タカ |
おわっ! |
アキ |
あ、アイボ! |
エリ |
どうしたんですか! |
永田 |
待て待て待て。 |
ええと、「どうしたんですか」と「いくらですか」など、
何度も繰り返される質問は割愛します。
あと、いろんなヤツらが現れるので人物紹介もしません。 |
アキ |
おお、肉球がある! |
エリ |
かわいいかわいい。 |
アキ |
バウ、バウバウバウ(犬語らしい)。
|
ピコピコ音を出すアイボ。 |
アキ |
ピコピコピコじゃわかんねえよ! |
目のあたりのライトを点滅させて喜ぶアイボ。 |
エリ |
あ、笑った! |
アキ |
お手、お手お手。お手お手お手。
お手お手お手お手! お手って! |
永田 |
無茶言うなよ。 |
などと言ってるあいだにも人は集まる。
連中、夢中である。
野次馬のるつぼである。
視線は未来である。
そんな中、じつに機械っぽい、
不可解な関節の動きでアイボが立ち上がる! |
アキ |
おおっ、カッコいい! ロボだ! ロボだ!
デデッデンデンデンデーン! |
トヨ |
ガンダム大地に立つ! |
エビ |
クララが立った! |
ママ |
へ〜、肉球ついてるんだ。 |
ナガ |
っつーか、関節変だよ。 |
永田 |
だってロボットだもん。 |
ナガ |
そんなこと言っちゃダメだ。
こいつはペットなんだから。 |
永田 |
ロボットでしょ。 |
ナガ |
ペットだ!
|
歩き出すアイボ。 |
アキ |
やっべえロボコップみたい。 |
永田 |
お、歩いた。こないだまで歩けなかったんだよ。
1カ月くらいかけて成長するらしいからさ。 |
エリ |
あたしたちのおかげだよ。
かわいいかわいい。喜ぶとうれしい。 |
タカ |
痛っ! 噛まれたよ、ロボットに。 |
永田 |
指が引っかかっただけだろ。 |
ナガ |
なんでビーグル犬なんだ。耳が垂れてる! |
永田 |
犬にこだわるなあ。 |
アキ |
(胸をなでながら)このへんを触ると喜ぶはず。 |
エリ |
怒ってるよ、怒ってるよ。 |
タカ |
おまえが触るから怒っただろお。 |
エリ |
あたしが歩くまでに育てたのに! |
タカ |
悪かったよ悪かったよ。
|
タカ |
触んなっつってんだよ! |
エビ |
解剖してみようよ。バラそうよ。 |
ナガ |
自分で買ったら絶対分解するよな。 |
エビ |
するする。 |
永田 |
え〜っ、しねえよ。 |
エビ |
だって中、知りたいもん。 |
ナガ |
昔、時計とか分解しなかった? |
永田 |
あ、俺分解欲なし。
パソコンとかでも開けないもん。 |
ナガ |
うそお。ダメだ。君、ダメ。 |
ハリ |
おわっ、アイボ! あ、肉球だ! |
永田 |
なんでみんな肉球ばっか言うかな(笑)。 |
アキ |
すっげえ尻尾立ってるよ。 |
ハリ |
尻尾振りすぎ! |
タカ |
あ、いま犬っぽかった。犬っぽかった。 |
ハリ |
永田さん、めっちゃ精密にできてるよ、これ。 |
永田 |
知ってるよ(笑)。 |
ハリ |
よくできてる。精密機械。 |
永田 |
知ってるよ。 |
ハリ |
永田さん、これすごい精密機械ですよ! |
永田 |
知ってるって(笑)。 |
ナガ |
黒いバージョン出すならさあ、
耳の形変えりゃあよかったのになあ。 |
永田 |
まだ耳の話してる(笑)。 |
このアイボは、
こないだ発売された黒いバージョンのアイボなのだ。 |
ハリ |
黒いのヤダなあ。 |
永田 |
銀のほうがいいよね。 |
ハリ |
・・・塗っちゃおっか? |
永田 |
なんで小声なんだよ。 |
タカ |
俺だったら色塗っちゃうね。
カスタムするっしょ。 |
エリ |
小物入れとかついてるといいのに。 |
永田 |
ガハハハハ、小物入れ。 |
ふらふらとよろけるアイボ。 |
タカ |
『おっとっと』。 |
バランスを取って座り直すアイボ。 |
タカ |
『いやあどうもどうも』。 |
永田 |
吹き替えすんなよ。 |
タカ |
アイボが右手を上げるとお客さんを招いて、
左手を上げるとお金を招くんですよ。 |
永田 |
招き猫じゃねえかよ。 |
ハリ |
(取扱説明書を読みながら)永田さん、
「こんな時はモチベーションが下がってます」
って書いてあるよ。 |
永田 |
うそつけ。 |
ハリ |
「志気を高めましょう」だって。 |
永田 |
ガハハハハ。 |
エリ |
これなんですか? |
永田 |
あ、それ触んな。電源スイッチだぞ。 |
エリ |
あ、スイッチですか。 |
アキ |
これ電源切ったら記憶が消えるとかないよね? |
ハリ |
人工知能回路が消えるかもしんないよ。 |
永田 |
人工知能回路(笑)? 発想が貧困だなあ。 |
ハリ |
じゃあ、Pラムがクリアーされますよ。 |
永田 |
なんでいきなり専門的になんだよ。 |
ハリ |
ファームウェアが書き換えられますよ。 |
永田 |
(笑) |
ハリ |
バイオスが書き換えられちゃうよ! |
永田 |
もういいよ。
|
「フワァ」とあくびするアイボ。 |
エリ |
あ、あくびしてる。 |
アキ |
生意気な。バシッ(殴る)。 |
永田 |
ひどいな、おまえ。あくびしただけじゃん。 |
アキ |
はいはいゴメンゴメン。! |
なでなで。ニコニコ、いえーい。 |
永田 |
・・・アキ、そういうのって、
プラマイゼロじゃないと思うぞ。 |
アキ |
そうなのかなあ。 |
永田 |
おまえ、あくびして殴られて、
そのあと「よしよし」ってされたら・・・。 |
ハリ |
逆に腹立つよ。 |
アキ |
じゃあ、もう一回なでなで。 |
一同 |
だからそうじゃないだろ! |
永田 |
おまえ、子供作らないほうがいいぞ。
|
精密機械アイボはバッテリーで動いている。
アイボはバッテリーが切れかかると、
自分からその動きを止めて眠ってしまうのだった。
ピコピコピコ・・・ピコピコ・・・・ピコ・・・・・・
・・・・ピコ・・・・・ピ・・・・・・・・ピ。
アイボ、停止。 |
タカ |
おっ、死んだ。死んでしまった! |
ナガ |
死亡。 |
ハリ |
・・・終わったっぽいよ。 |
永田 |
終わったってなんだよ。出し物かよ。
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