永田 |
どう? 実感は?
種の保存みたいなの感じる? |
さいとう |
う〜ん(笑)、なんか、すごい遠いところでさ、
「・・・父親になったんだなあ」って感じかなあ。 |
永田 |
ふ〜ん。 |
さいとう |
母親は自分のお腹を痛めて生んだわけだから
「自分の子供だ!」ってのがあるだろうけどさ。 |
永田 |
うんうん。彼女の話聞いてるとそうだったね。
ああいう、つわりとか出産の話聞いてるとさ、
・・・男子は不利だよね。 |
さいとう |
(笑) |
永田 |
でもすごく不思議な感じだよね。 |
さいとう |
不思議だよね。
「これが命かあ」ってのもあるし。 |
永田 |
ミルク一心不乱に飲んでんじゃん。
すごいなあと思ってちょっと感動しながら見てた。 |
さいとう |
赤ん坊はただ生きるだけだからね。
そういうパワーは。 |
永田 |
すごいよね。 |
さいとう |
ただ生きるっていう。 |
永田 |
めっちゃピュアだよね。 |
さいとう |
純粋な生き物だよね。 |
永田 |
うんうん。 |
さいとう |
そういうの見てると幸せになるっていうのはあるな。 |
永田 |
うん。なんだろね、あれ。あの幸せ感って。 |
さいとう |
やっぱ、美しいものを見るような。
花を見るようなもんなんだろうね。 |
永田 |
そうねぇ。そんな感じしたなあ。 |
さいとう |
ああいう原型っていうのは誰もみんな・・・。 |
永田 |
持ってるんだよねえ。
スタート地点は誰しもあそこなんだよね。 |
さいとう |
あの状態に戻れって言われても不可能だけどね。
でも誰もがああだったんだよね。
一番、子供生まれて思うのは、
そういう純粋なものを、
どうやったら残しておけるのかな
っていうことかな。 |
永田 |
失わずにあれをとっておくっていうこと? |
さいとう |
少しでもあれを残していければいいなあ。
それは過保護にどうこうするんじゃなくて。
純粋なものは残してあげたいなあ。
・・・それを考えるのが親なのかなあとか。 |
永田 |
そうだねえ。
でもそれってある意味相反することだよね。
あのままにして残すっていうことと、
一人の人として立派に育てるっていうのは。
たとえば名前をつけることだって。 |
さいとう |
うん。ある意味親のエゴだし。
赤ん坊にとって望むことはなんだかわかんないしね。 |
考えてみると、生後9日という赤ん坊を
僕はあんなに間近で見たことはないのだ。
過去、もっともピュアな人間を
見たということかもしれない。
言葉もない。歯もない。でもきっと何か考えている。 |
永田 |
いろんな選択を迫られるね、これからはね。
最初に与えるなんとかは、とか。 |
さいとう |
ものを教えなきゃいけないっていうのは
すごく大変だと思うけどね。
|
永田 |
ああ、そうだね。 |
さいとう |
自分に自信があればいいけど、
自信がないとこまで教えなきゃいけない
っていうのはすごく難しいんじゃない? |
とっても純粋なもののそばにいると、
なんだか祈るような気持ちになってしまう。
そして、さいとうは、
やはり父親としてすでに怒り初めてもいるのだった。 |
さいとう |
間違いなくいまの世の中は
ろくでもなくなってきてるからね。
どうしてやったらいいのかなあ。 |
永田 |
だからっつって、田舎に引っ込んだら
OKってわけじゃないからね。 |
さいとう |
ニュースとか見てるとさ、
サイコ野郎がすっげえ増えてるからね。
将来はもっと増えるんだろうし。
それでも自分の道を行けるように、
・・・っちゅうのをなんか考えるよね(笑)。 |
永田 |
そうだろうね。
頼りないが、頼もしい。
根拠はないのだけれど。 |
永田 |
話しかけるとき、赤ちゃん言葉とか使える?
照れたりしない? |
さいとう |
赤ん坊とかを目の前にすると、
ためらわずに行けちゃうんだよねえ。 |
永田 |
ピュアなもんに弱いよね、昔から。 |
さいとう |
弱い。本物が好きだからね。 |
永田 |
赤ん坊は本物だからね。 |
さいとう |
あんな本物ないね。 |
永田 |
ないね! |
なんとも青臭い会話を、
僕らはゆっくり交わしていたのだ。 |
永田 |
正直、思いのほかうれしかったよ。 |
さいとう |
永田は、いろんなこと喜んでくれっからねえ。 |
永田 |
バカみてえだな(笑)。 |
さいとう |
いや(笑) |