NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第5回 初めての読者に会いにいく 〜その1〜

いつも自分が見ている『ほぼ日』に、
自分の原稿が載っているというのは、
妙にくすぐったく、そしてやっぱりうれしいものだ。

連載の最初の原稿を僕がイトイさんに送ったのは
2000年の1月19日で、
それが『怪録テレコマン』としてアップされたのは
2日後の1月21日だった。

僕は原稿がいつアップされるか知らなかったから、
いつもの『ほぼ日』に自分の原稿を見つけて
えらく驚いてしまった。
しかし、数分後にもっと驚いてしまった。

メールが届いたのだ。
それは、僕の原稿を読んだ人が
『ほぼ日』に送ったメールで、
気を利かせたイトイさんが僕に転送してくれたのだ。
速いや。

それで僕は、僕に届いたメール第1号に返事を書いた。
挨拶と、自己紹介と、お礼を書き、
ついでにこんな一文を付け加えた。

>もしよろしければ、
>テレコマンのターゲットに
>なっていただけませんでしょうか。
>企画としては、
>テレコマンに最初のメールを書いた人にインタビュー!
>という感じでしょうか。
>ほんの15分ほどでけっこうです。
>なんだか、新手のセールスマンのようですが、
>ご安心ください。
>僕は善良なテレコマンです。

>永田泰大(永田ソフト)


第1号のメールを送ってくれた僕の初めての読者は
はやしゆうこさんという女性だった。
むろん、どういう人なのか僕はまったく知らない。
当然、彼女も僕がどういう人間なのか知らないはずだ。
さて、はやしさんは応えてくれるだろうか。
そして、はやしさんはどこに住んでいるのだろうか。
もしも彼女が企画に好意的でも、
物理的に距離があっては、取材はままならない。
ほどなく、返事が来た。

>こんにちは。筆者ご本人からの早速のメールと
>突然のインタビュー依頼に驚いています。
>私、住いは東京です。ただ、2年半前に仕事を辞めて、
>今は家事手伝いの身ゆえ、
>話題性に乏しいかもしれませんよ。
>それでも良ければ協力します。時間はありますので。

>はやしゆうこ


よし!
テレコマンは小さくガッツポーズ。
それにしても、メールを出すときに、
ふと「この取材はきっと実現する」と感じていた
根拠のない僕の予感はなんだったのかしら。

はやしさんと何度かメールをやり取りして、
取材日は2月11日の建国記念日に決まった。
落ち合う場所と時間は、はやしさんから提案された。

>JR新宿駅の新南口なら比較的混雑もしていなくて
>判りやすいのではないでしょうか?
>14:00に改札口を出た辺りで。
>永田さんを見つける目印を教えてください。

>はやしゆうこ


昔読んだ小説の中で、スパイや探偵が目印に使っていたのは
英字新聞や胸ポケットに差した薔薇の花だったか。
僕は僕の目印をはやしさんに伝えた。

>耳あてをつけて行きます。

2月11日、13:50。
東急ハンズで買った灰色の耳あてをつけて、
僕は新宿駅の新南口改札前に立っていた。

さて、どんな人だろう。
うまく会えるだろうか。

急いで改札へ向かってくる女の人を見るたびに
つい、じっと見てしまう。
会ったこともない人と待ち合わせるというのは、
なんとも不思議だ。
向こうは僕がわかるだろうか。
はやしさんは、どんな耳あてを想像しているのだろうか。
もっと目立つ場所に立ったほうがいいだろうか。
そもそも新南口の改札はここひとつだけだっけ?
今日は本当に建国記念日だっけ?

改札を抜けてくる女性が僕に向かって会釈した。
あ、彼女がそうだ。

はやしさんの第一声は、
「すぐわかりましたよ!」だった。
はい。僕もすぐわかりました。

僕らは最初のメールと同じように、
挨拶し、自己紹介し、お礼を言い合った。

そして一度行ってみたかった
談話室滝沢という喫茶店に向かった。
はやしさんは、
「談話室滝沢って一度行ってみたかったんですよ」
と笑った。
はい。僕も一度行ってみたかったんです。

僕はコーヒーを頼み、はやしさんはカフェオレを頼んだ。
そしてテレコマンは魔法のスイッチを押すのさ。
はやし もう録ってるんですか?
永田 はい。

<続きはまた明日>

2000/02/11  新宿

2000-02-23-WED

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