NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第39回 テレコマン、宇宙へ行く 〜その3〜

宇宙開発事業団の方に、
宇宙飛行士になるにはどうしたらいいかを聞くという
うっとりするような取材が続いています。
前回に引き続き、
宇宙環境利用推進部有人宇宙活動推進室の中川人司さんが
興味津々の僕に、宇宙飛行士の応募条件について
話してくださっています。
いちおう、身長とかの制限があるんですよ。

中川 医学的な特性ですけれど、まず身長が
「149センチ以上、193センチ以下」。
この数字にはいちおう根拠がありまして、
上限はアメリカ人男性の90パーセントが
193センチ以下であるというデータからです。
下の数字は、日本人女性の90パーセントが
149センチ以上というところからきています。
まあ、各国のほとんどの人が、
この中には入るだろうということです。
そもそもなぜ身長制限があるかというと、
宇宙服の規格がありまして、
そのサイズに収まる人、ということです。
著しく逸脱したサイズのものを作るのは、
ちょっとたいへんなものですから。
いちおうサイズがS・M・Lとあるんですが…。
永田 S・M・L(笑)! 宇宙服に!
特注であつらえたりするわけじゃないんですね。
中川 ええ(笑)。まあ、それぞれの体に合わせて
フィッティングはいたしますけれども……。
永田 基本はS・M・L。
中川 そうですね(笑)。
永田 すいません、続けてください。
中川 ええと、視力ですが、裸眼でそれぞれ0.1以上。
矯正でそれぞれ1.0以上が求められます。
永田 意外にふつうですね。
もっと厳しいのかと思ってました。
中川 はい。スペースシャトルを操縦するような
パイロットになりますと
もっと高い視力が求められますが、
現在我々が採用しております宇宙飛行士は
操縦する人ほどの視力は求められません。
永田 矯正してても平気なんですね。
中川 ええ。メガネもコンタクトも宇宙で使用できます。
現に使っている人もいますし。
それから正常な聴力も求められますが、
なぜかというと宇宙船の中って
意外とうるさいんですよ。
永田 あ、そうなんですか。
中川 ええ。換気口の音であるとか、
実験装置の音であるとか。
そんな中で、非常用のアラームを
聞かなければならないので
正常な聴力が求められています。
永田 なるほど。ざっと見たところ、
医学的な特性というのは
総じて思ったほど厳しくないですね。
中川 そうですね。
心身ともに健康であり、
宇宙飛行士としての業務に支障がないこと、
というのが基本的な条件になります。
あとは、訓練などに数年を要しますから、
「10年以上宇宙開発事業団に勤務可能なこと」。
「海外での勤務が長期間可能であること」。
永田 なるほど。
中川 それから、最後になりますが、
「所属機関の推薦が得られること」。
これは選抜の最後の段階になりますが、
三次選抜まで残った人は、自分の所属機関の長、
つまり社長ですとか、そういう人に、
推薦書を書いてもらう必要があります。
永田 これ、よくわからないんですけど。
なんか条件の中で
これだけ浮いてるような気がするんですが。
中川 まず、三次選抜で2週間ほど拘束されるので、
やはり、所属長の許可がないと
選抜に参加できないという現状があります。
あとですね、
最終的に宇宙飛行士に選抜されると、
宇宙開発事業団の職員に
なっていただくことになります。
そうすると要は……。
永田 あっ、転職になっちゃうんですね。
中川 ええ。いまの職場を辞めていただくことになる。
なので、その段階になって、
「上に通ってなかった」ということになると
…いろいろ(笑)。
永田 なるほど。わりと人間くさい条件なんですね(笑)。
中川 そうですね(笑)。第1回目の公募のときは、
この推薦書が応募の最初に必須だったんですよ。
そうすると、応募できない人が大勢いたようで。
永田 ああ、ああ、そうかそうか。
ちょっとチャレンジしてみようかというときに、
上司に向かって、
「宇宙飛行士になりたいので辞めます!
 推薦してください!」
とはなかなか……。
中川 そうなんですよ(笑)。
最初は黙っていたいという人がほとんどでして。
永田 それで、最後の条件にあるんだ。納得しました。
なるほどなあ。
宇宙飛行士になるのも転職には違いないですよね。
中川 ええ。宇宙飛行士の中には、
医者から転身したものがいるんですが、
たぶん給料はかなり下がったんじゃないかな(笑)。
永田 あ、そうか、給料もらうわけですもんね。
中川 基本的には宇宙開発事業団の職員の給料ですね。
まあ、極端に悪くはないかもしれませんけど、
そんなに飛び抜けてよくもない(笑)。
永田 それはあの、宇宙飛行士として、
宇宙にいるあいだも同じ給料ですか。
宇宙に行った瞬間、ガーッと昇給したりとかは。
中川 ええっと、宇宙飛行士になるとですね、
手当がつきます。
永田 手当! …手当かぁ。
中川 搭乗員手当というんですけど。もらったとしても
驚くような額にはならないですね。
ですから、「金持ちになりたい」という理由では
ちょっと宇宙飛行士はおすすめできませんね(笑)。
永田 はー。
中川 あとは、宇宙から帰って来てから
毛利も向井もいろんなところで
講演などをしてますけれど、
あれもすべて無料です。
永田 え、そうなんですか。
中川 事業団の業務としてやっていますので、
出張費が出るだけです。
永田 出張費かあ……。
中川 ですからやはり、
経済的におすすめできる仕事ではないですね。
永田 でも、そういう問題じゃないですよね!
つまり、宇宙飛行士は、職業だった。
考えてみますと当たり前の話ではありますが、
なぜか面食らってくらくらしている僕です。
さて、明日は実際の選抜が
どのように行われるかという話を。


Love & Space!!


2002/02 筑波宇宙センター

2002-03-10-SUN

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