和田 |
実際の野球は、"カキーン"なんていわんよね。
"カキーン"って誰が言い出したんやろう? |
永田 |
水島(新司)先生じゃないですか?
"ワーワー"がページいっぱいに書いてあるのは、
たしか水島先生ですよね。 |
鈴木 |
"カキーン"は『巨人の星』じゃない? |
永田 |
そうなのかな。ああいうマンガの表現のルーツって、
考えてみるとおもしろいですよね。 |
和田 |
江口さん、
昔、ボーリングの音を書いてなかった? |
江口 |
あれは田村信だよ。
"グモン、グモン、グモン、
クワッシャーン!"(笑)。 |
一同 |
(笑)。 |
江口 |
あれは上手かったよね。
あの人は擬音の天才だから。
"チュドーン" っていうのも田村信なんですよ。 |
永田 |
へえ。高橋留美子さんかと思ってた。 |
江口 |
高橋留美子さんも使ってるけど、
ルーツは田村信なんです。 |
和田 |
"グモン、グモン"っていうもんね、本当に。
ボーリングの球ってそうだよなあ。 |
永田 |
そう言われてみると、
そうとしか聞こえなくなっちゃうな(笑)。 |
鈴木 |
谷岡(ヤスジ)さんの"ぺたしぺたし"
みたいな(笑)。
でも"ぺたし"っていうよなあ。
裸足の足音はやっぱり
"ぺたし"がいちばんいいかなあ。 |
和田 |
廊下歩いてる音は"ぺたし"だよね。 |
永田 |
クルマの音なんかもいろいろありますよね。
『イニシャルD』の擬音とかよく見る
とすごいし。 |
鈴木 |
ああ"プシャアァァァ!"とかね。 |
江口 |
『イニシャルD』は上手いね。
あと遊人(笑)。"ヌプッヌプッ"とか(笑)。 |
鈴木 |
ああ、遊人のはヤバいですよね(笑) |
江口 |
"ヌププッ"とかさ。あとなんだっけなあ。
"ヌップヌップ"っていうのは
本当に思い当たるというか(笑)。 |
和田 |
"チョクチョク"とか(笑)。 |
江口 |
あったなあ(笑)。
アレはオレあきれたけどね。
もうやめろよって(笑)。 |
鈴木 |
アレはあの人のオリジナルですよね。 |
永田 |
マンガの擬音って、やっぱり先駆者がいて、
マネというか浸透していくんですかね? |
江口 |
そうじゃないかなあ。 |
鈴木 |
しかもマネというよりは、
すり込みに近いんじゃないかなあ。 |
江口 |
それを超えようとして、また切磋琢磨してね。
そういう意味ではたしかに
遊人はオリジネイターだね。 |
鈴木 |
そういうすり込みを逆手にとって、
このまえの『コミック・キュー』だったかな?
おおひなた ごうさんのマンガで、
ボールがミットに入ったときの音が
"デキャンタ!"とか書いてあって(笑)。 |
永田 |
相原コージさんも擬音で遊んだりしてたよね。
あと『ジョジョ』の一部で、
ライバルが主人公の恋人に
強引にキスする場面で
"ドキューン!"とか書いてあったの
覚えてるなあ(笑)。 |
和田 |
どんなキスや(笑)。 |
江口 |
メチャクチャな擬音っていうのはいいよね。 |
和田 |
狙いすぎてるとまた笑えないもんね。
微妙なところなんやろうな。 |
永田 |
そういや少女マンガって、
平気で"キュン"って書いてありますよね。
擬音として。 |
和田 |
なんで書くかなって思うけど、書いてあるわな。
書いてしまうんかなあ、その人の中のテンポで。 |
鈴木 |
新谷かおるさんの飛行機の着陸したときの音は
"ドピュッ"なんだよね。 |
江口 |
ラヂヲはあんまり書かないんだよね、擬音って。 |
永田 |
そういう印象ないですね。 |
和田 |
ていうかスピード感ないからね、
オレのマンガ(笑)。 |
江口 |
間がね。 |
鈴木 |
そういや『コンデ・コマ』の、
一本背負いが止められたところで
"ピタ〜〜ッ"っていうのがあって
それがすごくおもしろかったなあ。 |
永田 |
スポーツマンガって
けっこうオリジナル多いよね。 |
鈴木 |
蝉の鳴き声とかもけっこう人によって違う。 |
永田 |
島本和彦さんのマンガで、
横断歩道で待ってるシーンに、
"ぱーぱーぽーぱーぱぽぽー"って書いてあって、
「これなんだろ?」と思って考えてたら
『とおりゃんせ』のメロディーだった。 |
一同 |
(爆笑)。 |
鈴木 |
そうかそうか、メロディーを当てはめて読むと
つじつまが合うっていう(笑)。
『ドラネコロック』でもあったよ。
当てはめると『サンダーバード』の
一部にぴったりなの(笑)。 |
永田 |
『マカロニ』もけっこうなかったっけ? |
鈴木 |
あったような気がする。
ゴリラダンスは本当は
どんな歌なんだろうとか。 |
永田 |
そうそう、読者からすると
「作者の頭ではどんな音楽が鳴ってるんだろう」
っていう疑問はあるよね。
『パタリロ』のクックロビン音頭とかさ。 |
鈴木 |
アニメになったとき賛否両論あったね。 |
永田 |
江口さんの
"それだけならまだいいが"っていうのは
描いてるときは鳴ってるんですか? |
江口 |
鳴ってますよ。 |
永田 |
鳴ってるんだ(笑)。
"そっれっだっけっなっらっまっだっいっいっが"
っていう感じで読んでるんですけど……。 |
江口 |
それでいいです(笑)。それ以外ないもん。
やっぱりギャグマンガって
受け手側の想像力で左右されるからね。
それを受け取れない人だとぜんぜん違うからね、
マンガのテンポが。 |