沖縄のうちわ

画家・湯浅景子さんがはじめて挑戦したという、
紙凹版画作品のシリーズです。

今回ご紹介する３つのテーマは、
どれも湯浅さんのご自宅にあるものがモチーフ。
ぱっと見たときにはなんだかわからないような、
“無作為の形”がうつくしい画題です。

この「沖縄のうちわ」に描かれているのは
「クバ扇」と呼ばれるクバの葉のうちわ。
湯浅さんがこれまで幾度か描いたことのある、
大好きなモチーフのひとつなんですって。

とはいうものの、何度も描いていくうちに
「上手になりすぎてしまう」ことを
避けたいという湯浅さん。
今回の「版画」という技法は、
その点でも、嬉しいチャレンジだったそう。

版画は多くの枚数を刷れそうなイメージですが、
こちらは「紙」を版としているため、
また、昔のプレス機を使っているため、
繊細で多くは刷れません。
失敗と試行錯誤を繰り返しながら、
ひとつの絵柄あたり10枚を刷っていただきました。

線の出かたやインクののりかたなど
それぞれ表情が違うその版画に、
さらに紙や箔を貼ったり、引っ掻いたり。
すべてが１点ものの作品です。
ここには10点それぞれの写真を掲載していますので、
飾る場所に合いそうな
「ピンときた」一枚をお選びくださいね。

額縁は家具職人のご友人に作ってもらったもの。
ナラの木（ホワイトオーク）を使用し、
釘や接着剤を使わずに木を組んだ、
細部まで美しいオーダーフレームです。
マットも含め、すべてが湯浅さんのプロデュースと
手仕事による１点ものなんですよ。

「版画の作品を発表するのは今回が初めてです。
表情が違う一枚一枚にさらにコラージュをしているので、
私にとっては限りなく原画に近い仕上がりとなりました。
『絵』のある風景を想像しながら、
楽しんでいただければと思います」（湯浅景子さん）