Fit 三軒茶屋店のInstagram
nooyの若山さんと平山さんのおふたりに、
どなたかニットが似合う方ご存知ないですか?
とうかがったところ、
それでは! と紹介していただいたのが、
若山さんの専属トレーナーの、
馬場悠里花さん。
デザイナーも体力勝負なのかな?
コロナ禍からトレーニングに通い出し、
体を鍛えているのだそう。
取材当日。
コンコンコン‥‥とノックし、
扉を開けたら、このとびきりの笑顔。
馬場さんのまわりの空気が溌剌としていて、
なんだかこちらまで元気になってしまう、
そんな人。
トレーナーになる前は、
グラフィックデザイナーだったという馬場さん。
その後、ボディビル(コンテスト入賞経験あり!)を始め、
今の道へ、という経歴の持ち主。
nooyの服はいくつかお持ちとか。
「アトリエに遊びに行かせてもらった時に、
すぐに、欲しい! ってなったんです」と馬場さん。
「形はもちろん、
素材や質感がお気に入り」なんですって。
1枚目にえらんだのは、ブラックのニット。
レギンスもブーツも黒ですが、
「それだとまっくろくろになってしまうかなと思って」と
下に白いブラウスを重ねました。
「ニット、着心地がいいし
大きさもちょうどいいですね」
そう。一枚はもちろん、
こんなふうに重ね着もできる。
持っていると重宝すること間違いなしのアイテムなんです。
ニットからのぞく、裾の分量がいい感じ。
襟元も白と黒ですっきり。
髪型はトレーナーを始めてからずっとショートなのだとか。
さすが板についている。
馬場さんのイメージにぴったりです。
3カ所のジムを歩いて行ったり来たりする毎日。
「だから、ふだんのスタイルは、
いつもこんなかんじです。
時々、ジャケットを羽織ったり」。
かわいいものも好きだけれど、
全部かわいくはしない、という馬場さん。
「甘辛」が好きなんですって。
イエローのニットに合わせたのは、
ナイキのスカート。
「仕事柄、そういったお店に行くことが多いのですが、
その時にすかさずチェック!」
ほんとうだ。
ナイキのタグがついている(このタグもかわいい!)。
ソックスはペパーミントグリーン!
なんとこのソックス、ファミリーマートのオリジナル。
きれいな色が揃っているのと、
買いやすさも魅力とか。
「白や黒に色を効かせるのが好き」
蛍光色やぱきっとした色に
テンションもアップするんですって。
整った体に美しい姿勢。
まるでボディに服を着せた時のように、
ニットが「正しい」形になっている。
スタイルのよさって、
服をものすごく美しく見せるんだな、
ということを痛感した今回。
がんばろう‥‥と思いつつも、
まずはナイキとファミマをチェックしてきまーす。
きりっとしていて、かわいくて
- 伊藤
- 平山さん、若山さん、
今日はこのニットのことを
教えていただきたくて、おじゃましました。
あらためて思ったのは、
着ると、よりかわいさが出る
ニットだということでした。
- 平山
- ありがとうございます。
そうなんですよ、
アシンメトリー(左右非対称)なんです。
- 伊藤
- そう! それから首まわり。
モデルさんが、後ろ襟のデザインが
よくわかるようにポーズをとってくれて。
前から見ると丸首なのに、
後ろから見るとタートルネックのように
見えるんですよね。
- 若山
- ありがとうございます。
後ろ姿にポイントがある服が、
nooyでは多いかもしれません。
‥‥なぜなんだろ?
- 平山
- なぜでしょうね。
- 伊藤
- なぜ? ふふふ。
そもそも、つくられたとき、
最初の思いはどんなことだったんですか。
- 平山
- ざっくりしたニットが欲しかったんです。
けれども、ざっくり系のニットって、
カジュアルになりすぎてしまうんですよ。
少し変化があって、
しかも女性らしい雰囲気のあるものが
できたらなと思ってつくりました。
- 若山
- ザクザクしすぎないで、
オーバーサイズでも着ぶくれしない、
ということですね。
- 伊藤
- そのためにどういう工夫を?
たとえば糸選びとか。
- 平山
- そうですね、ちょうどいいふくらみがあって、
カサカサしていない糸を探しました。
- 若山
- 糸の太さですね。
よく、すごく太くてモコモコした、
カウチンセーターを編むような糸は
一般的にあると思うんですけど。
- 平山
- このニットは、フランスのアルル地方の、
気温の低いところで育った
メリノウールを使っているんです。
- 若山
- 中太で、毛足がそんなに長くない糸です、
ぎゅっとしながら編んでいったんですよ。
- 伊藤
- そもそもニットって、nooyでは、
毎シーズンつくっていらっしゃいましたっけ。
- 平山
- そうですね、毎シーズン、いくつかは。
- 若山
- でもこんなに主張しているデザインは、
今回が初めてです。
いつもは色も形も薄手だったりするので。
- 伊藤
- たしかに色も、デザインにも遊びがありますね。
「こうしたらかわいいんじゃない?」
みたいな会話があったんですか。
- 平山
- そうですね。
後ろから見ると襟のような雰囲気で
立ち上がる首もとに、とか。
- 若山
- でも実は、この“立ち上がる”デザイン、
nooyにとっては
定番の手法でもあるんですよ。
- 伊藤
- じゃあ、今回もべつに特別なことではなく?
- 平山
- はい、いつもの気持ちで、
そのデザインをニットにしてみたんです。
- 伊藤
- 前身ごろをアシンメトリーにしたのは?
- 平山
- 前から見たときにも、
少しポイントがあったほうがいいなと思って。
- 若山
- どこから見てもたのしいニットです。
- 伊藤
- 着てるのを見て、
「かわいい!」ってなりますよね。
- 平山
- ちょっとスリットを入れることによって、
ボトムスを合せたときに変化もありますし、
スカートでもパンツでも合わせやすい着丈です。
そしてこのニットによって、
いつも着ているはずのボトムスの見え方も
変わってくるのがおもしろいなと思います。
- 伊藤
- たしかに合わせやすい着丈。
- 若山
- スカートもパンツも、
ボリュームがあるワンピースの上からでも。
- 伊藤
- ワンピースの上にも?
そっか、結構身幅とかにゆとりがあるから、
かわいいでしょうね。
- 平山
- そうです。中にシャツとか着ていただいても、
その襟を出してもかわいいと思います。
シャツの裾を、ヒラヒラ出しても。
このニット、いちばんの主役にもなるし、
重ね着もできますし。
- 若山
- いつもの恰好にプラスアルファして
上に羽織るだけで、
この雰囲気をたのしめると思うんです。
- 伊藤
- なるほど! わたしがあんまり
重ね着をしないから、とても新鮮です。
ところで色はなぜ、この3色に?
- 平山
- 冬は暗くなりがちなので、
絶対、ビビットな明るい色を
入れたいなと思っていたら、
その「いい色」があったんです。
- 伊藤
- みんなベーシックな色は持っているから、
ちょっと色で遊びたくなりますものね。
- 若山
- 半端に派手なものではなく、
ほんとうにビビッドな色のほうがいいなと。
黒はベーシックで、いつもあるもの、
という位置づけですが、
レモンとオレンジを選んだのは、
ニュアンスカラーにするとやさしすぎるからなんです。
たとえばピンクとか水色ですけれど、
もっとピリッとさせたかった。
- 伊藤
- こういう色は、暗めのアウターを着ていても、
チラッと見えたらかわいですよね。
- 平山
- かわいいですよ。
- 若山
- コートの背中からのぞいていても。
- 伊藤
- モデルさんがショートヘアなので、
後ろにリボンが見えるようにスカーフを巻いて、
横顔を撮ったんです。すごくかわいかった。
- 若山
- うれしいです。
- 伊藤
- 制作についてたいへんなことはありましたか。
- 若山
- ニット屋さんに苦労をかけたのは、
やはり襟ですね。
- 平山
- 立ち上がりの幅が狭く仕上がってきたり、
かと思えばすごく広くなってしまったり。
実際、編んでみないと、
分からない部分なんでしょうね。
- 若山
- 縮率が違うので。
- 伊藤
- できるまでに、何回ぐらい?
- 平山
- ニット屋さんに託して、
サンプルをあげてもらい、
それをチェックして、戻して、
修正点を直してもらって、と、
3往復くらい、しましたね。
- 若山
- 「あら? 富士山みたいな形になっちゃった?」とか、
いろいろありました。
- 伊藤
- (笑)でも、こうして素敵なものができあがって、
わたしたちもとても嬉しいです。
若山さん、平山さん、
今回もありがとうございました。
- 若山
- ありがとうございました。
- 平山
- ありがとうございました。
またぜひよろしくお願いします。
nooyのニット
秋の街に
落ち葉の季節。
公園を散歩していたら、
イーゼルがぽつりと立っていました。
絵を描いている人はどうやら不在のよう。
どれどれ‥‥?
とキャンバスを覗いてみると、
そこには、
どんよりとした茶色の風景が広がっておりました。
あら?
あそこに赤いベンチがあるじゃない。
私だったら、ここにそのベンチを描いちゃうな。
傍にあった絵具でささっと描いたら、
その絵はみるみるうちにいきいきしはじめました。
これは昔、姉が読んでいた漫画のはじめの数ページ。
その後、絵を描いた人と、
主人公の女の子は、
たしか恋人になったのではなかったかしら?
なんだかかわいらしいこの話を思い出したのは、
秋の街に映える服に出会ったから。
今週のweeksdaysはnooyのニット。
黄色に赤。
それからベーシックな黒もありますよ。
だんだんと
- 伊藤
- 最後に、今後の「weeksdays」の参考に
聞かせていただきたいんですが、
「こういうの欲しいんだよな」とか
「こういうの足りてない」ものってありますか?
服とか靴とか、インテリアでもいいんですけど。
- 坂井
- 靴。
- 伊藤
- 靴!
- 坂井
- まさこさんはヒールを履きますか?
- 伊藤
- はい。歩けないけど。
だからほとんど歩かない時、
つまり車でレストランに行くとか、
旅先でホテルの部屋からダイニングに行く時に。
- 坂井
- やっぱりそうなりますよね。
歩きやすいヒールってあるんでしょうか。
あったら欲しいんですが、
ヒールってもともと、
いっぱい歩くためのものじゃないですよね、
おしゃれの歴史としても。
- ──
- 16世紀のフランスで
道に犬の落とし物とか汚物が放置されていたので、
スカートの裾が汚れないよう
広まったと言われていますね。
- 伊藤
- そうなの?!
でも『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリーは
すっごいヒールで、落とし物を踏んでましたよ。
で、道で洗ってた。
‥‥なるほど、歩きやすいハイヒールの靴。
- 坂井
- うん!
- 伊藤
- 今日履いていただいたトリッペンみたいに
ソール全体がしっかりしてて、
上げ底になっているタイプは歩きやすいけれども、
細いヒールでは難しいかもしれないですね。
- 坂井
- 歩きやすい靴でも、
スタイル良く見えて。
もうちょっと遊べるものというか。
- 伊藤
- なるほどね。
- 坂井
- 今、靴が、後回しになってるんです、私。
だからスニーカーとか、
うんとシンプルなものを選んでる。
ちなみにサンダルを履くときは絶対黒にしてるんです。
- 伊藤
- そっか、確かにそのイメージ。
なぜ黒がいいんですか。
- 坂井
- 何にでも合うからです。
- 伊藤
- お仕事の現場に行ったら着替える、
っていうこともあると思うな。
仕事ではいろんなタイプの靴を履くし。
- 坂井
- そうそう、そのために
脱ぎやすいっていうのも考えます。
だからきれいな色の靴、
赤とか差し色で、
使える靴が欲しいですね。
- 伊藤
- ボアがついてたりとか
そういうので冒険とかもできますものね。
ところで、真紀さん、
お仕事でこれから挑戦してみたいこと、
ありますか?
- 坂井
- やってみたい仕事というか、
ご一緒したい監督はいらっしゃいますね。
でも、私、今、坂井さんに
こういうことをやって欲しいって言われるだけで、
すごく嬉しいんですよ。
- 伊藤
- 投げかけられるのが。
- 坂井
- はい。いろいろやらせていただいてきた中で、
どんなことを私に期待してくれているのかなって。
で、その作品の中でしっかりと
役に立てたらいいなと思ってます。
年を重ねていていますので、
ちゃんと存在が豊かでありたいって思います。
ここ最近もいろんなお母さん
やらせてもらっていますけれど、
もっとかわいい息子・娘を増やしていくぞ、
なんて気合を入れています(笑)。
- 伊藤
- そうか、じゃあ逆に、イメージと違うような、
おおっ、みたいなことを投げかけられると、
よっしゃ! みたいな。
- 坂井
- そう、うれしいです。
お母さんじゃない役もまた嬉しい。
この前も『だが、情熱はある』っていうドラマで
森本慎太郎さん演じる
山里亮太さんのマネージャーさん役、
すっごく楽しかったですね。フフフ。
- 伊藤
- その時も、
この人はこういうところに住んで、
みたいなことを考えて?
- 坂井
- そうですね。あの役には
モデルになっている方がいらっしゃったのですが、
リアルな経歴と
そこからイメージすることをミックスし考えました。
- 伊藤
- それを思うと、わたしのスタイリングは、
わりと自分中心。
たとえばインテリアも「こういう部屋に住みたい」、
料理も「この器ならいいな」なんて
気持ちの部分が大きい。
- 坂井
- でもまさこさんが提示してくれてるものって、
まさこさんのストーリーですよね。
それが素敵なんです。
- 伊藤
- 「わたし」がうるさくないですか?
- 坂井
- うるさくないですよ。
私たちはフィクションを作ってますけど、
まさこさんはそれこそ
ひとつのインテリアの中に
娘さんとのストーリーがあったり、
お料理の中にお母様とのストーリーがあったり。
それが私たちのストーリーと重なったり、憧れたり、
もっと知りたいまさこさんの物語。
ちょいちょいそのお母様の夜ご飯、食べてみたいです、
っていうふうになってます。
大丈夫、もっとうるさくても
いいぐらいですよ、まさこさん。
- 伊藤
- 本当? じゃあ塩梅を見ながら‥‥。
うるさめになってきたら言ってください(笑)。
- 坂井
- ハハハ。そんなことない。
もっと知りたいなって思ってます。
- 伊藤
- はい。
みんなからも質問ありますか。
- ──
- ハイ! 観ている人を良い気持ちにさせたい、
楽しい気分にしたいとおっしゃったんですけど、
それって30年重ねてきて思うようになったんですか、
それともキャリアの最初の方から
そういう思いでお仕事をされてきたんですか。
- 坂井
- 20代の、仕事を始めた頃は「自分、自分」でした。
次はこんな役をやりたい、この映画に出たい、と、
やりたいことがいっぱい溢れていました。
でも、だんだんと、ですね。作品が世に届き、
見てくれた方の反応があると嬉しいですし、
母親になったこともすごく大きいと思います。
どうしても子どもを通して
世の中のことが気になりますし、
自分自分ではなく、
子どもの未来のことが気になります。
だから社会がちょっと良くなったり、
優しい気持ちになったり、
届けた作品でそういうふうになったら嬉しいなと。
- 伊藤
- だって、人間を1人生んだんだものね。
すごいことですよ。
- 坂井
- そうですよね。
まさこさんも生んでるんです。
- 伊藤
- わたし、生んだ時に、
大変なことをしてしまったってすごく思いました。
- 坂井
- 育児はやめられないですもんね、途中で。
- 伊藤
- そう。でも今となっては
それがわたしを育ててくれたんだなと思います。
20代のまま50代になってたら、
今、すごくわがままだったと思う。
- 坂井
- ハハハ。
- 伊藤
- 「そっか、世の中には
思い通りにいかないこともあるんだな」と、
わかったのもよかったです。
- 坂井
- 思い通りにならないことの方が
多かったりしますもんね。
- ──
- 坂井さんは息抜きってなにかあるんですか。
リフレッシュ方法は‥‥。
- 伊藤
- お酒?
- 坂井
- そうですね、1杯飲むのは
すごくリフレッシュになるかな。
仕事終わってプシュッって。
あとは、午前中空いたら映画館に行って
映画を観たりとか、
大きめの仕事が終わったら
ちょっと旅行に行ったりとか、
そういう自分の時間ですね。
- 伊藤
- そっか、気分転換って必要だものね、
誰しもが。
- 坂井
- でも忙しい時は走り続けなきゃいけないので、
今はその走る時期だって思っています。
だから1杯飲むのがリフレッシュ。
- 伊藤
- 走り続けながら、自分にとっての
インプット的なことってどうしていますか?
- 坂井
- そこは本当に大事で、
少しの時間でも見つけて、
本を読んだり映画を観たり舞台に行ったり、かな。
あと、人と会うことですね。
だからまさこさん、一緒にご飯行ってください。
- 伊藤
- もちろんです!
わたしは絶対5時には仕事を終えるので、
お誘いください。
- 坂井
- そうですよね、まさこさん、5時まで。
そのためにちゃんと組んでるんですもんね。
- 伊藤
- 息切れしちゃうから、
マイペースに仕事させてもらってるんです。
- 坂井
- それでも朝のルーティンだったり、
お片付けしてっていうことを毎日ちゃんとやられて。
- 伊藤
- 決めごとではないんですけれどね。
真紀さんには朝のルーティーンとかありますか?
- 坂井
- 玄関をきれいにすることと、
娘がしないカメの世話をすること、
植木に水をあげることかな。
- 伊藤
- ふふふ。真紀さん、今日はほんとうに
ありがとうございました!
またぜひご一緒させてくださいね。
- 坂井
- ほんとうに! ありがとうございました。
服も表現のひとつ
- 伊藤
- 生放送で自分の言葉で発信したり、
映画もあり舞台もありラジオもあり、
ドラマもありバラエティもあり、
お仕事の内容にもいろいろあるじゃないですか。
真紀さんのお仕事、すごいって思います。
- 坂井
- ほんと、冷静に考えると、
すごいことやらせてもらっています。
- 伊藤
- 今日、撮影していて思ったんですよ、
引きで撮ると「かわいい」、
けれども寄りで撮ると、
人間としての凄みが出るんです。
- 坂井
- うれしい。
- 伊藤
- もちろんきれいなんだけど、
服に合わせているんじゃなくて、
服が近寄っていく感じがしました。
初めて着たとは思えなかったもの。
- 坂井
- ほんとうにうれしいです。
最初にも言いましたが、
まさこさん的な世界観が、好きだからですよ。
そしてこの服、きれいな形ですよね、本当に。
- 伊藤
- 「もう服はなるべく買わない」
なんて言っておきながら、
コートって毎年欲しくなっちゃって‥‥。
- 坂井
- そうなんですよね。
持ってるのに欲しくなるの。
でもこのところ、暖冬傾向じゃないですか。
今回のコート、コットンですよね。
そこもいいなって思いました。
- 伊藤
- ポリエステルのすこし入ったコットンですね。
これくらいの素材感のコートって便利ですよね。
- 坂井
- 今日着させていただいてそう思いました。
こういう形のコートって、厚手のウールなど、
ほんとうに寒いときや寒い場所で着る用の
素材が多いんです。
コットンだということに、
そばで見るまで気づかなかった。
- 伊藤
- 触ってみるまでわからないんですよね、
あれ? ウールじゃないんだ? って。
- 坂井
- 素敵でした、すごく。
- 伊藤
- どっちの形がいいですか。
- 坂井
- どちらも捨てがたいかわいさです。
- 伊藤
- スタッフのみんなとワイワイ試着したんですが、
IONA COVERALLは、
細身の男性だったら、
大丈夫なサイズ感なんですよ。
- 坂井
- そう、男性もいけますね。
- 伊藤
- みんなに似合うんです。
COGのデザイナーのNoriko.Iさんは
いろんなタイプの背丈の人に似合う、
ワンサイズの服をつくるんですが、
身長がわたしと同じ156センチで、
小柄な人の気持ちもよくわかっているんですよ。
ワンサイズなのに、もちろん長身の人にも似合うし。
- 坂井
- 私も157センチですからわかります。
長いのだとすごぉく長い印象になっちゃうんですよね。
- 伊藤
- そうそう。実際、
わたしたちぐらいの身長の人って多い。
だからみんなもうれしいんじゃないかなと思います。
今日は、
真紀さんにブーツを履いてもらったんですが、
「ちょっとお行儀悪く」ってお願いしたら、
バッて、足を広げてお行儀悪くしてくれた。
あれ、最高でした。
みんなウルウルするくらい喜んでましたよ。
- 坂井
- 本当ですか。うれしいな、ふふふ。
- 伊藤
- 鏡を見て、どこをどう見せようか、
いろいろ探ってくださって。
撮っててどうでしたか、面白かった?
「役者さんがモデルを演じているような世界」
って、スタッフがつぶやいていました。
- 坂井
- そうかもしれないですね。
こういうふうに洋服を表現させてもらうことは
時々やらせてもらうし、好きなんです。
洋服がどうやったらチャーミングに見られるのかな、
と考えるのも、楽しい。
- 伊藤
- なるほど、台詞の言い回しだけじゃなくて、
洋服を着ることも表現になるから。
- 坂井
- そう、役者の仕事で、
その役柄について考えるとき、
洋服も考えるんですよ。
その人がどんな服が好きなのか、
どのぐらいの頻度で洋服を買うのか、
お給料がどれくらいで、
そのうちどれだけ服にお金を使っているのか、
タンスの中にはどんな服があるのか。
- 伊藤
- それは、監督や、
衣装を揃える方と相談しながら?
- 坂井
- 一応、衣装さんが考えて監督さんと相談しての
衣装合わせがあるんですが、
私もその時、こっちだと思います、とか、
それこそシャツ・インする人なのか、
出す人なのかとか、
コートをどういうふうに着る人なのかとか、
提案をすることもあります。
モデルではありませんが、
“その人が洋服を着るということ”を、
役者の仕事では、確かに、いつも
考えているかもしれないですね。
- 伊藤
- 娘が『相棒』が大好きで、
「右京さん(水谷豊)いつもサイズピッタリの
すごく仕立てのいいスーツ着てるよね」と言って。
犯人役の役者さんが、わざと
サイズが合ってないジャケットを着ていた時があって、
それってすごくない? って。
衣裳さんもその人に似合い、
サイズの合うものを用意するのではなく、
きっとこのキャラクターだったら
サイズ直しもせず出来合いのものを着るだろう、と、
そこまで考えてるんだねって。
- 坂井
- ハハハ。
- 伊藤
- 真紀さんも『相棒』に出てらしたでしょう。
ちょっと悪女的な役柄で。
- 坂井
- 面白い役でしたね。
現場で実際に水谷さんと会って感動しました。
- 伊藤
- そう! 同世代としてわかります。
水谷豊さん、お目にかかったらぜったい嬉しい。
- 坂井
- 右京さんじゃなく
北野広大先生! って(*)。
フフフ。
(*)1978年から81年まで放映された
日本テレビ系列の学園ドラマ『熱中時代』で
水谷豊さんが小学校教師「北野広大(きたのこうだい)」を演じ、
大人気となった。
- 伊藤
- すみません、『相棒』の話になっちゃった。
でもそうか、服を着るって、じゃあ、
役者さんとしても、面白いことなんですね
- 坂井
- 面白いですね。
- 伊藤
- スタイリストって不思議な職業だなと
常々感じているんです。
自分でものを作り出すでもなく、
いろいろなものを組み合わせて空気感を作る。
「weeksdays」は、
「商品」である服が一番よく見えるように、
シンプルなスタイリングを心がけています。
モデルさんの表情やポーズもわりと抑え目。
でも今日はいつもと違いました。
「あとは真紀さんにお任せ!」。
- 坂井
- 楽しかったです。
- 伊藤
- よかった!
娘の励まし
- 伊藤
- わたしたちの年代って、
きっとこれからどんどん気持ちの面で
楽になっていくと思うんですよ。
たとえば物忘れについてもそう。
以前、母が「ほら、アレ」と言うのを、
「アレじゃわからないよ」なんて言っていたのに、
最近は自分がそうなってきた。
この前もトークイベント中に
「電子書籍」が思い出せなくって、
「あの、ほら、ピッてやって持たないで読めるもの」
とか言っちゃったの。ひどい(笑)。
- 坂井
- ハハハ!
- 伊藤
- ああー、母と同じことしてるよと思いつつ、
そういうこともちょっとずつ
認めないといけないのかなって思っている、
今日この頃なんです。
- 坂井
- いや、そうですよね。
思い出せないですよ。
- 伊藤
- いや、絶対、そんなことなさそう。
だって、お芝居って記憶力も大事でしょう。
台詞(せりふ)ってどうやって覚えるんですか。
- 坂井
- それが、前は一回読んだら
何となく入ってきたものが、
この頃は、台詞の量が多いと、
時間がかかるようになってます。
だから常に読むとか、何度も読むとか、
そういうことをしています。
それでも50年、
自分と付き合ってきたわけですから、
自分の弱点は分かっているわけで、
覚えるのが遅くなったことも踏まえて
どこまで頑張れるかな、みたいに、
ちょっと冷静に自分を見ることに、
少し慣れてきたかもしれません。
- 伊藤
- 自分についてちょっと冷静に。
そうかもしれない。
良いですよね、年を取るって。
- 坂井
- はい。
- 伊藤
- また服の話になっちゃうけど、
似合う、似合わないも、出てくるんですよね。
- 坂井
- 出てきますね。
- 伊藤
- とはいえ、似合わないものなんて、
あるのかなぁ、真紀さん。
- 坂井
- ありますよ!
- 伊藤
- なさそうじゃない?
着物だって絶対似合うし。
柄もののワンピースだって大丈夫でしょうし。
- 坂井
- そういうものも、
嫌いではないですね。
フリフリみたいなのも、かわいいですし。
- 伊藤
- 役柄などによっては
自分は選ばないような服を着ることもあるでしょう?
それって面白いことですか?
- 坂井
- はい、面白いですよ。
絶対これ買わないよね、
っていうものも、役柄によっては着られるので。
自分が着ないものを着るのは楽しいです。
- 伊藤
- そういえば『ZIP!』に夏の間、
出演なさっていましたよね。
どういう経緯で
金曜日の朝の顔になったんですか(*)。
(*)日本テレビ系列の朝の情報バラエティ『ZIP!』に、
2023年7月から9月の夏の顔として、
金曜パーソナリティとして坂井真紀さんが登板。
- 坂井
- 『ZIP!』は突然お話が来て、
「えっ、私?!」ってビックリしたんです。
- 伊藤
- たまに、真紀さん、
バラエティに出られているけれど、
またそれとは全然違いますよね。
- 坂井
- そうですね、バラエティは、
映画の宣伝などにからめて
やらせてもらうことが多いんですけれども、
『ZIP!』はまったくそういうことではなく、
マネージャーさんも
「ビックリするような依頼が来ましたよ!」
が第一声でした。
『ZIP!』は明るくて元気で
あったかい番組だなと思っていたので、
もしかしたらできるかな? って思ったんです。
その時期も忙しかったんですけど、
チャレンジしてみたいな、って。
映画やドラマのような作品をやらせてもらう時も、
作品を見てくださった方々の心が元気になったり、
気持ちの変化があったり、
何か届けられたらいいなと願いながらやっています。
『ZIP!』のような番組は、
フィクションの作品を作っているよりも直接的に、
例えば、元気を、元気な朝を、
お届けできるかなと思いました。
もちろん私自身という人間を
そのまま見られることの怖さもありつつ、
普段私が作品に込めている思いを
違ったかたちで表現できるかもしれない、
だから、やってみようと思ったんです。
- 伊藤
- やってみて、どうでした?
- 坂井
- 生放送も、元々やったことがなかったですし、
3か月やってほんのほんの少し(笑)
何か見えた気がしました。
1回目の放送の後は相当落ち込んじゃって。
これに関してどう思いますか? と急に振られて、
ちゃんと答えることができなかったんですよ。
自分の思うことを
瞬時に的確に簡潔に伝えるって難しいですね。
それで娘に言ったんです、
「お母さんちょっと何日か元気でないかも」って。
自分の素を見せて大丈夫なのかな、
人に嫌な気持ちとか与えてたらやだな、と考えると、
怖くなっちゃうんだ、って。
そうしたら娘が
「いや、分かるよ、お母さん。私もすごく分かる。
クラスで発表をするときに
自分が言ったことって不安だし、
変なふうに思われてないかなと思っちゃうんだけど、
そういう時に私は『自分は大丈夫!』って思うんだよ、
だからお母さんも大丈夫だよ、自分は自分で良いんだよ」
と言ってくれたんです。
すごく励まされました。
- 伊藤
- わぁ! そんな娘でよかったねー。
かわいくて、しっかりしてて。
- 坂井
- かっこつけたって自分は自分でしかないのですものね。
貴重な経験をさせていただきました。
王様といっしょに
- 石田
- マラケシュにある古くからのお家の玄関や、
モロッコ人が経営する昔ながらのお店では、
王様の写真が飾ってあるのをよく見ます。
その意味がわかる気がします。
王様が大好きなんですよ。
ふだんから、たぶん、心の支えなんだと思う。
- 伊藤
- 王様が大好き。
そうしたら王様だって
みんなのことが大好きってことですよね。
- 石田
- そうなんですよ。
王様はお金持ちなんだけれど、
政治からは退いているんです。
「アラブの春」(2011年初頭から中東・
北アフリカ地域の各国で本格化した民主化運動)のとき
そういう発表がされたんですよ。
けれども、ビジネスマンで、
牛乳やリン鉱石業の会社を持っていたりするんです。
たぶんその収入による蓄えがあり、
いざというときにちゃんと
使えるのではないかな。
- ──
- ムハンマド6世ですね。
- 石田
- そうです。ムハンマド6世です。
- 伊藤
- じゃあもう代々、国民に愛されてきたんですか、
王様たちは。
- 石田
- 今の王様はお優しい方なんですけど、
お父さまのハッサン2世さん(ハサン2世)は、
『世界仰天ニュース』にも取り上げられちゃうような、
うんと個性の強い人だったんですよ。
奥さんが何十人もいて、
いろいろ主張も強くて、ちょっと怖いところも、みたいな。
激動の時代を生きた王様でしたからね、
頭はすごい良くてモテモテ男でやり手なんだけど、
いろんな歴史があったんです。
そしてモロッコはかつて植民地だったり、
アラブが入ったり、ローマ帝国が入ったり、
いろんなところから移民が入って、
それがうまくミックスして現在がある国なので、
歴史的にはすごく入り交ざってる。
政治的な問題は私はあんまり触れたくないけれど、
今回もいろんな国が援助するって言ってくれたものの、
微妙な国際関係があるらしく、
4カ国しか受け入れなくて、他はお断りしてるんですよ。
日本の医師団の方もたくさん来てくれていて、
私も双方のNGO団体をつなぐ仕事をしたんですが、
医療行為は一切できないらしいです。
理由はわからないんですが、
医療行為は、イギリス、カタール、スペイン、
そしてアラブ首長国連邦に限定されています。
だから私は、ちゃんとしたモロッコの団体に
お金を送りたいという
日本の団体のお手伝いをしています。
- 伊藤
- 今日、石田さんとお話ししたいと思った理由に、
そのこともあったんです。
こうして石田さんは元気だけれど、
わたしたちにできることないのかな? と。
ワランワヤンの製品を使ってくださるお客様の中にも、
心を痛めてる方も多いと思いますし。
- 石田
- ありがたいです。
たくさんメッセージもいただきました。
モロッコに来たことがあるとか、
モロッコに関わりがあるかた、
もちろんワランワヤンのお客さまからも。
それでインスタグラムを通じて
募金箱をちょっとの期間設置したんですよ。
それがまとまった金額になったので、
どうやって使うのが一番いいのかを
専門的知識のある方に相談しています。
それで、伊藤さんとは、
やっぱりものを通して何かをするのがいいだろうなと。
でも何をやったらいいのか、
今。ちょっと、アワワワ‥‥って感じなので、
考え切れていないんですけれど。
- 伊藤
- それはそうですよね、
まだ時間がそんなに経っていませんし。
- 石田
- 王様がしっかりしているので、
インフラは王様に任せて、
別の部分を私たちが、
っていう感じなのかなと思ってます。
- 伊藤
- まだ探っている段階なんですね。
- 石田
- そうなんです。毎日状況が変わりますし。
ちょっと前までは物資が全然足りなくて、
マラケシュに住んでいる日本人の方たちと一緒に
買いもの班、届け班に分かれて、
被害の大きい村に、2日にいっぺん、
物資を届けていたんです。
でもだんだん物資も間に合ってきたので、
今は防寒対策をどうしようかっていうところですね。
1個1個、目の前の課題を
やっていくっていう感じなんです。
- 伊藤
- それでは、まず石田さんの無理のない範囲で、
こんなことやって欲しいって
おっしゃっていただくのが一番いいのかなと。
日本にもしワランワヤンの在庫があるのなら、
それをお客さまに届けるお手伝いをするとか。
- 石田
- あはは(笑)。ないんです、在庫は。
ただ、お店がなくなっちゃったことで、
職人さんの仕事が減ってしまったのは
困ったなって思っていたので、
何かをつくってタグを付けて販売するとか、
そういうのは、やれたらやりたいんですけれど。
- 伊藤
- いいじゃないですか!
- 石田
- ところが今、私、頭が山間部の村の方に行ってて、
自分の仕事にやる気モードのスイッチが入らない。
でもこのままじゃダメだ、
7人いる職人さんを食べさせなきゃいけない、
っていうのもありますから、
こういう風にちょっと刺激していただくと、
「ものづくり、ちゃんとやらなきゃ!」って思います。
そうですね、伊藤さんと何か、ぜひ。
- 伊藤
- そうですよ! 7人の職人さんは、どんな?
- 石田
- かご、ですね。
本体は、職人の女の子の家族に頼んで、
別の村でつくってもらっているんです。
だから7人の中の3人は、
その本体に持ち手を付ける仕事。
ほかの職人さんたちはかごのお掃除とか、
手入れとか、梱包発送をするっていう感じです。
私のブランドではとにかく
お掃除をきれいにしているので、
掃除部隊が多いんですよ。
- 伊藤
- ワランワヤンのアイテムが
いつもすごくきれいな状態なのは、
そんな努力をなさっていたからなんですね。
- 石田
- はい。ささくれを切ったり、
虫が来ないように、お酢で磨いたり。
そういうことをしてますね。
- 伊藤
- そっか、じゃあ、
かごの本体をつくる村のお仕事は、
進められている?
- 石田
- そう、かご村のようなところで、
村人全員でかごを編んでいるんですよ。
私は1週間に1回、村に行って、
かご本体を持ってきてこっちで加工して、
お掃除して梱包して送るんです。
考えなくちゃいけないのが日本への発送で、
いま燃料費が高騰しているんですね。
運搬費は嵩で決まるので、
同じ体積でもきっちり詰め込んだほうがトク。
つまり運搬時に入れ子になるようなアイテムだと、
いちどにたくさん送れますよね。
そういうことを考えています。
この燃料費高騰問題は地震の前から抱えていて、
打開策を練らなくてはと思っていたので、
その辺を踏まえて、
ちょっとお時間をもらって考えてから、
伊藤さんにご提案しますね。
以前伊藤さんから「こんな感じ、どうかな」と
ヒントをいただいたこともあるので、
それも読み返しながら。
- 伊藤
- はい、あまり季節など関係なく、
思いつかれたら、その都度メールをいただけたら。
- 石田
- そうさせていただけると嬉しいです。
ぜひ相談に乗ってください。
- 伊藤
- もちろんです。もういつでも!
- 石田
- ありがとうございます。
とにかく心と頭の切り替えができなくて。
町の人の空気感が、今、団結して山を助ける!
っていうふうになっているんですよ。
小さい町だからでしょうね。
もちろんそれをしつつ、
自分たちのこともできたら
バランス良く生活ができるかなって思います。
お店に立つ時間がなくなったので、
その分の時間に余裕ができましたし(笑)。
- 伊藤
- 石田さんがお元気そうで何よりよかったです。
- 石田
- お恥ずかしながら元気で、
どうしようっていうぐらいなんですよ。
- 伊藤
- よかったです。
そちらの様子が聞けたのもありがたいです。
本当にニュースが入ってこないんですよ、日本に。
- 石田
- そうですよね。
都市部はもうスタバもH&Mも満員です。
元気です。
- 伊藤
- またご一緒できる日を楽しみにしてます。
- 石田
- はい。ぜひ!
お忙しい中、ありがとうございました。
- 伊藤
- こちらこそありがとうございました。
なんか逆に元気もらっちゃいました!
新人の頃のように
- 伊藤
- 真紀さん、今日は撮影モデルを
ありがとうございました。
デビュー31年の凄みを感じましたよ。
みんな鳥肌が立って!
- 坂井
- ふふふ、うれしいです、
こちらこそありがとうございました。
私がまさこさんの世界観が
好きだからだと思います。
- 伊藤
- わたしもとても嬉しいです。
今年は、お洋服、買いました?
- 坂井
- 今年‥‥うーん、私。
「ずっと働いてたよね」って、
マネージャーさんによく言うんです。
- 伊藤
- あら。
- 坂井
- 仕事ばかりで、買い物に行っていないんですよ。
サンダルを買ったくらいかもしれない。
- 伊藤
- そっか、そんなにたくさん
仕事をしていたんですね。
- 坂井
- 仕事をしてましたね。
まさこさんはお買い物は?
- 伊藤
- それがわたしも減ったんです。
半年ぐらい前から、
買う機会を少なくしようと決め、
すぐにとびつかずに、
なるべく手持ちのものでやりくりしよう、
っていうふうに考えるようにしよう、って。
- 坂井
- とはいうものの、お仕事上、
買うことは必要ですよね。
- 伊藤
- そうなんです、まさしく「仕事だから」を
言い訳に買い物をしていたんです。
だからそこから考えをあらためよう! って。
- 坂井
- ハハハ! どうですか、
実際にそうなさってみて。
- 伊藤
- それがまだ実感がないんです。というのも、
決意したのが、
秋冬ものが立ち上がった半年前、
いろいろとオーダーした直後で。
その服が今、届きはじめたので、
「買い物に行く」という行動は減ったものの、
家にはあたらしい服があるんですよ。
だからたぶん、来年の春夏シーズンくらいに、
なにも届かなくなって、
実感するんじゃないのかな。
真紀さんは、
スタイリストさんが集めてくださった服を
撮影や取材で着る機会があると思うんですが、
そういうものを買い取ったりも?
- 坂井
- あまり、していないですね、
買い物といえば、
まさこさんにおつきあいいただいて、
お正月に横浜の中華街に行きましたよね。
私、もう一回、
中華街に買い出しに行きたいです。
- 伊藤
- そろそろ、季節もいいし、ぜひ!
あの頃から今までお目にかかる機会が
ありませんでしたが、
お買い物をしなかった、というほかにも、
真紀さん自身の変化ってありましたか。
- 坂井
- 変化‥‥なんだろう?
まさこさんはありましたか?
- 伊藤
- 娘がだいぶ大きくなったなと感じていることが、
一番かもしれないです。
- 坂井
- その変化は私もわかります。
私の娘も6年生になったので、
随分と楽になりました。
そのおかげもあって、
仕事も忙しく過ごすことが出来たんですが、
だからこそ、改めて、よりこまやかに
仕事への努力をしなきゃいけないと思いました。
- 伊藤
- お仕事への姿勢、すごい!
忙しいと、ちょっと雑になったりしそうだけれど、
そんな時にこそ?
- 坂井
- はい。一個一個大変だからこそ、
一個一個丁寧にやろう、
忙しいからといって雑になっちゃいけないなって。
雑になりそうだったら、駄目だ、待て待てよって、
そう思いました。
それって生活でもなんでも同じですよね。
ちゃんと自分に積み重なっていく気がします。
だから、ずいぶん、歯を食いしばりましたね。
- 伊藤
- 歯を食いしばる! そんなに。
- 坂井
- まさこさんは、食いしばったこと、ありますか。
- 伊藤
- なんだろう、そうだなぁ‥‥どんなお仕事も、
わたしが雑になったら、いけないじゃないですか。
それではチームのみんなも困ってしまう。
だから「ここでわたしがちゃんとしないと!」
っていう意味では、わたしも、
ちょっと食いしばっているのかもしれないです。
- 坂井
- そう思いますよ。
でも、食いしばるっていう表現は、
あんまりよくないかな? (笑)
- 伊藤
- どっちかっていうと「踏ん張る」感じ?
- 坂井
- そうですね! 私も「踏ん張り」ました。
- 伊藤
- 具体的には、どんなふうに?
- 坂井
- もう寝たいな、と思っても、
もう一回ちゃんと
台本を整理してから寝たほうがいいな、とか。
- 伊藤
- 新人の時に戻ったような感じ?
- 坂井
- そうですね。
長く仕事をさせていただいてきた分、
“ちょうどいい抜き方”を覚えてきたんですけれど、
あえて、仕事については
新人の頃のように考えました。
そして家のこと、子どものことも、
しっかりやろうと。
お弁当をつくることもそうですし、
娘のおやつの準備や、
習い事の先生とのやり取りや、
夜にはまた次の日の段取りを考えて、
また仕事のことも考えて、と。
そんなとき、まさこさんの
『する、しない。』の本を読んだんですよ。
あの本で、私、すごく頭の整理ができたんです。
- 伊藤
- わぁ、ありがとうございます!
- 坂井
- 忙しいからこそ、することとしないことが
クリアになるんだって思いました。
それこそ、忙しいけれども、
玄関の掃除は「する」。
その方が気持ちいいですし。
- 伊藤
- じゃあ逆に「これはしない」っていうことも?
- 坂井
- ありました。本に書いてあったことですが、
子どもって、片付けてって言っても片づけないし、
どうしても、物が多くなるって。
それを読んで、まさこさんの家も
そうだったんだ、そうだよね! って
気持ちが楽になりました。
片づけても片づけても片づかないことが
ストレスになっていたのですが、
「今は仕方ない」って。
だからものを減らすことも、
そこに時間や手間を使うことも「今はしない」。
「今はこういう時期なんだもの、これで大丈夫!」
って思えるようになったんです。
- 伊藤
- どうにもならないことっていっぱいあって。
前だったら
「どうしてうまくいかないんだろう? もう!」
なんて思うこともあったけれど、
最近は「しょうがないよね、
なるようにしかならないし」
って思うようになってきたんです。
- 坂井
- さっき踏ん張るって言いましたけど、
それも自分に無理をするわけじゃないんですよね。
「こうじゃなきゃダメ」なんて。
- 伊藤
- ね。
それは50代に入ったゆえの図太さなのかな。
100年の鍵
- 伊藤
- 石田さんのマラケシュのお店は、
まだ復旧が先なんでしょうか。
- 石田
- 旧市街全体としては、修復が急ピッチで
進んでいると言えるんですが、
エリアによって全然被害状況が違うんです。
地震の直後は崩れなかったのに、
壁とかに亀裂が入っていて、
最近も崩れて作業員が亡くなったり‥‥。
- 伊藤
- 石田さんのお店は、移転は考えず?
- 石田
- そうなんですよね。
私のお店って、購入した物件なんです。
買ってまだ1年で、借金がある状態なの(笑)。
- 伊藤
- それは大変!
- 石田
- 購入物件といっても、
モロッコってすごく複雑で、
イスラムの法律が使われるんですけど、
こういった史跡みたいな所は
国から「100年の鍵」を買うんですよ。
- 伊藤
- 100年の鍵? いったいそれは??
- 石田
- そういう名目で、占有で使える権利を買う、
みたいな感じでしょうか。
- 伊藤
- なるほど、100年そこを使える。
- 石田
- そう、だけど、なかなか直らなかったら
もうちょっと延びるんじゃないかなと
期待してるんですが。
まあ、生きてる間には
どうにかなると思うんですけど(笑)。
ちなみに私のお店の入る建造物は、
昔は行商の人たちの宿だった建物で、
今は職人さんたちの住まいになっているんですよ。
バブーシュをつくってたり、
バスケットつくったり、
革製品をつくっていたり‥‥。
その建物は、王様が安く貸してくれているんです。
- 伊藤
- 石田さんがその場所を選んだのは、
そういう職人さんと身近だったからですか。
- 石田
- そうです。
今、マラケシュの町はちょっとバブルで、
なんだかギラギラしている。
私はそういう中に自分の店を持ちたくなくて、
できたらちょっと歴史がある中で、
こういう風にものづくりをしてきたっていうことを
空間で見せたかったので、
あえて史跡の中にお店を構えたんです。
こういう物件ってなかなか見つからないんですが、
やっと見つかったら、今回、地震で。
- 伊藤
- 石田さんのお店は今はどういう状況なんですか。
まだインスタグラムの写真のまま?
- 石田
- はい、まだがれきの回収中です。
いろんな所にとにかく亀裂が入ってて危険なので、
これからどれだけの修理が必要か、
これから専門家が入るんですよ。
- 伊藤
- 今は見通しが立ってないってことですね‥‥。
- 石田
- そうですね(笑)。
- 伊藤
- なのに明るくて元気!
- 石田
- 「神様がそう言ってるのかな」と思って、
今はなんか別のことをした方がいいかなって。
- 伊藤
- そうなんですね。
お子さんは学校へ?
- 石田
- はい、学校も、金曜日の夜に地震があって、
土日お休みで、月曜日からは普通にありました。
- 伊藤
- おいくつですか。
- 石田
- 14歳です。中学生。
あんまり恐怖心がない様子です。
日本で3・11も経験してるんですけど。
あの年は3月10日に日本に着いて、
翌日に東京で地震に遭いました。
今回のモロッコの地震は、
3・11の東京ほどの揺れではなかったと思うんだけれど、
「まさかここで?!」っていうのがあったので、
初め、地震だと理解するまでにちょっと時間がかかって。
とくにモロッコ人はみんな地震って分からないから、
大騒ぎになったんですよ。
何日も、理解できない人がいっぱいいて。
戦争が起きたとか、
黒魔術がかけられたとか、
とくにおばちゃんたちはもうギャーギャーと、
すごい大騒ぎになりました。
おさまってからもずーっと、
何も家が壊れてない人も、
怖いって、外で寝ていたんですよ。
- 伊藤
- 倒れてきたらどうしようとか、
そういう不安があったんでしょうね。
- 石田
- 心の傷というか、PTSDみたいな感じで、
怖くて眠れないと‥‥。
そんな中「あなたは地震の国の人だから」って
みんなに言われていたんですけど(笑)、
この私でも、数週間が経ってから、
ちょっとショックが出てきて。
揺れ自体は3・11より弱かったかもしれないけれど、
「まさか、ここで?!」という感覚が強かったので、
脳裏から離れないんですよね。
私がこうなのだから、暗い中で寝ていた山の人たちは
どれだけ怖かったのかなって想像してしまいます。
- 伊藤
- 地震が生まれて初めての方も
いらっしゃったと思うし。
- 石田
- そうなんです。ほぼ全員が初めてで。
怖いですよね。
- 伊藤
- そりゃあ怖いですよね。
壊れなくても、
いくら日本に多いといっても、
地震って怖いですもの。
ましてや地震がなかった国では、
人々の恐怖心もそうだし、
耐震のこととか、建物も不安でしょうし。
- 石田
- もし今起きたら私たちは、
頭巾がある人は被って
テーブルの下に隠れますよね。
- 伊藤
- 火を止めるとか、窓やドアを開けるとか。
- 石田
- そうですよね。
子どものときから避難訓練で教わっている。
でもここの人達はそういう知識や経験がないので、
ワーッてとにかく全員外に出ました。
建物が倒れちゃうのが一番怖いと。
- 伊藤
- それを黒魔術だと‥‥。
- 石田
- しばらく、その話題で盛り上がってました。
今は落ち着いてきています。
「地震とはそういうものなんだ」とわかって。
- 伊藤
- 石田さんのお仕事は、
例えば日本に向けてのものづくりなどは
再開なさっているんですか?
- 石田
- はい、それは進めています。
建物が壊れてお店に入れない状況ですけれど、
別の場所にある工房は
幸運にも、なんの傷もなかったんです。
職人さんたちも、山側じゃなく、
海側に住んでいるので被害がなかったのは、
不幸中の幸いだったと思います。
だから私が一番かわいそうって、
みんなに言われているんですよ(笑)。
- 伊藤
- 買ったばかりのお店‥‥。
- 石田
- 町の人たちに助けていただいてる感じです。
でも、山の人たちの様子を知ると、
私なんかぜんぜん!
普通に朝起きて、こどもが学校に行って、
っていう生活ができているんだから、って。
- 伊藤
- 電気が水道なども大丈夫だったんですよね。
- 石田
- ライフラインはまったく止まらなかったんですよ。
電気も、水道も、電話も、インターネットも。
日本だったら止まるんじゃないかと思うんですが。
- 伊藤
- でもそのことが、みんなの力になったでしょうね。
「よし! 再建するぞ!」
みたいな気運の助けに。
- 石田
- うん。それは大きいですよね。
それと、モロッコの王様が
援助の発表をされたんですよ。
10月から、被災者の方に
毎月2500ディルハム支給しますって。
今、円安なので、4万円ぐらいですが、
こちらでは大きなお金なんですよ。
かつ、お家が全壊した人たちは
日本円で言うと210万円ほど、
半分壊れた人は140万円ほど支給が
決定されて、もうそれがすでに動き出していて。
- 伊藤
- 王様、すごい!
- 石田
- しかも王様のポケットマネーなんですよ。
国の税金とかじゃなくて、
王様が個人的にそれを出しますって声明を出された。
しかもそれがもうすごく早いうちに
ダーンって発表されたので、
みんなの心の安心が大きくて。
- 伊藤
- ほんとうに、王様、すごい!!
‥‥ということは石田さんのお店にも
補助金が出るんですか。
- 石田
- 私のお店は、もともと王様の持ち物なので、
王様が直してくださる‥‥はず‥‥なんです。
今、調査団が来ている段階ですが、
いつまでに直るかは、わからないんです。
ほかの建物は少しずつ修復が始まっているので、
期待しているんですけれど。
- 伊藤
- そっか、王様のものを
100年借りている、ということですものね。
- 石田
- こういうときに思うんですよ、
王制のいいところだなって。
誰にも文句言われずバンッ! って援助できるって、
いいなって思います。
COGTHEBIGSMOKEのコート
落ち込んではいられません
- 伊藤
- 石田さん、こんにちは。
日本は夕方ですけれど、
モロッコは今‥‥
- 石田
- 「おはようございます」の時間です。
よろしくお願いします。
伊藤さんには「こんばんは!」かな。
- 伊藤
- お忙しくて大変なときなのに、
ありがとうございます。
- 石田
- いえ、大して忙しくはありませんよ(笑)。
もう結構落ち着いているんです。
- 伊藤
- 元気そうですね、よかった!
じつは日本には
モロッコがいまどうなっているか、
あんまりニュースが入ってきていないんです。
わからないことだらけで。
- 石田
- そうですよね。たぶん地震が起きてすぐは、
日本でもずいぶん報道されたと思うんですけれど。
- 伊藤
- 甚大な被害だと‥‥。
- 石田
- 日本での報道だと、きっと、
モロッコ全体がたいへんなことになっていると
思われているかもしれないですね。
けれども町では日常が送れているんです。
震災翌日から、町は普通だったんですよ。
- 伊藤
- 「町」って、都市部ということですよね。
エリアによるんでしょうか。
- 石田
- そうなんです。山間部に被災者の方が多くて、
町の人と、世界中の国がみんなで
援助活動を一緒にやってるっていう感じです。
- 伊藤
- その被害があった地域は、
石田さんのいらっしゃるあたりから
どのくらい離れてるんですか。
- 石田
- 近いところでは車で1時間半ぐらいですね。
遠いところで3~4時間かな。
- 伊藤
- そうなんですね。
- 石田
- とにかく山脈の奥の方が点々と崩壊したんです。
- 伊藤
- それなのに、石田さんのお店は
壊れてしまったとか‥‥。
- 石田
- そうなんです。私はマラケシュっていう
都市部に住んでいるんですけれど、
マラケシュって22㎞城壁に囲まれた
迷路の町とも言われる旧市街があって、
スークと呼ばれているんです。
その全体が世界遺産に登録されているんですよ。
城壁の外側は碁盤の目みたいになっている
新市街が拡がっていて、
マクドナルドもH&MもZARAも、
普通に日本にあるような感じの
ショッピングモールもいっぱいあるんですね。
そしてその新市街の方は、ほぼ、被害がなくて。
ところが城壁に囲まれたスークは、
地震の被害をこうむったんですよ。
- 伊藤
- それは建物が歴史的建造物で、
耐震構造がないからとか、
そういうことが関係してるんですか。
- 石田
- そうなんです。
最近分かったんですけど、
同じ規模の地震でも、
日本だったらこんなに被害はなかったらしいです。
やっぱり建物が地震にすごく弱い。
しかもちゃんと基礎がないんですって。
古い土と石が重なっているだけの建物が多かった。
だから全壊するような建物も出てしまったんですね。
いっぽう、山間部の村々の被害は、
平らな場所じゃなくて
斜めの場所に斜めのまま建ててしまってるので、
やっぱり基礎がちゃんとできていなかったそうなんです。
専門の方がそうコメントをしていました。
- 伊藤
- 旧市街も、全体が世界遺産ということは、
いずれも貴重な建物というか、
そのまま残さなきゃいけないから、
手を加えられていなかったんでしょうね。
- 石田
- 私がお店を持っていたところは、
キャラバンセライ(Caravan Serai)といって、
マラケシュの町に商売をしに来ていた
ラクダの行商が宿にしていたという、
すっごく古い、歴史的建造物だったんです。
旧市街に140個あるうちのひとつでした。
1階にロバとかラクダを入れる部屋があって、
2階に人が寝られる小さな部屋、
そして回廊と中庭があるんですね。
そのキャラバンセライに、
モロッコの王様がここ数年で
240億ドルだったかな、お金を出して、
大修復工事をしていたんです。
工事が終わったところは、
結構壊れずに済んだんですが、
不運にも私のお店の入っていた建造物は
壊れてしまいました。
あとお祈りをするモスクも、
結構崩壊していたり。
- 伊藤
- モスクも! 心のよりどころが壊れてしまうと、
地元のかたも、気持ちが落ち込んだり、
されてるんでしょうか。
- 石田
- ところが、スークに住んでいる人たちは、
あまり落ち込んでない感じがするというか、
意外と、元気なんですよ。
- 伊藤
- それは、モロッコの人たちの国民性?
- 石田
- 国民性もあるんです。
普段、うんとのんびりしている。
- 伊藤
- (笑)
- 石田
- お客さんが来るまで昼寝して、
来たら起きて対応するぐらいの、
もうまったくやる気のない感じの方々なんですが、
やるときの、馬鹿力がすごくて。
- 伊藤
- へえ!
- 石田
- 予定されていた、各国から首脳陣が集まる
IMFの国際会議で、1万5000人がやってくるというのを、
開催か中止か議論されていたんですが、
「やっぱりやりましょう」となった頃、
震災から3週間くらいでしたが、
それに向けての大復興大会が始まって。
旧市街の中は王様プロジェクトが、
もうありとあらゆるところで急ピッチで進んでいます。
特に観光エリアはすごくて、
店舗も8割方開いています。
その会議がとにかくすごい重要で、
会議専用の建物も町のちょっと郊外に
いっぱい新しく建てていて、
それ以外にも3つぐらい
大きな会議が予定されているんですよ。
世界中から史上最多の訪問客が来るからと、
みんな、商品を用意したり、
キラキラと町をきらびやかにしていて。
地震で1回落ち込んだけど、
やっぱりまたやるぞ、みたいな感じで。
- 伊藤
- 「落ち込んでいる場合ではない」と。
- 石田
- それより山の人たちの支援をどうしようというのが
目下の取り組みですね。
山は、もう雪が降りますから。
富士山より標高の高い山があって、
その山あいに住んでいる人たちは
寒さ対策が急務なんです。
- 伊藤
- 土地によってそんなに寒暖差があるんですね。
観光のお客様は
キャンセルしたりとかされてるんですか。
- 石田
- 9月中はキャンセルがあったみたいなんですけど、
10月はやっぱり行く、という方が増えてきて。
世界に向けて“大丈夫だよキャンペーン”を
しているみたいですよ。
- 伊藤
- モロッコに行こうという方って、
旅行者としてもタフなのかもしれないですね。
ちょっと気合いが違うというか‥‥。
- 石田
- そうですね、日本からは、
きっとそういうふうに見えていると思います。
こちらにいると、まずヨーロッパが近いんですよ。
パリから3時間だし、
今はLCCっていうすごく安い飛行機が
いっぱい飛んでいます。
特にマラケシュっていう私の住んでる町は
凄い観光地なので、LCCの空路がいっぱいで。
スペインからだと、モロッコの北の港なら
フェリーで45分で来られますし。
だから太陽を求めて、プールサイドでのんびりする
外国人観光客も結構多いんですよ。
ひと夏のアバンチュールみたいな出会いを求めて来る
ご老人とかね(笑)。
- 伊藤
- あら。素敵なホテルもありそうですしね。
- 石田
- そう。ホテルがもう何千とあって、
もう本当に素敵なところがいっぱいなんです。
いろんな国のいいところがミックスされています。
- 伊藤
- なるほど。
ワランワヤンの石田雅美さんに、地震のあとのモロッコの様子をききました。
モロッコに“この100年で最大規模”という
マグニチュード6.8の大きな地震があったのは、
2023年9月8日の23時11分
(日本では9日の朝7時11分)のことでした。
モロッコといえば「weeksdays」そして「ほぼ日」で
たくさんお世話になっているワランワヤンの
石田雅美さんが拠点としている国。
石田さんの住まいとお店があるマラケシュの町も
大きな揺れを観測したと知りました。
その後、石田さんのインスタグラムで、
お店の入っている歴史的建造物が壊れ、
お店に立ち入ることすらできなくなってしまったことが
報告されました。
日本のニュースでも、がれきの山となっている
マラケシュ旧市街のようすが報道され、
地震直後の町では屋外で夜をあかす人もいたとの報道。
そんななか、石田さんからは
「私は元気です!」という言葉もあり、ホッ。
そして地震から数週間が経った頃に、石田さんから、
ちょっと落ち着きました、というご連絡をいただきました。
そこでマラケシュの石田さんと
東京の伊藤まさこさんをオンラインで結んで、
現地のようすをおききしました。
今のマラケシュ、そしてモロッコのようすを
3回にわけて、おとどけします。
─こちらからどうぞ─
どんな自分が
おしゃれな人の定義ってなんだろう?
‥‥と私の周りのすてきな人たちを
頭に思い浮かべてみると、
分かることがある。
流行に振り回されるのでもなく、
でも、さりげなく「今」の空気を取り入れ、
自分流に着こなす人。
「私はこれ」という確固としたスタイルのある人。
ちょっとよれっとしたニットを着ていても、
すてきだなぁ‥‥と感じる人もいたりして。
ということは、
自分に似合うものを知っている人が、
私にとっての、おしゃれな人なんだなぁ。
でもじつは、
何を着ているかということよりも、
その人の中身が大切。
人となりは外側に現れるものだから。
今週のweeksdaysは、
COGTHEBIGSMOKE のコートとジャケット。
モデルは坂井真紀さんにお願いしました。
「何を着るか」より、
「どんな自分が着るか」。
真紀さんの「着こなす力」を見ていたら、
そんな言葉が思い浮かびました。
同世代同士のおしゃれ対談もどうぞおたのしみに。
saquiのフォーマル、たとえばこんなコーディネート 4・ふだんも
ハーフパンツとの
カジュアルなコーディネートにもおすすめです。
ブラウスのプリーツ幅が少し太めなので
エレガントすぎず、
足元はローファーで軽快に。(岸山)
動くたびに、ひらひらと揺れるプリーツが
魅力的なブラウス。
あえて控えめなグレーのハーフパンツを合わせ、
ブラウスを引き立てました。
秋が深まったらタイツやカーディガンを羽織っても。
(伊藤)
普段のニットにさらっと羽織っても素敵です。
“オトナっぽく”の
最初のコーディネートでも説明しましたが、
黒よりも普段のお洋服に合うのかな、と思います。(岸山)
軽やかなネイビーは、
気負わずに着たい。
中に合わせたいのは、
ジャケットの質感によせた、
よい素材の薄手のニット。
ここではSLOANEのシルクニットをえらびました。
(伊藤)
saquiのフォーマル、たとえばこんなコーディネート 3・オトナっぽく
ネイビーのノーカラースリットスリーブジャケットは
黒よりもやわらかい印象なので、
普段のお出かけスタイルに
さっと羽織ることができて便利です。
短めの丈なので、
写真のようなロング丈のワンピースやスカート、
ワイドパンツなどにおすすめです。(岸山)
このジャケット、私はブラックを持っているので、
今回は買うのを控えようかな‥‥
と思っていたのですが、
このコーディネートを見たら、
やっぱり欲しくなってしまいました。
ネイビーは応用範囲が広く、
持っているとあらゆるシーンで活躍してくれそうです。
(伊藤)
ネイビーのノーカラースリットスリーブジャケットと
ストレートスカートに
同系色のシルクブラウスを合わせて
大人っぽくコーディネート。
エレガントになりすぎないように、
足もとはレースソックスとベージュのパンプスで
はずしをプラスしました。(岸山)
色や質感のグラデーションを楽しむのが好きです。
とくに自分でもよくするのが、
いろいろなネイビーを重ねるコーディネート。
ここで合わせたのは、シルクのブラウス。
同素材のジャケットとスカートの
よいつなぎ役になってくれました。
足元は肌に近い色を。
ベージュやちょっとくすんだ水色のブーツも合いそうです。
(伊藤)
[お問い合わせ先]
株式会社saqui TEL:03-6427-0861
saquiのフォーマル、たとえばこんなコーディネート 2・ブラウスを着るとき
プリーツペプラムブラウスと
ネイビーのテーパードリボンパンツのきれいめスタイルに、シルバーの靴でアクセントをつけました。
シルバーのアクセサリーも合いそう。(岸山)
清楚なイメージのブラウスは、
ノーカラースリットジャケットとの相性はもちろん、
単体で着ても。
ここではネイビーの
テーパードリボンパンツを合わせました。
手首や、シルバーの靴からのぞく
素肌の分量もスタイリングの一部。
全体のバランスを鏡でよく見て。
髪型なども工夫してすっきり見せたいものです。(伊藤)
ひとつ上のコーディネートに
ネイビーのノーカラースリットスリーブジャケットを
羽織れば、上品でおしゃれなセミフォーマルスタイルに。
また、仕事などでジャケットを着たいシーンにも
ぴったりです。(岸山)
ジャケットの裾からのぞくこのプリーツの分量!
前から見ても、
また後ろ姿も、「計算されているな‥‥」と感じる、
上級者の着こなし。
手を動かすたびに、見え隠れする
ジャケットの裏地(シルク)の質の良さにも注目です。
(伊藤)
saquiのフォーマル、たとえばこんなコーディネート 1・その日
フレアワンピースは、
黒のノーカラースリットスリーブジャケットと
セットアップで着用しても素敵。
ジャケットがもともと短め丈なので、
スカートのフレアーとのバランスがよく、
スタイルもよく見えます。(岸山)
お別れのシーンをイメージしたスタイリングです。
首元にはパールのネックレスを、
耳元にはあえて小さな粒のピアスをえらびました。
足元は黒のストッキングとベーシックな黒のシューズを。
メイクもヘアスタイルも控えめですが、
それだけに服の素材のよさが引き立ちます。
一枚持っていると、突然の出来事にも対応できる。
大人の必需品ではないかなぁ‥‥と思っています。
私も去年、saquiのフォーマルには
大変お世話になりましたから。(伊藤)
レースはブラックフォーマルでも
着用が認められていますから、
合わせてコーディネートしても。
実はこのフレアワンピースに合わせたくて、
レースプルオーバーを作ったほど。
レイヤースタイルもおしゃれでおすすめです。(岸山)
ワンピースの下にレースのプルオーバー!
はっと目を引くコーディネート。
レースから覗く素肌が
アクセサリーの代わりになっていて、
とても華やかです。
合わせる小物によって、
さまざまなシーンに対応できる
レース+ワンピースのレイヤー。
岸山さんおすすめというのも納得です。(伊藤)
ブラックフォーマルをイメージしたコーディネート。
ジャケットなしでもさまになるワンピースです。(岸山)
「王道」と呼びたい、
ブラックフォーマルのコーディネート。
レースのクラッチバッグを合わせてシンプルに。
パールのネックレスは襟ぐりに沿うように、
長さを調節しました。
フォーマルともども、こういったアクセサリーも、
持っていると助かるアイテムです。(伊藤)
[お問い合わせ先]
株式会社saqui TEL:03-6427-0861
着やすさが活動の幅をひろげます
- 藤井
- そういえば今回は新色が出ますよね。
- 山川
- ノーカラースリットスリーブジャケットに、
ネイビーが出るんです。
- 伊藤
- 入学式や卒園式など、
学校行事にもいいですよね。
- 小泉
- ネイビーは四谷から九段下界隈の御用達です。
- ──
- なぜ四谷から九段下なの(笑)。
- 小泉
- そのあたりの有名な学校って、
送り迎えのママさんたちが、
ほんとうにきちんとしてるんです。
それがみなさんネイビーで。
- 山川
- そうなんですよね。毎日ですよね。
- 小泉
- ママさんたちのネイビーは、
もっと、こう、百貨店的に
スタンダードな印象ですよね。
そんな送り迎えはわが家には縁遠いんですが、
だからsaquiのデザイン、あの生地で
ネイビーがあるというのは新鮮だし、期待大です。
どんなネイビーなんですか。
けっこう深い感じですか。
- 伊藤
- そうです。濃紺。いいネイビーですよ。
- 山川
- ジャケットに合わせる白のブラウスも出ます。
- 伊藤
- プリーツが入っていて、かわいいんです。
ショート丈のジャケットから
きれいにプリーツが見える。
岸山さんが今回のためにデザインしてくださった。
- 小泉
- まあ! 私、言われたとおりに買いたいから、
ジャケット買うなら
ブラウスも買っちゃうじゃないですか。
- 伊藤
- ぜひ。改めて伝えたいのは、
このジャケットやワンピースいいところって、
シワにならないこと。
急にいろいろなことがあったり、
遠方だったりするでしょう。
シワにならないから、
持っていくのもラクなんです。
- 倉持
- 持っていける!
- 小泉
- 遠方に、フォーマルとまではなくとも、
仕事できちんとした服を着なきゃいけない、
と言われたとき、黒のパンツ、ほんとに助かりました。
- 山川
- 生地がすばらしいですよね。
- ──
- 生地についてくわしくはこちらをどうぞ。
- 小泉
- 夏の話でも出ましたが、洗えますし。
もうほんとに扱いやすい。
ホテルで洗っても乾きましたよ。
前、中国の式典みたいなのに
出なきゃいけない時、
丸衿プルオーバーを持っていったんです。
- 伊藤
- あ、そんなこと、してるの?
ホテルの部屋で洗ったの?
- 倉持
- え、旅先で?
- 小泉
- え? やらない?
だって乾きますよ。
冬なら加湿にもなるし‥‥。
- 一同
- (笑)
- 伊藤
- すごーい!
タオルで包んで脱水するの?
- 倉持
- たしかに旅先だと脱水で困りそう。
- 小泉
- え、もう(手で絞るしぐさで)ギュー、ですよ。
- 伊藤
- えっ、えっ。
- 小泉
- だってシワにならないし、
丸衿プルオーバー、
そんなに大物でもないですし、
翌日以降も着なくちゃいけなかったので、
きれいに保とうと思って、洗いました。
- 伊藤
- それはいい話。
- 小泉
- 伊藤さんがおっしゃったんですよ、
ホテルでも洗えますよ! って。
私におすすめくださった時に。
- 伊藤
- あれ? そうだっけ? そっか。
- 小泉
- そして、合わせてバッグも買わなきゃと思ってます。
- 伊藤
- そうなの、こういうとき、小さなバッグ、いいですよ。
わたしは普段も小さなバッグが好きなんですが、
みんなはそうでもないのかな。
街でもクラッチ持ってる人って、
あんまりいないもの。
- 小泉
- 私は伊藤さんのスタイルを取り入れて、
いまやクラッチ大好きです。
楽なんです、ほんとに。
- 倉持
- うんうん。わかります。
クラッチ大好き。
- 伊藤
- ね、これもかわいい。
- 倉持
- クラッチに入るぐらいの荷物の少なさで
お出掛けできるタイミングを探すんですが、
直前になって「あれもこれも」となり、
ちょっと大きめのバッグを選ぶことになって。
- 伊藤
- お仕事だと、容量がね。
- 小泉
- だから週末はクラッチ。
平日は無理。でも平日だけれど
途中で出かけるのに大荷物はまずい、
というときは、CI-VAのNUVOLAバッグを
バッグインバッグとして持っていき、
外出する時、ほぼ日手帳を入れて出かけます。
- 山川
- さすがです。
- ──
- みなさん靴はどうしてるんですか? そういう時。
- 小泉
- 靴はweeksdaysのStilmodaの
フラットシューズバブーシュ、黒です。
すごく気に入ったので、2足揃えて、
普段用と、汚れていてはいけない時用にしています。
- 山川
- ありがとうございます。
- 小泉
- フォーマルに合わせるなら、
ほんとは全部黒のほうがいいんでしょうけれど、
Stilmodaはソールが黒じゃないんですよね。
でもほんとに履きやすくて。
私、ヒールのある靴が苦手なんですが、
これはすごく歩けるから重宝しているんです。
- 伊藤
- 山川さんはどういう時に着ましたか。
- 山川
- 私は普通にフォーマルな場で着ました。
滋賀県であった3回忌に参列するのに、
新幹線で持って行き、向こうで着替えました。
便利だし、いなかのおばあちゃんにも
「ちゃんとしてるわね」って褒められましたよ。
デザインされすぎている服って、
「ちょっと?!」みたいに思われるじゃないですか。
- 小泉
- たしかに。
- 山川
- でもsaquiのフォーマルは、
ちゃんとしてるねって思われつつ、
自分も満足するというか、
「いいものを、ちゃんと着た!」
「ヨシ!」っという感じがして、
すごくよかったです。
- 伊藤
- よかったです。
- 小泉
- いつ来るかわからない。
ひょっとして数年後かもしれないその時のために
今買っておこう、というよりも、
すぐ着られるんだと今回わかってよかったです。
でも数年後だとしても、すてきなままですよね。
- 伊藤
- 最初にこれを出したのは3年前。
ひょっとしてちょっとパターンを変えたりするのかな、
と最初は思っていたけれど、
全然、その必要がないんです。
- 小泉
- デザインに普遍性があるんでしょうね。
しばらく大丈夫ですね、きっと。
- 倉持
- 合わせてロングコートも再販売だそうですね。
これ、すてきですね。すごく惹かれてます。
- 小泉
- 私もそう、ロングコート、気になります。
- 山川
- さらに、ワンピースにも新型が出ますよ。
- 小泉
- そうなんですね!
- 倉持
- ウエストに切り替えがあるんですね。
- 伊藤
- そう。かわいいの。
- 山川
- ミモレ丈になって。
- 小泉
- 私でも大丈夫ですか?
- 伊藤
- 大丈夫です。着てください。
- 小泉
- 検討します。どれにしようかな。
あらためて言いますが、
saquiのこの素材の服って、
人からはフォーマルっぽく、
カチッとした服に見えていると思うんですけど、
着ていると堅苦しい印象がないんですよ。
- 山川
- めちゃくちゃラクですよね。
- 伊藤
- 着心地がいいんですよね。
- 小泉
- それがすごいなと思うんです。
ほんとうにそういうカチッとした服を
日常的に着なきゃいけない仕事の方にも、
このシリーズ、いいと思います。
- 倉持
- すごくいいですよね。
デザインのよさに、
とろみのある感じの素材もあいまって、
女性らしく見えるっていうか。
- 伊藤
- ぜひ検討ください。
今日はありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました!
私がきちんとすると、まわりもきちんとする
- 伊藤
- 倉持さんは、10年前のフォーマルは
もう着られないとおっしゃっていたけれど、
今、フォーマルな場には?
- 倉持
- その都度、あるものの中から、
適宜組み合わせているんです。
- 小泉
- 倉持さんはとっても上手ですよ。
普段からきれいめの恰好が多いし、
ちょっとアレンジするだけできちんとする。
- 倉持
- でも、ブラックフォーマルはやっぱり、
全身で一着、持っていないと。
安心感がありますよ。
- 小泉
- そうなんですよね。
- 伊藤
- それでは持っている人のお話も
聞かせてください。
- 山川
- 私は、最初の岸山さんとの対談の時に、
伊藤さんが着てらっしゃった姿や、
スタイリングなさった写真を見て、
そっか、フォーマルウエアって、
いろんなシチュエーションで着られるんだ、
とわかって、買うことにしました。
- 伊藤
- 藤井さんもコンテンツを見て、
買ってくださったとか。
- 藤井
- そうなんですよ。組み合わせ次第で、
ちゃんとしたレストランに行く、
というような時にも活躍すると知って。
伊藤さんのなさったスタイリングもかわいくて。
- 山川
- そう、かわいいんですよ。
私たち、ラッキーなことに、
試作中に試着をさせていただく機会があって、
同僚が着ている姿を見ても、
いろんな人に、
すごく似合うなっていうのを感じました。
- 伊藤
- そうそう! そうなんです。
- 山川
- それで私はワンピースとジャケットを
両方買いました。
- 小泉
- あらまあ。
- 伊藤
- 組み合わせができるのもいいんですよ。
昨年、知人のお通夜に娘と一緒に出ることになり、
saquiのフォーマルを
テーパードリボンパンツと組み合わせたりしながら、
2人ぶんのフォーマルのコーディネートができました。
そのとき「あ、買ってよかったな」と。
- 小泉
- たしかに、たしかに。
これが再入荷するんですか?
ノーカラースリットスリーブジャケット、
気になっているんです。
- 伊藤
- すごくすてきですよ。
- 山川
- すてきです。カッコいい。
私は「ほぼ日」の
株主ミーティングでこれを着たかったんですよ。
それで張り切ってたら、昨年は、
「今年はみんなTシャツです」って(笑)。
- 小泉
- そうでした!
- 倉持
- そうだった(笑)。
- 山川
- ガーン!
- 倉持
- 今年はどうでしょうね。
- 山川
- 一昨年までは、
手伝う乗組員たちも、一応、
きちんとしていたんですよ。
- ──
- 男子もスーツを着ましたね。
- 山川
- 私たち、ふだんがカジュアルなので、
年に一度のその日が好きだったんですけど(笑)。
でも登壇する絢さんは、
ちゃんとsaquiを着てください。
- 小泉
- たとえばこのジャケットの下に、
saquiの丸衿プルオーバーでも大丈夫ですか?
- 伊藤
- いいと思いますよ。
- 倉持
- ほんとに美しいですね。
- 山川
- そう、すごくきれいなんです。
- 小泉
- 普段づかいもできそうですし。
- ──
- それこそちょっといいレストランとか、
学校行事にもよさそうですね。
そんなふうにフォーマル寄りのオシャレをする機会を
もっと増やしてもいいんじゃないかなって思うんです。
せっかくこれを持つのなら。
- 伊藤
- そう、きちんとしたものを着ていると、
きちんとした対応をしてもらえますよ。
- 倉持
- そう、ホテルとか、
絶対、見てますよね。
- 小泉
- ちょっとお出掛けという時に、
「今日、ちょっと気取っちゃおう」
みたいな気分って、ないですか。
- 藤井
- あります!
- 山川
- あります。
- 小泉
- こんな私でも、
歩き方をモデルのように一直線にしよう、とか。
- 伊藤
- ふふふ。そんなこと考えたこともなかった!
- 小泉
- 伊藤さんは普段からできているんですよ。
- 伊藤
- いいえ、できてないですよ(笑)。
藤井さんは何をどんなふうに?
- 藤井
- 私はワンピースを持っています。
フォーマルだと思うと出番が少ないから、
最初、どうしようかなって迷ったんですけれど、
「これだったらあのレストランに行けるな」と。
‥‥でも、まだ出番待ちなんです(笑)。
- 小泉
- 実はジャケット以上に、
ワンピースもよさそうなんですよね。
- 倉持
- 以前のコンテンツで、伊藤さんは、
ワンピースに黒いタイツでしたが、
足元は何を?
- 伊藤
- あのときは、エナメルのひも靴ですね。
こうすると喪服っぽくはならないんです。
- 倉持
- エナメルの黒い靴!
そっか、全部黒でも、
こうして華やかさを出すことができるんですね。
- 小泉
- このスタイリングは上級者ですね。
- 伊藤
- そんなことないですよ。
- 山川
- もともとのデザインが、
袖の長さとか開き具合とかが絶妙なので、
安心して着られますよね。
- 伊藤
- そう、絶妙なんです。
あとズドンとしていないから、
きれいに見える。
- 小泉
- ちなみに、収納力については?
おなかの肉の収納力。
けっこう、シュッとして見えるんですが。
- 伊藤
- あ、収納力。
体型カバー、ばっちりです。
- 山川
- サイズ展開も豊富です。
- 小泉
- じゃあ、一番上のサイズなら大丈夫?
- 伊藤
- 一番上じゃなくても。
- 小泉
- いや、私、こういうものは、
一番上を買っておくんです。
体重増という有事のために。
- 伊藤
- 有事!
- 倉持
- スリークォーターということは、
3シーズンいけるっていう意味ですね。
- 小泉
- 夏はさすがに暑いですか。
- 伊藤
- 日本の夏はさすがに暑いでしょうね。
でも夏物フォーマルはつくっていないんですよ。
何日も続けて着ることはないですし、
お洗濯もできますから、
いざというときは夏も着て頂いて、
ということです。
えっ、フォーマルはあとまわし?
- ──
- 今日は伊藤さんと「ほぼ日」乗組員で、
フォーマルウェアについて
いろいろとお話しできたらと思います。
- 伊藤
- どうぞよろしくおねがいします。
- ──
- weeksdaysで扱っている
saquiのフォーマルウェアを
すでに持っているのが、山川さんと、藤井さん。
持っていないのが、小泉さんと、倉持さんですね。
- 伊藤
- 倉持さんは、以前、大企業で
役員秘書をなさっていたんですよね。
お仕事柄、フォーマルウェアを着る機会も
多かったんじゃないかなって想像しているんです。
- 倉持
- はい、前職では、それこそ会社のロッカーに
フォーマルウェアを3着、常備していました。
- 山川
- ええ、そんなに?!
- 小泉
- 緊急対応用?!
- 伊藤
- その3着って、少しずつ違うわけですか。
- 倉持
- 完全なフォーマルがひとそろい、
そして上司に同行するときのもの、
さらに、お手伝いできるぐらいの、
ちょっと動きやすい素材のスーツでした。
靴やバッグもあって、
家に戻らずに着替えられるようにしていました。
けれど「ほぼ日」に来てからは、
家のクローゼットに眠ったままになっています。
- 伊藤
- 転職後は、出番が少なかったんですか。
- 倉持
- そうですね、やはり職業柄だったのだと思います。
でも、今も、一着は持ってなきゃ、と思ってます。
いつ何があるかわからないですものね。
- ──
- その時代のものは、今、着ようとすると‥‥。
- 倉持
- もう着られないと思います。
10年くらい前のものですから。
- 山川
- フォーマルを着る機会って、
10年くらい平気で経っちゃうことがありますよね。
- 伊藤
- 10年の間には、
デザインも変わっていると思うんですよ。
先日、48歳の男性の金工作家の友人と
話していたんですが、
彼は、フォーマルウェアを毎年替えるんですって。
- 小泉
- え? 毎年?
- 伊藤
- いいものだけれど古いのを着続けるより、
安くても新しいものを着るようにしていると。
だから量販店で、高くないものを選ぶんだそうです。
- 小泉
- 男性のスーツって、流行がないようでいて、
実は毎年、微妙に変わるんですってね。
- 伊藤
- そうなんですよね。
その話を60代の男性にしたら、
「それは若いからできるんですよ」と。
歳を重ねると、やっぱりいいものを着ないと
おかしいんですって。
- ──
- 自分は十数年前、仲のいい友人が突然亡くなった時、
一張羅を着て行こうと思い、
いいブラックスーツを揃えたんです。
ところがその時、ダイエットに成功していたんですよ。
その後、太ってしまって、まあ着られないこと‥‥(笑)。
- 一同
- (笑)
- 小泉
- 難しいですよね~。
- 伊藤
- その着られない一張羅は
どうしているの?
- ──
- そのままクローゼットにあります。
誰かにあげるべきか、
もう一度痩せる日を夢見るか。
でも、それこそデザインが
変わっているでしょうね。
- 伊藤
- たとえば、
おしゃれ上級者の中には、
トレンドのものは、
数着持っていればいいですよって方もいて。
- ──
- そこを追いかけるというよりは、
数着に抑えて、
着回しのきくものを買ったほうがいいと。
- 伊藤
- そういうことですね。
- 小泉
- そこがまさしく「weeksdays」は便利で、
毎回じゃなくても買い足しをしていたら、
必然的に普遍的なものとトレンドのものが
ちょうどよく混じるんです。
私はもともとトレンドに無頓着なんですが、
weeksdaysを買うようになってから、
「もう、ついて行けばいいんだ!」って、
ラクになりました。
- 山川
- たしかに、絢さん、
会社でもよくweeksdaysを着ています。
今日もつま先までweeksdays。
- 小泉
- weeksdaysばっかりです!
公式ストーカーと呼んでください。
- 倉持
- (笑)わかります。
私もそう。時々かぶっちゃいますよね。
- 小泉
- weeksdaysのいいところはですね、
体型をそんなに気にせず着られることです。
みなさんご存知のとおり、
私、8キロぐらいしょっちゅう増減するんです。
人間風船? なんて言うの?
- 伊藤
- それはどういうこと‥‥(笑)?
- 小泉
- 8キロ増えてしまったら、
ダイエットをして体重を戻すんです。
実は減らすのは早くて、
増えるほうがゆっくりです。
2年くらいで徐々に増え、
それを一気に戻すんです。
- 山川
- ちゃんと戻せるのがすごいですね。
- ──
- 受験勉強か! っていうくらい
集中して落としてますよね。
- 小泉
- ‥‥この話、関係なくないですか。
大丈夫ですか。よくないんじゃないですか。
- 伊藤
- おもしろいから、そのままで大丈夫です。
- 小泉
- でも、本当、weeksdaysの服は
お腹まわりのいかんともしがたいお肉ちゃんたちを
ちゃんと収納してくれるというか。
それで着ていて何より気持ちいいです。
そこは、伊藤さん、
やっぱり大事になさっているんですよね。
- 伊藤
- デザイナーさんがわたしと近い年代か、
すこし上の先輩だということが肝だと思うんです。
ここにちょっとお肉がついてきたなとか、
そういうことを実感している。
腰回り、二の腕など、とくにそうですよね。
ノースリーブも、その年代のデザイナーがつくるものは、
ほんとうに良く考えられていますよ。
- 小泉
- すごくすてき。でも、
私はノースリーブ、無理です。
- 倉持
- 私も‥‥。
- 伊藤
- いや、大丈夫です。
weeksdaysのノースリーブは、
うまく隠れるようにできてます。
二の腕は、前は出しても、
後ろが隠れればいいの。
- 小泉
- 大丈夫な人はそう言うんですよ~。
‥‥ということについては、
またあらためて座談会でお話ししたいです。
話を戻しますと、weeksdaysの服は、
体型をあまり気にせずに着られるものが多いので、
とってもうれしいです。
- ──
- そのweeksdaysがsaquiといっしょに
フォーマルをつくったわけです。
- 小泉
- きっかけは、なんだったんですか。
- 伊藤
- そもそもsaquiのテーパードリボンパンツを
いいなと思っていたんですよ。
- 小泉
- はい。着てます。
わたし、発売前に、伊藤さんから
「このパンツ、毎日着られるのよ」と聞き、
着てみたら「あ、ホンマや!」。
- 山川
- 弊社、かなりの女性たちが着ていますね。
- 伊藤
- シワにならないし、上品だから、
そうだフォーマルの席にもいいんじゃない?
と思って、saquiのデザイナーであり
主宰の岸山沙代子さんに伝えて、
つくってもらったんです。
そこからスタートしたんですよ。
- 小泉
- それなのに私がフォーマルを買っていない
理由を言っていいですか。
私、このパンツのほかに
saquiの丸衿プルオーバーと、
ストレートスカートを持っているんですけど、
ちょっとした場なら、その組み合わせで
フォーマルとして使えるんですよ。
- 山川
- うんうん。なりますよね。たしかに。
- 小泉
- 学校行事とか。
さらにweeksdaysは
ほかに買いたいものが押し寄せてくるので、
フォーマルがあとまわしになっているんです。
- 伊藤
- そっか、そういえば、
株主ミーティングもそれで?
- 小泉
- はい、そのスタイルで出たことがあります。
とてもきちんとして見えるので、
もちろんお世辞だと思いますが、
みなさん褒めてくださって!
- 山川
- いや、すてきでしたよ。
カッコよかったです。
ちょっとした風格が出るんですよね。
- 倉持
- saqui、すごいですよね。
今回ワンピースを改めてページで見て、
黒が深いのがいいなと思ったんですよ。
- 伊藤
- そうなんですよ! 「黒が深い」。
- 倉持
- フォーマルな場に行くと、
じつは黒の色もいろいろあることに
気がつくんですよね。
「あ、これはきれいだな」という黒もあれば、
そうでもない黒もあって。
すぐにわかりますよね。
- 伊藤
- そう、黒って、
ごまかしがきかないんですよ。
- 倉持
- きかないです。
- 小泉
- えっ、ごまかしがきかないって、
どういうことですか。
- 倉持
- ちゃんとしているつもりでも、
安っぽい黒って、ばれちゃうっていうか。
- 伊藤
- 岸山さんとも話したんですが、
saquiのテーパードリボンパンツを
街で時々見かけるんだけれど、
「あっ」とかって、すぐわかるの。
それはまず素材のよさ、色味なんですよ。
- 小泉
- たしかにこの素材、すばらしいですよね。
家でも洗濯機で洗えて、
色もそのまんまキープで、
素材感も買ったときから変わらない。
- 伊藤
- アイロンはかけている?
- 小泉
- かけていないです。
全くしてないです。
- 伊藤
- そこなの。
アイロンで失敗すると、
縫い代のアタリが表に出たりして、
かえって残念な感じになることがあるんです。
けれどもsaquiのこの素材は
アイロンがいらないから。
- 小泉
- え、縫い代のアタリ?
そんなこと気にしてアイロンかけるんですか。
その議題でまた座談会ができます!
- 一同
- (笑)
手作業のすばらしさ
- 伊藤
- さて! このブラウスは、新作ですね。
- 岸山
- はい。ネイビーのジャケットに合わせる
ブラウスを作ろうと思いました。
- 伊藤
- 重ねて着たときに、
ブラウスがちょっと見えるのが
すごくかわいいんです。
これも、切り替えになっていますね。
- 岸山
- ワンピースと同じ仕立て方です。
これが気に入っちゃったのと、
ただの切り替えより、ずっと高級感が出るので、
このつくりを採用しました。
- 伊藤
- デザインの引き算が上手だなと思ったのが、
切り替え部分にステッチがないところです。
- 岸山
- そう、ステッチがあるとカジュアルに近づくので。
- 伊藤
- これもバイアスづかい?
- 岸山
- そうです。同じ手法です。
タイプライターという高密度のシャツ生地です。
- 伊藤
- しかもプリーツ加工がされている。
- 岸山
- はい、洗ってもプリーツはとれにくいです。
この加工ができるように
ポリエステル混の生地を選んだんです。
コットンだけだと、とれやすいので。
- 伊藤
- 何パーセント入ってるの?
- 岸山
- ポリエステル65%、コットン35%ですね。
- 伊藤
- たしかに、100%コットンよりも、
ポリエステルが入っていた方が、
ジャケットの素材感に合いますね。
- 岸山
- 今っぽさも出ますよね。
ネイビーのジャケットに合わせてつくりましたが、
これ、黒にも合うんです。
黒のジャケットとパンツやスカートに合わせて
中になにを着ればいいですかって訊かれたとき、
黒いTシャツやブラウスを、
とお話ししていましたたけど、
こんなふうに白で合わせられるものが
あったらいいなあっていうことは、
ずっと思っていたんです。
ジャケットが短めなので、
こういうブラウスを、ちょっと裾を出して
見せてあげても、バランスがいいんですよ。
長すぎはしないし、短すぎもしないので。
- ──
- 精錬漂白をした蛍光的な白じゃないのもいいですね。
- 岸山
- そう、純白ではなく、オフホワイトです。
多くの人に馴染む色を、と選びました。
- 伊藤
- 襟ぐりのデザインも、
開き過ぎず詰まり過ぎず、
ちょうどよかったですよ。
- 岸山
- よかった!
後ろ開きで、ボタンを見せるって感じです。
大きめのボタンが3つあります。
- ──
- いろんなコーディネートができそうです。
- 伊藤
- そう、フォーマルだけでなく、
ダンガリー素材のパンツなどに合わせても、
きっとかわいいですね。
- ──
- 袖の長さは、肘がちょうど‥‥
- 岸山
- 隠れるぐらいですね。
皆さん、肘を出すことに躊躇なさいますから。
- 伊藤
- このブラウス、あの人に似合うだろうな、
っていうことを、いろいろと思いますよね。
- 岸山
- そうですね、あの大先輩に! とか、
後輩のあの人も似合うだろうな、って。
年齢層も広く、たとえば妙齢の白髪の方にも
かわいらしく着ていただけると思います。
- ──
- デザインが、ガーリー過ぎないんですよね。
- 岸山
- そうです。そこは大事にしています。
- 伊藤
- そうなんです。
saquiは、たとえば肩線の位置であるとか、
そういうところがちゃんとしてるんですよ。
“きちんと”しています。
- 岸山
- すこし専門的な話になりますが、
こういうタイプライター生地のシャツって、
袖山が浅いものが多いんですよ。
けれども着たときに立体的に
きれいに見えるようにするためには、
袖山を、ふっくらと、深くしたい。
でも縫製が難しいんです。
生地を縮めながら縫わなきゃいけないから。
専門用語で「いせ分を多く」って言うんですけれど。
- ──
- 「いせ込み」のいせですね。
平面である布に丸みをつけ、
立体的にする技法。
- 伊藤
- でもギャザーは寄っていないんですよね。すごい。
- 岸山
- そう、着たときに、セットインスリーブの
肩線の外側を立体的にふっくらさせたいけれど、
ギャザーは寄せないように、
とお願いをするのが縫製泣かせなんです。
今回もパターンをつくって工場に依頼したら、
「お願いだから、いせをもうすこし少なくできませんか」
と言われました。
袖つけは、洋服を縫うなかで、
いちばん難しいところのひとつかもしれません。
- 伊藤
- 工場といっても、
人が手で作業をしているわけですものね。
- 岸山
- そうなんです!
- 伊藤
- ベトナムや汕頭(スワトウ)の刺繍もそうですしね。
- 岸山
- あと最近もうひとつ嬉しかったのが、
パリのチャコさんが、
現地のファッションショーに
saquiの服を着て行ってくれたんです。
- 伊藤
- 嬉しいですね!
- 岸山
- しかも、メゾン系のオートクチュールですよ!
シャトーで開催の‥‥。
- 伊藤
- すごーい!
- 岸山
- チャコさんいわく、
「saquiの服ってクチュール感があるのよ」。
そして「すっごく褒められるの」って。
- 伊藤
- パリに暮らし、
ずっとお洋服を見てきたチャコさんに、
そんなふうに言ってもらえるなんて‥‥。
- 岸山
- 私、思っていたんですよ。
大量生産を得意とするような
大きなアパレルにいたわけじゃないから、
大掛かりな服づくりの仕組みを知らないって、
デザイナーとしては欠点なのかな、
手作業が多い、なんて、いけないのかなぁ‥‥、と
負い目を感じることがあったんです。
でも今は、いいんだ、これで! と思っています。
- 伊藤
- むしろ、自慢してもいいことだと思いますよ。
- 岸山
- スタッフとも、毎回、
こんなすごい生地を選んじゃったけど、
裏の仕立てどうする?
きっと縫いにくいよ、
工場にどう伝えよう? ‥‥なんて、
毎回、悩むことだらけなんですが、
なんとか工夫して、手がかかっても、
とにかく美しく見える服づくりを続けたくて。
- 伊藤
- まさしくこれも、そういうブラウスなんですね。
- 岸山
- そうなんです。
ちなみにプリーツ部分ですが、
わかりますか、中央から左右対照に
プリーツをつくっているんです。
一方方向じゃないんです。
- 伊藤
- こういうところもsaquiらしさですね。
これをブラックフォーマルに合わせても?
- 岸山
- 華やかな場に、黒のジャケットと
黒いパンツを合わせるのもいいですよね。
黒を持っている方は、これがあると、
さらに活躍の場が広がりますよ。
- ──
- ジャケットとブラウスのサイズは
同じにしたほうがバランスがいいですよね?
- 岸山
- そうですね、
ちらっと見えるバランスを考えているので、
同じサイズで揃えていただけたら。
- 伊藤
- よくわかりました。
岸山さん、今回もありがとうございました。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。
- 岸山
- こちらこそよろしくお願いします。
どうもありがとうごさいました。